JPH0144833Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は円筒形トーシヨナルダンパに係り、特
に内燃機関のクランクシヤフト等の回転軸に取り
付けられて同軸のねじり振動を吸収する円筒形の
トーシヨナルダンパに関するものである。

一般に、内燃機関のクランクシヤフト等は複雑
なねじり振動を受けるため、このクランクシヤフ
ト等に円筒形のトーシヨナルダンパを取り付け
て、該ねじり振動を吸収するようにした対策が考
えられている。そして、このトーシヨナルダンパ
は、クランクシヤフト等の回転軸に固定される内
側の剛性円筒部材と、この部材に対して半径方向
外側に且つ同心的に配置されるダンパマスとして
の外側の剛性円筒部材とを含み、更にこれら２つ
の円筒部材の間に緩衝体としてのゴムなどの弾性
材料からなる円筒状の弾性体が介装されて、この
弾性体により前記ねじり振動が吸収されるように
なつている。

しかしながら、従来のトーシヨナルダンパにあ
つては、ねじり振動の吸収によつて弾性体内に蓄
積された熱は弾性体の大気と接する面積が小さい
ために充分に放散されず、それ故この熱によつて
弾性体の熱劣化が早められて、温度の上昇に従つ
てロスフアクターが小さくなり、以てトルク変動
の吸収動力が早期に低下してしまう問題点があつ
た。

このため、かかる弾性体内部の熱を速やかに外
部へ放散せしめる手段として、実開昭56−151551
号公報には、熱伝導率の高い金属薄板などの放熱
部材がその一部を弾性体の外部へ露出した状態で
弾性体の内部に埋設された構造のものが明らかに
され、また該放熱部材として中空管を埋設するこ
とも明らかにされているのであるが、そこにおい
て、該弾性体はあくまでもクランクシヤフト等の
回転軸と一体に回転するものであるため、放熱部
材も該弾性体の外部へ突出した状態で回転するこ
ととなるところから、点検修理の作業員やドライ
バーが不慮の災害をこうむる虞があり、これが安
全上の重大な問題となつていたのである。

また、目的とする振動減衰のためには、弾性体
には一定のバネ定数が必要とされ、そして一定の
バネ硬さが要請されるのであるが、そのためには
該弾性体の厚みが規制されることとなるのであ
り、それ故前記実開昭56−151551号公報に明らか
にされた如き放熱部材のような剛体を埋設するこ
とが困難となり、また埋設し得たとしても、該放
熱部材と内外の剛性円筒部材との間の弾性体層が
著しく薄くなつて所期の振動減衰効果を達成し得
なくなる問題も内在しているのである。

この考案は、かかる事情を背景として為された
ものであり、回転軸に取り付けられる内側の剛性
円筒部材と、該内側の剛性円筒部材に対して同心
的に且つ半径方向外側に配置された外側の剛性円
筒部材と、これら２つの剛性円筒部材間に介装せ
しめられる弾性円筒部材とを含むトーシヨナルダ
ンパにおいて、トルク変動に基づく捩り振動を吸
収することによつて該弾性円筒部材内に生ずる熱
を効果的に外部へ放出せしめ、以て捩り振動に対
する吸収性能の低下を防止し得るようにした円筒
形トーシヨナルダンパを提供することを目的とす
るものである。

そして、かかる目的を達成するために、本考案
の要旨とするところは、前記弾性円筒部材内部を
貫通してその軸心方向の両端部に開口する、断面
が扁平な形状を呈する貫通孔を複数設け、該弾性
円筒部材に対して圧縮力が作用したときに該貫通
孔が圧潰される一方、該圧縮力が解除されたとき
には該貫通孔が元の形状に復帰せしめられるよう
にしたことにある。

このように、弾性円筒部材内に複数個の偏平断
面の貫通孔を設け、そしてこれに例えば周期的な
圧縮力を加えて、該貫通孔を圧潰し、あるいは元
の形状に復帰せしめるようにすることにより、所
謂呼吸作用によつて弾性円筒部材の内部に発生し
た熱を効果的に外部へ放出せしめ得て、該弾性円
筒部材が異常に高温となるのを有効に防止し得る
のであり、これ故に、弾性円筒部材の内部温度が
上昇することによる捩り振動の吸収性能の低下を
効果的に阻止し得ることとなつたものである。

以下、本考案の実施例を図面に基づいて具体的
に説明することとする。

先ず、第１図、第２図において、１０はＶプー
リ兼用の円筒形状を為すトーシヨナルダンパであ
り、その中央部に位置するプーリ本体２（内側の
剛性円筒部材）は、図示しないクランクシヤフト
に取り付けられて、これと共に回転するものであ
り、同シヤフトに嵌合されるボス部４と、該ボス
部４から半径方向外側に延び出すリブ６と、該リ
ブ６の先端において円筒状をなすハブ８から成
り、またボス部４内周には動力伝達部となるべき
キー溝９が軸心方向に設けられている。そして、
かかるプーリ本体２の外側にはＶベルト駆動用プ
ーリとしての外輪１２（外側の剛性円筒部材）が
配置され、この外輪１２とプーリ本体２との間に
ゴム等の弾性材料からなる弾性体１４（弾性円筒
部材）が介装されているのである。また、外輪１
２には、円周方向に沿つて２条のＶ溝１６，１６
が設けられており、クランクシヤフトからの駆動
力を後続部材に伝達すべきＶベルトがこれに巻き
掛けられるようになつている。

そして、円筒形状を成す弾性体１４は、ゴムな
どの弾性材料からなるものであつて、ハブ８の外
周面に予め加硫接着された状態で外輪１２の内側
に所定の圧入率をもつて圧入され、且つ接着剤に
より接着固定されている。それ故、該弾性体１４
はクランクシヤフトとともに回転するプーリ本体
２の回転運動を外輪１２に伝達するとともに、同
シヤフトの複雑なトルク変動に伴なうねじり振動
を吸収する緩衝体として作用する。

しかも、弾性体１４の内部には、本考案に従つ
てその軸心方向に貫通し、該軸心方向の両端部に
開口する多数の貫通孔１８が設けられており、且
つまた、その貫通孔の断面が円周方向に長軸を持
つ長円形または小判形などの偏平な形状とされて
いるのである。

このように構成されたトーシヨナルダンパ１０
は、慣性体としての外輪１２及び弾性体１４の作
用によつてクランクシヤフトのトルク変動に基づ
くねじり振動を吸収するのであるが、この弾性体
１４は振動減衰昨用をなす過程において内部発熱
する。而して、かかる内部発熱が生じても、弾性
体１４の内部に設けられた偏平な形状の多数の貫
通孔１８の存在により、該弾性体１４の大気との
接触面積が有効に増大させられているので、前記
発生熱は空気中に効果的に拡散させられ得ること
となるのである。しかも、偏平形状の貫通孔１８
が圧縮力の印加、解放によつて所謂呼吸作用を行
なうことにより、該貫通孔１８内の空気は強制的
に更新させられるので、空気中に放散させられる
熱量は格段に増大されるのである。

なお、上述の呼吸作用について、更に詳述する
ならば、前記外輪１２は動力伝達の行なわれる他
の一つのＶプーリの方向へ向けてＶベルトによつ
て張力を与えられるので、弾性体１４も該外輪１
２からその方向へ圧縮力を受けることとなり、し
かも、弾性体１４の最大圧縮を受ける部分の180
度反対側では最小圧縮を受けることとなる。そし
て外輪１２が回転させられるところから、弾性体
１４の一部分は最大圧縮から最小圧縮までに圧縮
力が周期的に変動させられる。即ち、弾性体１４
には外輪１２の回転に応じて周期的な圧縮力が作
用することとなるのである。

そこで、弾性体１４内に設けられた偏平な貫通
孔１８は、弾性体１４の前記最大圧縮時には偏平
なるが故に容易に圧潰、更には密着させられて内
部の空気は放出させられるのであり、最小圧縮時
には元の形状に復帰せしめられ、空気は貫通孔１
８内に吸引されることとなる。即ち、貫通孔１８
は所謂呼吸作用を行なつて、貫通孔１８内の加熱
された空気を排出し、次に新鮮空気を吸入する現
象を繰り返すのであり、これによつて弾性体１４
内部に発生する熱が強制的に且つ効果的に外気中
に放散せしめられ得るのである。

なお、前記偏平断面の貫通孔１８の圧潰は、前
記圧縮力の方向が弾性体１４の半径方向、即ち偏
平断面の長軸に直角な方向またはそれに近い方向
であるときに容易に行なわれるのであり、また圧
潰されるまでは弾性体１４のばね定数は比較的小
さくて変形し易いが、圧潰後は通常穴部が密着さ
せられるので、ばね定数が大となり、変形しにく
くなる。即ち、弾性体１４は圧縮程度によつて２
つのばね定数を有し、貫通孔１８の圧潰までは容
易に変形するが、圧潰後は変形が抑制される特徴
を有するのである。

上述のごとく、本実施例では、弾性体１４内に
多数設けた偏平断面の貫通孔１８に呼吸作用を行
なわせることにより、弾性体１４の内部に発生す
る熱を速やかに放散させて熱蓄積を防止し、弾性
体１４の熱劣化を防止して、ねじり振動を吸収す
る能力を長期にわたり持続せしめることが可能と
なるのであり、それ故に、Ｖベルトにより駆動力
を伝達するＶプーリに効果的にダンパ機能を付加
した円筒形トーシヨナルダンパを提供し得ること
となつたのである。

次に、本考案に係る円筒形トーシヨナルダンパ
の他の実施例を第３図、第４図に基づいて説明す
る。尚、前述の実施例と共通する部分は同一の符
号を付して説明を省略する。

それらの図において、トーシヨナルダンパ２０
を構成する弾性体１４には、その外周面に所定の
金属円筒２２が加硫接着されている。そして、こ
の金属円筒２２の外径は外輪１２の内径よりも圧
入代だけ大きくされ、弾性体１４の内径はプーリ
本体２の外径よりも圧入代だけ小さく構成されて
いる。従つて、プーリ本体２のハブ８と金属円筒
２２との間に弾性体１４を加硫接着せしめ、そし
てこれを外輪１２に圧入することによつて、外輪
１２とプーリ本体２とが一体とされ、以て所定の
トーシヨナルダンパ２０が形成されることとなる
のである。なお、弾性体１４とハブ８、金属円筒
２２との間の結合は接着のみならず、圧着と接着
とが併用されることも可能である。

そして、この弾性体１４内には前実施例と同様
に偏平断面の貫通孔１８が多数形成されており、
それ故外輪１２の回転に応じて貫通孔１８が呼吸
作用を為して弾性体１４内に発生する熱を速やか
に放散させることは前実施例と同様であるが、本
実施例では更に外輪１２と金属円筒２２とを金属
同士のかたいはめあいと為し得て、これにより強
固な結合が可能となり、以て結合のゆるみ等の虞
が全くないなど、特有の効果を奏するのである。

次に、円筒形トーシヨナルダンパの更に別の実
施例を第５図、第６図に基づいて説明する。この
トーシヨナルダンパ３０を構成する弾性体１４に
は、その内周面に所定の金属円筒３２が接着固定
（加硫接着）されており、この金属円筒３２の内
側はプーリ本体２の外側に圧入され、また該弾性
体１４の外側も外輪１２の内側に加硫接着されて
いる。従つて、弾性体１４は加硫接着により外輪
１２と金属円筒３２との間に強固に保持される一
方、プーリ本体２と金属円筒３２とは金属同士の
かたいはめあいによつて強固に結合されるという
特有の効果を奏するのである。なお、その他の部
分の構成及び作用は、当初の実施例と略同様であ
るので符号のみ示して詳しい説明は省略する。

以上の説明において、外輪１２はすべてＶプー
リの例を示したのであるが、本考案は何等これに
限定されるものではなく、平ベルト用のプーリ等
であつても差支えない。また、第１図の弾性体１
４は内周面をハブ８に加硫接着され、外周面を外
輪１２に圧入・接着により固定された例を示した
のであるが、いずれの場合も圧入のみ、または接
着のみとすることも可能である。更に、貫通孔１
８の形状としても、例示の如き篇平円形断面形状
が望ましいものであるが、扁平である限りにおい
て、矩形などの他の形状をとることも可能であ
る。

また、その他、本考案には、その趣旨を逸脱し
ない範囲内において、当業者の知識に基づいて
種々なる変形・改良などを加え得ることは言うま
でもないところである。

【図面の簡単な説明】

第１図、第３図、第５図はそれぞれ本考案に係
る円筒形トーシヨナルダンパの一実施例を示す正
面半截図であり、第２図、第４図、第６図はそれ
ぞれ第１図、第３図、第５図における−断面
図、−断面図、−断面図である。 ２：プーリ本体、８：ハブ、１０，２０，３
０：トーシヨナルダンパ、１２：外輪、１４：弾
性体、１６：Ｖ溝、１８：貫通孔、２２，３２：
金属円筒。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 回転軸に取り付けられる内側の剛性円筒部材
   と、該内側の剛性円筒部材に対して同心的に且
   つ半径方向外側に配置された外側の剛性円筒部
   材と、これら２つの剛性円筒部材間に介装せし
   められる弾性円筒部材とを、含むトーシヨナル
   ダンパにおいて、 該弾性円筒部材内部を貫通してその軸心方向
   の両端部に開口する、断面が扁平な形状を呈す
   る貫通孔を複数設け、該弾性円筒部材に対して
   圧縮力が作用したときに該貫通孔が圧潰される
   一方、該圧縮力が解除されたときには該貫通孔
   が元の形状に復帰せしめられるようにしたこと
   を特徴とする円筒形トーシヨナルダンパ。 (2) 前記弾性円筒部材の内外周面の一方に所定の
   金属筒が接着され、該金属筒を介して、該弾性
   円筒部材が前記内側若しくは外側の剛性円筒部
   材に圧入固定せしめられる実用新案登録請求の
   範囲第１項記載のトーシヨナルダンパ。 (3) 前記内側の剛性円筒部材が回転軸に取り付け
   られるプーリ本体であり、且つ前記外側の剛性
   円筒部材がベルト駆動用の外輪である実用新案
   登録請求の範囲第１項または第２項記載のトー
   シヨナルダンパ。