JP6368658B2 - 高分子圧電材料および高分子圧電材料の製造方法 - Google Patents
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Description
光学活性高分子の中でも、ポリ乳酸のような高分子結晶の圧電性は、螺旋軸方向に存在するC=O結合の永久双極子に起因する。特にポリ乳酸は、主鎖に対する側鎖の体積分率が小さく、体積あたりの永久双極子の割合が大きく、ヘリカルキラリティをもつ高分子の中でも理想的な高分子といえる。
また、ポリ乳酸から形成される圧電材料は、ポーリング処理が不要で、圧電率は数年にわたり減少しないことが知られている。
例えば、ポリ乳酸の成形物を延伸処理することで、常温で、10pC/N程度の圧電率を示す高分子圧電材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリ乳酸結晶を高配向にするために、鍛造法と呼ばれる特殊な配向方法により18pC/N程度の高い圧電性を出すことも報告されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、ポリ乳酸などの脂肪族系ポリエステルは耐熱性が低く、高温環境下での圧電素子としての使用が制限されるという問題がある。
<1> イミド環構造を有する光学活性高分子を含み、圧電定数d14が0.1pC/N以上である、高分子圧電材料。
また、本明細書において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
本発明の一実施形態に係る高分子圧電材料は、イミド環構造を有する光学活性高分子を含み、圧電定数d14が0.1pC/N以上である。
さらに、イミド環構造を有する光学活性高分子は、脂肪族系ポリエステルと比較して加水分解が生じにくい。そのため、イミド環構造を有する光学活性高分子を含む本実施形態の高分子圧電材料は、ポリ乳酸のような脂肪族系ポリエステルを含む高分子圧電材料と比較して、大気中などの水分を含む環境下にて劣化しにくく、信頼性が高い。
すなわち、イミド環構造を有する光学活性高分子は、脂肪族系ポリエステルと比較して耐熱性および耐湿熱性に優れている。したがって、イミド環構造を有する光学活性高分子を含む本実施形態の高分子圧電材料は、高温や、高湿熱環境下での圧電素子としての使用に適している。
イミド環構造を有する光学活性高分子は、イミド環構造を有し、かつ、光学活性を有する高分子である。ここで、光学活性を有する高分子とは、構造中に対称中心が存在しない高分子をいい。このような高分子としては、例えば、不斉炭素を有する高分子、軸性不斉を有する高分子、面性不斉を有する高分子などが挙げられる。構造中に対称中心が存在しないことは、旋光度または比旋光度を測定し、その絶対値が0より大きいことから確認することができる。
イミド環構造は、環構造中にイミド結合を有する環状化合物である。イミド環構造としては、例えば、下記(I)−1〜(I)−5に示すような構造が挙げられる。
一般式(II)中、nは0〜10を表し、*は不斉炭素を表す(以下の反応式(III)、一般式(IV)〜(VI)についても同様)。
また、一般式(II)中、nは0〜6であることが好ましく、0〜4であることがより好ましく、0〜2であることがさらに好ましく、0または1であることが特に好ましく、0であることがもっとも好ましい。
また、高分子圧電材料中におけるイミド環構造を有する光学活性高分子の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、高分子圧電材料の全量に対し、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
イミド環構造を有する光学活性高分子の重量平均分子量(Mw)は、18,000以上であることが好ましい。これにより、高分子圧電材料の機械的強度が向上すると共に、延伸操作により高分子鎖が配向して圧電性を発現させることができる。上記Mwは、20,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることが更に好ましい。
また、イミド環構造を有する光学活性高分子のMwは、1,000,000以下であることが好ましい。これにより、成形(例えば押出成形)によって高分子圧電材料を得る際の成形性が向上する。上記Mwは、800,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましい。
昭和電工社製、Shodex GPC−101
−カラム−
昭和電工社製、Shodex OHpak SB−804 HQ
−サンプルの調製−
イミド環構造を有する光学活性高分子(例えば、ポリスクシンイミド)を40℃で溶媒であるジメチルホルムアミドに溶解させ、濃度1mg/mLのサンプル溶液を準備する。
−測定条件−
サンプル溶液0.1mLを溶媒(ジメチルホルムアミド(LiBr 0.1質量%含有))、温度40℃、0.7mL/分の流速でカラムに導入し、カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。イミド環構造を有する光学活性高分子の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、昭和電工社製のStandard Shodex SM−105を用いて作成した検量線に基づき算出する。
イミド環構造を有する光学活性高分子の589nmにおける比旋光度の絶対値は、0.1deg・cm2・g−1以上であることが好ましい。これにより、イミド環構造を有する高分子が光学活性を有することがわかる。
イミド環構造を有する光学活性高分子(例えば、ポリスクシンイミド)を1.5質量%となるようにジメチルホルムアミドに溶解し、全自動旋光計AUTOPOL V(Rudolph Research Analytical社製)を用いて、測定波長589nm、20℃における旋光度αを測定する。旋光度αから下記式を用いて比旋光度[α]を計算する。
[式1]
[α]=α/(c×l)
c:測定サンプル濃度(g/dL)
l:セル長(100mm)
本実施形態の高分子圧電材料は、本発明の効果を損なわない限度において、イミド環構造を有する光学活性高分子以外の光学活性高分子(以下「その他の光学活性高分子」と称する)を含んでいてもよい。
その他の光学活性高分子としては、例えば、ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等を挙げることができる。
前記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ―ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ−メチル)等が挙げられる。
前記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
前記ポリ乳酸系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸が挙げられ、中でもL−乳酸のホモポリマー(PLLA)またはD−乳酸のホモポリマー(PDLA)が好ましい。
本実施形態の高分子圧電材料は、安定化剤として、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の化合物を含むことが好ましい。
これにより、イミド環構造を有する光学活性高分子の加水分解反応を抑制し、得られるフィルムの耐湿熱性をより向上させることができる。
安定化剤については、国際公開第2013/054918号パンフレットの段落003
9〜0055の記載を適宜参照できる。
また、本実施形態の高分子圧電材料は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
また、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系化合物又はヒンダードアミン系化合物を用いることが好ましい。これにより、耐湿熱性および透明性にも優れる高分子圧電材料を提供することができる。
本実施形態の高分子圧電部材は、本発明の効果を損なわない限度において、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂またはポリスチレン樹脂に代表される公知の樹脂や、シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の無機フィラー、フタロシアニン等の公知の結晶核剤等、その他の成分を含有していてもよい。
無機フィラー、結晶核剤等のその他の成分については、国際公開第2013/054918号パンフレットの段落0057〜0060の記載を適宜参照できる。
以下、本発明の一実施形態に係る高分子圧電材料の製造方法について説明する。本実施形態の高分子圧電材料の製造方法は、前記イミド環構造を有する光学活性高分子を含む組成物を製膜して膜を得る製膜工程と、前記膜を延伸する延伸工程と、を有する。
本実施形態に係る高分子圧電材料の製造方法は、イミド環構造を有する光学活性高分子を含む組成物を製膜して膜を得る製膜工程を含む。製膜工程では、溶融製膜法や溶液キャスト法など、種々の製膜方法を用いることができる。
0.1質量%以上であることにより、膜の破損を抑制することができ、積層などの繰り返し成膜をせずとも成膜化が容易である。
また、30質量%以下であることにより、溶液の粘度が高くなりすぎず、キャスト法による均一な製膜が容易である。
ここで、溶液としては、光学活性高分子の一部または全部が溶媒に溶解した溶液であることが好ましく、光学活性高分子が実質的に全部溶解した溶液であることがさらに好ましい。
溶剤を除去する方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられる。中でも生産効率、取り扱い性の点から加熱により溶剤を蒸発させることが好ましい。また、溶媒蒸発時の温度は、特に限定されないが、0℃〜200℃であることが好ましく、10℃〜150℃であることがより好ましい。
溶媒が蒸発した後、必要に応じて、更に真空乾燥などの処理を行ってもよい。真空乾燥時の温度は、特に限定されないが、0℃〜200℃であることが好ましい。なお、300℃以下にすることで、光学活性高分子が酸化などの変性を起こすことを抑制できる。
本実施形態の高分子圧電材料の製造方法は、製膜工程により得られた膜を延伸する延伸工程を含む。延伸方法としては、特に限定されず、1軸延伸、2軸延伸、後述する固相延伸、ロール延伸などの種々の延伸方法を用いることができる。
イミド環構造を有する光学活性高分子を延伸することにより、圧電性が発現し、また主面の面積が大きな高分子圧電材料を得ることができる。
ここで、高分子圧電材料のガラス転移温度Tg〔℃〕および高分子圧電材料の融点Tm〔℃〕は、前記示差走査型熱量計(DSC)を用い、高分子圧電材料に対して、昇温速度10℃/分の条件で、温度を上昇させたときの、融解吸熱曲線から、曲線の屈曲点として得られるガラス転移温度(Tg)と、吸熱反応のピーク値として確認される温度(Tm)である。
また、圧縮応力は、50MPa〜5000MPaが好ましく、100MPa〜3000MPaであることがより好ましい。
そして、ロール圧延では、延伸前後でフィルム幅の減少が少なく、かつ幅方向の厚みを均一にできる。そのため、フィルムの幅方向において光散乱特性を均一にでき、製品の品質を維持しやすく、フィルムの使用率(歩留まり)も向上させることができる。さらに、延伸倍率を幅広く設定できる。
ロール圧延の加熱温度(延伸温度)は、例えば、20℃〜200℃程度であることが好ましく、40℃〜150℃程度であることがより好ましく、60℃〜120℃程度であることがさらに好ましく、80℃〜120℃程度であることが特に好ましい。
延伸前予熱処理の温度は、100℃〜160℃であることが好ましく、予熱時間は、5分〜30分であることが好ましい。
アニール処理の温度は、概ね80℃〜160℃であることが好ましく、100℃〜155℃あることがさらに好ましい。
このとき、線膨張や寸法変化により高分子圧電材料が変形すると、実用上平坦なフィルムを得ることが困難になるため、高分子圧電材料に一定の引張応力(例えば、0.01MPa〜100Mpa)を印加し、高分子圧電材料がたるまないようにしながら温度を印加することが好ましい。
急冷の方法は、水、氷水、エタノール、ドライアイスを入れたエタノールやメタノール、液体窒素などの冷媒に、アニール処理した高分子圧電材料を浸漬する方法や、蒸気圧の低い液体スプレーを吹き付け、蒸発潜熱により冷却したりする方法が挙げられる。連続的に高分子圧電材料を冷却するには、高分子圧電材料のガラス転移温度Tg以下の温度に管理された金属ロールと、高分子圧電材料とを接触させるなどして、急冷することが可能である。
以下、本実施形態の高分子圧電材料の物性について説明する。
高分子圧電材料の圧電性は、例えば、高分子圧電材料の圧電定数d14を測定することによって評価できる。
本実施形態の高分子圧電材料は、圧電定数d14が0.1pC/N以上である。なお、圧電定数d14が大きいほど、圧電性が高いことを示す。
具体的には、動的粘弾性測定装置を用い、周波数10Hzで、室温にて試験片に印加される最大せん断ひずみが0.01%〜0.1%の範囲に収まるように、0.01N/m2〜0.1N/m2のせん断応力を印加したときの該試験片の複素圧電率d14の実数部を測定し、実数部を圧電定数d14とする。
動的粘弾性測定装置としては、例えば、東洋精機製作所社製の「レオログラフソリッドS−1」を用いればよい。
具体的には、本実施形態における高分子圧電部材において、圧電定数d14は、0.1pC/N以上であり、0.3pC/N以上が好ましく、0.5pC/N以上がより好ましい。また圧電定数d14の上限は特に限定されないが、後述する透明性などのバランスの観点からは、50pC/N以下が好ましく、20pC/N以下がより好ましく、10pC/N以下がさらに好ましい。
本発明における弾性率は、上述した動的粘弾性測定装置を用いた圧電定数d14測定の際に、せん断ひずみ及び応力から得られる値である。
具体的には、動的粘弾性測定装置を用い、周波数10Hzで、室温にて試験片に印加される最大せん断ひずみが0.01%〜0.1%の範囲に収まるように、0.01N/m2〜0.1N/m2のせん断応力を印加したときの該試験片の弾性率である。
本実施形態の高分子圧電材料の弾性率は、好ましくは0.1GPa〜100GPaであり、より好ましくは0.2GPa〜50GPaであり、さらに好ましくは0.3GPa〜30GPaであり、特に好ましくは0.5GPa〜10GPaである。
高分子圧電材料の弾性率が0.1GPa以上であると、十分な形状保持性を確保することができ、弾性率が100GPa以下であると、フィルムが脆くなることを抑制できる。
高分子圧電材料の弾性率は、フィルムの組成、延伸倍率および加熱条件などによって調整することができる。例えば、延伸倍率を高めれば、高分子圧電材料の弾性率を高くすることができる。
また、高分子圧電材料の厚さ(例えば、フィルム形状である場合の高分子圧電材料の厚さ)には特に制限はないが、10μm〜400μmが好ましく、20μm〜300μmがより好ましく、20μm〜250μmがさらに好ましく、20μm〜200μmが特に好ましい。
本実施形態の高分子圧電材料を用いて積層体を形成してもよい。積層体は、例えば、高分子圧電材料を含む高分子圧電層と、高分子圧電層の少なくとも一方の主面上に配置され、イミド環構造を有する光学活性高分子以外の熱可塑性樹脂からなる表面層と、を含む。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が好ましい。
高分子圧電材料および積層体は、スピーカー、ヘッドホン、タッチパネル、リモートコントローラー、マイクロホン、水中マイクロホン、超音波トランスデューサ、超音波応用計測器、圧電振動子、機械的フィルター、圧電トランス、遅延装置、センサー、加速度センサー、衝撃センサー、振動センサー、感圧センサー、触覚センサー、電界センサー、音圧センサー、ディスプレイ、ファン、ポンプ、可変焦点ミラー、遮音材料、防音材料、キーボード、音響機器、情報処理機、計測機器、医用機器などの種々の分野で利用することができる。
<圧電材料の作製>
L−アスパラギン酸(東京化成工業社製)150g、メシチレン340mL、スルホラン140mL、蒸留水200mL、および85%リン酸水溶液13g(触媒)をディーンスタークトラップが備え付けられた丸底フラスコに装入した。ディーンスタークトラップは、予めメシチレン及びスルホランの混合溶媒で充満した。上記丸底フラスコ内を窒素置換後、メカニカルスターラーで攪拌し、常圧、窒素雰囲気下180℃で36時間脱水縮合を行った。更に、この反応残渣を耐熱バットに入れ、窒素気流下200℃に設定したオーブンで加熱して残留溶媒を揮発させ、その後48時間固相重合を行った。
得られた残渣をジメチルホルムアミド1200mLに溶解し、ろ過により不溶物を除去した。得られたろ液にアセトン1200mLを加えて生成した微黄色固体をろ別し、ろ液が中性になるまで蒸留水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄後、乾燥してポリスクシンイミド(光学活性高分子A)を得た。
L−アスパラギン酸(東京化成工業社製)50g、蒸留水100mLおよび85%リン酸水溶液21.7g(触媒)をディーンスタークトラップが備え付けられた丸底フラスコに装入した。上記丸底フラスコ内を窒素置換後、メカニカルスターラーで攪拌し、常圧、窒素雰囲気下で、120℃に加熱したオイルバスによりフラスコ内の水を留出させた。オイルバスの温度を上げてフラスコ内の温度を180℃にし、2.5時間反応を行った。更にフラスコ内を70mmHgに減圧して1時間反応を継続した。
得られた残渣をジメチルホルムアミド400mLに溶解し、ろ過により不溶物を除去した。得られたろ液にアセトン800mLを加えて生成した微黄色固体をろ別し、ろ液が中性になるまで蒸留水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄後、乾燥してポリスクシンイミド(光学活性高分子B)を得た。
L−アスパラギン酸(東京化成工業社製)50g、メシチレン112mL、スルホラン50mL、蒸留水100mLおよび85%リン酸水溶液4.4g(触媒)をディーンスタークトラップが備え付けられた丸底フラスコに装入した。ディーンスタークトラップは、予めメシチレン及びスルホランの混合溶媒で充満した。上記丸底フラスコ内を窒素置換後、メカニカルスターラーで攪拌し、常圧、窒素雰囲気下180℃で4.5時間脱水縮合を行った。
溶媒を除去して得られた残渣をジメチルホルムアミド400mLに溶解し、ろ過により不溶物を除去した。得られたろ液にアセトン600mLを加えて生成した微黄色固体をろ別し、ろ液が中性になるまで蒸留水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄後、乾燥してポリスクシンイミド(光学活性高分子C)を得た。
触媒を85%リン酸水溶液4.4gを塩化スズ(II)・二水和物8.6gに変更したこと以外は製造例3と同様にしてポリスクシンイミド(光学活性高分子D)を得た。
触媒を85%リン酸水溶液4.4gを塩化スズ(II)・二水和物8.6gに変更し、かつ、脱水縮合について、「常圧、窒素雰囲気下180℃で4.5時間脱水縮合を行った」操作を「常圧、窒素雰囲気下180℃で4時間脱水縮合を行った後、更に85%リン酸水溶液8.8gを加え、常圧、窒素雰囲気下180℃で4時間脱水縮合を行った」操作に変更したこと以外は製造例3と同様にしてポリスクシンイミド(光学活性高分子E)を得た。
ポリスクシンイミドの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、下記GPC測定方法により、測定された値を指す。
−GPC測定装置−
昭和電工社製、Shodex GPC−101
−カラム−
昭和電工社製、Shodex OHpak SB−804 HQ
−サンプルの調製−
ポリスクシンイミドを40℃で溶媒であるジメチルホルムアミドに溶解させ、濃度1mg/mLのサンプル溶液を準備した。
−測定条件−
サンプル溶液0.1mLを溶媒(ジメチルホルムアミド(LiBr 0.1質量%含有))、温度40℃、0.7mL/分の流速でカラムに導入し、カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定した。ポリスクシンイミドの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、昭和電工社製のStandard Shodex SM−105を用いて作成した検量線に基づき算出した。
ポリスクシンイミドの589nmにおける比旋光度は、下記の方法により測定した。
−測定条件−
ポリスクシンイミドを1.5質量%となるようにジメチルホルムアミドに溶解し、全自動旋光計AUTOPOL V(Rudolph Research Analytical社製)を用いて、測定波長589nm、20℃における旋光度αを測定した。旋光度αから下記式を用いて比旋光度[α]を計算した。
[式1]
[α]=α/(c×l)
c:測定サンプル濃度(g/dL)
l:セル長(100mm)
製造例1で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子A)1gをジメチルホルムアミド10mLに溶解した後、テフロン(登録商標)シャーレにキャストして窒素気流下、常温で24時間放置してキャストフィルムを得た。得られたキャストフィルムを、100℃に設定した加熱延伸ローラー(井元製作所製)を用いて延伸倍率2倍にロール圧延して、配向処理を行った。これにより、高分子圧電材料を作製した。
得られた高分子圧電材料の厚さは46μmであった。
加熱延伸ローラー(井元製作所製)の設定温度を100℃から120℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして高分子圧電材料を作製した。
製造例1で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子A)1gを製造例2で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子B)1gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして高分子圧電材料を作製した。
製造例1で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子A)1gを製造例3で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子C)1gに変更し、かつ、加熱延伸ローラー(井元製作所製)の設定温度を100℃から80℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして高分子圧電材料を作製した。
製造例1で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子A)1gを製造例3で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子C)1gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして高分子圧電材料を作製した。
製造例1で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子A)1gを製造例3で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子C)1gに変更し、かつ、加熱延伸ローラー(井元製作所製)の設定温度を100℃から120℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして高分子圧電材料を作製した。
製造例1で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子A)1gを製造例4で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子D)1gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして高分子圧電材料を作製した。
製造例1で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子A)1gを製造例5で得られたポリスクシンイミド(光学活性高分子E)1gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして高分子圧電材料を作製した。
前述した圧電定数d14の測定方法に従い、上記実施例1〜7および比較例1の高分子圧電材料の圧電定数d14を測定した。動的粘弾性測定装置としては、東洋精機製作所社製の「レオログラフソリッドS−1」を用いた。
圧電定数d14の測定結果を以下の表2に示す。
前述した弾性率の測定方法に従い、上記実施例1〜7および比較例1の高分子圧電材料の弾性率を測定した。動的粘弾性測定装置としては、東洋精機製作所社製の「レオログラフソリッドS−1」を用いた。
弾性率の測定結果を以下の表2に示す。
NatureWorks LLC社製のポリ乳酸(PLA)(品名:IngeoTM biopolymer、銘柄:4032D、重量平均分子量Mw:20万)のペレットを205℃で熱プレスを1分間行った後に20℃に設定したプレス機でプレスして急冷フィルムを得た。前記急冷フィルムの対向する2辺をクリップで固定し、固定した2辺と直交する方向に、70℃に加熱しながら4倍まで延伸し延伸フィルムを得た。得られたフィルムを、130℃で600秒アニールした後、急冷し、参考例1の高分子圧電材料を得た。また、以下のGPC測定方法により、ポリ乳酸のMwを測定した。
−GPC測定方法−
・測定装置
Waters社製GPC−100
・カラム
昭和電工社製、Shodex LF−804
・サンプルの調製
参考例1の高分子圧電材料を、それぞれ40℃で溶媒(クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mLのサンプル溶液を準備した。
・測定条件
サンプル溶液0.1mLを溶媒(クロロホルム)、温度40℃、1mL/分の流速でカラムに導入し、カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定した。ポリ乳酸の分子量は、ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)を算出した。
製造直後(製造から24時間以内)の高分子圧電材料(実施例1、参考例1)の重量平均分子量を測定した(初期Mw)。次に、製造直後(製造から24時間以内)の積層体から、長手方向50mm×幅方向50mmの矩形の試験片を用意し、この試験片を85℃85%RHに保った恒温恒湿器内に吊り下げ、所定時間(24時間又は192時間)保持した。この試験片について高分子圧電材料の重量平均分子量を測定し(耐湿熱試験後Mw)、下記式で表されるMw維持率について以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
式: Mw維持率=耐湿熱試験後Mw/初期Mw
〔評価基準〕
A:Mw維持率≧0.8
B:0.8>Mw維持率≧0.5
C:Mw維持率<0.5
一方、参考例1で得られた高分子圧電材料は、85℃85%RHの条件下にて24時間経過した時点でMw維持率の数値が低く、耐湿熱性が不十分であることが分かる。
Claims (8)
- イミド環構造を有する光学活性高分子を含み、圧電定数d14が0.1pC/N以上である、高分子圧電材料。
- 前記イミド環構造を有する光学活性高分子が、ポリスクシンイミドである、請求項1に記載の高分子圧電材料。
- 前記イミド環構造を有する光学活性高分子の589nmにおける比旋光度の絶対値が0.1deg・cm2・g−1以上である、請求項1または請求項2に記載の高分子圧電材料。
- 前記イミド環構造を有する光学活性高分子の重量平均分子量が18,000以上である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の高分子圧電材料。
- 前記イミド環構造を有する光学活性高分子の含有量が50質量%以上である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の高分子圧電材料。
- 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の高分子圧電材料の製造方法であって、
前記イミド環構造を有する光学活性高分子を含む組成物を製膜して膜を得る製膜工程と、
前記膜を延伸する延伸工程と、
を有する、高分子圧電材料の製造方法。 - 前記組成物が、溶媒を含み、
前記製膜工程が、前記組成物をキャスト法で製膜して膜を得る工程と、前記膜から前記溶媒を蒸発除去する工程と、を含む、請求項6に記載の高分子圧電材料の製造方法。 - 前記延伸工程が、ロール延伸により配向処理を行う工程である、請求項6または請求項7に記載の高分子圧電材料の製造方法。
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