JP7498601B2 - 樹脂フィルム及びその製造方法、プリント配線板、カバーレイ、並びに積層体 - Google Patents

樹脂フィルム及びその製造方法、プリント配線板、カバーレイ、並びに積層体 Download PDF

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Description

本発明は、加熱寸法安定性の向上や優れた低誘電特性が期待できる樹脂フィルム及びその製造方法、プリント配線板、カバーレイ、並びに積層体に関するものである。
電気、電子、情報通信、精密機器等の分野では、比誘電率と誘電正接の低い材料が検討されているが、移動体情報通信の分野では、第五世代移動通信システム(5G)用の高周波回路基板を製造するため、比誘電率と誘電正接の低い材料が強く求められている(特許文献1、2参照)。この要望を踏まえ、比誘電率と誘電正接の低い材料が鋭意検討され、その結果、ポリアリーレンエーテルケトン(芳香族ポリエーテルケトンともいう、PAEK)樹脂が提案され、注目されている。
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、電気絶縁性質、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、耐放射線性、耐加水分解性、低吸水性、リサイクル性等に優れる熱可塑性の結晶性樹脂である。この優れた性質に鑑み、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、電気、電子、情報通信、精密機器等の分野の他、音響、自動車、エネルギー、半導体、医療、航空・宇宙等の広範囲な分野から注目されている。
このポリアリーレンエーテルケトン樹脂により、例えば高周波回路基板用の樹脂フィルムを製造すれば、樹脂フィルムの周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下、誘電正接が0.007以下となり、優れた低誘電特性を得ることができる。また、288℃のはんだ浴に10秒間浮かべても変形しないという優れた耐熱性を得ることもできる。
特表2017‐502595号公報 特公平6‐27002号公報
しかしながら、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂製の樹脂フィルムは、優れた低誘電特性、耐熱性、低吸水性等を得られるものの、加熱寸法安定性に劣るため、金属層が積層された場合、この金属層との加熱寸法特性が大きく異なるため、積層体がカールしたり、変形するという問題が新たに生じることとなる。
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂製の樹脂フィルムの加熱寸法安定性を改良する方法としては、(1)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、六方晶窒化ホウ素、及びタルクを含む成形材料により樹脂フィルムを成形する方法(特許第5896822号公報参照)、(2)ポリエーテルエーテルケトンを90質量%以上で含有する樹脂フィルムを二軸延伸処理する方法(特許第5847522号公報参照)等の方法が考えられる。
しかし、(1)の方法の場合には、六方晶窒化ホウ素が均一分散性に劣るので、機械的特性や誘電特性の品質が安定しないという問題が新たに生じる。また、(2)の方法の場合には、樹脂フィルム上に金属層を形成するとき、樹脂フィルムと金属層とを接着剤で接着したり、樹脂フィルムに金属層をシード層を介して積層形成することは可能ではあるが、樹脂フィルムと金属層との熱融着は、樹脂フィルムの溶融により二軸延伸が外れてしまい、積層後、積層体にカールや変形が生じてしまうこととなる。
また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂製の樹脂フィルムは、低誘電特性に優れるが、この低誘電特性をさらに向上させれば、通信機器の高周波化に容易に対応することができ、伝送損失の抑制が大いに期待できる。
本発明は上記に鑑みなされたもので、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂により製造したフィルムの低誘電特性や耐熱性等を低下させることなく、加熱寸法安定性を向上させることができる樹脂フィルム及びその製造方法、プリント配線板、カバーレイ、並びに積層体を提供することを目的としている。
本発明においては上記課題を解決するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、無機フィラー6質量部以上28質量部以下と、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂2質量部以上5質量部以下とを含み、周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下、誘電正接が0.007以下であり、288℃のはんだ浴に10秒間浮かべても変形しない樹脂フィルムであって、
無機フィラーが平均粒子径2μm以上20μm以下、アスペクト比5以上200以下の合成マイカ、炭酸カルシウム、又は非晶質シリカであり、
芳香族ポリアミド樹脂の繊維長が0.2mm以上7mm以下、平均繊維径が11μm以上15μm以下であり、
周波数1GHz付近における比誘電率が空洞共振器摂動法により測定された場合に1.5以上2.6以下であり、周波数28GHz付近における比誘電率がファブリペロー法により測定された場合に1.5以上2.7以下であることを特徴としている。
また、本発明においては上記課題を解決するため、周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下、誘電正接が0.007以下であり、288℃のはんだ浴に10秒間浮かべても変形しない請求項1に記載した樹脂フィルムの製造方法であって、
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、無機フィラー6質量部以上28質量部以下と、繊維状で繊維長が0.2mm以上7mm以下、平均繊維径が11μm以上15μm以下の芳香族ポリアミド樹脂2質量部以上5質量部以下とを含有する成形材料を溶融混練するとともに、無機フィラーを平均粒子径が2μm以上20μm以下、アスペクト比が5以上200以下の合成マイカ、炭酸カルシウム、又は非晶質シリカとし、成形材料を押出成形機のダイスにより樹脂フィルムに押出成形し、この樹脂フィルムを冷却ロールに接触させて冷却することを特徴としている。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1に記載の樹脂フィルムを有するプリント配線板であることを特徴としている。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1に記載の樹脂フィルムを有するカバーレイであることを特徴としている。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1に記載の樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの両面のうち、少なくとも片面に積層される接着層とを有する積層体であることを特徴としている。
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1に記載の樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの両面のうち、少なくとも片面に積層される金属層とを有する積層体であることを特徴としている。
ここで、特許請求の範囲におけるポリアリーレンエーテルケトン樹脂がポリエーテルケトンケトン樹脂の場合、パラ位及び又はメタ位で結合したモノマー単位からなり、通常はこれらの共重合体である。また、無機フィラーである合成マイカは、非膨潤性、膨潤性、親油性等に分類されるが、非膨潤性が好ましい。繊維状の芳香族ポリアミド樹脂は、単線と撚線のいずれでも良い。また、樹脂フィルムには、樹脂フィルムの他、樹脂シートが含まれ、透明、不透明、半透明、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを特に問うものではない。
樹脂フィルムは、プリント配線板、カバーレイ、積層体の他、含浸用、スピーカの振動板用、温湿度センサ用等にも利用することができる。また、積層体の接着層は、金属層上に積層しても良いし、上方の金属層に積層されても良い。さらに、樹脂フィルムを製造する場合、少なくとも成形材料の溶融混練時には、成形材料中にエアを混在させて樹脂フィルムの低誘電性を向上させるようにしても良い。
本発明によれば、成形材料に線膨張係数を低下させる無機フィラーを配合し、樹脂フィルムの加熱寸法安定性を向上させるので、金属層等との加熱寸法特性の相違を抑制することができる。また、樹脂フィルムを、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料により成形するので、良好な耐熱性を得ることができる他、樹脂フィルムの周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下で、かつ誘電正接が0.007以下となり、比誘電率と誘電正接の値を従来よりも低くできる。さらに、成形材料に芳香族ポリアミド樹脂をも配合するので、低誘電特性のさらなる向上が期待できる。
本発明によれば、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、無機フィラー6質量部以上28質量部以下と、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂2質量部以上5質量部以下とを含むので、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂により製造したフィルムの低誘電特性、耐熱性、加熱寸法安定性等をそれぞれ向上させることができるという効果がある。
また、無機フィラーの平均粒子径が2μm以上20μm以下なので、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂中で無機フィラーを略均一に分散させることができ、樹脂フィルムの靱性の低下防止が期待できる。また、無機フィラーが樹脂フィルムから突出し、樹脂フィルムが粗れるのを防止することもできる。
また、無機フィラーのアスペクト比が5以上200以下の範囲なので、線膨張係数の低下を通じ、樹脂フィルムの加熱寸法安定性を向上させることができ、しかも、樹脂フィルムの押出方向と幅方向の機械的特性、及び加熱寸法安定性の異方性が過剰に大きくなるのを防ぐことが可能となる。また、樹脂フィルムの靱性低下も期待できる。
また、芳香族ポリアミド樹脂の繊維長が0.2mm以上7mm以下の範囲なので、実用性を向上させることができる。また、芳香族ポリアミド樹脂の平均繊維径が11μm以上15μm以下の範囲なので、低誘電特性の向上や取り扱いの便宜を図ることができ、樹脂フィルムから芳香族ポリアミド樹脂の繊維が突出するのを防止することが可能となる。
また、樹脂フィルムの周波数1GHz付近における比誘電率が空洞共振器摂動法により測定された場合に1.5以上2.6以下であり、樹脂フィルムの周波数28GHz付近における比誘電率がファブリペロー法により測定された場合に1.5以上2.7以下なので、電気信号の伝搬速度の低下を防止することができる。
請求項2記載の発明によれば、樹脂フィルムを溶融押出成形法により成形するので、樹脂フィルムの厚さ精度、生産性、ハンドリング性を向上させたり、製造設備を簡略化することが可能となる。
請求項3記載の発明によれば、大容量の高周波信号を高速で送受信可能な高周波回路用のプリント配線板を得ることができる。また、係るプリント配線板の使用により、第五世代移動通信システムの実現に寄与することができる。
請求項4記載の発明によれば、回路基板の配線パターンをカバーレイにより電気的、機械的、化学的、熱的に保護することが可能となる。
請求項5記載の発明によれば、樹脂フィルムの少なくとも片面に接着層を積層するので、接着性の耐熱粘着テープ等からなる積層体を得ることができる。
請求項6記載の発明によれば、樹脂フィルムの少なくとも片面に金属層を積層するので、銅張積層板や導電性の複合材料等からなる積層体を得ることができる。
本発明に係る樹脂フィルムとプリント配線板の実施形態を模式的に示す断面説明図である。 本発明に係る樹脂フィルム及びその製造方法の実施形態を模式的に示す全体説明図である。 本発明に係る樹脂フィルムとプリント配線板の第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。 本発明に係るカバーレイの実施形態を模式的に示す断面説明図である。 本発明に係る積層体の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるプリント配線板1は、図1や図2に示すように、薄い帯形の樹脂フィルム2と、この樹脂フィルム2に積層される金属層3とを積層構造に備えた第五世代移動通信システム(5G)用の高周波回路基板であり、樹脂フィルム2が、熱可塑性樹脂であるポリアリーレンエーテルケトン樹脂、線膨張係数を低下させる無機フィラー、及び低誘電特性に資する繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を含有する成形材料4により製造される。
樹脂フィルム2は、ポリアリーレンエーテルケトン(PAEK)樹脂含有の成形材料4を用いた成形法により、2μm以上1000μm以下の厚さのフィルムに成形される。成形材料4は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、無機フィラー5質量部以上30質量部以下と、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂0.5質量部以上15質量部以下とにより、調製される。この成形材料4には、本発明の特性を損なわない範囲で上記樹脂や無機フィラーの他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物等が選択的に添加される。
成形材料4のポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、アリーレン基、エーテル基、及びカルボニル基からなる結晶性の樹脂であり、例えば特許5709878号公報や特許第5847522号公報、あるいは文献〔株式会社旭リサーチセンター:先端用途で成長するスーパーエンプラ・PEEK(上)〕等に記載された樹脂があげられる。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の具体例としては、例えば化学式(1)で表される化学構造式を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、化学式(2)で表される化学構造を有するポリエーテルケトン(PEK)樹脂、化学式(3)で表され、T及び又はIで表される化学構造を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、化学式(4)の化学構造を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、あるいは化学式(5)の化学構造を有するポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等があげられる。
Figure 0007498601000001
Figure 0007498601000002
Figure 0007498601000003
Figure 0007498601000004
Figure 0007498601000005
これらポリアリーレンエーテルケトン樹脂の中では、易入手性、コスト、及び樹脂フィルム2の成形性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂とが好ましい。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、ビクトレック社製の製品名:Victrex Powderシリーズ、Victrex Granulesシリーズ、ダイセル・エボニック社製の製品名:ベスタキープシリーズ、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製の製品名:キータスパイア PEEKシリーズ、アルケマ社製の製品名:Kepstan(登録商標) PEEK等があげられる。また、ポリエーテルケトンケトン樹脂の具体例としては、アルケマ社製の製品名:KEPSTANシリーズが該当する。
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、1種単独でも良いし、2種以上を混合して使用しても良い。また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、化学式(1)~(5)で表される化学構造を2つ以上有する共重合体でも良い。ポリアリーレンエーテルケトン樹脂は、通常、粉状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態で使用される。また、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば文献〔株式会社旭リサーチセンター:先端用途で成長するスーパーエンプラ・PEEK(上)〕に記載された製法があげられる。
成形材料4の無機フィラーは、線膨張係数の低下を通じ、樹脂フィルム2の加熱寸法安定性に資する各種のマイカ、タルク、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、非晶質シリカ等からなる。この無機フィラーの平均粒子径は、0.3μm以上50μm以下、好ましくは1μm以下30μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下、さらに好ましくは3μm以上10μm以下が良い。
これは、無機フィラーの平均粒子径が0.3μm未満の場合には、無機フィラーが凝集しやすく、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂中における均一分散性が低下するからである。これに対し、無機フィラーの平均粒子径が50μmを越える場合には、樹脂フィルム2の靱性が低下することがあるからである。また、無機フィラーの平均粒子径が50μmを越える場合、無機フィラーが樹脂フィルム2の表面から突出し、樹脂フィルム2の表面が粗れて伝送特性に支障を来すからである。
無機フィラーのアスペクト比は、5以上220以下が良い。ここで、アスペクト比は、無機フィラーが鱗片状粉末の場合、粒子の径を厚みで割った値をいう。無機フィラーの具体的なアスペクト比は、5以上220以下、好ましくは10以上210以下、より好ましくは20以上210以下、さらに好ましくは30以上200以下が良い。これは、アスペクト比が5未満の場合には、樹脂フィルム2の線膨張係数の低下を図ることができず、しかも、樹脂フィルム2の押出方向と幅方向の機械的特性、及び加熱寸法安定性の異方性が大きくなる傾向にあるからである。これに対し、アスペクト比が220を越える場合には、樹脂フィルム2の靱性が低下するからである。
無機フィラーは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部に対して5質量部以上30質量部以下、好ましくは6質量部以上28質量部以下、より好ましくは8質量部以上25質量部以下の範囲で添加される。これは、無機フィラーの添加量が5質量部未満の場合には、樹脂フィルム2の線膨張係数の低減を図ることができないという理由に基づく。これに対し、無機フィラーの添加量が30質量部を越える場合には、成形材料4より得られる樹脂フィルム2の靱性が失われて著しく脆くなり、樹脂フィルム2が成形中に損傷して製膜できないおそれがあるという理由に基づく。
無機フィラーは各種のマイカ、タルク、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、非晶質シリカ等からなるが、これらの中では、各種のマイカが最適である。マイカ(雲母ともいう)は、フィロケイ酸鉱物雲母族に属する板状結晶であり、底面に完全な劈開を有していることが特徴の鉱物である。このマイカは、自然界で産出される天然マイカ(白雲母、黒雲母、金雲母等)と、タルクを主原料として人工的に製造される合成マイカの2種類に分類され、工業的に優れた電気絶縁材料として広く用いられている。
天然マイカは、その産地により組成や構造が異なり、加えて不純物を多く含むため、品質の安定した高周波回路基板用の樹脂フィルム2の製造には不適切である。これに対し、合成マイカは、人工的に製造されたマイカで、組成や構造が一定であり、不純物も少ないため、加熱寸法安定性等に安定した高品質の高周波回路基板用の樹脂フィルム2の製造に好適である。また、合成マイカは、水酸基がフッ素〔F基〕で置換されているので、天然マイカより耐熱性や低吸水性に優れる。したがって、本発明で使用されるマイカは、天然マイカより合成マイカが好ましい。
合成マイカは、水に対する挙動の違いにより、非膨潤性マイカと膨潤性マイカとに分類される。非膨潤マイカは、水と接触しても寸法安定性等に変化が生じにくいタイプの合成マイカである。これに対し、膨潤性マイカは、空気中の水分等を吸収して膨潤し、劈開してしまう性質の合成マイカである。膨潤性マイカを使用した場合、膨潤性マイカが水分を含むため、高周波回路基板用の樹脂フィルム2が成形中に発泡してしまうおそれがある。このため、本発明で使用可能な合成マイカは加熱寸法安定性や耐水性に優れる非膨潤性マイカが好ましく、より好ましくは600℃以上で熱処理を施された合成マイカが最適である。
非膨潤性の合成マイカとしては、特に限定されないが下記一般式で示される合成マイカが好適に使用される。
一般式:X1/3~1.02~3(Z10)F1.5~2.0
ここで、Xは配位数12の層間をしめる陽イオン、Yは配位数6の八面体席をしめる陽イオン、Zは配位数4の四面体をしめる陽イオンであり、それぞれ以下の1種または2種以上のイオンで置換される〔X:Na、K、Li、Rb、Ca2+、Ba2+及びSr2+、Y:Mg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Zn2+、Ti2+、Al3+、Cr3+、Fe3+、Li、Z:Al3+、Fe3+、Si4+、Ge4+、B3+〕。
非膨潤性の合成マイカとしては、例えばフッ素金雲母(KMg(AlSi10)F)、フッ素四ケイ素雲母(KMg2.5(Si10)F)、カリウムテニオライト(KMgLi(Si10)F)があげられる。これらの中では、非膨潤性のフッ素四ケイ素雲母が最適である。この合成マイカの具体例としては、耐熱性に優れる高純度で微粉末の片倉コープアグリ社製の非膨潤性雲母〔製品名:ミクロマイカMKシリーズ〕、トピー工業社製のフッ素金雲母〔PDMシリーズ〕、トピー工業社製のフッ素四ケイ素雲母〔PDMシリーズ〕等があげられる。
合成マイカの製造方法としては、(1)溶融法、(2)固相反応法、(3)インターカレーション法等の方法があげられる。(1)の溶融法は、シリカ、酸化マグネシウム、アルミナ、フッ化物、長石、カラン岩、それに各種金属の酸化物や炭素塩等の原料を組み合わせて混合し、1300℃の以上の高温で溶融して徐冷する製造法、(2)の固相反応法は、タルクを主原料とし、このタルクに、フッ化アルカリ、ケイフッ化アルカリ、さらに遷移金属を含む各種金属の酸化物や炭酸塩等を加えて混合し、1000℃前後で反応させる製造法、(3)のインターカレーション法は、タルクを主原料とするインターカレーション法により製造する製造法である。
合成マイカは、樹脂フィルム2の特性を損なわない範囲において、例えば、シランカップリング剤〔ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトシキシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等〕、シラン剤〔メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリルシラン)ヘキサン、トリフルオロプロピルメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、イミダゾールシラン等〕、チタネート系カップリング剤〔イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジートリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシ-1-ブチル)ビス(ジートリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等〕、アルミネート系カップリング剤〔アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等〕等からなる各種カップリング剤で処理を施すことができる。
無機フィラーが炭酸カルシウムの場合、この炭酸カルシウムの具体例としては、微粉末のホワイトンP‐10〔白石カルシウム社製:製品名〕があげられる。また、非晶質シリカの具体例としては、SC‐5500‐SQ〔アドマテックス社製:製品名〕があげられる。
成形材料4の繊維状の芳香族ポリアミド樹脂は、アミド結合により多数のモノマーが結合してできた繊維状の樹脂で、芳香族骨格で構成されるアラミド繊維であり、優れた低誘電特性が期待できる他、結晶性が高いので耐薬品性や耐油性等にも優れる。この芳香族ポリアミド樹脂としては、分子骨格のベンゼン環に結合するアミド基がパラ位で結合しているパラ型アラミド繊維と、分子骨格のベンゼン環に結合するアミド基がメタ位で結合しているメタ型アラミド繊維と、これらパラ型アラミド繊維とメタ型アラミド繊維の分子骨格を有する共重合体とがあげられる。
芳香族ポリアミド樹脂の具体例としては、高強度、軽量で高い耐久性を有する帝人社製のパラ系アラミド繊維〔製品名:トワロンシリーズ〕、帝人テクノプロダクツ社で高強度・高弾性率のパラ系アラミド繊維〔製品名:テクノーラT320〕、長期耐熱性や自己消化性に優れる帝人社製のメタ系アラミド繊維〔製品名:コーネックスB2.2〕等があげられる。トワロンとコーネックスは、帝人社の登録商標である。
芳香族ポリアミド樹脂の繊維長は、特に限定されるものではないが、実用上、0.2mm以上7mm以下、好ましくは0.2mm以上6.5mm以下、より好ましくは0.25mm以上6mm以下が良い。また、芳香族ポリアミド樹脂の平均繊維径は、5μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上20μm以下、より好ましくは11μm以上15μm以下が良い。これは、平均繊維径が5μm未満の場合には、樹脂フィルム2の低誘電特性の向上や取り扱いに支障を来すからである。これに対し、平均繊維径が50μmを越える場合には、芳香族ポリアミド樹脂の繊維が樹脂フィルム2から露出しやすくなるからである。
芳香族ポリアミド樹脂は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、好ましくは1質量部以上10質量部以下、より好ましくは2質量部以上5質量部以下の範囲で添加される。これは、芳香族ポリアミド樹脂の添加量が0.5質量部未満の場合には、樹脂フィルム2の線膨張係数が低減せず、樹脂フィルム2の加熱寸法安定性が悪化するからである。これに対し、15質量部を越える場合には、芳香族ポリアミド樹脂の分散性が悪化し、凝集体が樹脂フィルム2から突出して樹脂フィルム2の製造に支障を来したり、樹脂フィルム2の製造が困難になるからである。
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、合成マイカ等の無機フィラー、芳香族ポリアミド樹脂は、所定の時間溶融混練されて樹脂フィルム2用の成形材料4となるが、この成形材料4を調製する方法として、(1)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、合成マイカ等の無機フィラー、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を撹拌混合することなく、溶融したポリアリーレンエーテルケトン中に合成マイカ等の無機フィラーと芳香族ポリアミド樹脂とを添加し、これらを溶融混練して成形材料4を調製する方法、(2)ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、合成マイカ等の無機フィラー、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を室温(0℃以上50℃以下程度の温度)で撹拌混合させた後に溶融混練し、成形材料4を調製する方法があげられる。これら(1)、(2)の方法は、いずれでも良いが、分散性や作業性の観点からすると、(1)の方法が最適である。
(1)の方法について具体的に説明すると、成形材料4を調製するには、先ず、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー単軸押出機、多軸押出機(二軸押出機、三軸押出機、四軸押出機等)等の溶融混練機で溶融し、このポリアリーレンエーテルケトン樹脂に合成マイカ等の無機フィラーと芳香族ポリアミド樹脂とを添加して溶融混練分散させることにより、成形材料4を調製する。
溶融混練機の調製時の温度は、溶融混練分散が可能でポリアリーレンエーテルケトン樹脂が分解しない温度であれば、特に制限されないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、350℃以上420℃以下、好ましくは370℃以上400℃以下の範囲が良い。
これは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が溶融しないので、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料4を溶融押出成形することができず、逆に熱分解温度を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。調製された成形材料4は、通常は塊状、ストランド状、シート状、棒状に押し出された後、粉砕機あるいは裁断機で塊状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態で使用される。
次に(2)の方法について具体的に説明すると、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、合成マイカ等の無機フィラー、芳香族ポリアミド樹脂を攪拌混合して攪拌混合物を得るには、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、V型混合機、ナウターミキサー、リボンブレンダー、あるいは万能攪拌ミキサー等を使用する。この際、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の形状は、合成マイカ等の無機フィラーや芳香族ポリアミド樹脂とより均一に分散可能な粉体状であるのが好ましい。粉体に粉砕する方法としては、例えばせん断粉砕法、衝撃粉砕法、衝突粉砕法、冷凍粉砕法、溶液粉砕法等があげられる。
成形材料4は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂、合成マイカ等の無機フィラー、芳香族ポリアミド樹脂の攪拌混合物をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、多軸押出機(二軸押出機、三軸押出機、四軸押出機等)等の溶融混練機で溶融混練し、分散させることで調製される。
この調製時における溶融混練機の温度は、溶融混練分散が可能でポリアリーレンエーテルケトン樹脂が分解しない温度であれば、特に制限はないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、(1)の方法の場合と同様の理由から、350℃以上420℃以下、好ましくは370℃以上400℃以下の範囲が良い。調製された成形材料4、通常は塊状、ストランド状、シート状、棒状に押し出された後、粉砕機あるいは裁断機で塊状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態で使用される。
成形材料4は、溶融押出成形法、カレンダー成形法、あるいはキャスティング成形法等の各種成形法により樹脂フィルム2に成形される。これらの成形法の中では、ハンドリング性の向上や設備の簡略化の観点から、溶融押出成形法が最適である。この溶融押出成形法は、図2に示すように、単軸押出成形機や二軸押出成形機等の溶融押出成形機10で成形材料4を溶融混練し、溶融押出成形機10のTダイス13から複数の冷却ロール16と圧着ロール17方向に帯形の樹脂フィルム2を連続的に押出成形する方法である。
溶融押出成形機10は、図2に示すように、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料4を溶融混練してTダイス13方向に押し出すよう機能する。この溶融押出成形機10の上流側の上部後方には、成形材料4用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、へリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスを必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料4のポリアリーレンエーテルケトン樹脂の酸化劣化や酸素架橋が有効に防止される。
溶融押出成形機10の温度は、樹脂フィルム2の成形が可能で、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が分解しない温度であれば、特に制限されるものでないが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には、350℃以上420℃以下、好ましくは370℃以上400℃以下に調整される。これは、溶融押出成形機10の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が溶融せずに樹脂フィルム2の成形が困難となり、逆に熱分解温度以上の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が激しく分解するという理由に基づく。
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、帯形の樹脂フィルム2を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の押出時の温度は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、350℃以上420℃以下、好ましくは370℃以上400℃以下に調整される。これは、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料4の溶融押出成形に支障を来し、逆に熱分解温度を越える場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
Tダイス13の上流の連結管14には、ギアポンプ15が装着されることが好ましい。このギアポンプ15は、溶融押出成形機10により溶融混練された成形材料4を一定の流量で、かつ高精度にTダイス13に移送する。
複数の冷却ロール16は、例えば圧着ロール17よりも拡径の回転可能な金属ロールからなり、Tダイス13の下方からその下流方向に一列に配列軸支されており、押し出された樹脂フィルム2を隣接する圧着ロール17との間に狭持するとともに、隣接する冷却ロール16と冷却ロール16との間に狭持し、圧着ロール17と共に樹脂フィルム2を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御する。
各冷却ロール16は、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+30℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+160℃〕以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+50℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+140℃〕以下、さらに好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+60℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+120℃〕の温度範囲に調整され、樹脂フィルム2に摺接する。
この点について説明すると、各冷却ロール16の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕未満の場合には、樹脂フィルム2の相対結晶化度が80%未満となり、良好な加熱寸法安定性やはんだ耐熱性が得られないという問題が生じる。これに対し、各冷却ロール16の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上の場合には、樹脂フィルム2の製造中に樹脂フィルム2が冷却ロール16に貼り付き、破断するおそれがある。各冷却ロール16の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒータや誘導加熱等があげられる。
複数の圧着ロール17は、溶融押出成形機10のTダイス13下方からその下流方向に一対が回転可能に軸支され、一列に並んだ複数の冷却ロール16を挟持し、冷却ロール16に樹脂フィルム2を圧接する。この一対の圧着ロール17は、下流側に位置する圧着ロール17の下流に、樹脂フィルム2用の巻取機18が設置され、この巻取機18の巻取管19との間には、樹脂フィルム2の側部にスリットを形成するスリット刃20が少なくとも昇降可能に配置されており、このスリット刃20と巻取機18との間には、樹脂フィルム2にテンションを作用させて円滑に巻き取るためのテンションロール21が回転可能に必要数軸支される。
各圧着ロール17の周面には、樹脂フィルム2と冷却ロール16との密着性を向上させるため、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被覆形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
圧着ロール17は、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れるポリアリーレンエーテルケトン樹脂フィルム2の成形が可能となる。この金属弾性ロールの具体例としては、金属スリーブロール、エアーロール〔ディムコ社製:製品名〕、UFロール〔日立造船社製:製品名〕等が該当する。
このような圧着ロール17は、冷却ロール16と同様、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+20℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点未満、好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+30℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+160℃〕以下、より好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+50℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+140℃〕以下、さらに好ましくはポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+60℃〕以上ポリアリーレンエーテルケトン樹脂の〔ガラス転移点+120℃〕の温度範囲に調整され、樹脂フィルム2に摺接する。
圧着ロール17の温度が係る温度範囲に調整されるのは、樹脂フィルム2の相対結晶化を80%以上に調整するためである。すなわち、圧着ロール17の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂フィルム2の〔ガラス転移点+20℃〕未満の場合には、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂フィルム2の相対結晶化度が80%未満となり、良好な加熱寸法安定性やはんだ耐熱性が得られないという問題が生じる。また、圧着ロール17の温度がポリアリーレンエーテルケトン樹脂の融点以上の場合には、樹脂フィルム2の製造中に樹脂フィルム2が冷却ロール16に貼り付き、破断のおそれがある。
各圧着ロール17の温度調整や冷却方法としては、冷却ロール16同様、限定されるものではなく、例えば空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒータや誘電加熱等があげられる。
上記において、高周波回路基板用の樹脂フィルム2を製造する場合には図2に示すように、先ず、溶融押出成形機10の原料投入口11に、成形材料4を同図に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料4のポリアリーレンエーテルケトン樹脂、合成マイカ等の無機フィラー、芳香族ポリアミド樹脂を溶融混練し、Tダイス13から高温の樹脂フィルム2を連続的に帯形に押し出す。
この際、成形材料4の溶融押出前における含水率は、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以上500ppm以下に調整される。これは、含水率が2000ppmを越える場合には、Tダイス13から押し出された直後、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が発泡するおそれがあるからである。
高温の樹脂フィルム2を押し出したら、圧着ロール17、複数の冷却ロール16、圧着ロール17、テンションロール21、巻取機18の巻取管19に順次巻架し、高温の樹脂フィルム2を冷却ロール16により冷却した後、樹脂フィルム2の両側部をスリット刃20でそれぞれカットするとともに、巻取機18の巻取管19に順次巻き取れば、高周波回路基板用の樹脂フィルム2を製造することができる。この樹脂フィルム2製造の際、樹脂フィルム2の表面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、樹脂フィルム2表面の摩擦係数を低下させることができる。
樹脂フィルム2の厚さは、2μm以上1000μm以下であれば特に限定されるものではないが、高周波回路基板の厚さの充分な確保、ハンドリング性や薄型化の観点からすると、好ましくは10μm以上700μm以下、より好ましくは20μm以上400μm以下、さらに好ましくは25μm以上125μm以下が良い。
樹脂フィルム2の周波数800MHz以上100GHz以下、好ましくは1GHz以上90GHz以下、より好ましくは10GHz以上85GHz以下、さらに好ましくは25GHz以上80GHz以下の範囲における比誘電率は、高周波数帯を活用した高速通信の実現の観点から、3.5以下、好ましくは3.3以下、より好ましくは3.1以下、さらに好ましくは3.0以下が良い。この比誘電率の下限は、特に制約されるものではないが、実用上1.5以上である。
具体的には、樹脂フィルム2の周波数1GHzにおける比誘電率が3.4以下、周波数10GHzにおける比誘電率が3.17以下、周波数28GHz付近における比誘電率が3.29以下、周波数76.5GHzにおける比誘電率が3.42以下が好ましい。これは、樹脂フィルム2の周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5を越えると、電気信号の伝搬速度が低下するため、高速通信に不適であるという問題が生じるからである。
樹脂フィルム2の周波数800MHz以上100GHz以下、好ましくは1GHz以上90GHz以下、より好ましくは10GHz以上85GHz以下、さらに好ましくは25GHz以上80GHz以下の範囲における誘電正接は、高周波数帯を活用した高速通信を実現するため、0.007以下、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.004以下、さらに好ましくは0.003以下が良い。この誘電正接の下限は、特に限定されるものではないが、実用上0.0001以上である。
具体的には、樹脂フィルム2の周波数1GHzにおける誘電正接が0.003以下、周波数10GHz付近における誘電正接が0.003以下が望ましい。また、周波数28GHz付近における誘電正接が0.004以下、周波数76.5GHz付近における誘電正接が0.0050以下が良い。これらは、周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における誘電正接が0.007を越える場合は、損失が大きく、信号伝達率が低下するため、大容量通信には不適切であるという理由に基づく。
これら比誘電率と誘電正接の測定方法としては、特に制約されるものではないが、同軸プローブ法、同軸Sパラメータ法、導波管Sパラメータ法、フリースペースSパラメータ法等の反射・伝送(Sパラメータ)法、ストリップライン(リング)共振器を用いた測定法、空洞共振器摂動法、スプリットポスト誘電体共振器を用いた測定法、円筒型(スプリットシリンダー)空洞共振器を用いた測定法、マルチ周波数平衡形円板共振器を用いた測定法、遮断円筒導波管空洞共振器を用いた測定法、ファブリペロー共振器を用いた開放型共振器法等の共振器法等の方法があげられる。
また、干渉計開放型を使用するファブリペロー法、空洞共振器摂動法により高周波数の比誘電率及び誘電正接を求める方法、相互誘導ブリッジ回路による3端子測定法等があげられる。これらの中では、高分解性に優れるファブリペロー法や空洞共振器摂動法の選択が最適である。
樹脂フィルム2の加熱寸法安定性は、線膨張係数により表すことができる。この線膨張係数は、樹脂フィルム2の押出方向と幅方向(押出方向と直角方向)共に1ppm/℃以上68ppm/℃以下、好ましくは20ppm/℃以上67ppm/℃以下、より好ましくは28ppm/℃以上66ppm/℃以下が良い。これは、線膨張係数が1ppm/℃以上68ppm/℃以下の範囲から逸脱すると、樹脂フィルム2と金属層3との積層時にカールや反りが生じやすくなり、しかも、樹脂フィルム2と金属層3とが剥離してしまうおそれがあるからである。
樹脂フィルム2の耐熱性は、高周波回路基板の製造の便宜を考慮すると、はんだ耐熱性で評価されるのが望ましい。具体的には、樹脂フィルム2を288℃のはんだ浴に10秒間浮かべ、樹脂フィルム2に変形やシワの発生が認められた場合には、耐熱性に問題有と評価され、樹脂フィルム2に変形やシワの発生が認められない場合には、耐熱性に問題無と評価される。
次に、高周波回路基板を製造する場合には、製造した樹脂フィルム2上に金属層3を形成し、その後、金属層3に導電回路の配線パターンを形成すれば、高周波回路基板を製造することができる。金属層3は、樹脂フィルム2の表裏両面、表面、裏面のいずれかの面に形成され、後から導電回路の配線パターンが形成される。この金属層3に用いられる導電体としては、通常、例えば電気抵抗の小さい銅、金、銀、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、スズ等の金属、あるいはこれら金属からなる合金があげられる。
金属層3の形成方法としては、(1)樹脂フィルム2と銅箔等の金属薄膜とを熱融着して金属層3を形成する方法、(2)樹脂フィルム2と銅箔等の金属薄膜とを接着剤で接着することにより、金属層3を形成する方法、(3)樹脂フィルム2上にシード層を形成するとともに、このシード層上に金属薄膜を積層形成し、これらシード層と金属薄膜とを金属層3とする方法等があげられる。
(1)の方法は、樹脂フィルム2と金属薄膜とをプレス成形機あるいはロール間に挟み、加熱・加圧して金属層3を形成する方法である。この方法の場合、金属薄膜の厚さは、1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上80μm以下、より好ましくは10μm以上70μm以下の範囲内が良い。
樹脂フィルム2あるいは金属薄膜の表面は、熱融着時の融着強度を向上させるため、微細な凹凸を形成することができる。また、樹脂フィルム2あるいは金属薄膜の表面をコロナ照射処理、紫外線照射処理、プラズマ照射処理、フレーム照射処理、イトロ照射処理、酸化処理、ヘアライン加工、サンドマット加工等で表面処理しても良い。また、樹脂フィルム2あるいは金属薄膜の表面をシランカップリング剤、シラン剤、チタンネート系カップリング剤、あるいはアルミネート系カップリング剤で処理することもできる。
(2)の方法は、樹脂フィルム2と金属薄膜の間にエポキシ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂系接着剤、ビスマレイミド樹脂系接着剤等の接着剤を配置し、プレス成形機あるいはロール間に挟んだ後、加熱・加圧して金属薄膜を樹脂フィルム2上に形成する方法である。この方法の場合、金属薄膜の厚さは、1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上80μm以下、より好ましくは10μm以上70μm以下の範囲内が良い。また、接着剤の厚さは、0.3μm以上100μm以下、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは3μm以上30μm以下の範囲内が良い。
樹脂フィルム2あるいは金属薄膜の表面は、上記同様、接着強度を向上させる観点から、微細な凹凸を形成することができる。また、樹脂フィルム2あるいは金属薄膜の表面をコロナ照射処理、紫外線照射処理、プラズマ照射処理、フレーム照射処理、イトロ照射処理、酸化処理、ヘアライン加工、サンドマット加工等で表面処理を施しても構わない。また、樹脂フィルム2あるいは金属薄膜の表面を上記同様、シランカップリング剤、シラン剤、チタンネート系カップリング剤、あるいはアルミネート系カップリング剤で処理することも可能である。
(3)の方法は、樹脂フィルム2上に接着用のシード層をスパッタリング法、蒸着法、あるいはめっき法等の方法により形成し、このシード層上に金属薄膜を熱融着法や蒸着法、めっき法により形成し、これらシード層と金属薄膜とを金属層3とする方法である。シード層としては、例えば銅、金、銀、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、スズ、亜鉛等の金属、あるいはこれら金属からなる合金を使用することができる。シード層の厚さは、通常、0.1μm以上2μm以下の範囲である。
樹脂フィルム2上にシード層を形成する際、これらの接着強度を改良する目的でアンカー層を形成することが可能である。このアンカー層は、ニッケルあるいはクロム等の金属があげられるが、好ましくは環境性に優れるニッケルが最適である。
金属薄膜としては、例えば銅、金、銀、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、スズ、亜鉛等の金属あるいはこれら金属からなる合金を使用することができる。この金属薄膜は、1種類の金属からなる単層でも良いし、2種類以上の金属からなる複層や多層でも良い。金属薄膜の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下が良い。
シード層と金属薄膜からなる金属層3は、0.2μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下、さらに好ましくは5μm以上10μm以下の範囲内が良い。シード層と金属薄膜は、同じ金属でも良いし、異なる金属でも良い。また、金属薄膜の表面上には、表面の腐食を防止するため、金やニッケル等の金属保護層を被覆形成しても良い。
これらの金属層3の形成方法の中では、樹脂フィルム2と金属薄膜とを熱融着する(1)の方法が最適である。これは、(2)の方法の場合には、樹脂フィルム2と金属薄膜とを接着剤で接着する必要があるので、接着剤の誘電特性が反映され、高周波回路基板の比誘電率や誘電正接が上昇してしまうという事態が生じるからである。また、(3)の方法の場合には、金属層3の形成工程が煩雑となり、コスト高を招くという理由に基づく。
導電回路の配線パターンは、エッチング法、めっき法、あるいは印刷法等により必要数形成することができる。この配線パターンの形成方法には、アンダーカットや配線細りの発生を最小限に止め、良好な配線形成を可能とする硫酸‐過酸化水素系、塩化鉄のエッチング剤等の使用が可能である。このような所定形状の配線パターンを形成すれば、低誘電特性に優れ、信号の損失を抑制することのできる高周波回路基板を製造することができる。
上記によれば、成形材料4に非膨潤性の合成マイカ等からなる無機フィラーを配合するので、炭酸カルシウムやシリカよりも線膨張係数の低下が期待できる。この線膨張係数の低下により、樹脂フィルム2の加熱寸法安定性が向上し、銅箔等からなる金属層3との加熱寸法特性の相違を抑制することができ、金属層3を積層して高周波回路基板を製造する場合に、高周波回路基板がカールしたり、変形するのを有効に防止することができる。
また、樹脂フィルム2を、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂含有の成形材料4により成形するので、優れた耐熱性を得ることができる他、樹脂フィルム2の周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下で、かつ誘電正接が0.007以下となり、比誘電率と誘電正接の値を従来よりも低くすることができる。したがって、大容量の高周波信号を高速で送受信可能な高周波回路基板を得ることが可能となる。また、高周波回路基板の使用により、第五世代移動通信システムの実現に大いに寄与することが可能となる。さらに、成形材料4に芳香族ポリアミド樹脂を配合して樹脂フィルム2の製造時にエアを介在させるので、低誘電特性が大幅に向上し、優れた低誘電特性を得ることができる。
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、樹脂フィルム2の表裏両面に配線パターン用の銅箔等からなる金属薄膜を熱融着法によりそれぞれ積層し、この一対の金属薄膜により金属層3を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、樹脂フィルム2の両面に金属層3をそれぞれ形成するので、高周波回路基板の配線の高密度化や高周波回路基板の多層化が容易となるのは明らかである。
次に、図4は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、回路基板5の表面に、配線パターン6を被覆する透明の樹脂フィルム2を接着剤層7により積層接着し、樹脂フィルム2を回路保護用のカバーレイ8とするようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、回路基板5の配線パターン6をカバーレイ8により電気的、機械的、化学的、熱的に保護することができるのは明らかである。
次に、図5は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、樹脂フィルム2の表面に、銅箔等からなる金属層3と接着層9とを積層してフレキシブルな積層体30を形成し、この積層体30を、回路基板5の配線パターン6との電気的な接続に使用される電気コネクタとするようにしている。
金属層3は、例えば複数本の銅箔が横一列に並ぶことで形成される。また、接着層9は、例えば導電性ポリマー等が配合され、導電性が付与される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、樹脂フィルム2の用途を拡大することができる。
なお、上記実施形態では合成マイカ1種類を主に使用したが、2種以上を併用しても良い。また、一枚の樹脂フィルム2に金属層3を積層したが、何らこれに限定されるものではなく、積層構造の複数枚の樹脂フィルム2に金属層3を新たに積層しても良い。また、樹脂フィルム2の表面に金属層3を熱融着法により積層し、金属層3を積層形成したが、何らこれに限定されるものではなく、蒸着法やめっき法により積層形成しても良い。
また、プリント配線板1や樹脂フィルム2を、自動車の衝突防止ミリ波レーダ装置、先進運転支援システム(ADAS)、人工知能(AI)等に用いても良い。さらに、樹脂フィルム2の表面に、銅箔等からなる金属層3を積層して屈曲可能な導電性の積層体9を形成しても良いし、樹脂フィルム2の表面に、接着層8を積層して屈曲可能な絶縁性の積層体9を形成することもできる。
以下、本発明に係る樹脂フィルム及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、高周波回路基板用の樹脂フィルムを製造するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部を160℃に加熱した除湿熱風乾燥器で12時間以上乾燥させた。
こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂を乾燥させたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を、同方向回転二軸押出機〔φ42mm、L/D=38、ベルストルフ社製 製品名:K660〕のスクリュー根元付近に設けられた第一供給口であるホッパーに投入した。
また、同方向回転二軸押出機の大気圧に開放されたベント口のすぐ隣のサイドフィーダーの第二供給口より、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂と無機フィラーである非膨潤性の合成マイカとを強制圧入した。繊維状の芳香族ポリアミド樹脂は、繊維長が6mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1080〕を選択した。また、非膨潤性の合成マイカは、市販されている平均粒子径3μm、アスペクト比30のフッ素四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100DS〕を選択した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂を投入し、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂と非膨潤性の合成マイカを圧入したら、これらを同方向回転二軸押出機のバレルの温度:350℃~370℃、スクリューの回転数:150rpm、時間当たりの吐出量:20kg/hrの条件下で溶融混練し、ストランド状に押出した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の溶融状態は、同方向回転二軸押出機のベント口から目視により観察した。このポリエーテルエーテルケトン樹脂、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂、合成マイカは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対し、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂2質量部、合成マイカ8質量部となるように添加した。同方向回転二軸押出機よりストランド状の押出成形物を押し出したら、この押出成形物を空冷固化した後、ペレット状にカッティングして成形材料を作製した。
次いで、得られた成形材料を幅900mmのTダイス付きの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、この溶融混練した成形材料をTダイスから連続的に押し出して高周波回路基板用の樹脂フィルムを帯形に押出成形した。単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューのタイプとした。また、単軸押出成形機の温度は380~400℃、Tダイスの温度は400℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管とギアポンプの温度は400℃に調整した。この単軸押出成形機に成形材料を投入する際、不可性ガス供給管により窒素ガス18L/分を供給した。
こうして高周波回路基板用の樹脂フィルムを成形したら、この樹脂フィルムを、図2に示すようなシリコーンゴム製の一対の圧着ロール、200℃、230℃、250℃の冷却ロールである複数の金属ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の6インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、連続した樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、厚さ50μm、長さ100m、幅650mmの樹脂フィルムを製造した。圧着ロールと巻取管との間には、樹脂フィルムの両側部を切断するスリット刃を昇降可能に配置し、巻取管とスリット刃との間には、樹脂フィルムにテンションを作用させるテンションロールを回転可能に軸支させた。
樹脂フィルムを製造したら、この樹脂フィルムの誘電特性と加熱寸法安定性をそれぞれ評価して表1にまとめた。誘電特性は比誘電率と誘電正接、加熱寸法安定性は線膨張係数で評価することとした。
・樹脂フィルムの誘電特性〔周波数:1GHz付近〕
樹脂フィルムの周波数:1GHz付近における誘電特性は、ネットワーク・アナライザー〔Anritsu社製 ネットワークアナライザ MS46122B〕を用い、空洞共振器摂動法により測定した。1GHz付近における誘電特性の測定は、空洞共振器を空洞共振器1GHz〔キーコム社製 型式;TMR‐IA〕とし、ASTMD2520に準拠して実施した。誘電特性の測定は、温度:23℃±1℃、湿度10%RH±5%RH環境下で実施した。
・樹脂フィルムの誘電特性〔周波数:28GHz付近〕
高周波回路基板用の樹脂フィルムの周波数:28GHz付近の誘電特性は、ネットワーク・アナライザー〔Anritsu社製 ネットワークアナライザ MS46122B〕を用い、開放型共振器法の一種であるファブリペロー法により測定した。共振器は、開放型共振器〔キーコム社製:ファブリペロー共振器 Model No.DPS03〕を使用した。
測定に際しては、開放型共振器冶具の試料台上に高周波回路基板用の樹脂フィルムを載せ、ベクトルネットワークアナライザー用いて開放型共振器法の一種であるファブリペロー法で測定した。具体的には、試料台の上に樹脂フィルムを載せない状態と、樹脂フィルムを載せた状態の共振周波数の差を利用する共振法により、比誘電率と誘電正接とを測定した。誘電特性の測定に用いた具体的な周波数は、28.29GHzである。
誘電特性の測定、具体的には28GHz付近の誘電特性は、温度:24℃、湿度10%環境下で所定の測定装置により測定した。所定の測定装置としては、28GHz付近はネットワーク・アナライザー〔Anritsu社製 ネットワークアナライザ MS46122B〕を使用した。
・樹脂フィルムの線膨張係数
樹脂フィルムの線膨張係数は、樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、樹脂フィルムの押出方向の線膨張係数を測定する場合には、押出方向20mm×幅方向4mm、幅方向の線膨張係数を測定する場合には、押出方向4mm×幅方向20mmの大きさに切り出して測定した。線膨張係数の測定に際しては、熱機械分析装置〔日立ハイテクサイエンス社製 製品名:SII//SS7100〕を用いた引張モードにより、荷重:50mN、昇温速度:5℃/min.の割合で25℃から250℃まで昇温速度:5℃/min.の割合で昇温し寸法の温度変化を測定し、25℃から125℃までの範囲の傾きにより線膨張係数[ppm/℃]を求めた。
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様であるが、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕2質量部に変更した。
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様であるが、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕2質量部に変更した。また、非膨潤性の合成マイカを、市販されている平均粒子径5μm、アスペクト比30のフッ素四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100〕8質量部に変更した。
〔実施例4〕
基本的には実施例1と同様であるが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂を、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 450G(以下、「450G」と略す)〕に変更した。また、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕2質量部に変更した。さらに、非膨潤性の合成マイカを、市販されている平均粒子径5μm、アスペクト比30のフッ素四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100〕8質量部に変更した。
Figure 0007498601000006
〔実施例5〕
基本的には実施例1と同様であるが、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕5質量部に変更した。また、非膨潤性の合成マイカを、市販されている平均粒子径3μm、アスペクト比30のフッ素四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100DS〕13質量部に変更した。樹脂フィルムを製造したら、この樹脂フィルムの誘電特性と加熱寸法安定性をそれぞれ評価して表2にまとめた。
〔実施例6〕
基本的には実施例1と同様であるが、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕5質量部に変更した。また、無機フィラーである合成マイカを、アスペクト比20の炭酸カルシウム〔白石カルシウム社製:製品名 ホワイトンP‐10〕12質量部に変更した。樹脂フィルムの厚さは、100μmに変更した。このような樹脂フィルムを製造したら、この樹脂フィルムの誘電特性と加熱寸法安定性をそれぞれ評価して表2に記載した。
〔実施例7〕
基本的には実施例1と同様であるが、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕5質量部に変更した。また、無機フィラーである合成マイカを、アスペクト比1.5の非晶質シリカ〔アドマテックス社製:製品名 SC‐5500‐SQ〕10質量部に変更した。樹脂フィルムの厚さは、100μmに変更した。このような樹脂フィルムを製造したら、この樹脂フィルムの誘電特性と加熱寸法安定性をそれぞれ評価して表2に記載した。
〔実施例8〕
基本的には実施例1と同様であるが、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕5質量部に変更した。また、非膨潤性の合成マイカを、市販されている平均粒子径3μm、アスペクト比30のフッ素四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100DS〕25質量部に変更した。樹脂フィルムの厚さは、100μmに変更した。このような樹脂フィルムを製造したら、この樹脂フィルムの誘電特性と加熱寸法安定性をそれぞれ評価して表2に記載した。
Figure 0007498601000007
〔比較例1〕
先ず、高周波回路基板用の樹脂フィルムを製造するため、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂として、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 450G(以下、「450G」と略す)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部を160℃に加熱した除湿熱風乾燥器で12時間以上乾燥させた。
こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂を乾燥させたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を、同方向回転二軸押出機〔φ42mm、L/D=38、ベルストルフ社製 製品名:K660〕のスクリュー根元付近に設けられた第一供給口であるホッパーに投入した。
また、同方向回転二軸押出機の大気圧に開放されたベント口のすぐ隣のサイドフィーダーの第二供給口より、無機フィラーである非膨潤性の合成マイカを強制圧入し、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を省略した。非膨潤性の合成マイカは、市販されている平均粒子径3μm、アスペクト比30のフッ素四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100DS〕を選択した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂を投入し、非膨潤性の合成マイカを圧入したら、これらを同方向回転二軸押出機のバレルの温度:350℃~370℃、スクリューの回転数:150rpm、時間当たりの吐出量:20kg/hrの条件下で溶融混練し、ストランド状に押出した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の溶融状態は、同方向回転二軸押出機のベント口から目視により観察した。このポリエーテルエーテルケトン樹脂と合成マイカは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対し、合成マイカ10質量部となるように添加した。同方向回転二軸押出機よりストランド状の押出成形物を押し出したら、この押出成形物を空冷固化した後、ペレット状にカッティングして成形材料を作製した。
次いで、得られた成形材料を幅900mmのTダイス付きの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、この溶融混練した成形材料をTダイスから連続的に押し出して高周波回路基板用の樹脂フィルムを帯形に押出成形した。単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューのタイプとした。また、単軸押出成形機の温度は380~400℃、Tダイスの温度は400℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管とギアポンプの温度は400℃に調整した。この単軸押出成形機に成形材料を投入する際、不可性ガス供給管により窒素ガス18L/分を供給した。
こうして高周波回路基板用の樹脂フィルムを成形したら、この樹脂フィルムを、図2に示すようなシリコーンゴム製の一対の圧着ロール、200℃、230℃、250℃の冷却ロールである複数の金属ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の6インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、連続した樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、厚さ50μm、長さ100m、幅650mmの樹脂フィルムを製造した。圧着ロールと巻取管との間には、樹脂フィルムの両側部を切断するスリット刃を昇降可能に配置し、巻取管とスリット刃との間には、樹脂フィルムにテンションを作用させるテンションロールを回転可能に軸支させた。
樹脂フィルムを製造したら、この樹脂フィルムの誘電特性と加熱寸法安定性を実施例と同様に評価して表3にまとめた。
〔比較例2〕
基本的には比較例1と同様であるが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂を、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)〕100質量部に変更した。また、樹脂フィルムの厚さは、50μmから100μmに変更した。
〔比較例3〕
基本的には比較例1と同様であるが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂を、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)〕100質量部に変更した。また、無機フィラーである合成マイカを、炭酸カルシウム〔白石カルシウム社製:製品名 ホワイトンP‐10〕17質量部に変更した。樹脂フィルムの厚さは、50μmから100μmに変更した。
〔比較例4〕
基本的には比較例1と同様であるが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂を、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)〕100質量部に変更した。また、無機フィラーである合成マイカを、非晶質シリカ〔アドマテックス社製:製品名 SC‐5500‐SQ〕15質量部に変更した。樹脂フィルムの厚さは、50μmから100μmに変更した。
〔比較例5〕
基本的には比較例1と同様であるが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂を、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)〕100質量部に変更した。また、同方向回転二軸押出機の大気圧に開放されたベント口のすぐ隣のサイドフィーダーの第二供給口より、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂と無機フィラーである非膨潤性の合成マイカとを強制圧入した。
繊維状の芳香族ポリアミド樹脂は、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕4質量部とした。また、非膨潤性の合成マイカは、市販されている平均粒子径3μm、アスペクト比30のフッ素四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100DS〕35質量部とした。
樹脂フィルムを製造してその誘電特性と加熱寸法安定性をそれぞれ評価しようとしたが、樹脂フィルムを製膜することができず、評価を断念した。
〔比較例6〕
基本的には比較例1と同様であるが、ポリアリーレンエーテルケトン樹脂を、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレック社製、製品名:Victrex Granules 381G(以下、「381G」と略す)〕100質量部に変更した。また、同方向回転二軸押出機の大気圧に開放されたベント口のすぐ隣のサイドフィーダーの第二供給口より、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂と無機フィラーである非膨潤性の合成マイカとを強制圧入した。
繊維状の芳香族ポリアミド樹脂は、繊維長が0.25mm、平均繊維径が14μmのパラ系アラミド繊維〔帝人社製:製品名 トワロン1088〕20質量部とした。また、非膨潤性の合成マイカは、市販されている平均粒子径3μm、アスペクト比30のフッ素四ケイ素雲母〔片倉コープアグリ社製、製品名:ミクロマイカMK-100DS〕10質量部とした。
樹脂フィルムを製造してその誘電特性と加熱寸法安定性をそれぞれ評価しようとしたが、樹脂フィルムを製膜することができず、評価を断念した。
Figure 0007498601000008
〔評 価〕
各実施例の樹脂フィルムの場合、優れた誘電特性と加熱寸法安定性とを両立させることができた。
これに対し、各比較例の樹脂フィルムの場合、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を省略すると、比較的良好な加熱寸法安定性を得ることはできても、比誘電率と誘電正接の値が高くなった。したがって、誘電特性に問題が生じ、優れた誘電特性と加熱寸法安定性とを両立させることができなかった。さらに、比較例5、6の樹脂フィルムの場合、無機フィラーを過剰に配合したり、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂を過剰に配合すると、製膜することができず、実用性に深刻な問題が生じた。
本発明に係る樹脂フィルム及びその製造方法、プリント配線板、カバーレイ、並びに積層体は、音響、電気、電子、情報通信、精密機器、自動車、エネルギー、半導体、医療、航空・宇宙等の分野で使用される。
1 プリント配線板
2 樹脂フィルム
3 金属層
4 成形材料
5 回路基板
6 配線パターン
8 カバーレイ
9 接着層
10 溶融押出成形機(押出成形機)
13 Tダイス(ダイス)
16 冷却ロール
17 圧着ロール
30 積層体

Claims (6)

  1. ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、無機フィラー6質量部以上28質量部以下と、繊維状の芳香族ポリアミド樹脂2質量部以上5質量部以下とを含み、周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下、誘電正接が0.007以下であり、288℃のはんだ浴に10秒間浮かべても変形しない樹脂フィルムであって、
    無機フィラーが平均粒子径2μm以上20μm以下、アスペクト比5以上200以下の合成マイカ、炭酸カルシウム、又は非晶質シリカであり、
    芳香族ポリアミド樹脂の繊維長が0.2mm以上7mm以下、平均繊維径が11μm以上15μm以下であり、
    周波数1GHz付近における比誘電率が空洞共振器摂動法により測定された場合に1.5以上2.6以下であり、周波数28GHz付近における比誘電率がファブリペロー法により測定された場合に1.5以上2.7以下であることを特徴とする樹脂フィルム。
  2. 周波数800MHz以上100GHz以下の範囲における比誘電率が3.5以下、誘電正接が0.007以下であり、288℃のはんだ浴に10秒間浮かべても変形しない請求項1に記載した樹脂フィルムの製造方法であって、
    ポリアリーレンエーテルケトン樹脂100質量部と、無機フィラー6質量部以上28質量部以下と、繊維状で繊維長が0.2mm以上7mm以下、平均繊維径が11μm以上15μm以下の芳香族ポリアミド樹脂2質量部以上5質量部以下とを含有する成形材料を溶融混練するとともに、無機フィラーを平均粒子径が2μm以上20μm以下、アスペクト比が5以上200以下の合成マイカ、炭酸カルシウム、又は非晶質シリカとし、成形材料を押出成形機のダイスにより樹脂フィルムに押出成形し、この樹脂フィルムを冷却ロールに接触させて冷却することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
  3. 請求項1に記載の樹脂フィルムを有することを特徴とするプリント配線板。
  4. 請求項1に記載の樹脂フィルムを有することを特徴とするカバーレイ。
  5. 請求項1に記載の樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの両面のうち、少なくとも片面に積層される接着層とを有することを特徴とする積層体。
  6. 請求項1に記載の樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの両面のうち、少なくとも片面に積層される金属層とを有することを特徴とする積層体。
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