JPH0156018B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は車両用動力舵取装置に関し、殊に比較
的小排気量の車両に適した車両用動力舵取装置に
関する。

〈従来技術〉 一般に、車両用動力舵取装置は内燃機関にて常
時駆動される流体ポンプとパワーシリンダへの圧
油の給排を制御する油圧サーボ弁を備え、さらに
は高速走行時において舵取操作が軽くなりすぎる
のを防止するための車速センサと、これに応答し
て流体ポンプの吐出量を制御する装置をも備えて
いる。このため、動力舵取装置の構造が複雑にな
るとともに高価なものとなり、又流体ポンプを常
時駆動されるものであるからエネルギーのロスが
大きい上、流体ポンプには極めて高い耐久性が要
求される問題があつた。

〈発明の目的〉 そこで本発明は、舵取操作に助勢が必要な時に
のみ流体ポンプを原動機にて駆動させて助勢する
ように構成することにより、エネルギーロスが少
ないとともに流体ポンプにさほどの耐久性を必要
とせず、かつ構造簡単でしかも高速安定性にも優
れた車両用動力舵取装置を提供すること目的とす
るものである。

〈発明の構成〉 本発明の特徴とするところは、一対の吐出口が
パワーシリンダの両圧力室に接続された可逆流体
ポンプを原動機の出力を利用して操舵軸の回転方
向に応じた方向に回転させ、かつ操舵軸の操舵ト
ルクが設定値以下の場合には流体ポンプの回転を
停止するとともに、パワーシリンダの両圧力室を
バイパスするようにしたことにある。

〈実施例〉 以下本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。第１図は、本発明をラツク・ピニオン式動力
舵取装置に適用したもので、動力舵取装置はステ
アリングハンドル１１を上端に組付けた操舵軸１
２と、操舵軸１２の下端に連結した出力軸１３
と、パワーシリンダ１４と、パワーシリンダ１４
内に液密的かつ摺動可能に嵌挿されたピストンロ
ツド１５を備えている。ピストンロツド１５は、
その中間部にパワーシリンダ１４内を液密的に区
画して一対の圧力室R₁，R₂を形成するピストン
１５ａを具えるとともに、その一端にラツク１５
ｂを備えている。このラツク１５ｂは、出力軸１
３の下端に設けたピニオン１３ａと噛合してい
て、出力軸１３の回転によりピストンロツド１５
はパワーシリンダ１４内を図示左右方向へ摺動
し、図示しない操舵リンク機構を介して操舵す
る。かかる動力舵取装置においては、操舵軸１２
と出力軸１３との間に操舵軸１２の操舵トルク及
び回転方向を検知する検知装置２０を備えるとと
もに、動力伝導機構３０を介して原動機４０によ
り駆動される流体ポンプ４２およびバイパス用電
磁切換弁４３を備えている。

検知装置２０は、第２図に示すように、操舵軸
１２の下端に固定した第１平歯車１１ａ及び出力
軸１３の上端に一体的に設けた第１はす歯歯車２
２ａと、両歯車２１ａ，２２ａを連結するトーシ
ヨンバー２３と、車体の一部に固定されたブラケ
ツト２４に上下動可能に支持した可動軸２５と、
可動軸２５上に固定して第１平歯車２１ａと噛合
する第２平歯車２１ｂ及び第１はす歯歯車２２ａ
と噛合する第２はす歯歯車２２ｂを備え、さらに
可動軸２５の両端側にこれらと対向して設けられ
可動軸２５の押動作用にて閉じる一対の常開型ス
イツチ２６ａ，２６ｂを備えている。かかる検知
装置２０においては、操舵軸１２の回転によりこ
れと一体に第１平歯車２１ａが回転し、このトル
クはトーシヨンバー２３を介して第１はす歯歯車
２２ａ及び出力軸１３に伝達される。しかして、
図示しないタイヤの路面抵抗等が小さくてトーシ
ヨンバー２３に殆ど捩れが生じない場合には、第
１平歯車２１ａと第１はす歯歯車２２ａ間に相対
回転変位はない。従つて、この場合操舵軸１２の
操舵トルクは小さくてよく、又第１平歯車２１ａ
及び第１はす歯歯車２２ａは第２平歯車２１ｂ及
び第２はす歯歯車２２ｂを同様に回転させるた
め、可動軸２５は、上下動せず中立位置にあり両
スイツチ２６ａ，２６ｂは開いている。又、タイ
ヤの路面抵抗等が大きくてトーシヨンバー２３に
捩れが生じると、第１平歯車２１ａと第１はす歯
歯車２２ａ間に相対回転変位が生じる。従つて、
この場合操舵軸１２には大きな操舵トルクを必要
とし、又相対回転変位に応じて第１平歯車２１ａ
が第２平歯車２１ｂを回転させ、かつ可動軸２５
を回転させる。この間、第１はす歯歯車２２ａは
停止しているため、可動軸２５と一体に回転する
第２はす歯歯車２２ｂは第１はす歯歯車２２ａの
歯部間を摺動し、可動軸２５を相対回転変位すな
わち操舵トルクに応じて上下動させ、操舵トルク
が所定値に達するといずれか一方のスイツチ２６
ａ又は２６ｂの可動接点を押動してこれを閉じ
る。又、可動軸２５は第１平歯車２１ａと第１は
す歯歯車２２ａ間の相対回転変位が小さくなり操
舵トルクが所定値より小さくなるにつれて中立位
置へ復帰する。なお、本実施例において操舵トル
クの所定値Tsは第３図に示すように、据切り時
又は極低速時に要する操舵トルクより若干低く設
定されている。又、本実施例において可動軸２５
は、ステアリングハンドル１１を左へ操作したと
き上動しかつ右へ操作したとき下動するように構
成されている。従つて、かかる検知装置２０は、
操舵トルクが所定値Tsに達したとき、これを検
知するとともに操舵軸１２（ステアリングハンド
ル１１）の回転方向を検知して、第１図に示す制
御回路４５へ回転方向に応じた回転信号を送る。

一方、前記動力伝導機構３０は第４図に示すよ
うに、原動機４０の出力軸に連結される入力軸３
１と、プーリＰ１，Ｐ２とベルトＶとを介して流
体ポンプ４２の入力軸に連結され入力軸３１と同
一軸線上に配設された駆動軸３２とを備え、一対
の電磁ソレノイドSOL１、電磁ソレノイドSOL
２の作動により、入力軸３１の回転を直接駆動軸
３２に伝達したり、入力軸３１の回転を反転させ
て駆動軸３２に伝達したり、駆動軸３２の回転を
停止したりすることができる。

すなわち、動力伝導機構３０内の入力軸３１に
は一対の同径の歯車ａ，a′が軸方向位置を異にし
て取付けられ、駆動軸３２には歯車ａ，a′よりも
若干大径の歯車ｄが取付けられているとともに、
常時はスプリング３７ａ，３７ｂにより中立位置
に位置し、電磁ソレノイドSOL１、電磁ソレノ
イドSOL２の内の一方の付勢によつて軸方向位
置が上下に変更される可動軸３３が駆動軸３２と
平行に配設され、この可動軸３３には、可動軸３
３が第４図において上昇端もしくは、下降端に位
置した時に前記歯車ａ，a′のいずれかと選択的に
噛合する歯車ｂと、可動軸３３が下降端に位置し
た時に駆動軸３２の歯車ｄと噛合する歯車ｃとが
設けられている。さらに、第５図ａ，ｂに示すよ
うに可動軸３３が上昇端に位置する時に歯車ｂと
噛合する歯車ｅおよび駆動軸３２の歯車ｄと常時
噛合する歯車ｆとを備えた中間軸３４が備えられ
ている。

したがつて、電磁ソレノイドSOL１、電磁ソ
レノイドSOL２のいずれもが付勢されない状態
では、入力軸３１と駆動軸３２との間の伝導は断
たれ、電磁ソレノイドSOL１が付勢されて可動
軸３３が中間位置から下降端に移動すると、歯車
a′，ｂ，ｃ，ｄを介して入力軸３１の回転が回転
方向を変えずに駆動軸３２に伝導され、電磁ソレ
ノイドSOL２が付勢されて可動軸３３が上昇端
に位置すると、歯車ａ，ｂ，ｅ，ｆ，ｄを介して
入力軸３１の回転が反転されて駆動軸３２に伝達
されることになる。

また、流体圧管路４４はパワーシリンダ１４の
両圧力室R₁，R₂に連通し流体ポンプ４２を介装
した給排管路４４ａと、給排管路４４ａに接続さ
れ流体ポンプ４２をバイパスして両圧力室R₁，
R₂内の圧力流体を流動させるバイパス管路４４
ｂとによつて構成されている。流体ポンプ４２は
可逆ポンプで、動力伝導機構３０の駆動軸３２の
回転方向によりその吐出方向が変化する。前記制
御回路４５は検知装置２０から左回転信号が出力
された場合に動力伝導機構３０の電磁ソレノイド
SOL１を付勢して駆動軸３２を原動機４０の出
力軸と同方向に回転させて流体ポンプ４２を例え
ば正転させ、検知装置２０から右回転信号が出力
された場合に動力伝導機構３０の電磁ソレノイド
SOL２を付勢して駆動軸３２を原動機４０の出
力軸と逆方向に回転させて流体ポンプ４２を逆転
させるようになつている。

したがつて、例えばステアリングハンドル１１
の回転が左方向である場合には流体ポンプ４２が
正転してその吐出口がポート４２ａ側となり、又
ステアリングハンドル１１の回転が右方向である
場合には流体ポンプ４２が逆転してその吐出口が
ポート４２ｂ側に変更される。バイパス用電磁切
換弁４３は、検知装置２０からの検知信号に応答
して制御回路４５により作動制御されるもので、
バイパス管路４４ｂに介装されている。このバイ
パス用電磁切換弁４３は、その非作動時第１図に
示すように流体圧管路４４のバイパス管路４４ｂ
を連通させており、検知装置２０から右回転信
号、左回転信号のいずれかが送出された時に作動
し、バイパス管路４４ｂを遮断する。なお、第１
図において符号４６ａ，４６ｂ，４６ｃは共通の
流体タンク、符号４７はリリーフ弁、符号４８
ａ，４８ｂ，４８ｃ，４８ｄはチエツク弁を示
す。

このように構成した動力舵取装置においては、
操舵トルクが設定値Tsより下回つている場合に
は検知装置２０は回転方向信号を発生しないた
め、電磁ソレノイドSOL１、電磁ソレノイド
SOL２のいずれも付勢されず、流体ポンプ４２
は停止し、又バイパス用電磁切換弁４３は第１図
に示す非動作の状態にある。従つて、パワーシリ
ンダ１４の両圧力室R₁，R₂はバイパス管路４４
ｂを介して互いに連動していて、、ステアリング
ハンドル１１を回転操作すればピストンロツド１
５を左右いずれの方向へも摺動することができる
ため、何等助勢されることなく舵取操作が行われ
る。

又、操舵トルクが設定値Ts又はこれより大き
くなると、検知装置２０はこれを検知するととも
にステアリングハンドル１１の回転方向を検知し
て、左回転信号もしくは左回転信号を制御回路４
５に送る。これにより、バイパス用電磁切換弁４
３は作動してバイパス管路４４ｂの連通を遮断す
るとともに、原動機４０の出力により、動力伝導
機構３０の駆動軸３２が正転又は逆転して流体ポ
ンプ４２を正転又は逆転させる。例えば、流体ポ
ンプ４２が正転する場合には、流体ポンプ４２の
吐出口はポート４２ａ側となつてパワーシリンダ
１４の第１圧力室R₁に連通し、かつ第２圧力室
R₂は流体ポンプ４２の吸入口たるポート４２ｂ
側に連通する。このため、ピストンロツド１５は
流体ポンプ４２からの圧力流体により図示左方へ
摺動し、舵取操作が助勢される。これとは逆に、
流体ポンプ４２が逆転する場合には、流体ポンプ
４２の吐出口はポート４２ｂ側となつてパワーシ
リンダ１４の第２圧力室R₂に連通し、かつ第１
圧力室R₁は流体ポンプ４２の吸入口たるポート
４２ａ側に連通する。このため、ビストンロツド
１５は流体ポンプ４２からの圧力流体により図示
右方へ摺動し、舵取操作が助勢される。

なお、上記各実施例においては、検知装置とし
て第２図に示す検知装置２０を採用した例につい
て示したが、本発明においては磁気スケール、歪
ゲージ、ポテンシヨメータ、ロータリエンコー
ダ、発電機等操舵トルクに応じて軸方向又は周方
向に変位してこの変位が所定の値に達したとき電
気信号を発生する適宜の電気的検知手段を採用す
ることができ、又ラツク・ピニオン式動力舵取装
置に限らすリサーキユレーテイイングボール・ス
クリユー式動力舵取装置等にも適用し得るもので
ある。

〈発明の効果〉 以上述べたように本発明においては、一対の吐
出口がパワーシリンダの両圧力室に接続された可
逆流体ポンプを原動機の出力を利用して操舵軸の
回転方向に応じた方向に回転させ、かつ操舵軸の
操舵トルクが設定値以下の場合には流体ポンプの
回転を停止するとともに、パワーシリンダの両圧
力室をバイパスするようにしたので、流体ポンプ
の不要時の駆動によるエネルギーロスを無くすこ
とができるとともに、流体ポンプにさほどの耐久
性を必要としない。又、当該動力舵取装置におい
ては、油圧サーボ弁及び高速走行時における圧力
流体の吐出量を制御する制御装置を必要とせず、
構成が簡単でありかつ安価である。

さらに、ステアリングハンドルが操作されたこ
とに応答して流体ポンプは原動機の回転数で直ち
に回転されるので、電動機によつて流体ポンプを
駆動するものに比べ応答性が高い利点もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る動力舵取装置の概略構成
図、第２図は第１図における検知装置２０の拡大
一部切欠側面図、第３図は車速と操舵トルクの関
係を示すグラフ、第４図は第１図における動力伝
導機構３０の具体的な構成を示す機構図、第５ａ
は第４図におけるＡ―Ａ線断面矢視図、第５図ｂ
は第４図におけるＢ―Ｂ線断面矢視図である。 １１…ステアリングハンドル、１２…操舵軸、
１４…パワーシリンダ、１５…ピストンロツド、
２０…検知装置、３０…動力伝導機構、４０…原
動機、４２…流体ポンプ、４３…バイパス用電磁
切換弁、４５…制御回路。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 操舵機構に対し機械的に連係された操舵軸の
   操舵トルクに応じて変位する可動部材を備えこの
   可動部材の変位が所定の値に達したときに前記操
   舵軸の回転方向に応じた回転方向信号を発生する
   検知手段と、原動機の出力軸に連結される入力軸
   および駆動軸とを有し前記検出手段から信号が送
   出されていない状態では前記入力軸と駆動軸と連
   結を断つとともに方向信号が出力された場合には
   前記原動機の出力軸の回転を利用して方向信号に
   応じた方向に前記駆動軸を回転させる動力伝導機
   構と、前記駆動軸に連結された流体ポンプと、こ
   の流体ポンプの一対の吐出口と前記操舵機構に組
   付けたパワーシリンダの両圧力室とをそれぞれ接
   続する一対の流体圧管路と、この一対の流体圧管
   路間に介装され、前記検出手段から方向信号が出
   力されない間前記パワーシリンダの両圧力室間を
   互いに連通させるバイパス用電磁切換弁とを備え
   たことを特徴とする車両用動力舵取装置。