JP7488566B2 - 静電発電装置 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 (1)令和2年10月20日 新技術開発助成の申請にて公開 (2)令和2年10月29日 JVA2021の申請にて公開
本発明は、静電発電素子を発電素子として利用した静電発電装置に関する。
従来、複数の電極を積層して構成された誘電エラストマーを発電素子として用いた発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の発電装置では、電圧を印加して内部に静電力を発生させた状態の誘電エラストマーを外力で伸長させ、伸長させた際に増加する静電エネルギーを電力として取り出していた。
特開2018-19490号公報
誘電エラストマーを用いた発電素子は、シート状の誘電エラストマーの両面に柔軟な電極を配置した構造をしており、外力による誘電エラストマーの面方向の伸長または収縮に応じた電極間距離と電極断面積の変化を利用して発電している。すなわち、電極間距離は誘電エラストマーのバネ特性に起因する誘電エラストマーのバネ力と外力との釣り合いで決まる。一般に、エラストマーは線形なバネ特性を有するため、誘電エラストマーは外力の大きさに略比例して伸長および収縮をする。
したがって、従来の技術による発電装置では、大きな発電量を得るには外力による誘電エラストマーの変形量が大きい、すなわち柔らかい誘電エラストマーを用いることが望ましいと推察される。しかしながら、柔らかすぎる誘電エラストマーを用いた場合は外力で破損してしまう恐れがあった。一方で、発電素子として硬すぎる誘電エラストマーを用いた場合は発電量が小さい。以上のように、誘電エラストマーを用いた発電素子の発電量の大きさと発電素子の堅牢性はトレードオフの関係にあった。
同様に、誘電エラストマーを用いた発電素子は外力によりエラストマーのみならず電極も変形する構造が一般に採用される。しかしながら、振動を繰り返す発電用途において、繰り返しの変形により発生する電極内の繰返し応力により電極の劣化が発生する。すなわち、大きな発電量を得るには電極も大変形する必要があるが、これは材料劣化を加速させる。したがって、エラストマーと同様、電極においても発電量の大きさと発電素子の堅牢性のトレードオフが発生していた。
本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、破損し難く高効率な静電発電装置を提供することを目的とする。
本発明は、静電発電装置において、導体と前記導体の両面を絶縁保護する絶縁体とからなる複数の電極フィルムを積層して構成された複数の層を有する静電発電素子を備え、前記層の各々は、互いに対向する前記電極フィルムどうしの少なくとも一部が隙間を空けて対向するように構成され、前記静電発電素子は、前記電極フィルムの積層方向に外力により伸縮変形可能であり、前記層の各々は、前記電極フィルムの電極間距離の増加に応じて、電極間距離の増加に抗する弾性力が非線形的に増加することを特徴とする。
この場合において、前記電極フィルムは、対向する別の前記電極フィルムに接合した接合領域と接合していない非接合領域とを有し、前記接合領域と前記非接合領域とは波状パターンを有し、複数の前記電極フィルムは、第1の電極フィルムと、前記第1の電極フィルムに対向する第2の電極フィルムと、前記第2の電極フィルムに対向する第3の電極フィルムとが、前記第1の電極フィルムと前記第2の電極フィルムとの接合領域と、前記第2の電極フィルムと前記第3の電極フィルムとの接合領域とが前記積層方向に互いに重ならないように積層されていてもよい。前記静電発電素子の複数の前記電極フィルムは、前記静電発電素子の前記積層方向の一方の側に隣接する前記電極フィルムに接合されるための複数の第1接合領域であって、ストライプ状にそれぞれ平行に延在する、第1接合領域と、他方の側に隣接する前記電極に接合されるための複数の第2接合領域であって、前記第1接合領域に平行、かつ、隣り合う前記第1接合領域どうしの間にそれぞれ配列された、第2接合領域とを有する第4の電極フィルムと、前記第4の電極フィルムに接合された第5の電極フィルムとからなり、前記静電発電素子は、接合された前記第4の電極フィルムと前記第5の電極フィルムとの電極ペアを積層した構造を有し、隣り合う前記電極ペアは、一方の前記電極ペアの前記第1接合領域及び前記第2接合領域と、他方の前記電極ペアの前記第1接合領域及び前記第2接合領域とが直交するように積層されていてもよい。前記静電発電素子は、2枚のリボン状の前記電極フィルムを互いに直交する方向に交互に折り重ねた構造を有していてもよい。一方の前記電極フィルムは他方の前記電極フィルムと対向する領域に位置する電極部と前記電極部を連結するヒンジ部とを有し、前記電極部の前記絶縁体の厚さt1は、前記ヒンジ部の前記絶縁体の厚さt2よりも厚くてもよい。前記静電発電素子は、電極間距離の増加量の2乗以上に比例して弾性力が増加してもよい。前記静電発電素子に初期電圧を印加する電圧印加手段と前記静電発電素子に電気的に直列に接続されたインダクタと、を備えていてもよい。前記静電発電素子と、インダクタと、前記静電発電素子に初期電圧を印加するバッテリとを備え、前記静電発電素子と前記インダクタと前記バッテリとは電気的に直列に接続されていてもよい。前記静電発電素子の静電容量Cと、前記インダクタのインダクタンスLと、前記静電発電素子を含む発電部の振動角周波数ωとの間に、
Figure 0007488566000001
の関係があってもよい。前記インダクタのインダクタンスLを可変にするインダクタンス制御装置をさらに備え、前記インダクタンス制御装置は、外力による前記静電発電素子の振動の位相に対して、前記静電発電素子に印加される電圧位相が進んでいる場合は前記インダクタンスLを増やし、前記静電発電素子に印加される電圧位相が遅れている場合は前記インダクタンスLを減らしてもよい。前記静電発電素子は、前記インダクタが組み込まれた変圧器を介して整流回路に接続されており、前記変圧器は、前記静電発電素子側で生じた交流の電力を、前記整流回路側で直流の電力に変換してもよい。
本発明では、従来技術ではトレードオフであった大きな発電量と堅牢性の両立を可能にし、破損し難く高効率な静電発電装置を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る静電発電素子の斜視図を示す。 電極フィルムの斜視図を示す。 静電発電素子の各層の静電力と弾性力との関係のグラフを示す。 静電発電素子による発電サイクルの各状態を模式的に示す。 図3の静電発電素子の各状態に対応する表を示す。 本発明の第2の実施形態に係る静電発電素子を示す。 静電発電装素子が収縮した状態を示す。 静電発電素子が伸長した状態を示す。 本発明の第3の実施形態に係る静電発電素子を示す。 本発明の第4の実施形態に係る静電発電装置の回路図を示す。 図10の静電発電装置による発電の様子を示すシミュレーション結果を示す。 本発明の第5の実施形態に係る静電発電装置の回路図を示す。 図12の静電発電装置による発電の様子を示すシミュレーション結果を示す。 本発明の第6の実施形態に係る静電発電装置の制御に係るフローチャートを示す。 本発明の第6の実施形態に係る静電発電素子の変位波形と電圧波形との位相の関係性に係る波形図を示す。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る静電発電素子の斜視図を示し、図2は、電極フィルムの斜視図を示し、図3は、静電発電素子の各層の静電力と弾性力との関係のグラフを示す。図2において、図2(a)は、均一な厚さの電極フィルムの斜視図を示し、図2(b)は、凹凸を有する電極フィルムの斜視図を示す。また、図3において、横軸は電極間距離dを示し、縦軸は発生力Fを示している。
本実施形態に係る静電発電装置100(図10参照)の静電発電素子10は、図1に示すように、複数の電極フィルム60を積層した構造を有している。電極フィルム60は、図2(a)に示すように、絶縁体61と導体62とからなり、導体62の両面が絶縁体61により絶縁保護された構造をしたフィルムである。図1に示すように、電極フィルム60を積層することで、静電発電素子10は対向する電極フィルム60どうしの間に隙間を空けることが可能な複数の層13を有した構造をなす。積層された複数の層13は、2枚の電極フィルム60を折り重ねることで形成されてもよく、2枚以上の異なる電極フィルム60を部分的に接合しながら、順次重ねることで形成されてもよい。また、2枚の電極フィルム60を折り重ねることで層13を形成する場合においても、電極フィルム60を部分的に接合しながら、順次折り重ねてもよい。
本実施形態に係る電極フィルム60は、図2(a)に示すように、電極部11とヒンジ部14と厚さは等しいが、図2(b)に示すように、電極フィルム60の電極部11の厚さはヒンジ部14の厚さよりも厚くてもよい。電極部11の厚さをヒンジ部14の厚さよりも厚くすることにより、電極部11とヒンジ部14との厚さを等しくした構造に比べて電極部11の変形がより小さくなるため、発電素子10のバネ特性はより非線形になる。
複数の層13の各々は、図1に示すように、弾性体であるヒンジ部14を備えている。本実施形態に係る静電発電素子10の電極フィルム60は、異なる電極フィルム60と対向する領域に位置する電極部11と前記電極部を連結するヒンジ部14とから構成されている。静電発電素子10が外力によって積層方向に伸縮するとき、電極部11は対向する他の電極部11と接触することで変形量が小さく、他の部分との接触がないヒンジ部14が主に変形する。
ヒンジ部14は略C字型の状態、すなわち静電発電素子10が収縮した状態から外力により伸ばされる状態では、薄いフィルムの曲げ変形になるため容易に変形する。一方で、積層方向にヒンジ部14が伸びきった状態、すなわち静電発電素子10が伸長した状態では、ヒンジ部14の変形モードはフィルムの引張変形にシフトし、外力を付与しても積層方向には伸びにくくなる。したがって、本実施形態に係る発電素子10の場合、図3に示すように、電極間距離dの増加に応じて、外力に抗するヒンジ部14の弾性力が急激に増加する、すなわち非線形的に増加するようになっている。ここで、電極間距離dは、対向する電極部11間の空隙の距離である。これは言い換えると、発電素子10の電極間距離dの増加に応じて、発電素子10または層13のバネ定数が増加し、非線形なバネ特性を示すということになる。
複数の層13が積層された発電素子10は、各層13でのバネ定数などのわずかなばらつきによって、全ての層の電極間距離dが同じタイミングで広がるわけではなく、一部の層13が伸縮しやすい。一部の層13だけが伸び続けると、その層13に大きな応力が発生し、結果として発電素子10が破損してしまうリスクが高まる。このため、各層13において理想的な特性は、設計範囲内のある領域までは外力により電極間距離dが広がり易く、それを超えた過負荷領域では電極間距離dが広がり難いことである。
静電発電素子10の各層13は、図3に示すように、電極間距離dの略2乗に反比例するように静電力Aが減少する一方、電極間距離dの増加量に対して非線形的に弾性力Bが増加するように設けられている。これにより、各層13は、電極間距離dが増加し始めたときは静電力Aが急激に減少するとともに弾性力Bは徐々に増加し、電極間距離dが点Cに到達したときに静電力Aと弾性力Bとが同じ大きさになり、電極間距離dが点Cを越えると静電力Aと弾性力Bとの大きさが逆転する。このとき、静電力Aが徐々に減少するとともに弾性力Bは急激に増加する。すなわち、各層13は、電極間距離dが点Cに到達するまでは電極間距離dの増加とともに広がり易いことにより電極間距離dは高応答で変位し、電極間距離dが点Cを越えると電極間距離dの増加とともに広がり難くなる。
図4は、静電発電素子による発電サイクルの各状態を模式的に示しており、図5は、図4の静電発電素子の各状態に対応する表を示している。
静電発電素子10を用いて発電する際には、図4の(1)に示すように、先ず、静電発電素子10が収縮した状態、すなわち各層13の電極間距離dが狭まっている状態、かつ、電圧が印可されていない状態にする。ここで、図5に示すように、収縮時の静電容量をCとしている。
次に、図4の(2)に示すように、静電発電素子10が収縮した状態で各層13の電極部11間に電圧Vを印加し、静電発電素子10に電荷を溜める。
静電発電素子10に電荷を溜めた後、図4の(3)に示すように、静電発電素子10を外力で引っ張って伸長状態にする、すなわち各層13の電極間距離が広がった状態にする。このとき、図5に示すように、静電容量はCからCに減少する一方、静電発電素子10の電圧はVからVに昇圧され、静電エネルギーが増加する。
静電エネルギーが増加した状態において、図4の(4)に示すように、静電発電素子10が伸長した状態のまま、静電発電素子10を負荷部に接続することで、静電発電素子10は放電し、電力を負荷部に供給する。このとき、負荷部に供給される電力は、図5に示すように、
Figure 0007488566000002
となる。
静電発電素子10を放電させた後、図4の(5)に示すように、静電発電素子10に溜められた電荷がゼロになった状態、または図4の(2)の状態よりも少なくなった状態で、外力により静電発電素子10を収縮した状態、すなわち図4の(1)の状態に戻す。なお、静電発電素子10を収縮する際には、付与された外力は静電発電素子10に対しては仕事をしていない。
以上の発電サイクルは各層13で行われるため、静電発電素子10の発電量は積層数に比例して増加すると一般には考えられるが、実際は積層数に単純比例でないことを発明者らは明らかにした。具体的には、静電発電素子10は、電極間距離dが図3の点Cに到達するまで伸長していないときは、全ての層13が均一に伸長する場合よりも一部の層13のみが伸長した場合の発電量の方が大きくなる一方、電極間距離dが点Cを越えるまで伸長したときは、全ての層13が均一に伸長した場合の方が一部の層13のみが伸長した場合よりも静電発電素子10が破損し難いことを発明者らは発見した。また、本実施形態に係る静電発電素子10がこれらの特性をみたす構造であることを発明者らは発見した。
先述の通り、複数の層13が積層された発電素子10は、各層13でのバネ定数などのわずかなばらつきによって、全ての層の電極間距離dが同じタイミングで広がるわけではなく、一部の層13が伸縮しやすい。静電発電素子10の複数の層13の電極部11間に印加された電圧は各層13で等しいため、図4の(3)に示すように静電発電素子10を外力で引っ張って伸長状態にした際に、電極間距離が広がった一部の層13の静電エネルギーが増加するだけでなく、残りの電極間距離が狭まったままの層13では静電容量が減少することなく電圧の2乗に比例して静電エネルギーが増加する。したがって、電極間距離が広がった一部の層13よりも、電極間距離が狭まったままの層13の方が発電量が大きいため、全ての層13が均一に伸長する場合よりも一部の層13のみが伸長した場合の発電量の方が大きくなる。
また、図4の(3)に示すように静電発電素子10を外力で引っ張って伸長状態にした際に、電極間距離が広がった一部の層13の静電引力は電圧の増加率よりも電極間距離の増加率の方が大きいため減少する。一方で、残りの電極間距離が狭まったままの層13の静電引力は電圧の増加に伴い、電圧の2乗に比例して増加する。したがって、各層13の弾性力を無視すると、電極間距離が広がった一部の層13は外力によりより広がりやすくなり、電極間距離が狭まったままの層13は外力に対してより変位しにくくなる。各層13の弾性力が小さい場合も同様の議論ができ、各層13の弾性力が小さい場合は、電極間距離が広がった一部の層13が外力によって広がりすぎて破損するリスクが生じる。
したがって、例えば従来の誘電エラストマーをそのまま積層して発電素子として利用する場合、全てのエラストマー層が変位することで得られるはずの最大ストロークで発電させようとすると発電素子が破損する恐れがあるため、最大ストロークよりも狭い範囲で使用する必要が生じ、その分発電量は減少する。
一方、本実施形態に係る静電発電素子10は、非線形なバネ特性を有しているため、他の層13よりも先に電極間距離dが広がった層13は、電極間距離dが点Cを越えると急激に電極間距離dが広がり難くなる。これにより、電極間距離dが広がるのがより遅かった別の層13は、先に電極間距離dが広がった層13に電極間距離dの広がりが追いつくようになっている。すなわち、静電発電素子10は、各層13の電極間距離dが点Cを越えた後におおよそ同じ大きさになるようになっている。
以上により、静電発電装置100は、導体62と導体62の両面を絶縁保護する絶縁体61とからなる複数の電極フィルム60を積層して構成された複数の層13を有する静電発電素子10を備え、層13の各々は、互いに対向する電極フィルム60どうしの少なくとも一部が隙間を空けて対向するように構成され、静電発電素子10は、電極フィルム60の積層方向に外力により伸縮変形可能であり、層13の各々は、電極フィルム60の電極間距離dの増加に応じて、電極間距離dの増加に抗する弾性力が非線形的に増加する。これにより、静電発電装置100は、従来技術によるものには無い特徴を有しており、外力として、各層13の電極間距離dが点Cを越えないストローク量の小さな振動が付与された場合には、一部の層13のみが伸縮するため、発電量を多くすることができる。一方、静電発電装置100は、外力として、各層13の電極間距離dが点Cを越えるストロークの大きな振動が付与された場合には、全ての層が伸縮するため、発電量が向上するとともに静電発電素子10の一部の層13のみが広がり過ぎて破損してしまうリスクを低下させることができる。
特に各層13の弾性力が電極間距離dの2乗以上に比例して増加するバネ特性になるように設計することで、電極間距離dの増加に対して、十分な変化量で弾性力が増加するため、各層13の電極間距離dのばらつきなど各層13の製造誤差が大きい場合でも、先述の発電量の向上や破損リスクの低下などを実現することが可能であり、堅牢性を向上できる。
加えて、従来の誘電エラストマーを用いた発電素子では、エラストマーの変形に伴い電極部も変形し、電極部の繰返し変形による疲労破壊のリスクもあった。さらには、繰返し変形による恒久的な電極部の変形やクリープが生じやすく、局所的な導体の亀裂、剥離や、電圧印加時の電界集中などが発生し、静電エネルギーの低下や絶縁破壊の恐れがあった。
これに対して、本実施形態に係る静電発電素子10は、電極部11の変形はほぼ無い。ヒンジ部14は電極間距離dの伸縮に伴い変形するが、ヒンジ部14の長さに対して電極間距離dは短いため、ヒンジ部14の局所的な変形量は小さい。このため、繰返し伸縮させても、繰返し変形による疲労の蓄積は小さく、変形に伴う恒久的な変形は発生しない。また、絶縁体61と導体62はエラストマーなどの柔軟材料である必要はなく、クリープが生じにくい材料を選定することは容易に可能である。以上により、本実施形態に係る静電発電素子10の電極部11およびヒンジ部14は、いずれも繰返し変形に対して堅牢であり、静電発電素子10の長寿命化が可能である。
次に、第2実施形態に係る静電発電素子について説明する。なお、第1の実施形態と同じ点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る静電発電素子を示し、図7は、静電発電装素子が収縮した状態を示し、図8は、静電発電素子が伸長した状態を示している。図7において、図7(a)は、収縮した静電発電素子の斜視図を示し、図7(b)は、収縮した静電発電素子の展開図を示している。また、図8において、図8(a)は、伸長した静電発電素子の斜視図を示し、図8(b)は、伸長した静電発電素子の展開図を示している。なお、図7乃至8は、理解を容易にするべく静電発電素子を模式的に示しており、実際の接合領域等はほとんど厚さを有していない。
本実施形態の電極フィルム(第4の電極フィルム)211は、静電発電素子210の積層方向の一方の側に隣接する電極フィルム(第5の電極フィルム)212に接合されるための複数の第1接合領域213であって、ストライプ状にそれぞれ平行に延在する、第1接合領域213と、他方の側に隣接する電極フィルム212に接合されるための複数の第2接合領域214であって、第1接合領域213に平行、かつ、隣り合う第1接合領域213どうしの間にそれぞれ配列された、第2接合領域214とを有する。本実施形態の静電発電素子210は、交互に積層した電極フィルム211と電極フィルム212とからなる。静電発電素子210は、接合された電極フィルム211と電極フィルム212の電極ペア215を積層した構造を有し、隣り合う電極ペア215は、一方の電極ペア215の第1接合領域213及び第2接合領域214と、他方の電極ペア215の第1接合領域213及び第2接合領域214とが直交するように積層されている。このとき、電極フィルム211どうし、または電極フィルム212どうしは第1の実施形態のヒンジ部14のような構造で連結されていてもよく、互いに独立していてもよい。本実施形態の静電発電素子210は、以上のような電極フィルム211、212を複数接合することで形成される積層された複数の層13を有している。
電極フィルム211において、図7に示すように、第1接合領域213どうし及び第2接合領域214どうしは互いに重ならないように配置されており、電極フィルム211はストライプ状の非接合領域216を有する。一方で、電極フィルム212の第1接合領域213と第2接合領域214との少なくとも一部は積層方向に重なっている。本実施形態では、図8に示すように、外力によって各層13の電極間距離dが広がる際に、電極フィルム211の非接合領域216が変形してヒンジ部として機能し、層13に弾性力を発生させる。一方で、電極フィルム212にはヒンジ部として機能する領域が存在しない。これにより電極フィルム211は電極フィルム212に拘束されることで、ヒンジ部217はわずかな曲げ変形のみ許容され、ヒンジ部である非接合領域216の変形量を増やそうとすると引っ張り変形に変形モードがシフトし、ヒンジ部である非接合領域216の弾性力は急激に増加する。
これにより、各層13は、電極間距離dの略2乗に反比例するように静電力が減少する一方、電極間距離dの増加量に対して非線形的に弾性力が増加するように設けられている。これにより、各層13は、電極間距離dが増加し始めたときは静電力が急激に減少するとともに弾性力は徐々に増加し、電極間距離dがさらに広がると静電力と弾性力との大きさが逆転し、静電力が徐々に減少するとともに弾性力は急激に増加する。
以上より、本実施形態の静電発電素子210は、ストローク量の小さな振動が付与された場合には、一部の層13のみが伸縮するため、発電量を多くすることができる。一方、ストローク量の大きな振動が付与された場合には、全ての層が伸縮するため、発電量が向上するとともに静電発電素子210の一部の層13のみが広がり過ぎて破損してしまうリスクを低下させることができる。
次に、第3実施形態に係る静電発電素子について説明する。なお、第1、第2の実施形態と同じ点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図9は、本発明の第3実施形態に係る静電発電素子の電極フィルムの一部を示している。図9において、図9(a)は、電極フィルムの上面図を示し、図9(b)は、電極フィルムの断面図を示している。なお、図9(b)は、理解を容易にするべく静電発電素子を模式的に示しており、実際の接合領域等はほとんど厚さを有していない。
本実施形態の静電発電素子110の電極フィルム111は、図9に示すように、電極フィルム111と同様の構成を有して対向する他の電極フィルム111(不図示)と接合した接合領域112と接合していない非接合領域113とを有し、接合領域112と非接合領域113とは略波状のパターンを有している。
非接合領域113は、第2実施形態に係る非接合領域216(図6参照)と同様の作用を静電発電素子110にもたらし、非接合領域113の変形量を増やそうとすると引っ張り変形に変形モードがシフトし、ヒンジ部である非接合領域113の弾性力は急激に増加する。すなわち、本実施形態に係る静電発電素子110は、伸長する際に、図8に示す第2実施形態に係る静電発電素子210が伸長する場合と同様に、非接合領域113がたわむようになっている。
静電発電素子110は、第1の電極フィルム111と、第1の電極フィルム111に対向する第2の電極フィルム111と、第2の電極フィルム111と対向する第3の電極フィルム111とが、第1の電極フィルム111と第2の電極フィルム111との接合領域112と、第2の電極フィルム111と第3の電極フィルム111との接合領域112とが積層方向に互いに重ならないように構成されている。このとき、第1の電極フィルム111と第3の電極フィルム111とは第1の実施形態のヒンジ部14のような構造で連結していてもよいし、互いに独立していてもよい。本実施形態の静電発電素子110は、以上のような電極フィルム111を複数接合することで、第1実施形態及び第2実施形態に係る複数の層13と同様の複数の層が形成されている。
本実施形態では、外力によって各層の電極間距離dが広がる際に、非接合領域113が変形してヒンジ部として機能し、各層に弾性力を発生させる。波状に成形されたヒンジ部は連続して連なった皿バネのような変形をする。これにより、各層は電極間距離dの略2乗に反比例するように静電力が減少する一方、電極間距離dの増加量に対して非線形的に弾性力が増加するように設けられている。これにより、各層は、電極間距離dが増加し始めたときは静電力が急激に減少するとともに弾性力は徐々に増加し、電極間距離dがさらに広がると静電力と弾性力との大きさが逆転し、静電力が徐々に減少するとともに弾性力は急激に増加する。
以上により、本実施形態の静電発電素子110は、ストローク量の小さな振動が付与された場合には、一部の層13のみが伸縮するため、発電量を多くすることができる。一方、ストローク量の大きな振動が付与された場合には、全ての層が伸縮するため、発電量が向上するとともに静電発電素子110の一部の層のみが広がり過ぎて破損してしまうリスクを低下させることができる。
次に、第4の実施形態に係る静電発電装置について説明する。なお、第1乃至第3のいずれかの実施形態と同じ点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10は、本発明の第4の実施形態に係る静電発電装置の回路図を示し、図11は、図10の静電発電装置による発電の様子を示すシミュレーション結果を示している。
本実施形態に係る静電発電装置100は、図10に示すように、静電発電素子310と、インダクタ330とを備えている第1回路300で構成されている。静電発電素子310と、インダクタ330とは電気的に直列に接続されている。また、図示していないが、静電発電素子310に初期電圧を印加するバッテリ等の電圧印加手段を有している。静電発電素子310は、第1乃至第3の実施形態で示した静電発電素子のいずれかである。
静電発電素子の静電容量Cと、前記インダクタのインダクタンスLと、前記静電発電素子を含む発電部の振動角周波数ωとの間に、
Figure 0007488566000003
の関係を有している。
静電発電素子310が収縮した状態、かつ電圧が印可されていない状態から、電圧印加手段を用いて、静電発電素子310に初期電圧を印加した状態にしておく。静電発電素子310に電荷を溜めた後、外力が静電発電素子310に加わる直前または直後に電圧印加手段を電気的に切り離す。これにより、外力によって静電発電素子310が引っ張られて伸長状態になると、静電発電素子310の電圧は昇圧され、静電エネルギーが増加する。
静電発電素子310の静電エネルギーが増加すると同時に、静電発電素子310に蓄えられた電荷が、直列に接続されたインダクタ330に電流となって流れ始める。静電発電素子310は電気回路的にはコンデンサと同じであることから、静電発電素子310とインダクタ330との直列回路は、直列のLC回路と同じである。したがって、静電発電素子310から供給された静電エネルギーはインダクタ330で磁気エネルギーに変換され、さらにインダクタ330で変換された磁気エネルギーは、静電発電素子310で再び静電エネルギーに変換される。すなわち、発電された電力は第1回路300内でエネルギーとしての形態を変えながら保存される。そして、エネルギーの取り出しが必要なときにインダクタ330から電力を取り出すことができる。
外力が連続して静電発電素子310に加わる場合、静電発電装置100の振動角周波数ωを静電発電素子310とインダクタ330とによるLC回路の共振角周波数の2倍にすることで、連続的に発電することが可能である。静電発電装置100による発電のシミュレーション結果は、図11に示すようになる。図11の横軸は時刻で、外力によって静電発電素子310を引っ張り始めた時刻を0としている。縦軸は静電発電素子310に蓄えられた電荷量と電流値を示し、グラフの実線は静電発電素子310に蓄えられた電荷量、グラフの破線はインダクタ330から静電発電素子310に流入する向きを正とした電流量を示す。本シミュレーションでは、周期的な外力により静電発電素子310の静電容量が正弦波状に時間変化すると仮定した。また、外力の周波数、すなわち静電発電装置100の振動角周波数ωは、静電発電素子310とインダクタ330によるLC回路の共振角周波数の2倍値の96%の値であると仮定した。回路の電気抵抗成分も考慮している。
解析結果から、静電発電装置100の振動角周波数ωと、静電発電素子310とインダクタ330によるLC回路の共振角周波数の2倍の値がわずかにずれていても、連続的に電流量が増加し、連続的に発電されていることが明らかとなった。静電発電装置100の振動角周波数ωとLC回路の共振角周波数の2倍値とが等しい場合は、より顕著な電流の増副作用が発現し、より効率的に発電をすることができる。
解析の結果、静電発電素子310とインダクタ330とによるLC回路の共振角周波数の2倍値に対して、静電発電装置100の振動角周波数ωが±5%以内であれば、効率的に連続的な発電をすることができることが明らかとなった。
次に、第5の実施形態に係る静電発電装置について説明する。なお、第1乃至第4のいずれかの実施形態と同じ点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図12は、本発明の第5の実施形態に係る静電発電装置の回路図を示し、図13は、図12の静電発電装置による発電の様子を示すシミュレーション結果を示している。
本実施形態に係る静電発電装置100は、図12に示すように、静電発電素子310と、インダクタ330とバッテリ320とを備えている第1回路300で構成されている。静電発電素子310と、インダクタ330と、バッテリ320とは電気的に直列に接続されている。静電発電素子310は、第1乃至第3の実施形態で示した静電発電素子のいずれかである。
静電発電素子310を収縮した状態、かつ電圧が印可されていない状態で第1回路300を構成すると、静電発電素子310にバッテリ320から電荷が供給され、静電発電素子310は初期電圧が印加された状態になる。この状態では、外力が加わらない状態では、バッテリ320の電圧と静電発電素子310の電圧とが等しいため、第1回路300には電流が流れない。外力が加わると、外力によって静電発電素子310が引っ張られて伸長状態になり、静電発電素子310の電圧は昇圧され、静電エネルギーが増加する。
静電発電素子310の静電エネルギーが増加すると同時に、第1回路300内でLC共振によるエネルギーの変換が生じる。第1回路300にはバッテリ320も電気的に直列に接続されているが、バッテリ320は直流電圧を印加するのみで、LC共振には寄与しない。したがって、発電された電力は、第4の実施形態と同様、第1回路300内でエネルギーとしての形態を変えながら保存される。そして、エネルギーの取り出しが必要なときにインダクタ330から電力を取り出すことができる。本実施形態では、第4の実施形態で述べた静電発電素子310に初期電圧を印加する電圧印加が、直列に接続されたバッテリ320で代替できており、また、外力が加わるタイミングでバッテリ320を切り離すことも不要であるため、静電発電装置100のシステム構成を簡単にすることができる。
外力が連続して静電発電素子310に加わる場合、静電発電装置100の振動角周波数ωを静電発電素子310とインダクタ330とによるLC回路の共振角周波数の2倍にすることで、連続的に発電することが可能である。静電発電装置100による発電のシミュレーション結果は、図13に示すようになる。図13の横軸は時刻で、外力によって静電発電素子310を引っ張り始めた時刻を0としている。縦軸は静電発電素子310に蓄えられた電荷量と電流値を示し、グラフの実線は静電発電素子310に蓄えられた電荷量、グラフの破線はインダクタ330から静電発電素子310に流入する向きを正とした電流量を示す。本シミュレーションでは、周期的な外力により静電発電素子310の静電容量が正弦波状に時間変化すると仮定した。また、外力の周波数、すなわち静電発電装置100の振動角周波数ωは、静電発電素子310とインダクタ330とによるLC回路の共振角周波数の2倍値の96%の値であると仮定した。回路の電気抵抗成分も考慮している。
解析結果から、静電発電装置100の振動角周波数ωと、静電発電素子310とインダクタ330とによるLC回路の共振角周波数の2倍の値がわずかにずれていても、連続的に電流量が増加し、連続的に発電されていることが明らかとなった。静電発電装置100の振動角周波数ωとLC回路の共振角周波数の2倍値とが等しい場合は、より顕著な電流の増副作用が発現し、より効率的に発電をすることができる。なお、バッテリ320が第1回路300に接続されているため、電荷量にオフセットがかかっている点が、第4の実施形態と異なる。
解析の結果、静電発電素子310とインダクタ330とによるLC回路の共振角周波数の2倍値に対して、静電発電装置100の振動角周波数ωが±5%以内であれば、効率的に連続的な発電をすることができることが明らかとなった。
次に、第6の実施形態に係る静電発電装置について説明する。なお、第1乃至第5のいずれかの実施形態と同じ点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図14は、本発明の第6の実施形態に係る静電発電装置の制御に係るフローチャートを示している。
本実施形に係る静電発電装置100のインダクタ330は、インダクタンスLが可変である。このため、静電発電装置100の振動の位相と、静電発電素子310とインダクタ330とによるLC回路の共振の位相とがずれている場合に、インダクタ330のインダクタンスLを変えることで、LC回路の共振の位相を静電発電装置100の振動の位相に合わせることができる。
以下、図14を参照し、静電発電装置100のインダクタンス制御装置による、外力による前記静電発電素子の振動の位相に対しとLC回路の共振角周波数との位相の調節方法について説明する。
静電発電装置100による発電が開始すると、先ず、インダクタンス制御装置は、静電発電装置100の振動角周波数ωとLC回路の共振角周波数との位相が合っているか否かを判断する(ステップS1)。
ステップS1において、インダクタンス制御装置は、静電発電装置100の振動角周波数ωとLC回路の共振角周波数との位相が合っていると判断すると(ステップS1:Yes)、一連の処理を終了し、再びステップS1の処理から一連の処理を開始する。
一方、ステップS1において、インダクタンス制御装置は、静電発電装置100の振動角周波数ωとLC回路の共振角周波数との位相が合っていないと判断すると(ステップS1:No)、振動の位相が進んでいるか否かを判断する(ステップS2)。
ステップS2において、インダクタンス制御装置は、振動の位相が遅れている、すなわち進んでいないと判断すると(ステップS2:No)、インダクタンスLを減らし(ステップS3)、ステップS1から一連の処理を繰り返す。
一方、ステップS2において、インダクタンス制御装置は、振動の位相が進んでいると判断すると(ステップS2:Yes)、インダクタンスLを増やし(ステップS4)、ステップS1から一連の処理を繰り返す。
以上の処理により、静電発電装置100は、静電発電装置100の振動角周波数ωとLC回路の共振角周波数との位相を調節して一致させることができるようになっている。
図15は、本発明の第6の実施形態に係る静電発電素子の変位波形と電圧波形との位相の関係性を示す波形図である。図15(a)は静電発電装置100の振動の位相と、LC回路の共振の位相が合っている場合を示し、図15(b)は静電発電装置100の振動の位相が、LC回路の共振の位相より遅れている場合を示し、図15(c)は静電発電装置100の振動の位相が、LC回路の共振の位相より進んでいる場合を示す。実線の波形W1は、静電発電素子310の積層方向の変位を示し、破線W2は静電発電素子310に印加されている電圧をそれぞれ示す。各波形の横軸は時間である。静電発電装置100の振動の位相と、LC回路の共振の位相が合っている場合は、静電発電素子310に印加されている電圧の極大と極小との両方のピークの位置と、静電発電素子310の積層方向の変位の極大の位置が一致している。すなわち、静電発電素子310に印加されている電圧の絶対値が増加するタイミングと、静電発電素子310の積層方向の変位が増加する(静電発電素子310の積層方向の長さが伸長する)タイミングが一致している。この位相が合っている状態に対して、静電発電装置100の振動の位相と、LC回路の共振の位相がずれると、その分発電量が低下する。
静電発電装置100の振動の位相がLC回路の共振の位相より遅れている場合は、大きな発電量を得るためにはLC共振の角周波数を一時的に小さくする必要がある。すなわち、LC共振の波長を一時的に長くすることで、LC共振の周期を伸ばし、LC共振の位相と静電発電装置100の振動の位相とを一致させることが可能である。LC共振の角周波数を小さくするには、インダクタ330のインダクタンスLを大きくすればよい。
同様に、静電発電装置100の振動の位相がLC回路の共振の位相より進んでいる場合は、大きな発電量を得るためにはLC共振の角周波数を一時的に大きくする必要がある。すなわち、LC共振の波長を一時的に短くすることで、LC共振の周期を狭め、LC共振の位相と静電発電装置100の振動の位相とを一致させることが可能である。LC共振の角周波数を大きくするには、インダクタ330のインダクタンスLを小さくすればよい。
以上で述べたようなインダクタ330のインダクタンスLを制御するために、本実施形に係る静電発電装置100はインダクタンスLを制御する制御フローを実行することができる。静電発電装置100の振動と、LC回路の共振が生じた際に、まず、静電発電装置100の振動とLC回路の共振の位相が合っているかを確認する。もし、静電発電装置100の振動とLC回路の共振との位相が合っている場合は、そのまま発電を続ける。もし、静電発電装置100の振動とLC回路の共振との位相が合っていない場合は、静電発電装置100の振動の位相がLC回路の共振の位相に対して進んでいるかをチェックする。静電発電装置100の振動の位相がLC回路の共振の位相に対して進んでいる場合は、インダクタンスLを増やす。静電発電装置100の振動の位相がLC回路の共振の位相に対して遅れている場合は、インダクタンスLを減らす。
以上の制御をループで繰り返すことで、静電発電装置100の振動とLC回路の共振との位相を合致させることが可能である。これにより、静電発電装置100の発電量を向上し、効率的な発電をすることが可能である。
また、それぞれの位相は、第1回路300を流れる電流や静電発電素子310またはインダクタ330に印加される電圧の測定や、そこから導かれる静電発電素子310の静電容量を推定することで静電発電素子310の長さや電極間距離を推定することで算定できる。
次に、第7の実施形態に係る静電発電装置について説明する。なお、第1乃至第6の実施形態のいずれかと同じ点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本発明の第7の実施形態では、第4乃至第6の実施形態のいずれかで用いた第1回路300のインダクタ330が変圧器の一方のインダクタであり、他方のインダクタ410と整流回路420とが第2回路400を構成している。すなわち、静電発電素子310は、インダクタ330が組み込まれた変圧器を介して整流回路420に接続されており、変圧器は、静電発電素子310側で生じた交流の電力を、整流回路420側で直流の電力に変換する。整流回路420は図7または図9に示すように4つのダイオード421とコンデンサ430とにより構成される。ここでは整流回路420として、一般的な構成を示したが、交流成分を直流成分に変換することが可能な別の整流回路を用いてもよい。整流回路420は負荷部50である蓄電池やDC/ACインバータや電力系統等に接続されるための一対の端子部440,450を備えている。
本実施形態を用いることで、第1回路300のインダクタ330を変圧器の一部として利用することができ、簡易な回路構成により交流で発電された電力を直流電力に変換することができる。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明はこれに限定されない。
10…静電発電素子
11…電極部
13…層
14…ヒンジ部
50…負荷部
60…電極フィルム
61…絶縁体
62…導体
100…静電発電装置
110…静電発電素子
111…電極フィルム(第1の電極フィルム、第2の電極フィルム、第3の電極フィルム)
112…接合領域
113…非接合領域
115…ヒンジ部
210…静電発電素子
211…電極フィルム(第4の電極フィルム)
212…電極フィルム(第5の電極フィルム)
213…第1接合領域
214…第2接合領域
215…電極ペア
216…非接合領域
217…ヒンジ部
300…第1回路
310…静電発電素子
320…バッテリ
330…インダクタ
400…第2回路
410…インダクタ
420…整流回路
421…ダイオード
430…コンデンサ
440…端子部
450…端子部

Claims (11)

  1. 静電発電装置において、
    導体と前記導体の両面を絶縁保護する絶縁体とからなる複数の電極フィルムを積層して構成された複数の層を有する静電発電素子を備え、
    前記層の各々は、互いに対向する前記電極フィルムどうしの少なくとも一部が隙間を空けて対向するように構成され、
    前記静電発電素子は、前記電極フィルムの積層方向に外力により伸縮変形可能であり、
    前記層の各々は、前記電極フィルムの電極間距離の増加に応じて、電極間距離の増加に抗する弾性力が非線形的に増加することを特徴とする、静電発電装置。
  2. 請求項1に記載の静電発電装置において、
    前記電極フィルムは、対向する別の前記電極フィルムに接合した接合領域と接合していない非接合領域とを有し、前記接合領域と前記非接合領域とは波状パターンを有し、
    複数の前記電極フィルムは、第1の電極フィルムと、前記第1の電極フィルムに対向する第2の電極フィルムと、前記第2の電極フィルムに対向する第3の電極フィルムとが、前記第1の電極フィルムと前記第2の電極フィルムとの接合領域と、前記第2の電極フィルムと前記第3の電極フィルムとの接合領域とが前記積層方向に互いに重ならないように積層されたことを特徴とする、静電発電装置。
  3. 請求項1に記載の静電発電装置において、
    前記静電発電素子の複数の前記電極フィルムは、
    前記静電発電素子の前記積層方向の一方の側に隣接する前記電極フィルムに接合されるための複数の第1接合領域であって、ストライプ状にそれぞれ平行に延在する、第1接合領域と、他方の側に隣接する前記電極に接合されるための複数の第2接合領域であって、前記第1接合領域に平行、かつ、隣り合う前記第1接合領域どうしの間にそれぞれ配列された、第2接合領域とを有する第4の電極フィルムと、
    前記第4の電極フィルムに接合された第5の電極フィルムとからなり、
    前記静電発電素子は、接合された前記第4の電極フィルムと前記第5の電極フィルムとの電極ペアを積層した構造を有し、
    隣り合う前記電極ペアは、一方の前記電極ペアの前記第1接合領域及び前記第2接合領域と、他方の前記電極ペアの前記第1接合領域及び前記第2接合領域とが直交するように積層された、静電発電装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電発電装置において、前記静電発電素子は、2枚のリボン状の前記電極フィルムを互いに直交する方向に交互に折り重ねた構造を有することを特徴とする、静電発電装置。
  5. 請求項4に記載の静電発電装置において、一方の前記電極フィルムは他方の前記電極フィルムと対向する領域に位置する電極部と前記電極部を連結するヒンジ部とを有し、前記電極部の前記絶縁体の厚さt1は、前記ヒンジ部の前記絶縁体の厚さt2よりも厚いことを特徴とする、静電発電装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の静電発電装置において、前記静電発電素子は、電極間距離の増加量の2乗以上に比例して弾性力が増加することを特徴とする、静電発電装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の静電発電装置において、
    前記静電発電素子に初期電圧を印加する電圧印加手段と
    前記静電発電素子に電気的に直列に接続されたインダクタと、を備えたことを特徴とする、静電発電装置。
  8. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の静電発電装置において、
    前記静電発電素子と、インダクタと、前記静電発電素子に初期電圧を印加するバッテリとを備え、
    前記静電発電素子と前記インダクタと前記バッテリとは電気的に直列に接続されたことを特徴とする、静電発電装置。
  9. 請求項7または8に記載の静電発電装置において、前記静電発電素子の静電容量Cと、前記インダクタのインダクタンスLと、前記静電発電素子を含む発電部の振動角周波数ωとの間に、
    Figure 0007488566000004
    の関係があることを特徴とする、静電発電装置。
  10. 請求項7乃至9のいずれか1項に記載の静電発電装置において、
    前記インダクタのインダクタンスLを可変にするインダクタンス制御装置をさらに備え、前記インダクタンス制御装置は、外力による前記静電発電素子の振動の位相に対して、前記静電発電素子に印加される電圧位相が進んでいる場合は前記インダクタンスLを増やし、前記静電発電素子に印加される電圧位相が遅れている場合は前記インダクタンスLを減らすことを特徴とする、静電発電装置。
  11. 請求項7乃至10のいずれか1項に記載の静電発電装置において、
    前記静電発電素子は、前記インダクタが組み込まれた変圧器を介して整流回路に接続されており、前記変圧器は、前記静電発電素子側で生じた交流の電力を、前記整流回路側で直流の電力に変換することを特徴とする、静電発電装置。
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