JP7507575B2 - 粘着フィルム - Google Patents

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本発明は、粘着フィルムに関する。
レーザ光による加工技術は、各種材料の切断や孔あけ等に広く用いられている。加工に使用するレーザの代表例として、炭酸ガスレーザが挙げられる。かかるレーザ加工の一態様として、補助材料としての粘着フィルムを被着体である加工対象物(workpiece、以下「ワーク」ともいう。)に貼り付けておき、これにレーザ光を照射して上記粘着フィルムごとワークをレーザ加工する態様が例示される。例えば、特許文献1には、銅張板の銅箔面に補助シートの粘着面を圧着し、該補助シートの上から炭酸ガスレーザを照射して上記銅張板に孔をあけることにより孔信頼性や作業性等を向上させる技術が記載されている。
近年、短波長のレーザ光を用いた加工技術に対する関心が高まっている。例えば、炭酸ガスレーザ(主波長9.3μm~10.6μm程度)に代えて、主波長0.9μm~1.2μm程度の短波長レーザを用いてレーザ加工を行いたいとの要請がある。短波長のレーザ光を用いることにより、加工に必要なエネルギーを効率よくワークに加えることができる。このことは加工のスピードアップや微細加工性の観点から有利となり得る。
特開2004-235194号公報 特開2013-18963号公報 特開2013-18964号公報
しかし、これまで炭酸ガスレーザによるレーザ加工に利用されてきた粘着フィルムを短波長レーザによる加工にそのまま転用すると、該粘着フィルムを高品質に切断することができず、レーザ加工の効率や精度が不足する場合があった。そこで、特許文献2,3には、短波長レーザで切断される用途に適した粘着フィルムに関し、主波長付近のレーザ光吸収率を高めるためにカーボンブラックや金属化合物粉末等のレーザ光吸収剤を用いることが開示されている。
一方、製品の品質管理の容易性や生産性向上の観点から、粘着フィルムを貼り付けた状態で加工されるワークの表面状態を、該粘着フィルム越しに観察することができれば好都合である。しかし、短波長レーザで切断される用途向けの従来の粘着フィルムでは、該粘着フィルム越しでのワーク表面の視認性が考慮されておらず、概して濃色または不透明な性状を呈する傾向にあるため、粘着フィルムを貼り付けた状態ではワーク表面の外観品質検査等を行うことが困難となることがあった。
そこで本発明は、主波長900nm~1200nm程度の短波長レーザで切断される用途にも適した粘着フィルムであって、該粘着フィルム越しに被着体表面の状態を容易に観察することが可能な粘着フィルムを提供することを目的とする。
この明細書によると、基材としての樹脂フィルムと、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層と、を備えた粘着フィルムが提供される。上記の粘着フィルムは、波長550nmにおける光線透過率が40%以上であり、波長1050nmにおける光線吸収率が20%以上である。
このように構成された粘着フィルムは、近赤外線領域である波長1050nmにおける光線吸収率が20%以上であることにより、主波長が900nm~1200nmの範囲にあるレーザ光(以下、「特定レーザ光」ともいう。)を効率よく吸収することができる。したがって、上記吸収された特定レーザ光のエネルギーを利用して上記粘着フィルムを効果的に切断することができる。また、上記粘着フィルムは、可視光領域である波長550nmにおける光線透過率が40%以上であることにより、該粘着フィルムを通してワーク表面を容易に(例えば目視により)観察し得る。
ここに開示される粘着フィルムには、必要に応じて近赤外線吸収剤を含有させることができる。粘着フィルムに近赤外線吸収剤を含有させることにより、レーザ光吸収率を高め、上記粘着フィルムが貼り付けられた被着体のレーザ加工性を高めることができる。良好なレーザ光吸収性と所望の粘着特性との両立を容易とする観点から、少なくとも基材に近赤外線吸収剤を含有させることが好ましい。
いくつかの態様において、上記近赤外線吸収剤としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種を好ましく利用することができる。可視光領域波長の光線透過率を高める観点、および材料の安定入手性の観点から、好ましい近赤外線吸収剤として、銅、鉄およびマンガンの複合酸化物(すなわち、CuとFeとMnとを構成金属元素として含む酸化物。以下、「CFM複合酸化物」と表記することがある。)、窒化チタン、酸化タングステン粒子が例示される。
上記近赤外線吸収剤としてCFM複合酸化物を利用する場合、上記CFM複合酸化物は、例えば、基材の0.1重量%以上1.7重量%未満程度の含有量で用いられ得る。また、上記近赤外線吸収剤として窒化チタンを利用する場合、上記窒化チタンは、例えば、基材の0.1重量%超程度の含有量で用いられ得る。また、上記近赤外線吸収剤として酸化タングステン粒子を利用する場合、上記酸化タングステン粒子は、例えば、基材の1重量%を超えて40重量%未満程度の含有量で用いられ得る。ここに開示される粘着フィルムは、このような近赤外線吸収剤とその含有量との組合せにおいて好ましく実施され得る。
いくつかの態様において、上記基材は、非ハロゲン系樹脂フィルムであることが好ましい。非ハロゲン系樹脂フィルムは、例えば特定レーザ光の照射による加熱を利用したレーザ切断加工にともない粘着フィルムが分解消失する際にも、有害なハロゲンガスを発生させることなく、好適に使用し得る。
いくつかの態様において、上記基材は、ポリオレフィン樹脂フィルムまたはポリエステル樹脂フィルムである。このような基材を備えた粘着フィルムは、例えばレーザ光で切断した際に、切断幅を制御しやすく、かつ形状精度のよい切断端面を形成しやすいので好ましい。
ここに開示される粘着フィルムのいくつかの態様において、上記基材は、波長550nmにおける光線透過率が40%以上であり、波長900nmから1200nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上である。このような基材を備えた粘着フィルムは、特定レーザ光を効率よく吸収することができ、上記吸収された特定レーザ光のエネルギーを利用して上記粘着フィルムを効果的に切断することができる。また、上記基材を備えた粘着フィルムは、可視光領域で透明性を有する傾向にあり、該粘着フィルムを貼り付けた状態で、加工されるワークの表面状態を該粘着フィルム越しに視認することが可能となる。
いくつかの態様において、上記基材の厚さは100μm未満が好ましい。かかる厚さの基材を有する粘着フィルムは、レーザ加工性や経済性の観点から好ましい。
ここに開示される粘着フィルムのいくつかの態様において、該粘着フィルムをステンレス鋼板に貼り付けて30分後に引張速度0.3m/分の条件で測定される低速剥離強度(以下、単に「低速剥離強度」ともいう。)は、0.1N/20mm以上である。このような粘着フィルムは、ワークの変形や加工に耐えて該ワークに適切に密着した状態を維持する観点から好ましい。
ここに開示される粘着フィルムは、上述のように、特定レーザ光の吸収性がよく、かつ透明性を有する構成、すなわち加工対象物表面の視認性に優れた構成とすることができる。したがって、上記粘着フィルムの他の側面として、ここに開示されるいずれかの粘着フィルムからなり、主波長900nm~1200nmのレーザ光で切断して用いられるレーザ切断用粘着フィルムが提供される。
一実施形態に係る粘着フィルムを模式的に示す断面図である。 他の一実施形態に係る粘着フィルムを模式的に示す断面図である。 さらに他の一実施形態に係る粘着フィルムを模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書において「光線吸収率」または「レーザ光吸収率」とは、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U-4100」またはその相当品)を用いて測定されるサンプルの透過率T(%)および反射率R(%)から、以下の式(I)により算出される値をいうものとする。
吸収率A(%)=100(%)-T(%)-R(%) (I)
この明細書において「波長900nm~1200nmの範囲におけるレーザ光吸収率」とは、当該波長範囲における最小のレーザ光吸収率を指すものとする。以下の説明において「レーザ光吸収率」とは、特記しない場合、上記のように波長900nm~1200nmの範囲における最小のレーザ光吸収率をいう。また、本明細書において光線吸収率またはレーザ光吸収率とは、特記しない場合、粘着フィルムまたは基材の背面(特定波長の近赤外線または特定レーザ光が照射される側の面、すなわちワークに貼り付けられる面とは反対側の面)の近赤外線吸収率またはレーザ光吸収率をいう。
この明細書において「近赤外線吸収剤」とは、当該吸収剤を用いない場合に比べて、波長1050nmにおける光線吸収率を上昇させる作用を発揮し得る材料をいう。また、この明細書において「特定吸収剤」とは、上記近赤外線吸収剤のうち、比熱900J/kg・K未満かつ熱伝導率200W/m・K未満の金属を構成元素として有するものをいう。この明細書において、近赤外線吸収剤(特定吸収剤であり得る。)を含む層を「レーザ光吸収層」ということがある。
ここに開示される粘着フィルムは、基材としての樹脂フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。上記基材の一方の面にのみ粘着剤層を有する片面粘着フィルム(片面接着性の粘着フィルム)の形態であってもよく、上記基材の一方の面および他方の面にそれぞれ粘着剤層を有する両面粘着フィルム(両面接着性の粘着フィルム)の形態であってもよい。以下、片面粘着フィルムに適用する場合を主な例として本発明をより具体的に説明するが、ここに開示される技術の適用対象を限定する意図ではない。
一実施形態に係る粘着フィルムの構成を図1に模式的に示す。この粘着フィルム1は、基材としての樹脂フィルム10と、その一方の面10Aに設けられた粘着剤層20とを備え、該粘着剤層20を被着体に貼り付けて使用される。好ましい一態様では、樹脂フィルム10の他方の面(背面)10Bが剥離性を有する表面(剥離面)となっている。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の粘着フィルム1は、粘着剤層20の表面(粘着面)20Aが樹脂フィルム10の背面10Bに当接するようにロール状に巻回され、これにより表面20Aが保護された形態であり得る。あるいは、図2に示す粘着フィルム1のように、粘着剤層20の表面20Aが、少なくとも粘着剤層20側が剥離面となっている剥離ライナー30により保護された形態であってもよい。
この実施形態の粘着フィルム1は、樹脂フィルム10の全体または一部として、近赤外線吸収剤を含有するレーザ光吸収層42を有する。レーザ光吸収層42は、典型的には、近赤外線吸収剤402を含有する樹脂組成物からなる層である。図1、2に示す例では、樹脂フィルム10がレーザ光吸収層42からなる単層構造であるが、樹脂フィルム10の構造は単層構造に限定されない。例えば図3に示す粘着フィルム2のように、樹脂フィルム10が複数の層(ここでは、粘着剤層20側に配置された第一層42およびその背面側に配置された第二層44)を含む積層体であって、それらのうち少なくとも一つがレーザ光吸収層42であってもよい。図3に示す例では、第一層42は近赤外線吸収剤402を含む樹脂組成物からなる層(レーザ光吸収層)であり、第二層44は近赤外線吸収剤を含まない樹脂組成物からなる層である。
<粘着フィルム>
ここに開示される粘着フィルムは、波長550nmにおける光線透過率が40%以上である。可視光領域である波長550nmにおける光線透過率が40%以上であると、粘着フィルム越しにワークの表面状態を視認しやすい。粘着フィルム越しにワークを観察し得ることは、加工対象箇所の確認や粘着フィルムの貼付け状態の確認に役立ち得る。粘着フィルム越しのワークの視認性を高める観点から、いくつかの態様において、粘着フィルムの波長550nmにおける光線透過率は、例えば40%超であってよく、50%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。上記光線透過率の上限は特に制限されない。粘着フィルムの波長550nmにおける光線透過率は、100%であってもよいが、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよい。
ここに開示される粘着フィルムは、波長1050nmにおける光線吸収率が20%以上である。波長1050nmにおける光線吸収率が所定以上である粘着フィルムは、該波長およびその前後の近赤外線領域において良好な吸収性を示す傾向にある。したがって、波長550nmにおける光線透過率が40%以上であり、かつ波長1050nmにおける光線吸収率が20%以上である粘着フィルムによると、該粘着フィルム越しのワーク表面の視認性と特定レーザ光の吸収性とを好適に両立することができる。いくつかの態様において、粘着フィルムの波長1050nmにおける光線吸収率は、例えば25%以上であってよく、30%以上でもよく、45%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。粘着フィルムの波長1050nmにおける光線吸収率は、100%であってもよいが、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよい。
ここに開示される粘着フィルムは、波長900nm~1200nm(例えば1000nm~1100nm)の範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上であることが好ましい。このレーザ光吸収率は、粘着フィルムに照射された特定レーザ光のうち、実際に粘着フィルムに吸収されるレーザ光の割合を意味する。粘着フィルムのレーザ光吸収率が20%以上であると、特定レーザ光の照射による加熱効率が高く、粘着フィルムを適切に分解消失させることができる。いくつかの態様において、粘着フィルムのレーザ光吸収率は、例えば25%以上であってよく、30%以上でもよく、45%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。粘着フィルムのレーザ光吸収率は、100%であってもよいが、波長550nmにおける良好な光線透過率との両立を容易とする観点から、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよい。
ここに開示される粘着フィルムの近赤外線波長領域における透過率および反射率は特に限定されない。いくつかの態様において、粘着フィルムは、波長1050nmにおける光線透過率が70%未満であってよく、例えば50%未満でもよい。また、いくつかの態様において、粘着フィルムは、波長1050nmにおける光線反射率が50%未満であってよく、例えば40%未満でもよく、20%未満でもよく、10%未満でもよい。上記透過率および上記反射率の少なくとも一方(好ましくは両方)を満たす粘着フィルムは、ここに開示される好ましい光線吸収率を有するものとなりやすい。
また、いくつかの態様において、粘着フィルムは、波長900nm~1200nm(例えば1000nm~1100nm)の範囲でレーザ光吸収率が最小となる波長における特定レーザ光の透過率が70%未満であってよく、例えば50%未満でもよい。また、いくつかの態様において、粘着フィルムは、上記レーザ光吸収率が最小となる波長における特定レーザ光の反射率が50%未満であってよく、例えば40%未満でもよく、20%未満でもよく、10%未満でもよい。上記透過率および上記反射率の少なくとも一方(好ましくは両方)を満たす粘着フィルムは、ここに開示される好ましい光線吸収率を有するものとなりやすい。
(近赤外線吸収剤)
ここに開示される粘着フィルムのレーザ光吸収率を調節するために、必要に応じて近赤外線吸収剤を用いることができる。近赤外線吸収剤としては、波長1050nmにおける光線吸収率を上昇させる作用を発揮し得る各種の材料を用いることができる。粘着フィルムに含まれる近赤外線吸収剤の種類は、一種類でもよく、二種類以上でもよい。二種類以上の近赤外線吸収剤を含む粘着フィルムにおいて、それらの近赤外線吸収剤は、ブレンドして用いられてもよく、粘着フィルム内の異なる層にそれぞれ含有されていてもよい。
ここに開示される粘着フィルムに用いられ得る近赤外線吸収剤の例としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、ジルコニウム、タングステン、マンガン、鉄、銅、銀、金、亜鉛、モリブデン、クロムおよびこれらを主成分とする合金等の金属;上記金属の酸化物(例えば、CFM複合酸化物、酸化タングステン粒子)、窒化物(例えば窒化チタン)等の金属化合物;フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、アミニウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、ジイモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、芳香族ジチオール系金属錯体等の有機化合物;等が挙げられる。可視光領域における透明性の観点から、このなかでも、金属酸化物、金属窒化物、およびそれらの混合物が好ましい。可視光領域波長の光線透過率を高める観点、および材料の安定入手性の観点から、好ましい近赤外線吸収剤の例として、CFM複合酸化物、窒化チタン、酸化タングステン粒子が挙げられる。樹脂組成物中に近赤外線吸収剤を含むレーザ光吸収層において、該近赤外線吸収剤としては、上記レーザ光吸収層を構成する樹脂成分よりも熱分解温度の高い材料を用いることが好ましい。
本発明に使用される酸化タングステン粒子としては、例えば、国際公開第2005/037932号、特開2005-187323号公報等に記載されるような、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表されるタングステン酸化物の微粒子、または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物の微粒子の微粒子である。
粉末状の近赤外線吸収剤(近赤外線吸収剤粉末)を用いる場合、該粉末を構成する粒子の形状は特に限定されず、例えば薄片状、球状、針状、多面体状、不規則形状等であり得る。通常は、薄片状、球状または針状の近赤外線吸収剤粉末を好ましく採用し得る。近赤外線吸収剤粉末の平均粒径は特に限定されず、例えば0.01μm以上50μm以下であり得る。いくつかの態様において、近赤外線吸収剤粉末の平均粒径は、例えば0.1μm以上であってよく、0.5μm以上でもよく、また、20μm以下であってよく、10μm以下でもよく、5μm以下でもよい。なお、本明細書中において「平均粒径」とは、特記しない場合、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D50と略記する場合もある。)を指す。
また、いくつかの態様において、上記レーザ光吸収層は、近赤外線吸収剤として金属粉末および金属化合物粉末の少なくとも一方を含み得る。かかる近赤外線吸収剤は、特定レーザ光の吸収に伴う発熱に耐えて該特定レーザ光を吸収する性質を適切に維持し得るので好ましい。この種の近赤外線吸収剤の好適例として、セシウム酸化タングステン分散粉、窒化チタン分散粉等が挙げられる。
レーザ光吸収層は、典型的には、樹脂成分中に近赤外線吸収剤を含む層である。かかる樹脂成分として採用し得る材料の非限定的な例示には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリプロピレン-ポリエチレンブレンド樹脂等のポリオレフィン樹脂;その他、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド系樹脂;等が含まれる。かかる樹脂材料に近赤外線吸収剤を配合してなる樹脂組成物を、典型的にはフィルム状に成形することにより、レーザ光吸収層を形成することができる。
粘着フィルムに含まれる近赤外線吸収剤の使用量は特に限定されない。いくつかの態様において、粘着フィルムの面積当たりの近赤外線吸収剤含有量(複数種類の近赤外線吸収剤を用いる場合は、それらの合計含有量)は、例えば、0.05g/m超であってよく、0.1g/m以上でもよく、0.2g/m以上でもよく、0.4g/m超であってよく、0.5g/m超でもよく、2.0g/m以上でもよく、4.0g/m以上でもよい。また、レーザ切断残渣の低減や反射率抑制の観点から、粘着フィルムの面積当たりの近赤外線吸収剤含有量は、例えば20.0g/m未満であってよく、18g/m未満でもよく、16.0g/m未満でもよく、14.0g/m未満でもよく、12.0g/m未満でもよく、6.0g/m未満でもよく、5.5g/m未満でもよく、5.0g/m未満でもよく、4.5g/m未満でもよく、4.0g/m未満でもよい。レーザ切断加工時のフィルム分解消失にともなうワーク切断面の汚染をよりよく防止する観点から、いくつかの態様において、基材の面積当たりの近赤外線吸収剤含有量は、好ましくは10.0g/m未満(例えば9.0g/m未満)、より好ましくは8.5g/m未満であり、8.0g/m未満でもよく、7.5g/m未満でもよく、7.0g/m未満でもよく、2.5g/m未満(例えば2.0g/m未満)でもよく、1.0g/m未満でもよく、0.5g/m未満でもよく、0.4g/m未満でもよく、0.3g/m未満でもよい。
粘着フィルムの面積当たりの近赤外線吸収剤含有量の好ましい範囲は、より詳細には、使用する近赤外線吸収剤の種類によっても異なり得る。例えば、上記近赤外線吸収剤として酸化タングステン粒子を利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、いくつかの態様において、上記酸化タングステン粒子は、粘着フィルムの面積当たり例えば0.4g/m超~20.0g/m未満程度の含有量で好ましく用いられ得る。
また、例えば、上記近赤外線吸収剤として銅、鉄およびマンガンの複合酸化物(CFM複合酸化物)を利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、いくつかの態様において、上記複合酸化物は、粘着フィルムの面積当たり例えば0.07g/m~0.5g/m程度の含有量で好ましく用いられ得る。
また、例えば、上記近赤外線吸収剤として窒化チタンを利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、いくつかの態様において、上記窒化チタンは、粘着フィルムの面積当たり例えば0.06g/m超~2.0g/m程度の含有量で好ましく用いられ得る。
粘着フィルムの背面の明度Lは、95未満であることが好ましい。いくつかの態様において、粘着フィルムの背面の明度Lは、例えば90未満であってよく、70未満でもよく、60未満でもよく、50未満でもよく、45未満でもよく、40未満でもよい。このように背面の明度Lを低く設定することによって、粘着フィルムのレーザ光吸収率を高めやすくなる。明度Lの下限は特に制限されないが、粘着フィルムの意匠性、表面印刷性、耐候性、識別性等の観点から、通常は20以上が適当であり、30以上でもよい。いくつかの態様において、粘着フィルムの背面の明度Lは、例えば40以上であってよく、50以上でもよい。
粘着フィルムの背面の色度aは、特に限定されない。いくつかの態様において、上記明度Lと同様の観点から、粘着フィルムの背面の色度aは、例えば-15~+15の範囲であってよく、-10~+10の範囲でもよく、-5~+7の範囲でもよく、-3~+5の範囲でもよく、-1.5~+3の範囲でもよく、0~+2の範囲でもよい。粘着フィルムの背面の色度bは、特に限定されないが、例えば-15~+15の範囲であってよく、-10~+10の範囲でもよく、-5~+5の範囲でもよく、-3~+2の範囲でもよく、-1.5~+1の範囲でもよい。
粘着フィルムの前面の明度L、色度a、色度bは、上述した粘着フィルムの背面の明度L、色度a、色度bと同様の範囲から適宜選択し得る。明度L、色度a、色度bの各々は、粘着フィルムの前面と背面とで同程度であってもよく、異なってもよい。
なお、本明細書において、明度L、色度aおよび色度bは、L表色系で規定される明度L、色度a、色度bを意味し、国際照明委員会が1976年に推奨した規定またはJIS Z 8729の規定に準拠するものとする。具体的には、明度L、色度a、色度bは、色差計(例えば、商品名「CR-400」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。明度L、色度a、色度bは、近赤外線吸収剤の種類の選択、近赤外線吸収剤の使用量の選択、近赤外線吸収剤以外の着色剤の使用の有無、着色剤を使用する場合における該着色剤の種類や使用量の選択、等により調節することができる。
粘着フィルムの厚さは特に限定されないが、通常は10μm~200μm程度が適当である。粘着フィルムのハンドリング性等の観点から、いくつかの態様において、粘着フィルムの厚さは、例えば20μm以上であってよく、25μm以上でもよく、40μm以上でもよく、55μm以上でもよく、80μm以上でもよい。また、例えばレーザ加工の迅速性や精密性の観点から、粘着フィルムの厚さは、例えば150μm以下であってよく、120μm以下でもよく、100μm以下でもよい。場合によっては、粘着フィルムの厚さは、100μm未満でもよく、80μm以下でもよく、60μm以下でもよく、50μm以下でもよい。
ここに開示される粘着フィルムのいくつかの態様において、該粘着フィルムは、ステンレス鋼(SUS)板に貼り付けて30分後に引張速度30m/分の条件で測定される高速剥離強度が4.5N/20mm以上であることが好ましい。ここで、引張速度30m/分とは、例えば短波長レーザ光による加工対象物の加工時に、該加工対象物に貼り付けられた粘着フィルムにアシストガスが吹き付けられる状況を想定して設定された測定条件である。レーザ光で切断して用いられる粘着フィルムは、例えば単にレーザ光を遮蔽する目的で用いられるフィルム(レーザ光遮蔽フィルム)とは異なり、レーザ加工時に供給されるアシストガスによる浮きや剥がれの抑制に適した高速剥離強度を有することが望ましい。上記アシストガスによって粘着フィルムに浮き(典型的には、レーザ光による切断部からアシストガスがその風圧により加工対象物と粘着フィルムとの接着界面に入り込むことによる部分的な剥がれ)が生じると、粘着フィルムの加工対象物への固定(粘着剤による接合)が解除された状態で該粘着フィルムが熱に曝されることにより熱収縮が大きくなり、上記切断部の両側で加工対象物表面が露出しやすくなる等の不都合が生じ得るためである。高速剥離強度が4.5N/20mm以上である粘着フィルムによると、切断時の粘着フィルムの浮きを効果的に抑制し得る。
より高い効果を得る観点から、いくつかの態様において、粘着フィルムの高速剥離強度は、例えば5.0N/20mm以上であってよく、5.5N/20mm以上でもよく、6.0N/20mm以上でもよく、8N/20mm以上でもよく、10N/20mm以上でもよく、15N/20mm以上でもよい。高速剥離強度の上限は特に制限されないが、加工対象物から粘着フィルムを剥離する際における作業負担軽減や粘着フィルムの千切れ防止の観点から、いくつかの態様において、粘着フィルムの高速剥離強度は、例えば25N/20mm以下であってよく、20N/20mm以下でもよい。粘着フィルムを剥離する際の作業性向上の観点から、いくつかの態様において、高速剥離強度は、15N/20mm以下でもよく、10N/20mm以下でもよく、8N/20mm以下でもよい。高速剥離強度は、具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定される。高速剥離強度は、例えば、粘着剤層の種類や厚さの選択、架橋剤の種類や使用量の選択、剥離剤の種類や使用量の選択、粘着付与樹脂等の任意成分の使用、等により調節することができる。
ここに開示される粘着フィルムは、いくつかの態様において、ステンレス鋼板に貼り付けて30分後に引張速度0.3m/分の条件で測定される低速剥離強度が10N/20mm以下であることが好ましく、8N/20mm以下であることがさらに好ましく、5N/20mm以下であることが特に好ましく、4.5N/20mm以下であってもよい。ここで、引張速度0.3m/分とは、例えば加工対象物(被着体)の加工工程後に、該加工対象物に貼り付けられた粘着フィルムを剥離除去することを想定して設定された測定条件である。不要となった粘着フィルムを剥がす際に要する労力を軽減し作業性を向上させる観点や、粘着フィルムの剥離後に被着体表面に粘着剤が付着した状態(いわゆる「糊残り」)が生じることを抑制する観点から、低速剥離強度は小さいほど好ましい。低速剥離強度の下限は特に制限されない。他の特性(例えば、所定以上の高速剥離強度)との両立を容易とする観点から、いくつかの態様において、低速剥離強度は0.1N/20mm以上であることが好ましく、0.5N/20mm以上であってもよく、0.8N/20mm以上であってもよく、1N/20mm以上であってもよく、2N/20mm以上でもよく、3N/20mm以上でもよい。低速剥離強度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。低速剥離強度は、例えば、粘着剤層の種類や厚さの選択、架橋剤の種類や使用量の選択、剥離剤の種類や使用量の選択、粘着付与樹脂等の任意成分の使用、等により調節することができる。
<基材>
ここに開示される粘着フィルムは、基材として樹脂フィルムを含む。樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリプロピレン-ポリエチレンブレンド樹脂等のポリオレフィン樹脂;塩化ビニル樹脂(例えば、軟質塩化ビニル樹脂)やフッ素樹脂等のハロゲン化樹脂;その他、酢酸ビニル樹脂やポリアミド系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
ここに開示される粘着フィルムのいくつかの態様において、上記樹脂フィルムとしては、非ハロゲン系樹脂フィルムを好ましく用いることができる。ここで、上記非ハロゲン系樹脂フィルムとは、ハロゲン系樹脂以外の樹脂材料を主成分とする樹脂フィルムであり、好ましくはハロゲンフリー(特に、塩素フリー)の樹脂フィルムである。特に、レーザ光で切断して用いられる粘着フィルム(例えば、ワークに貼り付けられて該ワークとともにレーザ光で切断される態様で用いられる粘着フィルム)では、基材として非ハロゲン系樹脂フィルムを用いることが好ましい。これは、レーザ光で切断して用いられる粘着フィルムを構成する基材は、例えば単にレーザ光を遮蔽する目的で用いられるフィルム(レーザ光遮蔽フィルム)とは異なり、上記粘着フィルムがレーザ光で切断される際に分解消失することとなるため、分解によるハロゲンガスの発生を避けることが望ましいためである。分解によるハロゲンガス発生が抑制されていることは、ワークや機器の腐食防止、環境衛生等の観点から有利な特徴となり得る。ハロゲンフリーの樹脂フィルムは、ハロゲンを含む材料の使用を避けることにより実現することができる。例えば、基材の構成成分としてハロゲン化樹脂(例えば塩化ビニル樹脂)や塩素を含む添加剤の使用を避けることが望ましい。
ここに開示される粘着フィルムは、(A)塩素含有率が0.09重量%(900ppm)以下である、(B)臭素含有率が0.09重量%(900ppm)以下である、(C)塩素および臭素の含有率の総量が0.15重量%(1500ppm)以下である、のうち一つ以上を満たすように構成されていることが好ましい。少なくとも(A)を満たすことがより好ましく、(A)および(C)を満たすことがさらに好ましく、(A),(B),(C)の全てを満たすことが特に好ましい。かかる粘着フィルムは、例えば上記(A)~(C)のうち一つ以上を満たすように構成された樹脂フィルムを基材として採用することにより好ましく実現し得る。上記樹脂フィルムは、少なくとも(A)を満たすことがより好ましく、(A)および(C)を満たすことがさらに好ましく、(A),(B),(C)の全てを満たすことが特に好ましい。塩素含有率および臭素含有率は、蛍光X線分析、イオンクロマトグラフ等の公知の方法により測定される。
例えば特定レーザ光による粘着フィルムの切断性や非汚染性の観点から、いくつかの態様において、上記樹脂フィルムとしてポリオレフィン系樹脂フィルムまたはポリエステル系樹脂フィルムを好ましく用いることができる。
ここで、ポリオレフィン系樹脂フィルムとは、主成分がポリオレフィン系樹脂である樹脂フィルムをいう。本明細書において主成分とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分をいう。例えば、樹脂フィルムの主成分がポリオレフィン系樹脂であるとは、該樹脂フィルムがその全体重量の50重量%を超えてポリオレフィン系樹脂を含むことをいう。ポリオレフィン系樹脂フィルムの好適例として、主成分がポリエチレン(PE)樹脂および/またはポリプロピレン(PP)樹脂である樹脂フィルムをいう。ポリオレフィン系樹脂フィルムは、PE樹脂および/またはPP樹脂を含み、PE樹脂とPP樹脂との合計量が該ポリオレフィン樹脂フィルムの50重量%超、好ましくは70重量%以上、例えば85重量%以上を占めるものであり得る。上記合計量は、PE樹脂を含みPP樹脂を含まない樹脂フィルムでは、PE樹脂の含有量と一致する。
上記PE樹脂は、エチレンを主構成単量体単位とする種々のポリマー(エチレン系ポリマー)を主成分とするものであり得る。1種または2種以上のエチレン系ポリマーから実質的に構成されるPE樹脂であってもよい。上記エチレン系ポリマーは、エチレンのホモポリマーであってもよく、主モノマーとしてのエチレンに、副モノマーとして他のα-オレフィンを共重合(ランダム共重合、ブロック共重合等)させたものであってもよい。上記α-オレフィンの好適例としては、プロピレン、1-ブテン(分岐1-ブテンであり得る。)、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の、炭素原子数3~10のα-オレフィンが挙げられる。例えば、上記副モノマーとしてのα-オレフィンが10重量%以下(典型的には5重量%以下)の割合で共重合されたエチレン系ポリマーを主成分とするPE樹脂を好ましく採用し得る。
上記PE樹脂は、また、重合性官能基に加えて別の官能基を有するモノマー(官能基含有モノマー)とエチレンとのコポリマーを含むPE樹脂や、かかる官能基含有モノマーをエチレン系ポリマーに共重合させたPE樹脂等であってもよい。エチレンと官能基含有モノマーとのコポリマーとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(すなわち、アクリル酸および/またはメタクリル酸)共重合体が金属イオンで架橋されたもの、等が挙げられる。
PE樹脂の密度は特に限定されない。ここでいうPE樹脂の概念には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のいずれもが含まれる。一態様において、上記PE樹脂の密度は、例えば0.90~0.94g/cm程度であり得る。好ましいPE樹脂として、LDPEおよびLLDPEが挙げられる。
上記PP樹脂は、プロピレンを主構成単量体単位とする種々のポリマー(プロピレン系ポリマー)、すなわち全構成単量体単位の50重量%超がプロピレンであるポリマーを主成分とするものであり得る。1種または2種以上のプロピレン系ポリマーから実質的に構成されるPP樹脂であってもよい。ここでいうプロピレン系ポリマーの概念には、ホモポリプロピレンの他、プロピレンと他のモノマーとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)が包含される。
上述した粘着フィルムと同様、基材としての樹脂フィルムの波長1050nmにおける光線吸収率は、粘着フィルムの波長1050nmにおける光線吸収率が20%以上となるように設定することができる。いくつかの態様において、上記樹脂フィルムの波長1050nmにおける光線吸収率は、例えば20%以上であることが好ましく、25%以上であってよく、30%以上でもよく、45%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。樹脂フィルムの波長1050nmにおける光線吸収率は、100%であってもよいが、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよい
基材としての樹脂フィルムの波長550nmにおける光線透過率は、粘着フィルムの波長550nmにおける光線透過率が40%以上となるように設定することができる。いくつかの態様において、基材としての樹脂フィルムは、波長550nmにおける光線透過率が、例えば40%以上であることが好ましく、40%超であってよく、50%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。上記樹脂フィルムの透過率の上限は特に制限されない。基材としての樹脂フィルムの波長550nmにおける光線透過率は、100%であってもよいが、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよい。
基材は、レーザ光吸収層を含むことが好ましい。上記レーザ光吸収層は近赤外線吸収剤を含むことが好ましい。多層構造の基材では、少なくとも一つの層が近赤外線吸収剤を含むレーザ光吸収層であることが好ましい。レーザ光吸収層を含む基材のレーザ光吸収率は、粘着フィルムのレーザ光吸収率が20%以上となるように設定することができる。いくつかの態様において、基材のレーザ光吸収率は、例えば15%以上であってよく、通常は20%以上が適当であり、25%以上でもよく、30%以上でもよく、45%以上でもよく、60%以上でもよく、75%以上でもよい。基材のレーザ光吸収率は、100%であってもよいが、実用的には95%以下が好ましく、90%以下でもよい。
基材に含有させる近赤外線吸収剤としては、粘着フィルムに使用し得る近赤外線吸収剤に係る上記の例示と同様のものから、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
近赤外線吸収剤の使用量は特に限定されない。いくつかの態様において、基材の面積当たりの近赤外線吸収剤含有量(複数種類の近赤外線吸収剤を用いる場合は、それらの合計含有量)は、例えば、0.06g/m超であってよく、0.1g/m以上でもよく、0.2g/m以上でもよく、0.5g/m超であってよく、2.0g/m以上でもよく、4.0g/m以上でもよい。また、レーザ切断残渣の低減や反射率抑制の観点から、基材の面積当たりの近赤外線吸収剤含有量は、例えば20.0g/m未満であってよく、18g/m未満でもよく、16.0g/m未満でもよく、14.0g/m未満でもよく、12.0g/m未満でもよく、6.0g/m未満でもよく、5.5g/m未満でもよく、5.0g/m未満でもよく、4.5g/m未満でもよく、4.0g/m未満でもよい。レーザ切断加工時のフィルム分解消失にともなうワーク切断面の汚染をよりよく防止する観点から、いくつかの態様において、基材の面積当たりの近赤外線吸収剤含有量は、好ましくは10.0g/m未満(例えば9.0g/m未満)、より好ましくは8.5g/m未満であり、8.0g/m未満でもよく、7.5g/m未満でもよく、7.0g/m未満でもよく、2.5g/m未満(例えば2.0g/m未満)でもよく、1.0g/m未満でもよく、0.5g/m未満でもよく、0.4g/m未満でもよく、0.3g/m未満でもよい。
上記近赤外線吸収剤として酸化タングステン粒子を利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、いくつかの態様において、基材の面積当たりの酸化タングステン粒子は、例えば、0.5g/m超~20.0g/m未満程度の含有量で用いられ得る。例えば、酸化タングステン粒子の含有量は0.5g/m超であってよく、2.0g/m以上でもよく、4.0g/m以上でもよい。また、レーザ切断残渣の低減や反射率抑制の観点から、基材の面積当たりの酸化タングステン粒子の含有量は、例えば20.0g/m未満であってよく、18g/m未満でもよく、16.0g/m未満でもよく、14.0g/m未満でもよく、12.0g/m未満でもよい。レーザ切断加工時のフィルム分解消失にともなうワーク切断面の汚染をよりよく防止する観点から、いくつかの態様において、基材の面積当たりの酸化タングステン粒子含有量は、好ましくは10.0g/m未満(例えば9.0g/m未満)、より好ましくは8.5g/m未満であり、8.0g/m未満でもよく、7.5g/m未満でもよく、7.0g/m未満でもよい。
上記近赤外線吸収剤として銅、鉄およびマンガンの複合酸化物(CFM複合酸化物)を利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、いくつかの態様において、基材の面積当たりのCFM複合酸化物は、例えば、0.08g/m~0.5g/m程度の含有量で用いられ得る。
上記近赤外線吸収剤として窒化チタンを利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、いくつかの態様において、基材の面積当たりの窒化チタンは、例えば、0.1g/m超~2.0g/m程度の含有量で用いられ得る。
また、特に限定するものではないが、いくつかの態様において、近赤外線吸収剤の使用量は、例えば、該近赤外線吸収剤を含むレーザ光吸収層(典型的には基材の樹脂フィルム)の0.01重量%以上であってよく、0.05重量%以上でもよく、0.1重量%以上でもよい。また、レーザ切断残渣の低減や反射率抑制の観点から、いくつかの態様において、近赤外線吸収剤の含有量は、近赤外線吸収剤を含むレーザ光吸収層(典型的には基材の樹脂フィルム)の例えば40重量%以下であってもよく、40重量%未満でもよく、20重量%以下でもよく、10重量%以下でもよく、10重量%未満でもよく、8重量%以下でもよく、6重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、3重量%以下でもよく、2重量%以下でもよい。
上記近赤外線吸収剤として酸化タングステン粒子を利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、上記酸化タングステン粒子は、例えば、基材の1重量%を超えて40重量%未満程度の含有量で好ましく用いられる。
上記近赤外線吸収剤としてCFM複合酸化物を利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、上記CFM複合酸化物は、例えば、基材の0.1重量%以上1.7重量%未満程度の含有量で好ましく用いられる。
上記近赤外線吸収剤として窒化チタンを利用する場合、特に限定するものではないが、可視光領域での透明性と近赤外線波長領域での光線吸収率向上を両立させる観点から、上記窒化チタンは、例えば、基材の0.1重量%を超えて5重量%以下程度の含有量で好ましく用いられる。
基材の背面の明度L、色度a、色度bは、上述した粘着フィルムの背面の明度L、色度a、色度bと同様の範囲から適宜選択し得る。同様に、基材の前面の明度L、色度a、色度bは、上述した粘着フィルムの前面の明度L、色度a、色度bと同様の範囲から適宜選択し得る。
基材の成形方法は特に限定されず、従来公知の押出成形法、例えばインフレーション押出成形法やキャスト成形法等を適宜採用することができる。基材は、無延伸であってもよく、一軸延伸や二軸延伸等の延伸が施されていてもよい。多層構造の基材は、各層に対応する樹脂組成物を同時に(例えば、多層インフレーション成形法により)成形する方法、各々の層を成形した後に貼り合わせる方法、先に成形した層の上に他の層をキャストする方法等を、単独で、あるいは適宜組み合わせて採用することにより得ることができる。
基材には、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、難燃剤、帯電防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等)、酸化防止剤等が挙げられる。
ワークの非汚染性の観点から、基材は可塑剤を含まないか、または可塑剤の含有量が所定以下に制限されていることが好ましい。可塑剤を含まないかまたは可塑剤の含有量が所定以下に制限されている基材によれば、基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層に含まれる粘着剤へ基材中の可塑剤が拡散することを抑制し、該粘着剤が軟化することを防いで糊残りを低減し得る。また、可塑剤自体のワーク表面への移行を抑制し、ワーク表面の汚染を低減し得る。
基材の表面には、必要に応じて、隣接する材料に対する密着性を高め、あるいは離型性を向上させるための適宜の表面処理が施されていてもよい。
密着性を高めるための表面処理としては、コロナ放電処理、酸処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布等が例示される。かかる表面処理は、基材の前面(すなわち、粘着剤層が設けられる側の表面)および背面のいずれにも好ましく適用され得る。
離型性を向上させるための表面処理は、一般的なシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の剥離処理剤を用いて実施することができる。かかる表面処理は、基材の背面に好ましく適用され得る。
基材の厚さは特に限定されず、例えば5μm~150μm程度とすることができる。基材または該基材を備えた粘着フィルムのハンドリング性の観点から、いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば15μm以上であってよく、20μm以上でもよく、35μm以上でもよく、50μm以上でもよく、75μm以上でもよい。また、レーザ加工の迅速性や精密性の観点から、いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば130μm以下であってよく、110μm以下でもよく、100μm以下でもよく、100μm未満でもよく、90μm以下でもよい。場合によっては、基材の厚さは、70μm以下でもよく、50μm以下でもよく、40μm以下でもよい。
レーザ光吸収層を含む基材において、該レーザ光吸収層の厚さ(複数のレーザ光吸収層を含む基材では、それらの層の合計厚さ)は、例えば3μm以上であってよく、5μm以上でもよく、10μm以上でもよい。レーザ加工の迅速性や精密性の観点から、いくつかの態様において、基材全体の厚さのうちレーザ光吸収層(換言すれば、近赤外線吸収剤が配置された箇所)の厚さは、例えば20%以上であってよく、50%以上でもよく、70%以上でもよく、90%以上でもよい。なお、レーザ光吸収層からなる単層の基材や、複数のレーザ光吸収層からなる基材では、該基材全体の厚さのうちレーザ光吸収層の厚さが100%である。
<粘着剤層>
ここに開示される技術における粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されず、例えば、公知のゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。粘着性能やコストの観点から、ゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。ここで、ゴム系粘着剤とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)がゴム系ポリマーである粘着剤をいい、アクリル系粘着剤とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分がアクリル系ポリマーである粘着剤をいう。ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等についても同様である。上記粘着剤層は、単層構造であってもよく、組成の異なる二以上の層を有する積層構造であってもよい。
ゴム系粘着剤の例としては、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等が挙げられる。合成ゴム系粘着剤のベースポリマーたるゴム系ポリマーの具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー;スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレンランダム共重合体、等のスチレン系エラストマー;その他、エチレンプロピレンゴム、プロピレンブテンゴム、エチレンプロピレンブテンゴム等が挙げられる。
ここに開示される粘着フィルムの粘着剤層を構成する粘着剤としては、高速剥離強度をよりよく発揮する観点から、ゴム系粘着剤を特に好ましく採用し得る。ゴム系粘着剤の例としては、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等が挙げられる。
上記天然ゴム系粘着剤の概念には、ベースポリマーが天然ゴムであるもの、および、ベースポリマーが変性天然ゴムであるものが包含される。上記天然ゴムとしては、特に限定されず、例えばstandard malaysian rubber(SMR)、standard vietnamese rubber(SVR)、リブドスモークドシート(RSS)、ペールクレープ等を用いることができる。上記変性天然ゴムとしては、該変性天然ゴムのうち50重量%以上(例えば60重量%以上)が天然ゴムに由来する構造部分であるものを好ましく採用し得る。上記変性天然ゴムの具体例としては、アクリル変性天然ゴムが挙げられるが、これに限定されない。
また、上記合成ゴム系粘着剤のベースポリマーたるゴム系ポリマーの具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、等が挙げられる。
好ましい一態様では、上記ゴム系粘着剤層のベースポリマーが天然ゴムである。例えば、MS(1+4)100℃(L型ロータ使用、予熱1分、粘度測定時間4分、試験温度100℃)の測定条件におけるムーニー粘度が10~60程度の天然ゴムが好ましい。天然ゴム系粘着剤層を備えた粘着フィルムは、合成ゴム系粘着剤層を備えた粘着フィルムに比べて被着体との密着性が迅速に上昇する傾向にある。これにより、例えば加工対象物(被着体)に粘着フィルムを貼り付けて上記加工対象物にレーザ加工に供するまでの時間を短くしても、アシストガス圧による粘着フィルムの浮きや剥がれが好適に抑制され得る。
ここに開示される技術におけるゴム系粘着剤層は、ベースポリマーに他のポリマー(以下、副ポリマーともいう。)がブレンドされた組成であり得る。かかる副ポリマーは、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のベースポリマーとなり得るアクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、シリコーンポリマー等であり得る。あるいは、上述したゴム系ポリマーのうちベースポリマー以外のものであってもよい。かかる副ポリマーは、単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
このような副ポリマーは、ベースポリマー100重量部に対して100重量部以下の使用量(二種以上の副ポリマーを使用する場合にはそれらの合計量を指す。)で用いられる。通常は、ベースポリマー100重量部に対する副ポリマーの使用量を70重量部以下とすることが適当であり、50重量部以下とすることが好ましい。副ポリマーを実質的に含まない(すなわち、ポリマー成分の実質的に100重量%がベースポリマーである。)ゴム系粘着剤層であってもよい。また、ゴム系ポリマー以外のポリマー成分を実質的に含有しないゴム系粘着剤層(例えば、天然ゴムおよび変性天然ゴム以外のポリマー成分を実質的に含有しないゴム系粘着剤層)であってもよい。
アクリル系粘着剤としては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、これに必要に応じて該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な改質用モノマーを加えたモノマー組成を有するアクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分)とするものを好ましく用いることができる。上記改質用モノマーの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;スチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。かかるアクリル系粘着剤は、溶液重合法、エマルション重合法、紫外線(UV)重合法等の慣用の重合法により得ることができる。
粘着剤層には、必要に応じて近赤外線吸収剤を含有させることができる。すなわち、粘着剤層はレーザ光吸収層であってもよい。複数の層からなる粘着剤層では、それらのうち少なくとも一つの層に近赤外線吸収剤を含有させることができる。粘着剤層に含有させる近赤外線吸収剤としては、上記で例示した近赤外線吸収剤のなかから一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。粘着剤層における近赤外線吸収剤の含有量は、通常、該粘着剤層の5重量%以下とすることが適当であり、粘着性能の観点から3重量%以下が好ましく、1重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤層が近赤外線吸収剤を実質的に含有しない態様でも好ましく実施され得る。
粘着剤層には、必要に応じて粘着付与剤を含有させることができる。粘着付与剤としては、公知のロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系樹脂(C5系、C9系等)、テルペン系樹脂、ケトン系樹脂等の各種粘着付与剤樹脂から選択される一種または二種以上を用いることができる。上記ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジンの他、安定化ロジン、重合ロジン、変性ロジン等が挙げられる。上記ロジン誘導体樹脂としては、上記ロジン系樹脂のエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物等が挙げられる。上記石油系樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、これらの水素化物等が例示される。上記テルペン系樹脂としては、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。上記ケトン系樹脂としては、例えば、ケトン類とホルムアルデヒドとの縮合によるケトン系樹脂が例示される。このような粘着付与剤は、単独で使用してもよく、二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。なかでも好ましい粘着付与剤として、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、脂肪族系(C5系)石油樹脂、テルペン樹脂が例示される。これらの粘着付与樹脂は、例えば、ゴム系粘着剤層、アクリル系粘着剤層等である態様において好適に使用され得る。
上記粘着付与剤の使用量(二種以上を用いる場合にはそれらの合計量)は、通常、ベースポリマー100重量部に対して凡そ20~150重量部(好ましくは凡そ30~100重量部)とすることが適当である。高速剥離強度向上の観点から、いくつかの態様において、粘着付与剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば30重量部以上であってよく、40重量部以上でもよく、45重量部以上でもよい。また、凝集力の低下による糊残りの発生の回避等の観点から、いくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、例えば85重量部以下であってよく、75重量部以下であってもよい。いくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、例えば70重量部未満でもよく、65重量部以下でもよく、55重量部以下でもよく、50重量部以下でもよい。粘着付与剤の使用量を少なくすることは、例えば、被着体から粘着フィルムを剥離する際における作業負担軽減や粘着フィルムの千切れ防止の観点から有利となり得る。
粘着剤層には架橋剤を含有させることができる。架橋剤の使用により、粘着剤層に適度な凝集力を付与することができる。架橋剤を含有する粘着剤層は、例えば、該架橋剤を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成することにより得ることができる。上記架橋剤は、架橋反応後の形態、架橋反応前の形態、部分的に架橋反応した形態、これらの中間的または複合的な形態等で粘着剤層に含まれ得る。上記架橋剤は、典型的には、専ら架橋反応後の形態で粘着剤層に含まれている。
架橋剤を使用する場合における使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば0.005重量部以上10重量部以下の範囲とすることができる。ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、例えば0.01重量部以上であってよく、0.1重量部以上でもよく、0.5重量部以上でもよい。また、被着体(加工対象物)表面に対する密着性向上の観点から、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、例えば5.0重量部未満であってよく、4.0重量部未満でもよく、3.5重量部以下でもよく、2.5重量部以下でもよい。ここに開示される技術は、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量が2.0重量部未満または1.5重量部以下である態様でも好適に実施され得る。
使用し得る架橋剤の例には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、過酸化物等の架橋剤が含まれる。上記架橋剤の好適例として、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が挙げられる。架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられ得る。イソシアネート系架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。イソシアネート系架橋剤は、他の架橋剤、例えばエポキシ系架橋剤と組み合わせて用いてもよい。
上記イソシアネート系架橋剤としては、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む。)を1分子中に2つ以上有する化合物を用いることができる。イソシアネート系架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
上記イソシアネート系架橋剤としては、より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製,商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製,商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製,商品名コロネートHX)等のイソシアネート付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名:タケネートD110N)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名:タケネートD120N)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名:タケネートD140N)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名:タケネートD160N);ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート等を挙げることができる。これらのなかでも芳香族イソシアネートや脂環式イソシアネートを用いることが好ましい。
イソシアネート系架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば凡そ0.1重量部以上であってよく、凡そ0.5重量部以上でもよく、凡そ1.0重量部以上でもよく、1.5重量部超でもよい。より高い使用効果を得る観点から、いくつかの好ましい態様に係る粘着剤層において、ベースポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば2.0重量部超であってよく、凡そ2.5重量部以上でもよく、2.5重量部超でもよく、凡そ2.7重量部以上でもよい。また、ベースポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば10重量部以下であってよく、7重量部以下であってもよく、5重量部以下でもよい。
上記エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物を用いることができる。エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。上記エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の商品名「テトラッドC」、「テトラッドX」等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。また、エポキシ系架橋剤は、単独で使用してもよく、他の架橋剤、例えばイソシアネート系架橋剤と組み合わせて用いてもよい。エポキシ系架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば0.005~5重量部程度とすることができ、0.01~5重量部としてもよく、0.1~3重量部としてもよい。
その他、粘着剤層は、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を、必要に応じて含有してもよい。このような添加剤は、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
かかる粘着剤層を基材の第一面に設ける方法は特に限定されない。例えば、適当な媒体中に粘着剤層形成成分を含む粘着剤組成物(例えば、粘着剤層形成成分が有機溶媒に溶解した溶液、または該成分が水性溶媒に分散した分散液)を基材に塗布して乾燥または硬化させることにより基材上に直接粘着剤層を形成する方法、剥離性を有する表面上に形成した粘着剤層を基材に移着する方法、粘着剤層形成成分を基材形成成分とともに溶融加熱して共押出し成形により積層する方法、等の公知の方法を適宜採用することができる。より高い高速剥離強度を有する粘着フィルムを構成する粘着剤層を形成するために、粘着剤層形成成分の取扱い容易性の観点から、粘着剤組成物を塗布する方法を好ましく採用し得る。上記粘着剤組成物は、例えば、ポリマー成分と、典型的には粘着付与剤と、必要に応じて用いられる他の成分と、上記媒体とを、常法により混合して調製することができる。粘着剤組成物の塗布方法としては、従来公知の各種の方法を使用可能である。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
粘着剤層の厚さは、粘着フィルムの用途に応じて適切な粘着性能が得られるように適宜設定することができる。粘着剤層の厚さは、通常、0.5μm~50μmとすることが適当である。ワークへの密着性向上の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば1.5μm以上であってよく、3μm以上でもよく、5μm以上でもよく、7μm以上でもよい。また、レーザ加工の迅速性や精密性の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば30μm以下であってよく、20μm以下でもよく、15μm以下でもよい。
<用途>
ここに開示される粘着フィルムは、主波長900nm~1200nm(例えば1000nm~1100nm)程度の短波長レーザにより加工されるワークに貼り付けられた状態で、該ワークのレーザ加工に伴ってレーザ切断される態様で好ましく用いられ得る。ここに開示される粘着フィルムが貼り付けられた状態でワークに施されるレーザ加工の種類は特に限定されず、例えば切断、孔開け、切削、彫刻等であり得る。
ワークの材質は、特定レーザ光により切断可能なものであれば特に限定されず、例えば、鉄、鉄合金(炭素鋼、ステンレス鋼、クロム鋼、ニッケル鋼等)、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、タングステン、銅、銅合金、チタン、チタン合金、シリコン等の金属または半金属材料;ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、石膏等のセラミック材料;アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、石英ガラス等のガラス材料;紙、段ボール、木材、合板等のセルロース系材料;これらの積層物や複合物;等であり得る。ワークの好適例として、鉄、アルミニウム、銅、チタン、およびこれらの各金属を主成分とする合金(ステンレス鋼等)等の金属材料が挙げられる。ワークの形状は特に限定されず、板状、筒状、塊状等であり得る。
ここに開示される粘着フィルムは、このようなレーザ加工において、ワークのレーザ光照射側の表面に貼り付けられた状態で好ましく用いられ得る。また、レーザ加工の前後あるいはレーザ加工中のワークの表面保護等の目的で、ワークのレーザ光照射側とは反対側の表面(裏面)に上記粘着フィルムを貼り付けてもよい。上記短波長レーザとしては、例えば、主波長が概ね1050nm程度のファイバーレーザ、主波長が概ね950nm程度のダイオードレーザ等を利用することができる。
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
(1) 基材としての樹脂フィルムと、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備えた粘着フィルムであって、
波長550nmにおける光線透過率が40%以上であり、
波長1050nmにおける光線吸収率が20%以上である、粘着フィルム。
(2) 近赤外線吸収剤を含む、上記(1)に記載の粘着フィルム。
(3) 上記近赤外線吸収剤は、金属酸化物、金属窒化物、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、上記(2)に記載の粘着フィルム。
(4) 上記基材は非ハロゲン系樹脂フィルムである上記(1)~(3)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(5) 上記基材は、ポリオレフィン樹脂フィルムまたはポリエステル樹脂フィルムである、上記(1)~(4)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(6) 上記近赤外線吸収剤として酸化タングステン粒子、銅、鉄およびマンガンの複合酸化物、窒化チタンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、上記(2)~(5)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(7) 上記基材は上記近赤外線吸収剤として酸化タングステン粒子を1重量%を超えて40重量%未満の割合で含む、上記(2)~(5)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(8) 上記基材は上記近赤外線吸収剤として銅、鉄およびマンガンの複合酸化物を0.1重量%以上1.7重量%未満の割合で含む、上記(2)~(5)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(9) 上記基材は上記近赤外線吸収剤として窒化チタンを0.1重量%超の割合で含む、上記(2)~(5)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(10) 上記基材は、波長550nmにおける光線透過率が40%以上であり、波長900nmから1200nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上である、上記(1)~(9)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(11) 上記基材の厚さは100μm未満である、上記(1)~(10)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(12) ステンレス鋼板に貼り付けて30分後に引張速度0.3m/分の条件で測定される低速剥離強度が0.1N/20mm以上である、上記(1)~(11)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(13) 主波長900nmから1200nmのレーザ光で切断して用いられる、上記(1)~(12)のいずれかに記載の粘着フィルム。
(14) 上記(1)~(13)のいずれかに記載の粘着フィルムが貼り付けられている加工対象物を用意すること、および、
上記粘着フィルムが貼り付けられている上記加工対象物に主波長900nm~1200nmのレーザ光を照射することにより、上記加工対象物をレーザ加工するとともに上記レーザ光により上記粘着フィルムを切断すること、
を包含する、レーザ加工された物品の製造方法。
(15) 上記レーザ光が照射される上記加工対象物には、該加工対象物の上記レーザ光が照射される側の面およびその反対面の少なくとも一方に上記粘着フィルムが貼り付けられている、上記(14) に記載の方法。
(16) 上記レーザ加工後の上記加工対象物をさらに後加工すること、
および
上記加工対象物から上記粘着フィルムを引き剥がして除去すること、
をこの順に含む、上記(14)または(15) に記載の方法。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。また、特記しない限り、各材料の使用量は有効成分量基準である。
以下の各例において、粘着フィルムの作製に使用した原料は次のとおりである。
LDPE:低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)
粘着剤組成物P1:天然ゴム100部に対し、粘着付与剤(日本ゼオン株式会社製、商品名「Quintone A100」)70部、老化防止剤(大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラックNS-5」)2部、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」)3部およびトルエンを加えて混合したもの。
<粘着フィルムの作製>
(例1)
近赤外線吸収剤としてのセシウム酸化タングステン分散粉(住友金属鉱山株式会社製、商品名「YMDS-874」)10.0%およびLDPE90.0%を含む樹脂組成物のペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ60μmの樹脂フィルムF1を得た。樹脂フィルムF1の片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に粘着剤組成物P1を塗布し、乾燥させて、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。このようにして、基材の片面に粘着剤層を有する粘着フィルムを得た。
(例2)
近赤外線吸収剤として窒化チタン分散粉(住友金属鉱山株式会社製、商品名「KNDS-874」)を使用し、樹脂組成物中の近赤外線吸収剤濃度が0.5%となるようにLDPEとの混合比を変更した他は樹脂フィルムF1と同様にして、樹脂フィルムF2を得た。樹脂フィルムF1に代えて樹脂フィルムF2を使用した他は例1と同様にして、本例に係る粘着フィルムを得た。
(例3)
近赤外線吸収剤として、銅・鉄・マンガンの複合酸化物の分散液(住友金属鉱山株式会社製、商品名「WRF30X1」)を乾燥乾固させた固形分を使用し、樹脂組成物中の近赤外線吸収剤濃度が0.2%となるようにLDPEとの混合比を変更した他は樹脂フィルムF1と同様にして、樹脂フィルムF3を得た。樹脂フィルムF1に代えて樹脂フィルムF3を使用した他は例1と同様にして、本例に係る粘着フィルムを得た。
(例4,8)
樹脂組成物中の近赤外線吸収剤濃度が0.7%または1.7%となるように近赤外線吸収剤とLDPEとの混合比をそれぞれ変更した他は樹脂フィルムF3と同様にして、樹脂フィルムF4,F8を得た。樹脂フィルムF1に代えて樹脂フィルムF4,F8をそれぞれ使用した他は例1と同様にして、例4,8に係る粘着フィルムを得た。
(例5)
樹脂組成物中の近赤外線吸収剤濃度が0.1%となるように近赤外線吸収剤とLDPEとの混合比を変更した他は樹脂フィルムF2と同様にして、樹脂フィルムF5を得た。樹脂フィルムF1に代えて樹脂フィルムF5を使用した他は例1と同様にして、本例に係る粘着フィルムを得た。
(例6)
平均粒径20nmのカーボンブラック(CB)粉末1.5%およびLDPE98.5%を含む樹脂組成物のペレットを、インフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ80μmの樹脂フィルムF6を得た。樹脂フィルムF1に代えて樹脂フィルムF6を使用した他は例1と同様にして、本例に係る粘着フィルムを得た。
(例7)
近赤外線吸収剤として、カーボンブラック(CB)分散液(住友金属鉱山株式会社製、商品名「KCF22」)を乾燥乾固させた固形分を使用し、樹脂組成物中の近赤外線吸収剤濃度が0.5%となるようにLDPEとの混合比を変更した他は樹脂フィルムF1と同様にして、樹脂フィルムF7を得た。樹脂フィルムF1に代えて樹脂フィルムF7を使用した他は例1と同様にして、本例に係る粘着フィルムを得た。
<性能評価>
上記で作製した各例に係る粘着フィルムから適切なサイズのサンプルを切り出し、以下の項目を評価した。
(1)透過率
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U-4100」
測定条件:測定モード応用計測、データモード%T、スキャンスピード750nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット自動制御、ホトマル電圧自動1、光量制御モード固定、高分解能測定OFF、減光板未使用、PbS感度1、セル長10mm
測定方法:
(i).測定装置の電源を入れ、装置を安定させるために2時間以上待機した。その後、サンプルをセットせずにベースラインを測定した。
(ii).次いで、測定装置の透過率測定部分にサンプルを、粘着フィルムの背面から入光するようにセットし、上記測定条件にて波長550nmおよび1050nmにおける光線透過率をそれぞれ測定した。結果を表1に示した。
(2)反射率
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U-4100」
測定条件:測定モード応用計測、データモード%R、スキャンスピード750nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット自動制御、ホトマル電圧自動1、光量制御モード固定、高分解能測定OFF、減光板未使用、PbS感度1、セル長10mm
測定方法:
(i) 測定装置の電源を入れ、装置を安定させるために2時間以上待機した。その後、反射率測定部分に白色標準板をセットし(サンプルはセットしない。)、ベースラインを測定した。
(ii) 次いで、反射率測定部分にサンプルをセットした。このとき、サンプルを透過した光の反射を防止するため、サンプルの入光面と反対側に日東樹脂工業株式会社製の樹脂板、商品名「クラレックス(登録商標)」(黒色、1mm厚)を置き、該樹脂板にサンプルとしての粘着フィルムを貼り合わせた(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復)。そして、上記測定条件にて波長1050nmにおける光線反射率を測定した。結果を表1に示した。
(3)吸収率
上記透過率T(%)および反射率R(%)から、次式:100(%)-T(%)-R(%);により、波長1050nmにおける光線吸収率を算出した。結果を表1に示した。
(4)視認性
ワークとして厚さ3.0mmのSUS304板(2B仕上げ)を用い、ワークの上面に油性ペン(ハイマッキー(登録商標)黒)を用いて幅2mm、長さ10mmの黒色の線を目印として付したのち、各例に係る粘着フィルムをワークの上面に貼付した。このワークの上面側から目視し、粘着フィルムを通してSUS板表面の目印が明確に確認できた場合には視認性に優れる(E)、やや明確性に劣るが実用上十分な程度に確認できた場合は視認性良好(G)、目視で目印を明確に確認することが難しい場合は視認性に乏しい(P)と評価した。結果を表1に示した。
(5)高速剥離強度
各例に係る粘着フィルムを、幅20mm、長さ100mmのサイズの短冊状にカットして試験片を作製した。この試験片の粘着面を被着体としてのステンレス鋼板(SUS430BA)に、JIS Z0237に規定する2kgのゴムローラを1往復させて圧着した。このサンプルを23℃×50%RHの標準環境下に30分間放置した後、該標準環境下にて、万能引張試験機を用いて、引張速度30m/分、剥離角度180度の条件で、高速剥離強度(N/20mm)を測定した。
その結果、例1~8に係る粘着フィルムの高速剥離強度は、いずれも15N/20mm~20N/20mmの範囲にあった。
(6)低速剥離強度
各例に係る粘着フィルムを、幅20mm、長さ100mmのサイズの短冊状にカットして試験片を作製した。この試験片の粘着面を被着体としてのステンレス鋼板(SUS430BA)に、JIS Z0237に規定する2kgのゴムローラを1往復させて圧着した。このサンプルを23℃×50%RHの標準環境下に30分間放置した後、該標準環境下にて、万能引張試験機を用いて、引張速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で、低速剥離強度(N/20mm)を測定した。
その結果、例1~8に係る粘着フィルムの低速剥離強度は、いずれも2N/20mm~5N/20mmの範囲にあった。
(7)レーザ切断性試験
ワークとして厚さ3.0mmのSUS304板(2B仕上げ)を用い、各例に係る粘着フィルムをワークの上面に貼付した。このワークの上面側からレーザビームを照射して切断試験を行った。具体的には、ファイバーレーザ加工機(トルンプ社製、Trulaser 5030、主波長1050nm)を使用して、以下の条件で直線の切断加工を行った。
[レーザ加工条件]
切断速度:5.0m/min
出力:3000W
供給ガスおよびガス圧:窒素ガス、圧力18bar
ノズル直径:2.0mm
ノズル高さ:2mm
レーザビーム焦点:ワークの上面から1.5mm下の位置
その後、レーザ加工(ここではレーザ切断)されたワークの加工縁部を観察し、上記の条件で粘着フィルムおよびワークを滑らかな切断面で切断できた場合には切断性に優れる(E)、やや切断面が荒れるが問題なく切断できた場合は切断性良好(G)、切断できなかった場合には切断性不良(P)と評価した。結果を表1に示した。
Figure 0007507575000001
表1に示されるように、例1~4の粘着フィルムによると、該粘着フィルムとともにワークを良好に切断することができた。これらの粘着フィルムは、ワーク表面の視認性にも優れていた。これに対して、波長1050nmにおける光線吸収率が20%未満である例5の粘着フィルムでは、上記レーザ加工条件ではワークを切断することができなかった。また、550nmにおける光線透過率が40%以下である例6~8の粘着フィルムは、ワークに粘着フィルムを貼った状態でワークの表面状態を該粘着フィルム越しに視認することが困難であった。なお、例1~4、6~8の粘着フィルムにおいて、ワークのレーザ切断にともなう粘着フィルムの浮きや剥がれは認められなかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1,2 粘着フィルム
10 樹脂フィルム(基材)
10A 一方の面
10B 他方の面(背面)
20 粘着剤層
20A 表面(粘着面)
30 剥離ライナー
42 レーザ光吸収層
402 近赤外線吸収剤

Claims (6)

  1. 基材としての樹脂フィルムと、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備えた粘着フィルムであって、
    前記基材は、近赤外線吸収剤として銅、鉄およびマンガンの複合酸化物を0.1重量%以上1.7重量%未満の割合で含むポリオレフィン系樹脂フィルムであり
    波長550nmにおける光線透過率が40%以上であり、
    波長1050nmにおける光線吸収率が20%以上である、粘着フィルム。
  2. 主波長900nmから1200nmのレーザ光で切断して用いられる、請求項1に記載の粘着フィルム。
  3. 基材としての樹脂フィルムと、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備えた粘着フィルムであって、
    前記基材は、近赤外線吸収剤として窒化チタンを0.1重量%超の割合で含むポリオレフィン系樹脂フィルムであり
    波長550nmにおける光線透過率が40%以上であり、
    波長1050nmにおける光線吸収率が20%以上であり、
    主波長900nmから1200nmのレーザ光で切断して用いられる、粘着フィルム。
  4. 前記基材は、波長550nmにおける光線透過率が40%以上であり、波長900nmから1200nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着フィルム。
  5. 前記基材の厚さは100μm未満である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着フィルム。
  6. ステンレス鋼板に貼り付けて30分後に引張速度0.3m/分の条件で測定される低速剥離強度が0.1N/20mm以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着フィルム。
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