JPH0114785Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、一対のうず巻体を角度をずらせてか
み合せ、相対的な円軌道運動（公転運動のみ）を
加えて、両うず巻体間に形成される流体ポケツト
を中心方向へ移動させながら容積を減少し、中心
部から圧縮流体を吐出させるようにしたスクロー
ル型圧縮機に関し、特に一方のうず巻体へ円軌道
運動を行なわせる駆動部の潤滑構造に関するもの
である。

このようなスクロール型圧縮機の原理そのもの
は、米国特許第801182号に示されるように古くか
ら公知である。

ところで、このスクロール型圧縮機では少なく
とも一方のうず巻体を円軌道運動させる必要があ
り、そのための駆動部の構造およびその駆動部の
潤滑にも種々の工夫が必要である。

固定スクロールに対し、可動スクロールに円軌
道運動を与えるために、可動スクロールの側板の
うず巻体と反対側の面に円環状ボスを形成し、圧
縮機ハウジングのフロントエンドプレートに回転
可能に支持した主軸の内端に偏心した駆動ピンを
設け、この駆動ピンをラジアルベアリングを介し
て、円環状ボス内に支持し、これによつて主軸の
回転で可動スクロールに円軌道運動を行なわせる
ようにした駆動部の構造が、特願昭53−108413号
（特開昭55−35154号）明細書に提案されている。

またラジアルベアリングと駆動ピンの間に偏心
ブツシユを介在させた構造のものが特願昭55−
34559号（特開昭56−129791号）明細書に提案さ
れている。

駆動部の潤滑構造として上記特願昭53−108413
号明細書には、主軸を支持するフロントエンドプ
レート内に設けたシヤフトシール室内の主軸表面
から主軸内部および駆動ピン内を斜めに延在し、
駆動ピン先端に開口した通油孔を設け、シヤフト
シール内の潤滑油を円環状ボス内に導くようにし
た潤滑構造が示されている。

ところで、この先願の潤滑構造では駆動ピンや
ラジアルベアリングの部分への潤滑油の供給が充
分ではないという欠点がある。即ち同潤滑構造で
は、主軸の半径ｒに比し、主軸中心から通油孔の
駆動ピン先端開口迄の距離Ｒが大きいことにもと
づく遠心力差によつて、シヤフトシール中の潤滑
油が駆動ピン先端に送られるものであるが、主軸
の低速回転時でも充分な給油が行なわれるよう
に、充分大きな遠心力差を得ることは事実上困難
である。特に前述の特開昭56−129791号明細書の
駆動部の構造のように偏心ブツシユを用いたもの
では駆動ピンの径を大きくとれないので大きな遠
心力差を実現することは不可能である。

更にまたシヤフトシール部への潤滑油の供給が
充分に行なわれないとシール作用が不充分となる
恐れがある。

従つて、本考案は、可動スクロールの側板のう
ず巻体とは反対側の面に円環状ボスを設け、該ボ
ス内にラジアルベアリングを固定し、このラジア
ルベアリングに、主軸内端に偏心して設けた駆動
ピンを直接あるいは偏心ブツシユを介して回転可
能に支持した構造の駆動部への潤滑油の供給を充
分に行なえ、なおかつシヤフトシールへの供給を
も充分に行なえるようにした潤滑構造を提供する
ことを目的とする。

本考案では、上述のごとき駆動部を有するスク
ロール型圧縮機において、可動スクロール、およ
び可動スクロールと主軸内端との結合部の配置さ
れるクランクチヤンバーを吸入ポートと結合し
て、吸入室に兼用するとともに上記可動スクロー
ルの側板に、そのうず巻体の固定された面で該う
ず巻体の外端へ比較的近い位置から上記円環状ボ
ス内に貫通する通油細孔を設けかつ、主軸内端中
心部からシヤフトシール部に延在する通油孔を主
軸中に設けたものである。

本考案によれば、圧縮機ハウジング内で霧状に
漂い可動スクロールのうず巻き側についた油、お
よび、可動スクロールと固定スクロールの間に形
成される流体ポケツト中に取り込まれた被圧縮流
体（例えば冷媒ガス）中に混入した霧状潤滑油
が、可動スクロールの側板に設けた通油細孔を通
して、円環状ボス内に供給されるので、円環状ボ
ス内のラジアルベアリング、駆動ピン表面および
偏心ブツシユのあるときは、この偏心ブツシユ表
面と偏心ブツシユと駆動ピン間が潤滑される。

潤滑油の供給圧は可動スクロールと固定スクロ
ールの間に形成される圧縮室としての流体ポケツ
ト内の圧力と吸入圧との差圧となるので、充分な
給油が行なわれる利点がある。

更に、ラジアルベアリング、偏心ブツシユ、駆
動ピンを潤滑しながら流れる潤滑油は、主軸内端
の通油孔開口からシヤフトシール部へ供給される
ので、シヤフトシール面への充分な潤滑油の供給
が行なわれる利点がある。

以下、本考案の実施例について図面を参照して
詳細に説明する。

図を参照して、図示の実施例のスクロール型圧
縮機は、流体吸入ポート１１と流体吐出ポート１
２を有する圧縮機ハウジング１を有している。圧
縮機ハウジング１中には固定スクロール２が固定
配置されている。固定スクロール２の側板２１に
よつて、ハウジング１の内部は前方の室と後方の
室に分割され、後方の室は吐出室１３として吐出
ポート１２に連結されている。固定スクロール２
の前方には可動スクロール３が配置されている。
即ち、固定スクロール２のうずまき体２２と可動
スクロール３のうずまき体３２とが互いに噛み合
い、両者の間に流体ポケツトが形成されている。
可動スクロール３の周囲および前方のハウジング
内室はクランクチヤンバ兼吸入室（以下単に吸入
室と呼ぶ）１４を構成している。従つて、吸入ポ
ート１１は吸入室１４と連通するように設けられ
ている。可動スクロール３の側板３１のうず巻体
３２と反対の面には円環状のボス３３が形成され
ている。この円環状ボス内にはラジアルベアリン
グ４が嵌合されている。このラジアルベアリング
４には偏心ブツシユが嵌合されている。

ハウジング１のフロントエンドプレート１５に
は主軸６が回転可能にかつシヤフトシール７でシ
ールされながら支承されている。主軸６の内端に
は、偏心した駆動ピン６１が設けられている。こ
の駆動ピン６１は偏心ブツシユ５の駆動ピン受穴
に嵌合されている。

主軸６の外端は電磁クラツチ８へ結合されてい
る。電磁クラツチのプーリー部８１に例えばベル
ト等によつて伝達される外部駆動源（図示せず）
からの回転力が、電磁クラツチ８の動作時に、主
軸６への伝達されるようになつている。

以下動作について説明する。

電磁クラツチ８が付勢されると、プーリーに伝
達されている回転が主軸６へ伝達され、主軸６が
回転する。駆動ピン６１は主軸６の中心からずれ
ているので、駆動ピン１６は旋回運動を行う。こ
の結果、可動スクロール３は円軌道運動を行なう
ことになる。なお、可動スクロール３の自転を防
止する機構が必要であり、ここでは、図中９で示
されるボールによるボールカツプリングによつて
回転を阻止している。

可動スクロールが自転を阻止されながら円軌道
運動を行なうと、公知のように、両うず巻体２
２，３２の外方で吸入室内の冷媒ガスを取込みな
がら流体ポケツトが形成される。この流体ポケツ
トは、可動スクロールの円軌道運動の継続によつ
て、その容積を減少しながら中心方向へ移動す
る。かくして、流体の圧縮が行なわれる。圧縮さ
れた流体は固定スクロール２の側板２１の中央部
に設けた吐出孔２３から吐出室１３へ吐出され
る。上述の動作が連続して、吸入ポート１１から
導入された流体が圧縮されて吐出ポート１２から
送り出される。

ハウジング内の各可動部分を潤滑するために、
吸入室１４底部には潤滑油が装入されている。こ
の潤滑油は可動スクロール３の円軌道運動によつ
てハウジング内に飛散される。しかしながら、遠
心力のため、可動スクロール３の円環状ボス３３
中のラジアルベアリング４、偏心ブツシユ５の表
面、駆動ピン６１と偏心ブツシユ５の嵌合油には
ほとんど給油されない。

それ故、図示の実施例では、本考案に従つて、
可動スクロール３の側板３１に、流体ポケツトと
円環状ボス内を通過する通油細孔３４が形成され
ている。通油細孔３４のうず巻体固定側の面上の
開口位置は、うず巻体３２の外終端に比較的近い
位置を選ぶ方が良い。うず巻体３２の内終端に近
づく程、流体ポケツトの内圧力が高くなり、通油
細孔３４を通つて逃げる圧縮流体が多くなり、圧
縮損失が大きくなる。

通油細孔３４へ流入した潤滑油は、流体ポケツ
ト内の圧力によつて円環ボス３３内へ圧送される
とともに、同時に流体ポケツト内の冷媒中に浮遊
した潤滑油も円環状ボス３３の内部に送られる。
かくして、円環状ボス内に充分な油が供給され、
この油が、ラジアルベアリング４、偏心ブツシユ
５の表面を濡らしながら流れ、駆動ピン６１と偏
心ブツシユ嵌合面にも流れ潤滑する。

図示の装置においては、更に本考案に従い、主
軸内端中心から中心軸に沿つて穿たれ途中から径
方向に延びて、シヤフトシール部７へ開口した通
油孔３２が設けられている。

従つて、円環状ボス３３内に供給され、ラジア
ルベアリング４、偏心ブツシユ５および駆動ピン
６１を潤滑しながら流れた潤滑油が通油孔６２を
通つてシヤフトシール部７へ供給される。縦滑油
のこの供給圧は、主軸６の回転によつて主軸の外
面部における遠心力によつて与えられている。

なお、シヤフトシール部への潤滑油の供給は、
更に、前述の特開昭55−35154号と同様にフロン
トエンドプレートにハウジング内部上方からシヤ
フトシール部へ至る通流口１５を形成してハウジ
ング上部内壁上の油をシヤフトシール部へ導く構
成を追加すれば、シヤフトシールは更に確実とな
る。

上記実施例から明かなように、本考案によれ
ば、可動スクロールを駆動する駆動ピンと円環状
ボスとの結合部を充分に潤滑することができる。

なお、上記実施例では、偏心ブツシユ５を用い
た場合に例を示したが、前述した特開昭55−
35154号に示されるように偏心ブツシユを用いる
ことなく、直接駆動ピンをラジアルベアリングで
支持するようにしたものでも、本考案が同様に適
用できることは明かである。

【図面の簡単な説明】

図は本考案の一実施例を示すスクロール型圧縮
機の縦断面図である。 ２……固定スクロール、３……可動スクロー
ル、４……ラジアルベアリング、５……偏心ブツ
シユ、６……主軸、７……シヤフトシール、２１
……側板、２２……うず巻体、３１……側板、３
２……うず巻体、３３……円環状ボス、３４……
通油細孔、６１……駆動ピン、６２……通油孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 板体の一面にうず巻体を固定した固定スクロー
   ルと同じく板体の一面にうず巻体を固定した可動
   スクロール部材とをそれらの間に移動する流体ポ
   ケツトを形成するように組合わせ、上記可動スク
   ロールの板体の裏面に円環状ボスを形成し、該ボ
   ス中にラジアルベアリングを固定し、ハウジング
   に回転可能にかつシヤフトシールを施して支持さ
   れた主軸の内端に偏心して設けた駆動ピンを該ラ
   ジアルベアリングに回転可能に支持させ、主軸の
   回転によつて上記可動スクロールに円軌道運動を
   行なわせるようにしたスクロール型圧縮機におい
   て、上記ハウジング内にクランクチヤンバ兼吸入
   室を形成するとともに、該クランクチヤンバ兼吸
   入室に連通するように吸入ポートを上記ハウジン
   グに形成し、該クランクチヤンバ兼吸入室に上記
   可動スクロール、上記円環状ボス、上記主軸内端
   および上記駆動ピンを配置し、上記可動スクロー
   ルの板体に、そのうず巻体の固定された面で該う
   ず巻体の外端へ比較的近い位置から上記円環状ボ
   ス内に貫通する通油細孔を設け、かつ上記主軸内
   端中心部から上記主軸中を貫通し上記シヤフトシ
   ール部に開口した通油孔を形成したことを特徴と
   する駆動部潤滑構造を有するスクロール型圧縮
   機。