JPH0143234Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は印刷機において版面へインキを付着さ
せるインキ着ローラの支持構造に関するものであ
る。

印刷機は印刷用の版を周面に装着する版胴を備
えており、版胴上の版面には、インキ壺内からロ
ーラ群を経て転移されてきた印刷用のインキを版
面に付着させる複数個のインキ着ローラが対接さ
れている。このインキ着ローラは、一般にその周
面を対接させる振りローラの両端軸支部に遊装さ
れたローラアームによつて両軸端部を支持されて
おり、その支持構造は従来第１図と第２図とに示
すように構成されていた。すなわち、第１図はイ
ンキ着ローラとその支持部材との斜視図、第２図
はインキ着ローラをローラアームで支持させたと
ころを示す斜視図であつて、軸方向へ往復動する
振りローラ１の両端を軸支する図示しない軸受に
は、左右一対のローラアーム２が遊装されてお
り、このローラアーム２は図示しないエアシリン
ダのピストンロツド作用端に接続されている。各
ローラアーム２には、全体を符号３で示すホルダ
が、その端軸４を回動自在に軸支されており、ダ
ブルナツト式の固定ねじ５で固定されている。こ
のホルダ３の頭部には、端軸４の軸芯に対して偏
心する半円部と側方への開口部とでＵ字状に形成
された切欠き６が設けられており、インキ着ロー
ラ７は、その端軸に内輪を固定されたボールベア
リング８の外輪を切欠き６と嵌合させることによ
つてローラアーム２に支持されている。そして、
インキ着ローラ７は、第２図に示すように、ボー
ルベアリング８を切欠き６の開口部から嵌入させ
たのちピンや蓋体などで切欠き６の開口部を閉塞
することによつて脱落しないように軸支されてお
り、さらに固定ねじ５を弛めてホルダ３を回動さ
せるとその偏心作用によつて振りローラ１に対す
る接触圧が調節される。また、インキ着ローラ７
は、エアシリンダによりローラアーム２を介し図
示しない版胴に対して着脱される。

以上のように構成された従来のインキ着ローラ
支持構造においては、ホルダ３に設けた切欠き６
の半円部をインキ着ローラ７の軸芯と同心状とな
るように開口部および底面を含めてフライス加工
しなければならず、加工がきわめて面倒で精度を
要するものであつた。また、ホルダ３に対するイ
ンキ着ローラ７の装着操作を容易にするために
は、切欠き６とボールベアリング８の外輪との間
に、円周方向およびスラスト方向のすき間を必要
とし、このすき間のためにインキ着ローラ７が振
動したり、振りローラ１の往復動とともに軸方向
へ動いたりしてシヨツク目などの印刷障害が発生
し易いばかりでなく、ボールベアリング８を外輪
外径で支持するようにしたので、内外輪間のスラ
スト方向のアキシヤルすき間をなくすことが不可
能であつた。さらに、振りローラ１に対する接触
圧をかけたまゝインキ着ローラ７を着脱すること
が不可能であるから、折角適正な接触圧が設定さ
れていても、再装着時にこれを再現することがで
きず、再度ホルダ３を回動させて接触圧調節を繰
返さなければならないので、その作業が面倒で長
時間を要しきわめて非能率的であつた。

本考案は以上のような点に鑑みなされたもの
で、インキ着ローラの両端面に設けた凹孔にころ
がり軸受を嵌着し、その内孔へ段部を挿入した支
持ピンを、振りローラの両端軸支部に支持された
ローラアームの遊端側で偏心状に軸支させるとと
もに、この支持ピンをねじ手段でころがり軸受側
へ押圧してインキ着ローラを支持させ、支持ピン
をころがり軸受から退避させてインキ着ローラを
離脱できるようにすることにより、ローラ支持部
材の高精度な加工を容易にしローラと支持部材と
のすき間をなくしてローラの回転精度の向上を計
るとともに、ローラ着脱時にローラ間接触圧の再
現性を確保することを可能ならしめた印刷機にお
けるインキ着ローラの支持構造を提供するもので
ある。以下、本考案の実施例を図面に基いて詳細
に説明する。

第３図および第４図は本考案をドライオフセツ
ト凹版印刷機に実施した例を示し、第３図はこれ
を実施したドライオフセツト凹版印刷機のドライ
版胴とインキ着ローラ装置との側面図、第４図は
第３図のAA展開断面図である。図において印刷
機の左右のフレーム１１には、周面に印刷用の版
が装着されたドライ版胴１２が軸支されており、
その前方にはこれとほゞ同長の振りローラ１３
が、フレーム１１に嵌着された軸受１４に軸支さ
れている。この振りローラ１３は原動側から駆動
されて回転するとともに、その端軸に固定された
一対のカラー１５の間にはころ１６が係合されて
おり、駆動機構でころ１６が往復動することによ
り、振りローラ１３が所定の周期で軸方向へ往復
動するように構成されている。前記左右の軸受１
４はフレーム１１から外方へ突出されていて、こ
の突出部にはほゞ対称形に形成された一対のロー
ラアーム１７，１８が隣接して回動自在に遊装さ
れており、ローラアーム１７とフレーム１１との
間、隣接するローラアーム１７と１８との間、お
よびローラアーム１８と軸受１４に螺入されたキ
ヤツプ１９の鍔との間には、それぞれスラストベ
アリング２０，２１，２２が介装されている。ロ
ーラアーム１７，１８の片方の遊端部には、外周
円２３ａの軸芯Ｆと内周円２３ｂの軸芯F₁とを
図に符号ｔで示すだけ偏心させた偏心軸受２３が
軸支されており、その内側突出部には、これを回
動後に固定するロツクナツト２４が螺合されてい
る。さらに、偏心軸受２３の内周円２３ｂには、
つまみとねじ部とを有する支持ピン２５が摺動自
在かつ回動自在に軸支されており、そのねじ部は
偏心軸受２３に螺合されている。すなわち換言す
れば支持ピン２５は偏心軸受２３を介してローラ
アーム１７，１８に偏心状に軸支されている。２
６は、支持ピン２５を摺動させて位置決めした後
に固定するロツクナツトである。

符号２７，２８で示すものはインキ着ローラで
あつて、それぞれの両端軸の端面に設けられた凹
孔内にはボールベアリング２９が嵌着されてい
て、前記支持ピン２５はその先端小径部をボール
ベアリング２９の内孔へ外方から挿入されてお
り、小径部と大径部との段部でインキ着ローラ２
７，２８の軸方向への移動を規制しているととも
に、ロツクナツト２６を弛めて支持ピン２５を回
動させることにより、支持ピン２５がボールベア
リング２９から抜け出してインキ着ローラ２７，
２８が離脱できるように構成されている。また、
インキ着ローラ２７，２８はその周面を振りロー
ラ１３の周面に対接させているとともに、ロツク
ナツト２４を弛めて偏心軸受２３を回動させるこ
とにより支持ピン２５が偏心回動して振りローラ
１３に対するインキ着ローラ２７，２８の接触圧
が調節されるように構成されている。

このような支持構造によつてローラアーム１
７，１８に支持されたインキ着ローラ２７，２８
は、ローラアーム１７，１８の揺動により版胴１
２上の版に対し着脱自在に形成されているととも
に、ローラアーム１７，１８の他方の遊端部に頭
部を枢着されたばね軸３０は、フレーム１１に植
設されたスタツド３１に摺動自在に挿通されてお
り、その頭部とスタツド３１との間には、インキ
着ローラ２７，２８を版胴１２上の版面へ圧接さ
せる方向の回動力をローラアーム１７，１８に付
与する圧縮コイルばね３２が介装されている。３
３，３４は、ばね軸３０のねじ部に螺合され圧縮
コイルばね３２のばね力を調節したのちこれを一
定に保持するダブルナツトであつて、これには調
節の目安となる目盛が設けられている。

さらに、ローラアーム１７，１８のインキ着ロ
ーラ２７，２８に対する反対側の遊端部には、そ
れぞれピン３５が互に近接しローラアーム１７，
１８の対向面側へ向つて植設されており、各ピン
３５には、ころ３６が回動自在に嵌装されてい
る。ピン３５のインキ着ローラ２７，２８に対す
る反対側には、インキ着ローラ２７，２８の着脱
用駆動源としての油圧シリンダ３７が、進退自在
なアクチユエータ３８の作用端を振りローラ１３
の軸芯へ向けてフレーム１１に固定されており、
そのアクチユエータ３８の先端部には、両方のこ
ろ３６に対接する傾斜面を有するカム３９が一体
形成されている。そして油圧シリンダ３７は、版
胴１２を含む印刷胴群の着脱機構との間を電気的
に接続されており、その着脱動作に連動してアク
チユエータ３８を進退させ、カム３９、ころ３６
およびローラアーム１７，１８を介してインキ着
ローラ２７，２８を版胴１２の版面へ着脱させる
ように構成されている。

以上のように構成されたインキ着ローラ装置に
おいて、印刷作業に先だち図示のようにインキ着
ローラ２７，２８が版胴１２上の版面へ対接した
状態でロツクナツト２４を弛めて偏心軸受２３を
回動させることによりインキ着ローラ２７，２８
と振りローラ１３との接触圧を調節し、また、ダ
ブルナツト３３，３４を弛めてばね軸３０を進退
させることによりインキ着ローラ２７，２８と版
胴１２との接触圧を調節する。そして、手動操作
で油圧シリンダ３７を作動させてそのアクチユエ
ータ３８を伸長させると、カム３９の傾斜面の作
用で両方のころ３６が互に離間し、両方のローラ
アーム１７，１８が圧縮コイルばね３２の弾発力
に抗して揺動することにより、インキ着ローラ２
７，２８が版胴１２上の版面から離脱する。

このように準備したのち油圧シリンダ３７を自
動に切換えて機台を運転すると、印刷胴の胴入れ
が行われるとともに、この胴入れ動作に連動して
油圧シリンダ３７が作動し、アクチユエータ３８
が収縮する。したがつて、カム３９が両方のころ
３６から離間し、ローラアーム１７，１８の保持
が解かれるので、ローラアーム１７，１８は圧縮
コイルばね３２の弾発力によつて互に逆方向へ揺
動し、インキ着ローラ２７，２８が版胴１２の版
面へ圧接される。したがつて、インキ壺からロー
ラ群を経て振りローラ１３へ転移したインキは、
インキ着ローラ２７，２８を経て版胴１２上の版
面へ供給される。

そして、インキ着ローラ２７，２８の洗浄やボ
ールベアリング２９の交換などのためにインキ着
ローラ２７，２８を取外す場合には、ロツクナツ
ト２６を弛め、つまみを把持して支持ピン２５を
回動させることにより、支持ピン２５がボールベ
アリング２９から抜け出し、インキ着ローラ２
７，２８を容易に取外すことができる。そして、
作業後は支持ピン２５を回動させてこれをボール
ベアリング２９の内孔へ挿入し、その段部をボー
ルベアリング２９に圧接させたのち、ロツクナツ
ト２６を締めることにより、インキ着ローラ２
７，２８を容易に装着することができる。この場
合、偏心軸受２３が固定されたまゝであるから、
支持ピン２５を回動させても支持ピン２５の偏心
度すなわち支持ピンの軸芯F₁と振りローラ１３
の軸芯との距離がインキ着ローラ２７，２８の着
脱前後において変化せず、振りローラ１３に対す
るインキ着ローラ２７，２８の接触圧をインキ着
ローラ２７，２８の装着後に再調整する必要がな
い。

なお、本実施例ではインキ着ローラ２７，２８
に嵌着するころがり軸受としてボールベアリング
２９を用いた例を示したが、ローラベアリングで
もよく、また第５図に示すようにスラストベアリ
ング４０を用いれば、支持ピン２５の締め加減が
強過ぎてもボールベアリング２９のように内輪を
押し過ぎる虞がなく安全である。また、本実施例
では偏心軸受２３の外周円２３ａと内周円２３ｂ
とを偏心させた例を示したが、これを無偏心と
し、その代りに支持ピン２５の軸支部軸芯とベア
リング挿入部軸芯とを偏心させてもよい。但しこ
の場合、支持ピン２５のねじ部を別体にして支持
ピン２５の軸支部端面を押圧するようにしなけれ
ばならないし、また、支持ピン２５を回動調節後
に固定する手段を設けなければならない。なお、
この場合には、インキ着ローラ２７，２８の着脱
時には支持ピン２５が回動して偏心量が変化する
ので、振りローラ１３に対するインキ着ローラ２
７，２８の接触圧をその装着後に再現することが
できない。さらに、本実施例は、本考案をドライ
オフセツト凹版印刷機に実施した例を示したが、
印刷機の種類を限定するものではなく、また、ロ
ーラアーム１７，１８の回動手段も、実施例に示
すようなカム３９ところ３６とを用いた手段に限
定するものではない。

以上の説明により明らかなように、本考案によ
れば印刷機におけるインキ着ローラ支持構造にお
いて、インキ着ローラの両端面に設けた凹孔にこ
ろがり軸受を嵌装し、その内孔へ段部を挿入した
支持ピンを、振りローラの両端軸支部に支持され
たローラアームの遊端側で偏心状に軸支させると
ともに、この支持ピンをねじ手段でころがり軸受
側へ押圧してインキ着ローラを支持させ、支持ピ
ンをころがり軸受から退避させてインキ着ローラ
を離脱できるようにすることにより、従来と比較
してローラ支持部材の加工が容易になるので製造
コストを低減させることができるとともに、ロー
ラ支持部材を高精度をもつて加工することがで
き、インキ着ローラの接触圧作用方向ならびに軸
方向のすき間をなくすことができるので、インキ
着ローラの振動がなくなり回転精度が上つて印刷
物の品質を向上させることができる。また、イン
キ着ローラを着脱する場合に支持ピンの偏心度が
変化せず、振りローラに対するインキ着ローラの
接触圧を再装着後において完全に再現することが
できるので、再調整の必要がなく、作業能率を向
上させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は従来のインキ着ローラ支
持構造を示し、第１図はインキ着ローラとその支
持部材との斜視図、第２図はインキ着ローラをロ
ーラアームで支持させたところを示す斜視図、第
３図ないし第５図は本考案に係る印刷機における
インキ着ローラ支持構造の実施例を示し、第３図
はこれを実施したドライオフセツト凹版印刷機の
ドライ版胴とインキ着ローラ装置との側面図、第
４図は第３図のAA展開断面図、第５図は本考案
の他の実施例を示すインキ着ローラ支持部の断面
図である。 １１……フレーム、１３……振りローラ、１
７，１８……ローラアーム、２３……偏心軸受、
２５……支持ピン、２７，２８……インキ着ロー
ラ、２９……ボールベアリング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 両側のフレームに軸支された振りローラと、こ
   の振りローラの両端軸支部に支持されたローラア
   ームと、これらローラアームの遊端側に支持され
   て前記振りローラに対接するインキ着ローラとを
   備えた印刷機において、前記インキ着ローラの両
   端面に設けた凹孔内にころがり軸受を嵌着し、こ
   のころがり軸受の内孔へ段部でインキ着ローラの
   軸方向への移動を規制して外方から挿入した支持
   ピンを、前記ローラアームの遊端側軸孔で偏心状
   に軸支させるとともに、この支持ピンを前記ころ
   がり軸受側へ押圧してインキ着ローラを支持する
   位置と支持ピンから退避させてインキ着ローラを
   離脱可能にする位置との間で進退自在に軸支させ
   たことを特徴とする印刷機におけるインキ着ロー
   ラ支持構造。