JP7537654B1 - 硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、Li元素を含む原材料、P元素を含む原材料及びS元素を含む原材料を混合して原料混合物を得ること、並びに前記原料混合物を加熱処理することを含み、前記S元素を含む原材料としてLi2Sx(0.05≦x≦0.95)を用い、前記加熱処理はS元素を含むガスを導入して行い、前記原料混合物の質量に対する、前記S元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)は、前記Li2Sxにおける前記xに対して、Y≧x2-6.5x+5.8の関係を満たす、硫化物固体電解質の製造方法に関する。

Description

本発明は硫化物固体電解質の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器に広く用いられている。
従来、リチウムイオン二次電池においては液体の電解質が使用されてきたが、液漏れや発火等が懸念され、安全設計のためにケースを大型化する必要があった。また、電池寿命の短さ、動作温度範囲の狭さについても改善が望まれていた。
これに対し、安全性の向上や高速充放電、ケースの小型化等が期待できる点から、固体電解質をリチウムイオン二次電池の電解質として用いる全固体リチウム二次電池が注目されている。
固体電解質は、硫化物固体電解質と酸化物固体電解質とに大別される。硫化物固体電解質を構成する硫化物イオンは、酸化物固体電解質を構成する酸化物イオンに比べて分極率が大きく、高いイオン伝導性を示す。硫化物固体電解質として、Li10GeP12等のLGPS型の結晶や、LiPSCl等のアルジロダイト型の結晶、Li11結晶化ガラス等のLPS結晶化ガラス等が知られている。
硫化物固体電解質の原材料となる硫化リチウムは、本来LSとして存在するが、室温かつ露点-60~-40℃程度の乾燥空気又は窒素雰囲気で半年程度保管していると、自然と硫黄が欠損し、硫化リチウムをLで表した際のxの値が1未満となる。
このような硫黄が欠損した硫化リチウムを原材料に用いて硫化物固体電解質を製造しようとすると、硫化物固体電解質を構成する結晶も硫黄が欠損した状態となり、リチウムイオン伝導率が低くなる。
一方で、高いリチウムイオン伝導率を実現すべく、高品質のLSを高純度で使用しようとすると、硫化物化合物はそもそも高価であることもあり、コストが増大する。
これに対し、非特許文献1では、溶液合成法を採用し、硫黄(S)を添加することでLiSを安定化させ、S原子の欠損が抑制された硫化物固体電解質が得られることを開示している。
M-J Kim et al.,A Novel Strategy to Overcome the Hurdle for Commercial All-Solid-State Batteries via Low-Cost Synthesis of Sulfide Solid Electrolytes,Small Methods,2021,5,2100793
しかしながら、非特許文献1に記載された方法は、溶液合成によるものであり、溶液合成及び乾燥工程に要する合成時間が長く、コストの観点からさらなる改善が望まれる。
そこで本発明は、S原子の欠損した低品質な硫化リチウムを原材料として用いても、高いリチウムイオン伝導率を示す硫化物固体電解質を短時間で得られる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、原材料を加熱による焼結により、又は、加熱による溶融及び冷却により硫化物固体電解質を製造する方法において、加熱する際に、S元素の積算導入量を特定範囲としたS元素を含むガスを導入することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]~[9]に関するものである。
[1] 硫化物固体電解質の製造方法であって、
Li元素を含む原材料、P元素を含む原材料及びS元素を含む原材料を混合して原料混合物を得ること、並びに前記原料混合物を加熱処理することを含み、
前記S元素を含む原材料としてLi(0.05≦x≦0.95)を用い、
前記加熱処理はS元素を含むガスを導入して行い、
前記原料混合物の質量に対する、前記S元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)は、前記Liにおける前記xに対して、
Y≧x-6.5x+5.8
の関係を満たす、硫化物固体電解質の製造方法。
[2] 前記加熱処理により前記原料混合物の溶融物を得て、
次いで前記溶融物を冷却し、結晶を析出することをさらに含む、前記[1]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[3] 前記加熱処理により結晶を析出する、前記[1]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[4] 前記原料混合物は、さらにHa元素を含む原材料を含み、
前記Ha元素はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、
前記硫化物固体電解質は、アルジロダイト型の結晶構造を含む、前記[1]~[3]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[5] 前記アルジロダイト型の結晶構造の格子定数は9.70~10.50Åである、前記[4]に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[6] 前記Liにおける前記xは0.05≦x≦0.90である、前記[1]~[5]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[7] 前記S元素を含むガスとして硫黄ガスを含む、前記[1]~[6]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[8] 前記S元素を含むガスにおける前記S元素の積算導入量Yは2質量%以上である、前記[1]~[7]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
[9] 前記硫化物固体電解質のリチウムイオン伝導率は2mS/cm以上である、前記[1]~[8]のいずれか1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
本発明によれば、S原子の欠損した低品質な硫化リチウムを原材料として用いても、高いリチウムイオン伝導率を示す硫化物固体電解質を短時間で得られる。そのため、高品質な硫化物固体電解質を低コストで得られ。上記硫化物固体電解質を含む全固体リチウム二次電池の製造コストも低減できる。
図1は、本実施形態に係る硫化物固体電解質の製造方法を示すフロー図である。 図2は、本実施形態に係る硫化物固体電解質の製造方法を示すフロー図である。 図3は、本実施形態に係る硫化物固体電解質の製造方法を示すフロー図である。 図4は、例1の硫化物固体電解質のXRDパターンである。 図5は、例2の硫化物固体電解質のXRDパターンである。 図6は、例3の硫化物固体電解質のXRDパターンである。 図7は、例4の硫化物固体電解質のXRDパターンである。 図8は、例5の硫化物固体電解質のXRDパターンである。 図9は、例6の硫化物固体電解質のXRDパターンである。 図10は、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)と、S元素を含む原材料であるLiにおけるxの値について、Y=x-6.5x+5.8を表す二次関数曲線、Y=x-6.5x+6.2を表す二次関数曲線、並びに、各実施例及び比較例のプロットを示したグラフである。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「質量」とは「重量」と同義であり、また、「質量%」とは「重量%」と同義である。
<硫化物固体電解質の製造方法>
本実施形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は図1に示すように、下記ステップS1及びステップS2を順に含む。
ステップS1は、Li元素を含む原材料、P元素を含む原材料及びS元素を含む原材料を混合して原料混合物を得る工程である。
ステップS2は、ステップS1で得られた原料混合物を加熱処理する工程である。
ステップS2は、図2に示すように、ステップS2aとして加熱処理として加熱溶融を行い、ステップS1で得られた原料混合物の溶融物を得る工程でもよい。その場合には、次いでステップS3aとして、上記溶融物を冷却し、結晶を析出する工程をさらに含むことにより、本実施形態における硫化物固体電解質を得る。
ステップS2は、図3に示すように、ステップS2bとして加熱処理によりステップS1で得られた原料混合物の焼結体を得る工程でもよく、かかる焼結体が、本実施形態における硫化物固体電解質となる。
各ステップについて説明する。
・ステップS1
ステップS1では、Li元素を含む原材料、P元素を含む原材料及びS元素を含む原材料を混合して原料混合物を得る。
アルジロダイト型の結晶構造を含む硫化物固体電解質を得る場合には、原材料はLi元素を含む原材料、P元素を含む原材料、及びS元素を含む原材料に加え、さらにHa元素を含む原材料を含む。本明細書において、Ha元素とは、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。
所望する硫化物固体電解質の組成に合わせて、他の元素を含む原材料を含んでいてもよい。硫化物固体電解質の組成に合わせるとは、例えば、Li元素、P元素、S元素等の一部が他の元素に置換されている場合には、その置換されている他の元素を含む原材料も含んでいてもよい。
他の元素として、例えば、Si元素、Al元素、Sn元素、In元素、Cu元素、Sb元素、Ge元素、O元素等が挙げられる。
原材料のうち、S元素を含む原材料として、Li(0.05≦x≦0.95)で表される硫化リチウムを用いる。この硫化リチウムは、x=1であるLiSで表される硫化リチウムに対して、S元素が一部欠損し、xの値が0.95以下となった硫化リチウムである。
Liで表される硫化リチウムのxの値は0.05~0.95であればよく、0.10~0.93が好ましく、0.20~0.90がより好ましい。ここで、xの値は、原材料のコストを抑える観点から、0.93以下が好ましく、0.90以下がより好ましい。また、xの値は、S欠損を補う効率を上げる観点から、0.10以上が好ましく、0.20以上がより好ましい。
S元素を含む原材料としてLiを用いる以外に、Li元素を含む原材料及びP元素を含む原材料と、所望により、Ha元素を含む原材料や他の元素を含む原材料としては、従来公知のものを使用できる。また、Li以外のS元素を含む原材料を併用してもよい。
具体的には、Li単体やLiを含む化合物、P単体やPを含む化合物、所望によりSを含む化合物、及び所望によりHaを含む化合物を適宜組み合わせて使用できる。さらにO元素を含む場合には、上記化合物として酸化物を使用してもよい。
また、上記化合物は、Li、P、S及びHaの2以上を共に含む化合物であってもよい。
例えば、S元素を含む原材料である上記LiはS元素を含む原材料とLi元素を含む原材料を兼ねる化合物である。これは、Li元素を含む原材料として、Li以外の化合物をさらに用いることを何ら排除するものではなく、さらにLi単体や、他のLiを含む化合物を併用してもよい。
他の例として、P元素を含む原材料とS元素を含む原材料を兼ねる化合物として五硫化二リン(P)等が挙げられる。また、Li元素を含む原材料とHa元素を含む原材料を兼ねる化合物として、ハロゲン化リチウムが挙げられる。
Liを含む化合物として、先述したようにLiを用いるが、それ以外に、炭酸リチウム(LiCO)、硫酸リチウム(LiSO)、酸化リチウム(LiO)、水酸化リチウム(LiOH)、ハロゲン化リチウム(LiHa)等のリチウム化合物を用いてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Sを含む化合物としては、先述したようにLiを用いるが、それ以外に、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、リンを含有するその他の硫黄化合物および硫黄を含む化合物等を併用してもよい。硫黄を含む化合物としては、HS、CS、硫化鉄(FeS、Fe、FeS、Fe1-xSなど)、硫化ビスマス(Bi)、硫化銅(CuS、CuS、Cu1-xSなど)が挙げられる。Li以外のSを含む化合物を用いる場合、目的の硫化物固体電解質を構成する元素以外の元素の含有を防止する観点から、硫化リンが好ましく、五硫化二リン(P)がより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、硫化リンはSを含む化合物とPを含む化合物を兼ねる化合物である。
Pを含む化合物としては、例えば、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、リン酸ナトリウム(NaPO)等のリン化合物が挙げられる。中でも、目的の硫化物固体電解質を構成する元素以外の元素の含有を防止する観点から、硫化リンが好ましく、五硫化二リン(P)がより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Haを含む化合物としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)等のハロゲン化リチウム(LiHa)、ハロゲン化リン、ハロゲン化ホスホリル、ハロゲン化硫黄、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化ホウ素等が挙げられる。中でも、目的の硫化物固体電解質を構成する元素以外の元素の含有を防止する観点からは、ハロゲン化リチウムが好ましく、LiCl、LiBr、LiIがより好ましく、LiCl、LiBrがさらに好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
任意成分として、Si元素を含む原材料としては、例えば、SiO、SiSが挙げられる。中でも、リチウムイオン伝導率の観点からは、SiOがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
任意成分として、Al元素を含む原材料としては、例えば、Al、Al、AlClが挙げられる。中でも、リチウムイオン伝導率の観点からは、Al、AlClが好ましく、Alがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
任意成分として、Sn元素を含む原材料としては、例えば、SnS、SnS、SnO、SnO、SnClが挙げられる。中でも、リチウムイオン伝導率の観点からは、SnS、SnClが好ましく、SnSがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
任意成分として、In元素を含む原材料としては、例えば、In、In、InClが挙げられる。中でも、リチウムイオン伝導率の観点からは、In、InClが好ましく、Inがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
任意成分として、Cu元素を含む原材料としては、例えば、CuO、CuO、CuS、CuS、CuClが挙げられる。中でも、リチウムイオン伝導率の観点からは、CuS、CuClが好ましく、CuSがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
任意成分として、Sb元素を含む原材料としては、例えば、Sb、Sb、SbClが挙げられる。中でも、リチウムイオン伝導率の観点からは、Sb、SbClが好ましく、Sbがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
任意成分として、Ge元素を含む原材料としては、例えば、GeO、GeS、GeS、GeClが挙げられる。中でも、リチウムイオン伝導率の観点からは、GeS、GeClが好ましく、GeSがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
原材料の混合は、例えば、乳鉢での混合や、遊星ボールミルのようなメディアを用いた混合、ピンミルや粉体撹拌機、気流混合の様なメディアレス混合等により行える。原材料は加熱前の混合により、非晶質化してもよい。
特に後述するステップS2bにより加熱焼結して硫化物固体電解質を得る場合には、ステップS1における混合により、硫化物固体電解質の前駆体とすべく、非晶質化することが好ましい。この場合には、原材料をメディアを用いて混合することが好ましく、中でも、より混合力や粉砕力の高い遊星ボールミルやアトライタ(登録商標)、ビーズミルがより好ましい。
・ステップS2
ステップS2では、ステップS1で得られた原料混合物を加熱処理する。ステップS2は、ステップS2aとして加熱溶融により溶融物を得てもよく、ステップS2bとして加熱焼結により硫化物固体電解質を得てもよいが、いずれにおいても加熱処理はS元素を含むガスを導入して行う。上記のうち、より短時間で所望する硫化物固体電解質を得る観点から、ステップS2aとして加熱溶融により溶融物を得る方法を採用することが好ましい。
原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)は、S元素を含む原材料であるLiにおけるxに対して、
Y≧x-6.5x+5.8
の関係を満たす。
本発明者らは、非特許文献1で開示されたような溶液合成法ではなく、加熱溶融法や固相合成法を用いた場合であっても、原料混合物の質量に対するS元素の積算導入量Yが上記関係式を満たすS元素を含むガスを導入して加熱処理をすることにより、S原子の欠損が抑制された、リチウムイオン伝導性に優れた硫化物固体電解質を短時間で得られることを見出した。
原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)の適切な範囲は、原材料である硫化リチウムLにおけるS原子の欠損の程度によって異なる。そこで、本発明者らは、硫化リチウムLにおけるS原子の欠損の程度、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y、及び得られる硫化物固体電解質のリチウムイオン伝導率の結果から上記関係式を導き出した。ここで、S元素はガスによる導入であるため、蒸気圧と気液平衡の観点から、xの値と積算導入量Y(質量%)との関係は二次関数で表すのが適切であると考えた。そして、実際の評価結果をもとに、上記関係式の各係数を決定したものである。
上記関係式に加え、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)と、S元素を含む原材料であるLiにおけるxの値とは、
Y≧x-6.5x+6.2
の関係を満たすことが好ましい。これも、Y≧x-6.5x+5.8の関係式と同様、実際の評価結果をもとに、上記各係数を決定したものである。
また、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)と、S元素を含む原材料であるLiにおけるxの値は、
Y≦x-6.5x+16.5
の関係を満たすことも好ましく、
Y≦x-6.5x+12.5
の関係を満たすことがより好ましい。上記式も、実際の評価結果をもとに、不純物生成によるリチウムイオン伝導率低下の観点から、各係数を決定したものである。
すなわち、Lにおけるxの値は0.05~0.95であるが、例えば、xが0.90である場合、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Yは0.76質量%以上であればよく、S原子の欠損をより抑制する観点から、1.16質量%以上がより好ましい。積算導入量Yは、不純物生成によるリチウムイオン伝導率低下の観点から、11.46質量%以下が好ましく、7.46質量%以下がより好ましい。
xが0.50である場合には、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Yは2.80質量%以上であればよく、S原子の欠損をより抑制する観点から、3.20質量%以上がより好ましい。積算導入量Yは、不純物生成によるリチウムイオン伝導率低下の観点から、13.50質量%以下が好ましく、9.50質量%以下がより好ましい。
xが0.30である場合には、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Yは3.94質量%以上であればよく、S原子の欠損をより抑制する観点から、4.34質量%以上がより好ましい。積算導入量Yは、不純物生成によるリチウムイオン伝導率低下の観点から、14.64質量%以下が好ましく、10.64質量%以下がより好ましい。ただし、xの値は上記に限定されるものでなく、0.05~0.95の範囲内であればよい。
S元素を含むガスにおけるS元素源として、例えば、硫黄ガス、硫化水素ガス、二酸化硫黄ガス等が挙げられ、原料との反応性の観点から硫黄ガスを含むことが好ましい。
また、S元素を含むガスとして、単体硫黄粉末を添加し、加熱処理時の加熱により単体硫黄粉末を気化させることで、S元素を含むガスの導入としてもよい。単体硫黄粉末は、原材料を混合して原料混合物を得る際に原材料と共に添加してもよく、原料混合物を得た後に別途添加してもよい。ただし、単体硫黄粉末を、原料混合物を得る際に原材料と共に添加する場合には、得られた原料混合物の質量に、上記単体硫黄粉末の質量は含まれない。
S元素を含むガスとして、上記の硫黄ガス、硫化水素ガス、二酸化硫黄ガス等を導入すると共に、単体硫黄粉末の添加によるS元素を含むガスを併せて導入してもよい。
S元素を含むガスは、上記S元素源となるガスを、例えば不活性ガスとの混合ガスとして用いることが好ましい。不活性ガスとの混合割合は任意であり、原料混合物の質量に対するS元素の積算導入量Yを所望する値にできれば特に限定されない。
例えば、原材料を混合して得られた原料混合物が100gである場合には、硫黄分がYgとなるようなS元素を含むガスを導入する。このとき、S元素を含むガスは、混合ガス中のS元素の濃度や、加熱処理を行う容器中のS元素の濃度ではなく、原料混合物の質量に対するS元素の積算導入量が所望する値になるように、所定量導入する。
不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられ、これらを単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
ステップS2の加熱処理を、ステップS2aの加熱溶融とする場合、原料混合物の加熱溶融の具体的な方法は特に限定されない。例えば耐熱性の容器に原料を入れて、加熱炉で加熱する場合には、上記S元素を含むガスを加熱炉に導入した状態で加熱溶融を行ってもよく、溶融物を得た後にS元素を含むガスを加熱炉に導入してもよい。耐熱性の容器に原料混合物を封入して溶融する場合には、S元素を含むガス雰囲気や単体硫黄粉末を添加した状態で封入を行うことで、当該S元素を含むガスを導入する。
耐熱性の容器は、カーボン製の耐熱性容器、石英、石英ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、アルミノシリケートガラス、アルミナ、ジルコニア、ムライト等の酸化物を含有した耐熱性容器、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物を含有した耐熱性容器、炭化ケイ素などの炭化物を含有した耐熱性容器等を用いてもよい。また、これらの耐熱性容器は、上記の材質でバルクが形成されていてもよいし、カーボンコートされた石英管のようにカーボンや、酸化物、窒化物、炭化物等の層が形成された容器であってもよい。
原料混合物を加熱溶融する際の加熱温度は、用いる原材料や原料混合物の組成によっても異なるが、例えば550~950℃が好ましく、600~900℃がより好ましく、650~850℃がさらに好ましく、650~800℃が特に好ましい。ここで、加熱温度は、原料の溶融とS元素を含むガス導入の観点から550℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、650℃以上がさらに好ましい。また、加熱温度は、成分の揮散による組成ズレ抑制の観点から、950℃以下が好ましく、900℃以下がより好ましく、850℃以下がさらに好ましく、800℃以下が特に好ましい。
加熱溶融の時間はスケールによっても異なるが、10分~10時間が好ましく、30分~9.5時間がより好ましく、45分~9時間がさらに好ましく、1~9時間が特に好ましい。ここで、反応を良好に進行させる観点から、加熱溶融の時間は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、45分以上がさらに好ましく、1時間以上が特に好ましい。また、生産性の観点から、加熱溶融の時間は10時間以下が好ましく、9.5時間以下がより好ましく、9時間以下がさらに好ましい。また、S元素を含むガスを導入するが、加熱処理時の雰囲気中におけるS元素の濃度に合わせて、上記時間の長短を調整してもよい。すなわち、S元素を含むガスを不活性ガス等との混合ガスとして導入する場合であって、不活性ガス量が多く、混合ガス中におけるS元素の濃度が比較的低くなる場合には、溶融時間を長めとしてもよい。また、不活性ガス量が少なく、混合ガス中におけるS元素の濃度が比較的高くなる場合には、溶融時間は短めとしてもよい。
加熱溶融時の露点は-20℃以下が好ましく、下限は特に制限されないが、通常-80℃程度である。酸素濃度は1000ppm以下が好ましい。
ステップS2aにおいて、溶融物が完全溶解していることは、高温X線回折測定において、結晶由来のピークが存在しないことにより確認できる。
ステップS2の加熱処理を、ステップS2bの加熱焼結とする場合、原料混合物の加熱焼結の具体的な方法は特に限定されない。例えば耐熱性の容器に原料を入れて、加熱炉で加熱する場合には、上記S元素を含むガスを加熱炉に導入した状態で加熱焼結を行う。耐熱性の容器に原料混合物を封入して加熱焼結する場合には、S元素を含むガス雰囲気や単体硫黄粉末を添加した状態で封入を行うことで、当該S元素を含むガスを導入する。
原料混合物、好ましくは非晶質化した原料混合物を加熱焼結する際の加熱温度は、350℃以上600℃未満が好ましく、400~575℃がより好ましく、450~575℃がさらに好ましい。ここで、加熱温度は、固相反応、すなわち結晶化を促進する観点から350℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましく、450℃以上がさらに好ましい。また、加熱温度は、熱分解を抑制する観点から600℃未満が好ましく、575℃以下がより好ましい。
加熱焼結の時間は、1~100時間が好ましく、2~50時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。ここで、加熱時間は、固相反応、すなわち結晶化を促進する観点から1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、4時間以上がさらに好ましい。また、加熱時間は、熱分解を抑制する観点から100時間以下が好ましく、50時間以下がより好ましく、24時間以下がさらに好ましい。また、S元素を含むガスを導入するが、加熱処理時の雰囲気中におけるS元素の濃度に合わせて、上記時間の長短を調整してもよい。すなわち、S元素を含むガスを不活性ガス等との混合ガスとして導入する場合であって、不活性ガス量が多く、混合ガス中におけるS元素の濃度が比較的低くなる場合には、溶融時間を長めとしてもよい。また、不活性ガス量が少なく、混合ガス中におけるS元素の濃度が比較的高くなる場合には、溶融時間は短めとしてもよい。
上記ステップS2bにより、硫化物固体電解質が得られる。
・ステップS3a
ステップS2としてステップS2aを経た場合には、次いでステップS3aとして溶融物を冷却し、結晶を析出する工程をさらに含むことにより、本実施形態における硫化物固体電解質が得られる。
ステップS3aにおける冷却条件は、組成や目標とする結晶化率等によって異なる。
冷却速度は、所望する結晶が析出すれば特に限定されないが、5~2000℃/分が好ましく、10~1000℃/分がより好ましく、30~300℃/分がさらに好ましい。ここで、冷却速度は、生産性の観点から、5℃/分以上が好ましく、10℃/分以上がより好ましく、30℃/分以上がさらに好ましい。また、冷却速度は、結晶化率を高める観点から、2000℃/分以下が好ましく、1000℃/分以下がより好ましく、300℃/分以下がさらに好ましい。
冷却時の雰囲気は特に限定されないが、加熱処理時と同様、S元素を含むガス雰囲気でもよく、不活性雰囲気でもよい。溶融物を真空封管内で得た場合には、冷却も、そのまま真空封管された状態で行ってもよい。
上記ステップS3aにより、硫化物固体電解質が得られる。
上記ステップS2bやステップS3aにより得られた硫化物固体電解質は、所望により、加熱による安定化処理や粉砕処理等をさらに経てもよい。
<硫化物固体電解質>
上記<硫化物固体電解質の製造方法>で得られる硫化物固体電解質は、アルジロダイト型の結晶構造を含むことが好ましい。ここで、アルジロダイト型の結晶構造とは、組成式AgGeSで表される鉱物に由来する化合物群が有する結晶構造である。
アルジロダイト型の結晶構造として、例えばLiPSClで表される硫化物固体電解質である場合、原材料としてS原子欠損のないLiSを用いた場合には、下記反応が進行する。
5/2・LiS+1/2・P+LiCl→LiPSCl
これに対して、S原子欠損のあるLi(0.05≦x≦0.95)を原材料として用いると、
5/2・Li+1/2・P+LiCl→LiPS5-1/2xCl
で表されるように、Liのxの値の1/2の量が欠損したアルジロダイト型の硫化物固体電解質が製造される。
しかしながら、本実施形態に係る製造方法では、S元素を含むガスを導入することで、S原子欠損のあるLi(0.05≦x≦0.95)を原材料として用いても、LiPSClで表されるアルジロダイト型の硫化物固体電解質、又はそれに近いS原子の欠損が抑制された硫化物固体電解質が得られるようになる。
上記アルジロダイト型の硫化物固体電解質は、Ha元素として、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことがより好ましく、Cl及びBrの少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
アルジロダイト型の硫化物固体電解質の組成式がLiPSHaで表される場合、5≦a≦7、4≦b≦6かつ1.3≦c≦2の関係を満たすことが好ましい。かかる元素比は、5.1<a<6.3、4<b<5.3かつ1.4≦c≦1.9の関係を満たすことがより好ましく、5.2<a<6.2、4.1<b<5.2かつ1.5≦c≦1.8の関係を満たすことがさらに好ましい。
すなわち、aについて、5以上が好ましく、5.1超がより好ましく、5.2超がさらに好ましく、また、7以下が好ましく、6.3未満がより好ましく、6.2未満がさらに好ましい。bについて、4以上が好ましく、4超がより好ましく、4.1超がさらに好ましく、また、6以下が好ましく、5.3未満がより好ましく、5.2未満がさらに好ましい。cについて、1.3以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、また、2以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下がさらに好ましい。
上記アルジロダイト型の結晶構造の格子定数は、9.70~10.50Åが好ましく、9.70~10.45Åがより好ましく、9.70~10.40Åがさらに好ましく、9.75~10.30Åがよりさらに好ましく、9.75~10.20Åが特に好ましい。ここで、高いリチウムイオン伝導率を保持する観点から、格子定数は、9.70Å以上が好ましく、9.75Å以上がより好ましい。また、同じ観点から、格子定数は、10.50Å以下が好ましく、10.45Å以下がより好ましく、10.40Å以下がさらに好ましく、10.30Å以下がよりさらに好ましく、10.20Å以下が特に好ましい。
本実施形態に係る製造方法により得られた硫化物固体電解質は、S原子の欠損が抑制されることから、リチウムイオン伝導率の低下が抑制される。具体的には、25℃におけるリチウムイオン伝導率は、2mS/cm以上が好ましく、5mS/cm以上がより好ましく、8mS/cm以上がさらに好ましく、高いほど好ましい。リチウムイオン伝導率の上限に特に限定はないが、通常1×10-1S/cm以下となる。
なお、リチウムイオン伝導率は、交流インピーダンス法により測定できる。
本実施形態に係る製造方法により得られた硫化物固体電解質は、リチウムイオン二次電池に用いられる電極合剤や固体電解質層に好適に用いられ、特に全固体リチウム二次電池に好適である。
すなわち、上記電極合剤は、リチウムイオン二次電池に用いられ、上記固体電解質と活物質とを含む。
また、上記固体電解質層は、リチウムイオン二次電池に用いられ、上記固体電解質を含む。
また、上記全固体リチウム二次電池は、上記固体電解質を含む。
上記電極合剤、固体電解質層、全固体リチウム二次電池は、他の固体電解質をさらに含んでいてもよい。他の固体電解質は特に限定されず、例えば、従来公知のアルジロダイト型の結晶構造を有する固体電解質や、LiPS、Li、LiS、LiHa等が挙げられる。
電極合剤に含まれる活物質は、従来公知の物を使用できる。
例えば、正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、該リチウムイオンのカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行できれば特に限定されない。具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、複合金属酸化物、ポリアニオンオリビン型正極等が挙げられる。
負極活物質も、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、該リチウムイオンのカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行できれば特に限定されない。具体的には、リチウム金属、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素系材料、アルミニウム、シリコン、スズ等のリチウムと合金を形成することが出来る金属、酸化シリコン、酸化スズ等の非晶質の酸化物、チタン酸リチウム等が挙げられる。
固体電解質層には、本実施形態に係る固体電解質が含まれていればよいが、その他に、例えばバインダー等の添加剤をさらに含んでもよい。
バインダーは従来公知の物を使用できるが、例えば、ブタジエンゴム、アクリレートブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。固体電解質層におけるバインダーの含有量も、従来公知の範囲内にすればよい。
全固体リチウム二次電池は、本実施形態に係る固体電解質の他、正極及び負極を含めば特に限定されない。また、正極や負極は、本実施形態に係る固体電解質を含む電極合剤であってもよい。
正極の活物質は電極合剤において記載した正極活物質と同様のものを使用でき、正極は、必要に応じて正極集電体やバインダー、導電助剤等をさらに含んでもよい。正極集電体はアルミニウムやそれらの合金、ステンレス等の金属薄板等を使用できる。
負極の活物質は電極合剤において記載した負極活物質と同様のものを使用でき、負極は、必要に応じて負極集電体やバインダー、導電助剤等をさらに含んでもよい。負極集電体は銅やアルミニウム等の金属薄板等を使用できる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1~例4は実施例であり、例5及び例6は比較例である。
[例1]
ドライ窒素ガス雰囲気下で、Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8の組成比となるように、硫化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.98%)、五硫化二リン粉末(Sigma社製、純度99%)、塩化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.99%)、及び臭化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.995%)を秤量し、乳鉢で混合することで原料混合物を得た。なお、硫化リチウム粉末は、使用前にX線粉末回折(XRD)装置を用いて測定し、その組成がLiSではなくLi0.33となっており、長期保管によってS原子が欠損していることを確認した。
得られた原料混合物を同雰囲気下で耐熱性容器に入れ、電気炉にて750℃で1時間加熱し、完全溶解した溶融物を得た。その状態のままS元素を含むガスを導入し、1時間保持した後、室温まで150℃/分にて冷却することで硫化物固体電解質を得た。
S元素を含むガスは、硫黄ガスと窒素ガスとの混合ガスとし、原料混合物の質量に対するS元素の積算導入量は4質量%とした。
得られた硫化物固体電解質のXRD(粉末X線回折)パターンを図4に示すが、XRDの測定条件は下記のとおりである。
線源:CuKα線(λ=1.5418Å)、管球電圧:45kV、管球電流:200mA、走査角度:10~100°、走査速度:5°/分、ステップ数:0.01°/ステップ。
XRDパターンより、得られた硫化物固体電解質はアルジロダイト型の結晶構造を有することが確認された。
[例2]
原料混合物の質量に対するS元素の積算導入量を8質量%とした以外は、例1と同様にして、アルジロダイト型の結晶構造を有する硫化物固体電解質を得た。
得られた硫化物固体電解質のXRDパターンを図5に示す。
[例3]
硫化リチウム粉末として、組成がLi0.81のものを使用した以外は、例1と同様にして、アルジロダイト型の結晶構造を有する硫化物固体電解質を得た。
得られた硫化物固体電解質のXRDパターンを図6に示す。
[例4]
硫化リチウム粉末として、組成がLi0.86のものを使用した以外は、例1と同様にして、アルジロダイト型の結晶構造を有する硫化物固体電解質を得た。
得られた硫化物固体電解質のXRDパターンを図7に示す。
[例5]
S元素を含むガスである混合ガスに代えて、S元素を含まない窒素ガスを用いた以外は、例1と同様にして、アルジロダイト型の結晶構造を有する硫化物固体電解質を得た。
得られた硫化物固体電解質のXRDパターンを図8に示す。
[例6]
S元素を含むガスである混合ガスに代えて、S元素を含まない窒素ガスを用いた以外は、例3と同様にして、アルジロダイト型の結晶構造を有する硫化物固体電解質を得た。
得られた硫化物固体電解質のXRDパターンを図9に示す。
例1~例6で得られた硫化物固体電解質を乳鉢で粉砕し、目開き100μmのメッシュパスで粗粒を取り除いた後、100mg測り取り、直径10mmの面積を80MPaで加圧成型したものを測定サンプルとした。
この測定サンプルに対し、交流インピーダンス測定装置(Bio-Logic Sciences Instruments社製、ポテンショスタット/ガルバノスタット VSP)を用いてリチウムイオン伝導率を測定した。
測定条件は、測定周波数:100Hz~1MHz、測定電圧:100mV、測定温度:25℃とした。
表1に、原材料のうち硫化リチウム粉末の組成を「原材料Li」として、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量を「S元素積算導入量Y(質量%)」として、硫化リチウム粉末の組成(Li)におけるxの値を用いた関係式(x-6.5x+5.8)で表される値を「関係式(x-6.5x+5.8)」として、及び25℃におけるリチウムイオン伝導率を「σLi+(mS/cm)」として、それぞれまとめた。
Figure 0007537654000001
上記結果をもとに、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)と、S元素を含む原材料であるLiにおけるxの値について、図10に、Y=x-6.5x+5.8を表す二次関数曲線を実線で、Y=x-6.5x+6.2を表す二次関数曲線を点線で、それぞれ示した。また、各例のx及びYの値をプロットすると共に、各例のリチウムイオン伝導率もプロットの付近に示した。
以上の結果より、Y≧x-6.5x+5.8の関係を満たすことで、S原子の欠損した低品質な硫化リチウムを原材料として用いても、高いリチウムイオン伝導率を示す硫化物固体電解質を短時間で得られることが分かった。特に、欠損がなく、xの値が1であるLiSを原材料として用いた場合に得られる硫化物固体電解質のリチウムイオン伝導率が9~9.5mS/cmであることに鑑みれば、例2や例4の結果がいかに良好であるかが分かる。
また、図4~図7のXRDパターンと、図8、図9のXRDパターンとを比較すると、2θ=25°付近に観測される(220)面のピーク強度と、2θ=30°付近に観測される(311)面のピーク強度との強度比が異なることが分かる。図4~図7に示すように、原料混合物の質量に対するS元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Yが、Y≧x-6.5x+5.8の関係を満たす場合には、(220)面のピーク強度>(311)面のピーク強度の関係となる。一方、Y≧x-6.5x+5.8の関係を満たさない図8及び図9では、(220)面のピーク強度<(311)面のピーク強度の関係となっており、得られた硫化物固体電解質においても、Sが欠損していることが分かる。
このことから例5、例6のように、S原子が欠損した低品質な硫化物原料を用いて硫化物固体電解質を得ると、硫化物固体電解質でもS原子が欠損する結果、リチウムイオン伝導率が低くなるものと考えられる。
これに対し、例1や例2の硫化物固体電解質は、例5と同じ硫化物原料を用いているにも関わらず、例1で10倍以上、例2では18倍以上もの高いリチウムイオン伝導率が実現された。これは、加熱処理をS元素を含むガスを導入して行うことで、S原子が欠損した低品質な硫化物原料を用いた場合であっても、得られる硫化物固体電解質におけるS原子の欠損を抑制でき、その結果、高いリチウムイオン伝導率を実現できたものと考えている。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2022年11月7日出願の日本特許出願(特願2022-178441)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

Claims (9)

  1. 硫化物固体電解質の製造方法であって、
    Li元素を含む原材料、P元素を含む原材料及びS元素を含む原材料を混合して原料混合物を得ること、並びに前記原料混合物を加熱処理することを含み、
    前記S元素を含む原材料としてLi(0.05≦x≦0.95)を用い、
    前記加熱処理はS元素を含むガスを導入して行い、
    前記原料混合物の質量に対する、前記S元素を含むガスにおけるS元素の積算導入量Y(質量%)は、前記Liにおける前記xに対して、
    Y≧x-6.5x+5.8
    の関係を満たす、硫化物固体電解質の製造方法。
  2. 前記加熱処理により前記原料混合物の溶融物を得て、
    次いで前記溶融物を冷却し、結晶を析出することをさらに含む、請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  3. 前記加熱処理により結晶を析出する、請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  4. 前記原料混合物は、さらにHa元素を含む原材料を含み、
    前記Ha元素はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    前記硫化物固体電解質は、アルジロダイト型の結晶構造を含む、請求項2又は3に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  5. 前記アルジロダイト型の結晶構造の格子定数は9.70~10.50Åである、請求項4に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  6. 前記Liにおける前記xは0.05≦x≦0.90である、請求項2又は3に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  7. 前記S元素を含むガスとして硫黄ガスを含む、請求項2又は3に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  8. 前記S元素を含むガスにおける前記S元素の積算導入量Yは2質量%以上である、請求項2又は3に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  9. 前記硫化物固体電解質のリチウムイオン伝導率は2mS/cm以上である、請求項2又は3に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
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