JPH0139969B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は黄色系無機顔料に関するものである。 従来から黄色系無機顔料として例えば特公昭35
−10143号公報に記載のようにチタンとアンチモ
ン及びニツケル又はコバルトの酸化物よりなるも
の、又これ等の改質のための添加成分として鉛、
カドミウム、砒素、ベリリウム、ビスマス、錫、
アルミニウム、亜鉛、硅素、燐の一種又は二種以
上を酸化物換算で少量配合し、焼成固相反応し発
色させたもの、又特公昭50−8092号公報に記載の
ように酸化鉛と二酸化チタン、二酸化錫、及び二
酸化ジルコニウムから選ばれた一種の酸化物と、
五酸化タンタル、五酸化ニオブから選ばれた一種
の酸化物との混合物を所定モル比で混合し、焼成
し固溶化したもの、又該明細書中に公知例として
記載されているように、酸化鉛と五酸化アンチモ
ンのほかに発色剤としてではなく安定剤として酸
化鉄、酸化錫などを加えたもの、或いは特公昭55
−8450号公報に記載のようにチタン、バリウム及
びニツケルの各元素の酸化物からなる無機顔料の
製造方法においてメタチタン酸をチタン酸化合物
の原料として使用し従来より焼成温度を下げるよ
うにしたもの等がある。しかしこれ等の或るもの
は配合比が複雑であつたり、原料価格が非常に高
価であつたり、又アンチモンを含むものはその酸
化物の構造によつては毒性のあるものもある。 本願発明者等は種々検討の結果、無毒、無公害
で安定性に優れ、かつ安価な原料を使用し、しか
も従来の黄色系無機顔料と何ら遜色のない顔料が
得られることを見出し本願発明を完成したもので
あつて、その要旨とするところは、チタンの酸化
物及び又は塩と鉄の酸化物及び又は塩とモリブデ
ンの酸化物及び又は塩とを酸化物換算でTiO₂98
〜96mol％、Fe₂O₃1〜2mol％、MoO₃1〜2mol％
の割合で配合し、約800℃〜約1100℃の温度で焼
成し、固溶化して得られるルチル型結晶構造の酸
化物よりなる黄色系無機顔料にある。 本願発明において固溶化とは、本願発明の関係
する固体化学において２種又はそれ以上の結晶化
合物、例えばAO、BO（Ａ、Ｂは金属原子、Ｏは
酸素原子を示す）を適当に組合わせることによ
り。（AxBy）Ｏ〔ｘ、ｙは原子数を示す〕なる組
成の固相の溶体を得ることをいうが、本願発明
は、量子論及び量子力学の基本原理から原子間結
合力は原子の核外電子の性質によるものであると
いう事実に基づき、その性質を応用して、ルチル
型の結晶構造を構成するTiO₂中の一部のTiを
3Ti⁴⁺4Fe³⁺、3Ti⁴⁺2Mo⁶⁺のように鉄とモリ
ブデンで置換したものが同じルチル型構造を有
し、その結晶粉末が黄色を呈することを見出し発
明を完成したものである。 上記において本願発明者等は発明に係る固溶体
の構造がルチル型を主体としたもので、これに付
随的に擬ブルツカイト型が存することはＸ線解析
により確認したが、ルチル構造のどの位置に鉄及
び又はモリブデンが配置されているかまでは確認
していない。チタン酸化物中のチタンを鉄及び又
モリブデンで置換した場合、ルチル型構造に限り
黄色系顔料として妥当なものが得られ、ルチル型
でない場合は黄色とはならない。即ち鉄及び又は
モリブデンは無限にチタンと置換し得るものでは
なく、これらが多くなるとルチル型構造の一部が
破壊され擬ブルツカイト型構造、例えばFe₂TiO₅
となる。つまり黒色の複合固溶体が形成される。
したがつてチタンの単一固溶体のみでなく、上記
のような複合固溶体が多く形成されるにしたがつ
て、得られる顔料は次第に褐色から黒色を呈する
ようになる。 本願発明は上述から明らかなように酸化チタン
の結晶相を母格子とし、これに発色剤として新規
な酸化鉄及び又は酸化モリブデンを固溶化させた
ものであつて、その結晶構造はルチル型をなして
いる。又色相は上述のTiO₂98〜96mol％、
Fe₂O₃1〜2mol％、MoO₃1〜2mol％の範囲内で酸
化鉄、酸化モリブデンの量が少なくなるにつれて
レモン黄色となり、又上記範囲で酸化鉄、酸化モ
リブデンの量が多くなるにつれて赤味が増しオレ
ンジ黄となる。さらに上記範囲を越えて多くなる
と前述したようにルチル型固溶体の他に擬ブルツ
カイト型複合固溶体を生成し、色相は褐色が強く
なり除々 に黒色へと変化する。したがつて黄色系無機顔料
として最も適した配合比は上述の範囲にあること
が好ましい。 もつとも使用目的によつては上記範囲外でも使
用し得ることはいうまでもない。又焼成温度は
800〜1100℃の温度範囲内で完全に所望の固溶化
が行われるので、この温度範囲で焼成することが
必要であるが、温度も色相に影響するもので上記
温度範囲の低温側ではレモン黄、高温側ではオレ
ンジ黄となる傾向がある。したがつて上記配合比
及び焼成温度を適当に選定することにより所望の
色相の黄色系無機顔料を得ることができる。 以下実施例に基いて本発明を詳述するが、本発
明は実施例に限定されるものでないことはいうま
でもない。 実施例 １ 原料の配合比（mol％） 酸化鉄（Fe₂O₃） 1.7 酸化モリブデン（MoO₃） 1.7 酸化チタン（TiO₂） 96.6 上記原料を混合機で充分混合した後、アルミナ
坩堝に投入し、電気炉で常温から1000℃まで昇
温、約２時間保持し、徐冷後粉砕することにより
黄色系無機顔料が得られた。 実施例 ２ 原料の配合比（mol％） 水酸化鉄（Fe₂O₃として） １ モリブデン酸アンモン（MoO₃として） １ 酸化チタン（TiO₂） 98 上記原料を混合機で充分混合した後、アルミナ
坩堝に入れ、電気炉で常温から900℃まで昇温、
約３時間保持し、徐冷後、粉砕することにより黄
色無機顔料が得られた。又徐冷後溶解性物を水洗
し、濾過、乾燥、粉砕することによつても同様の
黄色系無機顔料が得られた。 実施例 ３ 原料の配合比（mol％） 酸化鉄（Fe₂O₃） 1.5 酸化モリブデン（MoO₃） 1.0 酸化チタン（TiO₂） 97.5 上記原料を混合機で充分混合した後、アルミナ
坩堝に投入し、電気炉で常温から1000℃まで昇
温、約２時間保持し、徐冷後粉砕により黄色系無
機顔料が得られた。 実施例 ４ 実施例１及び実施例３の方法で、下記の配合比
で分光反射率の測定試料を作製した。

【表】 上記試料により測定した分光反射率曲線は第１
図に示す通りであつて、いずれも紫外部からかな
り強い吸収が可視部約420mμ附近までくい込み、
これより長波長側では反射率は大となり、約
700mμ附近でほぼ一定の値（83〜90％）となる。
Fe₂O₃、MoO₃を増すと可視部全域で、一様に吸
収が強くなる。色調はからにかけてFe₂O₃、
MoO₃の合計量が増すにしたがつてオレンジ色が
強くなる、又実施例３（試料５）のようにFe₂O₃
とMoO₃のバランスがFe₂O₃＞MoO₃の場合には
反射率は小さくなる。 実施例 ５ 実施例４の試料No.、、、の色調は、測
定の結果（三属性による色表示〔JIS―Z8701に
よる〕）次のとおりであつた。 色相Ｈ、主波長Ｗ（nm） 明度Ｖ、純度ｐ(%) 彩度Ｃ、 試料No.2.50Y 8.27／7.94 Ｗ＝578.1 Ｐ＝56.4 〃1.96Y 8.10／8.10 Ｗ＝578.9 Ｐ＝58.9 〃1.25Y 7.85／8.39 Ｗ＝579.5 Ｐ＝60.2 〃0.63Y 7.68／8.53 Ｗ＝580.5 Ｐ＝62.5 実施例 ６ 本願発明に係るものは、固溶化反応を起こす条
件内であれば、焼成温度を調整することにより、
色調の調整を図ることができる。 実施例１の配合比のものを温度条件のみを850
℃と1000℃とし、焼成した場合の色調の変化を次
に示す。 焼成温度 色 調 850℃ 8.69Y 8.31／7.90（黄） 1000℃ 0.63Y 7.68／8.53（濃黄） 以上の次第で本発明によるときは、顔料がチタ
ン、鉄、モリブデンの酸化物を含有成分としてい
るため、無毒、無公害であり、しかも高温で焼成
されているため光、熱、薬品等に対し非常に安定
なものであるので、巾広い分野で活用することが
できる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の黄色系無機顔料（試料〜）
の分光反射率曲線を示す図である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ チタンの酸化物及び又は塩と鉄の酸化物及び
   又は塩とモリブデンの酸化物及び又は塩とを酸化
   物換算でTiO₂98〜96mol％、Fe₂O₃1〜2mol％、
   MoO₃1〜2mol％の割合で配合し、約800℃〜約
   1100℃の温度で焼成し、固溶化して得られるルチ
   ル型結晶構造の酸化物よりなる黄色系無機顔料。