JP7495662B2 - ガラス物品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス物品の製造方法に関する。
ガラス板などのガラス物品の製造方法としては、オーバーフローダウンドロー法が用いられる場合がある。この製法では、成形装置が、成形炉内に略楔状の成形体を備えている。成形体に供給された溶融ガラスは、成形体の頂部に形成された溝部から溢れ出た後、成形体の両外側面を伝って下端部で合流する。これにより、溶融ガラスから帯状のガラスリボンが連続成形される。この製法によれば、成形されるガラスリボンの表裏面が成形過程で成形体と接触しないため、表裏面に傷等のない平滑なガラスリボンを成形できるという利点がある(例えば、特許文献1を参照)。
特開2012-214349号公報
オーバーフローダウンドロー法を用いたガラス物品の製造方法の場合、成形時の溶融ガラスは高温であるため、操業前(成形体に溶融ガラスを供給する前)に、成形体の周辺の温度を昇温し、成形体の温度を上昇させる昇温工程が行われる。
しかしながら、このような昇温工程では、成形体の温度変動に伴う熱衝撃により、成形体に割れなどの破損が生じやすい。特に、成形体の下部は、略楔状の形状に起因して断面積(厚み)が小さくなるため、熱容量が小さく冷えやすい。また、成形体の下部には、自重による撓みで引張り応力が発生しやすい。このため、成形炉内に生じる上昇気流などによって、成形体の下部の温度が低下すると、成形体の下部を起点として成形体が破損しやすい。
本発明は、昇温工程において、オーバーフローダウンドロー法に用いる成形体が破損するのを抑制する。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、オーバーフローダウンドロー法によるガラス物品の製造方法において、成形炉内に配置された成形体を昇温する昇温工程と、昇温された成形体に溶融ガラスを供給し、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程とを備え、昇温工程では、成形炉内に配置された炉内ヒータにより、成形体の下部を加熱することを特徴とする。
このように成形炉内に炉内ヒータを配置すれば、成形炉外に炉外ヒータを配置した場合に比べて、成形体の下部近傍にヒータを配置できる。その結果、成形炉内に上昇気流などが発生した場合でも、炉内ヒータにより、成形体の下部の温度を安定させることができるため、成形体の割れなどの破損を低減できる。
上記の構成において、成形体に溶融ガラスを供給した後、炉内ヒータによる成形体の下部の加熱を低下又は停止することが好ましい。
つまり、成形体に溶融ガラスを供給すると、成形体が高温の溶融ガラスで覆われるため、成形体の下部の温度低下は生じにくくなる。一方、成形体が高温の溶融ガラスで覆われた状態で、炉内ヒータによって成形体の下部を加熱すると、溶融ガラス及び/又はガラスリボンが加熱されすぎ、ガラスリボンを安定的に成形しにくくなるおそれがある。したがって、成形体に溶融ガラスを供給した後は、上記の構成のように、炉内ヒータによる加熱を低下又は停止させることが好ましい。
上記の構成において、成形体に溶融ガラスを供給した後、炉内ヒータを成形体の下部を加熱する位置から退避させることが好ましい。
このようにすれば、炉内ヒータによる成形体の下部の加熱を簡単かつ確実に低下又は停止することができる。また、炉内ヒータが溶融ガラスやガラスリボンから離れるため、生産工程で、炉内ヒータが邪魔にならないという利点もある。
上記の構成において、炉内ヒータは、ガラスリボンの厚み方向における成形体の下部の両外側面、又は成形体の下部よりも下方におけるガラスリボンの通過部を、厚み方向で両側から挟んで対をなすように配置されることが好ましい。
このようにすれば、成形体の下部を両側から均一に加熱できる。
上記の構成において、炉内ヒータは、成形炉の側壁部に設けられたガラスリボンの搬送ローラ用の開口部を通じて、成形炉内に配置されることが好ましい。
このようにすれば、成形炉に新たに開口部を設けることなく、炉内ヒータを配置することができるため、設備コストの増大を抑制できる。
上記の構成において、昇温工程では、成形体の下部の温度を測定する温度計が、成形炉内に配置されることが好ましい。
このようにすれば、成形体の下部の温度管理が容易になり、成形体の破損をさらに低減できる。
上記の構成において、成形炉外には、成形炉の側壁部の上部に対応する位置に成形体の上部を加熱する第一炉外ヒータが配置され、成形炉の側壁部の下部に対応する位置に成形体の下部を加熱する第二炉外ヒータが配置され、成形炉の天井部に対応する位置に成形体の上部を加熱する第三炉外ヒータが配置されており、昇温工程では、第一炉外ヒータ、第二炉外ヒータ及び第三炉外ヒータにより、成形体をさらに加熱してもよい。
このように炉外ヒータを併用することにより、成形体に所望の温度分布を付与した状態で、成形体を昇温できる。
本発明によれば、昇温工程において、オーバーフローダウンドロー法に用いる成形体が破損するのを抑制できる。
第一実施形態に係るガラス物品の製造装置の側面図であって、生産工程の状態を示す。 第一実施形態に係るガラス物品の製造装置の正面図であって、生産工程の状態を示す。 第一実施形態に係る成形炉周辺の側面図であって、昇温工程の状態を示す。 第一実施形態に係る成形炉周辺の正面図であって、昇温工程の状態を示す。 第一実施形態に係る成形炉の側壁部周辺の斜視図であって、生産工程の状態を示す。 第一実施形態に係る成形炉の側壁部周辺の斜視図であって、昇温工程の状態を示す。 第一実施形態における、昇温工程から生産工程へ移行する手順を説明するための成形炉周辺の側面図である。 第一実施形態における、昇温工程から生産工程へ移行する手順を説明するための成形炉周辺の側面図である。 第一実施形態における、昇温工程から生産工程へ移行する手順を説明するための成形炉周辺の側面図である。 第二実施形態に係る成形炉周辺の側面図であって、昇温工程の状態を示す。 第三実施形態に係る成形炉周辺の側面図であって、昇温工程の状態を示す。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、図中に示すXYZからなる直交座標系において、X方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が鉛直方向である。また、成形されるガラスリボンGrの幅方向に対応する方向を幅方向X、成形されるガラスリボンGrの厚み方向に対応する方向を厚み方向Yと呼ぶ。さらに、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
(第一実施形態)
図1~図4に示すように、第一実施形態に係るガラス物品の製造方法は、ガラス物品の製造装置1を用いて、オーバーフローダウンドロー法によってガラス物品としてのガラス板Gを製造するものである。本製造方法は、成形炉2内に配置された成形体3を昇温する昇温工程(図3及び図4)と、昇温された成形体3に溶融ガラスGmを供給し、溶融ガラスGmからガラスリボンGrを成形する成形工程を含む生産工程(図1及び図2)とを備えている。
生産工程は、昇温工程の後に実施される。本実施形態では、生産工程は、成形工程と、徐冷工程と、冷却工程と、切断工程とを含む。
以下では、まず、生産工程(成形工程)における製造装置1の状態を説明し、次に、昇温工程における製造装置1の状態を説明する。その後、昇温工程から生産工程(成形工程)への移行手順を説明する。
図1及び図2に示すように、生産工程における製造装置1は、成形炉2と、成形炉2の下方に位置する徐冷炉4と、徐冷炉4の下方に位置する冷却室5と、冷却室5の下方に位置する切断室6とを備えている。成形炉2と徐冷炉4との間、徐冷炉4と冷却室5との間、及び冷却室5と切断室6との間は、それぞれガラスリボンGrが通過する開口部(例えばスリット)を有する仕切り部材(例えば建物の床面)F1,F2,F3によって仕切られている。
図1及び図2に示すように、成形炉2は、オーバーフローダウンドロー法によって、溶融ガラスGmからガラスリボンGrを成形するための領域である。成形炉2の内部には、溶融ガラスGmからガラスリボンGrを成形する成形体3と、成形体3で成形されたガラスリボンGrの幅方向Xの両端部を冷却する第一搬送ローラ7とが配置されている。
成形体3は、幅方向Xに沿って長尺な耐火物により形成されている。耐火物としては、例えば、ジルコン、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、ゼノタイムなどが挙げられる。
成形体3の頂部には、幅方向Xに沿って形成された溝部(オーバーフロー溝)8が設けられている。溝部8の幅方向Xの一端側には、供給パイプ9が接続されている。この供給パイプ9を通じて溝部8内に溶融ガラスGmが供給される。溶融ガラスGmの供給方法はこれに限定されない。例えば溝部8の幅方向Xの両端側から溶融ガラスGmを供給するようにしてもよいし、溝部8の上方から溶融ガラスGmを供給するようにしてもよい。
成形体3は、厚み方向Yにおいて対称形状をなす。成形体3の厚み方向Yの両外側面10はそれぞれ、鉛直方向に沿った平面状をなす垂直面部11と、垂直面部11の下方に連なり、鉛直方向に対して傾斜した平面状をなす傾斜面部12とを備えている。各垂直面部11は、互いに平行な平面である。各傾斜面部12は、下方に向かうに連れて厚み方向Yに互いに近づくように傾斜した平面である。つまり、成形体3は、各傾斜面部12が形成されることで、幅方向Xから見た場合に下方に向かって先細りする楔状をなし、各傾斜面部12が交わる角部が成形体3の下端部3aを形成している。なお、垂直面部11は、傾斜面や曲面などに形状を変更してもよいし、省略してもよい。
第一搬送ローラ7は、成形体3の直下方において、ガラスリボンGrの幅方向Xの各端部を、厚み方向Yで挟持するローラ対として構成される。第一搬送ローラ7は、片持ちタイプのローラであり、成形工程において常時内部冷却される。第一搬送ローラ7は、冷却ローラやエッジローラとも称される。なお、第一搬送ローラ7は、上下方向Zに複数段(例えば二段)設けられていてもよい。例えば上下二段の場合、上段の第一搬送ローラ7を駆動ローラとし、下段の第一搬送ローラ7をフリーローラとすることが好ましい。
図1及び図2に示すように、徐冷炉4は、ガラスリボンGrの反り及び内部歪を低減するための領域である。徐冷炉4の内部には、第二搬送ローラ13が配置されている。第二搬送ローラ13は、アニーラローラとも称される。第二搬送ローラ13は、ガラスリボンGrの幅方向Xの各端部を、厚み方向Yで挟持するローラ対として構成される。第二搬送ローラ13は、ガラスリボンGrの幅方向Xの全域に跨るように配置された両持ちタイプのローラであってもよいが、本実施形態では、片持ちタイプのローラである。第二搬送ローラ13は、上下方向Zに複数段設けられている。
図1及び図2に示すように、冷却室5は、ガラスリボンGrを室温付近まで冷却するための領域である。冷却室5の内部には、第三搬送ローラ14が配置されている。第三搬送ローラ14は、ガラスリボンGrの幅方向Xの各端部を、厚み方向Yで挟持するローラ対として構成される。第三搬送ローラ14は、ガラスリボンGrの幅方向Xの全域に跨るように配置された両持ちタイプのローラであってもよいが、本実施形態では、片持ちタイプのローラである。第三搬送ローラ14は、上下方向Zに複数段設けられている。
ここで、第二搬送ローラ13及び/又は第三搬送ローラ14の中に、ガラスリボンGrの幅方向Xの両端部を挟持しないものが含まれていてもよい。つまり、第二搬送ローラ13及び/又は第三搬送ローラ14を構成するローラ対の対向間隔を、ガラスリボンGrの幅方向Xの両端部の厚みよりも大きくし、ローラ対の間をガラスリボンGrが通過するようにしてもよい。なお、本実施形態では、製造装置1で得られたガラスリボンGrの幅方向Xの両端部は、成形過程の収縮等の影響により、幅方向Xの中央部に比べて厚みが大きい耳部を含む。
図1及び図2に示すように、切断室6は、ガラスリボンGrを所定の大きさに切断し、ガラス物品としてのガラス板Gを得るための領域である。切断室6の内部には、ガラスリボンGrを切断する切断装置(図示省略)が配置されている。本実施形態では、切断装置によるガラスリボンGrの切断方法は、ガラスリボンGrにスクライブ線を形成した後に、スクライブ線に沿って折り割るスクライブ切断であるが、これに限定されない。切断装置の切断方法は、例えばレーザ割断やレーザ溶断などであってもよい。
ガラス板Gは、1枚又は複数枚の製品ガラス板が採取されるガラス原板(マザーガラス板)である。製品ガラス板の厚みは、例えば0.2mm~10mmであり、製品ガラス板のサイズは、例えば700mm×700mm~3500mm×3500mmである。製品ガラス板は、例えばディスプレイの基板やカバーガラスとして利用される。なお、ディスプレイの基板やカバーガラスは、フラットパネルに限定されず、曲面パネルであってもよい。
図1及び図2に示すように、上記の製造装置1を用いた生産工程では、まず、成形炉2において、成形体3の溝部8に溶融ガラスGmを供給し、溝部8から両側に溢れ出た溶融ガラスGmを、それぞれの垂直面部11及び傾斜面部12に沿って流下させて下端部3aで再び合流させる。これにより、溶融ガラスGmから帯状のガラスリボンGrを連続成形する(成形工程)。次に、徐冷炉4において、ガラスリボンGrを徐冷し(徐冷工程)、冷却室5において、ガラスリボンGrを室温付近まで冷却する(冷却工程)。その後、切断室6において、ガラスリボンGrを切断し、ガラス板Gを得る(切断工程)。切断工程は、ガラスリボンGrを所定長さ毎に幅方向Xに切断し、ガラス板Gを得る第一切断工程と、ガラス板Gの幅方向Xの両端部の耳部を切断して除去する第二切断工程とを含む。なお、生産工程において、成形工程の後工程は特に限定されるものではない。例えば、生産工程は、洗浄工程、検査工程、梱包工程などをさらに含んでいてもよい。
図3及び図4に示すように、昇温工程におけるガラス物品の製造装置1は、成形炉2の内部に、成形体3の下部を加熱する炉内ヒータ15と、成形体3の下部の温度を測定する炉内温度計16とを備えている。ここで、成形体3の下部は、例えば成形体3の傾斜面部12に対応する部分を意味する。
炉内ヒータ15は、成形体3の下端部3aよりも下方におけるガラスリボンGrの通過部を、厚み方向Yで両側から挟んで対をなすように配置されている。本実施形態では、炉内ヒータ15は、幅方向Xに沿って延び、厚み方向Yで対向する一対の棒状ヒータ(例えばシーズヒーター)で構成されている。詳細には、炉内ヒータ15は、成形炉2の内部を幅方向Xに沿って横断し、その両端部が成形炉2の側壁部2aを貫通するとともに成形炉2の外部で保持されている。なお、対をなす炉内ヒータ15を上下方向に並べて複数配置してもよい。また、炉内ヒータ15の保持態様は、炉外で両端部が保持された態様(両持ち保持)に限定されず、例えば、炉外で一端部のみが保持された態様(片持ち保持)であってもよい。
成形炉2内における炉内ヒータ15の幅方向寸法W1は、成形体3の下端部3aの幅方向寸法W2よりも広い範囲に配置されている。つまり、炉内ヒータ15によって、成形体3の下端部3aの全幅が加熱されるようになっている。
ここで、図3の側面視において、炉内ヒータ15の配置位置は、成形体3の下端部3aを中心とする円Cの範囲内であることが好ましい。円Cの直径Dは、例えば、50mm~300mmであることが好ましく、100mm~200mmであることがより好ましい。このようにすれば、下端部3aを含む成形体3の下部を効率よく加熱できる。
炉内温度計16(例えば熱電対)は、成形体3の下端部3aの直下方、つまり、ガラスリボンGrの通過部に配置されている。炉内温度計16の配置位置は、成形体3の下部の温度を測定することができれば、特に限定されない。例えば、炉内温度計16は、成形体3の下部と接触するように配置されていてもよく、複数配置されてもよい。
本実施形態では、昇温工程におけるガラス物品の製造装置1は、成形炉2の外部に、成形体3の上部を加熱する第一炉外ヒータ17と、成形体3の下部を加熱する第二炉外ヒータ18と、成形体3の上部を加熱する第三炉外ヒータ19とを備えている。第一炉外ヒータ17は、成形炉2の側壁部2aの上部に対応する位置に配置されている。第二炉外ヒータ18は、成形炉2の側壁部2aの下部に対応する位置に配置されている。第三炉外ヒータ19は、成形炉2の天井部2bに対応する位置に配置されている。
また、昇温工程におけるガラス物品の製造装置1は、成形炉2の外部に、第一炉外ヒータ17に対応する位置の側壁部2aの温度を測定する第一炉外温度計20と、第二炉外ヒータ18に対応する位置の側壁部2aの温度を測定する第二炉外温度計21と、第三炉外ヒータ19に対応する位置の天井部2bの温度を測定する第三炉外温度計22とを備えている。なお、炉外ヒータ17,18,19は、幅方向Xで複数に分割され、複数の部分ヒータによって構成されてもよい。この場合、炉外温度計20,21,22は、部分ヒータごとに設けてもよい。
図5に示すように、生産工程において、第一搬送ローラ7は、成形炉2の側壁部2aに設けられた開口部23を通じて、成形炉2の炉外から炉内に挿入されている。開口部23と第一搬送ローラ7の軸部7aとの隙間は、例えば耐火繊維からなる第一封止部材24で封止されている。軸部7aの一端部は、成形炉2の外部に配置された軸受(図示省略)によって保持されている。一方、図6に示すように、昇温工程では、炉内ヒータ15が、第一搬送ローラ7用の開口部23を通じて、成形炉2の炉外から炉内に配置されている。開口部23と炉内ヒータ15との隙間は、例えば耐火繊維からなる第二封止部材25で封止されている。炉内ヒータ15及び炉内温度計16の一端部は、成形炉2の外部に配置された部材によって保持されている。
図3及び図4に示すように、上記の製造装置1を用いた昇温工程では、成形炉2内に配置された炉内ヒータ15により、成形体3の下部を加熱する。これにより、成形炉2内に発生する上昇気流などが発生した場合でも、成形体3の下部近傍に配置された炉内ヒータ15により、成形体3の下部の温度を安定させることができるため、熱衝撃による成形体3の割れなどの破損を低減できる。
また、本実施形態における昇温工程では、成形炉2外に配置された炉外ヒータ17,18,19によっても、成形体3を加熱する。これにより、成形炉2内の温度分布を適正に調整することができる。成形炉2内の温度分布は、特に限定されるものではない。例えば、成形炉2内において、天井部2b付近の温度が、成形体3下部付近の温度よりも高くなるように設定してもよく、天井部2b付近の温度が、成形体3下部付近の温度よりも低くなるように設定してもよく、天井部2b付近の温度が、成形体3下部付近の温度と同じになるように設定してもよい。
炉内ヒータ15及び/又は炉外ヒータ17,18,19による加熱温度は、炉内温度計16及び/又は炉外温度計20,21,22による測定温度に基づいて調整される。
図7~図9に示すように、昇温工程で成形体3を所定温度まで加熱すると、昇温工程から生産工程へと移行する。昇温工程から生産工程へ移行する際は、まず、図7に示すように、炉内ヒータ15及び炉外ヒータ17,18,19による成形体3の加熱を継続した状態のまま、炉内温度計16を炉外に除去する。次に、図8に示すように、炉内ヒータ15及び炉外ヒータ17,18,19による成形体3の加熱を継続した状態のまま、成形体3の溝部8に溶融ガラスGmを供給し、溝部8から溢れ出た溶融ガラスGmにより成形体3の各外側面10を覆う。このように成形体3の各外側面10(特に成形体3の下端部3a)を溶融ガラスGmにより覆った後に、図9に示すように、炉外ヒータ17,18,19による成形体3の加熱を継続したまま、炉内ヒータ15を成形体3の下部を加熱する位置から退避させる。本実施形態では、炉内ヒータ15を成形炉2の開口部23を通じて炉外に除去する。
成形工程を含む生産工程は、成形炉2の開口部23を通じて第一搬送ローラ7を炉内の所定位置に配置するなどの所定の準備工程が終了した段階で、製品となるガラス板Gを製造するために開始する。なお、生産工程においても、炉外ヒータ17,18,19により、成形炉2内の温度分布を管理することが好ましい。
成形体3に溶融ガラスGmを供給すると、成形体3が高温の溶融ガラスGmで覆われるため、成形体3の下部の温度低下は生じにくくなる。一方、成形体3が高温の溶融ガラスGmで覆われた状態で、炉内ヒータ15によって成形体3の下部を加熱すると、溶融ガラスGm及び/又はガラスリボンGrが加熱されすぎ、ガラスリボンGrを安定的に成形しにくくなるおそれがある。したがって、生産工程(成形工程)では、炉内ヒータ15による加熱を行わないことが好ましい。
(第二実施形態)
第二実施形態では、昇温工程における炉内ヒータ15の配置位置の変形例を例示する。図10に示すように、本実施形態では、昇温工程において、炉内ヒータ15が、成形体3の下部の両外側面10を、厚み方向Yで両側から挟んで対をなすように配置されている。つまり、炉内ヒータ15が、第一実施形態よりも上方に配置されている。
(第三実施形態)
第三実施形態では、昇温工程における炉内ヒータ15の配置位置の変形例を例示する。図11に示すように、本実施形態では、昇温工程において、炉内ヒータ15が、成形体3の下部の内部に埋め込まれた状態で配置されている。つまり、本発明は、炉内ヒータ15を成形体3の外部に配置する場合に限定されない。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
炉内ヒータ15及び炉外ヒータ17,18,19の形状は、特に限定されるものではなく、棒状ヒータであってもよいし、面状ヒータであってもよい。また、炉外ヒータ17,18,19は省略してもよい。
炉内温度計16は、第一搬送ローラ7を炉内に配置するための開口部23を通じて、炉内に配置されていてもよい。
炉内温度計16は、溶融ガラスGm及びガラスリボンGrの搬送を阻害しない位置であれば、生産工程においても、成形炉2内に配置した状態のままでもよい。あるいは、昇温工程及び生産工程において、炉内温度計16は省略してもよい。炉内温度計16を省略する場合、昇温工程における炉内ヒータ15の加熱温度は、例えば、炉外温度計20,21,22に基づいて調整することができる。
昇温工程において、成形体3の幅方向両端部を両側から押圧(加圧)してもよい。
昇温工程から生産工程へ移行する際に、炉内ヒータ15を退避させることなく、単に炉内ヒータ15による加熱を停止してもよい。この場合、第一搬送ローラ7を炉内に配置するための開口部23とは独立して、炉内ヒータ15を配置するための開口部を設ければよい。
上記の実施形態では、ガラス物品としてガラス板Gを例示したが、ガラス物品はこれに限定されない。ガラス物品は、例えば、ガラスリボンGrを巻芯の周りにロール状に巻き取ったガラスロールなどであってもよい。
1 ガラス物品の製造装置
2 成形炉
3 成形体
4 徐冷炉
5 冷却室
6 切断室
7 第一搬送ローラ(エッジローラ)
13 第二搬送ローラ(アニーラローラ)
14 第三搬送ローラ
15 炉内ヒータ
16 炉内温度計
17 第一炉外ヒータ
18 第二炉外ヒータ
19 第三炉外ヒータ
20 第一炉外温度計
21 第二炉外温度計
22 第三炉外温度計
23 開口部
G ガラス板
Gm 溶融ガラス
Gr ガラスリボン

Claims (7)

  1. オーバーフローダウンドロー法によるガラス物品の製造方法において、
    成形炉内に配置された成形体を昇温する昇温工程と、
    昇温された前記成形体に溶融ガラスを供給し、前記溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程とを備え、
    前記昇温工程では、前記成形炉内に配置された炉内ヒータにより、前記成形体の下部を加熱し、
    前記成形体に前記溶融ガラスを供給した後、前記炉内ヒータを前記成形体の下部を加熱する位置から退避させることを特徴とするガラス物品の製造方法。
  2. 前記炉内ヒータは、前記成形炉の側壁部に設けられた前記ガラスリボンの搬送ローラ用の開口部を通じて、前記成形炉内に配置される請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
  3. オーバーフローダウンドロー法によるガラス物品の製造方法において、
    成形炉内に配置された成形体を昇温する昇温工程と、
    昇温された前記成形体に溶融ガラスを供給し、前記溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程とを備え、
    前記昇温工程では、前記成形炉内に配置された炉内ヒータにより、前記成形体の下部を加熱し、
    前記炉内ヒータは、前記成形炉の側壁部に設けられた前記ガラスリボンの搬送ローラ用の開口部を通じて、前記成形炉内に配置されることを特徴とするガラス物品の製造方法。
  4. 前記炉内ヒータは、前記ガラスリボンの厚み方向における前記成形体の下部の両外側面、又は前記成形体の下部よりも下方における前記ガラスリボンの通過部を、前記厚み方向で両側から挟んで対をなすように配置される請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス部品の製造方法。
  5. 前記成形体に前記溶融ガラスを供給した後、前記炉内ヒータによる前記成形体の下部の加熱を低下又は停止する請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法。
  6. 前記昇温工程では、前記成形体の下部の温度を測定する温度計が、前記成形炉内に配置される請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法。
  7. 前記成形炉外には、前記成形炉の側壁部の上部に対応する位置に前記成形体の上部を加熱する第一炉外ヒータが配置され、前記成形炉の側壁部の下部に対応する位置に前記成形体の下部を加熱する第二炉外ヒータが配置され、前記成形炉の天井部に対応する位置に前記成形体の上部を加熱する第三炉外ヒータが配置されており、
    前記昇温工程では、前記第一炉外ヒータ、前記第二炉外ヒータ及び前記第三炉外ヒータにより、前記成形体をさらに加熱する請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法。
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