JPH0152610B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は歯車変速機の同期噛合装置、詳しく
はクラツチハブと該クラツチハブに噛合うクラツ
チスリーブ及びシンクロナイザリングとを備え、
前記スリーブの操作により該スリーブをギヤに同
期させて噛合わせるごとくした同期噛合装置に関
する。

一般に自動車などに用いる歯車変速機には、同
期噛合装置を備え、該装置のクラツチスリーブと
ギヤとの回転数を同期させ、この同期後に前記ス
リーブをギヤに噛合せて、回転動力の伝達を行な
うべくしている。

しかしてこの種同期噛合装置として、従来では
例えば実公昭57−29074号公報に示されるごとく、
コーンクラツチ及びシフトキイーを利用して、前
記スリーブとギヤとの回転数を同期させるべくし
ている。

即ち、従来の同期噛合装置は、第５及び第６図
に示すごとく、シヤフト１上に高低変速用のギヤ
２，２を遊転可能に対向状に支持させ、この各ギ
ヤ２の対向内面側にギヤスプライン２１と円錐状
のクラツチコーン部２２とをそれぞれ一体形成す
ると共に、前記各ギヤ２の中間でシヤフト１上に
クラツチハブ３を一体に嵌着させ、このハブ３の
外周にクラツチスリーブ４を軸方向移動可能にス
プライン嵌合させる一方、該スリーブ４と前記各
ギヤ２との間に、この各ギヤ２のクラツチコーン
部２２に当接するクラツチ面５１をもち、かつ外
周にギヤチヤンフア５２を設けたシンクロナイザ
リング５をそれぞれ介装させている。

また前記クラツチハブ３の外周面に、複数のキ
イー溝３１を形成して、該各溝３１にシフトキイ
ー６を嵌込むと共に、このキイー６には前記スリ
ーブ４の内周面に設けた凹部４１に係合する突部
６１を形成し、該キイー６の内周面に環状バネ７
を介装させて、前記キイー６を半径方向外方に付
勢させ、通常時には前記キイー６の突部６１を前
記スリーブ４の凹部４１に係合させるべくなす一
方、前記シンクロナイザリング５には、前記キイ
ー６の長さ方向一端を受入れ、かつ該キイー６の
幅より広幅とした係合溝５３を形成している。

斯くして前記シヤフト１の回転動力を各ギヤ２
に伝達させることなく、ニユートラル状態に保持
するときには、第５図に示すごとく、クラツチス
リーブ４を各ギヤ２の中間に位置させるのであ
り、このニユートラル状態から前記スリーブ４を
各ギヤ２の何れか一方の方向に移動させて変速さ
せる場合には、次のごとくして行なうべくしてい
る。

即ち、前記スリーブ４を例えば左方向に移動さ
せると、該スリーブ４の移動に伴ない前記キイー
６が一緒に移動して、該キイー６の長さ方向端部
がシンクロナイザリング５に設けた係合溝５３の
端縁に当接され、このリング５が左方向に押動さ
れて、該リング５のクラツチ面５１が前記ギヤ２
のクラツチコーン部２２に当接され、このときリ
ング５がギヤ２に追従されて前記キイー６がリン
グ５の係合溝５３に接当するまでの範囲で回転さ
れると同時に、前記スリーブ４に設けたスプライ
ン４２の端面が前記リング５のギヤチヤンフア５
２に押付けられ、前記リング５のクラツチ面５１
が前記クラツチコーン部２２にさらに強く圧接さ
れて、前記ギヤ２がクラツチスリーブ４の回転に
応じて加減速される。

また前記ギヤ２のクラツチスリーブ４による加
減速作用により、該ギヤ２とスリーブ４との間に
回転差がなくなると、つまり両者の同期が完了す
ると、前記リング５のクラツチ面５１とギヤ２の
クラツチコーン部２２との摩擦力が解消し、前記
リング５のギヤチヤンフア５２がスリーブ４のス
プライン４２により押されて、前記リング５が回
転され、このスリーブ４が前記リング５のギヤチ
ヤンフア５２を乗越えて、前記ギヤ２のギヤスプ
ライン２１に噛合され、前記シヤフト１の回転動
力がクラツチスリーブ４を介してギヤ２に伝達さ
れるのである。

ところで前記同期噛合装置では、各部に高度な
精度と、該各部の緻密な組立とを必要とし、これ
らの要件を具備して始めて前述した同期作用を行
ない得るのであり、特に必要とする条件は次の通
りである。

(1) ギヤ２のクラツチコーン部２２と、シンクロ
ナイザリング５のクラツチ面５１との整合。

(2) クラツチハブ３の外周スプラインと、クラツ
チスリーブ４の内周スプラインとの整合。

(3) シフトキイー６の高さ、幅及び長さ精度。

(4) シンクロナイザリング５の精度と耐摩耗性。

(5) シンクロナイザリング５における係合溝５３
の精度。

(6) クラツチスリーブ４のスプライン４２、及び
シンクロナイザリング５のチヤンフアギヤ５２
におけるチヤンフア角度の精度。

以上のごとく同期噛合装置は、高度な精度をも
つ各部品と、該各部品の緻密な組立とを必要と
し、しかも長期間使用に耐え得る耐久信頼性を必
要とするのであり、仮に前記条件を欠落すると、
次のごとき問題が生じるのである。

例えば、クラツチスリーブ４をギヤ２のギヤス
プライン２１に噛合させ、シヤフト１の回転動力
をクラツチハブ３及びクラツチスリーブ４を介し
てギヤ２に伝達させ、該ギヤ２に噛合う伝動ギヤ
を介して出力系に変速動力を伝達させている場
合、前記ギヤ２及び該ギヤ２に噛合う伝動ギヤに
は、通常ハスバ歯車が使用されるため、軸方向へ
のスラスト力が生じて、各ギヤ２は軸方向にスラ
イドし、このスライドとエンジンの回転変動など
とが相俟つて複雑な動きを生じるのである。

即ち、ギヤ２に形成したクラツチコーン部２２
が軸心に対してミソ摺り運動を起しながら回転し
たりして、これがギヤ抜けの原因となつたり、ま
た前記クラツチコーン部２２とシンクロナイザリ
ング５とが撃突するなどの不都合を生じるのであ
る。

従つて前記不都合を解決すべく同期噛合装置に
は、高度な精度と緻密な組立とが必要で、コスト
の低減化が困難であつた。

特に近年においては、車輌の高速度化に伴ない
前記同期噛合装置への負荷が増大し、該同期噛合
装置の耐久性と信頼性が要求され、かつコストの
低減化が要求されている。

本発明は以上のごとき要求を満足すべくなした
もので、ギヤとシンクロナイザリングとのクラツ
チ形式を平面式となし、かつシフトキイーに代え
てピンなどの連動体を採用し、該連動体を介して
クラツチハブと前記リングとを連動させるべくな
すことにより、同期噛合装置の各構成部品を簡素
化して、該部品の加工及び組立費の低減化ひいて
は同期噛合装置の安価な提供と、耐久信頼性の向
上を行なわんとするものである。

クラツチハブとシンクロナイザリングとを回転
方向に一定範囲相対回転可能に連動すると共に、
前記クラツチスリーブとシンクロナイザリングと
の間に、前記クラツチスリーブの軸方向外側にお
ける内周端部に係合して、該クラツチスリーブの
軸方向移動を前記シンクロナイザリングに伝える
縮径可能な弾性リングを設ける一方、この弾性リ
ングを、前記クラツチスリーブの軸方向移動によ
り前記クラツチスリーブの軸方向外側内周端部に
係合し、該弾性リングに内向きの分力を与えて縮
径させて、前記スリーブとの係合を解除する分力
付与形状とし、且つ前記シンクロナイザリング
を、前記ギヤの端面に対向させて、平面クラツチ
を形成したことを特徴とするものである。

以下本発明にかかる歯車変速機の同期噛合装置
を図面の実施例によつて説明する。

図面に示す同期噛合装置は、シヤフト１上に高
低変速用のギヤ２，２を遊転自由に嵌合させ、こ
のギヤ２，２の中間でシヤフト１上にクラツチハ
ブ３をスプライン結合させると共に、該クラツチ
ハブ３の外周にクラツチスリーブ４を軸方向のみ
移動可能に設ける一方、前記各ギヤ２，２とクラ
ツチハブ３との間には、シンクロナイザリング
５，５を介装させており、これらの基本構造は前
述した従来例と同様であるので、詳説は省略す
る。

しかして前記各ギヤ２とシンクロナイザリング
５とのそれぞれ対向端面を面一状に形成して、こ
れら各ギヤ２と各リング５と対向面に平面クラツ
チ８，８を形成し、該各クラツチ８，８の摩擦力
により前記ギヤ２とリング５との回転を同期させ
るべくなす。

また前記クラツチハブ３の半径方向中間位置に
は、前記シヤフト１と平行に延びる３個の貫通孔
９を形成し、該貫通孔９に円柱状ピンなどの連動
体１０を、両端を前記ハブ３の外方に突出させて
挿通支持させると共に、前記各シンクロナイザリ
ング５の前記ハブ３と対向する内面側に、それぞ
れ前記連動体１０より径大な係合孔１１を形成し
て、該各係合孔１１に前記連動体１０の端部を挿
通させることにより、前記リング５とハブ３とを
連動させ、かつこれらリング５とハブ３とを、前
記連動体１０が係合孔１１の内面に当接するまで
の範囲にわたつて相対回転可能となすのである。

そして前記クラツチスリーブ４と各シンクロナ
イザリング５との間に、断面円形の弾性リング１
２をそれぞれ介装させ、前記スリーブ４の軸方向
への移動時に、該スリーブ４の内周端面に前記リ
ング１２を係合させて一緒に移動させ、この弾性
リング１２を介して前記スリーブ４の軸方向移動
を前記シンクロナイザリング５に伝達すべくなす
と共に、前記クラツチスリーブ４の軸方向移動に
より弾性リング１２に内向きの分力荷重が作用し
て、前記シンクロナイザリング５が前記ギヤ２に
当接したとき、弾性リング１２を前記スリーブ４
の半径方向内方に弾性変位させ、この弾性リング
１２の前記スリーブ４への係合を解除すべくなす
のである。

次に本発明にかかる同期噛合装置の作動状態を
説明する。

先ずシヤフト１の回転動力を変速すべく、クラ
ツチスリーブ４を第１図に示すニユートラル状態
から左方向に移動させると、該スリーブ４の移動
に伴ない弾性リング１２が押動され、このリング
１２を介して前記スリーブ４の軸方向移動がシン
クロナイザリング５に伝達され、該シンクロナイ
ザリング５がギヤ２に接触されて、この両者の端
面に形成する平面クラツチ８，８が当接される。

このとき前記ギヤ２とシンクロナイザリング５
との回転差による、前記クラツチハブ３の連動体
１０が前記リング５における係合孔１１の内面に
当接するまでの範囲で、前記リング５が回転され
る。

またこの場合、前記リング５のハブ３に対する
相対回転により、リング５のギヤチヤンフア５２
とクラツチスリーブ４のスプライン４２とが、第
４図に示すごとく非噛合状態となり、前記スリー
ブ４の押動操作に伴ない前記スプライン４２及び
ギヤチヤンフア５２を介して、前記リング５がギ
ヤ２に強く押付けられ、両者の平面クラツチ８，
８が圧接され、前記ギヤ２とリング５つまりスリ
ーブ４との回転が同期されるのである。

斯くのごとくギヤ２とスリーブ４との回転が同
期されると、前記ギヤ２とリング５間におけるク
ラツチ８，８の摩擦力が解消され、このリング５
のギヤチヤンフア５２が前記スリーブ４のスプラ
イン４２により押されて、前記ギヤチヤンフア５
２及びスプライン４２が整列すべく、前記リング
５が回転されるのであり、従つて前記スリーブ４
は、押動操作に伴ない前記弾性リング１２を内方
に変位させて、前記リング５のギヤチヤンフア５
２を乗越え、ギヤ２のギヤスプライン２１に噛合
されるのである。

斯くして前記シヤフト１の回転動力が、クラツ
チハブ３及びクラツチスリーブ４を介してギヤ２
に伝達されるのである。

以上説明したごとく本発明の同期噛合装置で
は、ギヤとシンクロナイザリングとのクラツチ形
式を平面クラツチとなすと共に、クラツチハブと
シンクロナイザリングとを連動体を介して連動さ
せ、該連動体により前記ハブとリングの両者を一
定範囲にわたつて相対回転可能ならしめる一方、
前記リングとクラツチスリーブとの間に、該クラ
ツチスリーブの軸方向外側における内周端部に係
合して、該クラツチスリーブの軸方向移動を前記
シンクロナイザリングに伝える縮径可能な弾性リ
ングを設ける一方、この弾性リングを、前記クラ
ツチスリーブの軸方向移動により前記クラツチス
リーブの軸方向外側内周端部に係合し、前記弾性
リングに内向きの分力を与えて縮径させて、前記
スリーブとの係合を解除する分力付与形状とし、
且つ前記シンクロナイザリングを、前記ギヤの端
面に対向させて、平面クラツチを形成したから、
従来に較べて次のごとき利点を有するに至つたの
である。

(1) ギヤとシンクロナイザリングとのクラツチ形
式を平面クラツチとしたことにより、従来のコ
ーンクラツチ形式のものに較べて、構成が簡単
で、加工精度及び組立精度が出し易く、高い精
度のものが簡単に得られる。

(2) 前記クラツチハブとシンクロナイザリングと
を回転方向に一定範囲相対回転可能に連動する
と共に、前記クラツチスリーブとシンクロナイ
ザリングとの間に前記弾性リングを設けること
により、従来のシフトキイーを必要とせず、従
つて該キイーを嵌込むべくクラツチハブの外周
にキイー溝を形成する必要がなく、またシンク
ロナイザリングに前記キイーを係合するための
係合溝を形成する必要がないのであり、特に前
記キイー、キイー溝及び係合溝には高度の精度
が要求されたのであるが、本発明ではこれらを
一切必要とせず、つまり加工及び組立に高い精
度を必要とすることなく、正確な作動を行ない
得るのである。

(3) 前記(1)，(2)の効果により、加工及び組立費の
軽減化が可能となり、安価な提供ができるに至
つたのである。

(4) クラツチハブにキイー溝を設ける必要がない
ため、該ハブとクラツチスリーブに設けるスプ
ラインの強度を強化させることができ、従つて
前記ハブ及びスリーブの材料選択の自由度が拡
大し、またシンクロナイザリングにもキイー溝
の必要がなく、且つ平面クラツチなどで形状が
簡単となるため加工性からみて材料選択が容易
となる。換言すれば前記ハブ及びスリーブ、シ
ンクロナイザリングに安価な材料の使用が可能
となつて、同期噛合装置の低廉化が可能となる
のである。

(5) 従来では、ギヤにスラスト方向への荷重が生
じたり、エンジンの回転変動が生じたようなと
き、前記ギヤとシンクロナイザリング間のクラ
ツチ部分に複雑な動きが発生して、該クラツチ
部分の摩耗及び焼損などを招く虞れがあつたの
であるが、本発明では前記のごとくクラツチ部
分に複雑な動きが発生しても、平面クラツチつ
まり接触面積の大きいクラツチにより荷重を受
止めて、前記摩耗及び焼損を未然に防止できる
のである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明にかかる同期噛合装置の縦断面
図、第２図は同要部の分解斜視図、第３図は同要
部の拡大断面図、第４図は作動状態を示す説明
図、第５及び第６図は従来例を示す図面である。 ２……ギヤ、３……クラツチハブ、４……クラ
ツチスリーブ、５……シンクロナイザリング、８
……クラツチ、１０……連動体、１２……弾性リ
ング。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ クラツチハブと該クラツチハブに噛合うクラ
   ツチスリーブ及びシンクロナイザリングとを備
   え、前記スリーブの操作で、該スリーブとギヤと
   を同期させて噛合わせるごとくした同期噛合装置
   であつて、前記クラツチハブとシンクロナイザリ
   ングとを回転方向に一定範囲相対回転可能に連動
   すると共に、前記クラツチスリーブとシンクロナ
   イザリングとの間に、前記クラツチスリーブの軸
   方向外側における内周端部に係合して、該クラツ
   チスリーブの軸方向移動を前記シンクロナイザリ
   ングに伝える縮径可能な弾性リングを設ける一
   方、この弾性リングを、前記クラツチスリーブの
   軸方向移動により前記クラツチスリーブの軸方向
   外側内周端部に係合し、該弾性リングに内向きの
   分力を与えて縮径させて、前記スリーブとの係合
   を解除する分力付与形状とし、且つ前記シンクロ
   ナイザリングを、前記ギヤの端面に対向させて、
   平面クラツチを形成したことを特徴とする歯車変
   速機の同期噛合装置。