図1に例示するこの発明の第一実施形態にかかるステアバイワイヤ式操舵システムは、図2に例示する車両100の運転者(図示省略)によるステアリングホイール1の操作量を電気信号に変換し、その電気信号に基づいて転舵アクチュエータ2を制御することで、車両の左右一対の転舵輪3の向きを変化させるものである。
このステアバイワイヤ式操舵システムは、運転者により回転操作されるステアリングホイール1と、ステアリングホイール1に直結されたステアリングシャフト4と、ステアリングホイール1の操作量を検知する操舵センサ5と、ステアリングホイール1に操舵反力を与える反力モータ6と、反力モータ6に取り付けられたステアリングロック装置7と、ステアリングホイール1に対して機械的に切り離して設けられた転舵アクチュエータ2と、転舵アクチュエータ2等を制御する電子制御装置8と、を備える。
ステアリングシャフト4は、ステアリングホイール1を回転操作したときに、ステアリングホイール1と一体に回転するようにステアリングホイール1に接続されている。
操舵センサ5は、ステアリングシャフト4に取り付けられている。操舵センサ5としては、例えば、ステアリングホイール1の回転位置に対応した回転角度位置を検知する回転センサである。
反力モータ6は、通電により回転トルクを発生する電動モータである。反力モータ6は、ステアリングシャフト4の端部に連結されている。反力モータ6は、回転トルクをステアリングシャフト4に入力することで、そのステアリングシャフト4を介してステアリングホイール1に操舵反力を付与する。
転舵アクチュエータ2は、転舵軸10と、転舵軸ハウジング11と、転舵軸10を車両の左右方向に移動させる転舵モータ12と、転舵軸10の位置を検知する転舵センサ13とを有する。転舵軸10は、車両の左右方向に移動可能に転舵軸ハウジング11で支持されている。転舵軸ハウジング11は、転舵軸10の左右両端が転舵軸ハウジング11から突出した状態となるように転舵軸10の中央部を収容している。
転舵モータ12および転舵センサ13は、転舵軸ハウジング11に取り付けられている。転舵モータ12と転舵軸10の間には、転舵モータ12が出力する回転を転舵軸10の直線運動に変換する運動変換機構(図示せず)が組み込まれている。転舵軸10の左右両端は、タイロッド14を介して左右一対の転舵輪3に連結され、転舵軸10が軸方向に移動するとこれに連動して左右一対の転舵輪3の向きが変化するようになっている。
図1、図3に示すように、反力モータ6は、モータシャフト15と、モータシャフト15に回転トルクを付与するモータ本体16とを有する。モータ本体16は、筒状のケーシングと、このケーシングに収容された環状のステータ(図示せず)とで構成されている。モータ本体16は、そのケーシングにおいて車両のボディ側の静止部に固定されており、運転室に設置されたステアリングホイール1及びこれに直結されたステアリングシャフト4に対して常に一定の位置関係にある。
図3に示すように、モータシャフト15は、モータ本体16からの軸方向の一方側(図では上側)への突出部分と、モータ本体16からの軸方向の他方側(図では下側)への突出部分とを有する。モータシャフト15の図中上側への突出部分にステアリングシャフト4の下端部が同軸に連結され、モータシャフト15の図中下側への突出部分にステアリングロック装置7が同軸に連結されている。ステアリングシャフト4とモータシャフト15は、ステアリングホイール1と一体的に回転可能な伝達系を構成している。
図1に示すステアリングロック装置7は、シャフトとしてのモータシャフト15と同軸上に設けられており、ステアリングロック装置7への通電によりステアリングホイール1の回転を阻止するロック状態となり、当該通電の遮断によりステアリングホイール1の回転を許容するフリー状態となり、その通電制御に基づいてステアリングホイール1の回転を任意の角度位置で阻止可能な構造になっている。
具体的には、図3~図5に示すように、ステアリングロック装置7は、モータシャフト15の外周に装着された内方部材21と、内方部材21を取り囲む外輪22と、外輪22及びモータ本体16に対して相対回転しないように固定された固定部材としてのブレーキケース23と、内方部材21の外周に形成されたカム面24と外輪22の内周に形成された円筒面25との間に配置された係合子26と、これら係合子26を保持する保持器27と、軸方向に移動可能に支持されたアーマチュア28と、通電によりアーマチュア28を吸引して軸方向に移動させる電磁石29と、アーマチュア28の移動に応じて保持器27を周方向移動させる動作変換機構30と、を有する。
内方部材21は、モータシャフト15と一体回転することができるようにモータシャフト15の外周にスプライン嵌合している。
外輪22は、ブレーキケース23に嵌め込まれている。ブレーキケース23は、ステアリングロック装置7の構成部材(内方部材21、係合子26、保持器27、アーマチュア28、電磁石29等)を一括して収容する筒状の部材である。ブレーキケース23の軸方向一端には、径方向外方に延びるフランジ部が形成され、そのフランジ部においてモータ本体16のケーシングの軸方向端面にボルト(図示省略)で固定されている。
外輪22は、ブレーキケース23の内周に装着した止め輪31でブレーキケース23から抜け止めされている。図5に示すように、ブレーキケース23の内周に形成されたキー溝32と、外輪22の外周に形成されたキー溝33に、共通のキー部材34が嵌め込まれ、このキー部材34によって、外輪22は回転しないように固定された状態となっている。
図3に示すように、外輪22の内周と内方部材21との間には、内方部材21を外輪22に対して回転可能に支持する軸受35が配置されている。
図4、図5に示すように、内方部材21の外周に複数のカム面24が形成されている。カム面24は、外輪22の円筒面25と半径方向に対向している。各カム面24と円筒面25の間には、周方向中央から周方向両端に向かって次第に狭小となるくさび空間が形成されている。
保持器27には、径方向に貫通するポケット36が周方向に間隔をおいて複数形成されている。各ポケット36に係合子26が収容されている。係合子26としてローラが採用されている。保持器27は、係合子26をカム面24の周方向中央から周方向に移動させることでカム面24と円筒面25の間に係合子26を係合させる係合位置と、係合子26をカム面24の周方向中央に移動させることでカム面24と円筒面25の間への係合子26の係合を解除する係合解除位置との間で、内方部材21に対して周方向に移動可能に支持されている。
図3、図4に示すように、アーマチュア28は、内方部材21の外周で軸方向に移動可能に支持されている。アーマチュア28は、磁性材料(鉄、珪素鋼など)で形成された円盤状の部材である。
電磁石29は、アーマチュア28と軸方向に対向して配置されている。電磁石29は、軸方向と周方向のいずれにも移動しないようにブレーキケース23に固定されている。アーマチュア28と電磁石29の間には、アーマチュア28を電磁石29から離反する方向に付勢する離反ばね37が配置されている。
電磁石29は、アーマチュア28に向かって軸方向に開放するC形断面をもつ環状のフィールドコア38と、フィールドコア38に巻回されたソレノイドコイル39とを有する。ソレノイドコイル39に通電すると、フィールドコア38とアーマチュア28とを通る磁気回路が形成され、アーマチュア28はフィールドコア38に吸引される。ブレーキケース23には、ソレノイドコイル39に電力を供給するリード線40を通すための貫通孔が形成されている。この貫通孔にゴム製のグロメット41が装着されている。
図4に示すように、動作変換機構30は、アーマチュア28に対して軸方向に相対移動可能な状態でアーマチュア28に回り止めされかつ保持器27に回り止めされたプレート42と、保持器27を係合解除位置に弾性的に保持するセンタリングばね43とを有する。
プレート42の外周には、保持器27に形成された係合凹部44に係合する係合凸部45が形成されている。プレート42は、それら係合凸部45と係合凹部44の係合によって、保持器27と一体に周方向移動するように保持器27に回り止めされている。また、プレート42には、アーマチュア28に向かって軸方向に延びる突起46が形成されている。アーマチュア28には、プレート42の突起46が軸方向にスライド可能に挿入される孔47が形成されている。プレート42は、それら突起46と孔47の係合によって、アーマチュア28に対して軸方向移動可能な状態で、アーマチュア28と一体に周方向移動するようにアーマチュア28に回り止めされている。
図5に示すように、センタリングばね43は、鋼線をC形に巻いたC形環状部48と、C形環状部48の両端からそれぞれ径方向外方に延出する一対の延出部49とからなる。C形環状部48は、内方部材21の軸方向の一端面に形成された円形のばね収容凹部50に嵌め込まれている。一対の延出部49は、ばね収容凹部50から径方向外方に貫通するように内方部材21の軸方向端面に形成された径方向溝51に挿入されている。
センタリングばね43の延出部49は、内方部材21の径方向溝51の径方向外端から突出しており、この突出部分が、保持器27に形成された切欠き部52に挿入されている。径方向溝51と切欠き部52は同じ周方向幅をもつように形成されている。センタリングばね43の延出部49は、内方部材21の径方向溝51の内面と、保持器27の切欠き部52の内面にそれぞれ接触し、その接触部分に作用する周方向の力によって保持器27を係合解除位置に弾性保持する。
図3~図5に示すステアリングロック装置7において、内方部材21の回転を許容するフリー状態は、電磁石29に非通電の状態に相当する。すなわち、電磁石29を非通電にすると、アーマチュア28が離反ばね37の付勢力によって電磁石29から離反し、アーマチュア28は、電磁石29に対して自由に回転可能な状態となる。このとき、保持器27は、センタリングばね43の弾性復元力によって係合解除位置に保持されるので、内方部材21を正逆いずれの方向に回転させても、内方部材21のカム面24と外輪22の円筒面25との間に係合子26は噛み込まず、内方部材21およびモータシャフト15は外輪22に対して正逆両方向に自由に回転することが可能である。
一方、ステアリングロック装置7において、内方部材21の回転を阻止可能なロック状態は、電磁石29に通電してアーマチュア28を吸引した状態に相当する。すなわち、電磁石29に通電したとき、アーマチュア28は電磁石29に吸着され、アーマチュア28が電磁石29に摩擦接触した状態となる。このとき、内方部材21を回転させると、電磁石29に摩擦接触するアーマチュア28が、プレート42を介して保持器27に回り止めされているので、保持器27は回転が制限され、その保持器27に対して内方部材21が相対回転する。その結果、保持器27が、センタリングばね43の弾性力に抗し係合解除位置から係合位置に移動し、内方部材21のカム面24と外輪22の円筒面25との間に係合子26が噛み込むように係合するので、内方部材21の回転が阻止され、従い、この内方部材21と一体化されたモータシャフト15、ステアリングシャフト4及びステアリングホイール1の回転が阻止される。
このように、このステアリングロック装置7においては、図6に示すように、保持器27のポケット36と係合子26間に設定された隙間、カム面24と円筒面25で形成されるくさび空間と係合子26間にフリー状態の実現に要する隙間等の遊びが設けられているため、前述のロック状態に切り替わってからの内方部材21(モータシャフト、ステアリングシャフト、ステアリングホイール)の更なる回転により、図6に示す係合解除位置の保持器27、係合子26が図7に示す係合位置へ前述の遊び分αだけ周方向へ移動して係合子26がカム面24と円筒面25間に噛み込む係合状態になるまでの間、すなわち内方部材21の回転が阻止されるまでの間、内方部材21が外輪22に対して空転する。この空転によって図1に示すステアリングシャフト4及びステアリングホイール1が回転することになる。なお、図6、図7では、ロック状態で内方部材21が図中左側へ回転した場合を例示したが、右側回転時も逆方向になるだけで同様に遊び分の空転が起こる。
図1に示す電子制御装置8は、図1、図2に示す車両100に搭載された配下の各制御対象と電気的に接続されており、電子的に制御内容を決定して配下の制御対象を制御する。
電子制御装置8は、車両100の転舵系に指令する転舵制御部8aと、車両100の駆動系、制動系、転舵制御部8a及びその他の機器に指令する車両制御部8bとを有する。
転舵制御部8aは、操舵センサ5、反力モータ6、ステアリングロック装置7、転舵アクチュエータ2、転舵センサ13、及びトルクセンサ61及び車両制御部8bの夫々と電気的に接続されている。車両制御部8bは、ブレーキ力発生装置62、駆動装置63、走行監視装置64、及びブレーキ65の夫々と電気的に接続されている。
トルクセンサ61は、ステアリングホイール1と一体に回転する軸(内方部材21)上のトルクを検知する。トルクセンサ61は、検知したトルク値を転舵制御部8aへ出力する。なお、トルクセンサ61は、モータシャフト15やステアリングシャフト4上のトルクを検知するものであてもよい。
ブレーキ力発生装置62は、ブレーキ65にブレーキ力を供給する。ブレーキ65は、供給されたブレーキ力で転舵輪3側と摩擦接触することにより、転舵輪3を制動する。ブレーキ力発生装置62は、車両制御部8bからの指令に従ってブレーキ力を調整したり、ブレーキ力の供給を停止したりする。
駆動装置63は、車両100の転舵輪3を駆動する。駆動装置63は、エンジン、電動モータ等の駆動源と、駆動源の出力回転を変速して転舵輪3に出力する伝達系とを有する。駆動装置63は、車両制御部8bからの指令に従って駆動力を調整したり、駆動源の停止、駆動力の遮断等によって転舵輪3の駆動を停止したりする。
走行監視装置64は、車両100の走行状況(車両走行状況)を監視し、その走行状況の検知結果を車両制御部8bへ出力する。走行監視装置64は、カメラ64a、加速度センサ64b、レーダ64c、車速センサ64d等のセンサを有し、一つ又は複数のセンサによる検知結果に基づいて車両走行状況を検知する。
カメラ64aは、車両100の前方を撮像する。カメラ64aは、例えば、固体撮像素子を有するデジタルカメラからなる。カメラ64aは、車両100のフロントウインドシールド上部、ルームミラー等の任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。カメラ64aは、例えば、周期的に繰り返し車両100の前方側周辺を撮像する。カメラ64aは、ステレオカメラであってもよい。
加速度センサ64bは、車両100の前後方向、左右方向、上下方向の加速度を検知する。車速センサ64dは、車両100の走行速度を検知する。
レーダ64cは、車両100の前方にミリ波等の電波を放射すると共に、物体によって反射された電波を検出して物体の位置(距離及び方位)等を検知する。レーダ64cは、車両100のフロントバンパーの内側等の任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。また、レーダ64cとして、レーザーレーダを採用することも可能であり、複数のレーダを取り付ける場合、電波レーダ、レーザーレーダ等の検知原理の異なるレーダを併用してもよい。
走行監視装置64は、カメラ64aにより撮像された画像に基づいて、車両100の前方や前方側周辺に存在する物体の位置、種類、速度等を認識する。また、走行監視装置64は、カメラ64aで撮像した画像の認識結果及びレーダ64cの検知結果のうちの少なくとも一つに基づいて、車両100の前方に存在する物体と、車両100の前方へ移動してくる物体とを検知し、その物体の種類、位置及び速度を検知する。また、走行監視装置64は、カメラ64aで撮像した画像の認識結果及びレーダ64cの検知結果のうちの少なくとも一つを用いて、道路の路肩、道路標識、走行ラインを示す白線等のレーンマーカの位置を検知する。
また、走行監視装置64は、カメラ64aで撮像した画像の認識結果及び加速度センサ64bの検知結果うちの少なくとも一つを用いて、車両100の姿勢(車両姿勢)を検知する。また、走行監視装置64は、カメラ64aで撮像した画像の認識結果及び加速度センサ64bの検知結果うちの少なくとも一つを用いて、車両姿勢を検知する。また、走行監視装置64は、カメラ64aで撮像した画像の認識結果、加速度センサ64bの検知結果及び車速センサ64dの検知結果のうちの少なくとも一つを用いて、車両100への衝撃を検知する。走行監視装置64は、それら検知結果を車両制御部8bに出力する。また、走行監視装置64は、衝撃の検知を含む所定の検知結果を履歴情報として記憶する。
車両制御部8bは、走行監視装置64から入力された検知結果に基づいて、車両100の走行中、所定の車両走行状況を走行監視装置64で検知したか否かを判定し、検知したとき、転舵制御部8aへステアリングロック装置7をロック状態へ移行させるように指令する。車両制御部8bは、転舵制御部8aでロック状態への移行完了を検知したとき、そのときの車両走行状況に応じた車両姿勢の自動制御の内容を決定し、その制御内容を実現するための指令を対応の制御対象に出力する。その所定の車両走行状況として、車両姿勢が不安定になった走行状況と、車両前方への障害物が出現した走行状況とが設定されている。また、その車両姿勢の自動制御の内容として、車両姿勢を安定させること、障害物を回避することが設定されている。
また、車両制御部8bは、車両姿勢の自動制御後に自動停車制御を行うか否かを所定条件に基づいて決定し、その自動停車後にステアリングホイール1と転舵アクチュエータ2との位相を合わせるように自動制御する。その所定条件として、車両姿勢の自動制御の最中に走行監視装置64で衝撃を検知したか否かが設定されている。その自動停車制御の内容として、路肩に停車することが設定されている。なお、自動停車制御において車両100のウィンカー、ハザードランプの点灯、パーキングブレーキ作動を適宜に行ってもよい。
また、車両制御部8bは、路肩停車後、車両100に搭載された配下の通信装置に所定の連絡先への通報を指令する。所定の連絡先としては、例えば、運転者によって任意に設定されたコールセンター、警察、消防等が挙げられる。連絡手段としては、携帯電話網を利用した電話、電子メール等が挙げられる。通報内容としては、例えば、車両100が非常事態であること、車両100の位置を示す情報や、車両100の所有者や運転者に関する情報等が挙げられる。
転舵制御部8aは、車両制御部8bからの指令を実現するようにステアリングロック装置7、転舵アクチュエータ2の転舵モータ12、反力モータ6を適宜に制御する。
また、車両制御部8bが車両100の自動転舵を行わず、運転者のステアリングホイール1の操作による転舵を許容する場合、転舵制御部8aは、操舵センサ5で検知される前述のステアリングホイール1の操舵量(回転角度位置等)に応じて転舵モータ12を作動させ、左右一対の転舵輪3の向きを変化させる制御を行い、また、ステアリングホイール1の操作量と車両走行状況とに応じた大きさの操舵反力が発生するように反力モータ6を作動させる制御を行う。
また、車両制御部8bが車両100の自動転舵を行わず、運転者のステアリングホイール1の操作による転舵を許容する場合、転舵制御部8aは、転舵センサ13で検知される転舵軸10の位置に基づいて、転舵輪3の向きがストロークエンドに到達したか否かを判定する。そして、転舵輪3の向きがストロークエンドに到達していないと判定したとき、転舵制御部8aは、ステアリングロック装置7をフリー状態に保持する。一方、転舵輪3の向きがストロークエンドに到達したと判定したとき、転舵制御部8aは、ステアリングロック装置7をロック状態に切り替える。なお、ステアリングホイール1と転舵アクチュエータの位相が合っている状態を維持可能な場合、転舵制御部8aが、操舵センサ5で検知されるステアリングホイール1の回転位置を監視し、その回転位置に応じてステアリングロック装置7をロック状態又はフリー状態に切り替える制御を行うようにすることも可能である。
転舵制御部8aは、ステアリングロック装置7のロック状態への移行が完了したか否かを検知する。その検知は、電磁石29(図3、図4参照。以下、同じ。)に流れる電流と、ステアリングホイール1と一体に回転する軸上のトルクとのうちの少なくとも電流を監視することで行われる。例えば、電磁石29に流れる電流値を閾値で判定して閾値以上のときにロック状態、閾値未満のときにフリー状態と判定することができる。また、トルクセンサ61で検知されるトルクが急激に立ち上がったとき(すなわち係合子26が円筒面25とカム面24間に噛み込んで内方部材21、モータシャフト15、ステアリングシャフト4及びステアリングホイール1の一体的回転を阻止したときに対応する(図3、図4、図7参照。以下、同じ。)。)にステアリングホイール1の回転が阻止されたロック状態に移行したと判定することができる。
上述のような電子制御装置8は、車両100に搭載された情報演算処理装置、情報記憶装置、通信装置等のハードウェア資源と、ハードウェア資源で実行されるソフトウェア資源とからなり、情報演算処理装置で車両姿勢の制御内容を演算したり、決定したりするために必要なソフトウェア資源及び所定の初期情報を情報記憶装置に記憶する。
また、走行監視装置64は、車両100に搭載された情報演算処理装置、情報記憶装置等のハードウェア資源と、ハードウェア資源で実行されるソフトウェア資源とを有し、情報演算処理装置で画像認識、レーダ探知等の走行状況の検知を行うために必要なソフトウェア資源及び所定の初期情報を情報記憶装置に記憶する。
なお、走行監視装置64と電子制御装置8は、一つのプロセッサにより実現されてもよいし、分散化されたプロセッサにより実現されてもよい。後者の場合、走行監視装置64と電子制御装置8は、それぞれ一つ又は複数のECU(Electronic Control Unit)として構成されたシステムであってもよい。前述の初期情報を電子制御装置8や走行監視装置64に記憶させる書き込み工程は、このステアバイワイヤ式操舵システムの組み立て時や、システム構成時等の適宜の時期に行えばよい。
電子制御装置8による車両姿勢の自動制御の一例を図8に示す。
電子制御装置8は、ステアリングホイール1の回転及び転舵輪3の向き変更が起こり得る状況又は起こった状況になったとき、図8に示す制御内容をスタートする。このスタートの契機となる状況は、車両100の起動(運転キーのON操作)、このステアバイワイヤ式操舵システムの起動等の適宜のスイッチ操作、状況検知等に基づいて行えばよい。スタート時、電子制御装置8は、運転者によるステアリングホイール1の操作、アクセル操作、ブレーキ操作等を許容する人力運転モードの状態にある。
電子制御装置8の車両制御部8bは、スタート後、走行監視装置64で検知される車両走行状況を監視し(ステップS1)、走行監視装置64で検知される車両姿勢が不安定か否かを判定する(ステップS2)。ここで、車両姿勢が安定と判定したとき、電子制御装置8は、人力運転モードを維持し、ステップS1に戻る。一方、車両姿勢が不安定になったと判定したとき、車両制御部8bは、転舵制御部8aにステアリングロック装置7をロック状態に移行させるように指令する(ステップS3)。
ステップS3の指令を受けた転舵制御部8aは、ステアリングロック装置7をロック状態に切り替える制御を行い、このロック状態への移行完了を検知したとき、このロック状態への移行完了を示す応答を車両制御部8bに返す(ステップS4)。
ステップS4の応答を受けた車両制御部8bは、車両姿勢を安定させるための転舵角、ブレーキ力等の制御内容を決定し、その制御内容に応じて転舵制御部8aに転舵角を指令したり、ブレーキ力発生装置62にブレーキ力を指令したり、駆動装置63に出力値を指令したりする(ステップS5)。その指令を受けた制御対象は指令された内容を実行する。
例えば、ステップS5の指令を受けた転舵制御部8aは、転舵輪3の転舵角が指令された角度となるように転舵モータ12を駆動する。この際、ステアリングロック装置7がロック状態にあるので、運転者がステアリングホイール1を回転させようとしても、その回転がステアリングロック装置7によって阻止されるので、運転者のステアリングホイール操作によって操舵センサ5での検知結果が変化することが防止される。このため、運転者のステアリングホイール操作が転舵制御部8a、車両制御部8bに反映されず、転舵制御部8a、車両制御部8bは、ロック状態への移行の際に転舵センサ13で検知されたストローク位置(又は操舵センサ5で検知されたステアリングホイール1の回転角度位置に対応のストローク位置)を転舵角制御の開始位置として転舵角の制御内容を演算することができる。このため、運転者のステアリングホイール操作による操舵センサ5での検知結果が転舵制御部8aに入力され続ける場合に比して、その検知結果を無効化する複雑な制御演算が不要となり、また、その検知結果に応じて反力モータ6を制御することも不要となるので、電子制御装置8による制御指令を簡素化することができる。
車両制御部8bは、ステップS5の指令後、走行監視装置64で検知される車両姿勢が安定したか否かを判定する(ステップS6)。ここで、車両姿勢が安定していないと判定したとき、車両制御部8bは、車両姿勢が安定したと判定するまでステップS5、S6を繰り返す。一方、車両姿勢が安定したと判定したとき、車両制御部8bは、車両姿勢の自動制御の最中に走行監視装置64で衝撃を検知したか否かを判定する(ステップS7)。ここでは、走行監視装置64の履歴情報でステップS5からステップS7までの時期に衝撃の検知が記憶されているか否かで判定することができる。
ステップS7において衝撃を検知したと判定したとき、車両制御部8bは、車両100を路肩に停止させる自動停車制御を行う(ステップS8)。ここで、車両制御部8bは、走行監視装置64で検知される路肩の位置、車速等を参照して車両100を停車させる位置を設定し、その位置に停車させるように転舵角、ブレーキ力等の制御内容を決定し、その制御内容に応じて転舵制御部8aに転舵角を指令したり、ブレーキ力発生装置62にブレーキ力を指令したり、駆動装置63に出力値を指令したりする。その指令を受けた制御対象は指令された内容を実行する。
車両制御部8bは、ステップS8後に車両100が路肩に停車したか否かを判定する(ステップS9)。ここで、車両制御部8bは、車両100が路肩に停車したと判定するまでステップS8、S9を繰り返す。一方、車両100が路肩に停車したと判定したとき、車両制御部8bは、車両100に搭載された通信装置(図示省略)にコールセンターへの連絡を指令する(ステップS10)。
車両制御部8bは、ステップS10の実行後、ステアリングホイール1と転舵アクチュエータ2との位相を合わせるように転舵制御部8aに指令する(ステップS11)。この指令を受けた転舵制御部8aは、転舵センサ13で検知されるストローク位置と、操舵センサ5で検知されるステアリングホイール1の回転角度位置とが整合するまで、反力モータ6を駆動する。
車両制御部8bは、ステップS11の実行後又はステップS7で衝撃を検知していなかった場合、人力運転モードに復帰し(ステップS12)、ステップS1に戻る。
次に、電子制御装置8による車両姿勢の自動制御の別例を図9に示す。なお、ここでは、図8例との相違点を中心に説明し、図8例と同様の内容についての説明を省略する。
電子制御装置8の車両制御部8bは、スタート後、走行監視装置64で検知される車両走行状況を監視し(ステップS21)、走行監視装置64で回避すべき障害物を検知したか否かを判定する(ステップS22)。ここで、回避すべき障害物は、例えば、車両100の前方に位置する障害物、車両100の前方へ飛び出す人物、落石等である。
車両制御部8bは、ステップS22において、障害物を検知していないと判定したとき、人力運転モードを維持し、ステップS21に戻る。一方、障害物を検知したと判定したとき、車両制御部8bは、転舵制御部8aにステアリングロック装置7をロック状態に移行させるように指令する(ステップS23)。
ステップS23の指令を受けた転舵制御部8aは、ステアリングロック装置7をロック状態に切り替える制御を行い、このロック状態への移行完了の検知、この移行完了を示す応答を車両制御部8bに返す(ステップS24)。
ステップS24の応答を受けた車両制御部8bは、障害物を回避するための転舵角、ブレーキ力等の制御内容を決定し、その制御内容に応じて転舵制御部8aに転舵角を指令したり、ブレーキ力発生装置62にブレーキ力を指令したり、駆動装置63に出力値を指令したりする(ステップS25)。その指令を受けた制御対象は指令された内容を実行する。ここでは、車両姿勢が安定しないと車両100に障害物を回避させる走行を制御下に実行することができないため、車両姿勢を安定させる前提で障害物の回避に要する転舵角等が決定される。
車両制御部8bは、ステップS25の指令後、障害物を回避したか否かを判定する(ステップS26)。障害物を回避したか否かは、例えば、走行監視装置64で障害物を検知しなくなったか否か、ステップS25で決定された回避経路を走行し終えたか否か等により判定することができる。ここで、障害物を回避したと判定したとき、車両制御部8bは、障害物を回避したと判定するまでステップS25、S26を繰り返す。一方、障害物を回避したと判定したとき、車両制御部8bは、車両姿勢の自動制御の最中に走行監視装置64で衝撃を検知したか否かを判定する(ステップS27)。
ステップS27において衝撃を検知したと判定したとき、車両制御部8bは、車両100を路肩に停止させる自動停車制御を行い(ステップS28)、ステップS28後に車両100が路肩に停車したか否かを判定し(ステップS29)、車両100が路肩に停車したと判定するまでステップS28、S29を繰り返す一方、車両100が路肩に停車したと判定したとき、コールセンターへの連絡を指令し(ステップS30)、ステアリングホイール1と転舵アクチュエータ2との位相を合わせるように転舵制御部8aに指令し(ステップS31)、ステップS31の実行後又はステップS27で衝撃を検知していなかった場合、人力運転モードに復帰し(S32)、ステップS21に戻る。
このステアバイワイヤ式操舵システム(以下、適宜、図1~図9参照。)は、上述のように、運転者によって操作されるステアリングホイール1と、ステアリングホイール1の操作量を検知する操舵センサ5と、ステアリングホイール1に対して機械的に切り離して設けられ、ステアリングホイール1の操作量に応じて転舵輪(転舵輪3)の向きを変化させる転舵アクチュエータ2と、を備え、車両走行状況を監視する走行監視装置64と、所定の車両走行状況を走行監視装置64で検知したとき、ステアリングホイール1の操作を転舵アクチュエータ2の制御に反映させない状態に切り替えて車両姿勢を自動制御する電子制御装置8と、をさらに備えるものである。
このステアバイワイヤ式操舵システムは、車両姿勢を自動制御すべき所定の車両走行状況になったことを走行監視装置64で検知した際、電子制御装置8がステアリングホイール1の操作を転舵アクチュエータ2の制御に反映させない状態に切り替える制御を行ってから車両姿勢を自動制御するので、ステアリングホイール1の操作が電子制御装置8による転舵アクチュエータ2の自動制御に影響しなくなり、これにより、車両姿勢を電子的に自動制御することが容易なものにすることができる。
また、このステアバイワイヤ式操舵システムは、ステアリングホイール1の回転を阻止可能なロック状態と、ステアリングホイール1の回転を許容するフリー状態とを切り替え可能なステアリングロック装置7をさらに備え、電子制御装置8が所定の車両走行状況を走行監視装置64で検知したときにステアリングロック装置7にロック状態への移行を指令し 、この指令後に車両姿勢を自動制御するものである。これにより、車両姿勢を自動制御すべき所定の車両走行状況になったことを走行監視装置64で検知した際、電子制御装置8からの指令を受けたステアリングロック装置7がロック状態に移行し、これ以降、運転者によるステアリングホイール1の操作が阻止されるので、操舵センサ5からのステアリングホイール1の操作量を確実に排除してステアリングホイール1の操作を転舵アクチュエータ2の制御に反映させない状態に切り替えることができる。また、車両姿勢を自動制御すべき所定の車両走行状況時にステアリングロック装置7でステアリングホイール1の回転が阻止されるので、電子制御装置8による車両姿勢の自動制御(自動転舵制御)と運転者のステアリングホイール操作に基づく転舵制御(手動転舵制御)とが切り替わるタイミングを運転者に対してステアリングホイール1を回せるか否かで明確に知らせることができる。また、車両姿勢が不安定なときに運転者が体の支えにステアリングホイール1を使用しても、ステアリングホイール1の回転がステアリングロック装置7で阻止されるので、体勢を崩す虞がなく、運転者の負傷を防止することができる。
また、電子制御装置8がロック状態への移行を指令した後、この移行の完了を検知したときに車両姿勢の自動制御を開始することにより、運転者によるステアリングホイール1の操作がステアリングロック装置で阻止されるときの転舵輪3の向きのストローク位置が確定してから、電子制御装置8が車両姿勢の自動制御を開始することになる。このため、このステアバイワイヤ式操舵システムは、車両姿勢の自動制御を開始する際のストローク位置を電子制御装置8において明確に特定することができる。
また、ステアリングロック装置7が、ステアリングホイール1と一体に回転するシャフト(モータシャフト15)と、回転しないように固定された固定部材(ブレーキケース23)と、シャフト(モータシャフト15)と固定部材(ブレーキケース23)のうちの一方に連結された内方部材21と、シャフト(モータシャフト15)と固定部材(ブレーキケース23)のうちの他方に連結され内方部材21を取り囲む外輪22と、内方部材21と外輪22の内周との間に配置された係合子26と、係合子26を保持し、内方部材21と外輪22の内周の間に係合子26を係合させる係合位置と、内方部材21と外輪22の内周の間への係合子26の係合を解除する係合解除位置との間で周方向に移動可能に支持された保持器27と、軸方向に移動可能に支持されたアーマチュア28と、通電によりアーマチュア28を吸引して軸方向に移動させる電磁石29と、アーマチュア28の移動に応じて、保持器27を係合位置と係合解除位置のうち一方から他方に周方向移動させる動作変換機構30と、を有することにより、電磁石29に対する通電制御に基づいてステアリングホイール1の回転を任意の角度位置で阻止することができる。このため、このステアバイワイヤ式操舵システムは、電子制御装置8がステアリングホイール1の回転位置を問わない任意の時期にロック状態への移行を指令することができ、突発的な所定の車両走行状況に対応するのに好適である。
また、電子制御装置8が、電磁石29に流れる電流と、ステアリングホイール1と一体に回転する軸(内方部材21)上のトルクとのうちの少なくとも電流を監視することにより、ステアリングロック装置7のロック状態とフリー状態の切り替わりの際に電磁石29に流れる電流の大きさに基づいてロック状態に移行したか否かを判定することができる。また、軸(内方部材21)上のトルクを監視する場合、ロック状態に移行してからのステアリングホイール1の回転を係合子26の噛み込みで阻止する際のトルクの大きさに基づいて、ステアリングホイール1の回転が阻止されたロック状態に移行したか否かを判定することができる。
また、電子制御装置8が、車両姿勢の自動制御後に自動停車制御を行うか否かを所定条件に基づいて決定し、その自動停車後にステアリングホイール1と転舵アクチュエータ2との位相を合わせるように自動制御することにより、車両姿勢の自動制御の最中に車両損傷等の走行を中断すべき状況があったか否かを所定条件に基づいて電子制御装置8が判定し、自動停車を行って運転者に状況確認させることができる。また、自動停車時点ではステアリングホイール1と転舵アクチュエータ2との位相が対応していない可能性があり、自動停車後の状況確認を経て運転者による走行が再開される可能性があるが、自動停車後にステアリングホイール1と転舵アクチュエータ2の位相合わせを電子制御装置8が自動的に行うことにより、運転者はステアリングホイール操作による転舵を適切に開始することができる。
第一実施形態では、ステアリングホイール1の操作を転舵アクチュエータ2の制御に反映させない状態に切り替える手段としてステアリングロック装置7を採用したが、ステアリングロック装置7のような機械的なステアリングホイール1の回転阻止を行わずに、ステアリングホイール1の操作を転舵アクチュエータ2の制御に反映されない状態に切り替えることも可能である。その一例としての第二実施形態を図10に基づいて説明する。図10は、第二実施形態にかかる電子制御装置による車両姿勢の自動制御の一例を示す。なお、以下では、第一実施形態との相違点を中心に述べるに留め、共通の装置について同一の符号(以下、適宜、図1を参照。)を用いる。
第二実施形態では、走行監視装置64で車両姿勢を監視し(ステップS41)、所定の車両走行状況として車両姿勢が不安定になったことを走行監視装置64で検知したとき、電子制御装置8が、操舵センサ5で検知されるステアリングホイール1の操作量を無視する制御状態に移行する(ステップS43)。このステップS43により、電子制御装置8は、ステアリングホイール1の操作を転舵アクチュエータ2の制御に反映させない状態に切り替える。
続いて、電子制御装置8は、車両姿勢を安定させるように自動制御し(ステップS44~ステップS45)、車両姿勢の安定後に衝撃判定を行い(ステップS46)、衝撃を検知していない場合、自動運転を解除し(ステップS51)、衝撃を検知していた場合、自動停車制御(ステップS47~ステップS48)、コールセンターへの連絡(ステップS49)、ステアリングホイール1と転舵アクチュエータ2の自動位相制御(ステップS50)を行ってから、自動運転を解除する(ステップS51)。
ここで、ステップS44~ステップS51の間、ステアリングホイール1は回転可能な状態にあり、運転者によるステアリングホイール1の操作が行われた場合、操舵センサ5でステアリングホイール1の操作量が検知されて電子制御装置8に出力される。電子制御装置8は、操舵センサ5からのステアリングホイール1の操作量を参照することなく、転舵アクチュエータ2に指令する転舵角の制御内容を決定する。これ以外のステップS41~S51までの処理内容については、第一実施形態のステップS1~ステップS12の対応のステップの処理内容と同様であるので、詳細説明を省略する。
第二実施形態にかかる車両用ステアバイワイヤ式操舵システムは、上述のように、ステアリングロック装置7のような機械的なステアリングホイールの回転阻止を要することなく、ステアリングホイール1の操作を転舵アクチュエータ2の制御に反映させない状態に切り替えることができる。このため、第二実施形態にかかる車両用ステアバイワイヤ式操舵システムは、ステアリングロック装置を備えない車両に対しても適用することが可能である。
第一実施形態と第二実施形態を比較すると、第二実施形態よりも第一実施形態の方が多くの利点を有する。すなわち、第二実施形態においては、車両姿勢の不安定時に運転者がステアリングホイール1の操作を行えば、ステアリングホイール1が通常時と同様に回転させられるため、自動転舵制御と手動転舵制御とが切り替わった瞬間を運転者が明確に知ることはできない。したがって、電子制御装置8の自動転舵制御によって車両姿勢が安定状態に復帰してから速やかに操舵センサ5からのステアリングホイール1の操舵量を優先する制御(手動転舵制御)に移行する場合(例えば、ステップS43~ステップS46から直にステップS51へ移行する場合)、どのタイミングで車両姿勢が復帰して手動転舵制御に戻るのかが運転者にとって不明確である。このため、自動転舵制御から手動転舵制御に切り替わった瞬間(ステップS51)、運転者がステアリングホイール1を急操作している可能性があり、この急操作が再び車両姿勢を乱す要因になり得る。しかも、この車両姿勢の再乱を電子制御で防止することは困難である。これは、車両姿勢が不安定な状況下で運転者によるステアリングホイール1の操作が操舵センサ5で検知されて電子制御装置8に出力されるため、自動転舵制御から手動転舵制御への切り替えの際に操舵センサ5で検知されるステアリングホイール1の操作量を優先すべきか無視すべきか優先順位をつけるのが制御的に難しく、車両姿勢の再乱を招かないように自動転舵制御から手動転舵制御へ円滑に繋ぐ電子制御の実現が困難なためである。また、車両姿勢の不安定時に運転者が体を支えるためにステアリングホイール1を使用すると、ステアリングホイール1が回ってしまい、運転者の上半身の体勢が崩れて腕や手首を捻り、関節を負傷する虞がある。一方、第一実施形態においては、ステアリングロック装置7のロック状態とフリー状態の切り替えに応じて、車両姿勢の不安定時にはステアリングホイール1の回転が阻止されることにより、運転者に対し、自動転舵制御に移行したことを明確に知らせ、ステアリングホイール1の回転阻止が解除されれば、手動転舵制御に戻ることを明確に知らせることができる。また、車両姿勢が不安定なとき、ステアリングホイール1の回転がステアリングロック装置7で阻止されるので、運転者が体の支えにステアリングホイール1を使用しても、運転者が体勢を崩す虞がない。したがって、第一実施形態は、ステアリングホイール1の操作の影響を確実に排除すると共に手動転舵制御への復帰タイミング等を明確に運転者に伝えることが可能なため、車両姿勢の再乱要因を無くすことができ、しかも運転者の体勢崩れによる負傷を防止することができる点で、第二実施形態よりも優れる。
上述の各実施形態では、左右一対の転舵輪3を有する車両100を例に挙げて説明したが、この発明は、建設機械、農業機械、全地形対応車、多用途四輪車などの車両のステアバイワイヤ式操舵システムに適用することが可能である。
また、各実施形態では、ステアリングロック装置7を反力モータ6に対して反ステアリングホイール1側に配置した例を示したが、この発明は、ステアリングロック装置を反力モータとステアリングホイールとの間に配置する場合にも適用することが可能である。
また、各実施形態では、反力モータ6のモータシャフト15にステアリングロック装置7を連結した場合を例示したが、この発明は、反力モータを備えないステアバイワイヤ式操舵システムに適用することが可能である。この場合、常にステアリングホイール1と一体に回転する軸系に属する任意のシャフトにステアリングロック装置を連結すればよい。
また、各実施形態では、ステアリングロック装置7の固定部材としてブレーキケース23を採用したが、この発明においては、外輪とブレーキケースを繋ぎ目のない一体のケース部材で構成し、そのケース部材とは別体の固定部材を車両等のボディ側の静止部材で構成することも可能である。
また、この発明において、ステアリングホイール1の回転位置、回転速度の検知は、ステアリングホイール1の回転位置に対応した回転位置、ステアリングホイール1の回転速度に対応した回転速度について検知し、必要に応じて適宜に変換すればよい。各実施形態のように回転角度位置、角速度を検知する場合、常にステアリングホイール1と一体に回転する軸系の任意の位置における回転角度位置、角速度と、ステアリングホイール1の回転角度位置、角速度とが一致するので、その軸系の任意のシャフト(ステアリングシャフト4やモータシャフト15)の回転角度位置、角速度をそのままステアリングホイール1の回転位置、回転速度を示す情報として電子制御装置8の制御で使用することが可能である。
また、各実施形態では、励磁作動形のステアリングロック装置7を採用したが、この発明では、非励磁作動形のステアリングロック装置を採用することも可能である。
また、各実施形態では、電子制御装置8が、ステアリングロック装置7のロック状態への移行を検知し、この移行完了を検知したときに車両姿勢の自動制御を開始するようにしたが、移行完了の検知は必須でなく、ロック状態への移行を指令後に、その指令時のストローク位置から車両姿勢の自動制御を開始すればよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。