JP2001081583A - 耐食性金属薄板貼付による防食構造および防食方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼構造物の防食技術において、超長期の耐食
性を維持しつつ施工が容易でかつ安価にできることを特
徴とした鋼構造物の防食構造および防食方法を提供す
る。 【解決手段】 ［１］鋼構造物の鋼材表面を耐食性金属
薄板で被覆する防食構造において、鋼材表面と耐食性金
属薄板の間に防水シートを有する。 ［２］鋼構造物の鋼材表面に、防水シートを貼り付けた
後、耐食性金属薄板で被覆する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、橋梁、鉄塔、高
架水槽、タンク、および海洋構造物等の鋼構造物一般の
防食処理技術に係り、特に鋼構造物の鋼材表面に耐食性
金属薄板を有することにより長期耐久性を高めた防食構
造およびその方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】橋梁、鉄塔、高架水槽、タンク、および
海洋構造物等の鋼構造物は、そのままでは腐食により赤
錆や黄褐色の浮き錆、流れ錆を生じ、景観を損なうばか
りではなく、腐食による肉厚減少に起因して構造物とし
ての強度低下を来たすので、何らかの防食対策が必要と
される。これら構造物の防食対策としては従来、塗装工
法が一般的であり、長期耐久性を高めた重防食塗装も知
られているものの、塗装コストが高い上、耐用年数に限
りがある。しかも、定期的な塗り替えが必要であること
からメンテナンスコストも高いという問題がある。

【０００３】一方、鋼材にＰ，Ｃｕ，ＣｒおよびＮｉ等
の元素を少量添加することにより、大気中において数年
で腐食に対して保護性のある緻密な錆（安定錆）が形成
され、その後の腐食速度が極めて少ない鋼材として耐候
性鋼が知られている。耐候性鋼は、安定錆形成後は無塗
装で永続的に防食効果が持続する、いわゆるメンテナン
スフリー鋼であるので、近年、橋梁や鉄塔等の構造物に
対する採用が増加している。

【０００４】しかしながら、安定錆の形成しにくい部
位、例えば、橋梁の桁端部やフランジ下面、また、海岸
部の海塩粒子飛来環境や融雪塩散布地域では、不安定な
錆が生じるため、防食効果が現われず好ましくない。さ
らに、赤錆や黄錆等の浮き錆や流れ錆を生じて外観上問
題があると共に周囲の環境汚染の原因にもなり、利用可
能な地域が限定されるという問題がある。

【０００５】さらに、耐候性鋼材は表面に安定錆を形成
することによりその耐候性を向上させているため、外観
上の美観を要求される都市部の構造物には敬遠されると
いう問題もあった。

【０００６】これらの問題に対して、鋼構造物の防食対
象面に耐食性のあるチタンの薄板で被覆することによ
り、鋼構造物の防食を行う方法が知られている。チタン
は耐腐食性が高く、防食対象面をチタンで覆うことによ
り理論的には半永久的な防食が可能となる。チタンを防
食対象面に被覆する方法としては、チタン薄板を直接鋼
材表面に溶接する方法、接着剤によりチタンの薄板を貼
り付ける方法、チタン薄板と被防食金属体との間にチタ
ンクラッド材を介して溶接することによりチタンの被覆
を行う方法（特開平７−２７９１９１公報）、チタン薄
板を貼り付ける構造ではなく、チタンクラッド鋼を防食
構造全面に使用する方法（１９９１年発行の「溶接学会
誌」第６０巻、第８号、第３８頁）が知られている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかし、鋼構造物表面
をチタンで完全に覆うことは容易ではない。例えば、チ
タン薄板を直接鋼材表面に溶接すると、溶接部がチタン
と鉄の合金となり強度、耐食性を損なう。接着剤により
チタンの薄板を貼り付ける方法では、チタン薄板の継ぎ
目あるいは端部から侵入する水や腐食性物質により、鋼
構造物の鋼面に腐食を生じ長期の使用に適さない。ま
た、特開平７−２７９１９１公報のチタンクラッド材を
介してチタン薄板を被覆する方法においては、被防食金
属体とクラッド材およびクラッド材とチタン薄板のそれ
ぞれに溶接作業が必要となり、さらに溶接部位の検査等
のため施工コストが高くなるという問題がある。さら
に、特開平７−２７９１９１公報の発明においては、チ
タン薄板の変形を防ぐためには、チタン薄板と被防食金
属体にできた隙間に充填材を注入する必要があり、コス
ト高になり、施工に時間を要する。また、チタンクラッ
ド鋼を防食構造全面に使用すると、価格が非常に高価に
なるという問題がある。

【０００８】そこで本発明は、鋼構造物の防食技術にお
いて、超長期の耐食性を維持しつつ施工が容易でかつ安
価にできることを特徴とした鋼構造物の防食構造および
防食方法を提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決するために、超長期の耐食性を維持しつつ、か
つ、施工が容易でさらに安価にできる鋼構造物の防食構
造について検討を行った。

【００１０】その結果、鋼構造物の鋼材表面を耐食性金
属薄板で被覆する防食構造において、鋼材表面と金属薄
板の間に防水シートを有する構造にすることにより、上
記の課題が解決されることを見い出した。

【００１１】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、以下のような特徴を有する鋼構造物の防食構造
および防食方法である。

【００１２】［１］鋼構造物の鋼材表面を耐食性金属薄
板で被覆する防食構造において、鋼材表面と耐食性金属
薄板の間に防水シートを有することを特徴とする鋼構造
物の防食構造。

【００１３】［２］鋼構造物の鋼材表面に、防水シート
を貼り付けた後、耐食性金属薄板で被覆することを特徴
とする鋼構造物の防食方法。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細を説明する。

【００１５】この発明は、鋼構造物の鋼材表面に耐食性
金属薄板を被覆して防食を行う構造において、鋼構造物
の鋼材表面と金属薄板の間に防水シートを有するもので
ある。

【００１６】鋼材表面と金属薄板の間に防水シートを有
する一実施形態としては、例えば、防水シートを接着剤
あるいは粘着テープ等で接着し、さらに防水シート表面
に金属薄板を接着剤あるいは粘着テープ等で接着する方
法により実現される。

【００１７】鋼材表面に被覆された金属薄板は、継ぎ目
処理および端部処理が施され、鋼材表面に到達する水や
腐食性物質の侵入を極力防止する。さらに、金属薄板の
下層の防水シートにより、仮に金属薄板の継ぎ目および
端部から水や腐食性物質が侵入した場合においても、鋼
材表面への水や腐食性物質の到達を防止する。水や腐食
性物質の侵入が防止されることにより、鋼材表面の腐食
が防止される。更に、金属薄板により水や腐食性物質だ
けではなく紫外線も遮断されるため、防水シート、接着
剤又は粘着剤の経年劣化も抑制され鋼構造物の超長期の
耐久性を確保する。

【００１８】さらに、気温の寒暖差により発生する、鋼
材とその上に貼り付ける金属薄板との熱膨張係数の差に
よって生じる応力を緩和し、金属薄板の剥がれ等の防止
効果を有する。また、鋼構造物の溶接ビードや板厚差に
よる段差等の鋼材表面の凹凸を緩衝する効果を有し、そ
の上に貼り付ける金属薄板の接着力の低下を防止すると
共に、外観上の美観を向上させる効果を有する。

【００１９】なお、金属薄板の貼り付け作業においては
特に高度な技術を要する作業が無く、施工が容易であ
り、安価な施工が可能である。

【００２０】ここに、本発明に係る防食構造の手順の一
例を以下に示す。手順は、防食を行う鋼構造物の鋼材表
面の下地処理を行う下地処理工程、その上に防水シー
トを貼り付ける防水シート貼付工程、さらにその上に
耐食性金属薄板を貼り付ける金属薄板貼付工程、に区
分することができる。以下、各工程ごとにその詳細を説
明する。

【００２１】下地処理工程 防水シート貼付前に、鋼構造物の鋼材表面の下地処理を
行う。下地処理としては、新設の鋼構造物あるいは既設
の鋼構造物で以下のような処理を行う。

【００２２】［新設鋼構造物の場合］黒皮（ミルスケー
ル付鋼板）のまま、ブラスト処理（ＩＳＯ Ｓａ２. ５
あるいはＩＳＯ Ｓａ３相当）、研磨（平滑面）処理、
プライマー塗装（無機ジンクリッチプライマー等のプラ
イマー）処理、塗装（錆止め塗装を含む）処理。

【００２３】なお、これらの処理方法は、単独あるいは
２種以上を組み合わせて実施しても良い。

【００２４】［既設鋼構造物の場合］ブラスト処理（Ｉ
ＳＯ Ｓａ２. ５あるいはＩＳＯ Ｓａ３相当）、２種
ケレン（ＩＳＯ Ｓｔ３相当）処理、２種ケレン（ＩＳ
Ｏ Ｓｔ３相当）＋塗装（錆止め塗装を含む）処理。

【００２５】なお、これらの処理方法は、単独あるいは
２種以上を組み合わせて実施しても良い。

【００２６】防水シート貼付工程 下地処理を行った鋼材表面に、接着剤あるいは粘着テー
プ等を用いて防水シートを貼り付ける。

【００２７】防水シートは、その防水性により水や腐食
性物質の鋼材表面への浸透を防止し、直接的には鋼材表
面の腐食を防止する。

【００２８】また、気温の寒暖差により発生する、鋼材
とその上に貼り付ける金属薄板との熱膨張係数の差によ
って生じる応力を緩和し、金属薄板の剥がれ等の防止効
果を有する。さらに、鋼構造物の溶接ビードや板厚差に
よる段差等の鋼材表面の凹凸を緩衝する効果を有し、そ
の上に貼り付ける金属薄板の接着力の低下を防止すると
共に、外観上の美観を向上させる効果を有する。

【００２９】防水シートの主材料としては、未加硫もし
くは加硫したブチル系ゴムなどのゴム材料、あるいはア
クリル、エポキシ、テフロン、シリコン、オレフィン、
α−オレフィン、ウレタンなどの樹脂材料、またはそれ
らを組み合わせたものが好ましい。特に好ましいもの
は、その価格、水密性、応力緩和効果などの点から未加
硫のブチルゴムである。

【００３０】また、防水シートの防水特性として、吸水
率が１. ０％以下、電気絶縁性としての体積固有抵抗が
１０⁶ Ω・ ｃｍ以上であることが好ましい。

【００３１】さらに、防水シートの形態としては、ゴム
材料あるいは樹脂材料単体のものでも良いが、それらと
独立気泡を有する発泡層、あるいは不織布やメッシュな
どの緩衝性を有する層とを組み合わせた複層シートとす
ることもできる。複層シートとすることにより、鋼材表
面の段差を緩衝する効果が向上する。

【００３２】防水シートの厚さは、０．１〜５ｍｍのも
のが好適である。０．１ｍｍ未満では破れやすく防水性
および施工性に問題があり、５ｍｍを超えるものは重く
なり過ぎ扱いが不便だからである。なお、特に好適なも
のは、０．５〜２ｍｍのものである。

【００３３】防水シートを貼り付ける方法としては、接
着剤を使用する方法、粘着剤を使用する方法、接着剤と
粘着剤を組み合わせて使用する方法、基材に粘着剤を含
浸あるいは塗布した粘着シートまたは粘着テープを使用
する方法がある。また、表面に粘着性を持つ防水シート
を使用してもよい。

【００３４】接着剤としては特に限定されないが、酢酸
ビニル、アクリル、エチレン、ポリアミド、ポリイミ
ド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタ
ン、ユリア、メラニン、フェノール、レゾルシノール、
エポキシ、ポリイミド、天然ゴム、クロロプレンゴム、
ニトリルゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴ
ム、ブチルゴム、α−オレフィン、シアノアクリレー
ト、変性アクリル等の樹脂、またはそれらの組み合わせ
たものを主材料とし、溶剤乾燥型、二液混合反応型、触
媒添加型、湿気硬化型、嫌気硬化型、熱硬化型、ホット
メルト型、感圧型、再湿型等の硬化方法で硬化するもの
が好ましい。

【００３５】なお、接着剤においては、金属に対する接
着性からポリアミド、ポリイミド、エポキシ、シアノア
クリレート系の樹脂を主材料としたものがより好まし
い。

【００３６】接着剤の厚さは特に規定されないが、薄膜
による接着不良、厚膜による内部応力の増加、剥離要因
の増大を避けるため、0.05〜1.0mm であることが望まし
い。

【００３７】粘着剤としては、テープ状、シート状の基
材に粘着剤を含浸あるいは塗布したものを用いるのが便
利である。前記基材としてはゴムあるいは樹脂などを用
いる事ができる。粘着テープは防水シートの端部のみ使
用してもよいし、粘着テープを防水シートの端部のみ使
用しそれ以外の部分に接着剤を使用してもよい。

【００３８】ここで粘着テープとしては、テープ基材表
面に粘着材を塗布したもの、または一体型として形成さ
れたものであり、鋼材表面および防水シートとの粘着強
度が高い材料が好ましい。例えば粘着材テープの基材と
して、ブチルゴム等のゴム材料、アクリル、シリコン、
エチレン、エポキシ等の樹脂材料、またはそれらを組み
合わせたものを材料とすることができ、粘着剤として
は、天然ゴム、スチレン- ブタジエンゴム、ブチルゴ
ム、アクリル系等を用いることができる。また、粘着テ
ープの膜厚は0.5 〜2.0mm 、粘着力としては1kg/cm以上
のものが好ましい。

【００３９】防水シートの継ぎ目における貼付方法を図
１に例示すると共に以下に説明する。なお、防水シート
の継ぎ目の貼付方法としては、水や腐食性物質の侵入を
防げる方法であれば良く、以下に限定されるものではな
い。なお、図中の１は鋼材を示し、２は上述した接着剤
等を示す。

【００４０】ａ．突き合わせ方法 防水シート３を隙間が生じないように突き合わせて貼り
付ける方法。

【００４１】ｂ．突き合わせ＋カバー方法 突き合わせ貼り付けした防水シート３のつなぎ目を架橋
するように、帯状の防水シート４を貼り付ける方法。な
お、帯状の防水シート４を貼り付ける方法としては、防
水シート３と同様に接着剤あるいは粘着剤等を使用する
ことができる。

【００４２】ｃ．重ね合わせ方法 防水シート３同士を５〜１００ｍｍ程度重ね合わせて貼
り合わせる方法。

【００４３】ｄ．ヒートシール方法 上記ｃにおいて、重ね合わせ部の接着剤等の替わりにヒ
ートシールを行う方法。図１で５はヒートシールを行っ
た部分を表す。

【００４４】ｅ．突き合わせ＋粘着テープによる方法 突き合わせ方法において、つなぎ目のみ粘着テープ６を
用いる方法。

【００４５】ｆ．重ね合わせ＋粘着テープによる方法 重ね合わせ方法において、重ね合わせ部のみ粘着テープ
６を用いる方法。

【００４６】鋼材端部においても、鋼材表面が露出しな
いように上記方法を組み合わせて被覆を行う。なお、あ
らかじめプラスティック等でコーナーの形状に合わせた
冶具を用意し、防水シートの上から被せるように接着し
ても良い。

【００４７】金属薄板貼付工程 防水シートの上に接着剤あるいは粘着テープ等を介して
耐食性金属薄板を貼り付ける。接着剤あるいは粘着テー
プは上記で用いた物と同じ物が使用できる。

【００４８】耐食性金属薄板として、例えば、チタン、
チタン合金、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム
合金、亜鉛溶融めっき鋼板、アルミニウム溶融めっき鋼
板、亜鉛- アルミニウムめっき鋼板およびホーロー鋼板
が好ましいが、耐食性金属薄板であれば特に限定されな
い。

【００４９】金属薄板の板厚は、１０μｍ〜１ｍｍ程度
のものが好ましい。１０μm より薄いと施工時に薄板が
破損しやすくなる。1mm より厚いと薄板自身の重量が大
きくなり接着耐久性の信頼性が低下する恐れがあるだけ
ではなく、作業性が悪化し、また、コストが高くなると
いう問題がある。なお、特に好ましいものは、５０μｍ
〜３００μｍ程度のものである。

【００５０】金属薄板の継ぎ目の貼付方法を図２に例示
するとともに以下に説明する。なお、 金属薄板の継ぎ
目の貼付方法としては、水や腐食性物質の侵入を防げる
方法であれば良く、以下に限定されるものではない。ま
た、金属薄板の継ぎ目は防水シートの継ぎ目と重ならな
いように貼り付けるほうが信頼性が向上するため好まし
い。

【００５１】（ａ）突き合わせ方法 金属薄板７を隙間が生じないように突き合わせて貼り付
ける方法。

【００５２】（ｂ）突き合わせ＋カバー方法 突き合わせ貼り付けした金属薄板７の継ぎ目を架橋する
ように、帯状の金属薄板８を貼り付ける方法。なお、帯
状の金属薄板８を貼り付ける方法としては、金属薄板７
と同様に接着剤あるいは粘着テープ等を使用することが
できる。

【００５３】（ｃ）重ね合わせ方法 金属薄板７同士を５〜１００ｍｍ程度重ね合わせ、貼り
合わせる方法。

【００５４】（ｄ）ハゼ折り方法 金属薄板７の端部をハゼ折りにし、かしめる。かしめた
後、はぜ折り部分を倒して折り曲げてもよい。

【００５５】（ｅ）キャップ方法 薄板端部を折り曲げ、拝み継ぎ合わせとし、継ぎ合わせ
部に樋状のキャップ９をかぶせてかしめる。

【００５６】（ｆ１）〜（ｆ４）溶接方法 薄板端部同士の接合部を抵抗シーム溶接又はスポット溶
接で接合する。図２で１０は溶接部分を示す。接合部の
形状は、端部を折り曲げ拝み継ぎ合わせとした形状（ｆ
１）、端部をハゼ折りにした形状（ｆ２）、端部を折り
曲げ拝み継ぎ合わせとし継ぎ合わせ部に樋状のキャップ
９をかぶせた形状（ｆ３）、重ね合わせにした形状（ｆ
４）などがある。なお、ｆ４の場合は、あらかじめ重ね
合わせ部を溶接しておき一体化した金属薄板を用いるこ
とが便利である。

【００５７】ここで、スポット溶接の場合は、あらかじ
め接合部を接着剤により接着してから溶接を行うことも
できる。

【００５８】（ｇ）ろう付け法 ろう付け法は金属薄板の接合部に母材より低い融点を持
つ金属・合金（ろう）１１を接合部の外側から添加し、
ぬれと毛細現象によって接合部すきまに侵入させて接合
する。ろう材の種類としては、銅ろう、黄銅ろう、銀ろ
う、りん銅ろう、金ろう、パラジウムろう、ニッケルろ
う、アルミニウムろう、チタンろうなどがある。この中
で、チタンろう付け用ろう材の種類としては、銀ろう
（Ａｇ−Ｃｕ系、Ａｇ−Ｃｕ−Ｎｉ系、Ａｇ−Ａｌ系な
ど）、アルミニウムろう（純Ａｌ、Ａｌ−Ｍｎ系な
ど）、チタンろう（Ｔｉ−Ｎｉ−Ｃｕ系、Ｔｉ−Ｚｒ−
Ｎｉ−Ｃｕ系など）、ジルコニウムろう（ Ｚｒ−Ｃｕ
系など） などが好ましい。

【００５９】金属薄板の端部で以下のような端部処理を
施すことにより、端部からの水等の浸透をより確実に防
止でき、より耐久性が増し好ましい。金属薄板の端部処
理方法を図３に例示するとともに以下に説明する。

【００６０】（ａ）シーリング材を用いる方法 図３（ａ）に示すように、端部をシーリング材１２によ
って覆い被せるようにシールする。これにより、端部か
らの腐食性物質の侵入を防止する。シーリング材として
はシリコン、変性シリコン、シリコンマスチック、サル
フィド、変性サルフィド、ウレタン、アクリルウレタ
ン、アクリル、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム
等樹脂を主材料とするものが好ましい。

【００６１】（ｂ）カバーによる方法 図３（ｂ）に示すように、ステンレス鋼あるいは耐候性
鋼のカバー１３を金属薄板７の端部を覆うように鋼構造
物１に溶接し、金属薄板７との間をシーリング材１２に
よりシールする。シーリング材としては上記と同じもの
が使用できる。溶接方法としては通常の方法を用いれば
よく、たとえばアーク溶接、レーザー溶接、抵抗溶接な
どが挙げられる。図３で１４はカバー１３と鋼構造物１
の溶接部分を示す。

【００６２】なお、金属薄板の端部での処理方法は上記
に限定されず他の方法で行っても良い。

【００６３】以上により、超長期の耐食性を維持しつ
つ、施工が容易でかつ安価にできる鋼構造物の防食構造
が提供される。また、本発明に係る防食方法が提供され
る。

【００６４】なお、本発明は、新設の鋼構造物の建設に
適用しても良く、また、既設の鋼構造物の補修において
適用しても良い。

【００６５】

【実施例】以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。

【００６６】本発明の実施例として、防水シートの継ぎ
目と金属薄板の継ぎ目を設けた試験材を作成した。表１
に本発明の実施例１〜６および比較例１〜２に係る処理
方法を示す。

【００６７】

【表１】

【００６８】供試鋼材としては、耐候性鋼（２００ｍｍ
×２００ｍｍ×６ｍｍ）を用いて行った。

【００６９】以上のようにして得られた実施例１〜６お
よび比較例１〜２の試験片を、長期耐久性を検証する試
験に供した。

【００７０】試験は、複合サイクル促進耐候性試験装置
を用いて、試験片に、紫外線照射、降雨、塩分飛来を繰
り返し行った。

【００７１】海岸に近い環境で２０年間暴露したことに
相当する期間の後、試験片の評価を行った。評価方法
は、外観調査、金属薄板の剥がれの有無、金属薄板の接
着状況、金属薄板を強制的に剥がしその下の防水シート
の外観調査、さらに防水シートを強制的に剥がし鋼材表
面の外観調査を行った。

【００７２】試験の結果を、表２に示す。

【００７３】

【表２】

【００７４】表２に示すように、本発明の試験片（実施
例１〜６）は、いずれも金属薄板の剥がれは見られず、
金属薄板は強固に接着されており、防水シートの膨れ、
浮き、変色等の異常は無く強固に接着されており、鋼材
表面に腐食は見られなかった。

【００７５】これに対して、比較例１〜２では、薄板の
端部から薄板の剥がれ、浮き、膨れが発生し、金属薄板
端部周辺の鋼材表面に錆の発生が見られた。

【００７６】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ミ
ニマムメンテナンスで超長期の耐食性を維持しつつ施工
が容易でかつ安価にできる鋼構造物の防食構造および防
食方法が提供される。

【００７７】なお、本発明は、新設の鋼構造物の建設に
適用しても良く、また、既設の鋼構造物の補修において
適用しても良い。

【図面の簡単な説明】

【図１】防水シートの継ぎ目における貼付方法の一例を
示す図である。

【図２】金属薄板の継ぎ目の貼付方法の一例を示す図で
ある。

【図３】金属薄板の端部処理方法の一例を示す図であ
る。

【符号の説明】

１ 鋼材 ２ 接着剤 ３ 防水シート ４ 帯状の防水シート ５ ヒートシールを行った部分 ６ 防水性粘着テープ ７ 金属薄板 ８ 帯状の金属薄板 ９ 樋状のキャップ １０ 溶接部分 １１ ろう １２ シーリング材 １３ カバー １４ 溶接部分 １５ チタンクラッド鋼 １６ 塗装

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本田 正春 東京都千代田区丸の内一丁目１番２号 日 本鋼管株式会社内 Ｆターム(参考） 4K062 AA10 EA01 EA20 FA01 GA01 GA10

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鋼構造物の鋼材表面を耐食性金属薄板で
   被覆する防食構造において、鋼材表面と耐食性金属薄板
   の間に防水シートを有することを特徴とする鋼構造物の
   防食構造。
2. 【請求項２】 鋼構造物の鋼材表面に、防水シートを貼
   り付けた後、耐食性金属薄板で被覆することを特徴とす
   る鋼構造物の防食方法。