JP7486596B2 - 電動アクチュエータ - Google Patents

Description

本発明は、正逆回転可能な電動モータの回転をネジ軸の往復直線運動に変換する運動変換機構を備える電動アクチュエータに関する。

電動アクチュエータは、正逆回転可能な電動モータと、該電動モータの回転をネジ軸の往復直線運動に変換する運動変換機構を備えており、運動変換機構のナットが電動モータによって正逆回転されると、該ナットに進退可能に螺合挿通するネジ軸が往復直線運動する。このような電動アクチュエータは、例えば、車両の電動パーキングブレーキ装置に用いられている(例えば、特許文献１参照）。

斯かる電動アクチュエータを備える電動パーキングブレーキ装置においては、ドラムブレーキ内のパーキングブレーキレバーが電動アクチュエータのネジ軸の往復直線運動によって解除位置から作動位置へと移動すると、車輪と共に回転するブレーキドラムの内周面にブレーキシューが押圧され、両者間に発生する摩擦抵抗力によって車輪の回転が制動されて車両がパーキングブレーキ状態となる。そして、パーキングブレーキ状態から電動アクチュエータの電動モータを逆回転させると、パーキングレバーが作動位置から解除位置へと移動してブレーキシューがブレーキドラムの内周面から離反し、車両のパーキングブレーキ状態が解除される。

ところで、電動アクチュエータの運動変換機構においては、回転するナットに螺合挿通するネジ軸がナットに対して往復直線運動するため、該ネジ軸とナットとの螺合部に摺動摩擦が発生し、両者の螺合部に摩耗が発生するという問題がある。

そこで、特許文献２には、ネジ軸の雄ネジ部に螺合するナットの雌ネジ部上端に油溝を形成し、この油溝に潤滑油を貯留する構成が提案されている。このような構成によれば、油溝に貯留されている潤滑油がネジ軸とナットとの相対回転によって油溝から引き出され、ネジ軸の雄ネジ部とナットの雌ネジ部との螺合部分全体に潤滑油が供給されて該螺合部分の潤滑に供される。

また、特許文献３には、スクリュースピンドル（ネジ軸）に螺合するスクリュースリーブ（ナット）に固体潤滑剤を埋め込むとともに、該スクリュースリーブの上下端に固体潤滑剤止め板を設ける構成が提案されている。このような構成によれば、スクリュースリーブに埋め込まれた固体潤滑剤が固体潤滑剤止め板によってスクリュースリーブから抜け出ることがないため、スクリュースピンドルとスクリュースリーブとの螺合部の潤滑が固体潤滑剤によって安定的になされる。

日本特開２０１９－００６２２３号公報 日本特開２００１－１３２８１３号公報 日本実開昭５３－０１４４１３号公報

ところで、特許文献１において提案された電動アクチュエータにおいて、ナットとネジ軸との螺合部を潤滑するためにネジ軸にグリス等の潤滑剤を塗布すると、ナットの回転によって潤滑剤がナットの内部に侵入して該ナットとネジ軸との螺合部の潤滑に供されるが、次のような問題が発生する。

すなわち、図８（ａ），（ｂ）に示すように、ネジ軸１０３が矢印方向に往復直線運動すると、このネジ軸１０３に塗布した潤滑剤がナット１０８によって掃かれて該ネジ軸１０３の軸方向両端部（移動限付近）に溜まる。また、ナット１０８の端面に潤滑剤が溜まると、この潤滑剤がナット１０８の回転による遠心力によって周囲に飛散する。このため、ネジ軸１０３の軸方向中央部（図示Ａ部分）において潤滑剤が不足して油膜切れが発生し、この部分の摩耗が促進するという問題が発生する。

また、特許文献２において提案された潤滑構造では、油溝がナットの雌ネジ部上端に形成されているため、ナットやネジ軸が縦方向に配置される構成に適用が限定されるという問題がある。

さらに、特許文献３において提案された潤滑構造は、潤滑剤が固体潤滑剤に限定されるため、その適用範囲が狭いという問題がある。

本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ナットとネジ軸との螺合部の潤滑を十分行うことによって該螺合部の摩耗を抑制し、ナットとネジ軸の耐久性を高めることができる電動アクチュエータを提供することにある。

上記目的を達成するため、本発明は、正逆回転可能な電動モータと、該電動モータの回転をネジ軸の往復直線運動に変換する運動変換機構を備え、前記運動変換機構は、前記電動モータによって回転駆動されるナットと、該ナットに進退可能に螺合挿通する前記ネジ軸を備える電動アクチュエータにおいて、前記ナットの軸方向一端内周に、当該ナットのネジ孔の径よりも大きな外径を有して潤滑剤を収容可能な潤滑剤保持部を形成し、該潤滑剤保持部の軸方向開口端を覆う蓋部材を設け、前記蓋部材は、蓋部と前記ナットと同軸の筒部とを一体に備え、前記筒部の内周に形成された凸部を前記ナットの外周に形成された凹部に嵌合させ、或いは前記ナットの外周に形成された凸部を前記筒部の内周に形成された凹部に嵌合させることによって、前記蓋部材を前記ナットに取り付けたことを第１の特徴とする。

本発明は、前記第１の特徴に加えて、前記蓋部の内周に円筒状のスクレーパ部を形成し、該スクレーパ部の内径を前記ネジ軸の外径よりも若干大きく設定して該スクレーパ部と前記ネジ軸との間に径方向の微小隙間を形成したことを第２の特徴とする。

本発明は、前記第１または第２の特徴に加えて、前記筒部の外径は、前記ナットの外径以下であることを第３の特徴とする。

本発明は、前記第１～第３の何れかの特徴に加えて、前記蓋部材は、ゴム材で構成されていることを第４の特徴とする。

本発明の第１の特徴によれば、ナットの回転によってネジ軸がナット内に侵入しても、該ネジ軸に塗布された潤滑剤がナットの潤滑剤保持部に保持されるため、ナットの端面に余分な潤滑剤が溜まることがなく、溜まった潤滑剤がナットの回転による遠心力によって周囲に飛散することがない。また、ナットの潤滑剤保持部に貯留された潤滑剤は、ネジ軸がナットから出てくる際に該ネジ軸に塗布されるが、この潤滑剤の塗布量が蓋部材によって規制されるため、必要十分な量の潤滑剤がネジ軸の広範囲に亘って塗布される。この結果、ネジ軸の部分的な潤滑剤不足（油膜切れ）が発生することがなく、ナットとネジ軸との螺合部の潤滑が十分になされ、螺合部の摩耗が抑制されてナットとネジ軸の耐久性が高められる。しかも、凹凸嵌合によって蓋部材をナットの外周にワンタッチで簡単に取り付けることができる。

本発明の第２の特徴によれば、蓋部材の蓋部の内周に形成されたスクレーパ部の内径をネジ軸の外径よりも若干大きく設定して両者の間に径方向の微小隙間を形成したため、ナットの潤滑剤保持部に貯留されている潤滑剤がスクレーパ部によって掻き取られてネジ軸に所定厚さで均一に塗布される。この場合、スクレーパ部はネジ軸に対して非接触であるため、両者間に摩擦抵抗力が発生せず、ネジ軸が抵抗なくスムーズに摺動することができる。また、スクレーパ部がネジ軸から外力を受けることがないため、該スクレーパ部の損傷が防がれて蓋部材の耐久性が高められる。

本発明の第３の特徴によれば、蓋部材の筒部の外径をナットの外径以下にすることにより、蓋部材を装着してナットをラジアルベアリングに装着する際に、蓋部材がラジアルベアリングに干渉することなく組み付けることができる。

本発明の第４の特徴によれば、蓋部材を柔軟で弾性に富むゴム材で構成したため、該蓋部材がネジ軸に万一接触した場合であっても、該蓋部材の損傷が防がれてその耐久性が高められる。

図１は本発明に係る電動アクチュエータの斜視図である。 図２は本発明に係る電動アクチュエータの平断面図である。 図３は本発明に係る電動アクチュエータのナットとネジ軸部分の平断面図である。 図４は図３の４部拡大詳細図である。 図５は図４の５－５線断面図である。 図６は図４の６－６線断面図である。 図７の（ａ），（ｂ）は本発明に係る電動アクチュエータにおけるネジ軸への潤滑剤塗布状態を示す模式的断面図である。 図８の（ａ），（ｂ）は従来の電動アクチュエータにおけるネジ軸への潤滑剤塗布状態を示す模式的断面図である。

１ 電動アクチュエータ
２ 電動モータ
２ａ 電動モータの出力軸
３ ネジ軸
３ｂ ネジ軸の雄ネジ
４ 運動変換機構
５ 伝動機構
６ 駆動ギヤ
８ ナット
８Ａ ナットのスリーブ部
８Ｂ ナットのドラム部
８ａ ナットの雌ネジ
８ｂ ナットの凹部
１０ アクチュエータケース
１９ 中間ギヤ
２０ 従動ギヤ
２１ 潤滑剤保持部
２２ 蓋部材
２２Ａ 蓋部材の蓋部
２２Ｂ 蓋部材の筒部
２２ａ 蓋部材のスクレーパ部
２２ｂ 蓋部材の凸部
φＤ スクレーパ部の内径
φｄ ネジ軸の外径
δ 微小隙間

以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。

図１は本発明に係る電動アクチュエータの斜視図、図２は同電動アクチュエータの平断面図である。

本実施の形態に係る電動アクチュエータ１は、不図示の電動パーキングブレーキ装置に備えられるものであって、図２に示すように、駆動源である正逆回転可能な電動モータ２と、該電動モータ２の回転をネジ軸３の往復直線運動に変換する運動変換機構４と、電動モータ２の回転を運動変換機構４に伝達するための伝動機構（ギヤ機構）５を備えており、これらの電動モータ２と運動変換機構４及び伝動機構５は、アクチュエータケース１０内に収容されている。なお、以下の説明においては、図１及び図２に示す矢印方向を「前後方向」とする。

上記アクチュエータケース１０は、円筒状の第１のケース１１Ａと第２のケース１１Ｂを一体に有するケース本体１１と、該ケース本体１１の第１のケース１１Ａの開口端に被着されたモータカバー１２と、該モータカバー１２とは反対側（図２の右側）からケース本体１１の開口端に被着されたギヤカバー１３とで構成されている。

そして、図２に示すように、ケース本体１１の第１のケース１１Ａには電動モータ２が収容されており、該電動モータ２から後方（図２の右方）に向かって延出する出力軸（モータ軸）２ａのギヤカバー１３内に臨む端部（後端部）には、小径の駆動ギヤ６が取り付けられている。ここで、電動モータ２の軸方向一端（前端）は、モータカバー１２に形成された凹部１２ａに嵌合保持されており、同電動モータ２の軸方向他端（後端）は、第１のケース１１Ａの端壁１１ａに形成された円孔１１ｂに嵌合保持されている。なお、電動モータ２の出力軸（モータ軸）２ａは、軸受７を介して第１のケース１１Ａに回転可能に支持されている。

また、ケース本体１１の第２のケース１１Ｂは、第１のケース１１Ａの側方に一体に配置されており、この第２のケース１１Ｂには運動変換機構４が収容されている。この運動変換機構４は、回転可能なナット８と、該ナット８に直線移動可能に螺合挿通する前記ネジ軸３を備えている。

上記ナット８は、スリーブ部８Ａと該スリーブ部８Ａよりも大径のドラム部８Ｂとを一体に有しており、スリーブ部８Ａの外周に組み付けられたラジアルベアリング（ボールベアリング）９によって第２のケース１１Ｂに回転可能に支持されている。ここで、スリーブ部８Ａの内周には、雌ネジ８ａが螺旋状に刻設されている。

ネジ軸３は、前後方向に長い丸棒状のスライド部材であって、その前端部に形成された円孔３ａには、不図示のブレーキケーブルが連結されており、このブレーキケーブルの他端は、不図示の電動パーキングブレーキ装置のパーキングブレーキレバーに連結されている。また、ネジ軸３の後端にはフランジ部３Ａが一体に形成されており、このフランジ部３Ａの外周は、ギヤカバー１３内に収容された筒状のガイド部材１４の内周に軸方向に沿って形成された一対のガイド溝１４ａに係合している。このため、ネジ軸３の回転がガイド部材１４によって阻止され、ネジ軸３は、回転することなく前後方向に往復直線運動する。

そして、ネジ軸３の外周の所定範囲には、雄ネジ３ｂが螺旋状に刻設されており、ネジ軸３は、ナット８のスリーブ部８Ａに螺合挿通している。したがって、ネジ軸３のナット８への挿通においては、該ネジ軸３の外周に刻設された雄ネジ３ｂとナット８のスリーブ部８Ａの内周に刻設された雌ネジ８ａとが互いに螺合している。

また、ネジ軸３のアクチュエータケース１０の外部へと延出する部分は、柔軟で弾性に富むゴム材などによって構成された伸縮可能な蛇腹状のブーツ１５によって覆われており、該ブーツ１５の一端（前端）は、ネジ軸３の前端部外周に嵌着され、同ブーツ１５の他端（後端）は、アクチュエータケース１０の第２のケース１１Ｂに突設された筒状部１１ｃの外周に嵌着されている。

ところで、図２に示すように、ナット８のドラム部８Ｂ内にネジ軸３のフランジ部３Ａとの間に形成された軸方向空間には、複数の皿バネ１６が軸方向に積層された状態で収容されており、これらの皿バネ１６は、従動ギヤ２０に当接するリテーナ１７によってその軸方向位置が規制されている。なお、これらの皿バネ１６は、ネジ軸３をナット８から離間させる方向（後方）に付勢する付勢手段を構成している。

ここで、伝動機構５の構成を図２に基づいて以下に説明する。

伝動機構５は、電動モータ２の出力軸２ａの回転を運動変換機構４のナット８へと伝達するものであって、電動モータ２の出力軸２ａに取り付けられた前記駆動ギヤ６と、支軸１８によって回転可能に支持された中間ギヤ１９と、ナット８のドラム部８Ｂの外周に取り付けられた従動ギヤ２０を備えている。

上記中間ギヤ１９は、アクチュエータケース１０のケース本体１１とガイド部材１４との間に架設された支軸１８によって回転可能に支持されており、大小異径の大径中間ギヤ１９ａと小径中間ギヤ１９ｂを一体に備えている。ここで、大径中間ギヤ１９ａは、駆動ギヤ６に噛合しているが、その径は駆動ギヤ６の径よりも大きく設定されている。また、小径中間ギヤ１９ｂは、これよりも大径の従動ギヤ２０に噛合しており、従動ギヤ２０は、ナット８のドラム部８Ｂの外周に嵌着されている。

次に、本発明の特徴的な構成を図３～図６に基づいて以下に説明する。

図３は本発明に係る電動アクチュエータのナットとネジ軸部分の平断面図、図４は図３の４部拡大詳細図、図５は図４の５－５線断面図、図６は図４の６－６線断面図である。

本実施の形態においては、図３～図５に示すように、ナット８のスリーブ部８Ａの軸方向一端（前端部）８Ａ１の内周には、当該ナット８のネジ孔の径よりも大きな外径を有する潤滑剤保持部２１が形成されており、この潤滑剤保持部２１は、グリスなどの潤滑剤を収容可能である。そして、ナット８のスリーブ部８Ａの軸方向一端部（前端部）８Ａ１の外周には、潤滑剤保持部２１の軸方向開口端を覆う蓋部材２２が取り付けられている。

上記蓋部材２２は、ゴム材によって一体に成形されており、図４に示すように、潤滑剤保持部２１の軸方向開口端を軸方向から覆うリング板状の蓋部２２Ａと、ナット８と同軸の円筒状の筒部２２Ｂとを一体に備えている。ここで、図４に示すように、蓋部材２２の筒部２２Ｂの端部内周には、リング状の凸部２２ｂが全周に亘って一体に形成されており、ナット８のスリーブ部８Ａの端部外周には、リング溝状の凹部８ｂが全周に亘って一体に形成されている。

而して、蓋部材２２は、筒部２２Ｂの端部内周に形成された凸部２２ｂをナット８のスリーブ部８Ａの端部外周に形成された凹部８ｂに嵌め込むことによってナット８のスリーブ部８Ａの端部外周にワンタッチで簡単に取り付けられる。なお、本実施の形態では、蓋部材２２の筒部２２Ｂ側に凸部２２ｂを形成し、ナット８のスリーブ部８Ａ側に凹部８ｂを形成したが、これとは逆に蓋部材２２の筒部２２Ｂ側に凹部を形成し、ナット８のスリーブ部８Ｂ側に凸部を形成し、これらの凹部と凸部を互いに嵌合させることによっても、蓋部材２２をナット８のスリーブ部８Ａの端部外周にワンタッチで簡単に取り付けることができる。

ところで、本実施の形態では、図４に示すように、蓋部材２２の筒部２２Ｂの外径とナット８のスリーブ部８Ａの外径は同径とされている。また、蓋部材２２の蓋部２２Ａの内周には、前方（図４の左方）に向かって一体に突出する円筒状のスクレーパ部（掻き取り部）２２ａが一体に形成されており、このスクレーパ部２２ａの前端内周には、前方（図４の左方）に向かって拡径するテーパ面２２ｂ１が形成されている。ここで、図６に示すように、スクレーパ部２２ａの内径φＤは、ネジ軸３の外径φｄよりも若干大きく設定されており（φＤ＞φｄ）、したがって、スクレーパ部２２ａとネジ軸３との間には、径方向のリング状の微小隙間δ（＝（Ｄ－ｄ）／２）が形成されている。

而して、以上のように構成された電動アクチュエータ１は、不図示の電動パーキングブレーキ装置のアクチュエータとして使用されるが、以下、この電動アクチュエータ１の作用を図７を参照しながら説明する。なお、電動アクチュエータ１は、アクチュエータケース１０の外周に嵌着されたスナップリング２３（図１及び図２参照）を用いて電動パーキングブレーキ装置に位置決め固定される。

図２に示す状態は、ネジ軸３が前進して該ネジ軸３の先端に取り付けられた不図示のブレーキケーブルが弛んでいる状態であって、この状態ではドラムブレーキのブレーキシューがブレーキドラムの内周面から離反している。このため、ブレーキシューとブレーキドラムとの間には摩擦抵抗力が発生せず、電動パーキングブレーキ装置は、パーキングブレーキが解除された状態にあり、ブレーキドラムと車輪は自由に回転することができるために車両の走行が可能である。

上記状態から、不図示のパーキングブレーキスイッチがＯＮ操作されると、電動アクチュエータ１の電動モータ２に通電されて該電動モータ２が起動される。すると、電動モータ２の出力軸２ａの回転が伝動機構５によって減速されながら運動変換機構４へと伝達され、電動モータ２の出力軸２ａの回転がネジ軸３の直線運動（後進運動）へと変換される。

すなわち、電動モータ２の出力軸２ａの回転は、駆動ギヤ６から中間ギヤ１９へと減速されて伝達され、該中間ギヤ１９が所定速度で回転する。そして、この中間ギヤ１９の回転は、互いに噛合する小径中間ギヤ１９ｂと従動ギヤ２０を経て減速されて運動変換機構４のナット８に伝達され、該ナット８が所定の速度で回転する。

上述のように、ナット８が回転すると、このナット８に螺合挿通するネジ軸３が図７（ａ）に示すように直線移動して後退し、該ネジ軸３の先端に取り付けられた不図示のブレーキケーブルが引っ張られる。すると、電動パーキングブレーキ装置のパーキングブレーキレバーが操作されてブレーキシューが拡開し、該ブレーキシューがブレーキドラムの内周面に押圧されるために両者間に摩擦抵抗力が発生する。そして、この摩擦抵抗力によってブレーキドラムと車輪の回転が制動されるため、車両はパーキングブレーキ状態となる。

上記パーキングブレーキ状態を解除するために不図示のパーキングブレーキスイッチがＯＦＦ操作されると、電動モータ２が逆回転され、その出力軸２ａの回転が前記と同様の伝達経路を経て運動変換機構４のナット８に伝達されるため、該ナット８が逆回転する。このようにナット８が逆回転すると、該ナット８に螺合挿通するネジ軸３が図７（ｂ）の矢印方向に直線移動して前進し、電動アクチュエータ１は、図２に示す状態に復帰するため、電動パーキングブレーキ装置が解除された状態となる。

而して、本実施の形態では、ナット８の軸方向一端内周に、当該ナット８のネジ孔の径よりも大きな外径を有して潤滑剤を収容可能な潤滑剤保持部２１を形成し、該潤滑剤保持部２１の軸方向開口端を覆う蓋部材２２を設けたため、ナット８の回転によってネジ軸３がナット８内に侵入しても、該ネジ軸３に塗布された潤滑剤がナット８の潤滑剤保持部２１に保持される。このため、図７（ａ），（ｂ）に示すように、ナット８の端面に余分な潤滑剤が溜まることがなく、溜まった潤滑剤がナット８の回転による遠心力によって周囲に飛散することがない。

また、ナット８の潤滑剤保持部２１に貯留された潤滑剤は、ネジ軸３がナット８から出てくる際に該ネジ軸３に塗布されるが、この潤滑剤の塗布量が蓋部材２２によって規制されるため、必要十分な量の潤滑剤がネジ軸３の広範囲に亘って塗布される。この結果、ネジ軸３の部分的な潤滑剤不足（油膜切れ）が発生することがなく、ナット８とネジ軸３との螺合部の潤滑が十分になされ、螺合部の摩耗が抑制されてナット８とネジ軸３の耐久性が高められる。

そして、本実施の形態においては、蓋部材２２の蓋部２２Ａの内周に形成されたスクレーパ部２２ａの内径φＤをネジ軸３の外径φｄよりも若干大きく設定して（φＤ＞φｄ）両者の間に径方向の微小隙間δを形成したため、ナット８の潤滑剤保持部２１に貯留されている潤滑剤がスクレーパ部２２ａによって掻き取られて図７（ａ），（ｂ）に示すようにネジ軸３に当該潤滑剤が所定厚さδで均一に塗布される。この場合、スクレーパ部２２ａは、ネジ軸３に対して非接触であるため、両者間に摩擦抵抗力が発生せず、ネジ軸３が抵抗なくスムーズに摺動することができる。また、スクレーパ部２２ａがネジ軸３から外力を受けることがないため、該スクレーパ部２２ａの損傷が防がれて蓋部材２２の耐久性が高められる。

ところで、ナット８は、ラジアルベアリング９に挿通され組み付けられるが、蓋部材２２の筒部２２Ｂの外径がナット８のスリーブ部８Ａの外径以下であるため、蓋部材２２をナット８に装着した後に、ラジアルベアリング９に挿通しても、蓋部材２２がラジアルベアリング９に干渉することなくナット８を組み付けることができる。

また、本実施の形態では、蓋部材２２を柔軟で弾性に富むゴム材で構成したため、該蓋部材２２がネジ軸３に万一接触した場合であっても、該蓋部材２２の損傷が防がれてその耐久性が高められるという効果も得られる。

なお、以上は本発明を車両用ドラムブレーキの電動パーキングブレーキ装置に備えられる電動アクチュエータに対して適用した形態について説明したが、本発明は、他の任意の装置に用いられる電動アクチュエータに対しても同様に適用可能である。

その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。

Claims (4)

1. 正逆回転可能な電動モータ（２）と、該電動モータ（２）の回転をネジ軸（３）の往復直線運動に変換する運動変換機構（４）を備え、
   前記運動変換機構（４）は、前記電動モータ（２）によって回転駆動されるナット（８）と、該ナット（８）に進退可能に螺合挿通する前記ネジ軸（３）を備える電動アクチュエータ（１）において、
   前記ナット（８）の軸方向一端内周に、当該ナット（８）のネジ孔の径よりも大きな外径を有して潤滑剤を収容可能な潤滑剤保持部（２１）を形成し、
   前記潤滑剤保持部（２１）の軸方向開口端を覆う蓋部材（２２）を設け、
   前記蓋部材（２２）は、蓋部（２２Ａ）と前記ナット（８）と同軸の筒部（２２Ｂ）とを一体に備え、
   前記筒部（２２Ｂ）の内周に形成された凸部（２２ｂ）を前記ナット（８）の外周に形成された凹部（８ｂ）に嵌合させ、或いは前記ナット（８）の外周に形成された凸部を前記筒部（２２Ｂ）の内周に形成された凹部に嵌合させることによって、前記蓋部材（２２）を前記ナット（８）に取り付けたことを特徴とする電動アクチュエータ。
2. 前記蓋部（２２Ａ）の内周に円筒状のスクレーパ部（２２ａ）を形成し、該スクレーパ部（２２ａ）の内径（φＤ）を前記ネジ軸（３）の外径（φｄ）よりも若干大きく設定して該スクレーパ部（２２ａ）と前記ネジ軸（３）との間に径方向の微小隙間（δ）を形成したことを特徴とする請求項１に記載の電動アクチュエータ。
3. 前記筒部（２２Ｂ）の外径は、前記ナット（８）の外径以下であることを特徴とする請求項１または２に記載の電動アクチュエータ。
4. 前記蓋部材（２２）は、ゴム材で構成されていることを特徴とする請求項１～３の何れかに記載の電動アクチュエータ。
   

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