JP7495687B2 - 複合材料の製造方法、及び複合材料 - Google Patents

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Description

本発明は、複合材料の製造方法、及び複合材料に関する。
セルロースナノファイバーは、天然セルロース繊維をナノサイズに解繊して得られる新しい素材であり、近年、その有効利用が期待されている。
例えば、特許文献1には、機械的特性等を向上させるために、セルロースナノファイバーを、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂に添加する技術が示されている。なお、セルロースナノファイバーは、乾燥すると、互いに水素結合を形成して凝集塊となり易いため、セルロースナノファイバーを、熱可塑性樹脂中に均一に分散させることが技術的な課題となっている。
そこで、特許文献1では、セルロースナノファイバーの水分散液に、カチオン界面活性剤と多価アルコールとを添加し、それらの混合物(水分散液)から水を除去する際に、多価アルコール等がセルロースナノファイバーの間に介在することで、セルロールナノファイバー同士の凝集を抑制している。このようにして得られた乾燥物(繊維材料)は、セルロースナノファイバー以外に、カチオン界面活性剤と多価アルコールを含んでいる。繊維材料は、熱可塑性樹脂と共にオープンロールを用いて加熱されながら混練される。なお、乾燥物中の多価アルコールは、混練時に揮発して除去される。
特開2019-173253号公報
上記乾燥物(繊維材料)と熱可塑性エラストマーを、オープンロール等の非密閉型(開放型)の混練機で混練すると、乾燥物中のセルロースナノファイバーが、熱可塑性エラストマー中で十分に分散する前に、多価アルコールが揮発して除去されてしまう。多価アルコールが除去されると、混練中の熱可塑性エラストマーにおいて、セルロースナノファイバー同士の凝集が発生するため、問題となっていた。
本発明の目的は、セルロースナノファイバーと熱可塑性エラストマーとの混練時に、セルロースナノファイバーの凝集が抑制され、かつセルロースナノファイバーが均一に分散された複合材料の製造方法等を提供することである。
本発明者らは、セルロースナノファイバー、カチオン界面活性剤及び多価アルコールを含む繊維材料と、熱可塑性エラストマーとの混練を、非密閉型混練機のみで行うと、セルロースナノファイバーが熱可塑性エラストマー中で十分に分散する前に、多価アルコールが揮発して除去されるため、熱可塑性エラストマー中でセルロースナノファイバー同士の凝集が発生してしまうことをつきとめた。
そして、本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、セルロースナノファイバー、カチオン界面活性剤及び多価アルコールを含む繊維材料と、熱可塑性エラストマーとを、予め密閉型混練機で混練し、その後、非密閉型混練機で混練することによって、セルロースナノファイバーの凝集を抑制しつつ、セルロースナノファイバーを、熱可塑性エラストマー中に均一に分散できることを見出し、本願発明の完成に至った。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> セルロースナノファイバー、カチオン界面活性剤及び多価アルコールを含む繊維材料と、熱可塑性エラストマーとを、密閉型混練機で混練して予備混練材料を得る予備混練工程と、
前記予備混練材料を、非密閉型混練機で混練して複合材料を得る本混練工程とを備える複合材料の製造方法。
<2> セルロースナノファイバーは、繊維径の平均値が3nm以上10nm以下であり、かつアスペクト比の平均値が20以上350以下である前記<1>に記載の複合材料の製造方法。
<3> 前記カチオン界面活性剤は、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩及び4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記<1>又は<2>に記載の複合材料の製造方法。
<4> 前記多価アルコールは、2価アルコール及び3価アルコールの少なくとも一方からなる前記<1>~<3>の何れか1つに記載の複合材料の製造方法。
<5> 前記熱可塑性エラストマーは、変性熱可塑性エラストマーを含む前記<1>~<4>の何れか1つに記載の複合材料の製造方法。
<6> 前記予備混練工程において、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して前記セルロースナノファイバーが30質量部以下の割合で含まれるように、前記繊維材料が前記熱可塑性エラストマーに配合される前記<1>~<5>の何れか1つに記載の複合材料の製造方法。
<7> 前記繊維材料中において、前記セルロースナノファイバーに対する前記多価アルコールの割合は、質量比で、1~20倍である前記<1>~<6>の何れか1つに記載の複合材料の製造方法。
<8> 前記繊維材料中において、前記セルロースナノファイバーに対する前記カチオン界面活性剤の割合は、質量比で、0.1~2.0倍である前記<1>~<7>の何れか1つに記載の複合材料の製造方法。
<9> 水系溶媒に前記セルロースナノファイバーを分散させた前駆分散液に、前記カチオン界面活性剤と、前記多価アルコールとを混合してCNF分散液を得る分散液混合工程と、前記CNF分散液から前記水系溶媒を除去して前記繊維材料を得る乾燥工程とを備える前記<1>~<8>の何れか1つに記載の複合材料の製造方法。
<10> 前記<1>~<9>の何れか1つに記載の複合材料の製造方法で製造されてなる複合材料。
本願発明によれば、セルロースナノファイバーと熱可塑性エラストマーとの混練時に、セルロースナノファイバーの凝集が抑制され、かつセルロースナノファイバーが均一に分散された複合材料の製造方法等を提供することができる。
本実施形態の複合材料の製造方法を示すフロー図 実施例3及び比較例2の各試験サンプルの外観写真 実施例3、比較例1及び比較例2の各試験サンプルのSEM画像 実施例3、比較例1及び比較例2の引張評価試験の結果を示すグラフ 実施例3、比較例1及び比較例2の引裂強さ評価試験の結果を示すグラフ 実施例1~4、比較例1の引張評価試験の結果を示すグラフ 実施例1~4の引裂強さ評価試験の結果を示すグラフ 実施例3,5~7及び比較例1の引張評価試験の結果を示すグラフ 実施例3,5~7及び比較例1の引裂強さ評価試験の結果を示すグラフ 実施例3、比較例1及び比較例2の動的粘弾性評価の結果を示すグラフ 実施例3の動的粘弾性評価を2回繰り返して行った結果を示すグラフ
〔複合材料の製造方法〕
図1は、本実施形態の複合材料の製造方法を示すフロー図である。本実施形態の複合材料の製造方法は、図1に示されるように、分散液混合工程S1、乾燥工程S2、予備混練工程S3及び本混練工程S4を備えている。
(分散液混合工程S1)
分散液混合工程S1は、水系溶媒にセルロースナノファイバーを分散させた前駆分散液に、所定量のカチオン界面活性剤と、所定量の多価アルコールとを混合してCNF分散液を得る工程である。混合手段(攪拌手段)としては、公知の混合手段を用いることが可能である。混合手段としては、例えば、後述する微細化工程で用いられるものを採用することができる。
前駆分散液は、水系溶媒にセルロースナノファイバーを分散させたものであり、基本的に、カチオン界面活性剤、多価アルコールを含まない。水系溶媒としては、主に、水が使用される。水としては、本発明の目的を損なわない限り、蒸留水、精製水、水道水等が使用される。また、本発明の目的を損なわない限り、水系溶媒の一部又は全部として、水以外の水系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)を使用してもよい。
セルロースナノファイバーは、繊維径の平均値が3nm~10nmであってかつアスペクト比の平均値が20~350である。セルロースナノファイバーの繊維径及びアスペクト比の平均値は、電子顕微鏡の視野内のセルロースナノファイバーの少なくとも50本以上について測定した算術平均値である。セルロースナノファイバーは、水にセルロースナノファイバーを分散させたセルロースナノファイバー水分散液として提供されている。このようなセルロースナノファイバー水分散液を、分散液混合工程S1における前駆分散液としてもよい。なお、前駆分散液は、酸化セルロース繊維を含んでもよい。セルロースナノファイバーは、公知の種々の方法により得られたものも使用することができる。
前駆分散液は、セルロースナノファイバーの固形分が例えば、0.01質量%~5質量%であり、好ましくは0.1質量%~2質量%である。前駆分散液におけるセルロースナノファイバー固形分が、このような範囲であると、後述する乾燥工程に時間がかかり過ぎることが抑制され、かつカチオン界面活性剤を均一に処理することができ、セルロースナノファイバーの凝集塊の発生を抑制し易い。
セルロースナノファイバーの原料としては、木材等の植物性材料に由来するものが利用される。植物性材料の原料を用いるセルロースナノファイバーの作製方法としては、例えば、原料に化学的処理を施して解繊しやすい状態にした後に機械的なせん断力による物理的処理を施して原料を解繊し製造したものや、高圧ホモジナイザー法、グラインダー摩砕法、凍結粉砕法、強剪断力混練法、ボールミル粉砕法など公知の機械的な高せん断力を用いた方法により物理的に原料を解繊し製造したものを使用することができる。
セルロースナノファイバーは、アニオン性基を有してもよい。アニオン性基を有するセルロースナノファイバーは、原料に化学処理を施す際に、または物理的に解繊したものに対して、アニオン性基を導入して、さらに微細化(解繊)することで得られる。微細化工程では、アニオン性基の反発作用によって解繊しやすい。アニオン性基としては、例えば、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基、亜リン酸基、ザンテート基(-OCSS)及びこれらの塩の何れか1種以上であってもよい。アニオン性基を有するセルロースナノファイバーとしては、例えば、カルボキシル基又はカルボキシル基の塩を有する酸化セルロースナノファイバー、リン酸基又はリン酸基の塩を有するリン酸エステル化セルロースナノファイバー、硫酸基又は硫酸基の塩を有する硫酸エステル化セルロースナノファイバー、亜リン酸基又は亜リン酸基の塩を有する亜リン酸エステル化セルロースナノファイバー、ザンテート基又はザンテート基の塩を有するザンテート化セルロースナノファイバー等が挙げられる。酸化セルロースナノファイバーとしては、例えば、TEMPO酸化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー等が挙げられる。
酸化セルロースナノファイバーとしてTEMPO酸化セルロースナノファイバーを含む水分散液(前駆分散液)は、例えば天然セルロース繊維を酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化工程と、酸化セルロース繊維を微細化処理する微細化工程とを含む製造方法によって得られる。
酸化工程は、原料となる天然セルロース繊維に対して水を加え、ミキサー等で処理して、水中に天然セルロース繊維を分散させたスラリーを調製する。ここで、天然セルロース繊維としては、例えば、木材パルプ、綿系パルプ、バクテリアセルロース等が含まれる。より詳細には、木材パルプとしては、例えば針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等を挙げることができ、綿系パルプとしては、コットンリンター、コットンリント等を挙げることができ、非木材系パルプとしては、麦わらパルプ、バガスパルプ等を挙げることができる。天然セルロース繊維は、これらの少なくとも1種以上を用いることができる。
酸化工程としては、TEMPO酸化の場合には、水中においてN-オキシル化合物を酸化触媒として天然セルロース繊維を酸化処理して酸化セルロース繊維を得る。酸化工程としては、セルロースを酸化する公知の方法を採用することができる。セルロースの酸化触媒として使用可能なN-オキシル化合物としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(以下、TEMPOとも表記する)、4-アセトアミド-TEMPO、4-カルボキシ-TEMPO、4-フォスフォノオキシ-TEMPO等を用いることができる。酸化セルロース繊維は、セルロースミクロフィブリルの束であることができる。酸化セルロース繊維は微細化工程においてセルロースナノファイバーに解繊することができる。
微細化工程は、酸化セルロース繊維を水等の溶媒中で撹拌処理することができ、セルロースナノファイバーを得ることができる。微細化工程における撹拌処理は、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、単軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。このようにして得られた水分散液中のセルロースナノファイバーの繊維径の平均値は、3nm~10nmであることができ、さらに3nm~4nmであることができる。この水分散液中のセルロースナノファイバーのアスペクト比の平均値は、20~350であることができ、さらに20~250であることができ、さらに50~200であることができる。
また、酸化セルロースナノファイバーとしてカルボキシメチル化セルロースを含む水分散液は、例えば、マーセル化工程、エーテル化工程、及び微細化工程によって製造することができる。
マーセル化工程は、天然セルロース繊維と分散媒、マーセル化剤を混合してマーセル化処理を行う。分散媒は、例えば、低級アルコールの単独、又は2種以上の混合物と水の混合媒体を使用する。低級アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどである。マーセル化剤は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属を使用する。
エーテル化工程は、マーセル化処理の後、カルボキシメチル化剤を添加してエーテル化反応を行う。カルボキシメチル化剤は、例えばモノクロロ酢酸ナトリウムなどである。
微細化工程は、エーテル化反応後、上述の微細化工程と同様に行うことができ、例えば高圧ホモジナイザー等によって微細化処理することでカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを得ることができる。こうして得られるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、TEMPO酸化セルロースナノファイバーと同じ繊維径とアスペクト比を有することができる。
リン酸エステル化セルロースナノファイバーを含む水分散液(前駆分散液)は、例えば、乾燥したまたは湿潤状態のセルロース繊維原料にリン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維原料の分散液にリン酸またはリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等で得られる。これら方法においては、通常、リン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理、加熱処理等を行う。ここで、リン酸又はリン酸誘導体としては、リン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸又はそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これにより、セルロースを構成するグルコースユニットの水酸基にリン酸基を含む化合物またはその塩が脱水反応してリン酸エステルが形成され、リン酸基またはその塩が導入される。リン酸基またはその塩が導入されたセルロース繊維は、上述の微細化工程を行うことにより、リン酸エステル化セルロースナノファイバーを得ることができる。こうして得られるリン酸エステル化セルロースナノファイバーは、TEMPO酸化セルロースナノファイバーと同じ繊維径とアスペクト比を有することができる。
カチオン界面活性剤は、セルロースナノファイバー同士の水素結合による凝集を抑制する。カチオン界面活性剤は、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩及び4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。カチオン界面活性剤は、炭素数(C数)が1~40、好ましくは2~20、更に好ましくは8~18の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩であることができる。炭素数が多い方が隣接するセルロースナノファイバーの水素結合による凝集を抑制する効果が高いと推測できる。塩としては塩化物、臭化物等であることができる。
炭素数が1~40の長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム等のトリメチルアンモニウム塩;塩化オクチルピリジニウム、塩化デシルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化オクタデシルピリジニウム等のピリジニウム塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンジルトリアルキルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化トリメチルステアリルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニム等が挙げられる。
CNF分散液において、セルロースナノファイバー(CNF)に対するカチオン界面活性剤の質量比は、例えば、0.1~2倍であり、好ましくは0.3~1倍である。前記質量比が、このような範囲であると、セルロースナノファイバー表面のカルボキシル基へ作用させることができ、セルロースナノファイバーの再凝集を抑制し、樹脂中で良好な解繊状態を得られ、加工性の低下等も抑制される。
多価アルコールは、後述する乾燥工程で水系溶媒が除去されてもセルロースナノファイバー同士の水素結合を妨げることにより、脱水乾燥後のセルロースナノファイバーの再凝集を抑制することができる。また、後述する混練工程(予備混練工程、本混練工程)におけるセルロースナノファイバーの解繊を容易にすることができる。多価アルコールは、1価アルコールを除くアルコールである。1価アルコールは水よりも沸点が低いため、採用できない。
多価アルコールは、水よりも高い沸点を有する。水よりも高い沸点を有することにより、後述する乾燥工程を経て水が蒸発しても多価アルコールは繊維材料中に残存することができる。また、界面活性剤がセルロースナノファイバーへ吸着しているため、セルロースナノファイバー同士は凝集せずに安定した分散状態を維持することができる。後述する混練工程(予備混練工程、本混練工程)で多価アルコールが急速に蒸発してセルロースナノファイバーの再凝集が生じることを抑制するために、多価アルコールは、後述する混練工程における混練温度よりも高い沸点を有することが望ましい。
多価アルコールは、2価アルコール及び3価アルコールの少なくとも一方からなる。2価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。2価及び3価以外の多価アルコールとして例えばペンタエリスリトール、ジグリセリン、ポリグリセリン等を含んでもよい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
CNF分散液におけるセルロースナノファイバーに対する多価アルコールの質量比は、例えば、1~20倍であり、好ましくは3~10倍である。前記質量比が、このような範囲であると、乾燥工程S2後の繊維材料を用いて複合材料を製造する際に、セルロースナノファイバーを解繊することができ、複合材料を製造し易い。
(乾燥工程S2)
乾燥工程S2は、CNF分散液から水系溶媒を除去して繊維材料を得る工程である。CNF分散液から水系溶媒を除去する方法は、公知の方法を用いることができ、例えば加熱によって乾燥してもよいし、スプレードライ法によって乾燥してもよい。
例えば、CNF分散液を容器(バット等)に流し込み、その容器をオーブンに入れて30℃~100℃で水系溶媒を蒸発させてもよい。なお、乾燥工程S2では、CNF分散液から水系溶媒を完全に除去してもよいし、その後の工程で除去できる程度に水系溶媒をわずかに残してもよい。
乾燥工程S2によって得られた繊維材料は、セルロースナノファイバー、カチオン界面活性剤及び多価アルコールを含む。
繊維材料中において、セルロースナノファイバーに対する多価アルコールの割合は、質量比で、例えば、1~20倍であり、好ましくは3~10倍である。
また、繊維材料中において、セルロースナノファイバーに対するカチオン界面活性剤の割合は、質量比で、例えば、0.1~2倍であり、好ましくは0.3~1倍である。
(予備混練工程S3)
予備混練工程S3は、セルロースナノファイバー、カチオン界面活性剤及び多価アルコールを含む繊維材料と、熱可塑性エラストマーとを、密閉型混練機で混練して予備混練材料を得る工程である。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、セルロースナノファイバーを均一に分散させ易い等の理由により、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、セルロースナノファイバー(特に、水酸基)と反応し得る反応性官能基を有する変性熱可塑性エラストマーが使用されてもよい。セルロースナノファイバーと反応し得る反応性官能基としては、酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基、イソシアネート基等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、セルロースナノファイバーとの反応性が良好である等の観点より、反応性官能基としては、酸無水物基が好ましい。
熱可塑性エラストマーに、反応性官能基を付与する方法としては特に制限されず、公知の手法を適宜用いることができる。このような方法としては、例えば、熱可塑性エラストマーの合成時に酸無水物を単量体として添加する方法等が挙げられる。前記酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
変性熱可塑性エラストマーとしては、無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー、無水マレイン酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。変性熱可塑性エラストマーとしては、無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー等の酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。なお、変性熱可塑性エラストマーは、上市されているもの(市販品)を使用してもよい。
また、酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン-エチレンプロピレン-スチレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン-イソプレン-スチレン共重合体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、変性熱可塑性エラストマーにおける反応性官能基の導入率(変性率)は、JIS-K2501:2003により求められる。
予備混練工程S3では、繊維材料と熱可塑性エラストマーとの混合に、密閉型混練機が使用される。予備混練工程S3は、後述する本混練工程S4の前に予め行われる工程である。密閉型混練機は、密閉された空間内で、繊維材料と熱可塑性エラストマーとを混練する装置であり、例えば、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、インテンシブミキサー、ラボプラストミル等が挙げられる。
予備混練工程S3において、密閉型混練機を用いて、繊維材料と熱可塑性エラストマーとの混練を行うと、その混練時に、多価アルコールが揮発して混練物から除去されることが抑制される。つまり、予備混練工程S3では、混練物(熱可塑性エラストマー)中において、多価アルコールを残存させたまま、セルロースナノファイバーをある程度、均一に分散させることができる。そのため、多価アルコールの存在により、セルロースナノファイバーの凝集を抑制することがきる。
なお、予備混練工程S3では、熱可塑性エラストマーに高いせん断力が与えられ、熱可塑性エラストマーの弾性による復元力を利用して、セルロースナノファイバーを解繊し、熱可塑性エラストマー中に分散することができる。
予備混練工程S3における混練温度は、熱可塑性エラストマーの軟化点(軟化温度)や、多価アルコールの沸点等を考慮して、適宜、設定される。
例えば、熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマー(一部に、変性スチレン系熱可塑性エラストマーを含んでもよい)の場合、予備混練工程S3における混練温度は、例えば、100℃~230℃に設定される。
また、予備混練工程S3における混練時間は、セルロースの解繊促進、セルロース及び母材へのせん断熱、多価アルコール過剰蒸発等を考慮して適宜、設定される。予備混練工程S3における混練時間は、例えば、1分~30分に設定される。
なお、予備混練工程S3において、熱可塑性エラストマー100質量部に対してセルロースナノファイバーが30質量部以下(好ましくは、1~15質量部)の割合で含まれるように、繊維材料が熱可塑性エラストマーに配合されるのが好ましい。熱可塑性エラストマー100質量部に対してセルロースナノファイバーがこのような割合で配合されると、熱可塑性エラストマー中でセルロースナノファイバーを均一に分散させ易い。
なお、予備混練工程S3において、繊維材料は、予め熱可塑性エラストマーに混合、分散したマスターバッチの形で、利用されてもよい。
予備混練材料は、繊維材料と熱可塑性エラストマーとを、密閉型混練機で混練することで得られる材料である。なお、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、予備混練材料に、繊維材料や熱可塑性エラストマー以外の成分が添加されてもよい。
(本混練工程S4)
予備混練材料を、非密閉型混練機で混練して複合材料を得る工程である。非密閉型混練機とは、予備混練材料を混練する箇所が開放されている混練装置である。このような非密閉型混練機としては、例えば、オープンロール等が挙げられる。
本混練工程S4は、予備混練工程Sに続けて行われる工程であり、混練時に、多価アルコールを徐々に揮発させながら、セルロースナノファイバーを混練物(熱可塑性エラストマー)中で均一に分散させることができる。
なお、本混練工程S4では、熱可塑性エラストマーに高いせん断力が与えられ、熱可塑性エラストマーの弾性による復元力を利用して、セルロースナノファイバーを解繊し、熱可塑性エラストマー中に分散することができる。
本混練工程S4における混練温度は、熱可塑性エラストマーの軟化点(軟化温度)や、多価アルコールの沸点等を考慮して、適宜、設定される。本混練工程S4における混練温度は、例えば、100℃~230℃に設定される。
また、本混練工程S4における混練時間は、セルロースの解繊促進、多価アルコール除去、母材及びセルロースへのせん断力によるダメージ等を考慮して適宜、設定される。本混練工程S4における混練時間は、例えば、1分~20分に設定される。
なお、本混練工程S4において、熱可塑性エラストマー100質量部に対してセルロースナノファイバーが30質量部以下(好ましくは、1~15質量部)の割合で含まれるように、繊維材料が熱可塑性エラストマーに配合されるのが好ましい。熱可塑性エラストマー100質量部に対してセルロースナノファイバーがこのような割合で配合されると、熱可塑性エラストマー中でセルロースナノファイバーを均一に分散させ易い。本発明の目的を損なわない限り、本混練工程S4において、繊維材料や熱可塑性エラストマー以外の成分が添加されてもよい。このような本混練工程S4の後、複合材料が得られる。
なお、本混練工程S4の後、必要に応じて、減圧オーブン等を用いた加熱処理により、混合材料中の多価アルコール等を除去する除去工程を行ってもよい。
以上のようにして、複合材料を製造することができる。なお、複合材料の製造方法としては、少なくとも予備混練工程S3と、本混練工程S4とを備えるものであればよい。
複合材料において、母材である熱可塑性エラストマー中に、セルロースナノファイバーが凝集せずに、均一に分散されている。このような複合材料は、引張強度等の機械的特性に優れ、様々な用途で利用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
<水分散液混合工程>
市販品のTEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液(濃度1%、前駆分散液)を使用し、その分散液に、所定量の多価アルコールを加え、それらを混合するために、ミキサーを使用して、60秒攪拌した。得られた混合物に、更に所定量のカチオン界面活性剤を加え、それらを前記ミキサーを使用して、90秒攪拌することで、CNF分散液を得た。
なお、セルロースナノファイバー(CNF)は、TEMPO酸化セルロースナノファイバーであり、その平均繊維径は、3.3nm、平均アスペクト比は160である。また、多価アルコールとしては、ジエチレングリコール(DEG)(和光純薬工業社製)を使用した。また、カチオン界面活性剤(アンモニウム塩)としては、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(関東化学株式会社製)を使用した。
<乾燥工程>
CNF分散液から水系溶媒を除去して繊維材料を得た。具体的には、CNF分散液をバットに流し込み、オーブンで40℃、96時間で乾燥して、水系溶媒を除去した繊維材料を得た。なお、繊維材料は、CNF1に対して、質量比でDEGが5倍、カチオン界面活性剤(アンモニウム塩)が0.5倍含まれるように調整されている。
<予備混練工程>
繊維材料と、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS、「セプトン/2002」、(株)クラレ製)とを、密閉型混練機を使用して混練した。具体的には、それらの混合物を、2本ロール式のラボプラストミル(密閉型混練機の一例)を用いて、170℃の温度条件の下、30rpmで3分間、続いて50rpmで7分間(計10分間)の回転条件で混練した。
TPSに対する繊維材料の配合量は、TPS100質量部に対する繊維材料の各成分量が、それぞれCNF10質量部、DEG50質量部、及びカチオン界面活性剤5質量部となるように調整した。
<本混練工程>
予備混練工程の後に得られた混練物(予備混練材料)を、非密閉型混練機であるオープンロール(2本ロール)を用いて混練(弾性混練)することで、複合材料を得た。本混練工程における混練温度は、160~180℃であり、混練時間は20分間であった。なお、2本のロールスピードは、フロント側とリア側との表面速度比が1.15となるように設定した。
〔実施例2~4〕
TPSの一部を、変性TPSに置き換えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4の複合材料を作製した。具体的には、実施例2の場合、TPS100質量部のうち、30質量を変性TPSに置き換え、実施例3の場合、50質量部を変性TPSに置き換え、実施例4の場合、70質量部を変性TPSに置き換えた。変性TPSとしては、「タフテック/M1943」(旭化成(株)製)を使用した。
〔実施例5~7〕
繊維材料中に含まれるCNFの配合量を、表3に示される各値(質量部)に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例5~7の複合材料を作製した。
〔比較例1〕
繊維材料を配合せずに、予備混練工程及び本混練工程を行ったこと以外は、実施例3と同様にして、複合材料を作製した。
〔比較例2〕
予備混練工程を行わずに、非密閉型混練機であるオープンロール(2本ロール)を用いた混練のみを行うこと以外は、実施例3と同様にして、複合材料を作製した。なお、比較例2における混練時間は、20分間とした。
〔試験サンプルの作製〕
各実施例及び各比較例の複合材料を、ペレタイザを使用してペレット化した。その後、得られたペレットを、射出成型装置を用いて、後述する各試験用の成形品(試験サンプル)を作製した。
〔外観観察評価(CNF凝集抑制効果の確認)〕
実施例3の複合材料から作製した板状の試験サンプル(厚み:1mm)に対して、一方の面側から照明を当てつつ、他方の面側から試験サンプルを観察することで、複合材料(混練物)中に存在するCNFの分散状況を確認した。また、比較例2の試験サンプルについても同様に、CNFの分散状況を確認した。結果は、図2に示した。
図2は、実施例3及び比較例2の各試験サンプルの外観写真である。図2の左側に、実施例3の試験サンプルの写真が示され、右側に比較例2の試験サンプルの写真示される。実施例3は、熱可塑性エラストマー100質量部(TPS50質量部+変性TPS50質量部)に対して、CNF10質量部及びDEG50質量部となるように、繊維材料が配合された場合であり、かつそれらの混練時に、密閉型混練機(ラボプラストミル)で混練する予備混練工程と、非密閉型混練機(オープンロール)で混練する本混練工程とを行ったものである。図2に示されるように、実施例3の試験サンプルでは、CNFが目視で確認できない程度に、混練物(熱可塑性エラストマー)中において細かく均一に分散されており、CNFの凝集塊は確認されなかった。このように、実施例3では、繊維材料に含まれるDEG等によるCNFの凝集抑制効果が、混練物の予備混練時にも維持されていることが確かめられた。
これに対し、比較例2は、実施例3と同様の配合組成であるものの、その混練方法が異なり、予備混練工程を行わず、非密閉型混練機(オープンロール)で混練する本混練工程のみを行った場合である。図2に示されるように、比較例2の試験サンプルでは、CNFの凝集塊が、面状に広がるように数多く点在している。このように、比較例2では、非密閉型混練機(オープンロール)で混練を行ったことにより、混練物中においてCNFが十分に分散する前にDEGが揮発してしまったため、混練物中のCNF同士が凝集したものと推測される。
〔SEM観察評価〕
実施例3、比較例1及び比較例2の各試験サンプルについて、それぞれSEM(Scanning Electron Microscope)画像を取得し、それらを観察して、複合材料(混練物)中に存在するCNFの分散状況を確認した。結果は、図3に示した。
図3は、実施例3、比較例1及び比較例2の各試験サンプルのSEM画像である。図3の左端に、比較例1のSEM画像が示され、右端に比較例2のSEM画像が示され、それらの間に、実施例3のSEM画像が示される。図3に示されるように、実施例3の試験サンプルでは、細かく解繊された状態のCNFが、混練物(熱可塑性エラストマー)中で、均一に分散されていることが確かめられた。これに対して、比較例2の試験サンプルでは、CNFが、粒状の凝集塊となって存在している状態が確かめられた。なお、比較例1は、繊維材料を含まず、熱可塑性エラストマー100質量部(TPS50質量部+変性TPS50質量部)のみからなる場合である。
〔引張評価〕
実施例1~7及び比較例1,2の各試験サンプルについて、JIS-K6251に準拠しつつ、引張評価試験を行った。
表1及び図4に、それぞれ実施例3、比較例1及び比較例2の引張評価試験の結果を示した。表2に実施例1~4の引張評価試験の結果を示し、図6に実施例1~4及び比較例1の引張評価試験の結果を示した。また表3及び図8に、それぞれ実施例3,5~7及び比較例1の引張評価試験の結果を示した。
〔引裂強さ評価〕
実施例1~7及び比較例1,2の各試験サンプルについて、JIS-K6252に準拠しつつ、引裂強さ評価試験を行った。
表1及び図5に、それぞれ実施例3、比較例1及び比較例2の引裂強さ評価試験の結果を示した。表2及び図7に、それぞれ実施例1~4の引裂強さ評価試験の結果を示した。表3及び図9に、それぞれ実施例3,5~7及び比較例1の引裂強さ評価試験の結果を示した。
Figure 0007495687000001
Figure 0007495687000002
Figure 0007495687000003
表1及び図4に示されるように、伸びが300%のときの引張応力は、実施例3が、比較例1や比較例2よりも高くなることが確かめられた。実施例3と比較例2は、基本的に、互いに同じ配合組成であるものの、混練方法が異なることにより、両者には引張応力に大きな差が生じた。実施例3では、セルロースナノファイバーが凝集せずに細かな状態で、熱可塑性エラストマー中に均一に分散しているため、このような差が生じたものと推測される。
また、表1及び図5に示されるように、実施例3、比較例1及び比較例2の中では、実施例3が最も引裂強さが、大きいことが確かめられた。
表2及び図6に示されるように、変性TPSを含む実施例2~4が、変性TPSを含まない実施例1と比べて、引張応力が強くなることが確かめられた。また、表2及び図7に示されるように、変性TPSを含む実施例2~4が、変性TPSを含まない実施例1と比べて、引裂強さが大きくなることが確かめられた。これにより、熱可塑性エラストマー中に、変性熱可塑性エラストマーを加えることにより、機械的特性が向上することが確かめられた。
表3及び図8に示されるように、実施例3,5~7において、セルロースナノファイバーの含有量が多くなると、引張応力が強くなることが確かめられた。また、表3及び図9に示されるように、実施例3,5~7において、セルロースナノファイバーの含有量が多くなると、引裂強さが大きくなることが確かめられた。これにより、熱可塑性エラストマー中のセルロースナノファイバーの含有量が多くなると、機械的特性が向上することが確かめられた。
〔動的粘弾性評価1〕
実施例3、比較例1及び比較例2の各試験サンプルについて、動的粘弾性評価(DMA)を、以下に示される条件で行うことで貯蔵弾性率(E’)を測定した。結果は、図10に示した。
測定装置:「DMA7100」((株)日立ハイテクサイエンス製)
周波数:1Hz
測定温度:-100℃~300℃
昇温速度:3℃/min
測定モード:引張
試験サンプルのサイズ:長さ20mm×幅4mm×厚さ1mm
図10は、実施例3、比較例1及び比較例2の動的粘弾性評価の結果を示すグラフである。図10に示されるように、図10の縦軸は、貯蔵弾性率E’(MPa)であり、図10の横軸は、温度(℃)である。図10に示されるように、200℃における実施例3の貯蔵弾性率は、比較例2の貯蔵弾性率よりも高くなっており、高温時における熱可塑性エラストマーのCNFによる熱補強効果が認められる。なお、熱可塑性エラストマーのみからなる比較例1の場合、150℃よりも低い温度で、試験サンプルが破断した。
〔動的粘弾性評価2〕
実施例3の試験サンプルについて、-100℃から150℃への昇温と、それに続く150℃から-100℃への降温とを、合計2回繰り返しながら、上記と同様の動的粘弾性評価を行うことで貯蔵弾性率(E’)を測定した。結果は、図11に示した。
図11は、実施例3の動的粘弾性評価を2回繰り返して行った結果を示すグラフである。図11の縦軸は、貯蔵弾性率E’MPaであり、図11の横軸は、温度(℃)である。図11に示されるように、1回目の昇温の貯蔵弾性率、1回目の降温の貯蔵弾性率、2回目の昇温の貯蔵弾性率及び2回目の降温の貯蔵弾性率は、互いに重なるような略同曲線をなしている。このように、実施例3の試験サンプルは、複数回の動的粘弾性評価を行っても、その結果(貯蔵弾性率E’)に大きな違いは見られず、CNFによる熱可塑性エラストマーの熱補強効果を確認することができた。
S1…分散液混合工程、S2…乾燥工程、S3…予備混練工程、S4…本混練工程

Claims (4)

  1. セルロースナノファイバー、カチオン界面活性剤及び多価アルコールを含む繊維材料と、熱可塑性エラストマーとを、密閉型混練機で混練して予備混練材料を得る予備混練工程と、
    前記予備混練材料を、非密閉型混練機で混練して複合材料を得る本混練工程とを備え
    セルロースナノファイバーは、繊維径の平均値が3nm以上10nm以下であり、かつアスペクト比の平均値が20以上350以下であり、
    前記カチオン界面活性剤は、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩及び4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記多価アルコールは、2価アルコール及び3価アルコールの少なくとも一方からなり、
    前記予備混練工程において、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して前記セルロースナノファイバーが30質量部以下の割合で含まれるように、前記繊維材料が前記熱可塑性エラストマーに配合され、
    前記繊維材料中において、前記セルロースナノファイバーに対する前記多価アルコールの割合は、質量比で、1~20倍であり、
    前記繊維材料中において、前記セルロースナノファイバーに対する前記カチオン界面活性剤の割合は、質量比で、0.1~2.0倍である複合材料の製造方法。
  2. 前記熱可塑性エラストマーは、変性熱可塑性エラストマーを含む請求項1に記載の複合材料の製造方法
  3. 水系溶媒に前記セルロースナノファイバーを分散させた前駆分散液に、前記カチオン界面活性剤と、前記多価アルコールとを混合してCNF分散液を得る分散液混合工程と、
    前記CNF分散液から前記水系溶媒を除去して前記繊維材料を得る乾燥工程とを備える請求項1又は2に記載の複合材料の製造方法
  4. 請求項1~請求項3の何れか一項に記載の複合材料の製造方法で製造されてなる複合材料
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