[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1~図13を用いて説明する。
以下の説明において、前後方向は、車両の前後方向を意味し、上下方向は、車両の上下方向を意味し、左右方向は、車両の幅方向を意味する。左右方向は、後述するラック軸11およびラック収容部14の軸方向に一致する。ラック軸11およびラック収容部14の軸方向に関して一方側は、図1、図3、図4、および図7における左側であり、ラック軸11およびラック収容部14の軸方向に関して他方側は、図1、図3、図4、および図7における右側である。
本例の電動パワーステアリング装置1は、デュアルピニオン式である。すなわち、本例の電動パワーステアリング装置1は、1本のラック軸11、操舵側ピニオン軸10、およびアシスト側ピニオン軸13を備え、操舵側ピニオン軸10からラック軸11に操舵力を入力し、アシスト側ピニオン軸13からラック軸11にアシスト駆動力を入力する形式の電動パワーステアリング装置である。本例の電動パワーステアリング装置1は、ラック軸11と操舵側ピニオン軸10との噛合部のバックラッシュを低減するための操舵側ラックガイド24と、ラック軸11とアシスト側ピニオン軸13との噛合部のバックラッシュを低減するためのアシスト側ラックガイド37と、ラック軸11、操舵側ピニオン軸10、アシスト側ピニオン軸13、操舵側ラックガイド24、およびアシスト側ラックガイド37が組み付けられるハウジング7とを備える。
本例の電動パワーステアリング装置1は、図1に全体構成を示すように、ステアリングホイール2と、ステアリングシャフト3と、ステアリングコラム4と、1対の自在継手5a、5bと、中間シャフト6と、ハウジング7(図1では図示省略、図2参照)と、操舵機構部8と、アシスト機構部9とを備える。
ステアリングシャフト3は、車体に支持されたステアリングコラム4の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト3の後端部には、運転者が回転操作するステアリングホイール2が取り付けられている。ステアリングシャフト3の前端部は、自在継手5a、中間シャフト6、および別の自在継手5bを介して、操舵機構部8を構成する操舵側ピニオン軸10に接続されている。このため、操舵側ピニオン軸10には、ステアリングホイール2の回転運動が伝達される。操舵側ピニオン軸10の回転運動は、操舵機構部8を構成するラック軸11の軸方向の直線運動に変換される。これにより、左右の操舵輪12に、ステアリングホイール2の回転操作量に応じた舵角が付与される。電動パワーステアリング装置1は、アシスト機構部9を構成するアシスト側ピニオン軸13を介してラック軸11にアシスト駆動力を付与することにより、運転者がステアリングホイール2を回転操作するのに必要な操舵力を軽減する。
本例では、ハウジング7は、アルミニウム合金などの軽合金をダイキャスト成形することにより一体的に造られた鋳造品であり、車体に固定される。本発明を実施する場合には、ハウジングを、複数の部品を互いに結合固定して構成することもできる。本例では、ハウジング7は、図2に示すように、ラック収容部14と、操舵側ピニオン収容部15と、アシスト側ピニオン収容部16と、操舵側ガイド収容部17と、アシスト側ガイド収容部18と、ギヤハウジング部19と、複数の取付部20a、20bとを備える。
ラック収容部14は、操舵機構部8を構成するラック軸11の軸方向中間部を収容する部分であって、円筒形状を有しており、左右方向に伸長している。
操舵側ピニオン収容部15は、操舵側ピニオン軸10の先半部を収容する部分であって、ラック収容部14の軸方向一方側部分の周方向一部に配置されている。より具体的には、操舵側ピニオン収容部15は、ラック収容部14の軸方向一方側部分の前側部に配置されており、上側の端部のみが開口した有底円筒形状を有する。操舵側ピニオン収容部15は、ラック収容部14に対し、ねじれの位置関係に配置されている。つまり、操舵側ピニオン収容部15の中心軸とラック収容部14の中心軸とは、ねじれの位置関係にある。ラック収容部14の中心軸と操舵側ピニオン収容部15の中心軸とのいずれにも直交する方向である前後方向から見て、操舵側ピニオン収容部15の中心軸は、ラック収容部14の中心軸に対して直交する方向には配置されておらず、該直交する方向に対し傾斜している。操舵側ピニオン収容部15の内部空間は、ラック収容部14の内部空間に連通している。
アシスト側ピニオン収容部16は、アシスト側ピニオン軸13を収容する部分であって、ラック収容部14の軸方向他方側部分の周方向一部に配置されている。より具体的には、本例では、アシスト側ピニオン収容部16は、ラック収容部14の軸方向他方側部分の前側部に配置されており、上下方向の両側の端部が開口した円筒形状を有する。アシスト側ピニオン収容部16は、ラック収容部14に対しねじれの位置関係に配置されている。つまり、アシスト側ピニオン収容部16の中心軸とラック収容部14の中心軸とは、ねじれの位置関係にある。ラック収容部14の中心軸とアシスト側ピニオン収容部16の中心軸とのいずれにも直交する方向である前後方向から見て、アシスト側ピニオン収容部16の中心軸は、ラック収容部14の中心軸に対して直交する方向には配置されておらず、該直交する方向に対し傾斜している。アシスト側ピニオン収容部16の内部空間は、ラック収容部14の内部空間に連通している。本発明を実施する場合には、アシスト側ピニオン収容部の中心軸を、ラック収容部の中心軸に対して直交する方向に配置することもできる。
操舵側ガイド収容部17は、後述の操舵側ラックガイド24を収容する部分であって、ラック収容部14のうち、操舵側ピニオン収容部15に対して直径方向反対側となる部分に配置されている。すなわち、本例では、操舵側ガイド収容部17は、ラック収容部14のうち、操舵側ピニオン収容部15と同じ軸方向位置の後側部に配置されている。操舵側ガイド収容部17は、円筒形状を有しており、ラック収容部14の中心軸を中心とする放射方向に伸長している。すなわち、本例では、操舵側ガイド収容部17は、前後方向に伸長している。操舵側ガイド収容部17の内部空間も、ラック収容部14の内部空間に連通している。
アシスト側ガイド収容部18は、後述のアシスト側ラックガイド37を収容する部分であって、ラック収容部14のうち、アシスト側ピニオン収容部16に対して直径方向反対側となる部分に配置されている。すなわち、本例では、アシスト側ガイド収容部18は、ラック収容部14のうち、アシスト側ピニオン収容部16と同じ軸方向位置の後側部に配置されている。アシスト側ガイド収容部18は、円筒形状を有しており、ラック収容部14の中心軸を中心とする放射方向に伸長している。すなわち、本例では、アシスト側ガイド収容部18は、前後方向に伸長している。アシスト側ガイド収容部18の内部空間も、ラック収容部14の内部空間に連通している。
ギヤハウジング部19は、アシスト機構部9を構成する後述のウォーム減速機38を収容する部分であり、ウォーム収容部21とホイール収容部22とを備える。
ホイール収容部22は、ウォーム減速機38を構成するウォームホイール50を収容する部分であって、アシスト側ピニオン収容部16と軸方向に隣接して配置されている。具体的には、本例では、ホイール収容部22は、アシスト側ピニオン収容部16の上側に配置されている。ホイール収容部22は、略円筒形状を有しており、アシスト側ピニオン収容部16と同軸に配置されている。
ウォーム収容部21は、ウォーム減速機38を構成するウォーム49を収容する部分であって、ホイール収容部22の周方向一部に配置されている。具体的には、本例では、ウォーム収容部21は、ホイール収容部22の前側部に配置されている。ウォーム収容部21は、有底円筒形状を有しており、本例では、ラック収容部14の軸方向に関して一方側の端部に開口部を有する。ウォーム収容部21は、開口側の端部、すなわち、ラック収容部14の軸方向に関して一方側の端部に、径方向外側に向けて突出した取付フランジ23を有する。ウォーム収容部21の内部空間とホイール収容部22の内部空間とは、互いに連通している。
複数の取付部20a、20bは、ハウジング7を車体に固定するために用いられる。本例では、複数の取付部20a、20bは、ラック収容部14の軸方向両側の端部の前側に配置された2つの取付部20a、および、ラック収容部14の軸方向中間部の後側に配置された2つの取付部20bからなる。ハウジング7は、取付部20a、20bのそれぞれを挿通したボルトやスタッドなどの固定部材を利用して、車体に固定される。
操舵機構部8は、操舵側ピニオン軸10と、ラック軸11と、操舵側ラックガイド24とを有し、ステアリングホイール2の回転運動を、ラック軸11の軸方向の直線運動に変換する。
操舵側ピニオン軸10は、炭素鋼などの金属製の軸部材である。操舵側ピニオン軸10は、図1および図5に示すように、先半部の外周面に、ラック軸11の操舵側ラック28と噛合する操舵側ピニオン25を有する。
操舵側ピニオン軸10は、操舵側ピニオン収容部15の内側に、軸受26a、26bを用いて回転自在に支持されている。より具体的には、操舵側ピニオン軸10は、操舵側ピニオン25の軸方向両側に位置する部分を、軸受26a、26bにより、操舵側ピニオン収容部15に対して回転自在に支持されている。操舵側ピニオン軸10の中心軸は、操舵側ピニオン収容部15の中心軸と実質的に同軸に配置されている。操舵側ピニオン軸10は、ステアリングホイール2に対し、自在継手5a、5bおよび中間シャフト6などを介して接続されており、ステアリングホイール2の回転操作により回転駆動される。操舵側ピニオン軸10の回転運動は、ラック軸11の直線運動に変換され、ラック軸11の軸方向両側の端部に接続されたタイロッド27を押し引きする。これにより、左右の操舵輪12に舵角が付与される。
ラック軸11は、炭素鋼などの金属製の棒状部材である。ラック軸11は、軸方向を左右方向に向けて配置される。ラック軸11は、図6および図7に示すように、軸方向一方側部分の外周面の周方向一部に、操舵側ピニオン軸10の操舵側ピニオン25と噛合する操舵側ラック28を有し、かつ、軸方向他方側部分の外周面の一部に、アシスト側ピニオン軸13のアシスト側ピニオン41と噛合するアシスト側ラック29を有する。本例では、操舵側ラック28とアシスト側ラック29との、ラック軸11の周方向に関する配置の位相は、互いに等しい。具体的には、本例では、操舵側ラック28およびアシスト側ラック29は、ラック軸11の前側面に配置されている。ただし、本発明を実施する場合には、操舵側ラック28とアシスト側ラック29との、ラック軸11の周方向に関する配置の位相を、互いに異ならせることもできる。ラック軸11は、軸方向両側の端部のそれぞれに、軸方向端面に開口するねじ孔30を有する。
ラック軸11は、軸方向両側の端部をラック収容部14の左右方向両側の開口から突出させた状態で、ラック収容部14の内側に軸方向に関する往復移動を可能に支持されている。ラック軸11の軸方向両側の端部は、球面継手31を介してタイロッド27に接続される。すなわち、ラック軸11の軸方向両側の端部に備えられたねじ孔30のそれぞれに、球面継手31の基部に備えられた雄ねじ部32が螺合され、かつ、球面継手31の先端部に、タイロッド27の基端部が揺動可能に支持されている。ラック軸11は、球面継手31およびタイロッド27を含むリンク機構を介して、左右の操舵輪12に連結されている。
操舵側ラックガイド24は、操舵側ピニオン軸10との間でラック軸11を挟む位置に配置されており、本例では、操舵側ガイド収容部17の内側に配置されている。本例の操舵側ラックガイド24は、図3および図5に示すように、滑り式のラックガイドであり、パッド33と、弾性部材34とを備える。
パッド33は、略円柱形状を有しており、操舵側ガイド収容部17の内側に、ラック軸11に対する遠近移動を可能に配置されている。パッド33は、ラック軸11の凸円筒面状の後側面に対向する面に、ラック軸11の後側面に合致した形状を有する凹円筒面状の押圧面35を有する。押圧部である押圧面35は、滑り性に優れた合成樹脂などから構成されている。弾性部材34は、図示の例ではねじりコイルばねであり、パッド33と、操舵側ガイド収容部17の開口部を塞ぐ操舵側キャップ36との間に、弾性的に圧縮された状態で挟持されている。これにより、弾性部材34は、パッド33をラック軸11に向けて押圧する。
操舵側ラックガイド24は、ラック軸11の外周面である後側面を操舵側ピニオン軸10に向け、弾性部材34の弾力に基づいて弾性的に押圧することで、操舵側ピニオン25と操舵側ラック28との噛合部のバックラッシュを低減する。これにより、操舵側ピニオン25と操舵側ラック28との噛合部で、異音が発生することを抑制している。
アシスト機構部9は、ラック軸11にアシスト駆動力を付与することにより、運転者がステアリングホイール2を回転操作するのに必要な操舵力を軽減する。アシスト機構部9は、アシスト側ピニオン軸13と、アシスト側ラックガイド37と、ウォーム減速機38と、電動モータ39と、トルクセンサ40とを備える。
アシスト側ピニオン軸13は、炭素鋼などの金属製の軸部材である。アシスト側ピニオン軸13は、図1および図8に示すように、先半部の外周面に、ラック軸11のアシスト側ラック29と噛合するアシスト側ピニオン41を有する。
アシスト側ピニオン軸13は、アシスト側ピニオン収容部16の内側に、軸受42a、42bを用いて回転自在に支持されている。より具体的には、アシスト側ピニオン軸13は、アシスト側ピニオン41の軸方向両側に位置する部分を、軸受42a、42bにより、アシスト側ピニオン収容部16に対して回転自在に支持されている。アシスト側ピニオン軸13の中心軸は、アシスト側ピニオン収容部16の中心軸と実質的に同軸に配置されている。アシスト側ピニオン軸13は、ウォーム減速機38を介して、電動モータ39により回転駆動される。本例では、アシスト側ピニオン収容部16のうち、軸方向に関してホイール収容部22と反対側の開口部は、キャップ51により塞がれている。
アシスト側ラックガイド37は、アシスト側ピニオン軸13との間でラック軸11を挟む位置に配置され、本例では、アシスト側ガイド収容部18の内側に配置されている。アシスト側ラックガイド37は、図4および図8に示すように、転がり式のラックガイドであり、ローラ43と、ホルダ44と、ピン45と、転がり軸受46と、弾性部材47とを有する。
ローラ43は、略円環形状を有しており、軸方向を上下方向に向けて配置されたピン45および転がり軸受46を介して、ホルダ44に対し回転自在に支持されている。これにより、押圧部であるローラ43の外周面は、ラック軸11の後側面の幅方向中間部に対して転がり接触している。ローラ43の外周面は、ラック軸11の後側面の輪郭形状に略合致した凹円弧状の母線形状を有する。ホルダ44は、アシスト側ガイド収容部18の内側に、ラック軸11に対する遠近移動を可能に配置されている。弾性部材47は、図示の例では皿ばねであり、ホルダ44とアシスト側ガイド収容部18の開口部を塞ぐアシスト側キャップ48との間に配置されている。弾性部材47は、ホルダ44をラック軸11に向けて押圧している。
アシスト側ラックガイド37は、ラック軸11の外周面である後側面をアシスト側ピニオン軸13に向け、弾性部材47の弾力に基づいて弾性的に押圧することで、アシスト側ピニオン41とアシスト側ラック29との噛合部のバックラッシュを低減する。これにより、アシスト側ピニオン41とアシスト側ラック29との噛合部で、異音が発生することを抑制している。
ウォーム減速機38は、図8に示すように、ウォーム49とウォームホイール50とを備え、電動モータ39の回転を減速、すなわち電動モータ39の駆動トルクを増大して、アシスト側ピニオン軸13に伝達する。
ウォーム49は、外周面にウォーム歯を有し、ウォーム収容部21の内側に回転可能に支持されている。ウォーム49の基端部は、電動モータ39のモータ出力軸に対し、図示しない継手などを介して、トルクの伝達を可能に接続されている。
ウォームホイール50は、外周面にウォーム歯と噛合するホイール歯を有し、ホイール収容部22の内側に配置されている。ウォームホイール50は、アシスト側ピニオン軸13の基端部に相対回転不能に外嵌固定されている。本例では、ホイール収容部22のうち、軸方向に関してアシスト側ピニオン収容部16と反対側の開口部は、キャップ52により塞がれている。
電動モータ39は、ウォーム収容部21の取付フランジ23に固定されている。
トルクセンサ40は、操舵側ピニオン軸10の周囲に配置されており、操舵側ピニオン軸10に入力されるトルクの大きさおよび方向を検知する。これにより、トルクセンサ40は、操舵側ピニオン軸10に入力されるトルクに対応した信号を、電動モータ39の電子制御ユニットへ出力する。トルクセンサ40としては、たとえば、磁歪効果を利用した非接触式トルクセンサなどの、各種のトルクセンサを使用することができる。
アシスト機構部9は、トルクセンサ40の出力信号に基づいて、電動モータ39を駆動制御する。これにより、電動モータ39が発生する駆動トルクを、ウォーム減速機38およびアシスト側ピニオン軸13を介してラック軸11に対し、アシスト駆動力として伝達する。この結果、運転者がステアリングホイール2を回転操作するのに必要な操舵力が軽減される。
本例の構造は、ラック軸11を、ラック収容部14に対して、軸方向にがたつきなく移動できるように支持する1対のラックブッシュ53a、53b(図3および図4参照)を備える。これらのラックブッシュ53a、53bは、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの合成樹脂製で、略円筒形状を有し、ラック収容部14の軸方向両側の開口部の近傍に内嵌されている。ラックブッシュ53a、53bは、ラック軸11の外周面を軸方向の摺動可能に支持する。なお、ラック軸11を押圧する操舵側ラックガイド24は、滑り式のラックガイドであり、ラック軸11の幅方向(図5の上下方向)に関する保持力を十分に確保できるため、軸方向一方側に配置されたラックブッシュ53aは、省略することもできる。
本例の構造は、ラック収容部14の軸方向両側の開口部の近傍で、ラックブッシュ53a、53bに対して該開口部側に隣接する位置に内嵌固定された、円環状のスペーサ54a、54bを備える。スペーサ54a、54bは、ラックブッシュ53a、53bを構成する合成樹脂よりも強度の高い材料で造られている。
本例では、軸方向一方側の球面継手31(図3参照)の径方向外端部に備えられた軸方向他方側を向いた円輪状の突き当て面55が、軸方向一方側のスペーサ54aの軸方向一方側の側面に当接する位置から、軸方向他方側の球面継手31(図4参照)の径方向外端部に備えられた軸方向一方側を向いた円輪状の突き当て面55が、軸方向他方側のスペーサ54bの軸方向他方側の側面に当接する位置までの範囲で、ラック軸11を軸方向に直線移動させることができる。本例では、該範囲を調節することによって、ステアリングホイール2の回転操作量の制限範囲が設定されている。本例では、該制限範囲は、ステアリングホイール2の中立位置から一方側および他方側のそれぞれに約1.5回転(回転角にして540゜)の範囲に設定されている。
本例では、操舵側ピニオン軸10およびアシスト側ピニオン軸13のそれぞれは、その強度を高めるために、焼き入れおよび焼き戻しなどの熱処理が施されている。本例では、操舵側ピニオン軸10およびアシスト側ピニオン軸13は、該熱処理に起因して、僅かではあるが、図11に誇張して示すように、それぞれの中心軸О1、O2に曲がりが生じている。
このため、ステアリングホイール2を回転操作することに伴い、操舵側ピニオン軸10およびアシスト側ピニオン軸13が回転すると、操舵側ピニオン軸10の中心軸O1およびアシスト側ピニオン軸13の中心軸O2が振れ回る。そして、これに伴い、ラック軸11の中心軸から操舵側ピニオン軸10の中心軸O1あるいはアシスト側ピニオン軸13の中心軸O2までの距離が、周期的に変動する。
ラック軸11の中心軸から操舵側ピニオン軸10の中心軸O1あるいはアシスト側ピニオン軸13の中心軸O2まで距離が、操舵側ピニオン軸10あるいはアシスト側ピニオン軸13の回転に伴って周期的に変動すると、これに伴い、操舵側ピニオン軸10あるいはアシスト側ピニオン軸13がラック軸11を介して操舵側ラックガイド24あるいはアシスト側ラックガイド37を押圧する量が周期的に変動する。その結果、操舵側ラックガイド24あるいはアシスト側ラックガイド37がラック軸11の外周面を操舵側ピニオン軸10あるいはアシスト側ピニオン軸13に向けて弾性的に押圧するための弾性部材34あるいは弾性部材47の弾性変形量、すなわち押圧力が周期的に変動する。そして、これに伴い、ラック軸11の外周面と操舵側ラックガイド24の押圧部である押圧面35との接触部に作用する摩擦力F1、あるいはラック軸11の外周面とアシスト側ラックガイド37の押圧部であるローラ43の外周面との接触部に作用する摩擦力F2が、たとえば図9(a)あるいは図9(b)に示すように周期的に変動する。これらの摩擦力F1、F2は、ラック軸11が軸方向に直線運動することに対する抵抗力となる。なお、本例では、ラック軸11の外周面と操舵側ラックガイド24の押圧面35との接触は滑り接触となり、ラック軸11の外周面とアシスト側ラックガイド37のローラ43の外周面との接触部は転がり接触となるため、摩擦力F2のピーク位置での値は、摩擦力F1のピーク位置での値よりも小さくなる。
以上のように、2つの摩擦力F1、F2は周期的に変動するため、電動パワーステアリング装置1を組み立てた状態で、たとえば図9(a)および図9(b)に示すように、2つの摩擦力F1、F2のピーク位置の位相が互いに一致すると、図9(c)に示すように、ラック軸11が軸方向に直線運動することに対する、2つの摩擦力F1、F2の合力(F1+F2)の変動幅が大きくなる。該合力(F1+F2)の変動幅が大きくなることは、たとえば、アシスト駆動力を発生させる電動モータ39の駆動制御などの、電動パワーステアリング装置1に関する各種制御を実行する上で、不利になる可能性がある。
そこで、本例では、使用状態において、具体的にはステアリングホイール2の回転操作量の制限範囲内において、それぞれが周期的に変動する2つの摩擦力F1、F2のピーク位置の位相が一致しない構成を採用している。このために、本例では、操舵側ピニオン軸10の1回転のうち、摩擦力F1が最大となる回転位置を基準とする操舵側ピニオン軸10の回転角と、アシスト側ピニオン軸13の1回転のうち、摩擦力F2が最大となる回転位置を基準とするアシスト側ピニオン軸13の回転角との間の位相差が、所定角度範囲に収まっている構成を採用している。すなわち、使用状態において、ステアリングホイール2を回転操作すると、これに伴い、操舵側ピニオン軸10の前記回転角およびアシスト側ピニオン軸13の前記回転角が変化するが、ステアリングホイール2の回転操作量に関わらず、常に、操舵側ピニオン軸10の前記回転角とアシスト側ピニオン軸13の前記回転角との間の位相差が、所定角度範囲に収まっている構成を採用している。
前記所定角度範囲は、90゜以上270゜以下の範囲であることが好ましく、120゜以上240゜以下の範囲であることがより好ましく、135゜以上225゜以下の範囲であることがさらに好ましい。すなわち、前記位相差は、180゜であることが最も好ましく、180゜に近いほど好ましい。本例では、前記位相差を180゜としている。
ここで、本例では、操舵側ピニオン軸10の操舵側ピニオン25のピッチ円直径などの諸元と、アシスト側ピニオン軸13のアシスト側ピニオン41のピッチ円直径などの諸元との、相互の関係を調整することにより、操舵側ピニオン軸10の回転の周期と、アシスト側ピニオン軸13の回転の周期とが、互いに等しくなる構成を採用している。すなわち、本例では、操舵側ピニオン軸10が1回転すると、アシスト側ピニオン軸13も1回転する。このため、それぞれが周期的に変動する2つの摩擦力F1、F2の周期は、互いに等しくなっている。したがって、本例では、ステアリングホイール2の回転操作量に関わらず、操舵側ピニオン軸10の前記回転角とアシスト側ピニオン軸13の前記回転角との位相差が、実質的に180゜に維持される。
要するに、本例では、操舵側ピニオン軸10の前記回転角とアシスト側ピニオン軸13の前記回転角との位相差を180゜とすることにより、図10(a)および図10(b)に示すように、2つの摩擦力F1、F2のピーク位置の位相差△θが180゜になるように構成することで、図10(c)に示すように、2つの摩擦力F1、F2の合力(F1+F2)の変動幅が最も小さくなるようにしている。
本例の構造では、操舵側ピニオン軸10とアシスト側ピニオン軸13とのそれぞれに、該軸10、13の前記回転角を確認可能な軸側目印SM1、SM2が付されている(図12(a)および図13参照)。軸側目印SM1、SM2については、さらに後述する。
次に、上述のようにハウジング7に操舵側ピニオン軸10およびアシスト側ピニオン軸13を組み付けて、電動パワーステアリング装置1を製造する方法について、具体的に説明する。
本例の電動パワーステアリング装置1の製造方法は、工程Aと、工程Bとを備える。工程Aは、操舵側ピニオン軸10およびアシスト側ピニオン軸13のそれぞれについて、回転に伴う振れ回りの半径が最大となる円周方向位置を検出し、かつ、該検出した円周方向位置に軸側目印SM1、SM2を付す工程である。工程Bは、操舵側ピニオン軸10に付された軸側目印SM1により操舵側ピニオン軸10の前記回転角を確認しながら、操舵側ピニオン軸10をハウジング7に組み付け、かつ、操舵側ピニオン25を操舵側ラック28に噛合させ、および、アシスト側ピニオン軸13に付された軸側目印SM2によりアシスト側ピニオン軸13の前記回転角を確認しながら、アシスト側ピニオン軸13をハウジング7に組み付け、かつ、アシスト側ピニオン41をアシスト側ラック29に噛合させる工程である。なお、本発明を実施する場合には、軸側目印SM1を、操舵側ピニオン軸10に加えて、または、操舵側ピニオン軸10に代えて、操舵側ピニオン軸10と一体的に回転する部材に付することもでき、また、軸側目印SM2を、アシスト側ピニオン軸13に加えて、または、アシスト側ピニオン軸13に代えて、アシスト側ピニオン軸13と一体的に回転する部材に付することもできる。これらの部材としては、たとえば、ウォームホイール、転がり軸受を構成する内輪、止め輪、ナット、スペーサなどが挙げられる。
図11は、本例の工程Aを説明するための模式図である。本例の工程Aでは、操舵側ピニオン軸10およびアシスト側ピニオン軸13のそれぞれについて、同じ作業を行う。このため、本例の工程Aについての以下の説明では、代表して、操舵側ピニオン軸10を対象とした作業の説明を行う。また、本例の工程Aについての以下の説明および図11および図12において、アシスト側ピニオン軸13に関する名称や符号も、括弧書きで同時に付する。
本例の工程Aでは、図11に示すような試験装置56を用いる。試験装置56は、支持ピン57と、ロータ58と、マスターギヤ59と、支持体61と、コイルばね62と、リニアゲージ63とを備える。支持ピン57は、円錐状の先端部を、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の先端面(図11の左端面)に形成された支持孔に挿入した状態で、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の先端部を、自身の直線状の中心軸Caを中心とする回転を可能に支持する。ロータ58は、支持ピン57と同軸に配置されており、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の基端部(図11の左端部)を把持した状態で、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)を、中心軸Caを中心として回転させる。マスターギヤ59は、外周面に、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の操舵側ピニオン25(アシスト側ピニオン41)に噛み合わされるマスターピニオン60を有する。マスターギヤ59のマスターピニオン60は、図11において操舵側ピニオン25(アシスト側ピニオン41)の上端部に噛み合わされている。支持体61は、マスターギヤ59を回転可能に支持する。マスターギヤ59および支持体61は、図示しない保持具により、中心軸Caに垂直な方向(図11の上下方向)へのスライド移動を可能に保持されている。コイルばね62は、支持体61を操舵側ピニオン25(アシスト側ピニオン41)側に弾性的に押し付ける。リニアゲージ63は、中心軸Caに垂直な方向(図11の上下方向)における支持体61の移動量を検出可能である。
試験装置56は、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の両側の端部を支持ピン57およびロータ58によって支持した状態で、ロータ58により、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)を、中心軸Caを中心として回転させる。操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)は、その中心軸О1(О2)に曲がりが生じているため、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)が中心軸Caを中心として回転すると、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の中心軸О1(О2)が振れ回る。これに伴い、マスターギヤ59が、自身の中心軸を中心に回転しながら、支持体61とともに中心軸Caに垂直な方向(図11の上下方向)に往復移動する。
図11および図12(a)は、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の中心軸О1(О2)が振れ回りにより上端位置まで移動し、これに伴い、マスターギヤ59および支持体61が中心軸Caから最も遠ざかる位置まで移動したときの状態を示している。図12(b)は、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の中心軸О1(О2)が振れ回りにより下端位置まで移動し、これに伴い、マスターギヤ59および支持体61が中心軸Caに最も近づく位置まで移動したときの状態を示している。
本例の工程Aでは、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)を1回転(360゜)以上回転させ、その間に、図11および図12(a)に示すようにマスターギヤ59および支持体61が中心軸Caから最も遠ざかる位置まで移動したときの回転位置を、特定回転位置として特定し、その位置で操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の回転を停止させる。そして、この停止位置での、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の上端位置を、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)についての、回転に伴う振れ回りの半径が最大となる円周方向位置として検出する。
本例の工程Aでは、このように検出した円周方向位置を作業者が目視で確認できるように、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の該円周方向位置に、軸側目印SM1(SM2)を付する。より具体的には、本例では、図12(a)に示すように、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の軸方向中間部の外周面のうち、該円周方向位置に軸側目印SM1(SM2)を付している。軸側目印SM1(SM2)は、たとえばインクマーキングやレーザ刻印などの任意の態様で付すことができる。本発明を実施する場合、軸側目印SM1(SM2)の形状、大きさ、色などは、前記円周方向位置を確認できる限り、任意に設定することができる。
図13は、本例の工程Bを説明するための模式図である。
本例では、操舵側ピニオン軸10あるいはアシスト側ピニオン軸13の1回転のうち、摩擦力F1あるいはF2が最大となる回転位置は、軸側目印SM1あるいはSM2がラック軸11に最も近づく回転位置である。したがって、操舵側ピニオン軸10あるいはアシスト側ピニオン軸13をハウジング7(図8参照)に組み付ける際には、ラック軸11と軸側目印SM1あるいはSM2との位置関係を確認することにより、操舵側ピニオン軸10あるいはアシスト側ピニオン軸13の1回転のうち、摩擦力F1あるいはF2が最大となる回転位置を基準とする操舵側ピニオン軸10あるいはアシスト側ピニオン軸13の回転角を確認することができる。
そこで、本例の工程Bでは、操舵側ピニオン軸10に付された軸側目印SM1により該操舵側ピニオン軸10の前記回転角を確認しながら、図13に示すように、操舵側ピニオン軸10を、軸側目印SM1がラック軸11に最も近づく回転位置でハウジング7(図8参照)に組み付け、かつ、操舵側ピニオン25を操舵側ラック28に噛合させる。また、アシスト側ピニオン軸13に付された軸側目印SM2により該アシスト側ピニオン軸13の前記回転角を確認しながら、図13に示すように、アシスト側ピニオン軸13を、軸側目印SM2がラック軸11から最も遠ざかる回転位置でハウジング7に組み付け、かつ、アシスト側ピニオン41をアシスト側ラック29に噛合させる。
以上の工程Bにより、使用状態において、操舵側ピニオン軸10の前記回転角とアシスト側ピニオン軸13の前記回転角とが、180゜ずれる、すなわち逆位相となるように構成している。これにより、図10(a)および図10(b)に示すように、2つの摩擦力F1と摩擦力F2との位相差が180゜になるようにすることで、図10(c)に示すように、2つの摩擦力F1、F2の合力(F1+F2)の変動幅が最も小さくなるようにしている。
以上のように、本例によれば、ラック軸11が軸方向に直線運動することに対する抵抗力である合力(F1+F2)の変動幅を小さく抑えられる。さらに、このように合力(F1+F2)の変動幅を小さく抑えられる構造を、工程Aおよび工程Bを実行することに基づいて、容易に組み立てることができる。
本発明を実施する場合には、第1例の変形例として、工程Aにおいて、図12(b)に示すようにマスターギヤ59および支持体61が中心軸Caに最も近づく位置まで移動したときの回転位置で操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の回転を停止させ、この停止位置での、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)の上端位置を、操舵側ピニオン軸10(アシスト側ピニオン軸13)についての、回転に伴う振れ回りの半径が最小となる円周方向位置として検出し、該円周方向位置に軸側目印SM1(SM2)を付すこともできる。そして、工程Bにおいて、図13に示すように、操舵側ピニオン軸10を、軸側目印SM1がラック軸11に最も近づく回転位置でハウジング7(図8参照)に組み付け、かつ、操舵側ピニオン25を操舵側ラック28に噛合させ、および、アシスト側ピニオン軸13を、軸側目印SM2がラック軸11から最も遠ざかる回転位置でハウジング7に組み付け、かつ、アシスト側ピニオン41をアシスト側ラック29に噛合させることもできる。この場合も、使用状態において、操舵側ピニオン軸10の前記回転角とアシスト側ピニオン軸13の前記回転角との位相差が、180゜になるように構成される。
本発明を実施する場合、工程Aにおいて、操舵側ピニオン軸10およびアシスト側ピニオン軸13のそれぞれについて、回転に伴う振れ回りの半径が最大または最小となる円周方向位置を検出する作業は、第1例と異なる方法、たとえばレーザ距離計などを用いた方法などの、各種の方法で行うことができる。
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図14(a)~図14(c)を用いて説明する。
本例の電動パワーステアリング装置1では、操舵側ピニオン軸10とアシスト側ピニオン軸13とのうち、操舵側ピニオン軸10にのみ、軸側目印SM1が付されている。
本例の電動パワーステアリング装置1の製造方法は、工程Cと、工程Dと、工程Eとを備える。
本例の工程Cは、操舵側ピニオン軸10について、回転に伴う振れ回りの半径が最大となる円周方向位置を検出し、かつ、該検出した円周方向位置に軸側目印SM1を付す工程である。本例では、このような工程Cを、第1例の工程A(図11および図12参照)と同じ方法で行う。
本例の工程Dでは、まず、図14(a)に示すように、アシスト側ピニオン軸13をハウジング7(図8参照)に組み付け、かつ、アシスト側ピニオン41をアシスト側ラック29に噛合させる。
そして、この状態で、電動モータ39のモータ出力軸を等速で回転駆動することにより、ウォーム減速機38を介してアシスト側ピニオン軸13を等速で回転駆動することで、ラック軸11を等速で軸方向に移動させる。この際に、アシスト側ピニオン軸13は、1回転以上回転させる。そして、この動作を行いながら、アシスト側ピニオン軸13を等速で回転させるためのトルク、すなわち、電動モータ39のモータ出力軸を等速で回転させるためのトルクを測定し、同時に、アシスト側ピニオン軸13の回転角を測定する。
なお、上述したような測定を行う際に、電動モータ39のモータ出力軸は、たとえば、目標速度を一定にした角速度フィードバック制御を行うことにより、等速で回転駆動することができる。また、電動モータ39のモータ出力軸のトルクは、電動モータ39への通電量に基づいて測定したり、電動モータ39に組み込んだトルクセンサにより測定したりすることができる。また、アシスト側ピニオン軸13の回転角は、電動モータ39のモータ出力軸の回転角およびウォーム減速機38の減速比から計算により求めることができる。
上述したようなトルクおよび回転角の測定によって、図14(b)に例示するような、トルクと回転角との関係が得られる。したがって、図14(b)の関係から、アシスト側ピニオン軸13の1回転のうちトルクが最小となる回転位置(回転角α)を検出することができる。該回転位置は、アシスト側ピニオン軸13の振れ回りの半径が最大となる円周方向位置が、ラック軸11から最も遠ざかる回転位置である。
本例の工程Dでは、該回転位置(回転角α)までアシスト側ピニオン軸13を回転させ、該回転位置でアシスト側ピニオン軸13の回転を停止させる(図14(c)参照)。
本例の工程Eでは、この状態で、操舵側ピニオン軸10に付された軸側目印SM1により該操舵側ピニオン軸10の回転角を確認しながら、軸側目印SM1がラック軸11に最も近づく回転位置で、操舵側ピニオン軸10をハウジング7(図5参照)に組み付け、かつ、操舵側ピニオン25を操舵側ラック28に噛合させる(図14(c)参照)。
以上の工程Dおよび工程Eにより、使用状態において、操舵側ピニオン軸10の回転角とアシスト側ピニオン軸13の回転角との位相差が、180゜になるように構成している。これにより、図10(a)および図10(b)に示すように、2つの摩擦力F1と摩擦力F2との位相差が180゜になるようにすることで、図10(c)に示すように、2つの摩擦力F1、F2の合力(F1+F2)の変動幅が最も小さくなるようにしている。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
本発明を実施する場合には、第2例の変形例として、工程Cで、操舵側ピニオン軸10の振れ回りの半径が最小となる円周方向位置を検出し、かつ、該検出した円周方向位置に軸側目印SM1を付すこともできる。そして、工程Dで、アシスト側ピニオン軸13の1回転のうち該トルクが最大となる回転位置を検出し、かつ、該回転位置でアシスト側ピニオン軸13の回転を停止させることもできる。そして、工程Eで、軸側目印SM1がラック軸11に最も近づく回転位置で、操舵側ピニオン軸10をハウジング7(図5参照)に組み付け、かつ、操舵側ピニオン25を操舵側ラック28に噛合させることもできる。この場合も、使用状態において、操舵側ピニオン軸10の前記回転角とアシスト側ピニオン軸13の前記回転角との位相差が、180゜になるように構成される。
[第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図15を用いて説明する。
本例は、第1例の変形例であり、ハウジング7に対するアシスト側ピニオン軸13の組み付け作業を容易にするために、ハウジング7にハウジング側目印HM2を付した例である。
すなわち、本例では、ハウジング7に、アシスト側ピニオン軸13の回転に伴って軸側目印SM2との回転方向の位置関係が変化するハウジング側目印HM2が付されている。具体的には、本例では、ハウジング7のホイール収容部22の開口側の端面のうち、ラック収容部14に収容されるラック軸11(図8参照)から最も遠い円周方向位置(図15における下端位置)に、ハウジング側目印HM2が付されている。ハウジング側目印HM2も、たとえばインクマーキングやレーザ刻印などの任意の態様で付すことができる。本発明を実施する場合、ハウジング側目印HM2の形状、大きさ、色などは、軸側目印SM2との回転方向の位置関係を確認できる限り、任意に設定することができる。
本例では、アシスト側ピニオン軸13の軸側目印SM2は、アシスト側ピニオン軸13の軸方向の基端面の径方向外端部のうち、回転に伴う振れ回りの半径が最大となる円周方向位置に付されている。
本例では、図15に示すように、軸側目印SM2の円周方向位置とハウジング側目印HM2の円周方向位置とが一致するように、ハウジング7に対してアシスト側ピニオン軸13を組み付けることで、使用状態において、2つの摩擦力F1、F2の位相差が180゜になる構成を容易に実現することができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
[第4例]
本発明の実施の形態の第4例について、図16を用いて説明する。
本例では、ハウジング7のホイール収容部22の開口側の端面のうち、ラック収容部14に収容されるラック軸11(図8参照)から最も遠い円周方向位置(図16における下端位置)Xを中心とする所定の円周方向範囲(図示の例では、中心角が40゜程度の円周方向範囲)φの円周方向両側の端部に、ハウジング側目印HM2が付されている。なお、本発明を実施する場合、円周方向範囲φの中心角は、40゜と異なる角度に設定することもできる。
本例では、図16に示すように、軸側目印SM2の円周方向位置が、円周方向に関して2つのハウジング側目印HM2の間に位置するように、ハウジング7に対してアシスト側ピニオン軸13を組み付けることで、使用状態において、2つの摩擦力F1、F2のピーク位置の位相差が160゜以上200゜以下の範囲に収まる構成を容易に実現することができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
本発明を実施する場合には、ハウジング7に、操舵側ピニオン軸10の回転に伴って軸側目印SM1との回転方向の位置関係が変化するハウジング側目印HM2を付すこともできる。
[第5例]
本発明の実施の形態の第5例について、図17を用いて説明する。
本例では、操舵側ピニオン軸10の操舵側ピニオン25(図1参照)のピッチ円直径などの諸元と、アシスト側ピニオン軸13のアシスト側ピニオン41(図1参照)のピッチ円直径などの諸元との、相互の関係を調整することにより、操舵側ピニオン軸10の回転の周期とアシスト側ピニオン軸13の回転の周期とが互いに異なる構造に、本発明を適用した例である。
本例では、具体的には、操舵側ピニオン軸10が1回転すると、アシスト側ピニオン軸13が約0.9回転する構造を有する。このような本例の構造では、ステアリングホイール2の回転操作量によって、操舵側ピニオン軸10の回転角とアシスト側ピニオン軸13の回転角との位相差が変化し、これに伴い、2つの摩擦力F1、F2の位相差△θが変化するが、本例では、使用状態で該位相差△θが十分に大きい量、たとえば160゜以上200゜以下の範囲に維持される構成を採用している。このため、本例の場合も、2つの摩擦力F1、F2の合力(F1+F2)の変動幅を小さく抑えることができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
本発明は、上述した各実施の形態の構造を、矛盾を生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。