JPH0120061Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は強制冷却鋳造用傾動注湯装置に関す
る。

〔従来の技術〕

鋳造欠陥等のない信頼性のあるアルミニウム合
金鋳物、例えば、シリンダヘツド等を製造するた
めには、溶湯の凝固が迅速に行われ、また溶湯が
指向性凝固をすることが望ましい。従来、主に重
力鋳造法や低圧鋳造法においては、金型を水冷あ
るいは空冷することにより溶湯の凝固を促進する
ことが行われている。しかし、この場合には金型
の過冷却により注湯時に湯回り不良が生じないよ
うに金型温度を比較的厳格に調整する必要がある
が、金型温度は鋳造サイクルと共に周期的に変動
するため、金型の温度制御には比較的高度な制御
技術が必要である。また、金型に冷却手段を組み
込むため金型構造が複雑化し、金型の費用がアツ
プする。

また、鋳造欠陥をなくすために指向性凝固を行
わせるべく押湯の設置場所や形状、容量等を経験
的に選択設定することが行われている。しかし、
鋳物の形状的制約により、押湯の設置場所や形
状、容量等の選択設定には限界があり、押湯のみ
によつて良好な指向性凝固を行わせることが不可
能な場合がしばしば生じる。

更に、従来の方法では溶湯の凝固速度が遅く、
得られた鋳物の機械的強度が劣る。

そこで、本件出願人は、鋳造時鋳物に余肉部を
設け、この余肉部を強制冷却することにより指向
性凝固を促進する鋳物直冷式鋳造方法を提案した
（特開昭57−109559号公報）。この鋳物直冷式鋳造
方法により、指向性凝固が促進され、鋳物の高品
質化が図れると共に、鋳造サイクルの短縮化が図
れるという優れた効果が得られた。

また、本件出願人は、鋳型のキヤビテイに管部
材を配置し、この管部材に冷却媒体を通すことに
より溶湯を強制冷却して凝固を速める強制冷却鋳
造法を提案した（特開昭58−86966号公報）。この
強制冷却鋳造法により、溶湯の凝固速度が速くな
り、得られた鋳物の機械的強度が向上すると共
に、鋳造サイクルの短縮化が図れるという優れた
効果が得られた。

しかしながら、上記鋳物直冷式鋳造方法では、
強制冷却のために鋳物に余肉部を設けたため、鋳
物の歩留りが悪くなり、また鋳造後余肉部を除去
するのに時間が掛かるという問題がある。

また、上記強制冷却鋳造法においては、シリン
ダヘツド等の大物部品を鋳造する際には、形状に
よつては十分に指向性凝固を図れないという問題
がある。

そこで、更に本件出願人は、上記問題を解決す
るため、従来からしばしば用いられている冷し金
を指向性凝固に利用すると共に、溶湯により鋳ぐ
るむ管部材を強制冷却に利用する強制冷却式鋳造
方法を提案した（未公知）。

〔考案が解決しようとする問題点〕

ところで、上記２件の強制冷却鋳造法において
は、冷却媒体を通すために管部材を用いる。この
管部材は、鋳型内の所定位置に精度よく位置決め
されないと製品仕上がり形状に支障を与え、また
管部材に冷却ノズルが精度良く挿入されないと冷
却媒体が漏れる等の不具合を起こし易い。このた
め、管部材を鋳型内に迅速に、かつ正確に支持す
る工夫が望まれていた。

また、定盤と冷却プレート本体による鋳型のク
ランプ、注湯、強制冷却等の各工程を迅速、正確
に行なえる強制冷却鋳造装置の開発が望まれてい
た。

〔問題点を解決するための手段〕

かかる要望は、本考案によれば、次に述べる強
制冷却鋳造用傾動注湯装置によつて達成される。

即ち、本考案の強制冷却鋳造用傾動注湯装置
は、固定フレームと、この固定フレームに軸支さ
れ傾動駆動給動手段により所定角度傾動自在とさ
れる傾動フレームとを有し、この傾動フレームに
より郭定された空間には、鋳型を取り付けた定盤
が搬入、搬出自在とされ、傾動フレームの下方で
搬入された定盤と略同じ高さの部分に、搬入され
た定盤のラフな（仮の）位置決めを行うストツパ
と、傾動時定盤を支持する支持手段が取り付けら
れ、一方、傾動フレームの上方には、定盤と冷却
プレート本体の位置決めと鋳型の押圧支持および
管部材と冷却ノズルの位置決めを行うクランプ手
段が取り付けられており、また傾動フレームの側
部には鋳型に注湯するための注湯容器が取り付け
られ、更に傾動フレームの底部下方には、冷し金
冷却用の冷却手段および冷却媒体を受ける冷却媒
体槽が設けられていることを特徴としている。

〔作用〕

本考案の強制冷却鋳造用傾動注湯装置によれ
ば、まず鋳型が設置された定盤が搬送ローラ等に
より、傾動フレーム内に搬入される。なお、この
鋳型は定盤に設けられた位置決めピンにより支持
されると共に、定盤には鋳型の製品キヤビテイに
面して冷し金が取り付けられ、また製品キヤビテ
イを挿通して溶湯を強制冷却するための管部材が
取り付けられている。搬入された定盤は、ストツ
パにより定盤の搬入、搬出方向がラフに位置決め
され、ガイドローラ等の支持手段により搬入、搬
出方向と直行する方向が支持される。次いで、傾
動フレームの上方からクランプ手段が下降する。
このクランプ手段により、定盤と冷却プレート本
体の位置決めと傾動しても鋳型がずれないよう
に、かつ注湯時上型と下型の合わせ面から溶湯が
漏れないように、強固に鋳型が保持されると共
に、管部材が冷却ノズルと精度よく嵌合する。ク
ランプ完了後、傾動駆動手段を作動させることに
より、傾動フレームを所定角度傾動させる。傾動
させた状態で注湯容器に所定量の溶湯を注ぐ。続
いて、傾動駆動手段を作動させて傾動を解除する
と、傾動フレームと定盤（鋳型）と注湯容器が同
時に傾き、鋳型の製品キヤビテイ内に溶湯が注ぎ
込まれる。この注湯完了直後、管部材を介して冷
却ノズルから冷却媒体を流すことにより、更には
冷し金を冷却することにより溶湯の強制冷却を行
う。溶湯凝固後、クランプを解除し、定盤を次の
工程へ搬出する。

〔実施例〕

次に、本考案の実施例を図面を参考にして説明
する。

ここで、第１図〜第３図は本考案の実施例に係
る強制冷却鋳造用傾動注湯装置を示す正面図であ
り、第１図はクランプ前の状態を、第２図はクラ
ンプ時の状態を、第３図はクランプ後傾動した状
態を示す。第４図は本考案の実施例に係る強制冷
却鋳造用傾動注湯装置内に搬入する鋳型付き定盤
を示す断面図である。

まず、傾動フレームに搬入される鋳型付き定盤
について説明する。

第４図において、１は矩形平板状の定盤であ
り、この定盤１上には、３本の位置決めピン２，
３，３が立設、固定されている。この３本の位置
決めピン２，３，３は、定盤１上に任意に形成し
た仮想の２等辺三角形の各頂点に当たる位置に設
けられ、２つの等辺が交わる頂点に当たる位置の
位置決めピンは、断面形状が円形の丸ピン２とさ
れ、他の２つの位置決めピンは、断面形状が矩形
の角ピン３，３とされている。そして、各位置決
めピン２，３，３の下部には、鋳型の水辺方向の
位置決めをするための鋳型水平決め台座４が設け
られている。なお、丸ピン２と角ピン３は、それ
ぞれ先端に行くほど径が小さくなつた円錐、角錐
形状とされる。

また、定盤１の長手方向の端部近傍には、一対
のガイドピン５が取り付けられている。更に、こ
の定盤１には、溶湯を強制冷却するために、冷し
金と管部材を取り付けるための孔が設けられてい
る。本実施例では、冷し金用孔６と管部材用孔７
を各５個ずつ設け、冷し金用孔６に冷し金８を嵌
挿した。

この定盤１の位置決めピン２，３，３には、鋳
型としての砂型９が挿入され、位置決め、型合わ
せが行われる。この砂型９は上型９ａと下型９ｂ
からなり、この上型９ａと下型９ｂには、それぞ
れ位置決めピン２，３，３に対応する位置に位置
決めピン穴１０が設けられている。この位置決め
ピン穴１０の丸ピン２に対応する穴は、略丸ピン
と同じ大きさとされ、角ピン３に対応する穴は、
定盤１の短手方向は角ピン３と同じ長さであり、
長手方向は角ピン３より長く形成された断面略長
穴形状とされている。また、砂型９には、管部材
を挿通するための管部材用穴１１が設けられてい
る。この管部材用穴１１には管部材１２が挿通さ
れる。この管部材１２は下端を定盤１に取り付け
られた断面三角形の受台１３によりその稜線に当
たる部分で支持される。

次に、強制冷却鋳造用傾動注湯装置について説
明する。

第１図において、１４は略矩形に枠組みされ床
に固定された固定フレームであり、この固定フレ
ーム１４の上には傾動フレーム１５が載置されて
いる。この傾動フレーム１５は固定フレーム１４
に回転軸１６を介して軸支され、この回転軸１６
とは反対側に当たる位置に、傾動駆動手段として
の傾動シリンダ１７が固定フレーム１４の一部に
回転可能に取り付けられており、傾動シリンダ１
７のロツド先端は傾動フレーム１５の一部に接続
されている。このため、傾動フレーム１５は回転
軸１６を中心として、傾動シリンダ１７により所
定角度傾動自在とされる。

傾動フレーム１５により郭定された空間には、
前述した鋳型付き定盤１が搬入、搬出される。傾
動フレーム１５の下方には、搬送ローラ１８が設
けられ、定盤１はこの搬送ローラ１８上を移送さ
れる。また、定盤１の搬入、搬出方向に沿つて、
定盤１の搬入、搬出と直交する方向の動きを規制
する支持手段としてのガイドローラ１９が設けら
れ、更に定盤１と略同じ高さ位置には定盤１の動
きを止めるストツパ２０が進退自在に取り付けら
れている。

一方、傾動フレーム１５の上方にはクランプ手
段２１が取り付けられている。このクランプ手段
２１について説明する。傾動フレーム１５の上部
には、クランプシリンダ２２が下方に向かつて垂
直に取り付けられ、このクランプシリンダ２２の
先端にはクランプ板２３が取り付けられている。
このクランプ板２３内には支持ピン２４が挿通さ
れており、この支持ピン２４により冷却プレート
本体２５が浮動状態で支持される。この冷却プレ
ート本体２５には、定盤１側でガイドピン５に対
応する位置にガイドブツシユ２６が設けられ、ま
た鋳型９を押圧支持する押圧手段２７が取り付け
られている。また、砂型９の管部材用穴１１に対
応する位置には、管部材１２を通すための孔が設
けられている。この孔に対応して、冷却プレート
本体２５の上面側には冷却ノズル用スリーブ２８
が取り付けられ、このスリーブ２８の上部にはス
プリングのセツトと冷却ノズル本体上部の支持ガ
イドをするために保護ケース２９が取り付けられ
ている。このスリーブ２８内には、冷却ノズル３
０が摺動自在に嵌挿されている。この冷却ノズル
３０は冷却媒体を導く導管３１と接続されてい
る。冷却ノズル本体の中央近傍にフランジ部を有
し、冷却ノズル３０の外周でフランジ部と保護ケ
ース２９の間には、圧縮スプリング３２が挿入さ
れている。冷却ノズル３０の先端は円錐形状とさ
れ、冷却ノズル３０の本体の径の大きさは、管部
材１２の径と略同じとされている。このため、冷
却ノズル３０の先端部が管部材１２に挿入される
と、先端部が完全に挿入された状態で管部材１２
と冷却ノズル３０が当たることになる。なお、導
管３１は冷却媒体供給ヘツド３３と接続されてい
る。

傾動フレーム１５の側部には、先端を鋳型９の
注湯口に向けた状態でペリカンのくちばし状の注
湯容器３４が取り付けられている。この注湯容器
３４内には、ノロ取り用の板堰３５が設けられて
いる。

また、傾動フレーム１５の底部の下方に当たる
固定フレーム１４には、冷却媒体用の冷却媒体槽
３６が設けられ、冷却媒体排出管３７により冷却
媒体槽３６内の冷却媒体は系外へ排出される。更
に、この冷却媒体槽３６内には、冷し金８を冷却
する冷却手段としての冷却ノズル３８が設けられ
ている。

次に、本実施例の強制冷却鋳造用傾動注湯装置
の作動を説明する。

鋳型９、冷し金８、管部材１２が取り付けられ
た定盤１が搬送ローラ１８により送られて傾動フ
レーム１５内に搬入される。この定盤１は側部を
ガイドローラ１９によつて案内され、所定位置で
ストツパ２０により止まり、ラフな（仮の）位置
決めがなされる。ラフな位置決め完了後、上方ク
ランプ手段２１が作動する。即ち、クランプシリ
ンダ２２が作動し、冷却プレート本体２５を下降
させる。すると、ガイドブツシユ２６とガイドピ
ン５が嵌合し、冷却プレート本体２５と定盤１の
位置決めがなされると共に、冷却ノズル３０の先
端が管部材１２に入り、嵌合される。同時に、押
圧部材２７により鋳型９の上面が押圧支持され
る。この結果、第２図に示す状態となる。

続いて、傾動シリンダ１７を作動させ、第３図
に示すように、傾動フレーム１５を回転軸１６を
中心として、注湯容器３４の上面が略水平になる
位置まで傾動させる。この状態で、注湯容器３４
に所定量の溶湯を注ぐ。次いで、再び傾動シリン
ダ１７を作動させ、傾動を解除すると傾動フレー
ム１５と注湯容器３４が同時に傾き第２図の状態
に戻る。この傾動移動過程において、注湯容器３
４内の溶湯は、ノロ取り用板堰３５により溶湯表
面の不純物（酸化膜等）が除かれ、清浄な溶湯の
みが鋳型９の製品キヤビテイ内に注ぎ込まれる。
注湯完了直後に、冷却媒体供給ヘツド３３から冷
却媒体が供給され、冷却ノズル３０を介して管部
材１２内を流れる。また、下方の冷却ノズル３８
から冷却媒体が冷し金８に向かつて吹きつけられ
る。この結果、溶湯が指向性凝固し、品質的に優
れた製品が造られる。なお、管部材１２を通つた
冷却媒体および冷し金８に吹きつけられた冷却媒
体は、冷却媒体槽３６に集められ、冷却媒体排出
管３７を通つて系外へ排出される。

本実施例の強制冷却鋳造用傾動注湯装置によれ
ば、鋳型、管部材等の位置決めが自動的に正確に
なされると共に、傾動時の鋳型等の保持も強固に
なされ、強制冷却鋳造法が効率よく実施できる。

また、注湯容器内に板堰が設けられているた
め、溶湯に混入しているノロ等の不純物が鋳型の
製品キヤビテイ内に混入せず、製品の品質の向上
が図れる。

以上、本考案の特定の実施例について説明した
が、本考案は、この実施例に限定されるものでは
なく、実用新案登録請求の範囲に記載の範囲内で
種々の実施態様が包含されるものである。

例えば、実施例では鋳型として砂型を用いる例
を示したが、金型を用いてもよい。

〔考案の効果〕

以上より、本考案の強制冷却鋳造用傾動注湯装
置によれば、クランプ手段を昇降させるだけで、
鋳型、管部材等の位置決めが正確、容易になされ
ると共に、一連の強制冷却鋳造法を効率よく行う
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図は本考案の実施例に係る強制冷
却鋳造用傾動注湯装置を示す正面図であり、第１
図はクランプ面の状態を、第２図はクランプ時の
状態を、第３図はクランプ後傾動した状態を示
す。第４図は本考案の実施例に係る強制冷却鋳造
用傾動注湯装置内に搬入する鋳型付き定盤を示す
断面図である。 １……定盤、９……鋳型、１２……管部材、１
４……固定フレーム、１５……傾動フレーム、１
７……傾動シリンダ（傾動駆動手段）、１９……
ガイドローラ（支持手段）、２０……ストツパ、
２１……クランプ手段、３０……冷却ノズル、３
４……注湯容器、３６……冷却媒体槽、３８……
冷却ノズル（冷却手段）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 固定フレームと、この固定フレームに軸支され
   傾動駆動手段により所定角度傾動自在とされる傾
   動フレームとを有し、この傾動フレームにより郭
   定された空間には、鋳型を取り付けた定盤が搬
   入、搬出自在とされ、傾動フレームの下方で搬入
   された定盤と略同じ高さの部分に、搬入された定
   盤のラフな位置決めを行うストツパと、傾動時定
   盤を支持する支持手段が取り付けられ、一方、傾
   動フレームの上方には、定盤と冷却プレート本体
   の位置決めと鋳型の押圧支持および管部材と冷却
   ノズルの位置決めを行うクランプ手段が取り付け
   られており、また傾動フレームの側部には鋳型に
   注湯するための注湯容器が取り付けられ、更に傾
   動フレームの底部下方には、冷し金冷却用の冷却
   手段および冷却媒体を受ける冷却媒体槽が設けら
   れていることを特徴とする強制冷却鋳造用傾動注
   湯装置。