JP7829129B2 - 銅めっき鋼板 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、鋼板などの摺動基材と、摺動基材の表面に形成された純銅めっき層と、純銅めっき層上に形成され、銅及びグラファイトを含有する複数の塊状部を含み、ビッカース硬さが120以下である複合銅めっき層とを備える摺動部材(銅めっき鋼板)が提案されている。しかしながら、この摺動部材は、複合銅めっき層の形成にコストがかかるとともに、負荷荷重が大きい場合に摺動性の維持能力(摩擦係数の維持時間)が十分でないことがある。
素地鋼板と、前記素地鋼板の少なくとも一方の面に形成された銅めっき皮膜とを備え、
前記銅めっき皮膜は、厚み方向に平行な断面を断面視したときに、前記素地鋼板を連続的に被覆するベース皮膜部と、前記ベース皮膜部から樹枝状に成長した突起部とを有し、
前記ベース皮膜部から高さ10μmまでの領域における前記突起部の体積率が0.10%以上である銅めっき鋼板である。
なお、本明細書において成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る銅めっき鋼板10は、素地鋼板20と、素地鋼板20の一方の面に形成された銅めっき皮膜30とを備える。なお、図1では、素地鋼板20の一方の面に銅めっき皮膜30が形成された例を示しているが、銅めっき皮膜30は素地鋼板20の両方の面に形成されていてもよい。
図2に示されるように、摺動性樹脂皮膜40は、銅めっき皮膜30上に設けられる。
素地鋼板20としては、特に限定されず、熱延鋼板や冷延鋼板などの各種鋼板を用いることができる。その中でも素地鋼板20として冷延鋼板が好適に用いられる。
素地鋼板20の組成についても、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。
銅めっき皮膜30は、厚み方向に平行な断面を断面視したときに、素地鋼板20を連続的に被覆するベース皮膜部31と、ベース皮膜部31から樹枝状に成長した突起部32とを有する。
ここで、本明細書において「素地鋼板20を連続的に被覆するベース皮膜部31」とは、素地鋼板20を露出させることなく素地鋼板20を均一に被覆している部分を意味する。したがって、ベース皮膜部31は、厚み方向に平行な断面において、素地鋼板20の表面から、素地鋼板20の表面に平行な線を引いたときに銅めっき皮膜30が存在しない部分が発現するまでの領域である。例えば、図1では、点線部分がベース皮膜部31と突起部32との境界となり、ベース皮膜部31の厚みTは素地鋼板20から点線部分までの高さとする。
上記のような厚みTのベース皮膜部31で素地鋼板20を連続的に被覆することにより、摺動性樹脂皮膜40を銅めっき皮膜30上に設けた場合に、負荷荷重が大きい摺動環境下でも摺動性樹脂皮膜40が剥がれ難くなる。なお、ベース皮膜部31の厚みTの上限は、特に限定されないが、製造コストなどを考慮すると、一般的に10.0μm以下、好ましくは8.0μm以下である。
ベース皮膜部31の厚みTは、銅めっき鋼板10の厚み方向に平行な断面において、顕微鏡(例えば、SEM)を用いて観察することによって測定することができる。
この効果を得るために、ベース皮膜部31から高さ10μmまでの領域における突起部32の体積率を0.10%以上とする。このような範囲に突起部32の体積率を制御することにより、アンカー効果を得るのに十分な突起部32が存在している状態となる。この効果を安定して確保する観点からは、突起部32の体積率は、好ましくは0.20%以上、より好ましくは0.30%以上である。なお、突起部32の体積率は、多いほどアンカー効果が得られ易くなるため特に限定されないが、一般的に50.0%以下である。
ここで、X線CTによって測定される銅めっき鋼板10における突起部32の三次元像の一例を図3に示す。
素地鋼板20及び銅めっき皮膜30のベース皮膜部31(連続的に被覆された部分)は一様な平板状であり、測定対象物(銅めっき鋼板10)を回転させたとき、X線の吸収コントラストは厚みの変化に従って一様に変化していく。このため、素地鋼板20及び銅めっき皮膜30のベース皮膜部31は、X線の吸収コントラストが同じとなって区別がつかない。一方、突起部32が形成された領域は表面に凹凸が存在しており、測定対象物(銅めっき鋼板10)を回転させたとき、表面に凹凸がある領域ではその形状に応じX線の吸収コントラストが変化する。このため、X線CTで得られた銅めっき鋼板10全体の三次元像に対し、X線の吸収コントラストに閾値を設けることで突起部32の三次元像のみを抽出することができる。すなわち、突起部32と、素地鋼板20及び銅めっき皮膜30のベース皮膜部31とでは、X線の吸収コントラストの違いによってX線CTの輝度値が異なるため、図3に示されるように、突起部32の三次元像のみを容易に抽出することができる。
ベース皮膜部31から高さ10μmまでの領域における突起部32の体積率は、X線CT測定で得られた三次元像(図3)から算出することができる。図3では、突起部32が形成された領域のみが抽出されているため、突起部32の体積率が測定される領域の高さの起点(ベース皮膜部31の表面)は最下部となる。
なお、摺動性樹脂皮膜40が存在する場合も上記と同様にX線CT測定を行うことによって、突起部32の三次元像のみを抽出できる。
変色防止処理層としては、その後に形成される摺動性樹脂皮膜40の密着性を損なわない限り、特に限定されない。例えば、市販の変色防止剤の水溶液/分散液に素地鋼板20を浸漬して乾燥させることで変色防止処理層を形成できる。市販の変色防止剤の例としては、大和化成株式会社製のVERZONE シーユーガードD、信越化学工業株式会社製のベンゾトリアゾール基含有シランカップリング剤、ゴスペル化工株式会社製のゴスペル(C-30、C-70又はC-220)、奥野製薬工業株式会社製のトップリンスCU-5、株式会社金属化工技術研究所製のKPC-2003、メルテックス株式会社製のCU-5600、共同薬品株式会社製のBTZ-Mなどが挙げられる。
なお、変色防止処理層は、銅めっき皮膜30上に全体的に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。
摺動性樹脂皮膜40としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを採用することができる。例えば、潤滑剤を添加した樹脂皮膜や、自己潤滑性を有する樹脂皮膜などを摺動性樹脂皮膜40として用いることができる。その中でも摺動性樹脂皮膜40としては、マトリックス樹脂中にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂が分散された状態の皮膜であることが好ましい。マトリックス樹脂としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、線状高分子ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVdF)/アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
電気めっき工程は、ピロリン酸銅めっきを行った後に硫酸銅めっきを行うことが好ましい。
ピロリン酸銅めっきの条件は、特に限定されず、公知の方法に準じて適宜設定することができる。典型的な条件は以下の通りである。
ピロリン酸銅めっき液の組成:ピロリン酸銅50g/L、ピロリン酸カリウム250g/L、シュウ酸10g/L
ピロリン酸銅めっき液のpH:9.2
ピロリン酸銅めっき液の温度:20~60℃
電流密度:1~10A/dm2
時間:5~100秒
なお、ピロリン酸銅めっきは、一回であってもよいし、条件を変えて複数回行ってもよい。
ここで、銅めっき皮膜30の形成過程を説明するための概略図を図4に示す。
硫酸銅めっきを低流速で行うと、めっき面に銅イオンが供給不足となり易くなるとともに、めっき中に発生する水素による気泡によって析出した銅が破壊され易い。そのため、粒子状の銅が表面に付着する(状態A)。一方、硫酸銅めっきを高流速で行うと、めっき面に銅イオンが十分に供給されやすい。その結果、めっきが表面に沿って成長するため、粒子状の銅が付着した表面全体を被覆するように銅めっき皮膜30が形成される(状態B)。次に、硫酸銅めっきを低流速で再び行うと、状態Aと同様に粒子状の銅が付着し、銅が樹枝状の結晶(デンドライト)として成長する(状態C)。次に、硫酸銅めっきを高流速で再び行うと、表面全体を被覆するように銅めっき皮膜30が形成されるため、樹枝状の銅が補強されるとともに、銅めっき皮膜30の厚みも厚くなる(状態D)。このようにして低流速での硫酸銅めっきと、高流速での硫酸銅めっきとを交互に繰り返し行うことにより、上述したような突起部32を有する銅めっき皮膜30を形成することができる。
なお、硫酸銅めっきは、めっき液を流動させることが可能な電気めっき装置(例えば、フローセルなど)を用いて行うことができる。
硫酸銅めっき液の組成:硫酸銅220g/L、硫酸45g/L
硫酸銅めっき液のpH:1.0
硫酸銅めっき液の温度:20~50℃
樹脂皮膜形成工程は、摺動性樹脂皮膜40を形成できれば特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。典型的な樹脂皮膜形成工程では、マトリックス樹脂と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂とを含む樹脂組成物を銅めっき皮膜30上に塗布して乾燥させることによって摺動性樹脂皮膜40を形成することができる。
樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、浸漬法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの公知の方法を用いることができる。樹脂組成物の塗布は、形成される摺動性樹脂皮膜40が所定の厚さとなるように1回又は複数回行うことができる。また、乾燥温度は、樹脂組成物の組成などに応じて適宜設定すればよく特に限定されない。
変色防止処理工程は、ベンゾトリアゾールなどの変色防止剤を含む溶液を銅めっき皮膜30上に塗布して乾燥させればよい。
変色防止剤を含む溶液の塗布方法としては、特に限定されず、上述した公知の方法を用いることができる。また、乾燥温度は、溶液の種類に応じて適宜設定すればよく特に限定されない。
素地鋼板として、板厚0.5mmの冷延鋼板を準備した。この冷延鋼板に対して電解脱脂、水洗及び酸洗を順次行った。電解脱脂は、冷延鋼板を陽極としてNa濃度が5%のNa系脱脂剤(温度60℃)に浸漬し、電流密度を2A/dm2、時間を10秒として行った。また、酸洗は、塩酸濃度が2%の塩酸水溶液(温度20℃)に30秒浸漬した。次に、60℃のピロリン酸銅めっき液に冷延鋼板を浸漬し、電流密度を5A/dm2、時間を13秒としてピロリン酸銅めっきを行った。次に、ピロリン酸銅めっきを行った冷延鋼板を、35℃の硫酸銅めっき液に浸漬し、表1に示す電流密度及び硫酸銅めっき液の流速の条件にて、低流速での硫酸銅めっきと、高流速での硫酸銅めっきとを交互に行い、合計21回(高流速下で11回、低流速下で10回)実施した。このようにして銅めっき皮膜を形成した銅めっき鋼板を得た。なお、使用したピロリン酸めっき液及び硫酸銅めっき液の組成及びpHは以下の通りである。
ピロリン酸銅めっき液の組成:ピロリン酸銅50g/L、ピロリン酸カリウム250g/L、シュウ酸10g/L
ピロリン酸銅めっき液のpH:9.2
硫酸銅めっき液の組成:硫酸銅220g/L、硫酸45g/L
硫酸銅めっき液のpH:1.0
また、本実施例での流速とは、電極(冷延鋼板-陽極)間における、冷延鋼板に沿う方向に流れるめっき液の速度をいう。
低流速での硫酸銅めっきと、高流速での硫酸銅めっきとを交互に合計21回実施する代わりに、高流速での硫酸銅めっきのみを21回行った。次に、上記の実施例と同様にして変色防止処理層及び摺動性樹脂皮膜を形成した。
銅めっき皮膜のみを形成した銅めっき鋼板を、アンモニア水溶液(アンモニア濃度28%)及び過酸化水素の混合水溶液に浸漬して銅めっき皮膜を溶解させ、銅めっき皮膜の溶解前後の質量差[g]を測定し、質量差を銅めっき皮膜が形成された領域の面積[m2]で除することにより銅付着量[g/m2]を算出した。
銅めっき皮膜のみを形成した銅めっき鋼板から厚み方向に平行な断面が観察できるように切断し、切断面が観察面となるように樹脂埋めを施した。次に、樹脂埋めを行った測定用試験片を湿式研磨によって鏡面処理した。鏡面処理した表面について、SEM(株式会社日立ハイテク製SU6600形)を用いて観察した。2,000倍のSEM像において、厚み方向に直交する方向の長さ約1000μmにおけるベース皮膜部の厚みT[μm]を測定した。
銅めっき皮膜のみを形成した銅めっき鋼板をφ10mmの円板状試料に加工し、カール・ツァイス社製Xradia 520 versaを用いてX線CTを実施した。X線透過像の画素サイズは1μm/ピクセルとし、観察倍率は28倍(4x対物レンズ)、観察領域は1.0mm×1.0mm×0.5mmとした。また、管電圧は140kVに設定した。
次に、得られたX線CT像を再構成処理し、突起部の三次元像を得た。次に、画像解析ソフトウェアとしてFEI社製Avizo(ver. 2022.2)を用いて、ベース皮膜部から高さ10μmまでの領域(1000μm×1000μm×10μm)における突起部を特定し、その体積率を算出した。
摺動性樹脂皮膜を形成した銅めっき鋼板を直径6mmの円盤状に打ち抜き加工した。このときクリアランスは0.1mmとした。次に、打ち抜き加工された銅めっき鋼板から厚み方向に平行な断面が観察できるように切断し、切断面が観察面となるように樹脂埋めを施した。次に、樹脂埋めを行った測定用試験片を湿式研磨によって鏡面処理した。鏡面処理した表面について、打ち抜き端面からの摺動性樹脂皮膜の剥離長さを測定した。この評価の基準は以下の通りである。
剥離長さが20μm未満:摺動性樹脂皮膜の密着性が優れる(◎)
剥離長さが20μm以上100μm未満:摺動性樹脂皮膜の密着性が良好(○)
剥離長さが100μm以上:摺動性樹脂皮膜の密着性が不良(×)
これに対して比較例1の銅めっき鋼板は、ベース皮膜部から高さ10μmまでの領域における突起部の体積率が適切な範囲でなかったため、摺動性樹脂皮膜の密着性が十分でなかった。
20 素地鋼板
30 銅めっき皮膜
31 ベース皮膜部
32 突起部
40 摺動性樹脂皮膜
Claims (5)
- 摺動部材に用いられる銅めっき鋼板であって、
素地鋼板と、前記素地鋼板の少なくとも一方の面に形成された銅めっき皮膜とを備え、
前記銅めっき皮膜は、厚み方向に平行な断面を断面視したときに、前記素地鋼板を連続的に被覆するベース皮膜部と、前記ベース皮膜部から樹枝状に成長した突起部とを有し、
前記ベース皮膜部から高さ10μmまでの領域における前記突起部の体積率が0.10%以上である銅めっき鋼板。 - 前記ベース皮膜部の厚みが1.0μm以上である、請求項1に記載の銅めっき鋼板。
- 前記銅めっき皮膜上に設けられた摺動性樹脂皮膜を更に備える、請求項1又は2に記載の銅めっき鋼板。
- 前記銅めっき皮膜上に設けられた変色防止処理層を更に備える、請求項1又は2に記載の銅めっき鋼板。
- 前記銅めっき皮膜と前記摺動性樹脂皮膜との間に設けられた変色防止処理層を更に備える、請求項3に記載の銅めっき鋼板。
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