JPH0225216Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は非晶質（アモルフアス）磁性薄帯を巻
回した巻鉄心変圧器に関する。

〔考案の技術的背景と問題点〕

最近、従来の珪素鋼帯に代る磁性材料として、
鉄損が著しく少ない非晶質磁性薄帯が注目されて
おり、これを配電用変圧器等の巻鉄心に使用する
ための開発研究が現在鋭意進められている。しか
し、前記非晶質磁性薄帯は、製法上の理由から珪
素鋼帯のように材厚を厚くすることが困難で、通
常は20〜30μｍ程度と非常に薄く、その上、弾力
性に富んでいるため、非晶質磁性薄帯を用いて変
圧器の巻鉄心を製作するには数々の問題があつ
た。例えば、非晶質磁性薄帯を用いて１ターンカ
ツト方式の巻鉄心を製作する場合、珪素鋼帯を使
用した巻鉄心と同様に、非晶質磁性薄帯を、第１
図に示す如く、巻取枠１に１巻回する毎に切断部
２が階段状にずれるよう図示しない切断装置で切
断してこれを前記巻取枠１に順次円形に巻回する
ことにより円形鉄心３ａを形成し、次に、前記円
形鉄心３ａを第２図に示すように、成形治具４，
４′により矩形成形して矩形鉄心５を形成し、つ
づいて、この矩形鉄心５を、矩形状態を保持させ
たままで磁場焼鈍を行つて、第３図に示す１ター
ンカツト方式の巻鉄心６を製作していた。そし
て、前記巻鉄心６をコイル７に組付ける場合は、
巻鉄心６を数ブロツクづつ切断部２を拡開しなが
ら第４図に示すように、コイル７の鉄心挿入孔７
ａに順次嵌め込み、前記切断部２をステツプラツ
プ方式により接合しながら巻鉄心６の組立を行
う。組立後は巻鉄心６の最外周に締付バンドを、
前記巻鉄心６を形成する非晶質磁性薄帯に悪影響
を与えないよう締付力を幾分弱くして巻締める。
このようにして組立てた巻鉄心６を用いて変圧器
を製作し、そして、この変圧器を配電線路に設置
して運転させた場合、前述のように、巻鉄心６に
はその磁気特性が低下するのを防止するために締
付バンドが締付力を弱くして巻締めしてあるの
で、変圧器の運転により鉄心が振動した場合、巻
鉄心６の切断部２の突合せ面が第５図に示すよう
に、巻鉄心６の軸方向にずれる。このため、切断
部分２の磁束が乱れて騒音が増加するおそれがあ
つた。このような欠点を解消するには、巻鉄心６
を強固に締付ければよいが、非晶質磁性薄帯はも
ともと剛性に乏しく、特に、焼鈍後はそれが顕著
であるため、締付バンドを強く締付けることが困
難であると共に、非晶質磁性薄帯を巻回した巻鉄
心に大きな締付力を与えると磁気特性が劣化する
ことが明らかとなつているため、締付バンドの巻
締力を大きくすることは望ましくない。更に、巻
鉄心の剛性を強化し、かつ、切断部２が軸方向に
ずれるのを防ぐために、巻鉄心６の層間に樹脂を
含浸・硬化させる方法も考えられるが、非晶質磁
性薄帯のような極薄帯を巻鉄心に用いた場合、樹
脂を多量に使用すると磁気特性に悪影響をおよぼ
すおそれがあるため、樹脂の使用は望ましくな
い。

〔考案の目的〕

本考案は前記の問題点に鑑み、巻鉄心の切断部
を有する継鉄に、その外周面から積層端面側にか
けて前記切断部を被う絶縁枠体を取付け、前記切
断部が振動等により巻鉄心の軸方向にずれるのを
確実に阻止して、非晶質磁性薄帯を用いた巻鉄心
の鉄心特性を良好に維持させるようにした巻鉄心
変圧器を提供することにある。

〔考案の実施例〕

以下本考案の実施例を第６図乃至第９図により
説明する。

本考案の巻鉄心変圧器は、第１図乃至第５図に
よつて説明した従来の巻鉄心変圧器と異ならない
点は同一符号を付して説明する。

そして、本考案の巻鉄心変圧器と従来のそれと
大きく異なる点は、第６図および第８図に示すよ
うに、巻鉄心６の切断部２の突合せ面が巻鉄心６
の軸方向にずれないよう切断部２を有する巻鉄心
６の積層端面に絶縁枠体８を配設したことにあ
る。この絶縁枠体８はプレスボードあるいは合成
樹脂等からなる絶縁板を第９図に示すように、巻
鉄心６の切断部２を有する継鉄６ａの積層端面を
両側から挾持し得るようコ字状に折り曲げあるい
は成形加工して製作され、その取付作業は巻鉄心
６の組立終了時点で行う。

即ち、巻鉄心６の組立を行う場合は、始めに第
６図に示すように、２つのコイルの鉄心挿入孔７
ａ内にまたがつて、周縁の１部を切断したロ字状
の絶縁物からなる補強枠９を嵌め込み、この補強
枠９の切断部分９ａを接着剤等で接合する。つづ
いて、前記補強枠９の外側面に沿つて従来と同様
に、磁場焼鈍を行つた巻鉄心６を複数ブロツクに
分割しながら１ブロツクづつコイル７の鉄心挿入
孔７ａに順次嵌め込み、前記切断部２をステツプ
ラツプ方式により接合を行つて巻鉄心６の組立を
行う。尚、巻鉄心６の組立中にコイル７が動いた
としても、既に組み込んだ巻鉄心の一部が前記補
強枠９に支承保持されているため、前記巻鉄心の
一部がコイル７の鉄心挿入孔７ａ内でくずれたり
して以後の鉄心の挿入を妨げるようなことはな
い。巻鉄心６の組立後はその最外周にクラフト紙
等薄葉の絶縁物１０を数回巻付ける。

このあと、前記巻鉄心６の切断部２を有する継
鉄６ａに、その積層端面の両側にまたがつて切断
部２を被覆するように第９図で示すコ字状に形成
した絶縁枠体８を巻鉄心６の上面から第７図に示
すように、継鉄６ａに嵌合し、この状態で、前記
絶縁枠体８の継鉄６ａの積層端面と対応する自由
端に絶縁テープ１１の一方端を貼付け、絶縁テー
プ１１の他方端は絶縁枠体８下縁の巻鉄心６窓内
に貼着して、前記絶縁枠体８を巻鉄心６の巻回方
向に移動しないよう継鉄６ａに保持させる。続い
て、巻鉄心６の最外周に前記絶縁枠体８を介して
第６図で示すように、締付バンド１２を、非晶質
磁性薄帯に悪影響を与えない程度の締付力で巻締
めて巻鉄心６のコイル７への組立を終了する。

このようにして組立てた巻鉄心６により構成さ
れた変圧器を配電線路に設置し、この変圧器の運
転中に鉄心が振動した際、巻鉄心６は締付バンド
１２により強く締付けられていないので、巻鉄心
６の切断部２の突合せ面が、巻鉄心６の軸方向に
ずれようとするが、前記切断部２は第６図および
第８図に示すように、絶縁枠体８により横ずれし
ないように受止められて保持されているため、切
断部２の横ずれによつて生ずる磁束の乱れによ
り、励磁電流が増加したり、騒音が増加するのを
抑制することが可能となる。又、巻鉄心６をコイ
ル７に組付ける際、コイル７の鉄心挿入孔７ａに
補強枠９を介在させて巻鉄心６の組立を行うた
め、巻鉄心６は前記補強枠９に沿つて組立てるこ
とにより、組立途中でコイル７が動いた場合既に
コイル７に組込んだ巻鉄心の１部は補強枠９に保
持されてくずれたりすることがないので、非晶質
磁性薄帯を用いた巻鉄心の組立を迅速確実に行う
ことができる。更に、巻鉄心６の最外周には絶縁
物１０が巻付けてあるため、焼鈍により脆弱とな
つている巻鉄心６の外周に外力が加えられても絶
縁物１０により緩衝されて、巻鉄心６の１部が剥
落して巻鉄心６の機能を阻害するということはな
い。

〔考案の効果〕

本考案は以上説明したように、非晶質磁性薄帯
を巻回して形成した１ターンカツト方式の巻鉄心
をステツプラツプ方式でコイルに組みつけたあ
と、前記巻鉄心の切断部のステツプラツプ状の接
合部が変圧器の運転中に巻鉄心の軸方向にずれる
ことのないように、前記巻鉄心の切断部を絶縁枠
体によつて被覆するように構成したので、次に示
すような効果を有する。

本考案は、巻鉄心の切断部における接合部
が、ステツプラツプ方式により接合されている
ため、前記接合部が振動によつて上下方向にず
れることはあり得ない反面、巻鉄心の軸方向に
対しては何等の支えも存在していないので、振
動に対しては締付バンドを強く締付ける必要が
あつたが、非晶質磁性薄帯を用いた巻鉄心にお
いては、特に焼鈍後、脆弱で、かつ剛性に乏し
いため、前記締付バンドの締付力を強くして緊
締すると、巻鉄心の磁気特性を悪化させること
となる。

しかし、本考案においては、巻鉄心の切断部
を覆うようにコ字状の絶縁枠体を被せて、前記
切断部の接合部が巻鉄心の軸方向にずれるのを
確実に防ぐように構成したので、接合部が軸方
向にずれることによつて、前記接合部分の磁束
の流れが乱れ、これにより励磁電流が増大して
鉄心特性を低下させたり、騒音が増加するとい
う問題を容易に一掃することができる。

又、巻鉄心の切断部を絶縁枠体によつて覆う
ことにより、前記切断部が軸方向にずれるのを
抑制することが可能となり、この結果、巻鉄心
を締付バンドによつて必要以上に強い力で締付
ける必要がないので、締付バンドの締め過ぎに
よるこの種巻鉄心の磁気特性を低下させるとい
う問題を確実に解決することができる。

更に、巻鉄心の切断部を被覆する絶縁枠体
は、プレスボードや合成樹脂製の絶縁板をコ字
状に折曲することにより容易に製作でき、又、
その取付けに際しては、巻鉄心の上から切断部
分を覆うように継鉄に被せ、かつ、絶縁テープ
により移動しないように巻鉄心に貼付けるだけ
でよいので、絶縁枠体の取付作業は、特別に手
間を要することなく、迅速確実に行い得、しか
も、絶縁枠体は絶縁テープによつて巻鉄心に仮
止めの状態で止着されているだけであるため、
絶縁枠体の取付けにより巻鉄心の切断部を圧迫
して鉄心自体に悪影響を与えることも全くな
く、その上、締付バンドの締付時、絶縁枠体は
巻鉄心に移動しないように止着されているの
で、締付バンドの締付けを迅速容易に行うこと
ができる等、変圧器の組立作業は絶縁枠体を取
付ることによつて特別に手間や時間をかけるこ
となく容易に行うことが可能となり、この種変
圧器の生産性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は非晶質磁性薄帯の巻回状態を示す概略
図、第２図は巻鉄心を矩形成形する場合の説明
図、第３図は矩形成形された巻鉄心の正面図、第
４図は巻鉄心の組立途中を示す説明図、第５図は
従来の巻鉄心の切断部を拡大して示す平面図、第
６図は本考案の巻鉄心変圧器の概略図、第７図は
側面図、第８図は第６図のＡ−Ａ線における断面
図、第９図は絶縁部材の斜視図である。 ２……切断部、６……巻鉄心、７……コイル、
８……絶縁枠体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 切断部２を有するように非晶質磁性薄帯を巻回
   して形成した巻鉄心６を、前記切断部２を拡開し
   てコイル７に挿入し、前記切断部２をステツプラ
   ツプ方式により接合して鉄心組立を行うようにし
   た巻鉄心において、前記巻鉄心６の切断部２を有
   する継鉄６ａの外周面とその積層端面とにまたが
   つて、プレスボードや合成樹脂等からなる絶縁板
   をコ字状に折曲して形成した絶縁枠体８を、前記
   巻鉄心６の切断部２を被覆するように継鉄６ａに
   嵌合し、前記絶縁枠体８の巻鉄心６の積層端面側
   と対応する自由端を絶縁テープ１１にて前記巻鉄
   心６に止着し、更に、前記巻鉄心６の外周面に非
   晶質磁性薄帯に悪影響を与えない程度の締付力で
   締付バンド１２を巻締し、前記絶縁枠体８を巻鉄
   心６の切断部２を有する継鉄心６ａに保持させる
   ようにしたことを特徴とする巻鉄心変圧器。