JP7843364B2 - シクロアルカノン化合物を生成するためのシクロアルカンの電気化学的酸化 - Google Patents

シクロアルカノン化合物を生成するためのシクロアルカンの電気化学的酸化

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Description

本発明は、酸素が存在する反応媒体中の電解セルにおいて、無機または有機硝酸塩の存在下で、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を電気化学的に酸化することにより、非置換または少なくとも一置換シクロアルカノンを製造する方法に関する。
シクロアルカノンおよびシクロアルカノール化合物は、多数の工業製造プロセスにおける重要な中間体である。飽和非官能基化脂環式炭化水素(したがって、非活性化C-H結合)を、対応するケトンまたはアルコールに酸化するには、これらの非反応性物質を環構造を維持しながら単官能性後継生成物に選択的に転化させるための特別な反応条件が必要である。
遷移金属触媒反応と酸素、または過酸化物などの化学酸化剤の使用に基づくプロセスが多数存在する。高価な遷移金属と化学酸化剤を使用すると、コストが増加するだけでなく、場合によっては面倒な処分が必要となる試薬廃棄物も発生する。
その一例として、ラウロラクタムからのポリアミド12の製造が挙げられる。これは現在、主に中間体としてシクロドデカノンを経由して行われている。これは、空気により、最初に過酸化物に転化される。選択性の高いさらなる反応を確保するために、過酸化物と反応してホウ酸エステルと酸素を生成するホウ素酸化物が使用される。得られたアルコールは、その後、CuCr触媒上でシクロドデカノンに酸化される。この反応経路の欠点は、主にホウ素酸化物の使用である。ホウ素酸化物は、生殖能力に影響を及ぼし、胎児に害を及ぼす疑いがあるため、現在、特に関心の高い物質として議論されている。
Yamanakaの論文(J.Chem.Commun.2000年、2209~2210頁)では、水性媒体中でのアルカンの陽極酸化により、0.1mA/cm未満の低電流密度で、COが発生すると報告されている。非水性媒体中では、アダマンタンの酸化は、2Vを超える電圧および4mA/cm未満の電流密度で観察され、陰極で酸素活性化が起こっている。脂環式ケトン(シクロヘキサノン)の生成速度と電流収率は、特にIr(acac)/炭素繊維陽極によって大幅に増加することが示されている。その際、酸素は水から生じる。有機溶媒は影響を及ぼし、例えば、アセトニトリル中ではシクロヘキサンの転化は起こらない。
Kawamataの論文(J.Am.Chem.Soc.2017年(139)、7448~7551頁)では、キヌクリジン(第三級アミン、有毒)などのメディエーターを、HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール、臓器損傷、催奇形性を引き起こす)と組み合わせて使用すると、官能基化脂肪族および脂環式種の不活性C-H結合を低電位で電気化学的に酸化できることが示されている。使用された導電性塩は、MeN-BFであった。導入された酸素は、気相から発生したことが確認されている。アルゴン下では反応は起こらなかった。
Yamanakaの論文(J.Chem.Commun.2000年、2209~2210頁) Kawamataの論文(J.Am.Chem.Soc.2017年(139)、7448~7551頁)
本発明の目的は、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を、可能な限り選択的に、主生成物として、対応するケトンに転化する持続可能かつ省資源の方法を提供することである。
この目的は、特許請求の範囲の主題事項および明細書により達成された。
本発明は、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素の電気化学的酸化により、非置換または少なくとも一置換シクロアルカノンを製造する方法であり、
(a)少なくとも1つの非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を準備する工程、
(b)少なくとも1つの有機硝酸塩を準備する工程、
(c)酸素が存在する反応媒体中の電気分解セルにおいて、工程(b)で準備した有機硝酸塩の存在下で、工程(a)で準備した非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を電気化学的に酸化する工程
を含む方法に関する。
本発明の方法は、選択性が高く、補助化学物質の使用量が少なく、酸化剤として電流を使用し、それに伴い廃棄物の発生量が少ないという特別な特徴を有する。
驚くべきことに、本発明の電気化学的酸化方法を用いて、空気中の酸素を使用して脂環式炭化水素に酸素官能基を導入できることがわかった。これにより、反応性過酸化物や複雑な配位子系を持つ高価な触媒などの化学酸化剤の使用を省くことができる。同時に、有毒性および/または発がん可能性のある試薬の使用を減らすか、または完全に回避することさえできる。開発された方法は、既存の合成法に代わる安価で環境に優しい方法である。単純かつ安全なプロセス条件により、多額の費用をかけずに、大量の目的化合物を製造することができる。したがって、本発明により、以前はコストと時間がかかっていたプロセスを、大幅に最適化することができる。
また、驚くべきことだが、本発明の方法により、硝酸塩(これは、導電性塩および電気化学メディエーターの両方として機能する)を使用して非置換シクロアルカンからシクロアルカノン化合物を生成する際に、電流を使用できることもわかった。本発明の方法の実施中に、副産物、特に同じ環サイズの脂環式アルコールが生じても、すでに確立されているさらなる方法により、対応するケトンに転化できるため、問題にはならない。
さらに驚くべきことだが、本発明の方法は、常圧および常温で実施できることがわかった。これは、エネルギー効率、ひいては環境適合性にも同様に有利である。
本発明の方法では、単環式または多環式の非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を使用することができる。単環式または二環式の脂環式炭化水素が好ましい。本発明の方法において、単環式の脂環式炭化水素を使用することが特に好ましい。
好ましくは、本発明の方法において使用される単環式または多環式、特に単環式または二環式の飽和脂環式炭化水素は、環系中に、5~18個の炭素原子を有し得る。これらの脂環式炭化水素はそれぞれ、置換されていなくてもよく、または一置換もしくは多置換されていてもよい。一置換または多置換されている場合、それらは、好ましくは、メチル、フェニル、またはベンジルからなる群からそれぞれ独立して選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基で置換されている。フェニルまたはベンジル置換基自体はそれぞれ、置換されていないか、またはF、Cl、BrおよびNOからなる群からそれぞれ独立して選択される1個、2個または3個の置換基で一置換または多置換されていてもよい。本発明に従って使用される脂環式炭化水素またはその置換基が、側鎖に1つを超える炭素原子を有するアルキル基を含む場合、本発明の方法を実施すると、これらの置換基において望ましくない副反応が発生する可能性がある。
本発明の方法において、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素として、環内に6~12個の炭素原子、好ましくは環内に8~12個の炭素原子を有し、置換されていないか、またはメチル、フェニルまたはベンジルからなる群からそれぞれ独立して選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基で一置換もしくは多置換された単環式飽和炭化水素を使用することが特に好ましい。本発明の方法において、環内に8~12個の炭素原子を有し、置換されていないか、またはメチル基で一置換もしくは二置換もしくは三置換された単環式飽和炭化水素を使用することが非常に特に好ましい。
非常に特に好ましくは、単環式飽和炭化水素は、置換されておらず、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカンおよびシクロドデカンからなる群から選択され、さらにより好ましくはシクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカンおよびシクロドデカンからなる群から選択され、最も好ましくは当該炭化水素はシクロドデカンである。
本発明による方法の工程(b)によれば、少なくとも1つの有機硝酸塩が準備される。この硝酸塩は、導電性塩と、本発明による電気化学的酸化方法のメディエーターとの両方として機能する。一般式[陽イオン][NO ]の有機硝酸塩を使用することが好ましい。
[陽イオン]は、
一般構造[R](式中、R、R、R、Rは、C~C16アルキル、特に直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される。)を有するアンモニウムイオン、
一般構造(I):
(式中、RおよびRは、直鎖または分岐鎖C~C18アルキル、特に直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され、Rは、Hおよび直鎖または分岐鎖C~C18アルキル、特にHおよび直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群から選択される。)
のイミダゾリウム陽イオン、
一般構造(II):
(式中、Rは、C~C18アルキル、特に直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群から選択され、R、RおよびRは、Hおよび直鎖または分岐鎖C~C18アルキル、特にHおよび直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される。)
のピリジニウム陽イオン、および
一般構造[R1a2a3a4a](式中、R1a、R2a、R3a、R4aは、C~C16アルキル、特に直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される。)のホスホニウムイオン
からなる群から選択される。
本発明の方法において、イミダゾリウム陽イオンをベースとする有機硝酸塩を使用する場合、一般式(I)の陽イオンが好ましく、式中、RおよびRは、直鎖または分岐鎖C~C18アルキル、特に直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され、Rは水素である。特に好ましいのは、一般式(I)のイミダゾリウム陽イオンであり、式中、Rはメチルであり、Rはエチルであり、またはRはメチルであり、Rはメチルであり、またはRはメチルであり、Rはブチルであり、Rはいずれの場合も水素である。
本発明の方法において、ピリジニウム陽イオンをベースとする硝酸塩を使用する場合、一般式(II)の陽イオンが好ましく、式中、Rは、直鎖または分岐鎖C~C18アルキル、特に直鎖または分岐鎖C~Cアルキルである。特に好ましいのは、一般式(I)のピリジニウム陽イオンであり、式中、Rは、直鎖または分岐鎖C~C18アルキル、特に直鎖または分岐鎖C~Cアルキルであり、ラジカルR、RおよびRは、直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され、2位、3位もしくは4位での一置換、2,4位、2,5位もしくは2,6位での二置換、または2,4,6位での三置換が好ましい。
本発明の方法では、原則として、上記の硝酸塩を2つ以上使用することもできる。本発明による硝酸塩、特に組成[R][NO ]の有機硝酸アンモニウム塩、または組成[R1a2a3a4a][NO ]の有機ホスホニウム塩を使用することが好ましく、特に組成[R][NO ]の有機硝酸アンモニウム塩が好ましい。
非常に特に好ましくは、有機硝酸アンモニウム塩は、テトラ-n-ブチルアンモニウム硝酸塩またはメチルトリ-n-オクチルアンモニウム硝酸塩である。有機ホスホニウム硝酸塩は、テトラ-n-ブチルホスホニウム硝酸塩またはメチルトリ-n-オクチルホスホニウム硝酸塩であることが特に好ましい。有機イミダゾリウム硝酸塩は、好ましくは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム硝酸塩である。
最も好ましくは、本発明の方法で使用される有機硝酸塩は、テトラ-n-ブチルアンモニウム硝酸塩またはメチルトリ-n-オクチルアンモニウム硝酸塩である。
本発明の方法で使用される成分を準備する順序は、個々の成分が互いにまたはそれぞれの反応媒体と接触させられる順序と同様に、変動してもよい。
本発明の方法の一実施形態では、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素または有機硝酸塩を最初に投入し、反応媒体と合わせ、好ましくは少なくとも部分的にまたは完全に反応媒体に溶解させるか、または反応媒体に混ぜ、その後、他の成分をそれぞれこれらの2つの成分に添加する。本発明の方法の別の実施形態では、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素と有機硝酸塩とを最初に投入し、その後、反応媒体と合わせ、好ましくは少なくとも部分的にまたは完全に反応媒体に溶解させるか、または反応媒体に混ぜる。本発明の方法では、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素と、無機または有機硝酸塩とを、反応媒体に同時にまたは順番に添加し、好ましくは少なくとも部分的にまたは完全に反応媒体に溶解させるか、または反応媒体に混ぜることも可能である。
本発明による方法で使用する反応媒体は、方法が実施される条件下では液体であり、使用成分、すなわち、特に非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素と、無機または有機硝酸塩とを、部分的にまたは完全に溶解することができる。これらの成分の少なくとも1つを液体の形態で使用する場合、反応媒体は、好ましくは、上記成分と容易に混和する。
本発明による方法では、電気化学的酸化のために極性の非プロトン性反応媒体を使用することが好ましい。これは、無水形態、乾燥形態、または水と混合して使用することができる。
本発明による方法において、無機硝酸塩、特に硝酸カリウムまたは硝酸ナトリウムを使用する場合、反応媒体は、有利には水を含み、水と混合された非プロトン性反応媒体が好ましい。反応媒体中の含水量は、変動し得る。含水量は、いずれの場合も反応媒体の総量に対し、好ましくは最大20体積%、より好ましくは最大15体積%、特に好ましくは最大10体積%、さらに好ましくは最大5体積%である。
好ましくは、極性の非プロトン性反応媒体は、脂肪族ニトリル、脂肪族ケトン、脂環式ケトン、ジアルキルカーボネート、環状カーボネート、ラクトン、脂肪族ニトロアルカン、ジメチルスルホキシド、エステルおよびエーテル、またはこれらの成分の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
特に好ましくは、反応媒体は、アセトニトリル、イソブチロニトリル、アジポニトリル、アセトン、ジメチルカーボネート、メチルエチルケトン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン、ニトロメタン、ニトロプロパン、tert-ブチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトンおよびε-カプロラクトン、またはこれらの成分の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
非常に特に好ましくは、反応媒体は、アセトニトリル、イソブチロニトリル、アジポニトリル、ジメチルカーボネートおよびアセトン、またはこれらの成分の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
非常に特に好ましくは、反応媒体は、乾燥または無水形態のアセトニトリル、イソブチロニトリルまたはアジポニトリルである。
同様に、非常に特に好ましくは、反応媒体は、必要に応じて水と混合されたアセトニトリル、イソブチロニトリルまたはアジポニトリルである。
反応媒体において、上記成分の1つまたは複数が水と混合して使用される場合、含水量は、いずれの場合も反応媒体の総量に対し、好ましくは最大20体積%、より好ましくは最大15体積%、特に好ましくは最大10体積%、さらにより好ましくは最大5体積%である。
本発明による方法を実施するには、反応媒体にさらなる可溶化成分を加えることが有利であり得る。適切な有利な成分は、溶解挙動の簡単な予備試験によって特定され得る。
可溶化成分の例は、第一級アルコール、第二級アルコール、モノケトンもしくはジアルキルカーボネート、またはこれらの成分の少なくとも2つの混合物であり、必要に応じて水と混合して使用される。本発明による方法では、脂肪族C1-6アルコールを使用することが好ましい。特に好ましい可溶化成分は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-メチル-2-ブタノール、またはこれらの成分の少なくとも2つの混合物からなる群から選択することができ、必要に応じて水と混合して使用される。
反応媒体として、ジメチルカーボネートを、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-メチル-2-ブタノールからなる群から特に選択される少なくとも1つのC1-6アルコールと必要に応じて混合し、水と必要に応じて混合し、使用することが特に有利である。
これらの可溶化成分の1つまたは複数を水と混合して使用する場合、含水量は、いずれの場合も可溶化成分と水の総量に対し、好ましくは最大20体積%、より好ましくは最大15体積%、特に好ましくは最大10体積%、さらにより好ましくは最大5体積%である。
可溶化成分は、いずれの場合も反応媒体の総量に対し、好ましくは50体積%未満、より好ましくは30体積%未満、特に好ましくは10体積%未満の量で添加され得る。
好ましくは、本発明の方法において、有機硝酸塩は、いずれの場合も非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素の量に対し、0.1~2.0当量、好ましくは0.2~1.0当量、より好ましくは0.3~0.8当量、特に好ましくは0.4~0.8当量で使用される。
本発明によれば、無機または有機硝酸塩の存在下での非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素の電気化学的酸化は、酸素が存在する反応媒体中の電解セル内で行われる。
反応媒体と空間的に連通している酸素含有ガス雰囲気を準備する場合が有利である。
ガス雰囲気中の酸素の割合は、変動し得る。好ましくは、ガス雰囲気中の酸素の割合は、10体積%~100体積%、より好ましくは15体積%~30体積%、より好ましくは15体積%~25体積%、特に好ましくは18体積%~22体積%である。
一実施形態では、ガス雰囲気中の酸素の割合は、10体積%~100体積%、より好ましくは15体積%~100体積%、より好ましくは20体積%~100体積%であり得る。
非常に特に好ましくは、ガス雰囲気は、空気である。
好ましくはガス雰囲気を反応媒体に導入するか、またはガス雰囲気の存在下で液相を撹拌することにより、ガス雰囲気と反応媒体との間でガス交換を行う場合は有利である。
ガス雰囲気と反応媒体との間のガス交換、特に撹拌は、例えば撹拌機の形状または撹拌機の速度により、電気化学的酸化を制御するために使用できる。
好ましくは、反応媒体に溶解している酸素の量は、反応媒体1L当たり、少なくとも1ミリモル、より好ましくは少なくとも5ミリモルである。
同様に好ましくは、反応媒体に溶解している酸素の量は、反応媒体1L当たり、少なくとも10ミリモルである。
酸素が存在する反応媒体において、無機または有機硝酸塩の存在下で、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を電気化学的に酸化することにより、非置換または少なくとも一置換シクロアルカノンを製造する本発明の方法は、分割電解セル、非分割電解セルとの両方で実施することができるが、非分割電解セルで実施することが好ましい。
望ましくない化学反応を避けるためには、陰極室と陽極室を分け、陽極室と陰極室との間の電荷交換を、多孔質隔膜(一般に、イオン交換樹脂である)を介してのみ行うようにすることが有利であり得る。
本発明に従って好ましく使用される非分割電解セルは、少なくとも2つの電極を備える。この目的のために、慣用の材料で作られた陽極および陰極、例えばガラス状炭素、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)、またはグラファイトで作られた陽極および陰極が使用され得る。ガラス状炭素電極の使用が好ましい。
好ましくは、非分割電解セルは、少なくとも1つのガラス状炭素陽極または少なくとも1つのガラス状炭素陰極を備える。好ましくは、陽極および陰極の両方がガラス状炭素電極である。
電極間の距離は、特定の範囲にわたって変動し得る。好ましくは、距離は、0.1mm~2.0cm、より好ましくは0.1mm~1.0cm、さらに好ましくは0.1mm~0.5cmである。
さらに、本発明の方法は、好ましくは非分割フロースルー電解セル内で、バッチ式または連続的に実施され得る。
好ましくは、本発明の方法は、いずれの場合も、非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素1ミリモルに対し、190C(2F)~970C(10F)、より好ましくは320C~820C、特に好ましくは350C~800C、さらにより好ましくは380C~775C、最も好ましくは380C~450Cの電荷量で実施される。
好ましくは、本発明の方法における電気化学的酸化は、定電流で実施される。
本発明の方法が実施される電流密度は、好ましくは少なくとも5mA/cm、または少なくとも10mA/cm、または少なくとも15mA/cm、または少なくとも20mA/cm、または20mA/cm~50mA/cmであり、上記の表面積は、電極の幾何学的面積を表す。
本発明による方法の重要な利点は、電流が酸化剤として使用されることであり、これは、再生可能な資源、すなわち、特に、バイオマス、太陽熱エネルギー、地熱エネルギー、水力発電、風力発電、または太陽光発電から得られる場合に特に環境に優しい作用剤となる。
本発明による方法は、例えば0℃~60℃、好ましくは5℃~50℃、より好ましくは10℃~40℃、特に好ましくは15℃~30℃の範囲内の温度で、広い温度範囲にわたって実施できる。
本発明による方法は、高圧または減圧で実施され得る。本発明による方法を高圧で実施する場合、16バールまでの圧力が好ましく、6バールまでの圧力が特に好ましい。
同様に、好ましくは、本発明による方法は、大気圧で実施され得る。
本発明の方法によって製造される生成物は、当業者に知られている通常の方法、特に抽出、結晶化、遠心分離、沈殿、蒸留、蒸発またはクロマトグラフィーにより、単離および精製され得る。
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
一般情報および方法
分析品質の化学物質は、通常の供給元(TCI社、Aldrich社、Acros社など)から入手して使用した。酸素は、ドイツ、デュッセルドルフのNippon Gases Deutschland GmbH社から2.5品質で入手し、そのまま使用した。
電極材料は、ガラス状炭素(Sigradur(登録商標)G、ドイツ、ティーアーハウプテンのHTW Hochtemperatur Werkstoffe GmbH社製)を使用した。
高性能液体クロマトグラフィーを、SIL 20A HTオートサンプラー、CTO-20ACカラムオーブン、溶離液勾配調整用の2つのLC-20ADポンプモジュール、SPD-M20Aダイオードアレイ検出器、CBM-20Aシステムコントローラ、Eurospher II 100-5 C18カラム(150×4mm、ベルリンのKnauer社)を備えたShimazu HPLC-MSで実施した。溶離液:アセトニトリル/水/ギ酸(1体積%)(10分で10%ACNから90%ACNまで+10分で100%ACN)。質量分析測定を、日本のShimazu社製LCMS-2020で実施した。
1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルを、Bruker Avance II 400(400MHz、Z勾配およびATM付き5mm BBFOプローブ、SampleXPress 60オートサンプラー、ドイツ、カールスルーエのAnalytische Messtechnik社)を用いて 25℃で記録した。
電気分解に使用した非分割テフロン(登録商標)セルについては、文献に記載されている(a)C.Gutz、B.Klockner、S.R.Waldvogel、Org.Process Res.Dev.2016年、20、26~32頁;b)A.Kirste、G.Schnakenburg、F.Stecker、A.Fischer、S.R.Waldvogel、Angew.Chem.Int.Ed.2010年、49、971~975頁;Angew.Chem.2010年、122、983~987頁。(SIを参照)。)ステンレス鋼ブロックを備えたこれらのセルのフルレンジは、IKAスクリーニングシステム(ドイツ、シュタウフェンのIKA-Werke GmbH&Co.KG)としても市販されている。電極の寸法は、3cm×1cm×0.3cmであった。
ガスを、オランダ、ヴィーネンダールのBrooks Instrument B.V.社製のモデル5850Sマスフローコントローラ(MFC)2台により、制御された方法で導入した。これは、酸素の導入用に1台のコントローラを使用し、窒素の導入用に1台のコントローラを使用して行った。コントローラを、Smart DDEおよびMatlab R2017bソフトウェアによって制御した。体積流量を、デュイスブルクのKrohne Messtechnik GmbH社製のDK800フロート原理流量計によって付加的に監視した。実施したすべての実験において、全体の体積流量は、20mL/分で一定であった。これは、使用したMFCによって制限されるが、達成可能な最大体積流量でもある。2つのガスの体積流量割合を、MFCと関連ソフトウェアを使用して調整した。次の供給元のガスボンベを使用した:酸素2.5(デュッセルドルフのNippon Gases Deutschland GmbH社製)、窒素4.8(ミュンスターのWestfalen AG社製)、または窒素5.0(デュッセルドルフのNippon Gases Deutschland GmbH社製)。この目的のために、装置には、ガス分配器(ガスアダプターを含む)と、電解セル用のテフロン(登録商標)製の蓋と、が装備されていた。
一般手順 GP1
非分割電解セル(100mL容量の三口丸底フラスコ、電極ホルダー付きNS29テフロン(登録商標)ストッパー、マグネティックスターラーバー)に、シクロアルカン(5.0ミリモル)と、テトラブチルアンモニウム硝酸塩(0.5当量)とを入れ、これをアセトニトリル(25mL)に溶解させた。セルには、0.5cm間隔で配置されたガラス状炭素電極(3cm×1cm×0.3cm)が取り付けられていた。電極の浸漬表面積は、1.3cmであった。酸素を、必要に応じて、NS14.5ガス入口アダプターを介して、反応容器のガス空間に導入した。定電流電解を、20℃~30℃、電流密度10mA/cmで実施した。
シクロアルカンに対して、4~5F(1930C~2412C)の電荷を印加した後、溶媒とシクロアルカンの未反応部分とを、減圧下で蒸留して除去した。残留物を、シクロヘキサンおよび水(各20mL)に取り入れた。相分離後、水相をシクロヘキサン(20mL)で抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸留して除去した。この蒸留の残留物として、生成物が残った。
実験例1:
シクロヘキサノンの調製:
GP1に従い、シクロヘキサン(0.421g、5.0ミリモル、1.0当量)をアセトニトリル(25mL)に溶解させ、5Fを適用して、酸素雰囲気下、25℃で定電流電気分解した。GP1に従って処理した後、無色の液体として生成物が得られた(収率:6%、30mg、0.31ミリモル)。H NMR(400MHz、CDCl)δ[ppm]=2.36-2.32(m、4H)、1.90-1.84(m、4H)、1.75-1.70(m、2H)。分析データは、文献値と一致した。収率の測定では、存在する溶媒シグナルを積分比によって計算から差し引いた。
実験例2:
シクロヘプタノンの調製:
GP1に従い、シクロヘプタン(0.491g、5.0ミリモル、1.0当量)をアセトニトリル(25mL)に溶解させ、4Fを適用して、周囲空気雰囲気下、21℃で定電流電気分解した。電極の浸漬表面積:1.5cm。次に、溶媒を減圧下で蒸留して除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル=10:0~7:3)で精製した。蒸留により溶媒を除去した後、無色の液体として生成物が得られた(収率:20%、0.112g、1.00ミリモル)。H NMR(400MHz、CDCl)δ[ppm]=2.49-2.47(m、4H)、1.69-1.64(m、8H)。分析データは文献値と一致した。
実験例3:
シクロオクタノンの調製:
GP1に従い、シクロオクタン(0.561g、5.0ミリモル、1.0当量)をアセトニトリル(25mL)に溶解させ、4Fを適用し、酸素雰囲気下、30℃で定電流電気分解した。GP1に従って処理した後、無色の液体として生成物が得られた(収率:42%、0.261g、2.07ミリモル)。Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル=7:3):0.66。H NMR(400MHz、CDCl)δ[ppm]=2.39-2.36(m、4H)、1.87-1.81(m、4H)、1.54-1.48(m、4H)、1.36-1.32(m、2H)。分析データは文献値と一致した。
実験例4:
シクロデカノンの調製:
GP1に従い、シクロデカン(0.701g、5.0ミリモル、1.0当量)をアセトニトリル(25mL)に溶解させ、5Fを適用し、酸素雰囲気下、30℃で定電流電気分解した。次に、溶媒を減圧下で蒸留して除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(CH/EA=10:0~9:1)で精製した。溶媒を蒸留で除去し、減圧下で乾燥させた後、無色の液体として生成物が得られた(収率:12%、90mg、0.59ミリモル)。Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル=95:5):0.28;H NMR(300MHz、CDCl)δ[ppm]=2.49-2.45(m、4H)、1.85-1.76(m、4H)、1.47-1.43(m、4H)、1.32-1.29(m、6H)。分析データは文献値と一致した。収率の測定では、存在する溶媒シグナルを積分比によって計算から差し引いた。
実験例5:
シクロドデカノンの調製:
GP1に従い、シクロドデカン(0.842g、5.0ミリモル、1.0当量)をイソブチロニトリル(25mL)に溶解させ、4Fを適用し、酸素雰囲気下、27℃で定電流電気分解した。次に、溶媒を減圧下で蒸留して除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル=10:0~9:1)で精製した。溶媒を蒸留して除去し、減圧下で乾燥させた後、無色の固体として生成物が得られた(収率:21%、0.194g、1.06ミリモル)。Rf(シクロヘキサン/酢酸エチル=9:1):0.48。H NMR(400MHz、CDCl)δ[ppm]=2.47-2.44(m、4H)、1.72-1.69(m、4H)、1.31-1.26(m、14H)。分析データは文献値と一致した。
実験例6:
以下の実験では、電気化学的酸化のさまざまなパラメータを変化させて、その影響を調査した。これらの調査は、いずれの場合も、シクロオクタンのシクロオクタノンへの電気化学的酸化について実施した。
一般手順 GP2a:
電気分解を、分割されていない5mL容量PTFEセル内で実施した。このために、セルに、導電性塩(0.2~1.0当量)と基質(シクロオクタン、0.5~2.5ミリモル)とを入れ、これらを溶媒(5mL)に溶解させた。セルには、0.5cm間隔でガラス状炭素陽極とガラス状炭素陰極が備え付けられていた(電極寸法:7cm×1cm×0.3cm、浸漬表面積1.8cm)。セルを、加熱/冷却可能なステンレス鋼ブロックに固定し、アダプタを介して調査中のガス混合物(100体積%のOから0体積%のO)を供給した。電流密度(5~60mA/cm)、温度(5~50℃)、撹拌速度(100~600rpm)、および電荷量(4~8F)を変化させながら、電気分解を定電流で実施した。電荷量の適用後、反応溶液2滴を採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。次に、1,3,5-トリメトキシベンゼン(1当量)をNMR標準として溶液に加え、溶媒を蒸留(45℃、200ミリバール)によって除去した。シクロアルカノン生成物の収率をH-NMR分析によって測定した。
GC分析では、反応溶液2滴を約330mgのシリカゲル60Mを通して酢酸エチルで溶出した。約1.5mLの濾液をGCバイアルに回収し、GC-FIDおよびGC-MSで酸化生成物を調べた。
一般手順 GP2b:
電気分解を、分割されていない5mL容量PTFEセル内で行った。このために、セルに、導電性塩(0.2~1.0当量)と基質(シクロオクタン、0.5~2.5ミリモル)とを入れ、これらを溶媒(5mL)に溶解させた。セルには、0.5cm間隔でガラス状炭素陽極とガラス状炭素陰極が備え付けられていた(電極寸法:7cm×1cm×0.3cm、浸漬表面積1.8cm)。セルを、加熱/冷却可能なステンレス鋼ブロックに固定し、アダプタを介して調査中のガス混合物(100%体積のOから0%体積のO)を供給した。電流密度(5~60mA/cm)、温度(5~50℃)、撹拌速度(100~600rpm)、および電荷量(4~8F)を変化させながら、電気分解を定電流で実施した。電荷量の適用後、10mgの1,3,5-トリメトキシベンゼンを内部標準として反応溶液に加えた。反応溶液3滴を採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析と生成物の定量化を行った。これらを、約330mgのシリカゲル60Mを通して酢酸エチルで溶出した。約1.5mLの濾液をGCバイアルに回収し、GC-FIDおよびGC-MSで酸化生成物を調べた。定量化については、ガスクロマトグラフの事前較正によって行った。
以下のスキーム1に示す結果は、上記のGP2aを使用して得られた。
各場合において変更したパラメータに従ってグループ化した、さらなる例示的な調査を以下に示す。
・電荷量(シクロオクタン1に関するF)
・電流密度(mA/cm
・O/N
・当量(シクロオクタン1/硝酸塩に対する)
・撹拌速度(rpm)
・温度(℃)
・メディエーター/導電性塩としての硝酸塩
・反応媒体
・電極材料
・硝酸塩の陽イオンの変化
特に明記しない限り、実験は、少なくとも2回行い、標準偏差を含む平均値を測定した。化合物1、2、3、4の参照番号は、スキーム1の参照番号に対応している。
実験例6a-電荷量
電荷量については、4F~8F(1ミリモルの基質シクロオクタン1では、386C~772Cに相当)の範囲で調査した。
表1:さまざまな電荷量の調査
調査した電荷量の範囲では、生成物および副生成物の生成に関して変化は見られなかった。電気分解時間が短いため、一連の試験を4Fで継続した。
実験例6b-電流密度:
電流密度については、5mA/cm~60mA/cmの範囲で変化させた。
電解液中の電極表面積は、1.8cmであった。
表2:さまざまな電流密度の調査
60mA/cmを適用すると、2の収率が明らかに低下していることがわかる。代わりに、同等の程度でシクロオクタノール3が生成される。
一連の試験を20mA/cmで継続し、さまざまな大気O含有量を調査した。
実験例6c-20mA/cmでのO/N
最初に、20mA/cmでの大まかなO/N比(100:0、20:80、0:100)を調査した。比率20:80は、空気の組成に近いことから選択した。
表3:20mA/cmでのさまざまなO/N比の調査
純窒素雰囲気下(比率0:100)では、生成物の生成は観察されなかった。したがって、未反応の基質画分または副生成物について、定量的な説明はできなかった。しかし、ガスクロマトグラムでは、シクロオクタノール3の痕跡が検出された。O含有量を初期標準電流密度10mA/cmに関連付けられるように、含有量のより小さな段階的変化(グラデーション)で、記載の電流密度でこれらを繰り返した。
実験例6d-10mA/cmでのO/N
表に示された含有量の段階的変化(グラデーション)に加えて、ガスを供給しない実験も周囲条件下で行った(「空気」と記載する)。
表4:10mA/cmでのさまざまなO/N比の調査
上記の調査では、反応物1の転化と生成物2の生成とは、酸素の割合が20 体積%、電流密度が10mA/cmのときに最も高くなった。加えて、Oの割合が低いと、シクロオクタノール3の生成がわずかに増加した。
シクロオクタノン2の収率が高く、窒素の割合が高く安全性が向上したため、これらの条件を、後続の反応(スキーム2)の比較条件として選択し、他のパラメータをこれらの条件に基づいて変更した。
実験例6e-メディエーターのモル量および当量
溶媒(アセトニトリル、5mL)中のさまざまな基質とメディエーターの濃度を調べるために、基質のモル量と導電性塩/メディエーターの当量数を変えた。
表5:硝酸塩のさまざまなモル量および当量の調査
一般的に、反応物1から生成物2への転化は、基質のモル量が低い場合(1ミリモル以下、0.2モル/Lに相当)の方が、モル量が高い場合よりもわずかに良好であった。基質に対するメディエーター濃度を0.5当量より上または下に変化させても、2の収率にわずかな差しか生じなかったため、このことから、オキソ官能化のための酸素源は、溶解した分子状酸素であると推測できる。
実験例6f-撹拌速度
ケトン合成のための酸素源は、大気から得られるため、撹拌速度は、反応の経過にかなりの影響を及ぼすことが予想される。
表6:さまざまな撹拌速度の調査
表6の結果は、350rpm付近での最大値を示している。ただし、速度の影響は、スターラーとセルの形状によって左右されるため、固定値として見なすべきではない。
実験例6g-温度
記載の温度は、加熱ブロック/クライオスタットの温度に関係している。電気分解の開始前に、電解液を、約30分間、5℃および50℃で撹拌した。
表7:さまざまな温度の調査
生成物の生成に関しては、30℃より高い温度と低い温度で収率がわずかに低下することがわかる。したがって、反応は、温度にわずかにしか左右されないようである。さらに、温度が高いと、未反応基質の画分が小さくなるが、これはおそらく、その揮発性と電解セルのオープン系に起因するものである。
実験例6h-導電性塩/メディエーター
導電性塩の陰イオンとしての硝酸塩が反応に対してメディエーター効果も有するか否かを調べるために、標準のテトラブチルアンモニウム硝酸塩を他の一般的な導電性塩と比較した。陽イオン成分は、変更しなかった。標準とは異なる導電性塩を、それぞれ1回しか電気分解で試験していないため、平均値は記録されていない。
表8:さまざまな導電性塩の調査
表8の結果は、反応が硝酸陰イオンに左右されることを示している。生成物2は、異なる導電性塩陰イオンでは、ごくわずかにしか生成されなかった。
実験例6-GP2a-09、6-GP2a-28、6-GP2a-29、および6-GP2a-30は、比較例である。
実験例6i-溶媒
表9:さまざまな溶媒の調査
反応は、列挙した溶媒で比較的よく進行した。アセトンでは、未反応の基質の割合がさらに高くなった。
反応を3-ペンタノンでも行ったが、溶媒シグナルと生成物シグナルが重なり合ったため、H NMRで収率を測定することができなかった。しかし、ガスクロマトグラフィーによる分析では、この場合も、生成物2が選択的に生成されたことが確認された。
当初は、Oは、アセトニトリル中よりもイソブチロニトリル中で溶解性が高いと想定していたため、100%のO雰囲気での比較も同様に行った(表10)。
表10:100体積%のOでのさまざまな溶媒の調査
アセトニトリルとイソブチロニトリルを使用した場合の結果は、同等である。具体的には、イソブチロニトリルの使用による2の収率の明らかな増加は、達成されなかった。一方、未反応の1の割合が大幅に高くなっており、これは利点であると考えられる。その後、ニトロプロパンでの反応を、100%のO雰囲気下で行い、ニトロ化アルカンも溶媒として使用できることを確認した。
実験例6j-電極材料
さまざまな炭素ベースの電極材料で電気分解を行った。GC標準とは異なる電極材料を、それぞれ1回しか電気分解で試験していないため、平均値は記録されていない。
表11:さまざまな電極材料の調査
使用したすべての電極材料で反応が起こり、生成物2が生成された。グラファイト電極では、電気分解後に、黒色粒子の形で電極材料がわずかに剥離することが観察された。これは、安定性が低いことに起因する。
実験例6k-導電性塩/メディエーターの陽イオンの変更
標準的なテトラブチルアンモニウム以外のさまざまな陽イオンを調査した。以下を使用した:
・ヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩([C1942N][NO])
・1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム硝酸塩([C15][NO])
・メチルトリオクチルアンモニウム硝酸塩([C2554N][NO])
・テトラブチルホスホニウム硝酸塩(PBuNO
陰イオン性硝酸塩成分は、変更しなかった。標準とは異なる導電性塩を、それぞれ1回しか電気分解で試験していないため、平均値は記録されていない。
表12:さまざまな陽イオンの調査
シクロアルカンのケトンへの酸化は、主に、硝酸塩を陰イオン成分として作用することがわかる(実験例6hを参照)。アンモニウム陽イオン上の長鎖アルキル基は、同じ条件下で、テトラブチルアンモニウム陽イオンと比較して、わずかに高い収率をもたらす。この反応は、陽イオンとして、N-アルキル化窒素ヘテロ芳香族化合物を使用した場合、そしてテトラアルキルホスホニウム陽イオンを使用した場合も作用する。
実験例6l:
25℃および標準圧力におけるアセトニトリル/NBuNOへの酸素溶解度:
表13:大気中の酸素含有量の関数としてのMeCN/NBuNOの溶解酸素濃度
一般手順 GP3:
ガス入口アタッチメント付きの25mL容量非分割ビーカーセル内で、シクロアルカン(5.0ミリモル)とテトラブチルアンモニウム硝酸塩(0.5当量)とを、アセトニトリル(25mL)に溶解させた。セルには、0.5~1.0cm間隔でガラス状炭素電極(7cm×1cm×0.3cm)が備え付けられていた。電極の浸漬表面積は、1.3cmであった。定電流電解を、20~30℃、電流密度10mA/cmで実施した。シクロアルカンに対して、4Fの電荷量を適用した後、溶媒と、シクロアルカンの未反応部分とを減圧下で蒸留して除去した。残留物を、シクロヘキサンおよび水(各20mL)に取り入れた。相分離後、水相をシクロヘキサン(20mL)で抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧蒸留で除去した。生成物は、この蒸留の残留物として残った。
別の定量:電荷量を適用した後、約50mgの1,3,5-トリメトキシベンゼンを内部標準として反応溶液に加えた。反応溶液3滴を採取し、ガスクロマトグラフィーによる分析と生成物の定量化を行った。これらを、約330mgのシリカゲル60Mを通して酢酸エチルで溶出した。約1.5mLの濾液をGCバイアルに回収し、GC-FIDおよびGC-MSで酸化生成物について調査した。定量化については、ガスクロマトグラフの事前較正によって行った。
実験例7:
次に、電極間の距離の影響を調査した。
表14:電極間のさまざまな距離の調査
表14の実験例から、電極間の距離が短いほど、出発物質から生成物2への転化がより良好に進行することがわかる。

Claims (48)

  1. 非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素の電気化学的酸化により、非置換または少なくとも一置換シクロアルカノンを製造する方法であり、
    (a)少なくとも1つの非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を準備する工程、
    (b)少なくとも1つの無機もしくは有機硝酸塩を準備する工程、
    (c)電気分解セルの酸素が存在する反応媒体中において、前記工程(b)で準備した前記無機もしくは有機硝酸塩の存在下で、前記工程(a)で準備した前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を電気化学的に酸化する工程
    を含み、
    前記飽和脂環式炭化水素の置換基は、メチル、フェニル、またはベンジルからなる群からそれぞれ独立して選択され、フェニルまたはベンジルはそれぞれ、置換されていないか、またはF、Cl、BrおよびNOからなる群からそれぞれ独立して選択される置換基で一置換または多置換されていてもよい、方法。
  2. 前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素は、単環式または二環式である、請求項1記載の方法。
  3. 前記単環式または二環式の飽和脂環式炭化水素は、環系中に、5~18個の炭素原子を有し、置換されていないか、または置換基で一置換または多置換されている、請求項1記載の方法。
  4. 前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素は、環内に6~12個の炭素原子を有する単環式飽和炭化水素であり、前記脂環式炭化水素は、置換されていないか、またはメチル、フェニル、またはベンジルからなる群からそれぞれ独立して選択される置換基で一置換または多置換されている、請求項1記載の方法。
  5. 前記飽和脂環式炭化水素は、置換されておらず、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカンおよびシクロドデカンからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
  6. 存在する前記有機硝酸塩は、一般式[陽イオン][NO ]の硝酸塩であり、式中、[陽イオン]は、一般構造[R](式中、R、R、R、Rは、C~C16アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される。)を有するアンモニウムイオン、
    一般構造(I):
    (式中、RおよびRは、直鎖または分岐鎖C~C18アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され、Rは、Hおよび直鎖または分岐鎖C~C18アルキルからなる群から選択される。)
    のイミダゾリウム陽イオン、
    一般構造(II):
    (式中、Rは、C~C18アルキルからなる群から選択され、R、RおよびRは、Hおよび直鎖または分岐鎖C~C18アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される。)
    のピリジニウム陽イオン、および
    一般構造[R1a2a3a4a](式中、R1a、R2a、R3a、R4aは、C~C16アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される。)のホスホニウムイオン
    からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
  7. 前記一般式(I)の前記イミダゾリウム陽イオンにおいて、ラジカルRおよびRは、直鎖または分岐鎖C~C18アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され、Rは水素である、請求項6記載の方法。
  8. 前記一般式(II)の前記ピリジニウム陽イオンにおいて、ラジカルR1は、直鎖または分岐鎖C~C18アルキルであり、ラジカルR、RおよびRは、直鎖または分岐鎖C~Cアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される、請求項6記載の方法。
  9. 前記有機硝酸塩は、テトラ-n-ブチルアンモニウム硝酸塩、メチルトリ-n-オクチルアンモニウム硝酸塩、テトラ-n-ブチルホスホニウム硝酸塩、メチルトリ-n-オクチルホスホニウム硝酸塩および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム硝酸塩からなる群から選択される、請求項6記載の方法。
  10. 前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素または前記無機もしくは有機硝酸塩を最初に投入し、前記反応媒体と合わせ、その後、最初に前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を投入した場合は前記無機もしくは有機硝酸塩を投入し、最初に前記無機もしくは有機硝酸塩を投入した場合は前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素を投入する、請求項1記載の方法。
  11. 前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素と、前記無機もしくは有機硝酸塩とを最初に投入し、その後、前記反応媒体と合わせる、請求項1記載の方法。
  12. 前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素と、前記無機もしくは有機硝酸塩とを、同時にまたは順番に前記反応媒体に添加する、請求項1記載の方法。
  13. 前記反応媒体は、乾燥形態で、または水と混合されて存在する極性の非プロトン性反応媒体であり、極性の非プロトン性反応媒体は、脂肪族ニトリル、脂肪族ケトン、脂環式ケトン、ジアルキルカーボネート、環状カーボネート、ラクトン、脂肪族ニトロアルカン、ジメチルスルホキシド、エステルおよびエーテル、またはこれらの成分の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
  14. アセトニトリル、イソブチロニトリル、アジポニトリル、アセトン、ジメチルカーボネート、メチルエチルケトン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン、ニトロメタン、ニトロプロパン、tert-ブチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトンおよびε-カプロラクトン、またはこれらの成分の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される極性の非プロトン性反応媒体が、水と混合されて、前記反応媒体として存在する、請求項13記載の方法。
  15. アセトニトリル、イソブチロニトリル、アジポニトリル、ジメチルカーボネートおよびアセトン、またはこれらの成分の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される反応媒体が、水と混合されて、存在する、請求項13記載の方法。
  16. 前記反応媒体は、乾燥形態のアセトニトリル、イソブチロニトリルまたはアジポニトリルである、請求項13記載の方法。
  17. 前記反応媒体は、1つまたは複数の他の物質が溶解することを可能にする可溶化成分を含む、請求項1記載の方法。
  18. 第一級アルコール、第二級アルコール、モノケトン、もしくはジアルキルカーボネート、またはこれらの成分の少なくとも2つの混合物が、水と混合されて、可溶化成分として存在する、請求項17記載の方法。
  19. 脂肪族C1-6アルコールからなる群から選択される1つまたは複数のアルコールが、水と混合されて、1つまたは複数の可溶化成分として存在する、請求項17記載の方法。
  20. ジメチルカーボネートが、少なくとも1つのC1-6アルコールからなる群から選択される少なくとも1つのC1-6アルコールと混合されて、前記反応媒体として存在する、請求項1記載の方法。
  21. 前記反応媒体は、水を含む、請求項20記載の方法。
  22. 1つまたは複数の可溶化成分を、存在する反応媒体の総量に対し、50体積%未満の量で添加する、請求項17記載の方法。
  23. 前記有機硝酸塩を、前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素の使用量に対し、0.1~2.0当量で使用する、請求項1記載の方法。
  24. 前記反応媒体と空間的に連通する酸素含有ガス雰囲気を準備する、請求項1記載の方法。
  25. 前記酸素含有ガス雰囲気を前記反応媒体に導入することにより、または前記酸素含有ガス雰囲気の存在下で反応媒体を攪拌することにより、前記酸素含有ガス雰囲気と前記反応媒体との間のガス交換を行う、請求項24記載の方法。
  26. 前記酸素含有ガス雰囲気は、空気である、請求項24記載の方法。
  27. 前記酸素含有ガス雰囲気を前記反応媒体に導入することにより、または前記酸素含有ガス雰囲気の存在下で反応媒体を攪拌することにより、前記酸素含有ガス雰囲気と前記反応媒体との間でガス交換を行う、請求項26記載の方法。
  28. 前記ガス雰囲気を前記反応媒体に導入することにより、ガス交換を行う、請求項27記載の方法。
  29. 前記ガス雰囲気の存在下で液相を撹拌することにより、ガス交換を行う、請求項27記載の方法。
  30. 前記電気化学的酸化を制御するために攪拌を用いる、請求項29記載の方法。
  31. 前記反応媒体に溶解している酸素の量は、前記反応媒体1L当たり、少なくとも1ミリモルである、請求項1記載の方法。
  32. 前記電解セルは、陽極と陰極とが分割されずに同じ区画に配置されている非分割電解セルである、請求項1記載の方法。
  33. 前記非分割電解セルは、ガラス状炭素陽極、グラファイト陽極、またはBDD陽極を備える、請求項1記載の方法。
  34. 前記非分割電解セルは、ガラス状炭素陰極、グラファイト陰極、またはBDD陰極を備える、請求項1記載の方法。
  35. 前記電解セル内の電極間の距離は、0.1mm~2.0cmである、請求項1記載の方法。
  36. 前記電気化学的酸化に使用される電荷量は、前記非置換または少なくとも一置換の飽和脂環式炭化水素1ミリモル当たり、少なくとも190C(2F(F:ファラデー定数))~970C(10F(F:ファラデー定数))である、請求項1記載の方法。
  37. 電流密度は、少なくとも5mA/cmであり、前記表面積は、前記電極の幾何学的面積を表す、請求項1~請求項36のいずれか一項記載の方法。
  38. 電流密度が少なくとも20mA/cm~50mA/cmであり、前記表面積は、前記電極の幾何学的面積を表す、請求項1記載の方法。
  39. 非分割セル内で実施する、請求項1記載の方法。
  40. 前記電気化学的酸化に使用する電流は、再生可能な資源から得られる、請求項1記載の方法。
  41. 0℃~60℃の範囲内の温度で、前記電気化学的酸化を行う、請求項1記載の方法。
  42. 大気圧下で実施する、請求項1記載の方法。
  43. 大気圧よりも低い圧力の減圧下で実施する、請求項1記載の方法。
  44. 大気圧よりも高い圧力の高圧下で実施する、請求項1記載の方法。
  45. バッチ式で実施する、請求項1記載の方法。
  46. 連続式に実施する、請求項1記載の方法。
  47. 触媒を添加することなく実施する、請求項1記載の方法。
  48. 酸素または空気中の酸素以外のさらなる酸化剤を添加しない、請求項1記載の方法。

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