JP7518707B2 - エンジン制御装置 - Google Patents

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  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)
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Description

本発明は、エンジンの燃料噴射制御等を行うエンジン制御装置に関する。
例えば自動車等の車両に走行用動力源として搭載されるエンジンにおいて、比熱比の向上やポンプ損失の低減による熱効率の改善を図り、車両の燃費を改善するために、空燃比を空気過剰な状態としたリーン状態で運転を行うことが知られている。
このようなリーン状態での運転を行うエンジンに関する従来技術として、例えば特許文献1には、空燃比学習値でリーン運転時の初期設定の空燃比を補正してエンジンへの燃料供給量を制御するとともに、エンジンの安定度が所定値以上に悪くなったとき空燃比学習値をエンジンの安定度が確保される値に設定することが記載されている。
特許文献2には、リーンバーン運転中に点火時期を遅角した場合には、理論空燃比燃焼運転中に点火時期を遅角する場合と比べて、トルク変動が大きくなり易いことに鑑み、ノック抑制のために点火時期を遅角する場合には、遅角実行サイクルの実燃焼指標値が、遅角開始直前の燃焼指標値に近づくように噴射燃料を増量することが記載されている。
特許文献3には、リーン燃焼が行われるエンジンの運転条件に応じて目標NOx濃度を設定し、目標NOx濃度と実NOx濃度とに基づいて、目標空燃比を補正することが記載されている。
特開平11- 6455号公報 特開2017-141693号公報 特開2019-183733号公報
リーン状態でエンジンの運転を行う場合、燃焼変動及び排ガス中のNO排出量を所定の許容上限値以下に抑える必要がある。
燃焼変動及びNO排出量はトレードオフの関係にあり、空燃比が空気過剰側(リーン側)に推移すると燃焼変動は悪化するが、NO排出量は減少する。
このため、実際の燃焼変動とNO排出量とをそれぞれ検出し、燃料噴射制御における目標空燃比を適宜設定するフィードバック制御を行うことが提案されている。
このようなフィードバック制御においては、定常偏差を表すI項(積分項)を有するアルゴリズムとすることにより、過渡状態を含めた燃焼安定性及びNO排出量を担保している。
しかし、リーン運転中にノッキングが発生し、その抑制のため点火時期をリタード(遅延した場合、NO排出量は点火にも感度を有するため、NO排出量が低下する。
このような場合に、点火遅延により低下したNO排出量に基づいて目標空燃比のフィードバック制御を行うと、目標空燃比が過度にリッチ側に設定され、燃費及びNO排出量が悪化することが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、燃焼変動及びNO排出量に基づいてリーン運転時の目標空燃比を設定するエンジンにおいて点火時期遅延が行われた場合であっても適切な空燃比制御を行うエンジン制御装置を提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、空燃比が空気過剰な状態であるリーン状態で運転を行うエンジンの燃焼変動を検出する燃焼変動検出部と、前記エンジンのNO排出量を検出するNOセンサと、前記燃焼変動及び前記NO排出量がそれぞれ許容上限値以下となる目標空燃比を逐次設定する目標空燃比設定部と、前記目標空燃比に基づいて前記エンジンの燃料噴射を制御する燃料噴射制御部と、前記エンジンにおけるノッキングを検出するノックセンサと、前記ノッキングの検出時に点火時期を遅延させる点火制御部とを備え、前記目標空燃比設定部は、制御目標との誤差に比例する比例項、および、前記誤差の積分値に対し比例する積分項を用いるPI制御を用いて、前記目標空燃比を設定し、前記ノッキングの検出時に前記NOセンサの検出値に応じた前記目標空燃比の設定更新を停止し、前記積分項の補正量を維持し、前記燃料噴射制御部は、前記ノッキングの検出時においては、最後に前記目標空燃比設定部が更新した前記目標空燃比に基づいて前記燃料噴射を制御することを特徴とするエンジン制御装置である。
これによれば、ノッキングの発生に応じて目標空燃比の設定更新を停止することにより、点火時期を遅延させたことによるNO排出量の低下をフィードバックして目標空燃比が過度にリッチ側に更新されることを防止し、ノッキングが抑制され点火時期が進角した際の燃費の悪化、NO排出量の増加を防止することができる。
請求項2に係る発明は、前記目標空燃比設定部は、前記ノッキングの検出時に前記NO センサの検出値に応じた前記目標空燃比の設定更新を停止し、前記積分項の補正量を維持する際、前記比例項をゼロリセットすることを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置である
請求項3に係る発明は、前記エンジンの個体差に起因する定常偏差を学習する定常偏差学習部を有し、前記燃料噴射制御部は、前記ノッキングの検出時において、前記定常偏差学習部による学習結果に基づいた燃料噴射量の補正を継続することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御装置である。
これによれば、ノッキングの発生時においてもエンジンの個体差に起因する定常偏差の学習結果に基づく燃料噴射量の補正を継続することにより、燃焼安定性をより向上することができる。
以上説明したように、本発明によれば、燃焼変動及びNO排出量に基づいてリーン運転時の目標空燃比を設定するエンジンにおいて点火時期遅延が行われた場合であっても適切な空燃比制御を行うエンジン制御装置を提供することができる。
本発明を適用したエンジン制御装置の実施形態を有するエンジンの構成を模式的に示す図である。 実施形態のエンジンにおける空燃比と燃焼変動、NO排出量との相関の一例を示す図である。 実施形態のエンジン制御装置におけるリーン運転時の動作を示すフローチャートである。 実施形態のエンジン制御装置におけるNO排出量の制御目標値からの乖離、及び、空燃比補正に係るP項、I項の推移の一例を示す図である。
以下、本発明を適用したエンジン制御装置の実施形態について説明する。
実施形態のエンジン制御装置は、例えば、乗用車等の自動車に走行用動力源として搭載される水平対向4気筒のガソリン直噴ターボ過給エンジンに設けられるものである。
図1は、第1実施形態の吸蔵量推定装置を有するエンジンの構成を模式的に示す図である。
エンジン1は、クランクシャフト10、シリンダブロック20、シリンダヘッド30、ターボチャージャ40、インテークシステム50、エキゾーストシステム60、エンジン制御ユニット(ECU)100等を有して構成されている。
クランクシャフト10は、エンジン1の出力軸となる回転軸である。
クランクシャフト10の一方の端部には、図示しない変速機等の動力伝達機構が接続されている。
クランクシャフト10には、図示しないコンロッドを介してピストンが連結されている。
クランクシャフト10の端部には、クランクシャフトの角度位置を検出するクランク角センサ11が設けられている。
クランク角センサ11の出力は、エンジン制御ユニット100に伝達される。
クランク角センサ11の出力に基づいて、クランクシャフト10の回転速度を算出することが可能であり、その履歴をモニタすることによって、クランクシャフト10の回転速度変動を算出することができる。
クランクシャフト10の回転速度変動は、燃焼室31における燃焼変動を示す指標として用いることができる。
クランク角センサ11は、エンジン制御ユニット100と協働して、本発明の燃焼変動検出部として機能する。
シリンダブロック20は、クランクシャフト10を、車体に縦置き搭載する場合における左右方向から挟みこむように二分割として構成されている。
シリンダブロック20の中央部には、クランクシャフト10を収容するとともに、クランクシャフト10を回転可能に支持するメインベアリングを有するクランクケース部が設けられている。
クランクケース部を挟んで左右に配置されるシリンダブロック20の左右バンクの内部には、ピストンが挿入され内部で往復するシリンダが例えば一対ずつ(4気筒の場合)形成されている。
シリンダブロック20には、ノックセンサ21が設けられている。
ノックセンサ21は、燃焼室31内で混合気が自己着火する異常燃焼であるノッキングの発生を検出するものである。
ノックセンサ21は、ノッキングの発生時に特有のシリンダブロック20の振動を圧電セラミクスにより検出するものである。
ノックセンサ21の出力は、エンジン制御ユニット100に伝達される。
シリンダヘッド30は、シリンダブロック20のクランクシャフト10とは反対側の端部(左右端部)にそれぞれ設けられている。
シリンダヘッド30は、燃焼室31、点火プラグ32、吸気ポート33、排気ポート34、吸気バルブ35、排気バルブ36、吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38、インジェクタ39等を備えて構成されている。
燃焼室31は、シリンダヘッド30のピストン冠面と対向する箇所を、例えばペントルーフ状に凹ませて形成されている。
点火プラグ32は、燃焼室31の中央に設けられ、エンジン制御ユニット100からの点火信号に応じてスパークを発生し、混合気に点火するものである。
吸気ポート33は、燃焼用空気(新気)を燃焼室31に導入する流路である。
排気ポート34は、燃焼室31から既燃ガス(排ガス)を排出する流路である。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、吸気ポート33、排気ポート34を所定のバルブタイミングで開閉するものである。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、各気筒に例えば2本ずつ設けられる。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、クランクシャフト10の1/2の回転数で同期して回転する吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38によって開閉される。
吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38のカムスプロケット部には、各カムシャフトの位相を進角、遅角させて各バルブの開弁時期、閉弁時期を変化させる図示しないバルブタイミング可変機構が設けられている。
インジェクタ39は、シリンダヘッド30における吸気ポート33の間隔に設けられ、エンジン制御ユニット100が発する開弁信号に応じて、燃焼室31内に燃料を噴射して混合気を形成するものである。
ターボチャージャ40は、エンジン1の排気が有するエネルギを利用して、燃焼用空気(新気)を圧縮し、過給する過給機である。
ターボチャージャ40は、タービン41、コンプレッサ42、エアバイパス流路43、エアバイパスバルブ44、ウェイストゲート流路45、ウェイストゲートバルブ46等を備えている。
タービン41は、エンジン1の排ガスによって回転駆動される。
コンプレッサ42は、タービン41に同軸に取り付けられ、タービン41によって回転駆動され空気を圧縮する。
エアバイパス流路43は、コンプレッサ42の下流側から空気の一部を抽出し、コンプレッサ42の上流側に還流させるものである。
エアバイパスバルブ44は、エアバイパス流路43に設けられ、エンジン制御ユニット100からの指令に応じてエアバイパス流路43を実質的に閉塞する閉状態と、エアバイパス流路43を空気が通過可能な開状態とを、二段階に切換えるものである。
エアバイパスバルブ44は、電動アクチュエータによって開閉駆動される弁体を有する電動バルブとなっている。
エアバイパスバルブ44は、例えば、スロットルバルブ56を急激に閉じた場合等に、ターボチャージャ40のサージング防止やブレードの保護等を図るため開状態とされ、コンプレッサ42よりも下流側の吸気管内の空気をコンプレッサ42の上流側に還流させ、余剰圧力を低減させる。
ウェイストゲート流路45は、過給圧制御や触媒の昇温等を目的として、タービン41の上流側から排ガスの一部を抽出し、タービン41の下流側にバイパスさせるものである。
ウェイストゲート流路45は、タービン41のハウジングに一体に形成されている。
ウェイストゲートバルブ46は、ウェイストゲート流路45に設けられ流路を開閉する弁体を有し、ウェイストゲート流路45を通過する排ガスの流量を制御するものである。
ウェイストゲートバルブ46は、エンジン制御ユニット100からの指令に応じて弁体を開閉駆動する電動アクチュエータを有する電動ウェイストゲートバルブである。
ウェイストゲートバルブ46には、その開度位置を検出する位置エンコーダである位置センサ46aが設けられる。
位置センサ46aの出力は、エンジン制御ユニット100に伝達される。
電動アクチュエータは、エンジン制御ユニット100によって、位置センサ46aにより検出される位置が所定の目標位置に近付くようフィードバック制御される。
ウェイストゲートバルブ46は、全開状態と全閉状態とを切換可能であるとともに、これらの中間位置においても任意の開度設定が可能となっている。
インテークシステム50は、空気を導入して吸気ポート33に導入するものである。
インテークシステム50は、インテークダクト51、チャンバ52、エアクリーナ53、エアフローメータ54、インタークーラ55、スロットルバルブ56、インテークマニホールド57、吸気圧センサ58等を備えて構成されている。
インテークダクト51は、外気を導入して吸気ポート33に導入する流路である。
チャンバ52は、インテークダクト51の入口部近傍に連通して設けられた空間部である。
エアクリーナ53は、インテークダクト51におけるチャンバ52との連通箇所の下流側に設けられ、空気を濾過してダスト等を取り除くものである。
エアフローメータ54は、エアクリーナ53の出口近傍に設けられ、インテークダクト51内を通過する空気流量を計測するものである。
エアフローメータ54の出力は、エンジン制御ユニット100に伝達される。
ターボチャージャ40のコンプレッサ42は、エアフローメータ54の下流側に設けられている。
インタークーラ55は、インテークダクト51におけるコンプレッサ42の下流側に設けられ、例えば走行風等との熱交換によって、圧縮され高温となった空気を冷却する熱交換器である。
スロットルバルブ56は、インテークダクト51におけるインタークーラ55の下流側に設けられ、空気の流量を調節してエンジン1の出力を制御するバタフライバルブである。
スロットルバルブ56は、ドライバによる図示しないアクセルペダル操作等に応じて、スロットルアクチュエータ151(図2参照)によって開閉駆動される。
また、スロットルバルブ56には、その開度を検出するスロットルセンサが設けられ、その出力はエンジン制御ユニット100に伝達される。
インテークマニホールド57は、スロットルバルブ56の下流側に設けられ、空気を各気筒の吸気ポート33に分配する分岐管である。
吸気圧センサ58は、インテークマニホールド57内の空気の圧力(吸気圧力)を検出するものである。
吸気圧センサ58の出力は、エンジン制御ユニット100に伝達される。
エキゾーストシステム60は、排気ポート34から排出された排ガスを外部に排出するものである。
エキゾーストシステム60は、エキゾーストマニホールド61、エキゾーストパイプ62、三元触媒63、フロントNO吸蔵還元触媒64、リアNO吸蔵還元触媒65、空燃比センサ66、フロントNOセンサ67、リアNOセンサ68等を有して構成されている。
エキゾーストマニホールド61は、各気筒の排気ポート34から出た排ガスを集合させる集合管である。
ターボチャージャ40のタービン41は、エキゾーストマニホールド61の下流側に配置されている。
エキゾーストパイプ62は、タービン41から出た排ガスを外部に排出する管路である。
三元触媒63は、エキゾーストパイプ62の中間部分に設けられ、エンジン1の空燃比がストイキ(理論空燃比)近傍である場合に、排ガス中のHC、NOx、CO等を浄化するものである。
三元触媒63は、タービン41の出口に隣接して設けられている。
フロントNO吸蔵還元触媒64、リアNO吸蔵還元触媒65は、エンジン1の空燃比がリーン状態で運転される際に排ガス中に含まれるNOXを吸蔵するとともに、リッチ状態で運転される際に吸蔵されたNOXを還元し処理するものである。
フロントNO吸蔵還元触媒64、リアNO吸蔵還元触媒65は、三元触媒63の下流側に、排ガスの通流方向に沿って順次配置されている。
空燃比センサ66は、エキゾーストマニホールド61に設けられている。
空燃比センサ66は、排ガス中の酸素濃度に応じた出力電圧を発生することによって、排ガス中の酸素量を検出するものである。
空燃比センサ66は、広範囲の空燃比における酸素濃度を検出可能なリニア出力センサとなっている。
空燃比センサ66の出力は、エンジン制御ユニット100に伝達される。
フロントNOセンサ67、リアNOセンサ68は、エキゾーストパイプ62に設けられ、排ガス中のNO量に応じた電圧を出力するものである。
フロントNOセンサ67は、三元触媒63とフロントNOX吸蔵還元触媒64との間に配置されている。
リアNOセンサ68は、リアNO吸蔵還元触媒65の出口側に配置されている。
フロントNOセンサ67、リアNOセンサ68の出力は、ともにエンジン制御ユニット100に伝達される。
エンジン制御ユニット(ECU)100は、エンジン1及びその補機類を統括的に制御するものである。
エンジン制御ユニット100は、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を備えて構成されている。
エンジン制御ユニット100は、エンジン1のリーン運転時においては、燃焼変動及びNO排出量に基づいて目標空燃比(目標λ)を設定し、主に空燃比でNO排出量をコントロールする燃焼点フィードバック制御を行う。この点については、後に詳しく説明する。
エンジン制御ユニット100は、本発明の目標空燃比設定部、燃料噴射制御部、点火制御部としての機能を有する。
実施形態においては、リーン状態での運転時に、燃焼変動及びNO排出量がともに所定の許容上限以下となるよう、燃料噴射制御における目標空燃比(空気過剰率λ)を制御する、燃焼点フィードバック制御を行っている。
図2は、実施形態のエンジンにおける空燃比と燃焼変動、NO排出量との相関の一例を示す図である。
図2において、横軸は空気過剰率λを示している。
図2に示すように、燃焼変動とNO排出量とはトレードオフの関係にある。
燃焼変動は、例えば、クランク角センサ11が検出するクランクシャフトの回転速度変動に基づいて検出することができる。
燃焼変動は、空気過剰率λの増加(空燃比リーン化)に応じて悪化する傾向を示す。
NO排出量は、フロントNOセンサ67の出力に基づいて検出することができる。
NO排出量は、空気過剰率の減少(空燃比リッチ化)に応じて悪化(増加)する傾向を示す。
ここで、図中の破線横線に示す燃焼変動及びNO排出量の許容上限値を設定した場合、燃焼変動及びNO排出量をともに許容上限値以下とできる空気過剰率λの範囲が存在することがわかる。
エンジン制御ユニット100は、クランク角センサ11及びフロントNOセンサ67の出力をフィードバックしながら、リーン運転中の目標空燃比(空気過剰率)がこの範囲内となるように目標空燃比を逐次設定し、燃料噴射量を制御する燃焼点フィードバック制御を行う。
次に、実施形態のエンジン制御装置におけるリーン運転時の空燃比制御について説明する。
図3は、実施形態のエンジン制御装置におけるリーン運転時の動作を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS01:リーン運転中判断>
エンジン制御ユニット100は、現在エンジン1をリーン状態で運転しているか否かを判別する。
リーン状態で運転している場合はステップS02に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
<ステップS02:ノッキング検出判断>
エンジン制御ユニット100は、ノックセンサ21の出力に基づいて、燃焼室31においてノッキングが発生しているか否かを判別する。
ノッキングが検出された場合はステップS06に進み、その他の場合はステップS03に進む。
<ステップS03:燃焼変動・NO排出量検出>
エンジン制御ユニット100は、クランク角センサ11の出力に基づいてクランクシャフト10の回転速度変動を燃焼変動を示すパラメータとして検出する。
また、エンジン制御ユニット100は、フロントNOセンサ67の出力に基づいて、エンジン1のNO排出量を検出する。
その後、ステップS04に進む。
<ステップS04:目標λフィードバック>
エンジン制御ユニット100は、ステップS03において取得した燃焼変動及びNO排出量に基づいて、燃料噴射制御における制御目標となる目標空燃比(目標空気過剰率λ)を学習(更新)する。
目標空燃比のフィードバック学習は、制御目標との誤差に比例する比例項(P項)、誤差の積分値に対し比例する積分項(I項)を用いるPI制御を用いることができる。
目標空燃比の設定更新後、ステップS05に進む。
<ステップS05:定常偏差学習値更新>
エンジン制御ユニット100は、エンジン1の個体差に由来する定常偏差に係る学習値を更新(学習補正)する。
ここで、定常偏差には、例えば、各センサ類の出力値と実値との相関のばらつきや、燃料を噴射するインジェクタの開弁時間に対する噴射量の実値との相関のばらつき、燃焼室へのデポジットの付着等による燃焼状態の個体差などの各種のエンジンの個体差の影響が含まれる。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
<ステップS06:点火時期リタード、目標λフィードバック中止>
エンジン制御ユニット100は、ノッキングを抑制するために点火時期をリタードさせるとともに、目標空燃比(目標λ)のフィードバックを中止する。
エンジン制御ユニット100は、ノッキング検出直前の目標空燃比(目標λ)に基づいて燃料噴射制御を行う。
このとき、定常偏差に関する補正項は、学習自体は停止するが、現在の値で維持される。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
図4は、実施形態のエンジン制御装置におけるNO排出量の制御目標値からの乖離、及び、空燃比補正に係るP項、I項の推移の一例を示す図である。
横軸は時間を示し、縦軸上段は制御目標となるNO排出量に対する実際のNO排出量の偏差を示し、縦軸下段は空燃比制御における補正量の比例項(P項)、及び、積分項(I項)を示している。
図4に示すように、目標とするNO排出量に対する実NO排出量の乖離が大きい場合には、先ずP項が大きく立ち上がるとともに、I項もフィードバック制御が長引くことに応じて徐々に増加する。
その後、ノッキングが発生すると、ノッキング抑制のため点火時期がリタードされるが、このとき燃焼温度が低下することによりNO排出量が減少する。
このとき、このNO排出量の減少に応じて目標空燃比をフィードバック学習してしまうと空燃比が過度にリッチとなり、点火時期が復帰した際に燃費及びNO排出量の悪化の原因となってしまう。
仮にフィードバック学習を継続した場合の補正項の想定推移を一点鎖線で示す。
この点、実施形態においては、ノッキングの検出に応じて空燃比のフィードバック学習を停止し、ノッキング発生直前に更新された目標空燃比、及び、定常偏差を表すI項の補正量を維持して燃料噴射制御を継続することにより、燃焼安定性を維持して出力トルクの急変を防止するとともに、目標空燃比が過度にリッチ側に推移して燃費、NO排出量が悪化することを防止できる。
なお、このときP項は、ノッキング発生時にNO排出量が急激に変化することの影響を避けるため、一時的にゼロリセットする構成としてもよい。
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、エンジン制御装置及びエンジンの構成は上述した実施形態に限定されることなく、適宜変更することが可能である。
1 エンジン 10 クランクシャフト
11 クランク角センサ 20 シリンダブロック
21 ノックセンサ
30 シリンダヘッド 31 燃焼室
32 点火プラグ 33 吸気ポート
34 排気ポート 35 吸気バルブ
36 排気バルブ 37 吸気カムシャフト
38 排気カムシャフト 39 インジェクタ
40 ターボチャージャ
41 タービン 42 コンプレッサ
43 エアバイパス流路 44 エアバイパスバルブ
45 ウェイストゲート流路 46 ウェイストゲートバルブ
46a 位置センサ
50 インテークシステム 51 インテークダクト
52 チャンバ 53 エアクリーナ
54 エアフローメータ 55 インタークーラ
56 スロットルバルブ 57 インテークマニホールド
58 吸気圧センサ
60 エキゾーストシステム 61 エキゾーストマニホールド
62 エキゾーストパイプ 63 三元触媒
64 フロントNOx吸蔵還元触媒 65 リアNO吸蔵還元触媒
66 空燃比センサ 67 フロントNOセンサ
68 リアNOセンサ
100 エンジン制御ユニット

Claims (3)

  1. 空燃比が空気過剰な状態であるリーン状態で運転を行うエンジンの燃焼変動を検出する燃焼変動検出部と、
    前記エンジンのNO排出量を検出するNOセンサと、
    前記燃焼変動及び前記NO排出量がそれぞれ許容上限値以下となる目標空燃比を逐次設定する目標空燃比設定部と、
    前記目標空燃比に基づいて前記エンジンの燃料噴射を制御する燃料噴射制御部と、
    前記エンジンにおけるノッキングを検出するノックセンサと、
    前記ノッキングの検出時に点火時期を遅延させる点火制御部とを備え、
    前記目標空燃比設定部は、
    制御目標との誤差に比例する比例項、および、前記誤差の積分値に対し比例する積分項を用いるPI制御を用いて、前記目標空燃比を設定し、
    前記ノッキングの検出時に前記NOセンサの検出値に応じた前記目標空燃比の設定更新を停止し、前記積分項の補正量を維持し、
    前記燃料噴射制御部は、前記ノッキングの検出時においては、最後に前記目標空燃比設定部が更新した前記目標空燃比に基づいて前記燃料噴射を制御すること
    を特徴とするエンジン制御装置。
  2. 前記目標空燃比設定部は、
    前記ノッキングの検出時に前記NO センサの検出値に応じた前記目標空燃比の設定更新を停止し、前記積分項の補正量を維持する際、前記比例項をゼロリセットすること
    を特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 前記エンジンの個体差に起因する定常偏差を学習する定常偏差学習部を有し、
    前記燃料噴射制御部は、前記ノッキングの検出時において、前記定常偏差学習部による学習結果に基づいた燃料噴射量の補正を継続すること
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御装置。
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