JP7517570B2 - 反射型マスクブランク - Google Patents

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Description

本発明は、半導体製造の露光プロセスで使用されるEUV(Etreme Ultra Violet:極端紫外)露光に用いられる反射型マスクおよびその製造方法、ならびに、反射型マスクの原板である反射型マスクブランクおよびその製造方法に関する。
近年、半導体デバイスの更なる微細化のために、光源として中心波長13.5nm付近のEUV光を使用したEUVリソグラフィが検討されている。
EUV露光では、EUV光の特性から、反射光学系ならびに反射型マスクが用いられる。反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜上にはEUV光の反射率が低い膜がパターニングされている。EUV光の反射率が低い膜としては、更なる高解像度化を目的として、位相シフト膜が用いられることもある。位相シフト膜とは、透過したEUV光に位相差を与え、位相差が生じたEUV光同士の干渉により、EUV光の反射率が低くなる膜である。
なお、上記反射率が低い膜のパターニングの際に、多層反射膜を保護する目的で、多層反射膜と反射率が低い膜との間に保護膜が設けられることも多い。
反射型マスクの反射率が低い膜として位相シフト膜を用いる場合、露光装置の照明光学系より反射型マスクに入射したEUV光は、位相シフト膜の無い部分(開口部)では反射され、位相シフト膜の有る部分(非開口部)では反射が小さくなる。結果として、マスクパターンが露光装置の縮小投影光学系を通してウエハ上にレジストパターンとして転写され、その後の処理が実施される。
ここで、半導体デバイスの更なる微細化に対応するため、より高精細なレジストパターンが形成できる反射型マスクが求められている。引用文献1では、シャドーイング効果を低減する目的で、特定の元素を含む第1の層と特定の元素を含む第2の層とを有する2層タイプの位相シフト膜について開示されている。
国際公開第2019/225737号
上記位相シフト膜を用いる反射型マスクは、多層反射膜と、位相シフト膜とを有する反射型マスクブランクの位相シフト膜をパターニングして作製される。また、反射型マスクの製造の際には、反射型マスクブランクに対して加熱処理が実施されることがある。
本発明者らが、引用文献1に記載の2層タイプの位相シフト膜を有する反射型マスクブランクについて検討したところ、加熱処理の際に、界面での剥離が発生しやすいことを知見した。界面での剥離が発生すると、作製される反射型マスクのパターン精度に影響を及ぼし、ひいては、形成されるレジストパターンに影響を及ぼすため好ましくなかった。
そこで、本発明は、加熱処理による界面剥離の発生が抑制された反射型マスクブランクの提供を課題とする。
また、本発明は、上記反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造方法、および、反射型マスクの提供も課題とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、2層タイプの位相シフト膜の一方の層において、最も含有量の多い元素の含有量が増加している領域を、他の層と隣接して設けることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
〔1〕 基板と、
EUV光を反射する多層反射膜と、
保護膜と、
EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、
上記位相シフト膜が、ルテニウム、レニウム、イリジウム、銀、オスミウム、金、パラジウムおよび白金からなる群から選択される第1元素を含む第1層と、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有し、
上記第1層が、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第2層側とは反対側から上記第2層側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、上記領域A1が、上記第2層に隣接して存在する、反射型マスクブランク。
〔2〕 上記第1層が、上記位相シフト膜中において上記第2層よりも上記保護膜側に配置される場合、上記第1層が、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域B1を有し、上記領域B1が、上記第1層よりも保護膜側に位置し、かつ、上記第1層と接する層に隣接して存在し、
上記第2層が、上記位相シフト膜中において上記第1層よりも上記保護膜側に配置される場合、上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域B2を有し、上記領域B2が、上記第2層よりも保護膜側に位置し、かつ、上記第2層と接する層に隣接して存在する、〔1〕に記載の反射型マスクブランク。
〔3〕 上記位相シフト膜が、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第3元素を含む第3層と、上記第1層と、上記第2層とをこの順に有する、〔1〕または〔2〕に記載の反射型マスクブランク。
〔4〕 上記第1層が、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第3層側とは反対側から上記第3層側に向かう厚さ方向に増加している領域C1を有し、上記領域C1が、上記第3層に隣接して存在する、〔3〕に記載の反射型マスクブランク。
〔5〕 上記第3層が、上記位相シフト膜中において上記保護膜側に配置される場合、上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から上記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域D2を有し、上記領域D2が、上記第1層に隣接して存在し、
上記第2層が、上記位相シフト膜中において上記保護膜側に配置される場合、
上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から上記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域D2を有し、上記領域D2が、上記第1層に隣接して存在するか、
上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域E2を有し、上記領域E2が、上記保護膜に隣接して存在する、〔3〕または〔4〕に記載の反射型マスクブランク。
〔6〕 上記第3層が、上記位相シフト膜中において上記保護膜側に配置される場合、上記第3層が、上記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から上記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域F3を有し、上記領域F3が、上記第1層に隣接して存在するか、
上記第3層が、上記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域G3を有し、上記領域G3が、上記保護膜に隣接して存在し、
上記第2層が、上記位相シフト膜中において上記保護膜側に配置される場合、上記第3層が、上記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から上記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域F3を有し、上記領域F3が、上記第1層に隣接して存在する、〔3〕~〔5〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランク。
〔7〕 基板と、
EUV光を反射する多層反射膜と、
保護膜と、
EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、
上記位相シフト膜が、ルテニウム、レニウム、イリジウム、銀、オスミウム、金、パラジウムおよび白金からなる群から選択される第1元素を含む第1層と、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有し、
上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から上記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、上記領域G2が、上記第1層に隣接して存在する、反射型マスクブランク。
〔8〕 上記第1層が、上記位相シフト膜中において上記第2層よりも上記保護膜側に配置される場合、上記第1層が、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域H1を有し、上記領域H1が、上記第1層よりも保護膜側に位置し、かつ、上記第1層と接する層に隣接して存在し、
上記第2層が、上記位相シフト膜中において上記第1層よりも上記保護膜側に配置される場合、上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域I2を有し、上記領域I2が、上記第2層よりも保護膜側に位置し、かつ、上記第2層と接する層に隣接して存在する、〔7〕に記載の反射型マスクブランク。
〔9〕 上記位相シフト膜が、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第3元素を含む第3層と、上記第1層と、上記第2層とをこの順に有する、〔7〕または〔8〕に記載の反射型マスクブランク。
〔10〕 上記第3層が、上記位相シフト膜中において上記保護膜側に配置される場合、上記第3層が、上記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から上記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域J3を有し、上記領域J3が、上記第1層に隣接して存在するか、
上記第3層が、上記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域K3を有し、上記領域K3が、上記保護膜に隣接して存在し、
上記第2層が、上記位相シフト膜中において上記保護膜側に配置される場合、上記第3層が、上記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から上記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域J3を有し、上記領域J3が、上記第1層に隣接して存在する、〔9〕に記載の反射型マスクブランク。
〔11〕 基板と、
EUV光を反射する多層反射膜と、
保護膜と、
EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、
上記位相シフト膜が、上記保護膜側から、ルテニウム、レニウム、イリジウム、銀、オスミウム、金、パラジウムおよび白金からなる群から選択される第1元素を含む第1層と、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第2元素を含む第2層とをこの順に有し、
上記第1層が、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域N1を有し、上記領域N1が、上記保護膜に隣接して存在する、反射型マスクブランク。
〔12〕 基板と、
EUV光を反射する多層反射膜と、
保護膜と、
EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、
上記位相シフト膜が、上記保護膜側から、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第2元素を含む第2層と、ルテニウム、レニウム、イリジウム、銀、オスミウム、金、パラジウムおよび白金からなる群から選択される第1元素を含む第1層とをこの順に有し、
上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記保護膜側とは反対側から上記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域O2を有し、上記領域O2が、上記保護膜に隣接して存在する、反射型マスクブランク。
〔13〕 上記第1層および上記第2層の少なくとも一方が、ホウ素、炭素、窒素および酸素からなる群から選択される1種以上の元素を含む、〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランク。
〔14〕 上記第1層の屈折率が、波長13.5nmの電磁波に対して、0.860~0.950であり、上記第1層の消衰係数が、波長13.5nmの電磁波に対して、0.009~0.095である、〔1〕~〔13〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランク。
〔15〕 波長13.5nmの電磁波に対する反射率が、1~30%である、〔1〕~〔14〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランク。
〔16〕 上記位相シフト膜の膜厚が、20~65nmである、〔1〕~〔15〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランク。
〔17〕 〔1〕~〔16〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランクの上記位相シフト膜をパターニングして形成される位相シフト膜パターンを有する、反射型マスク。
〔18〕 〔1〕~〔16〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランクの上記位相シフト膜をパターニングすることを含む、反射型マスクの製造方法。
本発明によれば、加熱処理による界面剥離の発生が抑制された反射型マスクブランクを提供できる。
また、本発明によれば、上記反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造方法、および、反射型マスクも提供できる。
図1は、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一例を示す模式図である。 図2は、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一例を示す模式図である。 図3は、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一例を示す模式図である。 図4は、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一例を示す模式図である。 図5は、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一例を示す模式図である。 図6は、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一例を示す模式図である。 図7は、本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一例を示す模式図である。 図8は、本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一例を示す模式図である。 図9は、本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一例を示す模式図である。 図10は、本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一例を示す模式図である。 図11は、本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一例を示す模式図である。 図12は、本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一例を示す模式図である。 図13は、本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様の一例を示す模式図である。 図14は、本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様の一例を示す模式図である。 図15は、本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様の一例を示す模式図である。 図16は、本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様の一例を示す模式図である。 図17は、本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様の一例を示す模式図である。 図18は、本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様の一例を示す模式図である。 図19は、本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様の一例を示す模式図である。 図20は、本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様の一例を示す模式図である。 図21は、本発明の反射型マスクブランクの第5実施態様の一例を示す模式図である。 図22は、本発明の反射型マスクブランクの第6実施態様の一例を示す模式図である。 図23の(a)~図23の(d)は、本発明の反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造工程の一例を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
本明細書における各記載の意味を示す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、水素、ホウ素、炭素、窒素、酸素、シリコン、チタン、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タンタル、レニウム、イリジウム、銀、オスミウム、金、パラジウムおよび、白金等の元素は、それぞれ対応する元素記号(H、B、C、N、O、Si、Ti、Cr、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ta、Re、Ir、Ag、Os、Au、Pd、および、Pt等)で表す場合がある。
本発明の反射型マスクブランクとしては、第1実施態様、第2実施態様、第3実施態様、第4実施態様、第5実施態様、および、第6実施態様が挙げられる。各実施態様について、以下に説明する。
<反射型マスクブランク(第1実施態様)>
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様は、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、位相シフト膜が、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有し、上記第1層が、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、上記領域A1が、上記第2層に隣接して存在する。
第1層について、換言すれば、第1層が、第2層に隣接して存在する領域A1を有し、領域A1では、第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量が第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に増加している。
なお、ここで、元素Mの含有量とは、全原子に対する、元素Mの原子の割合(原子%)をいう。
反射型マスクブランクの第1実施態様について、図1を参照しながら説明する。図1に示す反射型マスクブランク10aは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14aとをこの順に備える。位相シフト膜14aは、保護膜13側から、上記第1元素を含む第1層16aと、上記第2元素を含む第2層18とをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、上記第2層18に隣接して存在する。なお、第1層16aの領域A1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1と比較して少ない。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様は、加熱処理を行っても界面剥離の発生が抑制される。
加熱処理による界面剥離の発生が抑制される機序について、本発明者らは、以下のように推測している。
加熱処理を実施した際、反射型マスクブランクを構成する膜および層の間で、応力が発生し得る。
本発明者らが、2層タイプの位相シフト膜を備える反射型マスクブランクについて検討したところ、界面剥離は、位相シフト膜の第1層と第2層との界面で発生する場合があった。
反射型マスクブランクの第1実施態様は、図1に示すように、領域A1は、第2層18に隣接して存在する。ここで、領域A1は、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が増加しているため、組成が変化しており、第1層16aおよび第2層18との密着性を向上し得る。その結果として、界面剥離が抑制されると考えられる。
以下、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する構成について説明する。
なお、以下、本発明の反射型マスクブランクに対して加熱処理を行っても界面剥離の発生が抑制されることを、単に「界面剥離が抑制できる」ともいう。
(基板)
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する基板は、熱膨張係数が小さいことが好ましい。基板の熱膨張係数が小さい方が、EUV光による露光時の熱により、位相シフト膜パターンに歪みが生じることを抑制できる。
基板の熱膨張係数は、20℃において、0±1.0×10-7/℃が好ましく、0±0.3×10-7/℃がより好ましい。
熱膨張係数が小さい材料としては、SiO-TiO系ガラス等が挙げられるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、石英ガラス、金属シリコン、および、金属等の基板も使用できる。
SiO-TiO系ガラスは、SiOを90~95質量%、TiOを5~10質量%含む石英ガラスを用いることが好ましい。TiOの含有量が5~10質量%であると、室温付近での線膨張係数が略ゼロであり、室温付近での寸法変化がほとんど生じない。なお、SiO-TiO系ガラスは、SiOおよびTiO以外の微量成分を含んでもよい。
基板の多層反射膜が積層される側の面(以下、「第1主面」ともいう。)は、高い表面平滑性を有することが好ましい。第1主面の表面平滑性は、表面粗さで評価できる。第1主面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さRqで、0.15nm以下が好ましい。なお、表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定でき、表面粗さは、JIS-B0601:2013に基づく二乗平均平方根粗さRqとして説明する。
第1主面は、反射型マスクブランクを用いて得られる反射型マスクのパターン転写精度および位置精度を高められる点で、所定の平坦度となるように表面加工されることが好ましい。基板は、第1主面の所定の領域(例えば、132mm×132mmの領域)において、平坦度は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。平坦度は、フジノン社製平坦度測定器によって測定できる。
基板の大きさおよび厚さ等は、マスクの設計値等により適宜決定される。例えば、外形は6インチ(152mm)角、および、厚さは0.25インチ(6.3mm)等が挙げられる。
さらに、基板は、基板上に形成される膜(多層反射膜、位相シフト膜等)の膜応力による変形を防止する点で、高い剛性を有することが好ましい。例えば、基板のヤング率は、65GPa以上が好ましい。
(多層反射膜)
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する多層反射膜は、EUVマスクブランクの反射膜として所望の特性を有する限り特に限定されない。多層反射膜は、EUV光に対して高い反射率を有することが好ましく、具体的には、EUV光が入射角6°で多層反射膜の表面に入射した際、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。また、多層反射膜の上に、保護膜が積層されている場合でも、同様に、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。
多層反射膜は、高いEUV光の反射率を達成できることから、通常はEUV光に対して高い屈折率を示す高屈折率層と、EUV光に対して低い屈折率を示す低屈折率層とを交互に複数回積層させた多層反射膜が用いられる。
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを基板側からこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、低屈折率層と高屈折率層とをこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。
高屈折率層としては、Siを含む層を用いることができる。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、B、C、N、およびOからなる群から選択される1種以上を含むSi化合物を用いることができる。Siを含む高屈折率層を用いることによって、EUV光の反射率に優れた反射型マスクが得られる。
低屈折率層としては、Mo、Ru、Rh、およびPtからなる群から選択される金属、またはこれらの合金を含む層を用いることができる。
上記高屈折率層には、Siが広く使用され、低屈折率層にはMoが広く使用される。すなわち、Mo/Si多層反射膜が最も一般的である。但し、多層反射膜はこれに限定されず、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜も使用できる。
多層反射膜を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、使用する膜材料および反射層に要求されるEUV光の反射率に応じて適宜選択できる。Mo/Si多層反射膜を例にとると、EUV光の反射率の最大値が60%以上の多層反射膜とするには、膜厚2.3±0.1nmのMo膜と、膜厚4.5±0.1nmのSi膜とを繰り返し単位数が30~60になるように積層させればよい。
なお、多層反射膜を構成する各層は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等、公知の成膜方法を用いて所望の厚さになるように成膜できる。例えば、イオンビームスパッタリング法を用いて多層反射膜を作製する場合、高屈折率材料のターゲットおよび低屈折率材料のターゲットに対して、イオン源からイオン粒子を供給して行う。多層反射膜がMo/Si多層反射膜である場合、イオンビームスパッタリング法により、例えば、まずSiターゲットを用いて、所定の膜厚のSi層を基板上に成膜する。その後、Moターゲットを用いて、所定の膜厚のMo層を成膜する。このSi層およびMo層を1周期として、30~60周期積層させることにより、Mo/Si多層反射膜が成膜される。
多層反射膜の保護膜と接する層は、酸化されにくい材料からなる層が好ましい。酸化されにくい材料からなる層は、多層反射膜のキャップ層として機能する。酸化されにくい材料からなる層としては、Si層が挙げられる。多層反射膜がSi/Mo多層反射膜である場合、保護膜と接する層をSi層とすると、保護膜と接する層がキャップ層として機能する。その場合キャップ層の膜厚は、11±2nmが好ましい。
(保護膜)
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する保護膜は、エッチングプロセス(通常はドライエッチングプロセス)により位相シフト膜にパターン形成する際に、多層反射膜がエッチングプロセスによるダメージを受けないよう、多層反射膜を保護する目的で設けられる。
上記目的を達成できる材料としては、Ru、および、Rhからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む材料が挙げられる。すなわち、保護膜は、Ru、および、Rhからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。
より具体的には、上記材料として、Ru金属単体、Ruと、Si、Ti、Nb、Rh、および、Zrからなる群から選択される1種以上の金属とを含むRu合金、ならびに、Rh金属単体、Rhと、Si、Ti、Nb、Ta、および、Zrからなる群から選択される1種以上の金属とを含むRh合金、上記Rh合金と窒素とを含むRh含有窒化物、および、上記Rh合金と窒素と酸素とを含むRh含有酸窒化物等のRh系材料が挙げられる。
また、上記目的を達成できる材料として、Alおよびこれらの金属と窒素とを含む窒化物、ならびに、Al等も例示される。
なかでも、上記目的を達成できる材料としては、Ru金属単体、Ru合金、Rh金属単体、または、Rh合金が好ましい。Ru合金としては、Ru-Si合金が好ましく、Rh合金としては、Rh-Si合金が好ましい。
保護膜の膜厚は、保護膜としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。多層反射膜で反射されたEUV光の反射率を保つ点から、保護膜の膜厚は、1~10nmが好ましく、1.5~6nmがより好ましく、2~5nmがさらに好ましい。
保護膜の材料が、Ru金属単体、Ru合金、Rh金属単体、または、Rh合金であって、保護膜の膜厚が上記好ましい膜厚であることも好ましい。
また保護膜は単一の層からなる膜でもよいし、下層及び上層を有する多層膜であってもよい。下層は、多層反射膜の最上面に接触して形成された層であり、上層は前記下層の上に形成された層である。このように、保護膜を複数層構造とすることで、所定の機能に優れた材料を各層に使用できるので、保護膜全体の多機能化を図ることができる。
保護膜の上層は、Rhを含むことが好ましく、Rh化合物を含むことがより好ましい。保護膜の下層は、Ru、Nb、Mo、Zr、Y、C及びBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましく、Ruを含むことがより好ましい。また、保護膜が多層膜である場合、多層膜の合計膜厚が、下記好ましい範囲の保護膜の膜厚であることも好ましい。
保護膜が多層膜である場合の多層膜の合計膜厚は、好ましくは1.0nm~4.0nmであり、より好ましくは2.0nm~3.5nmであり、さらに好ましくは2.5nm~3.0nmである。保護膜の厚みが1.0nm以上であれば、エッチング耐性が良好である。また、保護膜の厚みが4.0nm以下であれば、EUV光に対する反射率が良好である。
保護膜は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等の周知の成膜方法を用いて成膜できる。マグネトロンスパッタリング法によりRu膜を成膜する場合、ターゲットとしてRuターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスを使用して成膜することが好ましい。
(位相シフト膜)
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する位相シフト膜は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有する。
また、位相シフト膜は、後段で説明する態様のように、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む第3層を有していてもよい。
以下、位相シフト膜を構成する各層について詳述する。
第1実施態様において、第1層は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む。第1層は、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素を含むことも好ましい。
第1層が第1元素としてRuを含む場合、第1層は、Ru以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、O、Mo、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。なかでも、Ru以外の他の元素としては、B、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素が好ましい。第1層がRuを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化ルテニウム、窒化ルテニウム、酸化ルテニウム、酸窒化ルテニウム、RuとMoとの複合窒化物、RuとMoとの複合酸窒化物、RuとMoとの複合酸炭化物、RuとTaとの複合窒化物、RuとTaとの複合酸窒化物、および、RuとTaとの複合酸炭化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてReを含む場合、第1層は、Re以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がReを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化レニウム、炭化レニウム、窒化レニウム、酸化レニウム、酸炭化レニウム、酸窒化レニウム、Re-Ru合金、ReとRuとの複合窒化物、および、ReとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてIrを含む場合、第1層は、Ir以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がIrを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化イリジウム、窒化イリジウム、酸化イリジウム、酸窒化イリジウム、Ir-Ru合金、IrとRuとの複合窒化物、および、IrとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてAgを含む場合、第1層は、Ag以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がAgを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化銀、窒化銀、酸化銀、酸窒化銀、Ag-Ru合金、AgとRuとの複合窒化物、および、AgとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてOsを含む場合、第1層は、Os以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がOsを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化オスミウム、窒化オスミウム、酸化オスミウム、酸窒化オスミウム、Os-Ru合金、OsとRuとの複合窒化物、および、OsとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてAuを含む場合、第1層は、Au以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がAuを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化金、窒化金、酸化金、酸窒化金、Au-Ru合金、AuとRuとの複合窒化物、および、AuとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてPdを含む場合、第1層は、Pd以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がPdを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化パラジウム、窒化パラジウム、酸化パラジウム、酸窒化パラジウム、Pd-Ru合金、PdとRuとの複合窒化物、および、PdとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてPtを含む場合、第1層は、Pt以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がPtを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化白金、窒化白金、酸化白金、酸窒化白金、Pt-Ru合金、PtとRuとの複合窒化物、および、PtとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
位相シフト膜は、下記理由から第1層はRu、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含み、第2層はTaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む。その理由として第1元素はEUV露光光に対して屈折率が低く、吸収層に用いることで位相シフト効果を高めることができ、第2元素は、第1元素の下層に配置される場合、第1元素のエッチングガスに対して保護膜のダメージを抑制するバッファ層として機能する。また、第1元素の上層に配置される場合、ブランクスの検査光の波長に対する反射率調整層として機能する為である。また、位相シフト膜は、後段で説明する態様のように、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む第3層をさらに有していてもよい。
位相シフト膜は、第1層はRuおよびIrからなる群から選択される第1元素を含み、第2層はTaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含むことが好ましい。
なかでも、第1層を構成する材料としては、ホウ化ルテニウム、窒化ルテニウム、酸窒化ルテニウム、RuとTaとの複合窒化物、RuとMoとの複合窒化物、Re-Ru合金、ReとRuとの複合酸窒化物、Ir-Ru合金、または、IrとRuとの複合酸窒化物が好ましい。
第1実施態様において、第1層は、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、上記領域A1が、上記第2層に隣接して存在する。
上記第1元素中の最も含有量の多い元素(以下、単に「第1特定元素」ともいう。)とは、第1層中に含まれる第1元素の中で最も含有量(原子%)の多い元素である。第1特定元素は、後述する測定方法にて第1層に含まれる元素およびその含有量を求めることにより決定される。
領域A1にて上記第1特定元素の含有量が第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第1特定元素の含有量が第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に連続的に増加していてもよく、第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に段階的に増加していてもよい。また、連続的な増加と段階的な増加とが組み合わさった態様であってもよい。
また、領域A1にて上記第1特定元素の含有量が第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、領域A1にて第1層全体からみた全体的な傾向として上記第1特定元素が増加していればよい。第1層全体からみた全体的な傾向として上記第1特定元素が増加している具体的な例としては、領域A1にて第1特定元素の含有量が第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に連続的に増加する領域と、第1特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様、および、領域A1にて第1特定元素の含有量が第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に段階的に増加する領域と、第1特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様が挙げられる。
上記第1層に含まれる元素(特に、第1特定元素)の含有量の測定は、公知の測定方法で行うことができる。
測定方法としては、本発明の反射型マスクブランクの断面試料を、ミクロトーム法および収束イオンビーム法等の方法で作製し、その断面試料を分析する方法が挙げられる。断面試料の分析方法としては、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光(STEM-EDS)法、および、走査型透過電子顕微鏡-電子エネルギー損失分光(STEM-EELS)法が挙げられる。
また、上記測定は、表面分析方法を用いてもよい。表面分析方法としては、例えば、二次イオン質量分析(SIMS)法、X線光電子分光(XPS)法、および、低エネルギーイオン散乱(LEIS)法が挙げられる。上記表面分析は、イオンスパッタ等で測定表面を厚み方向に切削しながら行うことで、厚さ方向の元素の含有量を分析できる。
また、上記測定方法は、その他の分光法を用いてもよい。その他の分光法としては、X線反射率(XRR)法、および、ラザフォード後方散乱(RBS)法が挙げられる。上記その他の分光法は、上記断面試料の分析方法、または、表面分析方法と組み合わせて行うことが好ましい。
なお、上記測定は、上述した方法を組み合わせて行ってもよい。
なお、第1層の領域A1以外の領域(第1層通常領域)においては、通常、厚み方向において第1特定元素の含有量は略一定である場合が多い。つまり、第1層の厚さ方向における、第1層の領域A1以外の領域中の第1特定元素の含有量は、その厚さ位置によらず、略一定である場合が多い。
第1層の膜厚は、2~55nmが好ましく、10~50nmがより好ましく、20~45nmが更に好ましい。
第1層の膜厚は、XRR法で求められる。
領域A1は、通常、第1層の厚み方向の一部に配置され、第1層の全厚みに対する領域A1の厚みの割合は1~30%が好ましく、3~15%がより好ましい。
領域A1の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~5nmがより好ましい。
領域A1の膜厚は、上記測定方法によって元素の含有量の測定を行い、その測定結果に基づいて定める。
領域A1において垂直断面上の第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは50~95at%であり、より好ましくは50~85at%であり、さらに好ましくは50~75at%である。また領域A1において垂直断面上の第2層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
第2層に最も近い部分の第1特定元素の含有量から第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量を差し引いた差は5~50at%が好ましく、10~50at%がより好ましい。
第1層の屈折率nは、波長13.5nmの電磁波(EUV光)に対して、0.860~0.950が好ましく、0.885~0.915がより好ましい。
第1層の消衰係数kは、波長13.5nmの電磁波(EUV光)に対して、0.009~0.095が好ましく、0.015~0.060がより好ましい。
第1層の屈折率nおよび消衰係数kは、波長13.5nmの電磁波(EUV光)を用いて反射率の入射角依存性を測定し、得られたプロファイルにおいて、屈折率nおよび消衰係数kをパラメータとしてフィッティングを行って求められる。
なお、上記入射角依存性を測定するサンプルは、基板上に、反射型マスクブランクの製造条件と同様にして第1層を形成したものを用いる。また、反射型マスクブランクを上記測定のサンプルとして用いることもできる。
第1実施態様において、第2層は、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む。第2層は、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含むことも好ましい。
第2層が第2元素としてTaを含む場合、第2層は、Ta以外の他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第2層がTaを含む場合、第2層を構成する材料としては、Ta金属単体、ホウ化タンタル、ホウ窒化タンタル、ホウ酸化タンタル、炭化タンタル、炭窒化タンタル、酸化炭化窒化タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、および、酸窒化タンタルが挙げられる。
第2層が第2元素としてCrを含む場合、第2層は、Cr以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第2層がCrを含む場合、第2層を構成する材料としては、Cr金属単体、ホウ化クロム、ホウ窒化クロム、ホウ酸化クロム、炭化クロム、炭窒化クロム、酸化炭化窒化クロム、酸炭化クロム、窒化クロム、酸化クロム、および、酸窒化クロムが挙げられる。
なかでも、第2層を構成する材料としては、ホウ窒化タンタル、窒化タンタル、酸窒化タンタル、窒化クロム、酸化クロム、酸化炭化窒化クロム、または、酸窒化クロムが好ましい。
第2層の膜厚は、2~45nmが好ましく、10~30nmがより好ましい。
第2層の膜厚は、XRR法で求められる。
第1層および第2層は、マグネトロンスパッタリング法、および、イオンビームスパッタリング法等の公知の成膜方法を用いて形成できる。例えば、第2層として、マグネトロンスパッタリング法を用いて酸窒化タンタル層を形成する場合、Taターゲットを用い、Arガス、窒素ガスおよび酸素ガスを含むガスを供給して反応性スパッタリングを行えばよい。
第1層が有する領域A1を形成する方法としては、第1層が含む第1元素のうち、最も含有量が多い元素(第1特定元素)が増加する条件で製膜すればよい。製膜方法としては、上記製膜方法が挙げられる。
上記領域A1を形成するための製膜条件としては、例えば、第1層の形成を窒素ガスおよび酸素ガスを含むガスを供給してスパッタリングで行う場合、窒素ガスおよび酸素ガスの少なくとも一方の供給量を、第1層通常領域の形成時よりも減少した条件が挙げられる。また、上記条件としては、例えば、第1層を形成するスパッタリングターゲットとして合金ターゲットを用いる場合、最も含有量の多い元素の含有量が第1層通常領域の形成時よりも増加した合金ターゲットを用いる条件が挙げられる。
上記のような条件で製膜を行うと、上記条件で製膜した層上に、第1層通常領域を形成する条件で製膜する際、上記層の界面で混合が起こり、第1特定元素が連続的に増加している領域A1を形成し得る。なお、上記界面の混合の度合いは、非製膜物に対して供給される、第1層を形成するための原子を含む粒子の運動エネルギーを調整して制御できる。上記粒子の運動エネルギーは、製膜条件を調整すると調整できる。また、上記界面の混合の度合いは、製膜時の温度等の製膜条件によっても調整できる。
第1実施態様の反射型マスクブランクの製造方法としては、例えば、保護膜を形成した後、第1層の形成中、第1層の形成の終了前に、上記条件で領域A1を形成し、次いで、第2層を形成する方法が挙げられる。
位相シフト膜の膜厚は、20~65nmが好ましく、30~55nmがより好ましい。位相シフト膜の膜厚は、第1層および第2層の合計膜厚をいい、第3層を有する場合は、第1層、第2層および第3層の合計膜厚をいう。
反射型マスクブランクの反射率は、波長13.5nmの電磁波(EUV光)に対して、1~30%が好ましく、2~15%がより好ましい。反射率は、マスクブランク用EUV反射率計(AIXUV社製、MBR)を用いて測定できる。
また、位相シフト膜によって生じる位相差は、波長13.5nmの電磁波において、150~250°が好ましく、180~220°がより好ましい。上記位相シフト膜によって生じる位相差とは、位相シフト膜の保護膜側とは反対側の表面におけるEUV光の反射光と、多層反射膜からの反射光との位相差をいう。
位相シフト膜の深紫外線(波長190~260nm)の反射率は、反射型マスクブランクを用いて形成される反射型マスクのパターン検査を行う点で、0~50%が好ましく、0~35%がより好ましい。
(裏面導電膜)
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様は、基板の上記第1主面とは反対側の面(第2主面)に、裏面導電膜を有していてもよい。裏面導電膜を備えることにより、反射型マスクブランクは、静電チャックによる取り扱いが可能となる。
裏面導電膜は、シート抵抗値が低いことが好ましい。裏面導電膜のシート抵抗値は、例えば、200Ω/□以下が好ましく、100Ω/□以下がより好ましい。
裏面導電膜の構成材料としては、公知の文献に記載されているものから広く選択できる。例えば、日本国特表2003-501823号公報に記載の高誘電率のコーティング、具体的には、Si、Mo、Cr、CrON、または、TaSiからなるコーティングを適用できる。また、裏面導電膜の構成材料は、Crと、B、N、O、およびCからなる群から選択される1種以上とを含むCr化合物、または、Taと、B、N、O、およびCからなる群から選択される1種以上とを含むTa化合物であってもよい。
裏面導電膜の厚さは、10~1000nmが好ましく、10~400nmがより好ましい。
また、裏面導電膜は、反射型マスクブランクの第2主面側の応力調整の機能を備えていてもよい。すなわち、裏面導電膜は、第1主面側に形成された各種膜からの応力とバランスをとって、反射型マスクブランクを平坦にするように調整できる。
裏面導電膜は、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、電解メッキ法を用いて形成できる。
(その他の膜)
本発明の反射型マスクブランクは、その他の膜を有していてもよい。その他の膜としては、エッチングマスク膜が挙げられる。エッチングマスク膜は、位相シフト膜の保護膜側とは反対側に配置されることが好ましい。
エッチングマスク膜は、酸素ガス、酸素ガスとハロゲン系ガス(塩素系ガス、フッ素系ガス)との混合ガスをエッチングガスとするドライエッチングに対しエッチング耐性を示すことが好ましい。
エッチングマスク膜は、上記エッチングガスとするドライエッチングを実施した際に、位相シフト膜に対するエッチング選択比が1/10以下であることが好ましい。なお、エッチング選択比は下記式により求められる。
(エッチング選択比)=(エッチングマスク膜のエッチング速度)/(位相シフト膜のエッチング速度)
一方、エッチングマスク膜は、レジストの洗浄液として使用される、酸または塩基を含む洗浄液で除去可能であることが好ましい。ここで、「エッチングマスク膜が酸または塩基を含む洗浄液で除去可能」とは、エッチングマスク膜を、所定温度の酸または塩基を含む液に20分間浸漬した場合に、その膜厚が5nm以上減少することをいい、10nm以上減少することが好ましい。上記の目的で使用される洗浄液の具体例としては、硫酸過水(SPM)、アンモニア過水、および、フッ酸が挙げられる。SPMは、硫酸と過酸化水素と水とを含む溶液であり、例えば、濃硫酸と30質量%の過酸化水素水とを、体積比で、4:1~1:3、好ましくは3:1で混合してなる溶液が例示される。SPMの温度は、エッチング速度を向上させる点から、100℃以上が好ましい。アンモニア過水は、水酸化アンモニウムと過酸化水素と水とを含む溶液であり、30質量%のアンモニア水と30質量%過酸化水素と水とを、体積比で、1:1:5~3:1:5で混合してなる溶液が例示される。アンモニア過水の温度は、70℃~80℃が好ましい。
エッチングマスク膜は、Nb、Ti、MoおよびSiからなる群から選択される1つ以上の元素を含むことが好ましい。エッチングマスク膜は、O、NおよびBからなる群から選択される1つ以上の元素をさらに含んでもよい。
エッチングマスク膜を構成する材料としては、例えば、Nb金属単体、酸化ニオブ、および、酸窒化ニオブ等のNb系材料、ならびに、Mo金属単体、酸化モリブデン、および、酸窒化モリブデン等のMo系材料が挙げられる。Nb系材料またはMo系材料からなるエッチングマスク膜は、塩素系ガスを用いたドライエッチングによってもエッチングできる。エッチングマスク膜を構成する材料は、Si単体、酸化ケイ素、および、窒化ケイ素等のSi系材料であってもよい。Si系材料からなるエッチングマスク膜は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによってもエッチングできる。なお、Si系材料をエッチングマスク膜として用いる場合は、上記レジストの洗浄液として、フッ酸を含む洗浄液を用いることが好ましい。
エッチングマスク膜の膜厚は、20nm以下が好ましい。エッチングマスク膜がNb系材料からなる場合、その膜厚は、5~15nmが好ましい。
エッチングマスク膜は公知の成膜方法で形成でき、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法により形成できる。
スパッタリング法によって、酸化ニオブ(例えば、Nb)膜を形成する場合、He、Ar、Ne、Kr、Xeのうち少なくともひとつを含む不活性ガスと酸素を混合したガス雰囲気中で、Nbターゲットを用いた反応性スパッタリング法を実施すればよい。
なお、上記で説明した反射型マスクブランク10aにおいて、第2層18が、第2層18が含む第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第1層16aとは反対側から第1層16a側に向かう厚さ方向に増加している領域A2を有していてもよい。
領域A2を有する態様においては、第1層16aと、第2層18との界面における界面剥離をより抑制できる。
なお、領域A2の形成方法は、後段で説明する反射型マスクブランク10eの領域D2の形成方法に準じた方法が挙げられる。
(変形例)
以下、反射型マスクブランクの第1実施態様の変形例について説明する。
なお、以下で説明する態様においても、「増加している」の定義および態様は、上記領域A1と同様である。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一変形例を、図2に示す。
図2に示す、反射型マスクブランク10bは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14bとをこの順に備える。位相シフト膜14bは、保護膜13側から、上記第1元素を含む第1層16bと、上記第2元素を含む第2層18とをこの順に備える。また、第1層16bは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18に隣接して存在する。また、第1層16bは、第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域B1を有し、領域B1は、保護膜13に隣接して存在する。なお、第1層16bの領域A1および領域B1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1およびB1と比較して少ない。
図1に示す反射型マスクブランク10aと図2に示す反射型マスクブランク10bとを比較すると、図2に示す反射型マスクブランク10b中の第1層16bが領域B1を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略し、後段では、主に、領域B1についてのみ説明する。
なお、図2に示す反射型マスクブランク10bでは、領域B1の存在により、第1層16bと、保護膜13との界面における界面剥離も抑制できる。
領域B1において垂直断面上の第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは50~95at%であり、より好ましくは50~85at%であり、さらに好ましくは50~75at%である。また領域B1において垂直断面上の保護膜に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
保護膜に最も近い部分の第1特定元素の含有量から第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量を差し引いた差は、5~50at%が好ましく、10~50at%がより好ましい。
上述したように、上記第1実施態様の一変形例において、第1層は、第1特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域B1を有し、領域B1は、保護膜に隣接して存在する。
領域B1にて上記第1特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第1特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に連続的に増加していてもよく、保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に段階的に増加していてもよい。また、連続的な増加と段階的な増加とが組み合わさった態様であってもよい。
また、領域B1にて上記第1特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加しているとは、領域B1にて第1層全体からみた全体的な傾向として上記第1特定元素が増加していればよい。第1層全体からみた全体的な傾向として上記第1特定元素が増加している具体的な例としては、領域B1にて第1特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に連続的に増加する領域と、第1特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様、および、領域B1にて第1特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に段階的に増加する領域と、第1特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様が挙げられる。
上記領域B1に含まれる元素(特に、第1特定元素)の含有量の測定は、上述した方法により実施できる。
領域B1は、通常、第1層の厚み方向の一部に配置され、第1層の全厚みに対する領域B1の厚みの割合は1~30%が好ましく、3~15%がより好ましい。
領域B1の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~5nmがより好ましい。
領域B1の形成方法としては、領域A1の形成方法に準じた方法が挙げられる。上記第1実施態様の一変形例の反射型マスクブランクの製造方法としては、例えば、保護膜を形成した後、第1層の形成開始時に上記条件で領域B1を形成し、第1層の形成の終了前に上記条件で領域A1を形成し、次いで、第2層を形成する方法が挙げられる。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一変形例を、図3に示す。
図3に示す、反射型マスクブランク10cは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14cとをこの順に備える。位相シフト膜14cは、保護膜13側から、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む第3層19と、上記第1元素を含む第1層16aと、上記第2元素を含む第2層18とをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18に隣接して存在する。なお、第1層16aの領域A1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1と比較して少ない。
図1に示す反射型マスクブランク10aと図3に示す反射型マスクブランク10cとを比較すると、図3に示す反射型マスクブランク10cが第3層19を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略し、後段では、主に、第3層19についてのみ説明する。
なお、図3に示す反射型マスクブランク10cでは、第3層19は、後段で説明する反射型マスクの作製の際に、エッチングストッパとして機能し得る。
第3層は、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む。第3層は、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含むことも好ましい。
第3層が第3元素としてTaを含む場合、第3層は、Ta以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第3層がTaを含む場合、第3層を構成する材料としては、Ta金属単体、ホウ化タンタル、ホウ窒化タンタル、ホウ酸化タンタル、炭化タンタル、炭窒化タンタル、酸化炭化窒化タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、および、酸窒化タンタルが挙げられる。
第3層が第3元素としてCrを含む場合、第3層は、Cr以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第3層がCrを含む場合、第3層を構成する材料としては、Cr金属単体、ホウ化クロム、ホウ窒化クロム、ホウ酸化クロム、炭化クロム、炭窒化クロム、酸化炭化窒化クロム、酸炭化クロム、窒化クロム、酸化クロム、および、酸窒化クロムが挙げられる。
なかでも、第3層を構成する材料としては、ホウ窒化タンタル、窒化タンタル、酸窒化タンタル、窒化クロム、酸化クロム、酸化炭化窒化クロム、または、酸窒化クロムが好ましい。
なお、第1層が、上記第1元素とTaまたはCrとを含む場合、上記第1元素を含んでいる層は第1層とし、第3層には含めない。
第3層の膜厚は、2~45nmが好ましく、10~30nmがより好ましい。
第3層の膜厚は、XRR法で求められる。
第3層は、上述した第2層と同様の方法により形成できる。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一変形例を、図4に示す。
図4に示す、反射型マスクブランク10dは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14dとをこの順に備える。位相シフト膜14dは、保護膜13側から、上記第3元素を含む第3層19と、上記第1元素を含む第1層16cと、上記第2元素を含む第2層18とをこの順に備える。また、第1層16cは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18に隣接して存在する。また、第1層16cは、第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が第3層19側とは反対側から第3層19側に向かう厚さ方向に増加している領域C1を有し、領域C1は、第3層19に隣接して存在する。なお、第1層16cの領域A1および領域C1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1および領域C1と比較して少ない。
図3に示す反射型マスクブランク10cと図4に示す反射型マスクブランク10dとを比較すると、図4に示す反射型マスクブランク10d中の第1層16cが領域C1を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略し、後段では、主に、領域C1についてのみ説明する。
なお、図4に示す反射型マスクブランク10dでは、領域C1の存在により、第1層16cと、第3層19との界面における界面剥離も抑制できる。
領域C1において垂直断面上の第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは50~95at%であり、より好ましくは50~85at%であり、さらに好ましくは50~75at%である。また領域C1において垂直断面上の第3層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
第3層に最も近い部分の第1特定元素の含有量から第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量を差し引いた差は、5~50at%が好ましく、10~50at%がより好ましい。
上述したように、上記第1実施態様の一変形例において、第1層は、第1特定元素の含有量が第3層側とは反対側から第3層側に向かう厚さ方向に増加している領域C1を有し、領域C1は、第3層に隣接して存在する。
領域C1にて上記第1特定元素の含有量が第3層側とは反対側から第3層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第1特定元素の含有量が第3層側とは反対側から第3層側に向かう厚さ方向に連続的に増加していてもよく、第3層側とは反対側から第3層側に向かう厚さ方向に段階的に増加していてもよい。また、連続的な増加と段階的な増加とが組み合わさった態様であってもよい。
また、領域C1にて上記第1特定元素の含有量が第3層側とは反対側から第3層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第1層全体からみた全体的な傾向として上記第1特定元素が増加していればよい。第1層全体からみた全体的な傾向として上記第1特定元素が増加している具体的な例としては、領域C1にて第1特定元素の含有量が第3層側とは反対側から第3層側に向かう厚さ方向に連続的に増加する領域と、第1特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様、および、領域C1にて第1特定元素の含有量が第3層側とは反対側から第3層側に向かう厚さ方向に段階的に増加する領域と、第1特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様が挙げられる。
上記領域C1に含まれる元素(特に、第1特定元素)の含有量の測定は、上述した方法により実施できる。
領域C1は、通常、第1層の厚み方向の一部に配置され、第1層の全厚みに対する領域C1の厚みの割合は1~30%が好ましく、3~15%がより好ましい。
領域C1の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~5nmがより好ましい。
領域C1の形成方法としては、領域A1の形成方法に準じた方法が挙げられる。上記第1実施態様の一変形例の反射型マスクブランクの製造方法としては、例えば、保護膜を形成した後、第3層を形成し、第1層の形成開始時に上記条件で領域C1を形成し、第1層の形成の終了前に上記条件で領域A1を形成し、次いで、第2層を形成する方法が挙げられる。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一変形例を、図5に示す。
図5に示す、反射型マスクブランク10eは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14eとをこの順に備える。位相シフト膜14eは、保護膜13側から、上記第3元素を含む第3層19と、上記第1元素を含む第1層16aと、上記第2元素を含む第2層18aとをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18a側とは反対側から第2層18a側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18aに隣接して存在する。また、第2層18aは、第2元素中の最も含有量の多い元素(以下、単に「第2特定元素」ともいう。)の含有量が第1層16a側とは反対側から第1層16a側に向かう厚さ方向に増加している領域D2を有し、領域D2は、第1層16aに隣接して存在する。なお、第1層16aの領域A1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1と比較して少ない。また、第2層18aの領域D2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域D2と比較して少ない。
図3に示す反射型マスクブランク10cと図5に示す反射型マスクブランク10eとを比較すると、図5に示す反射型マスクブランク10e中の第2層18aが領域D2を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略し、後段では、主に、領域D2についてのみ説明する。
なお、図5に示す反射型マスクブランク10eでは、領域D2の存在により、第1層16aと、第2層18aとの界面における界面剥離をより抑制できる。
上述したように、上記第1実施態様の一変形例において、第2層は、第2特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域D2を有し、領域D2は、第1層に隣接して存在する。
上記第2特定元素とは、第2層中に含まれる第2元素の中で最も含有量(原子%)の多い元素である。第2特定元素は、上述した測定方法にて第2層に含まれる元素およびその含有量を求めることにより決定される。
領域D2にて上記第2特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第2特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に連続的に増加していてもよく、第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に段階的に増加していてもよい。また、連続的な増加と段階的な増加とが組み合わさった態様であってもよい。
また、領域D2にて上記第2特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第2層全体からみた全体的な傾向として上記第2特定元素が増加していればよい。第2層全体からみた全体的な傾向として上記第2特定元素が増加している具体的な例としては、領域D2にて第2特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に連続的に増加する領域と、第2特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様、および、領域D2にて第2特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に段階的に増加する領域と、第2特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様が挙げられる。
上記領域D2に含まれる元素(特に、第2特定元素)の含有量の測定は、上述した方法により実施できる。
領域D2は、通常、第2層の厚み方向の一部に配置され、第2層の全厚みに対する領域D2の厚みの割合は1~50%が好ましく、3~30%がより好ましい。
領域D2の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~5nmがより好ましい。
領域D2の形成方法としては、領域A1の形成方法に準じた方法が挙げられる。具体的には、領域D2を形成する方法としては、第2層が含む第2元素のうち、最も含有量が多い元素が増加する条件で製膜すればよい。製膜方法としては、上記製膜方法が挙げられる。
上記条件としては、例えば、第2層の形成を窒素ガスおよび酸素ガスを含むガスを供給してスパッタリングで行う場合、窒素ガスおよび酸素ガスの少なくとも一方の供給量を、第2層通常領域の形成時よりも減少した条件が挙げられる。また、上記条件としては、例えば、第2層を形成するスパッタリングターゲットとして合金ターゲットを用いる場合、最も含有量の多い元素の含有量が第2層通常領域の形成時よりも増加した合金ターゲットを用いる条件が挙げられる。
上記のような条件で製膜を行うと、上記条件で製膜した層上に、第2層通常領域を形成する条件で製膜する際、上記層の界面で混合が起こり、第2特定元素が連続的に増加している領域D2を形成し得る。なお、上記界面の混合の度合いは、非製膜物に対して供給される、第2層を形成するための原子を含む粒子の運動エネルギーを調整して制御できる。上記粒子の運動エネルギーは、製膜条件を調整すると調整できる。また、上記界面の混合の度合いは、製膜時の温度等の製膜条件によっても調整できる。
上記第1実施態様の一変形例の反射型マスクブランクの製造方法としては、例えば、保護膜を形成した後、第3層を形成し、第1層の形成中、第1層の形成の終了前に上記条件で領域A1を形成し、次いで、第2層の形成開始時に上記条件で領域D2を形成し、その後、第2層を形成する方法が挙げられる。
領域D2において垂直断面上の第2層に最も近い部分の第2特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは20~40at%である。また領域D2において垂直断面上の第1層16aに最も近い部分の第2特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
第1層16aに最も近い部分の第2特定元素の含有量から第2層に最も近い部分の第2特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一変形例を、図6に示す。
図6に示す、反射型マスクブランク10fは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14fとをこの順に備える。位相シフト膜14fは、保護膜13側から、上記第3元素を含む第3層19aと、上記第1元素を含む第1層16aと、上記第2元素を含む第2層18とをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18に隣接して存在する。また、第3層19aは、上記第3元素中の最も含有量の多い元素(以下、単に「第3特定元素」ともいう。)の含有量が第1層16a側とは反対側から第1層16a側に向かう厚さ方向に増加している領域F3を有し、上記領域F3は、第1層16aに隣接して存在する。また、第3層19aは、上記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域G3を有し、上記領域G3は、保護膜13に隣接して存在する。第3層19aの領域F3および領域G3以外の領域は、第3層通常領域19xであり、第3層通常領域19xにおいて、上記第3元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域F3および領域G3と比較して少ない。
図3に示す反射型マスクブランク10cと図6に示す反射型マスクブランク10fとを比較すると、図6に示す反射型マスクブランク10f中の第3層19aが領域F3および領域G3を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略し、後段では、主に、領域F3および領域G3についてのみ説明する。
なお、図6に示す反射型マスクブランク10fでは、領域F3および領域G3の存在により、第1層16aと第3層19aとの界面における界面剥離、および、第3層19aと保護膜13との界面における界面剥離も抑制できる。
上述したように、上記第1実施態様の一変形例において、第3層は、第3特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域F3を有し、領域F3は、第1層に隣接して存在する。
上記第3特定元素とは、第3層中に含まれる第3元素の中で最も含有量(原子%)の多い元素である。第3特定元素は、上述した測定方法にて第3層に含まれる元素およびその含有量を求めることにより決定される。
領域F3にて上記第3特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第3特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に連続的に増加していてもよく、第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に段階的に増加していてもよい。また、連続的な増加と段階的な増加とが組み合わさった態様であってもよい。
また、領域F3にて上記第3特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第3層全体からみた全体的な傾向として上記第3特定元素が増加していればよい。第3層全体からみた全体的な傾向として上記第3特定元素が増加している具体的な例としては、領域F3にて第3特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に連続的に増加する領域と、第3特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様、および、領域F3にて第3特定元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に段階的に増加する領域と、第3特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様が挙げられる。
上記領域F3に含まれる元素(特に、第3特定元素)の含有量の測定は、上述した方法により実施できる。
領域F3は、通常、第3層の厚み方向の一部に配置され、第3層の全厚みに対する領域F3の厚みの割合は1~50%が好ましく、3~30%がより好ましい。
領域F3の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~10nmがより好ましい。
領域F3の形成方法としては、領域A1の形成方法に準じた方法が挙げられる。具体的には、領域F3を形成する方法としては、第3層が含む第3元素のうち、最も含有量が多い元素が増加する条件で製膜すればよい。製膜方法としては、上記製膜方法が挙げられる。
上記条件としては、例えば、第3層の形成を窒素ガスおよび酸素ガスを含むガスを供給してスパッタリングで行う場合、窒素ガスおよび酸素ガスの少なくとも一方の供給量を、第3層通常領域の形成時よりも減少した条件が挙げられる。また、上記条件としては、例えば、第3層を形成するスパッタリングターゲットとして合金ターゲットを用いる場合、最も含有量の多い元素の含有量が第3層通常領域の形成時よりも増加した合金ターゲットを用いる条件が挙げられる。
上記のような条件で製膜を行うと、上記条件で製膜した層上に、第3層通常領域を形成する条件で製膜する際、上記層の界面で混合が起こり、第3特定元素が連続的に増加している領域F3を形成し得る。なお、上記界面の混合の度合いは、非製膜物に対して供給される、第3層を形成するための原子を含む粒子の運動エネルギーを調整して制御できる。上記粒子の運動エネルギーは、製膜条件を調整すると調整できる。また、上記界面の混合の度合いは、製膜時の温度等の製膜条件によっても調整できる。
領域F3において垂直断面上の第3層に最も近い部分の第3特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは~40at%である。また領域F3において垂直断面上の第1層に最も近い部分の第3特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
第1層に最も近い部分の第3特定元素の含有量から第3層に最も近い部分の第3特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
上述したように、上記第1実施態様の一変形例において、第3層は、第3特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域G3を有し、上記領域G3は、保護膜に隣接して存在する。
領域G3にて上記第3特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第3特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に連続的に増加していてもよく、保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に段階的に増加していてもよい。また、連続的な増加と段階的な増加とが組み合わさった態様であってもよい。
また、領域G3にて上記第3特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第3層全体からみた全体的な傾向として上記第3特定元素が増加していればよい。第3層全体からみた全体的な傾向として上記第3特定元素が増加している具体的な例としては、領域G3にて第3特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に連続的に増加する領域と、第3特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様、および、領域G3にて第3特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に段階的に増加する領域と、第3特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様が挙げられる。
上記領域G3に含まれる元素(特に、第3特定元素)の含有量の測定は、上述した方法により実施できる。
領域G3は、通常、第3層の厚み方向の一部に配置され、第3層の全厚みに対する領域G3の厚みの割合は1~50%が好ましく、3~30%がより好ましい。
領域G3の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~10nmがより好ましい。
領域G3の形成方法としては、領域F3の形成方法に準じた方法が挙げられる。
上記第1実施態様の一変形例の反射型マスクブランクの製造方法としては、例えば、保護膜を形成した後、第3層の形成開始時に、上記条件で領域G3を形成し、第3層の形成中、第3層の形成終了時に上記条件で領域F3を形成し、次いで、第1層の形成を開始し、第1層の形成中、第1層の形成の終了前に上記条件で領域A1を形成し、その後、領域第2層を形成する方法が挙げられる。
領域G3において垂直断面上の第3層に最も近い部分の第3特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは20~40at%である。また領域F3において垂直断面上の保護膜に最も近い部分の第3特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
保護膜に最も近い部分の第3特定元素の含有量から第3層に最も近い部分の第3特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
なお、図6においては、第3層が領域F3および領域G3の2つの領域を有する態様を示したが、いずれか一方の領域のみを有する態様であってもよい。
<反射型マスクブランク(第2実施態様)>
本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様は、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、位相シフト膜が、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有し、上記第1層が、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、上記領域A1が、上記第2層に隣接して存在する。
第1層について、換言すれば、第1層が、第2層に隣接して存在する領域A1を有し、領域A1では、第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量が第2層側とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に増加している。
反射型マスクブランクの第2実施態様について、図7を参照しながら説明する。図7に示す反射型マスクブランク10gは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14gとをこの順に備える。位相シフト膜14gは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18と、上記第1元素を含む第1層16aとをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、上記第2層18に隣接して存在する。なお、第1層16aの領域A1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1と比較して少ない。
本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様は、加熱処理を行っても界面剥離の発生が抑制される。
加熱処理による界面剥離の発生が抑制される機序については、第1実施態様における機序と同様であると考えられる。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様と、本発明のマスクブランクの第2実施態様とでは、位相シフト膜中における第1層と第2層との位置が逆である点以外は、同じ構成である。
つまり、反射型マスクブランクの第2実施態様が備える基板、多層反射膜、および、保護膜、位相シフト膜、ならびに、反射型マスクブランクの第2実施態様が備えていてもよい裏面導電膜およびその他の膜については、第1実施態様と同様であるため、説明を省略する。
なお、第2実施態様の反射型マスクブランクの製造方法としては、例えば、保護膜および第2層を形成した後、第1層の形成開始時に、第1実施態様の上記条件で領域A1を形成し、その後、第1層を形成する方法が挙げられる。
なお、上記説明した反射型マスクブランク10gにおいて、第2層18が、第2層18が含む第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第1層16a側とは反対側から第1層16a側に向かう厚さ方向に増加している領域A2を有していてもよい。
領域A2を有する態様においては、第1層16aと、第2層18との界面における界面剥離をより抑制できる。
(変形例)
以下、反射型マスクブランクの第2実施態様の変形例について説明する。
なお、以下で説明する態様においても、「増加している」の定義および態様は、上記領域A1等と同様である。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の一変形例を、図8に示す。
図8に示す、反射型マスクブランク10hは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14hとをこの順に備える。位相シフト膜14hは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18bと、上記第1元素を含む第1層16aとをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18b側とは反対側から第2層18b側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18bに隣接して存在する。また、第2層18bは、第2元素中の最も含有量の多い元素(第2特定元素)の含有量が保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域B2を有し、領域B2は、保護膜13に隣接して存在する。なお、第1層16aの領域A1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1と比較して少ない。第2層18bの領域B2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域B2と比較して少ない。
図7に示す反射型マスクブランク10gと図8に示す反射型マスクブランク10hとを比較すると、図7に示す反射型マスクブランク10g中の第2層18bが領域B2を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略し、後段では、主に、領域B2についてのみ説明する。
なお、図8に示す反射型マスクブランク10hでは、領域B2の存在により、第2層18bと、保護膜13との界面における界面剥離も抑制できる。
上述したように、上記第2実施態様の一変形例において、第2層は、第2特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域B2を有し、領域B2は、保護膜に隣接して存在する。
領域B2にて上記第2特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第2特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に連続的に増加していてもよく、保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に段階的に増加していてもよい。また、連続的な増加と段階的な増加とが組み合わさった態様であってもよい。
また、領域B2にて上記第2特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加しているとは、第2層全体からみた全体的な傾向として上記第2特定元素が増加していればよい。第2層全体からみた全体的な傾向として上記第2特定元素が増加している具体的な例としては、領域B2にて第2特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に連続的に増加する領域と、第2特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様、および、領域B2にて第2特定元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に段階的に増加する領域と、第2特定元素の含有量が略一定の領域とを有する態様が挙げられる。
上記領域B2に含まれる元素(特に、第2特定元素)の含有量の測定は、上述した方法により実施できる。
領域B2は、通常、第2層の厚み方向の一部に配置され、第2層の全厚みに対する領域B2の厚みの割合は1~50%が好ましく、3~30%がより好ましい。
領域B2の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~10nmがより好ましい。
領域B2において垂直断面上の第2層に最も近い部分の第2特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは20~40at%である。また領域B2において垂直断面上の保護膜に最も近い部分の第2特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
保護膜に最も近い部分の第2特定元素の含有量から第2層に最も近い部分の第2特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
領域B2の形成方法としては、領域D2の形成方法に準じた方法が挙げられる。上記第2実施態様の一変形例の反射型マスクブランクの製造方法としては、例えば、保護膜を形成した後、第2層の形成開始時に上記条件で領域B2を形成し、第2層を形成し、次いで、第1層の形成開始時に上記条件で領域A1を形成し、第1層を形成する方法が挙げられる。
本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一変形例を、図9に示す。
図9に示す、反射型マスクブランク10iは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14iとをこの順に備える。位相シフト膜14iは、保護膜13側から、第2層18と、第1層16aと、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む第3層19とをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18に隣接して存在する。なお、第1層16aの領域A1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1と比較して少ない。
図3に示す反射型マスクブランク10cと図9に示す反射型マスクブランク10iとを比較すると、図9に示す反射型マスクブランク10iは、位相シフト膜14i中の各層の積層順が逆である以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図9に示す反射型マスクブランク10iでは、第3層19は、深紫外線の反射防止膜として機能し得る。
第3層の膜厚は、2~45nmが好ましく、10~30nmがより好ましい。
第3層の膜厚は、XRR法で求められる。
第3層は、上述した第2層と同様の方法により形成できる。
本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一変形例を、図10に示す。
図10に示す、反射型マスクブランク10jは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14jとをこの順に備える。位相シフト膜14jは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18と、上記第1元素を含む第1層16cと、上記第3元素を含む第3層19とをこの順に備える。また、第1層16cは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18に隣接して存在する。また、第1層16cは、第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が第3層19側とは反対側から第3層19側に向かう厚さ方向に増加している領域C1を有し、領域C1は、第3層19に隣接して存在する。なお、第1層16cの領域A1および領域C1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1および領域C1と比較して少ない。
図4に示す反射型マスクブランク10dと図10に示す反射型マスクブランク10jとを比較すると、図10に示す反射型マスクブランク10j中の位相シフト膜14j中の各層の積層順が逆である以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図10に示す反射型マスクブランク10jでは、領域C1の存在により、第1層16cと、第3層19との界面における界面剥離も抑制できる。
第3層19の好ましい態様は、図9に示す反射型マスクブランク10iの第3層19の態様と同様であるため、説明を省略する。
本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一変形例を、図11に示す。
図11に示す、反射型マスクブランク10kは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14kとをこの順に備える。位相シフト膜14kは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18cと、上記第1元素を含む第1層16aと、上記第3元素を含む第3層19とをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18c側とは反対側から第2層18c側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18cに隣接して存在する。また、第2層18cは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素(第2特定元素)の含有量が第1層16a側とは反対側から第1層16a側に向かう厚さ方向に増加している領域D2を有し、上記領域D2は、第1層16aに隣接して存在する。また、第2層18cは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域E2を有し、上記領域E2は、保護膜13に隣接して存在する。第2層18cの領域D2および領域E2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域D2および領域E2と比較して少ない。
図9に示す反射型マスクブランク10iと図11に示す反射型マスクブランク10kとを比較すると、図11に示す反射型マスクブランク10k中の第2層18cが領域D2および領域E2を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図11に示す反射型マスクブランク10kでは、領域E2の存在により、第2層18cと保護膜13との界面における界面剥離も抑制でき、領域D2の存在により、第1層16aと第2層18cとの界面における界面剥離がより抑制できる。
領域D2の好ましい態様は、図5に示す反射型マスクブランク10eの領域D2の態様と同様である。また、領域E2の好ましい態様は、図8に示す反射型マスクブランク10hの領域B2の態様と同様である。
本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様の一変形例を、図12に示す。
図12に示す、反射型マスクブランク10lは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14lとをこの順に備える。位相シフト膜14lは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18と、上記第1元素を含む第1層16aと、上記第3元素を含む第3層19bとをこの順に備える。また、第1層16aは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素(第1特定元素)の含有量が、第2層18側とは反対側から第2層18側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層18に隣接して存在する。また、第3層19bは、第3元素中の最も含有量の多い元素(第3特定元素)の含有量が第1層16a側とは反対側から第1層16a側に向かう厚さ方向に増加している領域F3を有し、領域F3は、第1層16aに隣接して存在する。なお、第1層16aの領域A1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域A1と比較して少ない。また、第3層19bの領域F3以外の領域は、第3層通常領域19xであり、第3層通常領域19xにおいて、上記第3元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域F3と比較して少ない。
図9に示す反射型マスクブランク10iと図12に示す反射型マスクブランク10lとを比較すると、図12に示す反射型マスクブランク10l中の第3層19bが領域F3を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図12に示す反射型マスクブランク10lでは、領域F3の存在により、第1層16aと、第3層19bとの界面における界面剥離も抑制できる。
領域F3の好ましい態様は、図6に示す反射型マスクブランク10fの領域F3の態様と同様である。
領域E2において垂直断面上の第2層に最も近い部分の第2特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは20~40at%である。また領域E2において垂直断面上の保護膜に最も近い部分の第2特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
保護膜に最も近い部分の第2特定元素の含有量から第2層に最も近い部分の第3特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
<反射型マスクブランク(第3実施態様)>
本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様は、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、位相シフト膜が、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有し、上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、上記領域G2が、上記第1層に隣接して存在する。
第2層について、換言すれば、第2層が、第1層に隣接して存在する領域G2を有し、領域G2では、第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している。
なお、領域G2で、第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加しているとは、上記領域D2の定義と同様である。
反射型マスクブランクの第3実施態様について、図13を参照しながら説明する。図13に示す反射型マスクブランク10mは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14mとをこの順に備える。位相シフト膜14mは、保護膜13側から、上記第1元素を含む第1層16と、上記第2元素を含む第2層18dとをこの順に備える。また、第2層18dは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、上記第1層16に隣接して存在する。なお、第2層18dの領域G2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域G2と比較して少ない。
本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様は、加熱処理を行っても界面剥離の発生が抑制される。
加熱処理による界面剥離の発生が抑制される機序については、第1実施態様における機序と同様であると考えられる。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様と、本発明のマスクブランクの第3実施態様とでは、位相シフト膜中における第1層が領域A1を有さず、第2層が領域G2を有する点以外は、同じ構成である。
つまり、反射型マスクブランクの第3実施態様が備える基板、多層反射膜、および、保護膜、ならびに、反射型マスクブランクの第3実施態様が備えていてもよい裏面導電膜およびその他の膜については、第1実施態様と同様であるため、説明を省略する。
領域G2において垂直断面上の第2層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは20~40at%である。また領域G2において垂直断面上の第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量から第2層に最も近い部分の第1特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
(位相シフト膜)
本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様が有する位相シフト膜は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有する。
また、位相シフト膜は、後段で説明する態様のように、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む第3層を有していてもよい。
以下、位相シフト膜を構成する各層について詳述する。
第3実施態様において、第1層は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む。第1層は、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含むことも好ましい。
第1層が第1元素としてRuを含む場合、第1層は、Ru以外の他の元素を含んでいることが好ましく、他の元素としては、B、C、N、O、Mo、TaおよびNbからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。なかでも、Ru以外の他の元素としては、B、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素が好ましい。第1層がRuを含む場合、第1層を構成する材料としては、ホウ化ルテニウム、窒化ルテニウム、酸化ルテニウム、酸窒化ルテニウム、RuとMoとの複合窒化物、RuとMoとの複合酸窒化物、RuとMoとの複合酸炭化物、RuとTaとの複合窒化物、RuとTaとの複合酸窒化物、および、RuとTaとの複合酸炭化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてReを含む場合、第1層は、Re以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がReを含む場合、第1層を構成する材料としては、Re金属単体、ホウ化レニウム、炭化レニウム、窒化レニウム、酸化レニウム、酸炭化レニウム、酸窒化レニウム、Re-Ru合金、ReとRuとの複合窒化物、および、ReとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてIrを含む場合、第1層は、Ir以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がIrを含む場合、第1層を構成する材料としては、Ir金属単体、ホウ化イリジウム、窒化イリジウム、酸化イリジウム、酸窒化イリジウム、Ir-Ru合金、IrとRuとの複合窒化物、および、IrとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてAgを含む場合、第1層は、Ag以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がAgを含む場合、第1層を構成する材料としては、Ag金属単体、ホウ化銀、窒化銀、酸化銀、酸窒化銀、Ag-Ru合金、AgとRuとの複合窒化物、および、AgとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてOsを含む場合、第1層は、Os以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がOsを含む場合、第1層を構成する材料としては、Os金属単体、ホウ化オスミウム、窒化オスミウム、酸化オスミウム、酸窒化オスミウム、Os-Ru合金、OsとRuとの複合窒化物、および、OsとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてAuを含む場合、第1層は、Au以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がAuを含む場合、第1層を構成する材料としては、Au金属単体、ホウ化金、窒化金、酸化金、酸窒化金、Au-Ru合金、AuとRuとの複合窒化物、および、AuとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてPdを含む場合、第1層は、Pd以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がPdを含む場合、第1層を構成する材料としては、Pd金属単体、ホウ化パラジウム、窒化パラジウム、酸化パラジウム、酸窒化パラジウム、Pd-Ru合金、PdとRuとの複合窒化物、および、PdとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
第1層が第1元素としてPtを含む場合、第1層は、Pt以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、N、OおよびRuからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第1層がPtを含む場合、第1層を構成する材料としては、Pt金属単体、ホウ化白金、窒化白金、酸化白金、酸窒化白金、Pt-Ru合金、PtとRuとの複合窒化物、および、PtとRuとの複合酸窒化物が挙げられる。
なかでも、第1層を構成する材料としては、ホウ化ルテニウム、窒化ルテニウム、酸窒化ルテニウム、RuとTaとの複合窒化物、RuとMoとの複合窒化物、Re金属単体、Re-Ru合金、ReとRuとの複合酸窒化物、Ir金属単体、Ir-Ru合金、IrとRuとの複合酸窒化物、または、Pt金属単体が好ましい。
第1層の膜厚は、2~55nmが好ましく、10~50nmがより好ましく、20~45nmが更に好ましい。
領域G2の膜厚は、上記測定方法によって元素の含有量の測定を行い、その測定結果に基づいて定める。
第1層の屈折率nおよび消衰係数kの好ましい態様は、第1実施態様の第1層の屈折率nおよび消衰係数kの好ましい態様と同様である。
第3実施態様において、第2層は、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む。第2層は、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素を含むことも好ましい。
第2層が第2元素としてTaを含む場合、第2層は、Ta以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第2層がTaを含む場合、第2層を構成する材料としては、ホウ化タンタル、ホウ窒化タンタル、ホウ酸化タンタル、炭化タンタル、炭窒化タンタル、酸化炭化窒化タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、および、酸窒化タンタルが挙げられる。
第2層が第2元素としてCrを含む場合、第2層は、Cr以外の他の元素を含んでいてもよく、他の元素としては、B、C、NおよびOからなる群から選択される1種以上の元素が挙げられる。第2層がCrを含む場合、第2層を構成する材料としては、ホウ化クロム、ホウ窒化クロム、ホウ酸化クロム、炭化クロム、炭窒化クロム、酸化炭化窒化クロム、酸炭化クロム、窒化クロム、酸化クロム、および、酸窒化クロムが挙げられる。
なかでも、第2層を構成する材料としては、ホウ窒化タンタル、窒化タンタル、酸窒化タンタル、窒化クロム、酸化クロム、酸化炭化窒化クロム、または、酸窒化クロムが好ましい。
なお、第1層が、上記第1元素とTaまたはCrとを含む場合、上記第1元素を含んでいる層は第1層とし、第2層には含めない。
第3実施態様において、第2層は、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、上記領域G2が、上記第1層に隣接して存在する。
上記「増加している」の定義および好ましい態様は、上述した通りである。
領域G2の膜厚は、上記測定方法によって元素の含有量の測定を行い、その測定結果に基づいて定める。
第2層の膜厚は、2~45nmが好ましく、10~30nmがより好ましい。
第2層の膜厚は、XRR法で求められる。
領域G2は、通常、第2層の厚み方向の一部に配置され、第2層の全厚みに対する領域G2の厚みの割合は1~50%が好ましく、3~30%がより好ましい。
領域G2の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~10nmがより好ましい。
第1層および第2層の形成方法は、第1実施態様で説明した通りである。
第2層が有する領域G2を形成する方法としては、第2層が含む第2元素のうち、最も含有量が多い元素が増加する条件で製膜すればよい。製膜方法としては、第1実施態様で説明した製膜方法が挙げられる。
上記条件は、第1実施態様で説明した条件が挙げられる。
第3実施態様の反射型マスクブランクの製造方法としては、保護膜および第1層を形成した後、第2層の形成開始時に、上記条件で領域G2を形成し、第2層を形成する方法が挙げられる。
位相シフト膜の膜厚、反射型マスクブランクのEUV光の反射率、位相シフト膜によって生じる位相差、および、深紫外線の反射率の好ましい態様は、第1実施態様の好ましい態様と同様である。
(変形例)
以下、反射型マスクブランクの第3実施態様の変形例について説明する。
なお、以下で説明する態様においても、「増加している」の定義および態様は、上記領域A1等と同様である。
本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様の一変形例を、図14に示す。
図14に示す、反射型マスクブランク10nは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14nとをこの順に備える。位相シフト膜14nは、保護膜13側から、上記第1元素を含む第1層16dと、上記第2元素を含む第2層18dとをこの順に備える。また、第2層18dは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素(第2特定元素)の含有量が、第1層16d側とは反対側から第1層16d側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、第1層16dに隣接して存在する。また、第1層16dは、第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域H1を有し、領域H1は、保護膜13に隣接して存在する。なお、第2層18dの領域G2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域G2と比較して少ない。第1層16dの領域H1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域H1と比較して少ない。
図13に示す反射型マスクブランク10mと図14に示す反射型マスクブランク10nとを比較すると、図14に示す反射型マスクブランク10n中の第1層16dが領域H1を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図14に示す反射型マスクブランク10nでは、領域H1の存在により、第1層16dと、保護膜13との界面における界面剥離も抑制できる。
第1層16dの領域H1の好ましい態様は、図2に示す反射型マスクブランク10bの第1層16bの領域B1の態様と同様であるため、説明を省略する。
領域H1において垂直断面上の第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは50~95at%であり、より好ましくは50~85at%であり、さらに好ましくは50~75at%である。また領域H1において垂直断面上の保護層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
保護層に最も近い部分の第1特定元素の含有量から第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量を差し引いた差は、5~50at%が好ましく、10~50at%がより好ましい。
本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様の一変形例を、図15に示す。
図15に示す、反射型マスクブランク10oは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14oとをこの順に備える。位相シフト膜14oは、保護膜13側から、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む第3層19と、上記第1元素を含む第1層16と、上記第2元素を含む第2層18dとをこの順に備える。また、第2層18dは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素(第2特定元素)の含有量が、第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、第1層16に隣接して存在する。なお、第2層18dの領域G2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域G2と比較して少ない。
図13に示す反射型マスクブランク10mと図15に示す反射型マスクブランク10oとを比較すると、図15に示す反射型マスクブランク10oが第3層19を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図15に示す反射型マスクブランク10oでは、第3層19は、後段で説明する反射型マスクの作製の際に、エッチングストッパとして機能し得る。
第3層19の好ましい態様は、図3に示す反射型マスクブランク10cの第3層19と同様であるため、説明を省略する。
本発明の反射型マスクブランクの第3実施態様の一変形例を、図16に示す。
図16に示す、反射型マスクブランク10pは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14pとをこの順に備える。位相シフト膜14pは、保護膜13側から、上記第3元素を含む第3層19cと、上記第1元素を含む第1層16と、上記第2元素を含む第2層18dとをこの順に備える。また、第2層18dは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素(第2特定元素)の含有量が、第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、第1層16に隣接して存在する。また、第3層19cは、上記第3元素中の最も含有量の多い元素(第3特定元素)の含有量が第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域J3を有し、上記領域J3は、第1層16に隣接して存在する。また、第3層19cは、上記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域K3を有し、上記領域K3は、保護膜13に隣接して存在する。第3層19cの領域J3および領域K3以外の領域は、第3層通常領域19xであり、第3層通常領域19xにおいて、上記第3元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域J3および領域K3と比較して少ない。
図15に示す反射型マスクブランク10oと図16に示す反射型マスクブランク10pとを比較すると、図16に示す反射型マスクブランク10p中の第3層19cが領域J3および領域K3を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図16に示す反射型マスクブランク10pでは、領域J3および領域K3の存在により、第1層16と第3層19cとの界面における界面剥離、および、第3層19cと保護膜13との界面における界面剥離も抑制できる。
なお、領域J3および領域K3の好ましい態様は、図6に示す反射型マスクブランク10fの第3層19aの領域F3およびG3とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。
領域J3において垂直断面上の第3層に最も近い部分の第3特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは20~40at%である。また領域J3において垂直断面上の第1層に最も近い部分の第3特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
第1層に最も近い部分の第3特定元素の含有量から第3層に最も近い部分の第3特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
領域K3において垂直断面上の第3層に最も近い部分の第3特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは20~40at%である。また領域K3において垂直断面上の保護膜に最も近い部分の第3特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
保護膜に最も近い部分の第3特定元素の含有量から第3層に最も近い部分の第3特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
さらに、反射型マスクブランク10oの態様において、第1層16が、第1層16が含む第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が第2層18d側とは反対側から第2層18d側に向かう厚さ方向に増加している領域L1を有していてもよい。なお、上記領域L1は、第2層18dに隣接して存在する。また、第1層16が、第1層16が含む第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第3層19c側とは反対側から第3層19c側に向かう厚さ方向に増加している領域M1を有していてもよい。なお、上記領域M1は、第3層19cに隣接して存在する。
第1層16は、領域L1およびM1の両方を有する態様であってもよい。
領域L1を有する態様においては、第2層18dと、第1層16との界面における界面剥離がより抑制できる。また、領域M1を有する態様においては、第1層16と、第3層19cとの界面における界面剥離も抑制できる。
<反射型マスクブランク(第4実施態様)>
本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様は、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、位相シフト膜が、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有し、上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が上記第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、上記領域G2が、上記第1層に隣接して存在する。
第2層について、換言すれば、第2層が、第1層に隣接して存在する領域G2を有し、領域G2では、第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量が第1層側とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している。
反射型マスクブランクの第4実施態様について、図17を参照しながら説明する。図17に示す反射型マスクブランク10qは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14qとをこの順に備える。位相シフト膜14qは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18dと、上記第1元素を含む第1層16とをこの順に備える。また、第2層18dは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、上記第1層16に隣接して存在する。なお、第2層18dの領域G2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域G2と比較して少ない。
本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様と、本発明のマスクブランクの第3実施態様とでは、位相シフト膜中における第1層と第2層との位置が逆である点以外は、同じ構成である。
つまり、反射型マスクブランクの第4実施態様が備える基板、多層反射膜、および、保護膜、位相シフト膜、ならびに、反射型マスクブランクの第4実施態様が備えていてもよい裏面導電膜およびその他の膜については、第3実施態様と同様であるため、説明を省略する。
なお、第4実施態様の反射型マスクブランクの製造方法としては、例えば、保護膜を形成した後、第2層の形成中、第2層の形成の終了前に、上記条件で領域G2を形成し、次いで、第1層を形成する方法が挙げられる。
(変形例)
以下、反射型マスクブランクの第4実施態様の変形例について説明する。
なお、以下で説明する態様においても、「増加している」の定義および態様は、上記領域A1等と同様である。
本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様の一変形例を、図18に示す。
図18に示す、反射型マスクブランク10rは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14rとをこの順に備える。位相シフト膜14rは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18eと、上記第1元素を含む第1層16とをこの順に備える。また、第2層18eは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素(第2特定元素)の含有量が、第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、第1層16に隣接して存在する。また、第2層18eは、第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域I2を有し、領域I2は、保護膜13に隣接して存在する。なお、第2層18eの領域G2およびI2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域G2および領域I2と比較して少ない。
図18に示す反射型マスクブランク10rと図17に示す反射型マスクブランク10qとを比較すると、図18に示す反射型マスクブランク10r中の第2層18eが領域I2を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図18に示す反射型マスクブランク10rでは、領域I2の存在により、第2層18eと、保護膜13との界面における界面剥離も抑制できる。
第2層18eの領域I2の好ましい態様は、図8に示す反射型マスクブランク10hの第2層18bの領域B2の態様と同様であるため、説明を省略する。
本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様の一変形例を、図19に示す。
図19に示す、反射型マスクブランク10sは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14sとをこの順に備える。位相シフト膜14sは、保護膜13側から、第2層18dと、第1層16と、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む第3層19とをこの順に備える。また、第2層18dは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、上記第1層16に隣接して存在する。なお、第2層18dの領域G2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域G2と比較して少ない。
図15に示す反射型マスクブランク10oと図19に示す反射型マスクブランク10sとを比較すると、図19に示す反射型マスクブランク10sは、位相シフト膜14s中の各層の積層順が逆である以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図19に示す反射型マスクブランク10sでは、第3層19は、深紫外線の反射防止膜として機能し得る。
第3層19の好ましい態様は、図9に示す反射型マスクブランク10iの第3層19の態様と同様であるため、説明を省略する。
本発明の反射型マスクブランクの第4実施態様の一変形例を、図20に示す。
図20に示す、反射型マスクブランク10tは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14tとをこの順に備える。位相シフト膜14tは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18dと、上記第1元素を含む第1層16と、上記第3元素を含む第3層19dとをこの順に備える。また、第2層18dは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、上記第1層16に隣接して存在する。また、第3層19dは、第3元素中の最も含有量の多い元素(第3特定元素)の含有量が第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域J3を有し、領域J3は、第1層16に隣接して存在する。なお、第2層18dの領域G2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域G2と比較して少ない。また、第3層19dの領域J3以外の領域は、第3層通常領域19xであり、第3層通常領域19xにおいて、上記第3元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域J3と比較して少ない。
図19に示す反射型マスクブランク10sと図20に示す反射型マスクブランク10tとを比較すると、図20に示す反射型マスクブランク10t中の第3層19dが領域J3を有する点以外は、同じ構成であるため、同じ構成の説明は省略する。
なお、図20に示す反射型マスクブランク10tでは、領域J3の存在により、第1層16と、第3層19dとの界面における界面剥離も抑制できる。
領域J3の好ましい態様は、図16に示す反射型マスクブランク10pの領域J3の態様と同様である。
さらに、反射型マスクブランク10sの態様において、第1層16が、第1層16が含む第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第2層18d側とは反対側から第2層18d側に向かう厚さ方向に増加している領域L1を有していてもよい。なお、上記領域L1は、第2層18dに隣接して存在する。また、第1層16が、第1層16が含む第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第3層19側とは反対側から第3層19側に向かう厚さ方向に増加している領域M1を有していてもよい。なお、上記領域M1は、第3層19に隣接して存在する。
第1層16は、領域L1およびM1の両方を有する態様であってもよい。
領域L1を有する態様においては、第2層18dと、第1層16との界面における界面剥離がより抑制できる。また、領域M1を有する態様においては、第1層16と、第3層19との界面における界面剥離も抑制できる。
<反射型マスクブランク(第5実施態様)>
本発明の反射型マスクブランクの第5実施態様は、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、位相シフト膜が、保護膜側から、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とをこの順に有し、上記第1層が、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域N1を有し、上記領域N1が、上記保護膜に隣接して存在する。
第1層について、換言すれば、第1層が、保護膜に隣接して存在する領域N1を有し、領域N1では、第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している。
なお、領域N1で、第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加しているとは、上記領域B1の定義と同様である。
反射型マスクブランクの第5実施態様について、図21を参照しながら説明する。図21に示す反射型マスクブランク10uは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14uとをこの順に備える。位相シフト膜14uは、保護膜13側から、上記第1元素を含む第1層16eと、上記第2元素を含む第2層18とをこの順に備える。また、第1層16eは、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域N1を有し、領域N1は、上記保護膜13に隣接して存在する。なお、第1層16eの領域N1以外の領域は、第1層通常領域16xであり、第1層通常領域16xにおいて、上記第1元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域N1と比較して少ない。
領域N1において垂直断面上の第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは50~95at%であり、より好ましくは50~85at%であり、さらに好ましくは50~75at%である。また領域N1において垂直断面上の保護膜に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
保護膜に最も近い部分の第1特定元素の含有量から第1層に最も近い部分の第1特定元素の含有量を差し引いた差は、5~50at%が好ましく、10~50at%がより好ましい。
本発明の反射型マスクブランクの第5実施態様は、加熱処理を行っても界面剥離の発生が抑制される。
本発明者らが、2層タイプの位相シフト膜を備える反射型マスクブランクについて検討したところ、界面剥離は、位相シフト膜の第1層と、保護膜との界面で発生する場合があった。
加熱処理による界面剥離の発生が抑制される機序については、第1実施態様における機序と同様であると考えられる。
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様と、本発明のマスクブランクの第5実施態様とでは、位相シフト膜中における第1層が領域A1を有さず、領域N1を有する点以外は、同じ構成である。
つまり、反射型マスクブランクの第5実施態様が備える基板、多層反射膜、および、保護膜、ならびに、反射型マスクブランクの第5実施態様が備えていてもよい裏面導電膜およびその他の膜については、第1実施態様と同様であるため、説明を省略する。
(位相シフト膜)
本発明の反射型マスクブランクの第5実施態様が有する位相シフト膜は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有する。
以下、位相シフト膜を構成する各層について詳述する。
第5実施態様において、第1層は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含み、第1層を構成する材料の好ましい態様は第1実施態様と同様である。
第5実施態様において、第1層は、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域N1を有し、上記領域N1が、上記保護膜に隣接して存在する。
上記「増加している」の定義および好ましい態様は、上述した通りである。
第1層の膜厚、屈折率nおよび消衰係数kの好ましい態様は、第1実施態様の第1層の好ましい態様と同様である。
領域N1は、通常、第1層の厚み方向の一部に配置され、第1層の全厚みに対する領域N1の厚みの割合は1~30%が好ましく、3~15%がより好ましい。
また、領域N1の膜厚は、0.1~10nmが好ましく、0.5~5nmがより好ましい。
領域N1の膜厚は、上記測定方法によって元素の含有量の測定を行い、その測定結果に基づいて定める。
第5実施態様において、第2層は、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含み、第2層を構成する材料の好ましい態様は第1実施態様と同様である。
第2層の膜厚は、第1実施態様の第2層の好ましい態様と同様である。
第1層および第2層の形成方法は、第1実施態様で説明した通りである。
第1層が有する領域N1を形成する方法としては、第1層が含む第1元素のうち、最も含有量が多い元素が増加する条件で製膜すればよい。製膜方法としては、上記製膜方法が挙げられる。
上記条件は、第1実施態様で説明した条件が挙げられる。
第5実施態様の反射型マスクブランクは、保護膜の形成後、第1層の形成開始時に、上記条件で領域N1を形成してから第1層を形成し、次いで第2層を形成して製造できる。
位相シフト膜の膜厚、反射型マスクブランクのEUV光の反射率、位相シフト膜によって生じる位相差、および、深紫外線の反射率の好ましい態様は、第1実施態様の好ましい態様と同様である。
<反射型マスクブランク(第6実施態様)>
本発明の反射型マスクブランクの第6実施態様は、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、位相シフト膜が、保護膜側から、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層と、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層とをこの順に有し、上記第2層が、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域O2を有し、上記領域O2が、上記保護膜に隣接して存在する。
第2層について、換言すれば、第2層が、保護膜に隣接して存在する領域O2を有し、領域O2では、第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している。
なお、領域O2で、第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量が保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加しているとは、上記領域B2の定義と同様である。
反射型マスクブランクの第6実施態様について、図22を参照しながら説明する。図22に示す反射型マスクブランク10vは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、位相シフト膜14vとをこの順に備える。位相シフト膜14vは、保護膜13側から、上記第2元素を含む第2層18fと、上記第1元素を含む第1層16とをこの順に備える。また、第2層18fは、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、保護膜13側とは反対側から保護膜13側に向かう厚さ方向に増加している領域O2を有し、領域O2は、上記保護膜13に隣接して存在する。なお、第2層18fの領域O2以外の領域は、第2層通常領域18xであり、第2層通常領域18xにおいて、上記第2元素中の最も含有量が多い元素の含有量は、領域O2と比較して少ない。
領域O2において垂直断面上の第2層に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは20~80at%であり、より好ましくは20~60at%であり、さらに好ましくは20~40at%である。また領域O2において垂直断面上の保護膜に最も近い部分の第1特定元素の含有量は好ましくは60~100at%、より好ましくは70at%以上100at%未満であり、さらに好ましくは80at%以上100at%未満である。
保護膜に最も近い部分の第1特定元素の含有量から第2層に最も近い部分の第1特定元素の含有量を差し引いた差は、10~80at%が好ましく、20~70at%がより好ましい。
本発明の反射型マスクブランクの第6実施態様は、加熱処理を行っても界面剥離の発生が抑制される。
加熱処理による界面剥離の発生が抑制される機序については、第5実施態様における機序と同様であると考えられる。
本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様と、本発明のマスクブランクの第6実施態様とでは、位相シフト膜中における第2層が領域G2を有さず、領域O2を有する点以外は、同じ構成である。
つまり、反射型マスクブランクの第6実施態様が備える基板、多層反射膜、および、保護膜、ならびに、反射型マスクブランクの第6実施態様が備えていてもよい裏面導電膜およびその他の膜については、第2実施態様と同様であるため、説明を省略する。
(位相シフト膜)
本発明の反射型マスクブランクの第6実施態様が有する位相シフト膜は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有する。
以下、位相シフト膜を構成する各層について詳述する。
第6実施態様において、第1層は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含み、第1層を構成する材料の好ましい態様は第3実施態様と同様である。
第1層の膜厚、屈折率nおよび消衰係数kの好ましい態様は、第1実施態様の第1層の好ましい態様と同様である。
第6実施態様において、第2層は、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含み、第2層を構成する材料の好ましい態様は第2実施態様と同様である。
第6実施態様において、第2層は、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、保護膜側とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域O2を有し、上記領域O2が、上記保護膜に隣接して存在する。
上記「増加している」の定義および好ましい態様は、上述した通りである。
領域O2は、通常、第1層の厚み方向の一部に配置され、第1層の全厚みに対する領域O2の厚みの割合は1~50%が好ましく、3~30%がより好ましい。
また、領域O2の膜厚は、0.1~15nmが好ましく、0.5~10nmがより好ましい。
領域O2の膜厚は、上記測定方法によって元素の含有量の測定を行い、その測定結果に基づいて定める。
なお、第1層が、上記第1元素とTaまたはCrとを含む場合、上記第1元素を含んでいる層は第1層とし、第2層には含めない。
第2層の膜厚は、第1実施態様の第2層の好ましい態様と同様である。
第1層および第2層の形成方法は、第1実施態様で説明した通りである。
第2層が有する領域O2を形成する方法としては、第2層が含む第2元素のうち、最も含有量が多い元素が増加する条件で製膜すればよい。製膜方法としては、上記製膜方法が挙げられる。
上記条件は、第1実施態様で説明した条件が挙げられる。
第6実施態様の反射型マスクブランクは、保護膜の形成後、第2層の形成開始時に、上記条件で領域O2を形成してから第2層を形成し、次いで第1層を形成して製造できる。
位相シフト膜の膜厚、反射型マスクブランクのEUV光の反射率、位相シフト膜によって生じる位相差、および、深紫外線の反射率の好ましい態様は、第1実施態様の好ましい態様と同様である。
(変形例)
以下、反射型マスクブランクの第6実施態様の変形例について説明する。
なお、以下で説明する態様においても、「増加している」の定義および態様は、上記領域A1等と同様である。
本発明の反射型マスクブランクの第6実施態様は、反射型マスクブランク10vにおいて、位相シフト膜14vが、保護膜13側から、第2層18fと、第1層16と、TaおよびCrからなる群から選択される第3元素を含む第3層とをこの順に備える態様であってもよい。
第3層の好ましい態様は、上述した第2層の好ましい態様と同様である。
また、上記態様において、第3層が、第3層が含む第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、第1層16側とは反対側から第1層16側に向かう厚さ方向に増加している領域P3を有していてもよい。なお、上記領域P3は、第1層16に隣接して存在する。
領域P3を有する態様においては、第1層16と、第3層との界面における界面剥離も抑制できる。
<反射型マスクの製造方法および反射型マスク>
反射型マスクは、本発明の反射型マスクブランク(第1実施態様、第2実施態様、第3実施態様、第4実施態様、第5実施態様、または、第6実施態様)が有する位相シフト膜をパターニングして得られる。反射型マスクの製造方法の一例を、図23を参照しながら説明する。なお、以下、図1で説明した第1実施態様の反射型マスクブランク10aを用いて反射型マスクを製造する方法について説明するが、上記他の態様であっても、同様に反射型マスクを製造できる。
図23の(a)は、基板11、多層反射膜12、保護膜13、および、位相シフト膜14aをこの順に有する反射型マスクブランク上に、レジストパターン20を形成した状態を示す。レジストパターン20の形成方法は公知の方法を用いることができ、例えば、反射型マスクブランクの位相シフト膜14a上にレジストを塗布し、露光および現像を行ってレジストパターン20を形成する。なお、レジストパターン20は、反射型マスクを用いてウエハ上に形成するパターンに対応する。
その後、図23の(a)のレジストパターン20をマスクとして、位相シフト膜14aをエッチングしてパターニングし、レジストパターン20を除去して、図3の(b)に示す位相シフト膜パターン14ptを有する積層体を得る。
次いで、図23の(c)に示すように、図23の(b)の積層体上に露光領域の枠に対応するレジストパターン21を形成し、図23の(c)のレジストパターン21をマスクとしてドライエッチングを行う。ドライエッチングは、基板11に到達するまで実施する。ドライエッチング後、レジストパターン21を除去し、図3の(d)に示す反射型マスクを得る。
位相シフト膜パターン14ptを形成する際のドライエッチングは、例えば、Cl系ガスを用いたドライエッチング、および、F系ガスを用いたドライエッチングが挙げられる。
レジストパターン20または21の除去は、公知の方法で行えばよく、洗浄液による除去が挙げられる。洗浄液としては、硫酸-過酸化水素水溶液(SPM)、硫酸、アンモニア水、アンモニア-過酸化水素水溶液(APM)、OHラジカル洗浄水、および、オゾン水等が挙げられる。
本発明の反射型マスクブランクの位相シフト膜をパターニングして得られる反射型マスクは、EUV光による露光に用いられる反射型マスクとして好適に適用できる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、および、割合等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
なお、後述する例1、例2及び例8は比較例であり、例3~7は実施例である。
<サンプルの作製>
以下の手順で、例1に用いた界面剥離試験用のサンプルを作製した。
SiO-TiO系のガラス基板(外形が152mm角、厚さが約6.3mm)を使用した。なお、ガラス基板の熱膨張係数は0.02×10-7/℃以下である。ガラス基板を研磨して、一方の表面の表面粗さを二乗平均平方根粗さRqで0.15nm以下、平坦度を100nm以下の平滑な表面となるように加工した。
ガラス基板の裏面(加工した面とは反対側の面)上には、マグネトロンスパッタリング法を用いて、厚さが約100nmのCr層を成膜し、静電チャック用の裏面導電膜を形成した。Cr層のシート抵抗値は約100Ω/□であった。
ガラス基板の裏面に導電層を成膜した後、イオンビームスパッタリング法によってMo層(2.3nm)とSi層(4.5nm)とを交互に製膜し、多層反射膜(272nm)を形成した。Mo層およびSi層の層数はそれぞれ40層とし、Si層が最表面となるように製膜した。Mo層およびSi層の製膜条件は、以下のとおりとした。なお、各層の膜厚は、X線反射率(XRR)法により、膜の材料と膜厚とをパラメータとしてフィッティングを行って求めた。
なお、以下、上記手順で多層反射膜を形成したガラス基板を、「多層反射膜付き基板」ともいう。
(Moの製膜条件(イオンビームスパッタリング法))
・ターゲット:Moターゲット
・スパッタリングガス:Arガス(ガス分圧:0.02Pa)
・加速電圧:700V
・成膜速度:0.064nm/秒
(Si層の成膜条件(イオンビームスパッタリング法))
・ターゲット:Siターゲット(Bドープ)
・スパッタリングガス:Arガス(ガス分圧:0.02Pa)
・加速電圧:700V
・成膜速度:0.077nm/秒
多層反射膜付き基板に対し、それぞれ以下の条件で、Ruからなる保護膜、酸窒化タンタルからなる層、および、RuとTaとの複合窒化物からなる層をこの順に有する位相シフト膜を形成し、例1に用いた界面剥離試験用のサンプルを得た。
(Ru保護膜の製膜条件(直流スパッタリング法))
・ターゲット:Ruターゲット
・スパッタリングガス:Arガス(ガス分圧:0.2Pa)
・印加電圧:400V
・成膜速度:0.11nm/秒
(酸窒化タンタル層の製膜条件(反応性スパッタリング法))
・ターゲット:Taターゲット
・スパッタリングガス:Arガス、OガスおよびNガスの混合ガス(Ar:O:N=5:1:1、混合ガス分圧0.2Pa)
・印加電圧:500V
・成膜速度:0.01nm/秒
(RuとTaとの複合窒化物層の製膜条件(反応性スパッタリング法))
・ターゲット:Ru-Ta合金ターゲット
・スパッタリングガス:ArガスおよびNガスの混合ガス(Ar:N=5:1、混合ガス分圧0.2Pa)
・印加電圧:500V
・成膜速度:0.07nm/秒
例2に用いたサンプルは、多層反射膜付き基板に対し、Rhからなる保護膜、RuとTaとの複合窒化物からなる層、および、酸窒化タンタルからなる層をこの順に有する位相シフト膜を形成して得た。なお、Rhからなる保護膜の形成は、Ruからなる保護膜の形成において、ターゲットをRhとした以外は同様にして行った。
例3に用いたサンプルの作製手順を以下に説明する。なお、例3に用いたサンプルは、上述した第2実施態様に対応する。
まず、多層反射膜付き基板に対し、例1に用いたサンプルと同様の方法で、Ruからなる保護膜、および、酸窒化タンタルからなる層(第2層)を形成した。その後、Ruからなる保護膜の製膜条件でRu層を形成し、次いで、例1に用いたサンプルと同様の条件でRuとTaとの複合窒化物からなる層(第1層)を形成し、例3に用いたサンプルを得た。なお、RuとTaとの複合窒化物からなる層中、Ruの含有量が最も多く、第1層は、Ruの含有量が第2層とは反対側から第2層側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、領域A1は、第2層に隣接して存在する。
例4に用いたサンプルの作製手順を以下に説明する。なお、例4に用いたサンプルは、上述した第4実施態様に対応する。
まず、多層反射膜付き基板に対し、例1に用いたサンプルと同様の方法で、Ruからなる保護膜、および、酸窒化タンタルからなる層を形成し、その後、Ruからなる保護膜の製膜条件において、ターゲットをTaとしてTa層を形成した(第2層)。次いで、例1に用いたサンプルと同様の条件でRuとTaとの複合窒化物からなる層(第1層)を形成し、例4に用いたサンプルを得た。なお、酸窒化タンタルからなる層中、Taの含有量が最も多く、第2層は、Taの含有量が第1層とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、第1層に隣接して存在する。
例5に用いたサンプルの作製手順を以下に説明する。なお、例5に用いたサンプルは、上述した第3実施態様に対応する。
まず、多層反射膜付き基板に対し、例1に用いたサンプルと同様の方法で、Rhからなる保護膜、および、RuとTaとの複合窒化物からなる層(第1層)を形成した。その後、酸窒化タンタルからなる層の製膜条件において、スパッタリングガスをArガスおよびNガスの混合ガス(Ar:N=5:1)として窒化タンタル層を形成し、次いで、例1に用いたサンプルと同様の方法で、酸窒化タンタルからなる層(第2層)を形成し、例5に用いたサンプルを得た。なお、酸窒化タンタルからなる層中、Taの含有量が最も多く、第2層は、Taの含有量が第1層とは反対側から第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域G2を有し、領域G2は、第1層に隣接して存在する。
例6に用いたサンプルの作製手順を以下に説明する。なお、例6に用いたサンプルは、上述した第5実施態様に対応する。
まず、多層反射膜付き基板に対し、例2に用いたサンプルと同様の方法で、Rhからなる保護膜を形成した。その後、Ruからなる保護膜の製膜条件でRu層を形成した。次いで、例1に用いたサンプルと同様の方法で、RuとTaとの複合窒化物からなる層(第1層)、および、酸窒化タンタルからなる層(第2層)を形成し、例6に用いたサンプルを得た。なお、RuとTaとの複合窒化物からなる層中、Ruの含有量が最も多く、第1層は、Ruの含有量が保護膜とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域N1を有し、領域N1は、保護膜に隣接して存在する。
例7に用いたサンプルの作製手順を以下に説明する。なお、例7に用いたサンプルは、上述した第6実施態様に対応する。
まず、多層反射膜付き基板に対し、例1に用いたサンプルと同様の方法で、Ruからなる保護膜を形成した。その後、酸窒化タンタルからなる層の製膜条件において、スパッタリングガスをArガスおよびNガスの混合ガス(Ar:N=5:1)として窒化タンタル層を形成した。次いで、例1に用いたサンプルと同様の方法で、酸窒化タンタルからなる層(第2層)、および、RuとTaとの複合窒化物からなる層(第1層)を形成し、例7に用いたサンプルを得た。なお、酸窒化タンタルからなる層中、Taの含有量が最も多く、第2層は、Taの含有量が保護膜とは反対側から保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域O2を有し、領域O2は、保護膜に隣接して存在する。
なお、各サンプルの構成は、後段に示す表にも掲載する。
例8に用いたサンプルの作製手順を以下に説明する。
まず、多層反射膜付き基板に対し、例1に用いたサンプルと同様の方法で、Ruからなる保護膜、および、酸窒化タンタルからなる層(第2層)を形成した。次に例1に用いたサンプルと同様の条件でRuとTaとの複合窒化物からなる層(RuTaN)を形成し、その後Ruからなる保護膜の製膜条件でRu層を形成した。
<界面剥離の評価>
上記手順で作製した各サンプルを2.5cm角に切り出し、界面剥離の試験に供する試験片とした。
各試験片を、240℃に加熱したホットプレートの上に設置し、5分間加熱した。加熱後の試験片は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製SU-70)で位相シフト膜側の表面を観察し、界面剥離の有無を確認した。なお、界面剥離は、ブリスター(部分的な剥離による膜膨れ)から進展して発生するといえるため、ブリスターの面積に基づいて評価を行った。評価基準は、以下に示す通りである。評価結果を後段の表に示す。
・A:加熱後の試験片のSEM観察像(観察倍率 100000倍)の観察視野面積に対するブリスターの面積の比が1%未満
・B:加熱後の試験片のSEM観察像(観察倍率 100000倍)の観察視野面積に対するブリスターの面積の比が1%以上20%未満
・C:加熱後の試験片のSEM観察像(観察倍率 100000倍)の観察視野面積に対するブリスターの面積の比が20%以上
<屈折率および消衰係数>
上述した方法にしたがって、第1層のみを製膜した上記ガラス基板をサンプルとして用い、波長13.5nmの電磁波に対する第1層の屈折率nおよび消衰係数kを求めた。
<EUV光反射率>
上述した方法にしたがって、各サンプルにおける位相シフト膜の反射率を測定した。
<結果>
各サンプルの構成および評価結果を表に示す。
表1中の「TaON」および「RuTaN」の表記は、それぞれ、酸窒化タンタル、および、RuとTaとの複合窒化物を表す。
表1中、例3の「位相シフト膜」欄の「上層」欄の表記は、上層が、「RuTaN」と「領域A1」との両方を含むことを表す。例4~7の「上層」および「下層」欄における表記も同様である。
表1の結果から、第1層中、上記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が増加している領域、または、第2層中、上記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が増加している領域を有している例3~7は、上記領域を有さない例1、例2及び例8と比較して、界面剥離を抑制できることが確認された。また例8は、第1層に比べて第1特定元素量の少ない中間領域(RuTaN)を設けており、界面剥離を抑制することができず、界面剥離性は悪化した。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2022年4月28日出願の日本特許出願(特願2022-074386)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として取り込まれる。
10a~10v 反射型マスクブランク
11 基板
12 多層反射膜
13 保護膜
14a~14v 位相シフト膜
14pt 位相シフト膜パターン
16,16a~16e 第1層
16x 第1層通常領域
18,18a~18f 第2層
18x 第2層通常領域
19 第3層
20,21 レジストパターン

Claims (10)

  1. 基板と、
    EUV光を反射する多層反射膜と、
    保護膜と、
    EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、
    前記位相シフト膜が、ルテニウムである第1元素と、モリブデン、タンタルおよびニオブからなる群から選択される1種以上の元素とを含む第1層と、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有し、
    前記第1層が、前記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記第2層側とは反対側から前記第2層側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、前記領域A1が、前記第2層に隣接して存在する、反射型マスクブランク。
  2. 基板と、
    EUV光を反射する多層反射膜と、
    ルテニウムおよびロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む保護膜と、
    EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜とをこの順に備え、
    前記位相シフト膜が、ルテニウムである第1元素を含む第1層と、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを有し、
    前記第1層が、前記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記第2層側とは反対側から前記第2層側に向かう厚さ方向に増加している領域A1を有し、前記領域A1が、前記第2層に隣接して存在する、反射型マスクブランク。
  3. 前記第1層が、ホウ素、炭素、窒素および酸素からなる群から選択される1種以上の元素を含む、請求項1または2に記載の反射型マスクブランク。
  4. 前記第2層が、ホウ素、炭素、窒素および酸素からなる群から選択される1種以上の元素を含む、請求項1または2に記載の反射型マスクブランク。
  5. 前記領域A1において、垂直断面上の前記第1層に最も近い部分の前記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が、50~95at%である、請求項1または2に記載の反射型マスクブランク。
  6. 前記第1層が、前記位相シフト膜中において前記第2層よりも前記保護膜側に配置される場合、前記第1層が、前記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記保護膜側とは反対側から前記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域B1を有し、前記領域B1が、前記第1層よりも保護膜側に位置し、かつ、前記第1層と接する層に隣接して存在し、
    前記第2層が、前記位相シフト膜中において前記第1層よりも前記保護膜側に配置される場合、前記第2層が、前記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記保護膜側とは反対側から前記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域B2を有し、前記領域B2が、前記第2層よりも保護膜側に位置し、かつ、前記第2層と接する層に隣接して存在する、請求項1または2に記載の反射型マスクブランク。
  7. 前記位相シフト膜が、タンタルおよびクロムからなる群から選択される第3元素を含む第3層と、前記第1層と、前記第2層とをこの順に有する、請求項1または2に記載の反射型マスクブランク。
  8. 前記第1層が、前記第1元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記第3層側とは反対側から前記第3層側に向かう厚さ方向に増加している領域C1を有し、前記領域C1が、前記第3層に隣接して存在する、請求項7に記載の反射型マスクブランク。
  9. 前記第3層が、前記位相シフト膜中において前記保護膜側に配置される場合、前記第2層が、前記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記第1層側とは反対側から前記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域D2を有し、前記領域D2が、前記第1層に隣接して存在し、
    前記第2層が、前記位相シフト膜中において前記保護膜側に配置される場合、
    前記第2層が、前記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記第1層側とは反対側から前記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域D2を有し、前記領域D2が、前記第1層に隣接して存在するか、
    前記第2層が、前記第2元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記保護膜側とは反対側から前記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域E2を有し、前記領域E2が、前記保護膜に隣接して存在する、請求項7に記載の反射型マスクブランク。
  10. 前記第3層が、前記位相シフト膜中において前記保護膜側に配置される場合、前記第3層が、前記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記第1層側とは反対側から前記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域F3を有し、前記領域F3が、前記第1層に隣接して存在するか、
    前記第3層が、前記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記保護膜側とは反対側から前記保護膜側に向かう厚さ方向に増加している領域G3を有し、前記領域G3が、前記保護膜に隣接して存在し、
    前記第2層が、前記位相シフト膜中において前記保護膜側に配置される場合、前記第3層が、前記第3元素中の最も含有量の多い元素の含有量が前記第1層側とは反対側から前記第1層側に向かう厚さ方向に増加している領域F3を有し、前記領域F3が、前記第1層に隣接して存在する、請求項7に記載の反射型マスクブランク。
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