JPH0111038Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、焼酎醪（モロミ）等の酒成分を含む
原液を減圧状態にして煮沸し蒸溜する焼酎等の減
圧単式蒸溜装置に関するものである。

〔従来の技術〕

焼酎等の蒸溜に使用する減圧単式蒸溜装置とし
ては、煮沸用の蒸溜缶の周囲部に周壁を被うジヤ
ケツト部を設け、このジヤケツト部に加熱蒸気を
供給して蒸溜缶内の焼酎醪等の原液を間接蒸煮し
沸騰させるようにしたジヤケツト型の外部加熱方
式の蒸溜装置（例えば特開昭52−34991号公報）、
あるいは蒸溜缶内に加熱蒸気を導入する内部加熱
方式の蒸溜装置（例えば特公昭60−22905号公報）
がある。

〔考案が解決しようとする問題点〕

上記のような減圧単式蒸溜装置においては、加
熱方式が蒸気による間接加熱によるものであるた
め、内部の原液が充分に撹拌されなかつたり、加
熱伝熱面積が小さいと、蒸発時間が長くなり、蒸
溜効率が悪くなるので、加熱伝熱面積をできるだ
け大きくしてかつ原液を適度に撹拌しつつ加熱す
ることが望まれる。

上記従来例の外部加熱方式の蒸溜装置の場合に
は、蒸溜缶内の原液が外周部分から加熱されるた
め、加熱伝熱面積が不足し内部の原液を撹拌しな
いと内方部分では充分に加熱されないことにな
り、だからといつて撹拌装置を装備するのは真空
度保持等の関係でその構造が複雑化し、設備費が
高くなる。しかも、蒸溜が進むに伴つて製品が蒸
溜物として溜出し、蒸溜缶内の原液が減少してそ
の液面がジヤケツト部より下方に位置すると、原
液と上部気体の境界部分で焦げ付き現象が生じ、
蒸溜製品に焦臭が付き易く、製品不良が生じる等
の問題がある。

また上記従来例の内部加熱方式の場合には、蒸
溜缶の内部に導入した蒸気管の周囲に上下が閉塞
された蒸気室が設けられるとともに、この蒸気室
にはこれを上下に貫通する原液の導通管が配設さ
れ、この導通管内を原液が流通することにより加
熱されるものであるが、前記導通管が比較的細く
かつ導通管以外の部分では対流が充分に行なわれ
ない結果となつており、そのため原液の煮沸蒸発
に時間がかかり、蒸溜効率も低いものとなつてい
る。

特に蒸溜缶の容量が大きくなればなるほど、蒸
溜缶内に収容される原液の量も多く、蒸溜缶内の
外壁側の液が加熱され難く、均等な煮沸が行なえ
ず、効率的な蒸溜が行なわれないことになり、酒
成分が残液として蒸溜管内に残ることになる。

なお内部加熱方式のものとして、蒸気が流通す
る蛇管を蒸溜缶内に装備したものもあるにはある
が、この蛇管に原液中の夾雑物が付着し易く、ま
たこの蛇管自体のみでは充分な対流撹拌効果が得
られないものである。又この種の単式蒸溜におい
ては、通常、良質の製品を得るために、あるいは
繰返し使用による加熱効率の低下を防ぐために、
１回の蒸溜毎に缶内を清掃することとこととされ
ているが、前記のような蛇管よりなるものである
と、その清掃作業が行ない難く、特に蛇管表面に
付着等が生じた場合の除去作業がきわめて面倒な
ものとなつている。

そこで、本考案は、内部加熱方式の減圧単式蒸
溜装置において、蒸溜缶内に装備する加熱源を内
外２重筒構造の筒状にして、この加熱源自体を対
流筒として原液の対流作用を促進せんとしたもの
であり、特にこの場合、原液加熱による自然対流
を利用するだけでは、加熱の初期の段階から効果
的な対流撹拌作用が行なえないのので、このを点
をも配慮して初期の段階から積極的に急速な対流
撹拌作用を行なえるようにし、撹拌効果および加
熱、蒸溜効率の非常に優れた蒸溜装置を提供すべ
く考案したものである。

〔問題点を解決するための手段〕

上記の問題点を解決する本考案は、焼酎醪等の
原液を煮沸する蒸溜缶から製品タンクに到る蒸溜
経路を減圧状態にして焼酎等を蒸溜する減圧単式
蒸溜装置であつて、特に前記蒸溜缶内の下方部に
は、底部よりやや上方位置に、上下に開口した内
筒とこれよりやや径大の外筒とを上下端部で連接
した内外２重筒構造をなしかつ内外両筒間の上下
端部を閉塞してその内部空間に加熱蒸気を送給で
きるようにした加熱筒を配し、さらに前記加熱筒
の下方部には円環状をなしかつ内方斜め下向きに
蒸気を吹き出せる小孔を多数有する蒸気吹き込み
管を配してなることを特徴とするものであり、内
外２重筒の加熱筒が対流筒を兼ねしかもその下方
の蒸気吹き込みにより対流撹拌作用を加熱初期の
段階から急速、良好に行なえるようにしたもので
ある。

〔作用〕

上記の本考案の蒸溜装置においては、蒸溜缶の
内部において、蒸溜缶内の下方部に加熱源として
装備した加熱筒により焼酎醪等の原液を加熱する
もので、加熱筒は内外２重筒よりなり、その両筒
間の空間に蒸気が吹き込まれる結果、内外両筒が
原液に対する加熱伝熱面となり、蒸溜缶内の原液
は前記内外両筒の双方により加熱され、内部加熱
方式であつても加熱伝熱面積がかなり大きくな
る。しかも前記加熱筒は上下に開口して底部より
やや上方位置に配されているため、これにより加
熱される原液は加熱筒内部では周囲部から加熱さ
れて上昇し、加熱筒外方部では蒸溜缶外壁側から
は加熱されないために下降することになり、これ
によつて図面矢印に示す方向の対流作用が生じる
ことになる。

特に本考案の場合、前記の自然な対流作用のみ
でなく、加熱筒の下方に配された円環状の蒸気吹
き込み管の多数の小孔から蒸気が斜め下向きに吹
き込まれるので、この蒸気吹き込み作用によつて
外方部の原液が加熱筒の下方部において内方へと
流れ、さらに前記吹きみ蒸気とともに図面矢印の
ように蒸溜缶の底部に当つて反転し加熱筒内にお
いて上昇流となる。これによつて加熱筒による加
熱が進んで自然対流現象が生じるまでに積極的に
急速な対流作用が生じることになり、また加熱筒
を中心とする対流を速める。しかも蒸気が僅かな
がらも直接吹きこまれるため、原液が直接加熱さ
れることになる。

また原液が前記ように常に積極的な対流作用を
行なつているから、液中夾雑物が加熱筒表面に付
着したり、焦げ付きが生じたりすることがない。

〔実施例〕

次に本考案の実施例を図面に基いて説明する。

１は焼酎醪等の酒成分を含む原液を煮沸する蒸
溜缶、２は前記蒸溜缶１の上部に接続されたスワ
ンネツク状の蒸気排出路３を介して接続された冷
却器であつて、蒸溜缶１より排出される蒸気がこ
の冷却器２内に有する蛇管４を流通する間に冷却
水によつて冷却され凝縮されるようになつてい
る。５は前記冷却器２に接続された製品タンクで
あつて、前記の冷却器２により凝縮されて排出さ
れる蒸溜物である焼酎等の製品はこの製品タンク
５に貯留される。そして前記蒸溜缶１から冷却器
２を経て製品タンク５に到る蒸溜経路６の一部、
例えば製品タンク５の部分には真空ポンプ７が接
続されており、蒸溜経路６を減圧状態にして蒸溜
できるようにしている。

１０は上記の蒸溜缶１内の下方中央部に装備し
た内外２重筒構造の加熱筒であつて、図のように
上下に開口した内筒１１と外筒１２とが両筒間に
通常10〜30mm程度の間隔を存して上下端部で端板
により連接されるとともに、内外両筒１１，１２
間の上下が閉塞されてその内部空間が蒸気室１３
として形成されており、この蒸気室１３に蒸気供
給管１４が接続され、加熱蒸気を吹き込めるよう
に構成されている。またこの加熱筒１０は上下方
向に開口させて蒸溜缶１の底部１５との間に焼酎
醪等の原液の対流作用を許容する間隔を存するよ
うに底部１５よりやや上方位置に配置されてお
り、原液がこの加熱筒１０を中心として対流作用
を行なえるようになつている。この加熱筒１０の
直径は普通蒸溜缶１（の約1/2〜1/3が対流作用お
よび加熱効果上好適である。１６は加熱筒１０に
接続されたガス抜き孔、１７はドレーン管であ
る。

また１８は上記の加熱筒１０下方部において加
熱筒下端と底部１５とのほぼ中間に配した蒸気吹
き込み管１８であつて、前記加熱筒１０と略同径
の円環状をなしており、この蒸気吹き込み管１８
には蒸気を内方斜め下向きに吹き出せる直径２〜
10mm程度の多数の蒸気吹き出し用の小孔１９が周
方向の所要間隔毎に設けられており、この小孔１
９から蒸気吹き出し作用により上記の対流作用が
一層良好に行なえるようになつている。２０は蒸
気吹き込み管１８への蒸気送給管である。この蒸
気吹き込み管１８は図ように加熱筒１０と略同径
のものに限らずやや径小や径大の円環状をなすも
のでもよい。

２１は蒸溜缶１の上部に設けた焼酎醪等の原液
の供給管、２２は液面計、２３は真空ポンプ７と
製品タンク５との接続管路２４に設けたミストセ
パレータ、２５は冷却器４の後続に配したガスセ
パレータ、２６はテスターを示す。

なお図示していないが、前記蒸気排出路３の竪
管部分には、通常煮沸されて発生した蒸気に含ま
れる不純物を除去する精溜棚等を備え、精溜作用
を行なえるようになつており、また横管部分は予
備的な冷却作用を行なえるようになつている。

上記の構成を有する本考案の蒸溜装置による蒸
溜作業について説明すると、蒸溜缶１に所要量の
焼酎醪等の原液を収容した状態で、加熱筒２０に
通常ゲージ圧0.3〜0.3Kg／cm²の蒸気を供給して加
熱し、前記原液を煮沸する。この蒸溜缶１内での
煮沸においては、加熱筒１０の内外両筒１１，１
２がいずれも吹き込まれる蒸気によつて加熱伝熱
面として作用するため、原液の加熱作用が広い面
積で行なわれ、しかもこの加熱作用によつて加熱
筒１０の内方部ではその周囲部から加熱される原
液が上昇し、また加熱筒１０の外方部では蒸溜缶
１の外壁側からは加熱されないために下降流とな
り、その結果加熱筒１０を中心とする図面矢印方
向の対流作用を生じる。

特に加熱筒１０下方部においては円環状の蒸気
吹き込み管１８に有する蒸気吹き出し用小孔１９
より生蒸気が内方斜め下向きに吹き込まれ、この
蒸気が一旦底部１５に当つて反転して上昇流とな
り、そのため原液は加熱筒１０により加熱されて
対流作用を生じるまでに、前記吹き込み蒸気によ
つて加熱筒１０の下方部を外方から内方へと流れ
てさらに加熱筒内方において上昇流となり、初期
の段階から急速に積極的な対流作用を生じ、また
加熱筒を中心とする対流作用を一層促進し、これ
が前記加熱伝熱面積大きいこと等と相俟つて、原
液全体を万遍に急速に撹拌して効率よく加熱で
き、煮沸蒸発を促進できる。

そして、上記の煮沸によつて発生した蒸気は蒸
気排出路３を通つて冷却器２に入り、ここで冷却
されて凝縮された蒸溜液すなわち焼酎等の製品が
製品タンク５内に送られて貯留されるもであり、
この蒸溜経路６は真空ポンプ７により真空に近い
減圧状態に保持されているため、この真空度によ
つても異なるが、蒸溜缶１内の原液は45〜60℃程
度の加熱温度で沸騰し、蒸溜が良好に行なわれ
る。

〔考案の効果〕

上記したように本考案においては、蒸溜缶内部
に装備した加熱筒の内外両筒がその間に吹き込ま
れる蒸気によつて加熱伝熱面となり、蒸溜缶内の
原液を前記内外両筒によつて加熱でき、内部加熱
方式であつても加熱伝熱面積が大きく、その上、
蒸溜缶底部やや上方位置に配された前記加熱筒が
対流筒を兼ね、その内方部では上昇、外方部では
下降する原液の対流を促すばかりか、特に前記加
熱筒の下方部に設けた蒸気吹き込み管からの蒸気
吹き込みによつて、蒸溜缶内の原液の対流撹拌作
用を急速に起こし、これが前記蒸気吹き込みによ
る直接加熱の効果および加熱筒による加熱伝熱面
積大なることと等と相俟つて、原液全体を万遍に
効率よく加熱できるので、原液の煮沸および蒸発
時間を短縮でき、蒸溜効率が高く、焼酎等の蒸溜
酒をコスト安価に得ることができる。

しかも原液が前記ように加熱筒を中心として常
に積極的な対流作用を行ない、かつ対流速度も速
く、また前記のように煮沸蒸溜時間を短縮できる
で、液中の夾雑物が加熱筒等の表面に付着するこ
とがない。また前記加熱筒が底部やや上方位置に
あつて常に液中に浸漬しているために焦げ付き等
が生じることがないので、焼酎等の蒸溜製品に焦
臭が付く虞れもなく、高品質の製品を得ることが
できる。また前記焦げ付きや夾雑物の付着が生じ
ないので、加熱筒による加熱効果を長期にわたつ
て良好に保持できる。

殊に本考案の場合、前記のように夾雑物の付着
等が生じ難い上、加熱筒表面に付着等が生じて
も、該表面の付着物の除去作業が行ない易く、１
回の蒸溜毎の缶内清掃がきわめて容易に行なえ、
以て長期に渡り良好な品質および加熱効率を維持
できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例を示す一部欠截正面
図、第２図は一部の拡大縦断面図、第３図は前図
−線における断面図である。 １……蒸溜缶、２……冷却器、３……蒸気排出
路、４……蛇管、５……製品タンク、６……蒸溜
経路、７……真空ポンプ、１０……加熱筒、１１
……内筒、１２……外筒、１３……蒸気室、１４
……蒸気供給管、１５……底部、１８……蒸気吹
き込み管、１９……蒸気吹き出し用小孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 焼酎醪等の原液を煮沸する蒸溜缶から製品タン
   クに到る蒸溜経路を減圧状態にして焼酎等の原酒
   を蒸溜する減圧単式蒸溜装置において、蒸溜缶内
   の下方部には、底部よりやや上方位置に、上下に
   開口した内筒とこれより若干径大の外筒とを上下
   端部で連接した２重筒構造をなしかつ内外両筒間
   の上下端部を閉塞してその内部空間に加熱蒸気を
   送給できるようにした加熱筒を配し、また前記加
   熱筒の下方部に、円環状をなしかつ蒸気を内方斜
   め下向きに吹き出せる小孔を多数有する蒸気吹き
   込み管を配してなることを特徴とする焼酎等の減
   圧単式蒸溜装置。