JPH0221598Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案はスライドベーン型の回転圧縮機、更に
具体的にはシリンダーブロツクの内壁面と、同シ
リンダーブロツク内に回転自在に設けられるロー
ターとの間に複数個の圧縮室を形成するとともに
両圧縮室に隣接して吸入室を設け、同吸入室と両
圧縮室間をサイドプレートに開口する吸入孔によ
つて連通させる様に設けられる圧縮機において、
低速回転時に吸入ガスより分離して液膜状態にて
吸入室内に送り込まれたオイルを同吸入室内に滞
溜させることなく均等に両圧縮室に送り込むため
の機構に関する。

従来技術 一般に複数個の圧縮室を具備するスライドベー
ン型の回転圧縮機は、第５図と第６図に示す様に
前後一対のサイドプレート３Ｆ，３Ｒ間にシリン
ダーブロツク２を介在させ、同シリンダーブロツ
ク２内には複数個の圧縮室６，６を介してロータ
ー５を回転自在に設け、同ローター５には適宜枚
数のベーン８を両圧縮室６，６に対して出没させ
ることが可能な如く設ける一方、両圧縮室６，６
に隣接させて吸入室９を設けるに同吸入室９はロ
ーター５の駆動軸４を囲繞する如く環状に設け、
同吸入室９と同圧縮室６，６間をフロントサイド
プレート３Ｆに開口する吸入孔１０ａ，１０ｂに
よつて連通させる様に設けられるのであるが、こ
の様に吸入室９を環状に形成する型式の圧縮室に
あつては、低速回転時に吸入ガスが吸入回路内を
吸入室に戻る過程において、吸入ガス中より分離
して液膜状態にて吸入室に送り込まれたオイルが
同吸入室の底部に滞溜してしまい圧縮室に対する
オイルの供給量に不足が生ずる点に問題点を有す
る。

即ち低速回転状態においては、本来吸入ガス中
に噴霧状態にて混入された状態にあるべきはずの
オイルが吸入回路内を吸入室９に向けて戻る間に
分離してしまい、この分離オイルが液膜状態にて
吸入室９内に送り込まれるという現象を生ずる。
そして液膜状態にて吸入室９内に送り込まれたオ
イルは吸入室９の内壁面に付着するとともに同内
壁面に沿つて流れ落ちて吸入室９の底部に貯溜さ
れることとなるのであるが、上記の様に吸入室９
の底部は圧縮室６，６に連通すべくフロントサイ
ドプレート３Ｆに開口される吸入孔１０ａ，１０
ｂの開口位置よりも下方に位置して設けられてい
る関係上、一たん吸入室９の底部に貯溜されたオ
イルを両圧縮室６，６、特に上方に位置する圧縮
室６に送り込むことは極めて難かしく、必然的に
同圧縮室６に対するオイルの供給量が不足するこ
ととなるのである。

そして圧縮室６に対するオイルの供給量が不足
することに起因して同圧縮室６内の各摺動部にお
けるシール機能が著しく低下することとなるので
あるが、その結果体積効率が低下し、且つ圧縮ガ
スの吐出温度が高くなる等の不具合を招来するこ
ととなるのである。そしてこの様な不具合に原因
してスライドベーン型の回転圧縮機に対する低速
回転時における信頼性が著しく損われているのが
実情である。

考案の目的 本考案は上記の様な従来の実情に鑑みてその改
善を試みたものであつて、本考案の目的は低速回
転状態において、吸入ガス中より分離して液膜状
態にて吸入室内に送り込まれたオイルをフロント
サイドプレートに設けられた吸入孔へ均等に配分
することにある。

考案の構成 即ち本考案は低速回転時に吸入ガス中より分離
して液膜状態となつて吸入室内に送り込まれたオ
イルを吸入室の底部に滞溜させてしまうことな
く、両圧縮室に対してその全量を均等に送り込む
ことが出来る様にしたことをその特徴とするもの
であつて、本考案の要旨は吸入室を二又状に分岐
させて形成し、その先端部に形成するボトム部
を、両圧縮室と連通させるべくサイドプレートに
開口する吸入孔のその下側の端部と相対応させて
設けると共に、吸入室の分岐部分に吸入口と対向
させて分流板を突設する様に構成したことにあ
る。

実施例 以下に本考案の具体的な実施例を図示の図面に
ついて説明する。第１図乃至第４図に表わす各図
面において、１は圧縮機の外殻を構成するハウジ
ングを示す。同ハウジング１は一端に開口部を存
して有底円筒状に形成するリヤハウジング１Ｒ
と、同リヤハウジング１Ｒの開口部を被覆するフ
ロントハウジング１Ｆより成り、リヤハウジング
１Ｒにはシリンダーブロツク２が内嵌され、且つ
同シリンダーブロツク２の両側にはフロントサイ
ドプレート３Ｆとリヤサイドプレート３Ｒが同シ
リンダーブロツク２を挾み付ける如く内嵌され
る。シリンダーブロツク２は前後両端部に開口部
を存して中空円筒状に形成するに同中空部の内壁
面は縦長の楕円形に形成され、その前後両開口部
は上記両サイドプレート３Ｆ，３Ｒによつて遮蔽
される。両サイドプレート３Ｆ，３Ｒ間には駆動
軸４が横架され、同駆動軸４にはローター５が軸
架される。同ローター５は上記シリンダーブロツ
ク２の縦長楕円形に形成される内壁面のその短径
部に対して摺接することが可能な如く設けられ
る。そしてこの様に内壁面の短径部に対してロー
ター５が摺接することにより、同内壁面の長径部
側にはローター５との間に一対の圧縮室６ａ，６
ｂが形成される。又ローター５には５枚のベーン
８が両圧縮室６ａ，６ｂに対して出没自在に嵌挿
される。両圧縮室６ａ，６ｂの一端、即ちロータ
ー５の回転方向に沿う終端部と相対応する位置に
はシリンダーブロツク２の一部を切欠いてリヤハ
ウジング１Ｒの内壁面との間に吐出室１３が形成
され、同吐出室１３と圧縮室６の終端部間は吐出
孔１４によつて連通する如く設けられる。１５は
同吐出孔１４を覆う吐出弁、１６は同吐出弁１５
の開き角度を規制するリテーナーを示す。又リヤ
サイドプレート３Ｒとリヤハウジング１Ｒ間には
潤滑油の分離室１７が形成される。同分離室１７
はリヤサイドプレート３Ｒに開口する吐出ポート
７を介して上記吐出室１３，１３と連通する如く
設けられる。そして又同分離室１７にはリヤハウ
ジング１Ｒ側に吐出管路（図示省略）に接続する
吐出口１７′が設けられる。

一方フロントハウジング１Ｆとフロントサイド
プレート３Ｆ間には吸入室９が設けられ、同吸入
室９にはフロントハウジング１Ｆ側に吸入管路
（図示省略）に接続する吸入口９′が設けられる。
そしてフロントサイドプレート３Ｆには両圧縮室
６ａ，６ｂの始端部と相対応させて吸入孔１０
ａ，１０ｂが開口されるのであるが、上記吸入室
９は吸入室９ａと吸入室９ｂに二又状に分岐させ
て形成される。即ちその一方の吸入室９ａは駆動
軸４の囲繞する如く周方向（第４図において時計
方向）に沿つて円弧状に湾曲させて延設され、そ
の先端部が前記吸入孔１０ａと連通する如く設け
られる。更に詳しくは吸入室９ａの先端部に形成
するボトム部９a′が吸入孔１０ａのその下側の端
部と相対応する位置に臨む如く設けられる。又も
う一方の吸入室９ｂは上記と同様駆動軸４を囲繞
する如く周方向（第４図において反時計方向）に
沿つて円弧状に湾曲させて延設され、その先端部
が前記吸入孔１０ｂと連通する如く設けられる。
更に詳しくは吸入室９ｂの先端部に形成するボト
ム部９b′が吸入孔１０ｂのその下側の端部と相対
応する位置に臨む如く設けられる。そして両吸入
室９ａ，９ｂの分岐部には吸入口９′と対向させ
て分流板１８が突設される。尚吸入室９ａに比べ
て吸入室９ｂ側の流路抵抗が大きいことに起因し
て吸入ガスが吸入室９ａ側により多く流れる関係
上、分流板１８は若干吸入室９ａ側に偏寄させて
設けることが望ましい。又上記実施例において吸
入室９はフロントサイドプレート３Ｆ側に設けら
れているが、リヤサイドプレート３Ｒ側に設ける
ことも勿論可能である。

次にその作用について説明する。

電磁クラツチの接続操作を介して駆動軸４を回
転駆動させることにより、ローター５及びベーン
８の回転作用を介して吸入回路内の吸入ガスを吸
入口９′、吸入室９ａ，９ｂ、吸入孔１０ａ，１
０ｂを経て両圧縮室６ａ，６ｂ内に吸引する作用
が得られる。そしてこの様にして両圧縮室６ａ，
６ｂ内に吸引されたガスは圧縮室６ａ，６ｂ内を
吸入側（始端部）より吐出側（終端部）に向けて
送られる間に次第に圧縮される。そして同圧縮室
６ａ，６ｂ内を終端部迄圧送されたガスは吐出孔
１４、吐出室１３、吐出ポート７を経て分離室１
７に送り込まれ、同分離室１７内においてオイル
が分離された後、吐出口１７′より吐出回路内を
凝縮器方向に向けて送り出す作用が得られる。そ
してこの様な作用が連続的に繰り返されることに
より圧縮作用が得られるのであるが、ローター５
が低速にて回転する状態においては、吸入ガスが
吸入回路内を吸入室９に向けて圧送される間に同
吸入ガス中に噴霧状態にて混入する状態にあつた
オイルが同吸入ガス中より分離して、液膜状態に
て吸入室９ａ，９ｂ内に送り込まれるという現象
を生ずる。そしてこの様に液膜状態にて吸入室９
ａ，９ｂ内に送り込まれたオイルは吸入室９ａ，
９ｂの内壁面に付着するとともに内壁面に沿つて
ボトム部９a′，９b′方向に向けて流れ落ちること
になるのであるが、両ボトム部９a′，９b′はフロ
ントサイドプレート３Ｆに開口する吸入孔１０
ａ，１０ｂのその下側の端部と相対応させて設け
られていることにより、吸入室９ａ，９ｂの内壁
面に沿つてボトム部９a′，９b′迄流れ落ちたオイ
ルは同部に滞溜することなく、吸入ガスのその吸
入圧力によつて吸入孔１０ａ，１０ｂより両圧縮
室６ａ，６ｂ内に送り込む作用が得られる。

又両吸入室９ａ，９ｂの分岐部には吸入口９′
と対向させて分流板１８が突設されていることに
より、吸入ガス及び液膜状態にあるオイルを両吸
入室９ａ，９ｂに対して略均等に分散させて送り
込む作用、特に両圧縮室６ａ，６ｂに対して均等
量のオイルを送り込む作用が得られる。

考案の効果 本考案は以上の様に構成されるものであつて、
上記の様に構成したことにより、吸入ガス中より
分離して液膜状態にて吸入室内に送り込まれたオ
イルを同吸入室内に滞溜させることなくその全量
を両圧縮室内に送り込むことが出来るに至つた。
そしてその結果、分流板の分散作用によつて両圧
縮室に対して均等量のオイルを送り込むことが出
来ることと相まつて両圧縮室の各摺動部に対して
充分なオイルを供給することが出来るに至り、こ
れにより低速回転時における両圧縮室のシール効
果を高め、その体積効率を向上させることが出来
るに至つた。即ち低速回転時における信頼性を増
大させることが出来るに至つた。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本考案に係る圧縮機の側断
面図であつて、第１図は第４図におけるＡ−Ｏ−
Ｂ線断面図、第２図は同Ａ−Ｏ−Ｃ線断面図、第
３図は第１図におけるＤ−Ｄ線断面図、第４図は
同Ｅ−Ｅ線断面図である。第５図及び第６図は従
来構造を表わす図面であつて、第５図は第６図に
おけるＦ−Ｏ−Ｆ線断面図、第６図は第５図にお
けるＧ−Ｇ線断面図である。 １……ハウジング、１Ｆ……フロントハウジン
グ、１Ｒ……リヤハウジング、２……シリンダー
ブロツク、３Ｆ……フロントサイドプレート、３
Ｒ……リヤサイドプレート、４……駆動軸、５…
…ローター、６……圧縮室、７……吐出ポート、
８……ベーン、９……吸入室、９′……吸入口、
９ａ，９ｂ……吸入室、９a′，９b′……ボトム
部、１０ａ，１０ｂ……吸入孔、１３……吐出
室、１４……吐出孔、１５……吐出弁、１６……
リテーナー、１７……分離室、１７′……吐出口、
１８……分流板。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 楕円形に形成する中空部を存して筒状に形成す
   るシリンダーブロツクと、同シリンダーブロツク
   を挾持する前後一対のサイドプレートと、両サイ
   ドプレート及びシリンダーブロツクを覆うハウジ
   ングによつて吸入室、吐出室、分離室を区画形成
   するとともに、シリンダーブロツクの中空部に
   は、ベーンを出没自在に嵌挿するローターを回転
   自在に設けることによつて複数個の圧縮室を形成
   して成る圧縮機において、上記吸入室を二又状に
   分岐させて形成し、少なくともその先端部に形成
   するボトム部をフロントサイドプレートに開口す
   る吸入孔の下側の端部と相対応させて設けると共
   に、吸入室の分岐部分には吸入口と対向させて分
   流板を突設させて成るスライドベーン型圧縮機に
   おける分離オイルの均等吸入機構。