JPH0154434B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は船舶や海洋構造物の没水部に取り付け
る防食、防汚シートの改良に関する。

腐食および海洋生物付着防止（防食、防汚）の
ために、銅または銅合金製（キユプロニツケル等
の銅一ニツケル合金）の防食、防汚金属板が船舶
や海洋構造物の海水に接する面（すなわち外板）
に用いられているが、これまでは(A)単独の防食、
防汚金属板、あるいは(B)複数の金属板を種々な方
法で接合したいわゆるクラツド鋼が用いられてい
た。これら防食、防汚金属板が船舶や海洋構造物
の外板に取り付けられた場合、次の様な欠点を有
する。

(A) 単独の防食、防汚金属板の場合 １） 鋼に比べて一般に強度およびヤング率が小
さいため、防食、防汚金属板の肉厚を増大させ
る必要がある。

２） 鋼に比べて価格が高い。

３） 鋼に比べて溶接が難かしい。

４） 海水中で電気的に鋼と結合された場合、鋼
に激しい電食が生じると共に防汚性能が低下す
る。

このような欠点があるため薄肉の防食、防汚
金属板を鋼製の外板に有機系接着剤を用いて貼
り付ける方法も提案されている。

５） 室外などで直接、船舶や海洋構造物等への
接着作業を行なうので、有機系接着剤の接着強
度が接着方法、温度、湿度、船舶等の外板の表
面状況等の影響を受けて大きく変動し、期待し
た信頼性が得られない。

６） 接着後、接着剤が硬化するまで時間がかか
り、その間、何らかの方法で防食、防汚金属板
を海洋構造物等の外板に押えつけておかねばな
らない。

(B) クラツド鋼板の場合 １） 海水に接する面の防食、防汚金属が何らか
の理由で局部的に壊れた場合、その下の、基板
である海洋構造物等の外板の鋼に激しい電食が
生じる。

２） ２種以上の金属または合金が存在するため
溶接が難かしい。

３） コストが高い。

本発明の目的は、 １） 船舶や海洋構造物の海水と接する面に、溶
接によつて容易に取り付け可能、 ２） コストが低い、 ３） 電食の発生しない、 ４） 波浪、衝撃力に対して剥離し難い、 ５） シートを構成する各層間の接着強度に信頼
性があり、 ６） 海水中でも補修が可能な、 防食、防汚シートを提供することを目的とするも
のである。

本発明の防食、防汚シートは防食、防汚金属層
一絶縁層一外板相当金属層で一体的に構成したこ
とを特徴とするもので、防食、防汚金属層として
は銅または銅合金等の板を用い、絶縁層としては
この防食、防汚金属層と絶縁層をエポキシ樹脂、
フエノール樹脂やナイロン樹脂等の有機系接着剤
を用いて接着するが、絶縁層自体を有機系接着剤
としてもよい。そしてこの絶縁層（接着剤を含
む）を介して、更に外板相当金属層を設けるが、
この外板相当金属層は海洋構造物の没水部の外板
と同材かほぼ類似材で、前記外板に溶着する際の
溶接性の向上をはかつている。

なお絶縁層と防食、防汚金属層、外板相当金属
層の接着強度を高めるために、後２層の絶縁層に
接する面をシヨツトブラストなどにより粗面にし
てもよい。外板相当金属層の両面は接着、溶接ま
での間の発錆を避けるため、外板との溶接に支障
のない範囲でZnメツキ、アルミメツキ、化成処
理、プライマー塗布等の前処理を行うこともでき
る。

本発明シートは次のような効果を奏するもので
ある。

１） 防食、防汚シートの外板相当金属層を介し
て船体、海洋構造物に取り付けられるので、ボ
ルトやリベツトによる取り付けや、溶接、例え
ばシール溶接や点溶接、更には突合せやすみ肉
溶接、による直接取り付けが可能である。

２） 上記１）の取り付けができるため、波浪の
衝撃力に対しても剥離し難く、海中でも結合で
き補修も容易である。

３） 防食、防汚シートの製造に当つては、屋内
でしかも管理された条件下で接着作業が行なえ
るため、防食、防汚金属層一絶縁層−外板相当
金属層の間の接着強度の信頼性が得られる。し
かも接着剤の選定に対する自由度が増加し高温
での接着も容易になり、大量生産が可能であ
る。

４） 防食、防汚金属層は絶縁層および外板相当
金属層をはさんで船舶や海洋構造物の海水と接
する部分へ接合されているため、船舶や海洋構
造物は電食に対して二重に保護されている。

５） 以上の点からコストが低い。

次に具体例を示して本発明を更に詳細に説明す
る。

実施例 １ 第１図は本発明の防食、防汚シートを海洋構造
物等の外板５に溶着した状況を示す断面図で、第
２図は第１図の―線矢視断面図である。

防食、防汚金属層１は銅合金で製作し、絶縁層
２には絶縁性を有する有機系接着剤を用いて、海
洋構造物の上記外板５と同材の外板相当金属板で
あるシヨツトブラストされた１mm厚さの炭素鋼板
３に該接着剤を塗布後、同炭素鋼板３に上記防
食、防汚金属層１を貼着して防食、防汚シートを
製作した。このようなシートを海洋構造物の外板
５に適正配置して、各シートの炭素鋼板３の外周
をすみ肉溶接により前記外板５部に溶接した。そ
の後、上記各シートの炭素鋼板３間の溶金部３ａ
上部の防食、防汚金属層１間の空部１ａと、絶縁
層２間の空部２ａには、それぞれ上記絶縁性を有
する有機系接着剤を用いて上記の銅合金片からな
る防食、防汚金属層１と同一平面になる如く充填
した。

防食、防汚シートを溶着したので、従来の接着
の場合に比べて接合強度が著しく向上した。

実施例 ２ 第３図が、この実施例を示す図であつて、本実
施例が実施例１と異なる点は、防食、防汚金属層
１と絶縁層２および外板相当金属層３の三層から
なる防食、防汚シートの外周部は外板相当金属層
３ｂの一層のみで構成し、同シートを海洋構造物
等の外板５部に適正配置して各シートの外板相当
金属層３である炭素鋼板３の外周部３ｂをシーム
溶接Ｓにより前記外板５に溶着したことである。

各シートが小さく分割されているので、波浪等
による船体の曲げやねじれ変形に対しても、各シ
ートが追従でき、シートが剥離しにくい利点を有
する。

なお上記防食、防汚シートは、同シートの炭素
鋼板３の外周部３ｂに穴を穿設し、同穴内にリベ
ツトやボルトで船舶等の外板５部に取り付けるこ
ともできる。

実施例 ３ 第４図にこの例の平面図を、第５図は第４図の
Ｖ―Ｖ線矢視断面図である。

第４図および第５図において、防食、防汚金属
層１は、銅、銅一ニツケル合金、銅一マンガン―
アルミニウム合金等で製作し、その厚さは0.5〜
２mm程度である。なお、防食、防汚金属層１には
溶接用の穴４があけられている。

防食、防汚金属層１は絶縁層２と有機系接着剤
で接着されている。絶縁層はゴム板や樹脂板ガラ
スクロスを用いてもよいが、絶縁層２自身が接着
剤であつてもよく、その場合は有機系樹脂、ガラ
ス繊維を含んだ有機系樹脂、金属や無機系物を有
機系樹脂に含浸させても電気抵抗が大きければ絶
縁層２の役目をする。絶縁層厚は0.1〜５mm程度
が一般的である。この場合の電気抵抗は数
100Ω／cm以上であればよい、絶縁層２にも溶接
用の穴４があけられる。

防食、防汚金属層１の溶接用の穴４と絶縁層２
の溶接用の穴４との位置を合わせるため、防食、
防汚金属層１と絶縁層２を接着した後で、パンチ
により穴あけを行なつてもよい。

絶縁層２は本実施例では外板相当金属層である
炭素鋼層３と接着剤で接着される。

穴４を介して炭素鋼層３と外板５の点溶接ｐを
行なう。

なお上記シートの溶接用の穴４を、外板相当金
属層である炭素鋼層３にも穿設して、リベツトや
ボルトを介して船舶等の外板５部に取り付けるこ
ともできる。

本実施例では船舶等の外板相当金属層として炭
素鋼層３を選んだが、これは外板５金属と溶接が
可能ならば、アルミニウムおよびその合金、銅お
よび銅合金、ニツケルおよびニツケル合金、鉄お
よび鉄合金などの金属あるいはその合金を用いる
ことも勿論可能である。また純鉄を選べば、事故
等により防食、防汚金属が船舶等の外板相当金属
板と接触しても、純鉄がまず犠性となつて、船舶
や海洋構造物の電食を避けることができる。

なお、溶接後、防食、防汚シートの溶接用の穴
４はパテまたは防食、防汚塗料などで充填され
る。

本実施例のように本発明による防食、防汚シー
トを、船舶や海洋構造物の海水に接する部分の外
板５に、溶接用の穴４を介して点溶接した場合、
特に次のような効果を発揮する。

１） 防食、防汚シートは船舶の没水部の外板に
溶接されているため、防食、防汚シートと海洋
構造物等の外板５との接着強度に信頼性があ
る。

２） 溶接点を少なくしたい場合は、接着剤によ
つて海洋構造物等の外板５と結合する方法も併
用でき、同外板５からの剥離のおそれが小さく
なる。

実施例 ４ 第６図は本実施例を説明する平面図を、第７図
に第６図の―線矢視断面図を示す。

防食、防汚シートの外板相当金属層１３をシヨ
ツトブラストした後、絶縁層１２を塗装するが、
絶縁層１２塗布前に、線状１４にテープを貼着す
る。テープは溶射に対し、セロテープではまずい
が、ビニールテープ程度であればよい。絶縁層１
２としてはプライマーを用いた。その後、防食、
防汚金属層１１を溶射するが、溶射以外に真空蒸
着などの方法も採用できる。

最後に、上記外板相当金属層１３からテープを
除去すると、絶縁層１２および防食、防汚金属層
１１にはテープ貼着巾の溝１４が形成される。本
例では溝１４を１本にしているが、必要に応じて
複数にすることもできるし交差することもでき
る。

上記のようにして形成された防食、防汚シート
と海洋構造物等の外板１５との溶接は抵抗シーム
溶接Ｒで行なわれ、溶接後、溝１４は防食、防汚
塗料ないしはパテで充填される。もちろん、自己
研磨性防塗料（Self Polish Copolymes）を用い
ることもできる また該シートの外板５，１５への取り付けはリ
ベツトやボルトを介してもよい。

【図面の簡単な説明】

添付の図面は本発明の防食、防汚シートの構成
およびそれを船舶等の外板に取り付けた状態の例
を示す縦断面図および平面図もしくは横断面図で
ある。第１図、第３図、第５図、第７図は縦断面
図であり、第２図は第１図のものの横断面図、第
４図は第５図の平面図、第６図は第７図の平面図
に相当する。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 船舶や海洋構造物の没水部に取り付ける防
   食、防汚シートにおいて、防食、防汚金属層−絶
   縁層−外板相当金属層で一体的に構成したことを
   特徴とする、防食、防汚シート。 ２ 船舶や海洋構造物の没水部に取り付ける防
   食、防汚シートにおいて、防食、防汚金属層−絶
   縁層−外板相当金属層で一体的に構成すると共
   に、同シートの取り付け部は外板相当金属層の一
   層のみで構成したことを特徴とする、防食、防汚
   シート。 ３ 外板相当金属層の一層のみで構成される取り
   付け部がシートの外周部である、特許請求の範囲
   第２項記載の防食、防汚シート。 ４ 外板相当金属層の一層のみで構成される取り
   付け部がシート内の溝である、特許請求の範囲第
   ２項記載の防食、防汚シート。 ５ 外板相当金属層の一層のみで構成される取り
   付け部が、穴である特許請求の範囲第２項、第３
   項または第４項記載の防食、防汚シート。