JP7508256B2 - リシノール酸エステル共重合体を含む潤滑油組成物 - Google Patents

リシノール酸エステル共重合体を含む潤滑油組成物 Download PDF

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本発明は、鉱油に対する相溶性を有すると共に、摩擦係数低減性が良好なリシノール酸エステル共重合体を含む潤滑油組成物に関する。
近年、石油資源の低減や、地球温暖化などのような環境問題から、排ガス汚染物質やCO2の排出量の低減を目的とするエンジンなどの潤滑機械の燃費向上が求められている。潤滑油による潤滑機械の省燃費化は、潤滑機械の物理的な改良による省燃費化と比べて費用対効果に優れるため、重要な省燃費化技術として期待されており、潤滑油による潤滑機械の燃費向上の要求が高まっている。
エンジン、トランスミッションなどの潤滑機械における動力損失は摺動部での摩擦損失と潤滑油の粘性による攪拌損失に分けられる。省燃費化の一つの方策として、摩擦損失の低減が挙げられる。近年、潤滑機械の小型化、高効率化により、摺動部はより高速、高荷重な負荷がかかるようになっていることからも分かるように、摩擦損失を低減することが、燃費改善に有効であると考えられる。
潤滑機械の摺動部の摩擦損失低減のためには、潤滑油の低摩擦係数化が有効であるとされている。
摩擦係数の低減に効果がある重合体としては、乳酸、リシノール酸などのヒドロキシ酸のポリエステルであるポリ乳酸、ポリリシノール酸、脂肪族ジカルボン酸とジオールとのポリエステルが知られている。
例えば、脂肪族ジカルボン酸またはエステル、脂肪族または脂環式ジオール、天然由来の不飽和酸またはそのエステル、および少なくとも三つの官能基を有する分子から選択される分岐剤からなる熱可塑性脂肪族コポリエステル(特許文献1)、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシ基にオキシアルキレン基を付加したカルボン酸化合物などを含有する潤滑剤組成物(特許文献2)、リシノール酸、脂肪族ジカルボン酸およびジオールとの共重合ポリエステルからなる潤滑油添加剤(特許文献3)、あるいはポリリシノール酸を配合してなる潤滑油組成物(特許文献4)などが提案されている。
しかしながら、従来検討されているリシノール酸に由来する構成単位を含むポリエステル共重合体は鉱油に対する溶解性が十分ではなく、またその潤滑油組成物の摩擦係数低減性が十分でない場合があった。
特表2005-523357号公報 特開平6-100875号公報 国際公開第2017/038734号パンフレット 国際公開第2009/148110号パンフレット
本発明の目的は、鉱油に対する良好な溶解性を有するリシノール酸エステル共重合体を含む、摩擦係数低減性が良好な潤滑油組成物を得ることにある。
すなわち、本発明は以下の[1]~[13]に関する。
[1] 鉱油を含む潤滑油基油(A)と下記の(B1)~(B3)を満たすリシノール酸エステル共重合体(B)とを含む潤滑油組成物であり、前記基油(A)と前記共重合体(B)との合計を100質量%とした場合、共重合体(B)を0.05質量%以上0.5質量%以下含む潤滑油組成物。
(B1)リシノール酸に由来する構成単位(a)、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)、および炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)を含む;
(B2)前記構成単位(a)、(b)および(c)の合計を100モル%としたとき、前記構成単位(a)の含量が50~98モル%、前記構成単位(b)の含量が1~25モル%、前記構成単位(c)の含量が1~25モル%である;
(B3)極限粘度[IV]が0.01~0.3dl/gの範囲にある。
[2] 前記要件(B2)において、前記構成単位(b)と前記構成単位(c)とのモル比〔(b)/(c)〕が0.9~1.1である、前記[1]に記載の潤滑油組成物。
[3] 前記要件(B2)において、前記構成単位(a)が60~98モル%である、前記[1]または[2]に記載の潤滑油組成物。
[4] 前記要件(B3)において、極限粘度[IV]が0.05~0.25dl/gの範囲にある、前記[1]~[3]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[5] 清浄剤、分散剤、酸化防止剤、増粘剤、摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、色安定剤、防錆剤、金属不活化剤、流動点降下剤、および消泡剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤(C)をさらに含む前記[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[6] 脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)が、セバシン酸に由来する構成単位である、[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[7] 炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)が、1,4-ブタンジオールに由来する構成単位である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[8] リシノール酸に由来する構成単位(a)が、12-ヒドロキシステアリン酸またはそのエステル化合物に由来する構成単位である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[9] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油組成物からなるギヤー油。
[10] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油組成物からなる作動油。
[11] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油組成物からなるエンジン油。
[12] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油組成物からなるグリース。
[13] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油組成物からなる金属加工油。
本発明によると、鉱油に対する良好な溶解性を有するリシノール酸エステル共重合体を含む、摩擦係数低減性が良好な潤滑油組成物を提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「~」は、特に断りがなければ以上から以下を表す。
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)と、リシノール酸エステル共重合体(B)とを含む。以下に各構成成分につき詳述する。
[基油(A)]
本発明で用いる基油(A)は、下記要件(A1)を満たす。
<要件(A1)>
前記基油(A)は、鉱油を含む。基油(A)は、ポリα-オレフィン、ジエステル類、ポリアルキレングリコール等の合成油、動植物油などをさらに含んでもよい。
前記ジエステル類としては、例えば、ポリオールエステル、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケートなどが挙げられる。
基油(A)としては、例えば、鉱油のみからなる物、または鉱油と合成油とのブレンド物を用いてもよい。
前記鉱油は、一般に、炭化水素化合物を含む地下資源由来物質(例えば石油)を、脱ワックスなどの精製等の処理をして得られる物であり、精製の仕方により幾つかの等級に分類される。前記鉱油としては、一般に0.5~10容量%のワックス分を含む鉱油が使用される。鉱油として、例えば、水素分解精製法で製造された、流動点が低く、粘度指数が高い、イソパラフィンを主体とした組成を有する高度精製油を用いることもできる。40℃における動粘度が10~200mm2/sの鉱油が一般的に使用される。
鉱油は、前述のように、一般に、炭化水素化合物を含む地下資源由来物質を脱ワックスなどの精製等の処理をして得られる物であり、精製の仕方により幾つかの等級に分類される。例えば、その等級はAPI(米国石油協会)分類で規定されている。表1にAPI分類に基づき分類される各グループにおける潤滑油基剤の特性を示す。
Figure 0007508256000001
*1:ASTM D445(JIS K2238)に準じて測定
*2:ASTM D3238に準じて測定
*3:ASTM D4294(JIS K2541)に準じて測定
表1におけるポリα-オレフィンは、少なくとも炭素原子数10以上のα-オレフィンを含む原料モノマーを重合して得られる炭化水素系のポリマーである。ポリα-オレフィンとしては、1-デセンを重合して得られるポリデセンなどが例示される。
基油(A)として用いる鉱油としては、グループ(ii)またはグループ(iii)に属する鉱油が好ましい。グループ(i)に分類される鉱油よりもグループ(ii)およびグループ(iii)に分類される鉱油の方が、ワックス濃度が少ない傾向にある。
グループ(ii)またはグループ(iii)に属する鉱油の中でも40℃における動粘度が10~50mm2/sのものが好ましい。
また、基油(A)として、鉱油に加えて他の基油を用いる場合には、その他の基油としてグループ(iv)に属するポリα-オレフィンが好ましい。
[リシノール酸エステル共重合体(B)]
本発明に係るリシノール酸エステル共重合(B)〔以下、「共重合体(B)」と略記する場合がある。〕は、下記要件(B1)~(B3)を満たす共重合体、ポリエステル共重合体である。
<要件(B1)>
リシノール酸に由来する構成単位(a)、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)、および、炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)を含む。
〔リシノール酸に由来する構成単位(a)〕
本発明におけるリシノール酸に由来する構成単位(a)(以下、単に「構成単位(a)」と呼ぶ場合がある。)とは、リシノール酸(12-ヒドロキシ-cis-9-オクタデセン酸)もしくはリシノール酸誘導体由来の構成単位である。本発明では、共重合体(A)がこのような構成単位(a)を含むことにより、鉱油に対する溶解性が向上し、得られる潤滑油組成物が貯蔵安定性に優れ、また、高い摩擦係数低減性が期待できる。
リシノール酸の誘導体としては、例えばリシノール酸の縮合物、リシノール酸とカルボン酸とのエステル化物やリシノール酸とアルコール類とのエステル化物(例えばリシノール酸メチルエステル)、リシノール酸とエポキシ化合物との反応物、リシノール酸を水素化した12-ヒドロキシステアリン酸やその縮合物、12-ヒドロキシステアリン酸とカルボン酸あるいはアルコール類とのエステル化物(例えば12-ヒドロキシステアリン酸メチルエステル)など、重合反応によってリシノール酸に由来する構成単位(a)を与える各種化合物が挙げられる。
なお、本明細書において、構成単位(a)に対応する単量体成分、すなわち上記リシノール酸およびリシノール酸の誘導体を、「単量体成分(a')」と呼ぶことがある。
このように、リシノール酸の誘導体には、12-ヒドロキシステアリン酸およびそのエステル等も包含されることから、本発明でいう構成単位(a)は、具体的には、下記式(1)または下記式(2)で表される構成単位である。
Figure 0007508256000002
ここで、全構成単位(a)に占める12-ヒドロキシステアリン酸およびそのエステル誘導体に由来する構成単位の合計の割合、すなわち、全構成単位(a)に占める上記式(2)で表される構成単位の合計の割合は特に限定されず、リシノール酸に由来する構成単位(a)の合計(すなわち、上記式(1)で表される構成単位と上記式(2)で表される構成単位との合計)を100モル%としたときに、0~100モル%の範囲で任意である。しかし、本発明では、高い熱安定性を有する潤滑油組成物を得やすい傾向にあることから、リシノール酸に由来する構成単位(a)が、上記式(2)で表される構成単位を含むことが好ましい。その意味で上記割合は、好ましくは20~100モル%、さらに好ましくは、40~100モル%である。前記好ましい範囲にあることで、熱安定性および基油への分散性の点において優れる。また、前述の視点から、リシノール酸に由来する構成単位(a)が、12-ヒドロキシステアリン酸またはそのエステル化合物に由来する構成単位であることは好ましい一形態である。もっとも、本発明の潤滑油組成物が、必ずしも高い熱安定性を要しない用途に供される場合、例えば冷凍機油などに用いられる場合には、上記割合は必ずしも上記好ましい範囲にある必要はなく、例えば、リシノール酸に由来する構成単位(a)が、上記式(1)で表される構成単位のみからなることを排除するものではない。
〔脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)〕
脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)(以下、単に「構成単位(b)」と呼ぶ場合がある。)は、脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸エステルに由来する。本発明にいう構成単位(b)は、具体的には、形式上、脂肪族ジカルボン酸に含まれる2つのカルボキシル基から-OHを除いてなる構造を有する構成単位である。
構成単位(b)を導く脂肪族ジカルボン酸が脂肪族であることは、得られる共重合体の生分解性を低下させないために好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、エステル重合反応が行われる系で反応性を有する官能基、例えば水酸基、をほかに有さない限り特に限定されず、一種単独でも二種以上を組み合わせてもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、マロン酸(炭素原子数3)、ジメチルマロン酸(炭素原子数5)、コハク酸(炭素原子数4)、グルタル酸(炭素原子数5)、アジピン酸(炭素原子数6)、2-メチルアジピン酸(炭素原子数7)、トリメチルアジピン酸(炭素原子数9)、ピメリン酸(炭素原子数7)、2,2-ジメチルグルタル酸(炭素原子数7)、3,3-ジエチルコハク酸(炭素原子数8)、スベリン酸(炭素原子数8)、アゼライン酸(炭素原子数9)、セバシン酸(炭素原子数10)などが挙げられる。一方、脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、上記脂肪族ジカルボン酸の各種エステルが挙げられる。
これらのうち、好ましくは炭素原子数6~12の脂肪族ジカルボン酸であり、特に好ましくはセバシン酸である。
なお、本明細書において、構成単位(b)に対応する単量体成分、すなわち上記脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸エステルを、「脂肪族ジカルボン酸成分(b')」と呼ぶことがある。
〔炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)〕
炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)(以下、単に「構成単位(c)」と呼ぶ場合がある。)は、具体的には、形式上、炭素原子数2~10のジオールに含まれる2つの水酸基から-Hを除いてなる構造を有する構成単位である。構成単位(c)を導く、炭素原子数2~10のジオールとしては、一種単独でも二種以上を組み合わせてもよく、具体的には以下の化合物が例示できる。
炭素原子数2~10のジオールとして、炭素原子数2~10の脂肪族ジオールが挙げられる。このような脂肪族ジオールの例として、1,2-エタンジオール(エチレングリコール:炭素原子数2)、1,3-プロパンジオール(トリメチレングリコール:炭素原子数3)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール:炭素原子数3)、1,4-ブタンジオール(テトラメチレングリコール:炭素原子数4)、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール(ネオペンチルグリコール:炭素原子数5)、1,6-ヘキサンジオール(ヘキサメチレングリコール:炭素原子数6)、1,8-オクタンジオール(オクタメチレングリコール:炭素原子数8)、1,9-ノナンジオール(ノナメチレングリコール:炭素原子数9)などが挙げられる。
このような脂肪族ジオールの中でも側鎖アルキル基含有グリコールとしては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2-ヘキシル-1,6-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、などが挙げられる。
上記のジオールの中でも特に好ましくは1,4-ブタンジオールである。
なお、本明細書において、構成単位(c)に対応する単量体成分、すなわち上記炭素原子数2~10のジオールを、「ジオール成分(c')」と呼ぶことがある。
以上の通り、本発明で用いられる共重合体(B)は、上記の構成単位(a)に加えて、上記の構成単位(b)および(c)をも含んでいる。
〔その他の構成単位〕
本発明で用いられる共重合体(B)は、上記の構成単位(a)~(c)のみで構成されることが好ましいが、本発明の効果を阻害しない限り、上記の構成単位(a)~(c)のいずれにも該当しない構成単位(以下、「その他の構成単位」)をさらに含んでもよい。
その他の構成単位としては、2,5-フランジカルボン酸などのフランジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、などの、上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')に該当しない各種ジカルボン酸やカルボン酸エステルに由来する構成単位、炭素原子数11以上の脂肪族ジオールに由来する構成単位、芳香族ジオールに由来する構成単位、トリメチロールエタン、グリセリン等の3価以上の多価アルコール、ブタントリカルボン酸、トリメリット酸、などの3価以上の多価カルボン酸、4-ヒドロキシフタル酸などのオキシジカルボン酸等が例示される。
なお、本明細書において、「その他の構成単位」に対応する単量体成分、すなわち、上述した上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')に該当しない各種ジカルボン酸やカルボン酸エステル、炭素原子数11以上の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール、3価以上の多価カルボン酸およびオキシジカルボン酸等を、「その他の単量体成分」と呼ぶことがある。
<要件(B2)>
上記構成単位(a)、(b)および(c)の合計を100モル%としたとき、上記構成単位(a)の含量が50~98モル%、好ましくは60~98モル%、上記構成単位(b)の含量が1~25モル%、好ましくは1~20モル%、上記構成単位(c)の含量が1~25モル%、好ましくは1~20モル%である。
このように上記構成単位(a)の含量の下限値は50モル%であるが、60モル%がより好ましく、65モル%がさらに好ましく、70モル%が特に好ましい。上記構成単位(a)の含量が50モル%以上であることは、適度な粘度を付与する点で好ましい。60モル%以上であると、得られる組成物の粘度特性と、貯蔵安定性すなわち基油の濁り性(ヘイズ)を改善する点でより好ましい。70モル%以上であると貯蔵安定性がとりわけ好ましい。これを踏まえると、上記構成単位(a)の含量は、好ましくは60~98モル%、より好ましくは70~98モル%である。
また、上記構成単位(b)と上記構成単位(c)とのモル比((b)/(c))が0.9~1.1であることが好ましい。
後述する製造方法において、リシノール酸もしくはリシノール酸誘導体、脂肪族ジカルボン酸および炭素原子数2~10のジオールを重合系に導入する比率を変更することで各構成単位の含量およびモル比((b)/(c))を上記範囲に調整可能である。
本発明に係る共重合体(B)は、上述したように上記構成単位(a)~(c)のみで構成されることが好ましいが、発明の効果を阻害しない限り、その他の構成単位を含んでいてもよい。共重合体(B)がその他の構成単位を含む場合、共重合体(B)におけるその他の構成単位の含量は、上記構成単位(a)~(c)とその他の構成単位との合計を100モル%として、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。
なお、共重合体(B)における上記構成単位(a)~(c)および「その他の構成単位」の含量は、NMRなど適当な手法により求めることができる。
<要件(B3)>
共重合体(B)の極限粘度[IV]が0.01~0.3dl/gの範囲にある。前記極限粘度[IV]は、好ましくは0.05~0.25dl/g、より好ましくは0.05~0.2dl/gである。上記範囲にあることで共重合体の作業性に優れ、得られる組成物の剪断安定性ほか各種物性に優れる。
上記共重合体(B)は、上記の構成単位(a)、(b)および(c)を導く化合物、すなわち、上記単量体成分(a')、上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')および上記ジオール成分(c')に対し、(a')が(c')の4倍以上となる仕込み量条件下でエステル重合反応を行うことで得られる。すなわち、上記セクション「リシノール酸に由来する構成単位(a)」で上述したリシノール酸もしくはリシノール酸誘導体と、上記「脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)」で上述した脂肪族ジカルボン酸もしくは脂肪族ジカルボン酸エステルと、上記セクション「炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)」で上述した炭素原子数2~10のジオールとを(a')が(c')の4倍以上となる仕込み量条件下で互いにエステル重合反応させることにより得られる。このエステル重合反応を、上記セクション「その他の構成単位」で上述した各種ジカルボン酸、カルボン酸エステル、炭素原子数11以上の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール、3価以上の多価カルボン酸、オキシジカルボン酸などの共存下で行うと、「その他の構成単位」をも含む共重合体(B)を得ることができる。
製造方法として、従来公知の方法である直接エステル化法、エステル交換法などを適用することができる。
直接エステル化法では、上記単量体成分(a')、上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')、上記ジオール成分(c')およびオプションの上記「その他の単量体成分」を常法により直接縮重合させることにより、共重合体を得ることができる。例えば、
上記単量体成分(a')と、
ジカルボン酸成分(上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')、および、上記セクション「その他の構成単位」で上述した各種ジカルボン酸)と、
ジオール(上記ジオール成分(c')、および、上記セクション「その他の構成単位」で上述した各種ジオール)と
を加圧下で昇温し、生成する縮合水を反応系外に除きながら低分子量の縮合物とした後、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物などの重縮合触媒の存在下に反応系内を減圧してジオールを系外に留去する。これにより、高分子量のポリエステル樹脂を製造することができる。なお、この例では、上記単量体成分(a')とジカルボン酸成分とジオールとを反応させる場合について触れたが、上記「その他の単量体成分」として3価以上の多価アルコールおよび/または3価以上の多価カルボン酸が共存する場合にも同様に行うことができる。
また、エステル交換法では、出発原料としてジカルボン酸の対応するジアルキルエステルを用いてもよい。この場合には、上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')として、対応するジアルキルエステルを採用し、上記単量体成分(a')、上記ジオール成分(c')およびオプションの上記「その他の単量体成分」とともに、常法により直接縮重合させることにより、共重合体を得ることができる。このとき、上記単量体成分(a')および/または上記セクション「その他の構成単位」で上述した各種ジカルボン酸についても、対応するアルキルエステルの形で用いてもよい。例えば、
上記単量体成分(a')と、
ジカルボン酸(上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')、および、上記セクション「その他の構成単位」で上述した各種ジカルボン酸)のジアルキルエステルと、
ジオール(上記ジオール成分(c')、および、上記セクション「その他の構成単位」で上述した各種ジオール)と
を常圧で昇温し、生成するアルキルアルコールを反応系外に除きながら低分子量の縮合物とした後、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物などの重縮合触媒の存在下に反応系内を減圧にしてジオールを系外に留去する。これにより、高分子量のポリエステル樹脂を製造することができる。なお、この例では、上記単量体成分(a')とジカルボン酸のジアルキルエステルとジオールとを反応させる場合について触れたが、上記「その他の単量体成分」として3価以上の多価アルコールおよび/または3価以上の多価カルボン酸が共存する場合にも同様に行うことができる。
なお、直接エステル化法およびエステル交換法におけるエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、上記に例示したような重縮合触媒を用いることが好ましい。
直接エステル化法、エステル交換法によるいずれの製造方法においても、反応系を均一な液状状態で保つために、反応温度が生成するオリゴマーおよびポリエステルの融点を下回らないように反応系を昇温しつつ反応を進めることが好ましい。さらに分子量(重量平均分子量)を上げる必要があれば、溶融重合で得られた共重合ポリエステル樹脂に固相重合を施し分子量を大きくすることもできる。
本発明の共重合体(B)は、リパーゼによるエステル重合反応によっても製造することができる。この方法では、上記単量体成分(a')、上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')、上記ジオール成分(c')およびオプションの上記「その他の単量体成分」を、リパーゼ存在下で縮重合させることにより、共重合体を得ることができる。リパーゼとしては、Burkholderia cepacia由来の固定化リパーゼ(例えば、ワコーケミカル株式会社製の、リパーゼPS-CアマノII(商品名)、PS-DアマノI(商品名)等)が好ましく、この場合、高温でもリパーゼが失活しにくいために、反応温度を90℃まで上げることができる。また、反応条件としては、バルク条件下において、攪拌機付き反応器によるバッチ法とすることが好ましい。また、反応時間としては、触媒濃度、重合温度などの条件によって異なるが、通常4~7日間である。
また、エステル重合反応は可逆反応であり、効率的な重合反応を進行させるためには、生成したアルコールや水を逐次除去することが好ましい。具体的には、反応系における圧力状態を減圧状態に維持したり、合成ゼオライト(例えば、モレキュラーシーブ4A)等の吸湿剤を反応系に非接触で設置した上で合成反応を実施したりすることが挙げられる。このような条件下において重合反応を実施することにより、単純かつ容易に重合反応を進行させることができ、共重合体(B)を効率よく合成することができる。
本発明においては、上記各エステル重合反応における上記単量体成分(a')、上記脂肪族ジカルボン酸成分(b')、上記ジオール成分(c')およびオプションの上記「その他の単量体成分」の仕込み量の割合は、共重合体(B)において達成すべき上記構成単位(a)、(b)、(c)および「その他の構成単位」の含量に応じて適宜調整することができる。
これらのようなエステル重合反応によって得られる共重合体は、そのままの形で共重合体(B)として採用してもよいが、さらに、従来公知の適当な方法を用いて水添反応を行うことにより、上記の構成単位(a)に含まれる二重結合の一部または全部につき水素付加を行ってもよい。例えば、まず、エステル重合反応によって、共重合体(B)のうち上記構成単位(a)として上記式(1)で表される構成単位を含む共重合体(B0)を調製し、その後、当該共重合体(B0)を部分的にあるいは完全に水添する等の処理を行ってもよく、そのような水添により得られた生成物を共重合体(B)として採用してもよい。
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)と共重合体(B)との合計を100質量%とした場合、共重合体(B)の含有量としては、0.05質量%以上である。共重合体(B)の含有量が0.05質量%以上であると、摩擦係数低減性が良好な潤滑油組成物が得られる。摩擦係数低減性をより良好とする観点からは、基油(A)と共重合体(B)との合計を100質量%とした場合、共重合体(B)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。また、鉱油を含む基油(A)に対する相溶性をより優れたものとする観点からは、基油(A)と共重合体(B)との合計を100質量%とした場合、共重合体(B)の含有量は、通常5.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。
<その他の成分(添加剤)>
また、本発明の潤滑油組成物は、上記基油(A)および共重合体(B)以外の他の成分(添加剤)が含まれていてもよい。他の成分としては、後述する材料のいずれか1以上が任意に挙げられる。
本発明の潤滑油組成物が、添加剤を含有する場合の含有量は特に限定されないが、基油(A)と添加剤との合計を100質量%とした場合に、添加剤の含有量としては、通常0質量%を超え、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。また、添加剤の含有量としては、通常40質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
このような添加剤の一つが清浄剤である。エンジン潤滑の分野で用いられる従来の清浄剤の多くは、塩基性金属化合物(典型的にはカルシウム、マグネシウムやナトリウムなどのような金属をベースとする、金属水酸化物、金属酸化物や金属炭酸塩)が存在することによって、潤滑油に塩基性またはTBNを付与する。このような金属性の過塩基性清浄剤(過塩基性塩や超塩基性塩ともいう)は、通常、金属と、該金属と反応する特定の酸性有機化合物との化学量論に従って中和のために存在すると思われる量を超える金属含有量によって特徴づけられる単相(single phase)均一ニュートン系(homogeneous Newtonian systems)である。過塩基性の材料は、酸性の材料(典型的には、二酸化炭素などのような無機酸や低級カルボン酸)を、酸性の有機化合物(基質ともいう)および化学量論的に過剰量の金属塩の混合物と、典型的には、酸性の有機基質にとって不活性な有機溶媒(例えば鉱油、ナフサ、トルエン、キシレンなど)中で、反応させることによって、典型的には調製される。フェノールやアルコールなどの促進剤が、任意に少量存在する。酸性の有機基質は、通常、ある程度の油中の溶解性を付与するために、充分な数の炭素原子を有するだろう。
このような従来の過塩基性材料およびこれらの調製方法は、当業者に周知である。スルホン酸、カルボン酸、フェノール、リン酸、およびこれら二種以上の混合物の塩基性金属塩を作製する技術を記載している特許としては、米国特許第2,501,731号;第2,616,905号;第2,616,911号;第2,616,925号;第2,777,874号;第3,256,186号;第3,384,585号;第3,365,396号;第3,320,162号;第3,318,809号;第3,488,284号;および第3,629,109号が挙げられる。サリキサレート[salixarate]清浄剤は米国特許第6,200,936号および国際公開第01/56968号に記載されている。サリゲニン清浄剤は米国特許第6,310,009号に記載されている。
潤滑油組成物中の典型的な清浄剤の量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常1~10質量%、好ましくは1.5~9.0質量%、より好ましくは2.0~8.0質量%である。なお、該量はすべて、油がない(すなわち、それらに従来供給される希釈油がない)状態をベースにする。
添加剤の他のもう一つは分散剤である。分散剤は潤滑油の分野では周知であり、主に、無灰型分散剤、ポリマー分散剤として知られるものが挙げられる。無灰型分散剤は、比較的分子量の大きい炭化水素鎖に付いた極性基によって特徴付けられる。典型的な無灰分散剤として、スクシンイミド分散剤としても知られる、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドなどのような窒素含有分散剤が挙げられる。スクシンイミド分散剤は米国特許第4,234,435号および第3,172,892号にさらに充分に記載されている。無灰分散剤の他のもう一つのクラスは、グリセロール、ペンタエリスリトールやソルビトールなどの多価脂肪族アルコールとヒドロカルビルアシル化剤との反応によって調製される高分子量エステルである。このような材料は米国特許第3,381,022号により詳細に記載されている。無灰分散剤の他のもう一つのクラスはマンニッヒ塩基である。これらは、高分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドなどのようなアルデヒドの縮合によって形成される材料であり、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。他の分散剤としては多価分散性添加剤が挙げられ、一般的に、上記ポリマーに分散特性を付与する極性の官能性を含む、炭化水素をベースとしたポリマーである。
分散剤は、様々な物質のいずれかと反応させることによって後処理がされていてもよい。これらとしては、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、炭化水素で置換された無水コハク酸類、ニトリル類、エポキシド類、ホウ素化合物類、およびリン化合物類があげられる。このような処理を詳述する参考文献が、米国特許第4,654,403号に載っている。本発明の組成物中の分散剤の量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、典型的には、1~10質量%、好ましくは1.5~9.0質量%、より好ましくは2.0~8.0質量%となり得る(すべて、油がない状態をベースとする)。
別の成分としては酸化防止剤である。酸化防止剤はフェノール性の酸化防止剤を包含し、これは、2~3個のt-ブチル基を有するブチル置換フェノールを含んでいてもよい。パラ位は、ヒドロカルビル基または2個の芳香環を結合する基によって占有されてもよい。後者の抗酸化剤は米国特許第6,559,105号により詳細に記載されている。酸化防止剤は、ノニレート化された[nonylated]ジフェニルアミンなどのような芳香族アミンも含む。他の酸化防止剤としては、硫化オレフィン類、チタン化合物類、およびモリブデン化合物類が挙げられる。例えば米国特許第4,285,822号には、モリブデンと硫黄を含む組成物を含む潤滑油組成物が開示されている。酸化防止剤の典型的な量は、具体的な酸化防止剤およびその個々の有効性にもちろん依存するだろうが、例示的な合計量は、0.01~5質量%、好ましくは0.15~4.5質量%、より好ましくは0.2~4質量%となり得る。さらに、1以上の酸化防止剤が存在していてもよく、これらの特定の組合せは、これらを組み合わせた全体の効果に対して、相乗的でなり得る。
増粘剤(ときに粘度指数改良剤または粘度調整剤ともいう)は、潤滑油添加剤組成物に含まれてもよい。増粘剤は通常ポリマーであり、ポリイソブテン類、ポリメタクリル酸エステル類、ジエンポリマー類、ポリアルキルスチレン類、エステル化されたスチレン-無水マレイン酸共重合体類、アルケニルアレーン共役ジエン共重合体類およびポリオレフィン類、水添SBR(スチレンブタジエンラバー)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)等が挙げられる。分散性および/または抗酸化性も有する多機能性増粘剤は公知であり、任意に用いてもよい。
添加剤の他のもう一つは、磨耗防止剤である。磨耗防止剤の例として、チオリン酸金属塩類、リン酸エステル類およびそれらの塩類、リン含有のカルボン酸類・エステル類・エーテル類・アミド類;ならびに亜リン酸塩などのようなリン含有磨耗防止剤/極圧剤が挙げられる。特定の態様において、リンの磨耗防止剤は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常0.01~0.2質量%、好ましくは0.015~0.15質量%、より好ましくは0.02~0.1質量%、さらに好ましくは0.025~0.08質量%のリンを与える量で存在してもよい。
多くの場合、上記磨耗防止剤はジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDP)である。典型的なZDPは、11質量%のP(オイルがない状態をベースに算出)を含んでもよく、好適な量として0.09~0.82質量%を挙げてもよい。リンを含まない磨耗防止剤としては、ホウ酸エステル類(ホウ酸エポキシド類を含む)、ジチオカルバメート化合物類、モリブデン含有化合物類、および硫化オレフィン類が挙げられる。
潤滑油組成物に任意に用いてもよい他の添加剤としては、極圧剤、摩擦調整剤、色安定剤、防錆剤、金属不活化剤、流動点降下剤および消泡剤が挙げられ、それぞれ従来公知の量で用いてもよい。
<潤滑油組成物の製造方法>
本発明の潤滑油組成物は、従来公知の方法で、任意に他の所望する成分とともに、基油(A)および重合体(B)を混合することにより調製することができる。
[潤滑油組成物の用途]
本発明に係る潤滑油組成物は、鉱油に対する良好な溶解性を有するリシノール酸エステル共重合体を含むとともに、摩擦係数低減性が良好であるため、各用途の潤滑油組成物として有用である。
具体的な用途としては、例えば、ギヤー油、作動油、エンジン油、グリース、機械加工油、摺動面油、電気絶縁油、タービン油、ギヤー油、エアーコンプレッサー油、圧縮機油、真空ポンプ油、軸受け油、熱媒体油、ミスト油、冷凍機油、ロックドリル油が好ましい。ここで、上記エンジン油として、2サイクルエンジン油、ガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油などが挙げられる。また、上記機械加工油として、例えば、切削油、研削油、打ち抜き油、絞り加工油、プレス油、引き抜き油、圧延油、鍛造油等が挙げられる。
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[共重合体の物性]
<共重合体の組成>
共重合体の組成は、以下の手順で分析した。
1)日本電子(株)製ECA500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒は重水素化クロロホルムを使用した。試料濃度を35mg/0.5mL、測定温度は50℃とした。
観測核は1H(500MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は6.3μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は8.5秒、積算回数は394回とし、テトラメチルシランの水素シグナルをケミカルシフトの基準値として測定した。各ピークは、常法によりアサインした。
2)得られた測定データを解析し、ポリエステルを構成するカルボン酸およびアルコール成分を同定し、それらの構成比率を求めた。
<極限粘度(IV)>
得られたポリエステルを、フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンとの質量比1:1の混合溶媒に溶解させて溶液を調製した。得られた溶液の25℃における流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定し、下記式に当てはめて極限粘度を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+KηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
K:定数(試料濃度Cの異なるサンプル(3点以上)の比粘度ηSPを下記式に基づいて測定し、横軸に試料濃度C、縦軸にηSP/Cをプロットしたときのグラフの直線の傾き)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
ηSP=(t-t0)/t0
[潤滑油組成物の物性]
実施例および比較例で得られた潤滑油組成物の各種物性は、以下のようにして測定した。
<基油溶解性>
リシノール酸エステル共重合体と鉱油の混合比率を1/99となるように潤滑油組成物を100質量部調整した後、直後および1週間後の溶液の均一性、透明性を目視評価することにより行った。析出物、浮遊物、相分離が認められなかったものを合格とした。
<摩擦低減効果>
「高速往復動摩擦試験機TE77」(Phoenix Tribology社製)を使用し、試験プレート(材質:SUJ-2、形状:長さ58mm×幅37mm×厚さ4mm)、及び試験ボール(材質:SUJ-2、形状:直径10mm)を用いて、振幅8mm、周波数5Hz、油温80℃、荷重範囲50Nの条件で10分間慣らし運転を行った後、振幅10mm、周波数5Hz、油温80℃、荷重300N、運転時間30分間の条件で摩擦係数を測定することによって摩擦低減効果を評価した。
[重合例1]
エステル化反応槽へ12-ヒドロキシステアリン酸5.85kg(79.0質量部)、セバシン酸0.66kg(8.9質量部)、1,4-ブタンジオール0.88kg(11.8質量部)にテトラテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの20wt%水溶液を2.9g(0.04質量部)加え、30分かけ常温から200℃まで昇温した。200℃へ到達した後、撹拌を開始し、そのまま200℃で5.0時間保持して、エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、重縮合反応槽へ移液し、200℃下、チタンテトラブトキシドを0.02kg(0.2質量部)加え、60分かけて温度を210℃まで昇温、圧力を1.0Torr以下まで減圧し、重縮合反応を4.0時間行った。重縮合反応を終了し、窒素流通して系内を常圧に戻した後、5.0分以内に反応槽からポリエステルを抜き出した。
[重合例2]
エステル化反応槽へ12-ヒドロキシステアリン酸メチル6.71kg(88.2質量部)、セバシン酸0.24kg(3.2質量部)、1,4-ブタンジオール0.64kg(8.4質量部)にテトラテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの20wt%水溶液を2.9g(0.04質量部)加え、30分かけ常温から200℃まで昇温した。200℃へ到達した後、撹拌を開始し、そのまま200℃で5.0時間保持して、エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、重縮合反応槽へ移液し、200℃下、チタンテトラブトキシドを0.02kg(0.2質量部)加え、60分かけて温度を210℃まで昇温、圧力を1.0Torr以下まで減圧し、重縮合反応を10.0時間行った。重縮合反応を終了し、窒素流通して系内を常圧に戻した後、5.0分以内に反応槽からポリエステルを抜き出した。
[重合例3]
エステル化反応槽へ12-ヒドロキシステアリン酸メチル6.12kg(79.8質量部)、セバシン酸0.66kg(8.5質量部)、1,4-ブタンジオール0.88kg(11.4質量部)にテトラテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの20wt%水溶液を2.9g(0.04質量部)加え、30分かけ常温から200℃まで昇温した。200℃へ到達した後、撹拌を開始し、そのまま200℃で5.0時間保持して、エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、重縮合反応槽へ移液し、200℃下、チタンテトラブトキシドを0.02kg(0.2質量部)加え、60分かけて温度を210℃まで昇温、圧力を1.0Torr以下まで減圧し、重縮合反応を5.0時間行った。重縮合反応を終了し、窒素流通して系内を常圧に戻した後、5.0分以内に反応槽からポリエステルを抜き出した。
[重合例4]
エステル化反応槽へ12-ヒドロキシステアリン酸メチル6.12kg(79.9質量部)、セバシン酸0.66kg(8.6質量部)、1,4-ブタンジオール0.88kg(11.5質量部)にテトラテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの20wt%水溶液を2.9g(0.04質量部)加え、30分かけ常温から200℃まで昇温した。200℃へ到達した後、撹拌を開始し、そのまま200℃で5.0時間保持して、エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、重縮合反応槽へ移液し、200℃下、60分かけて圧力を2.0Torr以下まで減圧し、窒素流通して系内を常圧に戻した後、5.0分以内に反応槽からポリエステルを抜き出した。
[重合例5]
エステル化反応槽へリシノール酸メチル13.8kg(63.0質量部)、セバシン酸4.5kg(20.4質量部)、1,4-ブタンジオール3.4kg(15.5質量部)にテトラテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの20wt%水溶液を8.1g(0.04質量部)加え、30分かけ常温から200℃まで昇温した。200℃へ到達した後、撹拌を開始し、そのまま200℃で5.0時間保持して、エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、重縮合反応槽へ移液し、200℃下、チタンテトラブトキシドを0.26kg(1.2質量部)加え、60分かけて圧力を6.6Torrまで減圧し、重縮合反応を9.0時間行った。重縮合反応を終了し、窒素流通して系内を常圧に戻した後、10分以内に反応槽からポリエステルを抜き出した。
[重合例6]
エステル化反応槽へ12-ヒドロキシステアリン酸13.8kg(63.0質量部)、セバシン酸4.5kg(20.4質量部)、1,4-ブタンジオール3.4kg(15.5質量部)にテトラテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの20wt%水溶液を8.1g(0.04質量部)加え、30分かけ常温から200℃まで昇温した。200℃へ到達した後、撹拌を開始し、そのまま200℃で5.0時間保持して、エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、重縮合反応槽へ移液し、200℃下、チタンテトラブトキシドを0.26kg(1.2質量部)加え、60分かけて圧力を6.6Torrまで減圧し、重縮合反応を4.0時間行った。重縮合反応を終了し、窒素流通して系内を常圧に戻した後、10分以内に反応槽からポリエステルを抜き出した。
[重合例7]
エステル化反応槽へ12-ヒドロキシステアリン酸4.63kg(60.9質量部)、セバシン酸1.56kg(20.5質量部)、1,4-ブタンジオール1.39kg(18.3質量部)にテトラテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの20wt%水溶液を2.9g(0.04質量部)加え、30分かけ常温から200℃まで昇温した。200℃へ到達した後、撹拌を開始し、そのまま200℃で5.0時間保持して、エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、重縮合反応槽へ移液し、200℃下、チタンテトラブトキシドを0.02kg(0.2質量部)加え、60分かけて温度を210℃まで昇温、圧力を1.0Torr以下まで減圧し、重縮合反応を3.0時間行った。重縮合反応を終了し、窒素流通して系内を常圧に戻した後、5.0分以内に反応槽からポリエステルを抜き出した。
上記重合例で得た重合体の物性を表2に示す。
Figure 0007508256000003
[実施例1~4、参考例5~7、比較例1]
上記の重合例で得られたリシノール酸エステル共重合体を、APIグループ(iii)基油(「Yubase-4」、SK Lubricants社製、100℃における動粘度:4.21mm2/s、粘度指数:123)に1.0質量パーセント添加し、潤滑油組成物を調製した。評価結果を表3に示す。
Figure 0007508256000004
本発明によれば、リシノール酸エステル共重合体(B)を含む潤滑油組成物は、摩擦係数低減性に優れるので、例えば、潤滑機械の燃費向上に寄与することが可能な摩擦調整剤を提供することができる。

Claims (11)

  1. 鉱油を含む潤滑油基油(A)と下記の(B1)~(B3)を満たすリシノール酸エステル共重合体(B)とを含む潤滑油組成物であり、前記基油(A)と前記共重合体(B)との合計を100質量%とした場合、共重合体(B)を0.05質量%以上0.5質量%以下含む潤滑油組成物であり、前記潤滑油基油(A)は、API(米国石油協会)分類のグループ(ii)またはグループ(iii)の鉱油である潤滑油組成物
    (B1)リシノール酸に由来する構成単位(a)、炭素原子数6~12の脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)、および炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)を含む;
    (B2)前記構成単位(a)、(b)および(c)の合計を100モル%としたとき、前記構成単位(a)の含量が75~98モル%、前記構成単位(b)の含量が1~20モル%、前記構成単位(c)の含量が1~20モル%であり、前記構成単位(b)と前記構成単位(c)とのモル比〔(b)/(c)〕が0.9~1.1である
    (B3)極限粘度[IV]が0.01~0.3dl/gの範囲にある。
  2. 前記要件(B3)において、極限粘度[IV]が0.05~0.25dl/gの範囲にある、請求項に記載の潤滑油組成物。
  3. 清浄剤、分散剤、酸化防止剤、増粘剤、摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、色安定剤、防錆剤、金属不活化剤、流動点降下剤、および消泡剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤(C)をさらに含む請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
  4. 脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)が、セバシン酸に由来する構成単位である、請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
  5. 炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)が、1,4-ブタンジオールに由来する構成単位である、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
  6. リシノール酸に由来する構成単位(a)が、12-ヒドロキシステアリン酸またはそのエステル化合物に由来する構成単位である、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
  7. 前記請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物からなるギヤー油。
  8. 前記請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物からなる作動油。
  9. 前記請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物からなるエンジン油。
  10. 前記請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物からなるグリース。
  11. 前記請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物からなる金属加工油。
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