JP7745852B2 - 負熱膨張性材料の製造方法、負熱膨張性材料の反応前駆体の製造方法、および負熱膨張性材料の反応前駆体 - Google Patents

負熱膨張性材料の製造方法、負熱膨張性材料の反応前駆体の製造方法、および負熱膨張性材料の反応前駆体

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Description

本発明は、負の熱膨張性を有する材料の製造方法、負熱膨張性材料の反応前駆体の製造方法、負熱膨張性材料の反応前駆体、および負熱膨張性材料に関する。
近年、LSI製造などのナノテクノロジーの発展に伴い、部材の熱膨張による位置決めの狂いが問題になっている。この問題に対処するため、温めると縮む性質、すなわち負の熱膨張性を有する材料が樹脂に分散されたゼロ膨張材料の開発が進められている。
従来、負の熱膨張性を有する材料としては、ペロブスカイト構造を有するBiNiOにおいて、Biの一部を希土類元素やSb、またはNiの一部をAlやFe等で置換した負熱膨張性材料が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この負熱膨張性材料は、既存材料よりも大きな負の熱膨張を示し、多くの樹脂の熱膨張係数(たとえば、数10~100ppm/℃)に見合った負の熱膨張係数を有する。
特許第6143197号 特許第6555473号
従来、上述した負熱膨張性材料は、金属・酸化物の原料を硝酸に溶解し、得られた水溶液を蒸発乾固して反応前駆体を得、この反応前駆体を6GPaかつ1000℃の高圧高温条件下で酸化剤と反応させることによって合成されていた。合成の際、硝酸の煙が発生し、その毒性が問題となる。また、酸化剤としてKClOを添加することから、高圧合成装置への負荷が大きい。また、KClOの添加により、得られる負熱膨張性材料の収率が低下し、反応後に残存するKClを洗い流す工程が必要となる。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的のひとつは、装置への負荷が少なく、安全に、高い収率で負熱膨張性材料を製造するための技術の提供にある。
本発明のある態様は、負熱膨張性材料の製造方法である。当該製造方法は、ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を形成する工程と、
金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩化合物及びアルカリ性化合物と混合して金属塩を析出させ、反応前駆体を形成する工程と、
反応前駆体を加圧加熱して、下記式(1)で表される化合物を含む負熱膨張性材料を形成する工程と、
を含む。
Bi1-xNi1-y・・・(1)
[式(1)中、Aは希土類元素又はアンチモン、Mは3価イオンとなり得る金属である。x=0である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aが希土類元素且つ0<x≦0.20である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aがアンチモン且つ0<x≦0.20である場合、yは0≦y≦0.50を満たす。]
本発明の他の態様は、負の熱膨張性を有する負熱膨張性材料の反応前駆体の製造方法である。当該製造方法は、ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を形成する工程と、
金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合して金属塩を析出させ、反応前駆体を形成する工程と、を含む
本発明のさらに他の態様は、負熱膨張性材料の反応前駆体である。該反応前駆体は、ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を形成し、金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合して金属塩を析出させることによって形成される。
本発明のさらに他の態様は、負の熱膨張性を有する負熱膨張性材料である。該負熱膨張性材料は、ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を形成し、金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合して金属塩を析出させ、反応前駆体を形成し、反応前駆体を加圧加熱することによって形成される下記式(1)で表される化合物を含む。
Bi1-xNi1-y・・・(1)
[式(1)中、Aは希土類元素又はアンチモン、Mは3価イオンとなり得る金属である。x=0である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aが希土類元素且つ0<x≦0.20である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aがアンチモン且つ0<x≦0.20である場合、yは0≦y≦0.50を満たす。]
本発明によれば、装置への負荷がより少なく、より安全に、高い収率で負熱膨張性材料を製造することができる。
実施例1、2、3に係る負熱膨張性材料の平均体積の温度依存性を示すグラフである。 実施例4に係る負熱膨張性材料の平均体積の温度依存性を示すグラフである。 実施例1で得られたBiNi0.85Fe0.15の反応前駆体の熱重量分析の結果を示す図である。
実施の形態に係る負熱膨張性材料の製造方法によって製造される負熱膨張性材料は、母物質のBiNiOにおいて、金属MでNiの一部が置換され、希土類元素又はSb(アンチモン)でBiの一部が置換され得る化合物である。この負熱膨張性材料は、後述する反応前駆体を、酸化剤を使用することなく加圧加熱することによって製造される。具体的には、本実施の形態の製造方法によって得られる負熱膨張性材料は、負の熱膨張性を有し、下記式(1)で表される化合物を含む。
Bi1-xNi1-y・・・(1)
[式(1)中、Aは希土類元素又はアンチモン、Mは3価イオンとなり得る金属である。x=0である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aが希土類元素且つ0<x≦0.20である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aがアンチモン且つ0<x≦0.20である場合、yは0≦y≦0.50を満たす。]
本実施の形態に係る負熱膨張性材料は、所定の温度範囲、例えば0℃~50℃において-30ppm/℃以上の負の熱膨張を示す。上記式(1)において、Mは3価イオンとなり得る金属であり、好ましくは、3価が他の価数よりも安定な金属である。好ましくはMは、Al,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ga,Nb,Ru,Rh,Inからなる群より選ばれる1種以上である。また、より好ましくはMは、Al,Fe,Cr,Gaからなる群より選ばれる1種以上である。
また、上記式(1)において、Aが希土類元素である場合、yを0.02以上とすることで、負の熱膨張性を確実に発揮させることができる。また、Aが希土類元素又はアンチモンのいずれであっても、yを0.50以下とすることで、負の熱膨張を示す温度範囲をゼロ膨張材料を実現する上で実用的な範囲とすることができる。
上記式(1)で表される化合物の母物質であるBiNiOは、Bi3+ 0.5Bi5+ 0.5Ni2+という特徴的な価数状態を持つペロブスカイト酸化物である。ペロブスカイト構造では、Ni-O結合が構造の骨格を作っており、Biはその隙間を埋めている。Niの一部を3価が安定な金属Mで置換することにより、ペロブスカイト酸化物の価数状態が不安定化する。この結果、昇温によってBi3+(Ni,M)3+という価数状態に転移する。Ni2+からNi3+への価数変化に伴ってNi-Oが収縮すると、全体の体積が収縮する。また、体積の大きい低温相と体積の小さい高温相とは、互いに分率を変化させながら徐々に移り変わっていく。このため、広い温度範囲でなだらかに体積を減少させることができる。すなわち、本実施の形態に係る製造方法で得られる負熱膨張性材料によって負の熱膨張が実現される。
本実施の形態の負熱膨張性材料が含むペロブスカイト型の化合物は、希土類元素又はSbでBiの一部が置換されていてもよい。希土類元素又はSbでBiの一部を置換した場合でも、昇温による体積の収縮を起こすことができる。すなわち、本実施の形態に係る負熱膨張性材料によって、負の熱膨張が実現される。ここで、希土類元素は、Sc、Yおよびランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)の合計17元素を指す。
また、Sbは3価と5価とで安定な元素である。このため、Biの一部をSbで置換することで、Ni-Bi間の電荷移動だけでなく、Ni-Sb-Bi間でも電荷移動を生じさせることができる。よって、Niの価数をよりなだらかに変化させることができる。すなわち、ペロブスカイト酸化物のABサイト間での電荷移動をなだらかにできる。このため、低温相から高温相への転移による体積の減少(1次転移)に加えて、各相における体積の減少(2次転移)を起こすことができる。そして、この2次転移により、温度ヒステリシス(温度履歴)を抑制することができる。
上記式(1)において、A=Sbの場合、xは、0.075以上であることが好ましい。xを0.075以上とすることで、すなわちSbの比率を7.5%以上とすることで、負熱膨張性材料の温度ヒステリシスをより確実に抑制することができる。また、Aがアンチモンの場合は0≦y≦0.02であってもよい。
また、この負熱膨張性材料をエンジニアリングプラスチックなどの樹脂材料や、金属材料中に分散させ、樹脂材料や金属材料の正の熱膨張を負熱膨張性材料の負の熱膨張で相殺することで、ゼロ熱膨張材料を得ることができる。
(負熱膨張性材料の製造方法)
本実施の形態に係る負熱膨張性材料の製造方法は、金属塩溶液を形成する工程と、反応前駆体を形成する工程と、負熱膨張性材料を形成する工程とを含む。以下、各工程について説明する。
(金属塩溶液の形成工程)
当該工程では、ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解する。すなわち、最終生成物であるペロブスカイト酸化物のBiの一部が希土類元素又はSbで置換されたのを合成する場合には、希土類元素塩又はアンチモン塩を他の原料と共に中性又は酸性の溶液に溶解する。
各構成金属の塩は、例えば硝酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。溶解度および溶液中での反応性の観点から、好ましくは、構成金属の塩は硝酸塩である。
中性又は酸性の溶液としては、各構成金属の塩を溶解できる溶液であれば特に限定されない。そのような溶液の例としては、純水、希硝酸、塩酸、硫酸等が挙げられる。構成金属の塩との反応性及び溶解性の観点から、希硝酸が好ましい。アルカリ性化合物との共沈プロセスにおいて酸性溶液の濃度は薄い方が好ましい。ここで、希硝酸は、およそ20%以下程度の濃度のものを指す。なお、溶液は水溶液の他にも、アルコール等の有機溶媒と水との混合溶液であってもよい。
(反応前駆体の形成工程)
当該工程では、前段で得られる金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合して金属塩を析出させ、反応前駆体を形成する。これにより、各構成金属が均一に分散した複合酸化物が得られる。当該工程において、次亜ハロゲン酸塩は酸化剤として機能する。次亜ハロゲン酸塩は酸化剤として機能する。そのため、金属塩の析出と同時に金属塩の金属が酸化する。このように酸化剤として次亜ハロゲン酸塩を使用することによって、反応前駆体をKClOのような酸化剤と反応させる必要がなくなる。これにより、負熱膨張性材料の収率を向上させるとともに、合成後の洗浄工程を省略することができる。
アルカリ性化合物は、金属塩溶液の酸性を中和できるものであれば、特に限定されない。アルカリ性化合物の例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
次亜ハロゲン酸塩は金属塩溶液中に含まれる金属イオンを酸化するものであれば特に限定されない。例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸カルシウムなどが挙げられる。
金属塩の析出によって形成された反応前駆体を洗浄し、乾燥してもよい。反応前駆体の洗浄に用いる溶媒は、例えば水が挙げられる。反応前駆体の洗浄方法は、前段までに使用した薬品を取り除くことができるものであれば特に限定されない。例えば、遠心分離機とボルテックスシェイカーを使用し、複数回遠心分離、攪拌することによって反応前駆体の洗浄行うことができる。洗浄した反応前駆体の乾燥は、加熱、真空乾燥などによって行うことができる。例えば、反応前駆体を、60~200℃で6~24時間、乾燥することができる。温度条件は、好ましくは80~150℃であり、より好ましくは80~100℃である。乾燥時間は、好ましくは8~16時間、より好ましくは12~14時間である。
(負熱膨張性材料の形成工程)
当該工程では、反応前駆体を加圧加熱する。これにより、上記式(1)で表される化合物が形成され、当該化合物を含む負熱膨張性材料を得ることができる。当業者であれば、上記式(1)で表される化合物を含む負熱膨張性材料を得ることができる圧力および温度の条件を適宜選択することができる。例えば、圧力条件は、好ましくは3GPa以上であり、より好ましくは4GPa以上8GPa未満である。また、例えば、温度条件は、好ましくは600℃以上であり、より好ましくは700℃以上1100℃以下であり、より好ましくは800℃以上1000℃以下である。反応前駆体の加熱加圧は、例えば公知の高圧合成装置にて行うことができる。所望の圧力および温度の条件を達成できるものであれば、装置の種類は特に限定されない。
実施の形態にかかる方法では、最終生成物であるペロブスカイト酸化物の構成金属である、ビスマス、ニッケル、金属M及び希土類元素又はアンチモンの塩を原料として用い、これらの原料を中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を得る。その後、金属塩溶液をアルカリ性化合物と混合して、共沈により反応前駆体を形成する。これにより、硝酸を使用する従来の方法と比べて硝酸の煙の発生をなくすことができる。さらに、実施の形態にかかる方法では、反応前駆体の形成の際、金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合する。これにより、反応前駆体から負熱膨張性材料を形成する際に酸化剤を添加する必要がなくなり、高圧合成装置への負荷をなくすと共に収率を向上させることができる。よって、負熱膨張性材料の産業化を促進することができる。
(負熱膨張性材料の反応前駆体の製造方法)
実施の形態にかかる負熱膨張性材料の反応前駆体の製造方法は、金属塩溶液を形成する工程と、反応前駆体を形成する工程と、を含む。各工程の詳細は、上述した実施の形態にかかる負熱膨張性材料の製造方法における金属塩溶液の形成工程、反応前駆体の形成工程と同様である。当該製造方法によって形成された反応前駆体は十分な酸素を含む。そのため、酸化剤を使用せずに反応前駆体から負熱膨張性材料を製造することができる。
(負熱膨張性材料の反応前駆体)
実施の形態にかかる負熱膨張性材料の反応前駆体は、ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を形成し、金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合して金属塩を析出させることによって形成される。反応前駆体は十分な酸素を含む。そのため、この反応前駆体を用いることによって、酸化剤を使用せずに負熱膨張性材料を製造することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
実施例1
希硝酸(10mLの水と1mLの60%硝酸との混合物)に、4mmolのBi(NO・5HO、3.4mmolのNi(NO・6HO、0.6mmolのFe(NO・9HOを溶解させ、緑色溶液を得た。この緑色溶液を、15mLの水酸化ナトリウム水溶液(濃度10M)と、10mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度10%)の混合水溶液に溶解した。生じたゲルを遠心分離機を用いて、3度水で洗浄した(3700~6000G)。その後、ゲルを80℃で8~12時間の条件の下で乾燥した。以上の工程により、反応前駆体を得た。
得られた反応前駆体(0.2g)を金カプセル又は塩化ナトリウムスリーブに封入した。キュービックアンビル型高圧合成装置を用いて、4GPa、800℃の条件下で、このカプセルを30分間処理した。これにより、BiNi0.85Fe0.15で表されるペロブスカイト型化合物を含む負熱膨張性材料を得た。
実施例2
希硝酸(10mLの水と1mLの60%硝酸との混合物)に、4mmolのBi(NO・5HO、3.6mmolのNi(NO・6HO、0.4mmolのFe(NO・9HOを溶解させ、緑色溶液を得た。この緑色溶液を、15mLの水酸化ナトリウム水溶液(濃度10M)と、10mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度10%)の混合水溶液に溶解した。生じたゲルを遠心分離機を用いて、3度水で洗浄した(3700~6000G)。その後、ゲルを80℃で8~12時間の条件の下で乾燥した。以上の工程により、反応前駆体を得た。
得られた反応前駆体(0.2g)を金カプセルまたは塩化ナトリウムスリーブに封入した。キュービックアンビル型高圧合成装置を用いて、4GPa、800℃の条件下で、このカプセル又はスリーブを30分間処理した。これにより、BiNi0.90Fe0.10で表されるペロブスカイト型化合物を含む負熱膨張性材料を得た。
実施例3
希硝酸(10mLの水と1mLの60%硝酸との混合物)に、4mmolのBi(NO・5HO、3.8mmolのNi(NO・6HO、0.2mmolのFe(NO・9HOを溶解させ、緑色溶液を得た。この緑色溶液を、15mLの水酸化ナトリウム水溶液(濃度10M)と、10mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度10%)の混合水溶液に溶解した。生じたゲルを遠心分離機を用いて、3度水で洗浄した(3700~6000G)。その後、ゲルを80℃で8~12時間の条件の下で乾燥した。以上の工程により、反応前駆体を得た。
得られた反応前駆体(0.2g)を金カプセルまたは塩化ナトリウムスリーブに封入した。キュービックアンビル型高圧合成装置を用いて、4GPa、800℃の条件下で、このカプセル又はスリーブを30分間処理した。これにより、BiNi0.95Fe0.05で表されるペロブスカイト型化合物を含む負熱膨張性材料を得た。
実施例1,2,および3の負熱膨張性材料について、粉末X線回折装置(ブルカー社製D8 ADVANCE)により温度を変えながら格子定数および低温相、高温相の相分率を見積もり、単位胞当たりの平均体積を算出した。図1に、実施例に係る負熱膨張性材料の平均体積の温度依存性を示す。
図1に示すように、実施例の負熱膨張性材料は、特許文献1で報告されているBiNi0.85Fe0.15の熱膨張特性と同様に、負の熱膨張を起こすことが確認された。
実施例4
9mLの60%硝酸に、3.6mmolのBi(NO・5HO、0.4mmolのSb、4.0mmolのNi(NO・6HOを溶解させ、緑色溶液を得た。この緑色溶液を、15mLの水酸化ナトリウム水溶液(濃度10M)と、18mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度10%)の混合水溶液に溶解した。生じたゲルを遠心分離機を用いて、3度水で洗浄した(3700~6000G)。その後、ゲルを100℃で8~12時間の条件の下で乾燥した。以上の工程により、反応前駆体を得た。
得られた反応前駆体(0.2g)を金カプセルまたは塩化ナトリウムスリーブに封入した。キュービックアンビル型高圧合成装置を用いて、6GPa、1100℃の条件下で、このカプセル又はスリーブを30分間処理した。これにより、Bi0.90Sb0.10NiOで表されるペロブスカイト型化合物を含む負熱膨張性材料を得た。
実施例4の負熱膨張性材料について、粉末X線回折装置(ブルカー社製D8 ADVANCE)により温度を変えながら格子定数および低温相、高温相の相分率を見積もり、単位胞当たりの平均体積を算出した。図2に、実施例に係る負熱膨張性材料の平均体積の温度依存性を示す。
実施例5
実施例1で得られたBiNi0.85Fe0.15の反応前駆体の熱重量分析を行った。その結果を図3に示す。300℃までの水分の脱離に加えて、約600℃~700℃で酸素の脱離に対応する3.6%の重量減少が観測された。加熱後の組成はBi3+、Ni2+、Fe3+のBiNi0.85Fe0.152.575 あった。そのため、加熱前の反応前駆体の組成はBiNi0.85Fe0.153.30であったと考えられる。
特許文献1に記載の方法に従って調製した反応前駆体の熱重量分析を行った。特許文献1に記載の方法の概要は、原料を硝酸に溶解し、加熱、蒸発乾固した後、空気中720℃で加熱するというものである。分析の結果、約600℃~700℃での重量減少は観察されなかった。そのため、この反応前駆体の組成はBiNi0.85Fe0.15 2.575 である。これらの反応前駆体の熱重量分析結果の比較から、本実施の形態にかかる反応前駆体が十分な酸素を含んでおり、酸化剤を混合しなくても、高温高圧処理によって負熱膨張性材料を得られることが分かる。
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組み合わせや工程の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本開示の範囲に含まれうる。
本発明は、負の熱膨張性を有する材料の製造に利用可能である。

Claims (5)

  1. 負の熱膨張性を有する負熱膨張性材料の製造方法であって、
    ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を形成する工程と、
    前記金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合して前記金属塩を析出させ、反応前駆体を形成する工程と、
    前記反応前駆体を加圧加熱して、下記式(1)で表される化合物を含む負熱膨張性材料を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする負熱膨張性材料の製造方法。
    Bi1-xNi1-y・・・(1)
    [式(1)中、Aは希土類元素又はアンチモン、Mは3価イオンとなり得る金属である。x=0である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aが希土類元素且つ0<x≦0.20である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aがアンチモン且つ0<x≦0.20である場合、yは0≦y≦0.50を満たす。]
  2. Aは、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Y,Sbからなる群より選ばれる1種以上であり、Mは、Al,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ga,Nb,Ru,Rh,Inからなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載の負熱膨張性材料の製造方法。
  3. 前記金属塩を析出させるのと同時に前記金属塩の金属を酸化させることを特徴とする請求項1または2に記載の負熱膨張性材料の製造方法。
  4. 負の熱膨張性を有する負熱膨張性材料の反応前駆体の製造方法であって、
    ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を形成する工程と、
    前記金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合して前記金属塩を析出させ、反応前駆体を形成する工程と、を含むことを特徴とする負熱膨張性材料の反応前駆体の製造方法。
  5. ビスマス塩と、ニッケル塩と、3価イオンとなり得る金属Mの塩と、任意選択的に希土類元素塩又はアンチモン塩とを、中性又は酸性の溶液に溶解し、金属塩溶液を形成し、前記金属塩溶液を、次亜ハロゲン酸塩及びアルカリ性化合物と混合して前記金属塩を析出させることによって形成される負熱膨張性材料の反応前駆体であって、前記反応前駆体は、下記式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする負熱膨張性材料の反応前駆体
    Bi 1-x Ni 1-y δ ・・・(2)
    [式(2)中、Aは希土類元素又はアンチモン、Mは3価イオンとなり得る金属である。x=0である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aが希土類元素且つ0<x≦0.20である場合、yは0.02≦y≦0.50を満たす。Aがアンチモン且つ0<x≦0.20である場合、yは0≦y≦0.50を満たす。δはδ≧3を満たす。]
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