JP7842381B2 - 塩化ニッケル水溶液の製造設備および製造方法 - Google Patents

塩化ニッケル水溶液の製造設備および製造方法

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Description

本発明は、塩化ニッケル水溶液の製造設備および製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ニッケル原料を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を製造する設備および方法に関する。
塩化ニッケルはニッケルめっきに用いられる。また、塩化ニッケルは積層セラミックコンデンサの電極材料および導電ペースト用のニッケル粉の原料などとしても用いられる。上記塩化ニッケルとして、塩化ニッケル水溶液、または塩化ニッケル水溶液を晶析して得られる塩化ニッケル結晶が用いられる。
特許文献1、2には、ニッケル原料を塩酸で溶解して塩化ニッケル水溶液を得る方法が開示されている。また、特許文献3には、ニッケル原料を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を得る方法が開示されている。
特開平11-152592号公報 特表平7-507036号公報 特開2016-121370号公報
塩素浸出により得られた塩化ニッケル水溶液には塩素ガスが溶存している。溶存塩素ガスは塩化ニッケル水溶液の温度上昇などにより放出されることがある。塩素ガスは刺激臭があり、毒性が強いため、塩化ニッケル水溶液に溶存している塩素ガスを予め除去することが求められる。
本発明は上記事情に鑑み、溶存塩素ガスが除去された塩化ニッケル水溶液が得られる塩化ニッケル水溶液の製造設備および製造方法を提供することを目的とする。
第1発明の塩化ニッケル水溶液の製造設備は、第1ニッケル原料を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を得る溶解槽と、前記溶解槽から排出された前記塩化ニッケル水溶液と第2ニッケル原料とを接触させて、前記塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスにより前記第2ニッケル原料を浸出する調整槽と、を備えることを特徴とする。
第2発明の塩化ニッケル水溶液の製造設備は、第1発明において、前記調整槽は、槽本体と、前記槽本体を上下に区画するよう設けられ、前記第2ニッケル原料が載置される通液板と、前記槽本体の前記通液板より下部に前記塩化ニッケル水溶液を供給する供給口と、前記槽本体の前記通液板より上部から前記塩化ニッケル水溶液を排出する排出口と、を備えることを特徴とする。
第3発明の塩化ニッケル水溶液の製造方法は、第1ニッケル原料を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を得る浸出工程と、前記塩化ニッケル水溶液と第2ニッケル原料とを接触させて、前記塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスにより前記第2ニッケル原料を浸出する脱塩素ガス工程と、を備えることを特徴とする。
第4発明の塩化ニッケル水溶液の製造方法は、第3発明において、前記第2ニッケル原料は電気ニッケルであることを特徴とする。
第1発明によれば、塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスが第2ニッケル原料の浸出に消費されることで、塩化ニッケル水溶液から塩素ガスを除去できる。
第2発明によれば、塩化ニッケル水溶液が調整槽の内部を下から上に流れる過程で第2ニッケル原料と接触するので、塩化ニッケル水溶液と第2ニッケル原料との接触効率がよく、塩素ガスが除去されやすい。
第3発明によれば、塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスが第2ニッケル原料の浸出に消費されることで、塩化ニッケル水溶液から塩素ガスを除去できる。
第4発明によれば、第2ニッケル原料が電気ニッケルであるので、塩化ニッケル水溶液へのニッケル以外の成分の混入を抑制できる。
一実施形態に係る製造設備の全体構成図である。 溶解槽の縦断面図である。 始液槽の縦断面図である。 調整槽の縦断面図である。 (1)原料装入工程および(2)給液工程における溶解槽の状態を示す説明図である。 (3)減圧工程および(4)塩素ガス供給工程における溶解槽の状態を示す説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(製造設備)
本発明の一実施形態に係る塩化ニッケル水溶液の製造設備は、ニッケル原料を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を製造する設備である。ニッケル原料はニッケルを含有するものであれば特に限定されない。ただし、ニッケル原料として電気ニッケルを用いれば、特段の浄液処理を行なわなくても高純度の塩化ニッケル水溶液を得ることができる。
電気ニッケルは、例えば、ニッケルの湿式製錬により製造できる。ニッケルの湿式製錬では、ニッケルマット、ニッケル・コバルト混合硫化物などの原料を塩素浸出する。浸出液から不純物を除去する浄液処理を行ない、塩化ニッケル水溶液を得る。塩化ニッケル水溶液を電解液として用いて電解採取することにより電気ニッケルが得られる。
溶解効率を高くするためには、電気ニッケルは小さいほうが好ましい。例えば、板状の電気ニッケルを100mm×100mm以下の寸法に切断したものを用いることが好ましい。また、ボタン形の電気ニッケルを用いてもよい。電気ニッケルの寸法が小さいほど塩化ニッケル水溶液との接触面積が大きくなるため、塩素浸出が効率的に進行する。
図1に示すように、本実施形態の製造設備AAは、溶解槽1、始液槽2、調整槽3、および終液槽4を有する。また、製造設備AAは、各種の測定器から測定値を取得するとともに、各種の弁、ポンプなどの動作を制御する制御装置5を有する。制御装置5としてPLCなどのコンピュータを用いることができる。
溶解槽1はニッケル原料を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を得る槽である。以下、溶解槽1で処理されるニッケル原料を第1ニッケル原料と称する。溶解槽1は第1ニッケル原料を塩素浸出できればよく、その構成は特に限定されないが、以下に説明する構成とすることができる。
図2に示すように、溶解槽1は槽本体10を有する。槽本体10は気密性を有する槽であることが好ましい。槽本体10の形状は特に限定されず円筒形でもよいし、角筒形でもよい。
槽本体10の天板の中央には装入口12が設けられている。第1ニッケル原料N1は装入口12から槽本体10の内部に装入される。装入口12は蓋13で閉塞される。また、装入口12と蓋13との間を水封する水封部が設けられている。したがって、蓋13で装入口12を閉塞し、水封すれば、槽本体10を気密にできる。
槽本体10の内部には簀子板15が設けられている。簀子板15は槽本体10の上下中央付近において横断するよう水平に設けられている。槽本体10の内部空間は簀子板15により上下2つの空間に区画されている。簀子板15として、パンチングプレート、ウェッジワイヤースクリーンなど、複数の孔またはスリットを有する板材が用いられる。装入口12から装入された第1ニッケル原料N1は簀子板15の上に載置される。一方、液は簀子板15を通過して、槽本体10の上部空間から下部空間に流下する。
槽本体10の天板には給液口16が設けられている。給液口16は給液装置に接続されている。給液装置から供給された溶解始液は給液口16から槽本体10の内部に流入する。給液装置の詳細は後述する。
槽本体10の側壁には、上部にオーバーフロー口17、下部に排液口18が設けられている。オーバーフロー口17は簀子板15より上方であって、槽本体10の天板に近い位置に設けられている。一方、排液口18は簀子板15より下方であって、簀子板15に近い位置に設けられている。オーバーフロー口17および排液口18は、いずれも、槽本体10内の液の排出に用いられる。
槽本体10の側壁には、さらに、抜出口19が設けられている。抜出口19は排液口18より下方であって、槽本体10の底に近い位置に設けられている。槽本体10の天板には戻し口20が設けられている。
抜出口19と戻し口20とは小循環管51で接続されている。小循環管51には小循環ポンプ71が設けられている。小循環ポンプ71の吸込側は抜出口19に接続されており、吐出側は戻し口20に接続されている。したがって、小循環ポンプ71を駆動させると、槽本体10の下部から液が抜き出され、その液を槽本体10の上部に戻すことができる。
小循環管51には熱交換器73が設けられている。熱交換器73は小循環管51を流れる液を冷却する。したがって、槽本体10から抜き出された液は、冷却された後に、槽本体10に戻される。
槽本体10の内部には、天板の下面近くに、噴射部21が設けられている。戻し口20は噴射部21に接続している。小循環管51を循環した液は噴射部21から噴射され、第1ニッケル原料N1を湿潤させる。
噴射部21は、同心状に配置された小環状管21aおよび大環状管21bからなる。小環状管21aおよび大環状管21bには、それぞれ、所定間隔で複数の孔が設けられており、その孔から液が噴射される。装入口12は小環状管21aの内側に配置されている。したがって、第1ニッケル原料N1の装入時に噴射部21が邪魔とならない。
なお、本実施形態では、溶解始液は給液口16からそのまま流下する。これに代えて、給液口16を噴射部に接続してもよい。この噴射部は戻し口20に接続された噴射部21と共通のものとしてもよいし、別部材としてもよい。給液口16を噴射部に接続すれば、溶解始液を第1ニッケル原料N1に噴射できる。
槽本体10には塩素ガス供給管52が接続されている。塩素ガス供給管52の開口端は槽本体10の内部であって、簀子板15より下方に位置している。塩素ガス供給管52の他方の端部は塩素ガス供給源74に接続されている。塩素ガス供給源74として液化塩素を封入したガスボンベなどを用いることができる。塩素ガス供給管52には流量制御弁61が設けられている。塩素ガス供給管52により槽本体10の内部に塩素ガスを供給できる。また、流量制御弁61の開度を調整することで塩素ガスの供給量を調整できる。塩素ガス供給管52、流量制御弁61、および塩素ガス供給源74は、溶解槽1に塩素ガスを供給する塩素ガス供給装置を構成する。
槽本体10の天板には圧力計22が設けられている。圧力計22により溶解槽1内の気相部の圧力を測定できる。
槽本体10の天板には環集口23が設けられている。環集口23には環集管53が接続されている。また、環集管53には排気弁62が設けられている。排気弁62を開けば槽本体10内部のガスを排気できる。また、排気弁62を閉じれば、槽本体10を気密にできる。
溶解槽1内の気相部は塩素ガス供給管52から供給された塩素ガスで満たされる。また、第1ニッケル原料N1は噴射部21から噴射された液によって湿潤する。これにより、塩素ガス雰囲気下で第1ニッケル原料N1が液膜で覆われた状態となる。塩素ガスが第1ニッケル原料N1を覆う液に吸収され、第1ニッケル原料N1の塩素浸出反応が進行し、塩化ニッケル水溶液が生成される。このように、溶解槽1内において第1ニッケル原料N1が塩素浸出されて塩化ニッケル水溶液が生成される。生成された塩化ニッケル水溶液は溶解槽1の下部に一時的に貯留され、排液口18または抜出口19から排出される。
図3に示すように、始液槽2は溶解始液を貯留する槽である。溶解始液は塩化ニッケル水溶液または水である。溶解始液として用いられる水は純水が好ましい。そうすれば、高純度の塩化ニッケル水溶液を得ることができる。始液槽2の形状は特に限定されず円筒形でもよいし、角筒形でもよい。また、始液槽2には溶解槽1のような気密性は要求されない。ただし、定常操業時において溶解始液には塩素ガスが溶存していることから、始液槽2の気相部も環集されることが好ましい。
始液槽2の下部には液出口31および液入口32が設けられている。また、始液槽2の天板には水添加口33および塩酸添加口34が設けられている。始液槽2は撹拌機35を有する。撹拌機35の駆動により溶解始液を撹拌できる。始液槽2にはpH計36が設けられている。pH計36により溶解始液のpHを測定できる。始液槽2には液位計37が設けられている。液位計37により始液槽2内の液位を測定できる。
図1に示すように、始液槽2の液出口31には給液管54の一端が接続されている。給液管54の他端は溶解槽1の給液口16に接続されている。給液管54には給液ポンプ72が設けられている。給液ポンプ72を駆動させると始液槽2内の溶解始液が溶解槽1に供給される。したがって、始液槽2、給液管54、および給液ポンプ72は、溶解槽1に溶解始液を供給する給液装置を構成する。
始液槽2の液入口32には排液管55の一端が接続されている。排液管55の他端は溶解槽1の排液口18に接続されている。排液管55には排液弁63が設けられている。したがって、排液弁63を開けば、溶解槽1で生成された塩化ニッケル水溶液が排液管55を介して始液槽2に排出される。給液管54および排液管55は始液槽2と溶解槽1との間で液を循環させる大循環流路を構成する。
溶解槽1のオーバーフロー口17にはオーバーフロー管56の一端が接続されている。オーバーフロー管56の他端は排液管55の排液弁63より下流側(始液槽2側)に接続されている。溶解槽1のオーバーフロー口17からオーバーフローした液はオーバーフロー管56および排液管55を介して始液槽2に排出される。
図3に示すように、始液槽2には水添加装置が設けられる。水添加装置は水供給源75、水供給管57、および流量制御弁64を有する。水供給源75として水を貯留する槽、工場内のユーティリティー配管などを用いることができる。水供給管57は水供給源75と始液槽2の水添加口33とを接続する。流量制御弁64は水供給管57に設けられ、始液槽2に対する水の供給量を制御する。
水添加装置により始液槽2に水を添加することで、溶解槽1から始液槽2に戻ってきた塩化ニッケル水溶液に水を添加できる。水の添加により、塩化ニッケル水溶液の濃度を調整できる。ここで、撹拌機35による撹拌によって、始液槽2内の塩化ニッケル水溶液の濃度を均一にできる。なお、添加する水として純水を用いれば、塩化ニッケル水溶液への不純物の混入を防止できる。
始液槽2には塩酸添加装置が設けられる。塩酸添加装置は塩酸供給源76、塩酸供給管58、および流量制御弁65を有する。塩酸供給源76として塩酸を貯留する槽、工場内のユーティリティー配管などを用いることができる。塩酸供給管58は塩酸供給源76と始液槽2の塩酸添加口34とを接続する。流量制御弁65は塩酸供給管58に設けられ、始液槽2に対する塩酸の供給量を制御する。
塩酸添加装置により始液槽2に塩酸を添加することで、溶解槽1から始液槽2に戻ってきた塩化ニッケル水溶液に塩酸を添加できる。塩酸の添加により、塩化ニッケル水溶液のpHを調整できる。ここで、撹拌機35による撹拌によって、始液槽2内の塩化ニッケル水溶液のpHを均一にできる。また、pH計36により塩化ニッケル水溶液のpHを測定できる。
図1に示すように、製造設備AAは、生成された塩化ニッケル水溶液を排出する排液装置を有する。排液装置は払出管59および流量制御弁66を有する。払出管59の一端は給液管54の給液ポンプ72より下流側(溶解槽1側)に接続されている。払出管59の他端は終液槽4に接続されている。流量制御弁66は払出管59に設けられている。流量制御弁66を開くと、給液管54を流れる塩化ニッケル水溶液の一部が払出管59を流れ、終液槽4に導かれる。
払出管59の途中には調整槽3が設けられている。図4に示すように、調整槽3は槽本体40を有する。槽本体40は気密性を有する槽であってもよい。槽本体40の形状は特に限定されず円筒形でもよいし、角筒形でもよい。
槽本体40の内部には通液板41が設けられている。通液板41は槽本体40の下部において横断するよう水平に設けられている。槽本体40の内部空間は通液板41により上下2つの空間に区画されている。通液板41として、パンチングプレート、ウェッジワイヤースクリーンなど、複数の孔またはスリットを有する板材が用いられる。通液板41の上には第2ニッケル原料N2が載置される。これにより、調整槽3には第2ニッケル原料N2が充填される。
槽本体40の通液板41より下部(好ましくは底部)には供給口42が設けられている。また、槽本体40の通液板41より上部(好ましくは頂部)には排出口43が設けられている。調整槽3は払出管59の途中に設けられている。払出管59のうち調整槽3より上流側を上流部分、調整槽3より下流側を下流部分とする。払出管59の上流部分は給液管54と調整槽3の供給口42とを接続する。払出管59の下流部分は調整槽3の排出口43と終液槽4とを接続する。したがって、塩化ニッケル水溶液は供給口42から調整槽3の内部に供給され、排出口43から排出される。調整槽3を通過した塩化ニッケル水溶液は終液槽4に貯留される。
溶解槽1から排出された塩化ニッケル水溶液には塩素ガスが溶存している。この塩化ニッケル水溶液を調整槽3に通液すると、塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスにより調整槽3内の第2ニッケル原料N2が浸出される。塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスが第2ニッケル原料N2の浸出に消費されることで、塩化ニッケル水溶液から塩素ガスを除去できる。
特に、調整槽3を図4に示す構成とすれば、塩化ニッケル水溶液が調整槽3の内部を下から上に流れる過程で第2ニッケル原料N2と接触する。塩化ニッケル水溶液が第2ニッケル原料N2と十分に接触せずに排出されるショートパスを抑制できる。塩化ニッケル水溶液と第2ニッケル原料N2との接触効率がよく、塩素ガスが除去されやすい。
第2ニッケル原料N2はニッケルを含有するものであれば特に限定されないが、電気ニッケルを用いることが好ましい。電気ニッケルは高純度なニッケルであるので、塩化ニッケル水溶液への不純物(ニッケル以外の成分)の混入を抑制できる。
塩化ニッケル水溶液を負圧下におくことによっても溶存塩素ガスを除去できる。しかし、本実施形態の調整槽3は、真空ポンプなどの負圧にするための装置が不要であるので、設備コストや運転コストを低減できる。また、溶存塩素ガスを塩化ニッケル水溶液の生成に用いるので、無駄がない。塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスを活性炭に吸着して除去することもできる。しかし、活性炭に接触させると塩化ニッケル水溶液に不純物が混入する恐れがある。また、還元剤などの薬剤を添加して溶存塩素ガスを除去することもできる。しかし、薬剤を添加すると塩化ニッケル水溶液に不純物が混入する。これらに対し、電気ニッケルと接触させる方法であれば、塩化ニッケル水溶液への不純物の混入を抑制できる。
(製造方法)
つぎに、一実施形態に係る塩化ニッケル水溶液の製造方法を説明する。
(1)原料装入工程
溶解槽1ではバッチ処理により第1ニッケル原料N1を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を生成する。図5の(1)に示すように、バッチ処理開始時に、溶解槽1の蓋13を取り外して、装入口12から第1ニッケル原料N1を装入する。第1ニッケル原料N1は簀子板15の上に積み上げられた状態となる。第1ニッケル原料N1の装入後、装入口12を蓋13で閉塞する。そして、装入口12と蓋13との間を水封する。
(2)給液工程
つぎに、図5の(2)に示すように、環集管53の排気弁62を開く。給液ポンプ72を駆動させ、始液槽2内の溶解始液を溶解槽1に供給する(図1参照)。なお、製造設備AAを初めて稼働させる時など、塩化ニッケル水溶液が全く残留していないときは、始液槽2内の溶解始液は水、好ましくは純水である。バッチ処理を繰り返し行なっている定常操業時は、始液槽2内の溶解始液は前回のバッチ処理で生成された塩化ニッケル水溶液である。
溶解始液は給液口16から溶解槽1に供給される。溶解始液の供給により、溶解槽1内の液位が徐々に上昇する。これに伴い、溶解槽1内の気相部の空気が環集管53から排気される。溶解槽1内の液位がオーバーフロー口17の高さに達すると、溶解始液はオーバーフロー口17から排出される。この時点で溶解槽1内に存在していた空気はその大部分が排気される。オーバーフロー口17から排出された溶解始液はオーバーフロー管56および排液管55を介して始液槽2に戻される(図1参照)。なお、給液口16からの溶解始液の供給はバッチ処理が終了するまで継続する。
また、小循環ポンプ71を駆動させ、抜出口19から液を抜き出し、噴射部21から噴射する。この液の循環もバッチ処理が終了するまで継続する。
(3)減圧工程
つぎに、図6の(3)に示すように、環集管53の排気弁62を閉じて、溶解槽1を密閉状態とする。そして、排液弁63を開いて、排液管55を介して溶解槽1内の溶解始液を始液槽2に戻す(図1参照)。排液管55の排液弁63を開くと、溶解始液は溶解槽1の下部に位置する排液口18から排出される。そのため、溶解槽1内の液位が徐々に低下する。溶解槽1は密閉状態であるため、液位の低下に伴い気相部の圧力が徐々に低下し、負圧となる。このように、溶解槽1を溶解始液で満たした後、溶解槽1を密閉状態として溶解始液の液位を下げることで、溶解槽1の内部を負圧にする。
(4)塩素ガス供給工程
排液管55の排液弁63を開くと同時に、またはその直後に、溶解槽1への塩素ガスの供給を開始する。図6の(4)に示すように、塩素ガスの供給は塩素ガス供給管52の流量制御弁61を開くことで行なわれる。溶解槽1内の液位の低下とともに、塩素ガスを供給することにより、溶解槽1内の気相部が塩素ガス雰囲気となる。塩素ガスの供給はバッチ処理が終了するまで継続する。
ここで、塩素ガスの供給量は溶解槽1内の気相部の圧力が予め定められた圧力で一定となる量に制御することが好ましい。溶解槽1内の気相部の圧力は圧力計22により測定できる。制御装置5は圧力計22から測定値を取得し、その測定値が予め定められた圧力で一定となるように流量制御弁61の開度を制御し、塩素ガスの供給量を調整する。例えば、制御装置5は溶解槽1内の気相部の圧力を制御量、塩素ガスの供給量を操作量としたフィードバック制御を行なう。溶解槽1内の気相部の圧力の目標値は、例えば-1~-3kPaの間で定められる。
溶解槽1内の液位は排液口18の高さまで低下して、この液位で一定になる。この際、塩素ガス供給管52の開口端(塩素ガスの排出部)の位置は、液面より高くてもよいし、液面と同じでもよいし、液面より低くてもよい。すなわち、塩素ガスは溶解槽1内の気相部に直接供給されてもよいし、溶解槽1内の液中に供給されてもよい。
(5)浸出工程
塩素ガスの供給を開始すると、第1ニッケル原料N1の塩素浸出反応が開始される。溶解槽1内の気相部は塩素ガスで満たされた状態である。また、第1ニッケル原料N1は噴射部21から噴射された液によって湿潤している。これにより、塩素ガス雰囲気下で第1ニッケル原料N1が液膜で覆われた状態となる。塩素ガスが第1ニッケル原料N1を覆う液に吸収され、第1ニッケル原料N1の塩素浸出反応が進行し、塩化ニッケル水溶液が生成される。生成された塩化ニッケル水溶液は溶解槽1の下部に一時的に貯留される。この塩化ニッケル水溶液は一部が排液口18から排出され、大循環流路55、54を介して、溶解槽1と始液槽2との間を循環する。また、塩化ニッケル水溶液の他の一部は小循環管51を循環して噴射部21から噴射される。
第1ニッケル原料N1の塩素浸出反応により塩素ガスが消費され、その分溶解槽1内の気相部の圧力が低下する。しかし、溶解槽1内の気相部の圧力に基づき塩素ガスの供給量を制御する場合には、溶解槽1内の気相部の圧力が一定となる量の塩素ガスが供給される。すなわち、塩素浸出反応に消費された量の塩素ガスが新たに供給される。
(6)温度調整工程
第1ニッケル原料N1の塩素浸出反応は発熱反応である。したがって、そのままでは塩素浸出反応の進行にともない、溶解槽1内の塩化ニッケル水溶液の温度が上昇する。しかし、図2に示すように、塩化ニッケル水溶液が循環する小循環管51には熱交換器73が設けられている。熱交換器73により塩化ニッケル水溶液を冷却できる。熱交換器73により塩化ニッケル水溶液を設備保護の観点から適した温度、例えば50~60℃に調整する。そうすれば、反応熱による温度上昇を抑えることができ、設備を保護できる。
(7)水添加工程
溶解槽1内では第1ニッケル原料N1の塩素浸出反応が連続的に進行する。そのため、塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度が徐々に上昇する。そこで、塩化ニッケル水溶液に水、好ましくは純水を添加して塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度を調整することが好ましい。
本実施形態では、図3に示すように、始液槽2に水を添加する。これにより、溶解槽1から始液槽2に戻ってきた塩化ニッケル水溶液に水を添加する。ここで、制御装置5は、塩化ニッケル水溶液への水の添加量を、溶解槽1への塩素ガスの供給量に基づき定めた量に調整することが好ましい。
塩素浸出反応に消費される塩素ガスの量と浸出されるニッケルの量との比率は既知である。したがって、水の添加量は塩素ガスの供給量に比例させればよい。具体的には、制御装置5は、塩素ガスの供給量に所定の係数を掛けた値を目標値とし、水の添加量がその目標値となるように水供給管57の流量制御弁64の開度を調整する。
水の添加により塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度を所望の濃度に調整する。例えば、塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度は130~160g/Lの間で定められた値に調整される。なお、比重計などを用いて塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度を定期的に測定し、水の添加量を求めるために塩素ガスの供給量に乗じられる係数を必要に応じて調整してもよい。
(8)pH調整工程
塩化ニッケル水溶液に塩酸を添加してpHを調整することが好ましい。本実施形態では、図3に示すように、始液槽2に塩酸を添加する。ここで、塩化ニッケル水溶液のpHを1~3に調整することが好ましい。始液槽2内の塩化ニッケル水溶液のpHはpH計36により測定できる。制御装置5はpH計36から測定値を取得し、その測定値が予め定められた目標値となるように塩酸供給管58の流量制御弁65の開度を制御し、塩酸の供給量を調整する。例えば、制御装置5は塩化ニッケル水溶液のpHを制御量、塩酸の供給量を操作量としたフィードバック制御を行なう。
塩化ニッケル水溶液のpHを1~3に維持すれば、塩化ニッケル水溶液の酸化中和反応が生じることがない。そのため、酸化中和反応により水酸化物および酸化物が生成することを抑制できる。
(9)排液工程
水および塩酸の添加により始液槽2内の液位が上昇する。また、始液槽2内にはニッケル濃度およびpHが調整された塩化ニッケル水溶液が貯留された状態となる。この調整済みの塩化ニッケル水溶液を始液槽2から排出する。塩化ニッケル水溶液の排出は排液装置により行なわれる。
図1に示すように、排液装置は払出管59および流量制御弁66を有する。給液管54には調整済みの塩化ニッケル水溶液が流れている。流量制御弁66を開くことで、給液管54を流れる塩化ニッケル水溶液の一部を払出管59に流し、終液槽4に導く。
ここで、制御装置5は、始液槽2の液位が一定となるように、塩化ニッケル水溶液の排出量を調整することが好ましい。具体的には、始液槽2の液位は液位計37により測定できる。制御装置5は液位計37から測定値を取得し、その測定値が予め定められた値で一定となるように払出管59の流量制御弁66の開度を制御し、塩化ニッケル水溶液の排出量を調整する。例えば、制御装置5は始液槽2の液位を制御量、塩化ニッケル水溶液の排出量を操作量としたフィードバック制御を行なう。このような制御を行なうことにより、生成された量の塩化ニッケル水溶液を排出できる。
(10)脱塩素ガス工程
始液槽2から排出された塩化ニッケル水溶液は調整槽3に供給される。調整槽3には第2ニッケル原料N2が充填されている。溶解槽1で生成された塩化ニッケル水溶液には塩素ガスが溶存している。この塩化ニッケル水溶液を調整槽3に通液すると、塩化ニッケル水溶液と第2ニッケル原料N2とが接触し、塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスにより第2ニッケル原料N2が浸出される。塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスが第2ニッケル原料N2の浸出に消費されることで、塩化ニッケル水溶液から塩素ガスを除去できる。調整槽3を通過して溶存塩素ガスが除去された塩化ニッケル水溶液は終液槽4に貯留される。
調整槽3内の第2ニッケル原料N2は、塩化ニッケル水溶液の脱塩素ガスにともない消費され、徐々に減少する。調整槽3内の第2ニッケル原料N2が少なくなったタイミングで、調整槽3内に新たな第2ニッケル原料N2を補充する。
なお、(4)塩素ガス供給工程から(10)脱塩素ガス工程までの各工程は、同時並行で行なわれる。すなわち、第1ニッケル原料N1の塩素浸出反応の進行とともに、生成された塩化ニッケル水溶液の調整を行ない、生成された分だけ塩化ニッケル水溶液を排出する。
(11)原料再装入工程
塩素浸出反応の進行とともに溶解槽1内の第1ニッケル原料N1が減少する。第1ニッケル原料N1が減少すると塩化ニッケル水溶液との接触面積が小さくなり溶解速度が小さくなる。そこで、溶解槽1内の第1ニッケル原料N1が完全に消費される前に、ある程度の第1ニッケル原料N1が残された状態でバッチ処理を終了して、第1ニッケル原料N1を再装入することが好ましい。
具体的には、塩素ガス供給管52の流量制御弁61を閉じて塩素ガスの供給を停止する。つぎに、環集管53の排気弁62を開いて溶解槽1内の塩素ガスを脱ガスする。環集管53から排出された塩素ガスは除害塔に導かれ、除害処理が行なわれる。また、小循環ポンプ71を停止して溶解槽1内の塩化ニッケル水溶液の循環を停止するとともに、給液管54から溶解槽1への溶解始液の供給を停止する。
環集管53の排気弁62を開いてから一定時間経過すると、脱ガスが完了する。その後、溶解槽1の蓋13を取り外して、装入口12から新規の第1ニッケル原料N1を装入する。以降は、新たなバッチ処理が行なわれる。すなわち、(2)給液工程から(10)脱塩素ガス工程までの各工程が、繰返し実行される。
〔その他の実施形態〕
製造設備AAが有する調整槽3の数は特に限定されず、1つでもよいし、複数でもよい。複数の調整槽3を直列に接続してもよいし、並列に接続してもよい。
製造設備AAは複数の溶解槽1を有してもよい。複数の溶解槽1は、それぞれ、一の始液槽2と大循環流路で接続される。複数の溶解槽1において、第1ニッケル原料N1を装入するタイミングをずらしながらバッチ処理を行なう。そうすると、製造設備AAの操業期間中はいずれかの溶解槽1で塩化ニッケル水溶液が生成されることとなる。すなわち、塩化ニッケル水溶液を連続的に生産できる。
上述の実施形態では、溶解槽1は負圧下で塩素浸出しているが、正圧下で塩素浸出してもよい。いずれの場合でも溶解槽1は気密に維持することが好ましい。そうすると、塩素浸出反応が進行している間は、溶解槽1から塩素ガスが排出されることがない。そのため、大規模な塩素ガスの除害装置が不要である。
溶解槽1に水を添加して塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度を調整してもよい。また、溶解槽1に塩酸を添加して塩化ニッケル水溶液のpHを調整してもよい。すなわち、溶解槽1において塩化ニッケル水溶液の調整を行ない、溶解槽1から調整済みの塩化ニッケル水溶液を排出してもよい。この場合、製造設備AAは始液槽2を有さなくてもよい。
AA 製造設備
1 溶解槽
2 始液槽
3 調整槽
40 槽本体
41 通液板
42 供給口
43 排出口
4 終液槽
5 制御装置

Claims (4)

  1. 第1ニッケル原料を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を得る溶解槽と、
    前記溶解槽から排出された前記塩化ニッケル水溶液と第2ニッケル原料とを接触させて、前記塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスにより前記第2ニッケル原料を浸出する調整槽と、を備える
    ことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の製造設備。
  2. 前記調整槽は、
    槽本体と、
    前記槽本体を上下に区画するよう設けられ、前記第2ニッケル原料が載置される通液板と、
    前記槽本体の前記通液板より下部に前記塩化ニッケル水溶液を供給する供給口と、
    前記槽本体の前記通液板より上部から前記塩化ニッケル水溶液を排出する排出口と、を備える
    ことを特徴とする請求項1記載の塩化ニッケル水溶液の製造設備。
  3. 第1ニッケル原料を塩素浸出して塩化ニッケル水溶液を得る浸出工程と、
    前記塩化ニッケル水溶液と第2ニッケル原料とを接触させて、前記塩化ニッケル水溶液に溶存する塩素ガスにより前記第2ニッケル原料を浸出する脱塩素ガス工程と、を備える
    ことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の製造方法。
  4. 前記第2ニッケル原料は電気ニッケルである
    ことを特徴とする請求項3記載の塩化ニッケル水溶液の製造方法。
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