JP7490910B2 - 圧電性ポリアミドフィルムの製造方法 - Google Patents

圧電性ポリアミドフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、圧電性ポリアミドフィルムの製造方法に関する。
圧力を加えた場合に歪みを生じて圧力に比例した分極(表面電荷)が現れる圧電材料は、様々な用途への応用が期待されている。圧電材料としては、絶縁性もしくは強誘電性の単結晶及びチタン酸バリウム等のセラミックス等の無機材料、並びに、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表される有機高分子材料などが知られている。
例えば有機高分子材料は、超音波発生素子、ソナー、生体電子聴診器、微動ステージ等への応用がなされるに至っており、将来期待される用途として、トリリオンセンサー社会に象徴されるセンサー社会において、振動発電素子としての応用も期待されている。
一方、有機高分子材料の中で圧電材料として期待されるPVDFは、フッ素原子を含むために材料コストが高く、原料である蛍石の産出が少ないわが国においては、PVDFの代替材料の開発が重要視されている。
PVDFに代わる圧電性の高分子材料の例としては、分極したナイロン7及びナイロン11が知られ、センサー、超音波振動子、又は圧電特性を利用した変換器を製造等するのに使用できることが記載されている(例えば、特許文献1~3)。
特表平1-503614号公報 特開2011-501678号公報 特開2011-18682号公報
上記のように、従来から圧電材料として有機高分子材料を用いること、及び有機高分子材料としては、PVDF以外にナイロンを使用し得ること等が知られている。
しかしながら、ナイロンについては、これまで構造制御に関しての検討は、熱融解後の再結晶化(溶融結晶化)を中心とした技術によるものであるため、成膜プロセスが高温であり、粘度等の簡易な調整が難しいほか、プリンテッドエレクトロニクス技術を活用し得ない等、成形性に制約があり、実用化への障壁となっている。
また、ナイロンは、圧電性を有するものの、圧電材料としての圧電特性はPVDFに比べて劣る傾向にある。
また、ナイロンは、一般に、有機溶媒に対して優れた耐薬品性を示す材料として知られ、溶剤耐性が求められる用途に広く利用されている。そのため、ナイロンを有機溶剤に溶かして調製した樹脂溶液を用いた成膜法は一般的でない。また、使用することができる溶剤に制限がある等の制約からも、例えば溶液キャスト法を利用したナイロン材の製造には工程上実用化に支障がある。
更に、ナイロンは、一般に耐熱性及び強靭性等を付与するために延伸処理をされることがあるが、圧電効果の向上を狙って延伸することは行われていない。
ナイロンは、圧電性の高分子材料としての使用が期待されることから、比較的低温の条件での成膜及び特性調整が可能になれば、材料コストの高いPVDFの代替材料として、低廉で、かつ、PVDFと同等の圧電特性を有する圧電材料としての実用化が急速に進展することが想定される。
本開示は、上記に鑑みなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、低温(特に室温(25℃)~200℃)で成膜でき、かつ、プリンテッドエレクトロニクス技術を利用できる等の成形適性を有し、従来法(溶融結晶化)による場合と同等以上の残留分極値(圧電特性)を有する圧電性ポリアミドフィルムが製造される圧電性ポリアミドフィルムの製造方法を提供することにある。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 脂肪族ポリアミドを有機溶剤に溶解させた樹脂溶液を基材に塗布し乾燥させて樹脂膜を形成する工程Aと、形成された前記樹脂膜を、150℃超250℃未満の温度で熱処理する工程Bと、熱処理後の前記樹脂膜を、降温速度を10℃/秒以上として冷却する工程Cと、冷却された前記樹脂膜を一軸延伸する工程Dと、を有する圧電性ポリアミドフィルムの製造方法である。
<2> 前記有機溶剤の溶解度パラメーター(SP値)と前記脂肪族ポリアミドの溶解度パラメーター(SP値)との差の絶対値が、3以下である前記<1>に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法である。
<3> 前記有機溶剤が、フェノール系溶剤である前記<1>又は前記<2>に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法である。
<4> 前記フェノール系溶剤が、クレゾールである前記<3>に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法である。
<5> 前記工程Aは、前記乾燥を0.1MPa未満の真空条件下、100℃以下の温度域で行う工程を含む、前記<1>~前記<4>のいずれか1つに記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法である。
<6> 前記工程Aは、前記乾燥を不活性雰囲気中において行う工程を含む、前記<1>~前記<4>のいずれか1つに記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法である。
<7> 前記工程Dは、冷却された前記樹脂膜を、延伸倍率を3倍~5倍として一軸延伸する前記<1>~前記<6>のいずれか1つに記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法である。
<8> 前記脂肪族ポリアミドが、奇数個の炭素原子を含む奇数ナイロンである前記<1>~前記<7>のいずれか1つに記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法である。
本発明によれば、低温(特に室温(25℃)~200℃)で成膜でき、かつ、プリンテッドエレクトロニクス技術を利用できる等の成形適性を有し、従来法による場合と同等以上の残留分極値(圧電特性)を有する圧電性ポリアミドフィルムが製造される圧電性ポリアミドフィルムの製造方法が提供される。
塗膜が160℃付近で白色に結晶化し始めている様子を示す写真である。 塗膜が200℃付近で透明膜となっている様子を示す写真である。
以下、本開示の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法について詳細に説明する。
なお、本開示の実施形態に関わる構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、組成物又は層中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法は、脂肪族ポリアミドを有機溶剤に溶解させた樹脂溶液を基材に塗布し乾燥させて樹脂膜を形成する工程Aと、形成された前記樹脂膜を、150℃超250℃未満の温度で熱処理する工程Bと、熱処理後の前記樹脂膜を、降温速度を10℃/秒以上として冷却する工程Cと、冷却された前記樹脂膜を一軸延伸する工程Dと、を有しており、必要に応じて、更に他の工程を有するものでもよい。
従来から、圧電材料として有機高分子材料を用いること知られており、例えば、既述の特許文献1~3には、有機高分子材料であるPVDFのほか、ナイロンを圧電材料として使用し得ること等が記載されている。
しかしながら、ナイロンを原料とする場合、高温での成膜プロセスが不可欠で、粘度等の簡易な調整が難しいほか、プリンテッドエレクトロニクス技術を活用し得ない等、成形性に様々な制約がある。しかも、ナイロンの圧電特性は、圧電材料として用いられるPVDFに比べて劣る傾向にあった。
このような状況に鑑み、本開示では、ナイロンを有機溶剤に溶解し、塗布及び乾燥を経て成膜する溶液キャスト法に着目し、温度及び延伸等の条件並びに好適には溶媒種及び乾燥条件(温度、雰囲気等)を制御することで、ナイロン膜の特性向上と構造制御が実現可能であるとの知見を得、本開示は、かかる知見に基づいて上記課題を解決した。
溶液キャスト法による成形法であれば、粘度等の簡易な調整による成形制御が容易であり、プリンテッドエレクトロニクス技術を活用した応用も可能である。
具体的には、本開示では、ナイロンを原料として圧電フィルムを製造するにあたり、溶液キャスト法を採用して成膜し、特定の低温度域で熱処理した後に特定の降温速度で急冷した樹脂膜に対して一軸延伸処理を施す。これにより、圧電特性に優れたポリアミドフィルムを製造することができる。
また、得られるポリアミドフィルムは、透明性にも優れたものである。
なお、圧電特性は、残留分極値を指標として評価されるものである。
以下、本開示の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法の各工程について詳述する。
<工程A>
本開示における工程Aでは、脂肪族ポリアミドを有機溶剤に溶解させた樹脂溶液を基材に塗布し乾燥させて樹脂膜を形成する。
一般にナイロンに代表される脂肪族ポリアミドは有機溶剤に溶解し難いところ、本開示における工程Aは、脂肪族ポリアミドを有機溶剤に溶解した樹脂溶液として用い、いわゆる溶液キャスト法によって樹脂膜を形成する。溶液キャスト法によることで、比較的低温の温度域(特に室温~200℃)でナイロン膜(樹脂膜)を形成することが可能になり、形成されるナイロン膜は、従来から行われている溶融結晶化による場合に比べ、膜中の結晶粒のサイズが小さい平滑面を有する樹脂膜として形成される。そのため、後述する工程Dで延伸した後の結晶配向がよく、圧電特性に優れたものとなる。
脂肪族ポリアミドは、複数の脂肪族系モノマーがアミド結合により結合したポリマーであり、脂肪族骨格を有するナイロンが含まれる。
ナイロンとしては、ナイロン3、ナイロン5、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン13等が挙げられる。ナイロンの中でも、圧電特性の観点から、奇数個の炭素原子を含む奇数ナイロンが好ましく、ナイロン5、ナイロン7、ナイロン11がより好適である。
脂肪族ポリアミドを溶解する有機溶剤は、脂肪族ポリアミドを、脂肪族ポリアミドを溶解した樹脂溶液が塗布に使用可能な程度に溶解し得るものから選択すればよく、例えば、フェノール系溶剤、塩化メチレン、ベンジルアルコール等が挙げられる。脂肪族ポリアミドの溶解のしやすさの観点から、溶解度パラメーター(SP値)が以下の関係を満たす有機溶剤を選択することが好ましい。なお、式中の「||」は、絶対値を意味する。
|有機溶剤のSP値-脂肪族ポリアミドのSP値| ≦3 式1
溶解度パラメーター(SP値)は、Hansen球法により測定される値である。
具体的には、以下のようにして行える。
対象となる試料を、溶解度パラメーターが既知の溶媒に混合し、溶解したか否かを判別する。この溶解性試験の結果を、溶解度パラメーター(分散項δ、極性項δ、水素結合項δ)を各軸とする三次元空間にプロットする。そして、溶解した溶媒の座標を含み、溶解しなかった溶媒の座標を含まない球(Hansen球)を求める。求められた球の中心座標(δ、δ、δ)から試料の溶解度パラメーターδ(=δ +δ +δ )を算出する。
有機溶剤の中でも、加熱を要せずに脂肪族ポリアミドの溶解性を確保しやすい点で、フェノール系溶剤がより好ましい。
フェノール系溶剤としては、例えば、フェノール、クレゾール等が含まれ、中でも特に、m-クレゾールが好ましい。
脂肪族ポリアミドを有機溶剤に溶解した樹脂溶液中における脂肪族ポリアミドの濃度としては、3質量%以上が好ましく、塗布のし易さ及び膜厚調整の点で、8質量%以上がより好ましい。また、脂肪族ポリアミドの濃度は、20質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましい。
脂肪族ポリアミドを有機溶剤に溶解させた樹脂溶液の調製は、スクリュー管等を用い、グローブボックス内で外気と遮断された環境条件で行われることが好ましく、例えば、不活性雰囲気で行われることがより好ましい。不活性雰囲気については後述する。
グローブボックス内の湿度は、脂肪族ポリアミドの着色抑制の観点から、低湿に保たれていることが好ましく、10%RH以下であることがより好ましい。
樹脂溶液の調製は、脂肪族ポリアミドを有機溶剤に混合し、撹拌等して溶解することで行える。撹拌は、マグネチックスターラ等の回転子を用いて行うことができる。
脂肪族ポリアミドを有機溶剤に混合して溶解する際の溶液は、加温されていることが好ましく、130℃~150℃程度に加温されていることが好ましい。
有機溶剤として例えばm-クレゾールを用いる場合、高温で長時間撹拌させると酸化して赤褐色に変色することがある点で上記範囲が好ましい。
工程Aでは、公知の塗布法を適用して塗布することができ、塗布方法としては、例えば、バーコート法、スピンコート法等が挙げられる。樹脂溶液を基材に塗布する際、フィルムアプリケーターを用い、公知の塗布方法を適用することができる。フィルムアプリケーターを用いることで、成膜時間を短縮できる。
スピンコート法により成膜する場合の回転数としては、1000rpm(revolutions per minute)~8500rpmの範囲が好ましい。
また、塗布の一形態として、フラットシャーレに溶液を展開し、真空乾燥器内で固化、乾燥させて行ってもよい。この場合、載置台の傾きが0°となるように注意して乾燥させることが好ましい。
樹脂溶液を塗布して形成される塗布膜の厚みとしては、100μm~800μmの範囲が好ましく、300μm~700μmの範囲がより好ましい。
塗布膜の厚みが上記範囲であると、乾燥制御及び乾燥後の延伸のしやすさの点で有利である。
塗布形成された塗布膜は、乾燥に供されて樹脂膜が形成される。塗布膜が乾燥に供され、有機溶剤が除去されることにより樹脂膜を得ることができる。
乾燥方法については、特に制限はなく、送風機、加熱器等を用い、送風、加熱もしくは真空加熱等の方法、又はこれらの組み合わせた方法により行うことができる。乾燥は、後述の工程Bでの熱処理を兼ねて行ってもよい。
乾燥温度としては、室温(25℃)~200℃程度が好ましい。
乾燥時の環境は、膜の着色を抑える観点より、真空環境又は不活性雰囲気の環境が好ましい。中でも、真空乾燥機又はグローブボックス等を用いて外気と遮断された環境条件で行われることが好ましく、例えば、不活性雰囲気で行われることがより好ましい。不活性雰囲気については、後述する。また、工程Aでの乾燥を、後述の工程Bと兼ねて又は工程Aと工程Bを連続的に行うため、0.1MPa未満の真空条件下、200℃以下(好ましくは100℃以下)の温度域で乾燥を行うことも好ましい。
乾燥後の樹脂膜の厚みとしては、10μm~80μmの範囲が好ましく、30μm~70μmの範囲がより好ましい。樹脂膜の厚みが上記範囲であると、圧電性能の点で有利である。
<工程B>
本開示における工程Bでは、工程Aで形成された樹脂膜を、150℃超250℃未満の温度で熱処理する。熱処理により、樹脂膜を乾燥させて結晶化し、樹脂膜を硬化させて固定化する。
熱処理は、150℃超250℃未満の温度で行う。
熱処理時の温度が150℃を超えることで、樹脂の結晶化が良好に進行する。また、熱処理時の温度は250℃以上の範囲としてもよいが、温度上昇に見合う効果は期待できない。
熱処理時の温度は、樹脂の結晶化度の観点から、150℃超230℃以下が好ましく、170℃超210℃以下がより好ましい。
熱処理する際の昇温速度については、特に制限はなく適宜選択すればよい。
熱処理の方法としては、特に制限はなく、熱風機、熱板、輻射加熱器等を用いて行うことができる。
上記の中でも、工程Bでの熱処理は、膜の着色を効果的に抑える点で、真空乾燥機又はグローブボックス等を用いて外気と遮断された環境条件で行われることが好ましい。
工程Bでの熱処理は、不活性雰囲気で行われることがより好ましい。
また、工程Bでの熱処理は、0.1MPa未満の真空条件下、200℃以下の温度域で行われることも好ましい。この場合、真空乾燥機を用いて行うことができる。
不活性雰囲気としては、窒素雰囲気、希ガス雰囲気等が含まれる。希ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等を用いることができる。
<工程C>
本開示における工程Cでは、工程Bで熱処理した後の樹脂膜を、降温速度を10℃/秒以上として冷却する。
冷却時の降温速度は、10℃/秒以上とする。冷却を10℃/秒以上の速い降温速度にて行うことで、結晶配向のより良好なものとすることができる。
冷却は、上記降温速度を満たし得る方法を適宜選択して行うことができる。冷却は、例えば、工程B後に10℃以下の液体と熱交換させることにより行ってもよく、具体的な一例として氷水に浸漬することによって行ってもよい。
冷却時の降温速度としては、50℃/秒以上が好ましい。
また、降温速度の上限については、冷却装置の性能限界を考慮し、200℃/秒以下とすることができ、100℃/秒以下としてもよく、80℃/秒以下としてもよい。
<工程D>
本開示における工程Dでは、工程Cにおいて冷却された樹脂膜を一軸延伸する。
樹脂膜を一軸延伸することで、樹脂膜の分子配向性が向上し、結晶化度が向上する。このことは、溶融結晶化による場合は延伸による分子配向性が不充分となりやすいところ、本開示における溶液キャスト法により成膜することで膜の平滑性が高められたことによって達成されたものと考えられる。これにより、圧電特性の指標となる残留分極値(圧電特性)が従来のPVDF等の圧電フィルムと同等以上である圧電性ポリアミドフィルムが得られる。
一軸延伸は、熱処理後の樹脂膜の一端及び他端を握持部材で握持して所望とする方向に伸ばすことにより行える。
本工程では、冷却された樹脂膜の延伸倍率を3倍~5倍とすることが好ましい。延伸倍率が上記範囲であることで、樹脂の結晶性が効果的に向上し、圧電特性の向上効果が大きくなる。
具体的には、例えば、環境温度が室温(25℃)では3.5倍~4.0倍が好ましく、環境温度が120℃では4.0倍~4.5倍が好ましい。
延伸時の樹脂膜の温度としては、室温(25℃)~180℃程度の温度域が好ましく、100℃~160℃の温度域がより好ましい。
<他の工程>
上記した工程A~工程D後には、更に、分極処理を行う工程を設けることができる。
分極処理は、一軸延伸後のポリアミドフィルムに対して一定方向の電界を与え、結晶の自発分極の向きを電界の向きに近い方向に揃えることができる。これにより、フィルム全体に一定の分極が与えられ、圧電特性をより向上させることができる。
ポリアミドフィルムに電極を取り付けることで、力が加えられた際に圧力に比例して生じた表面電荷に応じた電圧を取り出すことができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
(実施例1)
-1.ナイロン11のクレゾール溶液の調製-
まず、ナイロン11のペレット1gをスクリュー管に入れた。次いで、グローブボックス内(窒素濃度:90%以上、湿度:10%RH以下)にスクリュー管を置き、スクリュー管にm-クレゾール8.7mL(9.0g)を入れた。その後、スクリュー管に回転子を入れてスターラーで攪拌し、目視により溶け残りがなくなるまで温度140℃で溶解させた。
以上のようにして、ナイロン11をm-クレゾールに溶解し、ナイロン11のクレゾール10%溶液(樹脂溶液)を調製した(工程A)。
なお、ナイロン11のSP値とm-クレゾールのSP値との差(ΔSP)は、2.7である。
-2.樹脂溶液の塗布-
調製した樹脂溶液をガラス板上に注いだ。この際、基板から樹脂溶液が溢れないように注意した。次いで、ガラス板上の樹脂溶液を、フィルムアプリケーターを用いてガラス基板上に塗布して成膜した(工程A)。塗布速度は、20mm/sに設定した。この際、成膜後の樹脂膜であるナイロンフィルムの乾燥厚みが50μmになるように、樹脂溶液の塗布時の膜厚を600μmに設定した。
なお、塗布は、塗布速度を20mm/s、40mm/s、60mm/sに変化させて行ったが、速度の遅い20mm/sにて最も均一な厚みの膜が得られた。
-3.乾燥、熱処理-
上記のようにして樹脂溶液を塗布して形成した塗膜を、ガラス基板ごと真空乾燥機に入れ、機内を昇温させて塗膜を加熱して200℃まで乾燥を行い(工程A)、温度が200℃に達してから1時間、-100kPaの減圧下で熱処理を行った(工程B)。
具体的には、塗膜が溶液状態のときに真空引きすると成膜した際に膜中に気泡が残ることがあるため、100℃までは真空引きせずに大気圧下で乾燥させ、100℃を超えた付近で真空引きを開始し、200℃に達してから-100kPaの減圧条件として205℃で1時間熱処理を施すことにより、塗膜の乾燥と熱処理を行った。
-4.冷却-
そして、熱処理時間が1時間経過した後、真空乾燥機からガラス基板を取り出し、取り出した直後に塗膜を氷水に浸漬し、降温速度を50℃/秒として急冷した(工程C)。
塗膜は、160℃付近で白色に結晶化し始め(図1参照)、200℃付近で透明に戻った(図2参照)。
-5.延伸処理-
上記のようにして得た樹脂膜(ナイロンフィルム)を1cm×3cmサイズに裁断した。裁断したナイロンフィルムを、延伸機を用いて以下の延伸条件で一軸延伸した(工程D)。
<延伸条件>
・延伸速度:0.3 mm/秒
・延伸時の環境温度:室温(25℃)
・延伸倍率:3.5倍~4.0倍
-6.電極の蒸着-
延伸後のナイロンフィルムを1.5cm間隔で裁断し、蒸着機を用いてナイロンフィルムの両面に金を蒸着した。
以上のようにして、圧電性ナイロンフィルム(圧電性ポリアミドフィルム)を作製した。ナイロンフィルムの結晶構造をX線回折(XRD:X-Ray-Diffraction)法により確認した。結果、本実施例のナイロンフィルムは、δ'型の結晶構造を有していることが確認された。
-7.分極処理-
得られた圧電性ナイロンフィルムを試料とし、試料に対して200MV/m以上の電場を印加することで、分極処理を行った。
(比較例1)
実施例1において、「3.乾燥、熱処理」における熱処理時の温度を205℃から250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、圧電性ナイロンフィルムを作製し、分極処理を行った。また、実施例1と同様にして結晶構造の確認を行った。
(比較例2)
実施例1において、「3.乾燥、熱処理」における熱処理時の温度を205℃から150℃に変更し、「5.延伸処理」を施していないこと以外は、実施例1と同様にして、圧電性ナイロンフィルムを作製し、分極処理を行った。また、実施例1と同様にして結晶構造の確認を行った。
(比較例3)
実施例1において、「4.冷却」における急冷時の降温速度を10℃/秒から3.4℃秒に変更し、熱処理時の温度が203℃であったこと以外は、実施例1と同様にして、圧電性ナイロンフィルムを作製し、分極処理を行った。また、実施例1と同様にして結晶構造の確認を行った。
(比較例4)
実施例1において、「5.延伸処理」を施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして、圧電性ナイロンフィルムを作製し、分極処理を行った。また、実施例1と同様にして結晶構造の確認を行った。
(比較例5)
実施例1の圧電性ナイロンフィルムの比較試料として、溶液結晶化を適用して作製された市販のPVDFフィルム(KFピエゾフィルム、(株)クレハ製)を用意した。また、実施例1と同様にして結晶構造の確認を行った。
(測定)
-残留分極-
実施例及び比較例で作製した圧電性ナイロンフィルム又はPVDFフィルムを用い、各フィルムに交流電圧を印加して電気変位Dを計測し、電気変位D(C/m)を縦軸とし、電場E(MV/m)を横軸としたD-Eヒステリシス曲線を作成した。そして、E=0におけるDの値の絶対値の平均をとることにより、残留分極値(Pr)を求めた。
Figure 0007490910000001

表1に示すように、低温で成膜することができ、溶融結晶化による場合とほぼ同等の残留分極値を有する圧電性ポリアミドフィルムを作製することができた。

Claims (7)

  1. 脂肪族ポリアミドを有機溶剤に溶解させた樹脂溶液を基材に塗布し乾燥させて樹脂膜を形成する工程Aと、
    形成された前記樹脂膜を、150℃超250℃未満の温度で熱処理する工程Bと、
    熱処理後の前記樹脂膜を、降温速度を10℃/秒以上200℃/秒以下として冷却する工程Cと、
    冷却された前記樹脂膜を一軸延伸する工程Dと、
    を有し、
    前記有機溶剤の溶解度パラメーターと前記脂肪族ポリアミドの溶解度パラメーターとの差の絶対値が、3以下である圧電性ポリアミドフィルムの製造方法。
  2. 前記有機溶剤が、フェノール系溶剤である請求項1に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法。
  3. 前記フェノール系溶剤が、クレゾールである請求項2に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法。
  4. 前記工程Aは、前記乾燥を0.1MPa未満の真空条件下、25℃以上200℃以下の温度域で行う工程を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法。
  5. 前記工程Aは、前記乾燥を不活性雰囲気中において行う工程を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法。
  6. 前記工程Dは、冷却された前記樹脂膜を、延伸倍率を3倍~5倍として一軸延伸する請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法。
  7. 前記脂肪族ポリアミドが、奇数個の炭素原子を含む奇数ナイロンである請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の圧電性ポリアミドフィルムの製造方法。
JP2019064148A 2019-03-28 2019-03-28 圧電性ポリアミドフィルムの製造方法 Active JP7490910B2 (ja)

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