JP7490473B2 - 液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド - Google Patents

液体吐出ヘッドの製造方法及び液体吐出ヘッド Download PDF

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Description

本発明は、被記録媒体に液体を吐出することにより記録を行う液体吐出ヘッド、およびその製造方法に関する。
液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いる記録方式の例としては、インクを記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録方式(液体噴射記録方式)が挙げられる。
インクジェット記録方式に適用されるインクジェットヘッドは、一般に微細な吐出口、液流路及び該液流路の一部に設けられる液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子を複数備えている。このようなインクジェットヘッドを作製する方法としては、特許文献1に記載の方法が挙げられる。まず、エネルギー発生素子が形成された基板上に、溶解可能な樹脂にてインク流路のパターンを形成する。次いで、このインク流路パターン上に、インク流路を形成するエポキシ樹脂及び光カチオン重合開始剤を含む被覆樹脂層を形成し、フォトリソグラフィーによりエネルギー発生素子上に吐出口を形成する。最後に前記溶解可能な樹脂を溶出してインク流路となる被覆樹脂層を硬化させるという方法である。
近年、高画質化やメディアの多様化等に伴い、インクも多様化している。例えば表面張力が高いインクについては、インク流路に対するヌレ性が低く、そのためにリフィルの低下や、流路内の泡だまりによるインク吐出不良が起き、特に小液滴を吐出する今後の高精度ヘッドについては印字に影響を与えてしまう可能性がある。
このように、上述のインクジェットヘッドの製造方法では、特に極小の吐出口を作製する場合、インクによってはインク吐出不良という技術課題がある。
この技術課題に対し、特許文献2においては、2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンの水性溶液をインクジェットヘッドの流路内部に接触させることで、流路内部を親水化でき、インクの泡だまりを抑制できる旨が記されている。
特開平06-286149号公報 特開2001-348444号公報
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献2に記載の方法では初期状態においては流路内部の親水性は発現しているものの、その持続性は乏しいことが確認された。
本発明は前述した背景技術における課題を解決し、極小吐出口を作製した場合においても、良好な吐出が長期に亘って可能である液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
そこで本発明者らは、前述した背景技術における問題点を解決して上記課題を達成すべく鋭意研究した。その結果、インク流路表面(インク流路側の表面)に、インク流路形状を形成する樹脂層とインク流路形成材料による相溶層を設け、この相溶層に親水化材料を定着させることにより、インク流路表面の親水性の持続性を高めることができることが判明した。
即ち、本発明は、
液体を吐出するための吐出口と、前記液体を吐出するためのエネルギー発生素子が形成された基板と、前記基板と接合され、前記吐出口に連通するとともに前記エネルギー発生素子を内在する液体流路を形成する流路形成部材とを有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
(1)エネルギー発生素子が形成された基板上に、前記液体流路の型となるパターンを有する樹脂層を形成する工程と、
(2)前記樹脂層の表層全体に化学式1で示される親水化材料を添加する工程と、
(3)前記樹脂層上に、前記流路形成部材となる被覆樹脂層を形成し、前記樹脂層と前記被覆樹脂層の界面に、前記樹脂層を形成する樹脂と前記被覆樹脂層を形成する樹脂と前記親水化材料を含む相溶層を形成する工程と、
(4)前記被覆樹脂層に、前記吐出口を形成する工程と、
(5)前記樹脂層を除去することにより前記液体流路を形成する工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
Figure 0007490473000001
(Rは炭化水素を示し、O原子及び/又はN原子を含んでもよい。)
また本発明は、
液体を吐出するための吐出口と、前記液体を吐出するためのエネルギー発生素子が形成された基板と、前記基板と接合され、前記吐出口に連通するとともに前記エネルギー発生素子を内在する液体流路を形成する流路形成部材とを有する液体吐出ヘッドであって、前記流路形成部材の前記液体流路側の表面に、ポジ型感光性樹脂と前記流路形成部材となる被覆樹脂と化学式1で示される親水化材料を含む層を有することを特徴とする液体吐出ヘッドを提供する。
本発明によれば、液体流路側の表面の親水性を持続でき、極小吐出口を作製した場合においても、良好な液体吐出が可能である液体吐出ヘッドを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドを示す模式的斜視図である。 図1におけるA-A’を通り基板に垂直な断面で見た模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法の一例を工程に従って示す模式的断面図である。
以下、図面を参照して、本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態に係るインクジェットヘッドを示す模式的斜視図であり、図2は、図1におけるA-A’を通り基板に垂直な断面で見た模式的断面図である。
本実施形態のインクジェットヘッドは、吐出する液体(インク)を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子2が所定のピッチで2列に並んで形成された基板1を有している。基板1は、例えばシリコン(Si)の単結晶で形成することができる。基板1には、基板1を異方性エッチングすることによって形成された供給口3が、エネルギー発生素子2の2つの列の間に開口している。基板1上には、流路形成部材8bがある。基板上の流路形成部材8bは、供給口3から各吐出口10に連通する個別の液体流路(以下単に流路という)6bを形成する。吐出口形成部材としても機能する流路形成部材8bによって、各エネルギー発生素子2に対向する位置に設けられた吐出口10が形成されている。吐出口10の位置は、エネルギー発生素子2と対向する位置に限定されるものではない。基板1の下面にはインク供給のための部材11が配置されており、不図示の経路を介して該部材から供給口3にインクが供給される。
流路6bに面する流路形成部材8bの表面(流路側の表面)には、後述する相溶層7bが形成されている。
このインクジェットヘッドは、吐出口10が形成された面が記録媒体の記録面に対面するように配置される。そして、供給口3を介して流路内に充填されたインクに、流路に内在するエネルギー発生素子2によって発生するエネルギーを利用し、吐出口10からインク液滴を吐出させ、これを記録媒体に付着させることによって記録を行う。エネルギー発生素子2としては、熱エネルギーを利用する素子として電気熱変換素子(所謂ヒーター)等が挙げられ、力学的エネルギーを利用する素子として圧電素子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
次いで、図3を用いて本発明の一実施形態であるインクジェットヘッドの製造方法の一例を説明する。
図3は、本実施形態によるインクジェットヘッドの製造方法の一例を工程に従って示す模式的断面図であり、断面の位置は図2と同様である。
まず、図3(a)に示すように、エネルギー発生素子2が表面に設けられた基板1を準備する。このような基板は、流路6bを構成する部材の一部として機能し、また、後述の流路6bおよび吐出口10を形成する流路形成部材8bの支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等に特に限定されることなく使用することができる。本実施形態においては、後述する異方性エッチングにより基板を貫通する供給口3を形成するため、シリコンの単結晶で形成した基板を用いている。
また基板1上には、エネルギー発生素子2として、電気熱変換素子あるいは圧電素子等が所望の個数が配置される。このようなエネルギー発生素子2によって、インク液滴を吐出させるためのエネルギーがインクに与えられ、記録が行われる。例えば、エネルギー発生素子2として電気熱変換素子が用いられる時には、この素子が近傍の記録液を加熱することにより、インクに状態変化を生起させ吐出エネルギーを発生する。また、例えば、圧電素子が用いられる時は、この素子の機械的振動によって、吐出エネルギーが発生される。
なお、これらのエネルギー発生素子2には、エネルギー発生素子2を動作させるための制御信号入力用電極(不図示)が接続されている。
また、これらエネルギー発生素子2の耐用性の向上を目的とした保護層(不図示)や、流路形成部材と基板との密着性の向上を目的とした密着向上層(不図示)等の各種機能層が設けられる場合がある。
このエネルギー発生素子2を含む基板1上に、ポジ型感光性樹脂の層4を形成する。またポジ型感光性樹脂の層4の形成には、スピンコートやスリットコート等の汎用的なソルベントコート法を適用できる。
ポジ型感光性樹脂は、例えばDeepUVでパターニング可能なポリメチルイソプロペニルケトン樹脂やポリメタクリル酸メチル樹脂、その他ビニルケトン系樹脂等が挙げられる。
次いで、図3(b)及び(c)に示すように、フォトマスク5を用いて、フォトリソグラフィー工程によりポジ型感光性樹脂の層4をパターニングして、インク流路の型となる樹脂層(パターン6a)を形成する。
次いで、図3(d)に示すように、本発明の特徴である親水化材料7aをインク流路の型となる流路パターン6aの表層全体に添加する。親水化材料7aの添加は、溶媒を用いてパターン6aに含浸させることが好ましい。なお、この親水化材料7aについては後述する。
このように、基板1上に形成された流路パターン6aを構成する樹脂層上に、図3(e)に示すように、流路形成部材8bとなる被覆樹脂層、具体的には、ネガ型感光性樹脂の層8aをスピンコート法、ロールコート法、スリットコート法等の方法で形成する。
そして、ネガ型感光性樹脂の層8aを形成する際にベークをするが、このベークの際に、パターン6aとネガ型感光性樹脂の層8aの間には、親水化材料7aを含む相溶層7bが形成される。相溶層7bとは、ネガ型感光性樹脂からなる被覆樹脂層中の溶剤がパターン6aを構成する樹脂層の表層を溶解することで形成されるものである。すなわちこの場合の相溶層7bとは、ネガ型感光性樹脂の層にパターン6aを形成している樹脂および、親水化材料7aが取り込まれたものである。すなわち、相溶層7bは、樹脂層と被覆樹脂層の界面(流路形成部材の液体流路側の表面)に形成され、樹脂層を形成する樹脂と被覆樹脂層を形成する樹脂と親水化材料とを含んで構成される。
このネガ型感光性樹脂には、構造材料としての高い機械的強度、下地との密着性、耐インク性と、同時に吐出口の微細なパターンをパターニングするための解像性が要求される。これらの特性を満足する材料としては、光硬化性のエポキシ樹脂、特にカチオン重合型のエポキシ樹脂を含む樹脂組成物を好適に用いることができる。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物のうち分子量がおよそ900以上のもの、含ブロモビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物などを用いることができる。またフェノールノボラックあるいはo-クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの反応物を用いることもできる。しかし、これらの化合物に限定されるものではない。また、上述のエポキシ樹脂は、好ましくはエポキシ当量が2000以下、さらに好ましくはエポキシ当量が1000以下の化合物が好適に用いられる。これは、エポキシ当量が2000を越えると、硬化反応の際に架橋密度が低下し、密着性、耐インク性に問題が生じる場合があるからである。
上記エポキシ樹脂を硬化させるための光カチオン重合開始剤としては、光照射により酸を発生する化合物を用いることができる。そのような化合物としては、特に制限はないが、例えば、芳香族スルフォニウム塩、芳香族ヨードニウム塩を用いることができる。芳香族スルフォニウム塩の一例としては、みどり化学(株)より市販されているTPS-102、103、105、MDS-103、105、205、305、DTS-102、103(いずれも製品名)を例示することができる。また、(株)アデカより市販されているSP-170、172等(いずれも製品名)を挙げることができる。また芳香族ヨードニウム塩としては、みどり化学(株)より市販されているDPI-105、MPI-103、105、BBI-101、102、103、105等(いずれも製品名)を、好適に用いることができる。また、光カチオン重合開始剤の添加量は、目標とする感度となるよう任意の添加量とすることができるが、特に、エポキシ樹脂に対して、0.5~5wt%の範囲で好適に用いることができる。また、必要に応じて波長増感剤として、例えば(株)アデカより市販されているSP-100(製品名)等を添加して用いてもよい。
さらに、上記組成物に対して必要に応じて添加剤など適宜添加することが可能である。例えば、エポキシ樹脂の弾性率を下げる目的で可撓性付与剤を添加したり、あるいは下地との更なる密着力を得るためにシランカップリング剤を添加したりすること等が挙げられる。
次いで、図3(f)に示すようにマスク9を介してパターン露光を行い、現像処理を施して図3(g)に示すように流路形成部材8bおよび、吐出口10を形成する。このとき、ネガ型感光性樹脂を含む相溶層7bも同様に固化される。
次いで、図3(h)に示すように、基板1を貫通するインク供給口3を形成し、インク流路の型となるパターン6aを除去することでインク流路6bを形成する。この際、前記相溶層7bは、パターン6aのようには除去されず、流路6bに面する流路形成部材8bの表面に存在している。
さらに、必要に応じて加熱処理を施し、インク供給のための部材(不図示)の接合、エネルギー発生素子2を駆動するための電気的接合(不図示)を行って、インクジェットヘッドを完成させる。
次に、本発明の製造方法で用いられる親水化材料7aについて述べる。親水化材料7aは、化学式1に示される構造のものであり、親水性を発現するホスホリルコリン基を有し、さらに構造中のP、Nの不対電子により樹脂などに吸着することができる。
しかし、このP、Nの不対電子による吸着だけで親水化材料7aを樹脂へ定着させた場合、その定着性が弱く、親水性の持続性が乏しい。このため、親水化材料7aを相溶層7bに取り込ませる。
親水化材料7aを相溶層7bに十分に取り込ませるためには、以下4つの方法がある。1つ目は、インク流路の型となるパターン6aに、親水化材料7aを十分に定着させる方法であり、その方法としては、インク流路の型となるパターン6aすなわち、ポジ型感光性樹脂4と同じ官能基を有する親水化材料7aを選択することである。例えば、ポジ型感光性樹脂4として、カルボニル基を有するポリメチルイソプロペニルケトン樹脂を用いた際には、親水化材料7aとしては、化学式1中のRに、官能基としてカルボニル基を有するものを使用することが好ましい。例えば、化学式2に示されるようなカルボニル基を有する(メタクリルオキシ基を有する)ものを選択することができる。
Figure 0007490473000002
その他、インク流路の型となるパターン6aに、親水化材料7aを十分に定着させる方法としては、ポジ型感光性樹脂4にあらかじめ親水化材料7aを混合する方法が挙げられる。そして、インク流路の型となるパターン6aを構成する樹脂層が、親水化材料7aを含有するように形成する。
2つ目は、流路形成部材8bに、親水化材料7aを十分に定着させる方法であり、その手法としては、流路形成部材8bすなわち、ネガ型感光性樹脂の層8aと同じ官能基を有する親水化材料7aを選択する方法が挙げられる。例えば、ネガ型感光性樹脂の層8aの官能基(ネガ型感光性樹脂の層8aに含まれる樹脂のモノマーが有する官能基と同じ官能基)としてエポキシ基を用いた場合には、親水化材料7aとして、化学式1中のRに、化学式3で示されるようなエポキシ基を有するものを選択することができる。
Figure 0007490473000003
3つ目は、ネガ型感光性樹脂の層8aを形成する際の、ネガ型感光性樹脂の溶剤として、インク流路の型となるパターン6aの表層を溶解させ得るものを用いる方法が挙げられる。例えばポジ型感光性樹脂4としてポリメチルイソプロペニルケトンを用いた際は、キシレン、メチルイソブチルケトン等の溶剤、好ましくはメチルイソブチルケトンを選択するができる。
最後の4つ目は、ネガ型感光性樹脂の層8aを形成する際のベーク温度として、インク流路の型となるパターン6aの表層を溶解させ得る温度を選択する方法が挙げられる。例えばポジ型感光性樹脂4としてポリメチルイソプロペニルケトンを用いた際は、90℃程度まで温度を上げることができる。
ただし、上記3つ目の手法、4つ目の手法においては、目的とするインク流路の型となるパターン6aの形状が維持できる範囲で、溶剤および、温度を選択する必要がある。
また、親水化材料7aをインク流路の型となるパターン6aに添加する方法では、例えばポジ型感光性樹脂4としてポリメチルイソプロペニルケトン樹脂を用いることができる。この場合、添加方法として、親水化材料7aをイソプロピルアルコール等のアルコールに0.01~10質量%程度溶解させたものをスピンコートする方法が挙げられる。
親水化材料7aの濃度について、0.01質量%に満たない場合は、親水性の発現が乏しくなることが懸念される。また、10質量%を超える場合には、アルコール溶液の粘性が高くなることで、インク流路の型となるパターン6a上に均一に塗布することができない懸念がある。ただし、求める親水性の発現次第であるため、濃度範囲はこれに限られるものではない。
上述した化学式1で示される親水化材料は、化学式1の構造をとり、RがO原子及び/又はN原子を含んでもよい炭化水素基である限り、特に制限されない。
例えば、上述した以外のRで示される炭化水素基としては、O原子もN原子も含まない例えばCH3(CH215-のようなアルキル基が挙げられる。またN原子を含むものとして、例えば(CH32-CH-N(CH32-等の基が挙げられる。さらに、O原子もN原子も含むものとして、例えば(CH32-CH-N(CH32-OCH2CH2O-等が挙げられる。
以上に記載した本発明によるインクジェットヘッドの製造方法を用いることにより、インク流路側の表面の親水性を持続でき、極小吐出口を作製した場合においても、良好なインク吐出が可能であるインクジェットヘッドを製造することが可能となる。
以下に実施例を示し、本発明について、さらに説明する。
《撥水性評価》
(実施例1)
シリコンの単結晶で形成されたシリコン基板1に、ポリメチルイソプロペニルケトン樹脂溶液をスピンコートにより塗布した後に、120℃で6分間のベークを行い、ポジ型感光性樹脂の層4を作製した(図3(a))。この層の膜厚は10μmであった。その後、フォトマスク5を用いてポジ型感光性樹脂の層4のパターニングを行った。露光装置として、ウシオ電機(株)製Deep-UV露光装置UX-3300を用い、15J/cm2の露光量にてパターン露光した(図3(b))。その後に、メチルイソブチルケトンで60秒間のパドル現像後にイソプロピルアルコールで30秒間のシャワーリンス処理を実施し、インク流路の型となるパターン6aを形成した(図3(c))。
その後、イソプロピルアルコールに、下記化学式4で示される親水化材料を1質量%溶解した溶液をスピンコートにより、前記パターンに塗布した後に、90℃で3分間のベークを行い、親水化材料を定着させた(図3(d))。
Figure 0007490473000004
次いで、表1に記載のネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後に90℃で9分間のベークを行い、ネガ型感光性樹脂の層8aを形成した(図3(e))。なお、ネガ型感光性樹脂の層8aの膜厚は、基板1上で20μm、パターン6a上で10μmであった。
Figure 0007490473000005
次に、吐出口10を形成するためにフォトマスク9を用いてネガ型感光性樹脂の層8aのパターニングを行った(図3(f))。露光装置として、キヤノン(株)製i線ステッパーFPA-3000i5+を用い、5000J/m2の露光量にてパターン露光した。その後、メチルイソブチルケトンにて現像、キシレンにてリンス処理を行った後、100℃で60分間の熱処理を行った。以上のようにして吐出口10を有する流路形成部材8bを形成した(図3(g))。
次に、被処理基板の裏面にエッチングマスク(不図示)を形成し、シリコン基板1の異方性エッチングを行ってインクの供給口3を形成した。その後に、ウシオ電機(株)製Deep-UV露光装置UX-3300を用い、ネガ型レジスト(流路形成部材8b)越しに250000mJ/cm2の露光量で全面露光を行い、パターン6aを可溶化した。引き続き乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬し、パターン6aを溶解除去してインク流路6bを形成した(図3(h))。
その後、流路形成部材8bをシリコン基板1から剥離し、接触角測定サンプルを作製した。
接触角は、相溶層7b(図3(h))上を純水にて測定し、サンプル完成直後の初期状態の他、以下の組成のインクを用意し、このインクに60℃で1週間浸漬させた後の接触角も測定した。
(インク組成)
純水/ジエチレングリコール/イソプロピルアルコール/酢酸リチウム/黒色染料フードブラック2=79.4/15/3/0.1/2.5
接触角測定をした結果を、表3に示す。
(実施例2)
シリコン基板1に、ポリメチルイソプロペニルケトン樹脂と化学式4に示される親水化材料7aの混合溶液をスピンコートにより塗布した後に、120℃で6分間のベークを行い、ポジ型感光性樹脂の層4を作製した(図3(a))。なお、親水化材料7aはポリメチルプロペニルケトンに対して1質量%添加した。この層の膜厚は10μmであった。その後、ウシオ電機(株)製Deep-UV露光装置UX-3300を用い、15J/cm2の露光量にてパターン露光した(図3(b))。その後に、メチルイソブチルケトンで60秒間のパドル現像後にイソプロピルアルコールで30秒間のシャワーリンス処理を実施し、インク流路の型となるパターン6aを形成した(図3(c))。
次いで、表1に記載のネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後に90℃で9分間のベークを行い、ネガ型感光性樹脂の層8aを形成した(図3(e))。なお、ネガ型感光性樹脂の層8aの膜厚は、基板1上で20μm、パターン6a上で10μmであった。以降は、実施例1と同様にして接触角測定サンプルを作製し、接触角を測定した。
(実施例3)
親水化材料7aとして下記化学式5で示されるものを使用した以外は、実施例1と同様にして接触角測定サンプルを作製し、接触角を測定した。
Figure 0007490473000006
(実施例4)
ネガ型感光性樹脂組成物として表2に記載のものを使用した以外は、実施例1と同様にして接触角測定サンプルを作製し、接触角を測定した。
Figure 0007490473000007
(実施例5)
ネガ型感光性樹脂の層8aを形成する際のベーク温度を70℃とした以外は、実施例1と同様にして接触角測定サンプルを作製し、接触角を測定した。
(実施例6)
親水化材料として下記化学式6で示されるものを使用した以外は、実施例1と同様にして接触角測定サンプルを作製し、接触角を測定した。
Figure 0007490473000008
(比較例1)
親水化材料を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして接触角測定サンプルを作製し、接触角を測定した。
(比較例2)
特許文献2に準じて実施したものであり、比較例1で作製した接触角測定サンプルを、イソプロピルアルコールに化学式4で示される親水化材料を1質量%溶解した溶液に1分間浸漬させて、その後に室温にて乾燥させたものの接触角を測定した。接触角測定については実施例1と同様にした。
Figure 0007490473000009
以下、表3に示す結果について説明する。
親水化処理を実施しない、従来のインクジェットヘッド製法で作製した場合(比較例1)、インク流路側の表面の初期接触角は65°であった。これに対し、特許文献2の手法を踏襲してインクジェットヘッドを作製した場合(比較例2)、初期接触角は40°となり、確かに親水化の効果は確認できたものの、インク浸漬後の接触角は65°となり、親水化の効果が無くなってしまった。これは、インクに浸漬したことにより親水化材料がインク流路から脱落してしまったものと考える。なお、比較例2の場合には、本発明に係る相溶層は形成されていないことが確認された。
対して、本発明に係る実施例1~6においては、初期の接触角は30°~40°となり、インク浸漬後の接触角については、30°~50°であり、親水性の持続性が確認できた。
ここで、本実施例における親水性の違いについて説明する。
まず実施例6では、親水化材料として、パターン6aの材料すなわち、ポリメチルイソプロペニルケトン樹脂と異なる官能基を有するものを選択した。そのため、パターン6aに対する親水化材料の定着性が低くなり、インク流路側の表面の相溶層7bに取り込まれる親水化材料が少なかったために初期の親水化の効果が他の実施例(接触角30°)よりも小さい接触角40°になったものと考えられる。さらに、インク浸漬後の親水性が初期よりも低下していることについては、親水化材料が相溶層7bに取り込まれてはいるものの、パターン6aの材料との定着性が低いことから、インク浸漬により親水化材料が一部脱落してしまったものと考えられる。
次に、実施例1では、親水化材料として、パターン6aの材料が有するカルボニル基を持つものを選択した。そのため、パターン6aに対する親水化材料の定着性は実施例6と比較して良好であった。そして、インク流路側の表面の相溶層7bに取り込まれる親水化材料が実施例6と比較して多かったために、初期の親水化の効果が実施例6よりも高く、接触角が30°になったものと考えられる。さらに、インク浸漬後の親水性が実施例6同様に初期よりも低下していることについては、インク浸漬により親水化材料が相溶層7bから一部脱落してしまったものと考えられる。
次に、実施例2は、パターン6aの材料に実施例1と同じ親水化材料を混合したものである。初期は実施例1と同様に接触角30°を示したが、インク浸漬後でも親水性を維持していた。実施例1との違いとしては、あらかじめ親水化材料をパターン6aを構成する樹脂と混合していたために、相溶層7bにおける親水化材料の定着性が強く、インク浸漬においても親水化材料が脱落しなかったものと考えられる。
次に、実施例3では、親水化材料として、流路形成部材8bすなわち、ネガ型感光性樹脂8aが有する官能基であるエポキシ基を持つものを選択した。そのため、流路形成部材8bに対する親水化材料の定着性が強く、実施例2と同様に初期の親水性も高く、またインク浸漬後も初期の親水性を持続したものと考えられる。
次に、実施例4は、親水化材料としては、パターン6aの材料に実施例1と同じものを用いたが、ネガ型感光性樹脂8aの溶剤として、パターン6aの表面を溶解しやすいメチルイソブチルケトンを用いた。そのため、実施例1と比較して相溶層7bが厚く形成されたことでインク流路側の表面に親水化材料が多く存在することになり、そのことにより、実施例2及び3同様に初期の親水性も高く、またインク浸漬後も初期の親水性を持続したものと考えられる。
最後に、実施例5は、親水化材料としては、パターン6aの材料に実施例1と同じものを用いたが、ネガ型感光性樹脂8aを塗布する際のベーク温度を70℃と低くした。そのため、実施例1と比較して相溶層7bが薄く形成されたことでインク流路側の表面に存在する親水化材料が少なく、実施例1と比較して初期もインク浸漬後も親水性が低くなったものと考えられる。
《インクジェットヘッド評価》
(実施例7)
先の図3を用いて説明した方法に従って、図2に示すインクジェットヘッドを作製した。
まず、エネルギー発生素子2としての電気熱変換素子(材質HfB2からなるヒーター)と、インク流路形成部位にSiN+Taの積層膜(不図示)を有するシリコンの単結晶で形成された基板1を準備した。この基板1にポリメチルイソプロペニルケトン樹脂溶液をスピンコートにより塗布した後に、120℃で6分間のベークを行い、ポジ型感光性樹脂の層4を作製した(図3(a))。この層の膜厚は10μmであった。その後、ウシオ電機(株)製Deep-UV露光装置UX-3300を用い、10J/cm2の露光量にてパターン露光を行った(図3(b))。その後に、メチルイソブチルケトンによる60秒間のパドル現像後にイソプロピルアルコールで30秒間のシャワーリンス処理を実施し、インク流路の型となるパターン6aを形成した(図3(c))。
その後、イソプロピルアルコールに化学式4で示される親水化材料を1質量%溶解した溶液を、スピンコートによりパターン6aに塗布した後に、90℃で3分間のベークを行い、親水化材料を定着させた(図3(d))。
次いで、流路形成部材8bを形成するために表1に記載のネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート塗布した後に90℃で9分間のベークを行い、ネガ型感光性樹脂の層8aを形成した(図3(e))。なお、ネガ型感光性樹脂の層8の膜厚は、基板1上で20μm、パターン6a上で10μmであった。
次に、吐出口10を形成するためにフォトマスク9を用いてネガ型感光性樹脂の層8aのパターニングを行った(図3(f))。露光装置として、キヤノン(株)製i線ステッパーFPA-3000i5+を用い、5000J/m2の露光量にてパターン露光した。その後、メチルイソブチルケトンにて現像、キシレンにてリンス処理を行った後、100℃で60分間の熱処理を行った。以上のようにして吐出口10を有する流路形成部材8bを形成した図(3(g))。
次に、被処理基板の裏面にエッチングマスク(不図示)を形成し、シリコン基板1の異方性エッチングを行ってインクの供給口3を形成した。その後、ウシオ電機(株)製Deep-UV露光装置UX-3300を用い、ネガ型レジスト(流路形成部材8b)越しに250000mJ/cm2の露光量で全面露光を行い、パターン6aを可溶化した。引き続き乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬し、パターン6aを溶解除去してインク流路6bを形成した(図3(h))。
さらに、流路形成部材8bを完全に硬化させるために200℃で1時間の加熱処理を施し、インク供給のための部材11を接合し、エネルギー発生素子2を駆動するための電気的接合(不図示)を行って、インクジェットヘッドを完成させた。
得られたインクジェットヘッドの評価として、上記得られたインクジェットヘッドをプリンタにセットし、インク吐出耐久試験を行った結果を表4に示す。
なお、インク吐出耐久試験とは、連続で15,000枚印字させるもので、耐久前後でのインク着弾精度を評価するものであり、下記の基準で評価した。なお、インクは、純水/ジエチレングリコール/イソプロピルアルコール/酢酸リチウム/黒色染料フードブラック2=79.4/15/3/0.1/2.5の組成(質量比)のものを用いた。
○:耐久前後のインク着弾のズレが5μm以内
△:耐久前後のインク着弾のズレが5μm超10μm以内
×:耐久前後のインク着弾のズレが10μm超
(実施例8)
シリコン基板1に、ポリメチルイソプロペニルケトン樹脂と化学式4に示される親水化材料の混合溶液をスピンコートにより塗布した後に、120℃で6分間のベークを行い、ポジ型感光性樹脂の層4を作製した(図3(a))。なお、親水化材料はポリメチルプロペニルケトンに対して1質量%添加した。この層の膜厚は10μmであった。その後、ウシオ電機(株)製Deep-UV露光装置UX-3300を用い、15J/cm2の露光量にてパターンで露光した(図3(b))。この後に、メチルイソブチルケトンで60秒間のパドル現像後にイソプロピルアルコールで30秒間のシャワーリンス処理を実施し、インク流路の型となるパターン6aを形成した(図3(c))。
次いで、表1に記載のネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後に90℃で9分間のベークを行い、ネガ型感光性樹脂の層8aを形成した(図3(e))。なお、ネガ型感光性樹脂の層8aの膜厚は、基板1上で20μm、パターン6a上で10μmであった。以降は、実施例7と同様にしてインクジェットヘッドを製造し、実施例7と同様の評価を行った。
(実施例9)
親水化材料として化学式5で示される化合物を使用した以外は実施例7と同様にしてインクジェットヘッドを製造し、実施例7と同様の評価を行った。
(実施例10)
ネガ型感光性樹脂として表2のものを使用した以外は実施例7と同様にしてインクジェットヘッドを製造し、実施例7と同様の評価を行った。
(実施例11)
ネガ型感光性樹脂の層を形成する際のベーク温度を70℃とした以外は実施例7と同様にしてインクジェットヘッドを製造し、実施例7と同様の評価を行った。
(実施例12)
親水化材料として化学式6で示される化合物を使用した以外は実施例7と同様にしてインクジェットヘッドを製造し、実施例7と同様の評価を行った。
Figure 0007490473000010
表4に示す通り、本発明に係る実施例7~12により製造されたインクジェットヘッドは、インク吐出精度が良好であることが確認された。
1 基板
2 エネルギー発生素子
3 供給口
4 ポジ型感光性樹脂
5 フォトマスク
6a インク流路の型となるパターン
6b インク流路
7a 親水化材料
7b 相溶層
8a ネガ型感光性樹脂
8b 流路形成部材
9 フォトマスク
10 吐出口
11 インク供給のための部材

Claims (10)

  1. 液体を吐出するための吐出口と、前記液体を吐出するためのエネルギー発生素子が形成された基板と、前記基板と接合され、前記吐出口に連通するとともに前記エネルギー発生素子を内在する液体流路を形成する流路形成部材とを有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    (1)エネルギー発生素子が形成された基板上に、前記液体流路の型となるパターンを有する樹脂層を形成する工程と、
    (2)前記樹脂層の表層全体に化学式1で示される親水化材料を添加する工程と、
    (3)前記樹脂層上に、前記流路形成部材となる被覆樹脂層を形成し、前記樹脂層と前記被覆樹脂層の界面に、前記樹脂層を形成する樹脂と前記被覆樹脂層を形成する樹脂と前記親水化材料を含む相溶層を形成する工程と、
    (4)前記被覆樹脂層に、前記吐出口を形成する工程と、
    (5)前記樹脂層を除去することにより前記液体流路を形成する工程と、
    を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
    Figure 0007490473000011
    (Rは炭化水素を示し、O原子及び/又はN原子を含んでもよい)
  2. 前記樹脂層を形成する樹脂に、あらかじめ前記親水化材料を含有させる請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記親水化材料を、溶媒を用いて前記樹脂層に含浸させる請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記化学式1で示される親水化材料のRが、前記樹脂層を形成する樹脂が有する官能基と同じ官能基を有する請求項1~3の何れか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記樹脂層を形成する樹脂がポリメチルイソプロペニルケトンである請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記化学式1で示される親水化材料のRがカルボニル基を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記化学式1で示される親水化材料のRが、前記被覆樹脂層を形成する樹脂が有する官能基と同じ官能基を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記被覆樹脂層を形成する樹脂が光硬化性のエポキシ樹脂である請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  9. 前記化学式1で示される親水化材料のRがエポキシ基を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  10. 液体を吐出するための吐出口と、前記液体を吐出するためのエネルギー発生素子が形成された基板と、前記基板と接合され、前記吐出口に連通するとともに前記エネルギー発生素子を内在する液体流路を形成する流路形成部材とを有する液体吐出ヘッドであって、前記流路形成部材の前記液体流路側の表面に、ポジ型感光性樹脂と前記流路形成部材となる被覆樹脂と化学式1で示される親水化材料を含む層を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
    Figure 0007490473000012
    (Rは炭化水素を示し、O原子及び/又はN原子を含んでもよい)
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