JP7486442B2 - プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法 - Google Patents

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法 Download PDF

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Description

本開示は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
半導体ウエハ等の基板に対する処理としてプラズマ処理が多用されている。特許文献1には、真空容器と、真空容器内で基板を載置し、高周波電源が接続される基板電極と、真空容器に設置されたアース電極とを有し、基板電極とアース電極との間にプラズマを生成させるプラズマ処理装置が開示されている。また、特許文献1には、基板電極にダイオードを含む電位調整機構を接続することが記載されている。
特開2000-306891号公報
本開示は、基板へのイオン衝撃を抑制しつつ、効率良くプラズマを生成してプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供する。
本開示の一態様に係るプラズマ処理装置は、基板に対してプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、処理容器と、前記処理容器内に設けられ、基板が載置される基板載置台と、前記基板載置台に含まれる接地された下部電極と、前記下部電極に対向して設けられた上部電極と、処理ガスを前記上部電極と前記下部電極との間に供給するガス供給部と、前記上部電極に高周波電力を印加して前記処理ガスのプラズマを生成する高周波電源と、前記高周波電源と前記上部電極の間に設けられ、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧を抑制するように高周波電源の電圧波形を整形する電圧波形整形部と、を備える。
本開示によれば、基板へのイオン衝撃を抑制しつつ、効率良くプラズマを生成してプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法が提供される。
第1の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。 一般的な容量結合プラズマ処理装置において、上部電極が0Vの瞬間のプラズマ電位を示す図である。 一般的な容量結合プラズマ処理装置において、上部電極が100Vの瞬間のプラズマ電位を示す図である。 一般的な容量結合プラズマ処理装置における上部電極に印加される電圧波形を示す図である。 一般的な容量結合プラズマ処理装置における概算シース電圧を示す図である。 図1のプラズマ処理装置と一般的な容量結合プラズマ処理装置の上部電極電圧波形を示す図である。 図1のプラズマ処理装置と一般的な容量結合プラズマ処理装置のイオンを加速する概算シース電圧を示す図である。 図1のプラズマ処理装置と一般的な容量結合プラズマ処理装置における、高周波電源の出力パワーが100Wのときのイオンのエネルギー分布を示す図である。 図1のプラズマ処理装置と一般的な容量結合プラズマ処理装置における、高周波電源の出力パワーが500Wのときのイオンのエネルギー分布を示す図である。 図1のプラズマ処理装置においてプラズマを励起した場合の生成されるプラズマとガスの流れを示す図である。 一般的な容量結合プラズマ処理装置においてプラズマを励起した場合の生成されるプラズマとガスの流れを示す図である。 下部電極に高周波電源を接続し下部電極側に電圧波形整形部を設けたプラズマ処理装置においてプラズマを励起した場合の生成されるプラズマとガスの流れを示す図である。 第2の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。 一般的な容量結合プラズマ処理装置の上部電極の電圧波形と、電圧波形整形部のスイッチング素子を適切に開閉した場合の上部電極の電圧波形とを示す図である。 第3の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。 図15のプラズマ処理装置における上部電極の電圧波形を示す図である。 図15のプラズマ処理装置におけるシース電圧を示す図である。 第3の実施形態のプラズマ処理装置における他の例の電圧波形整形部を示す図である。 第4の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。 第4の実施形態のプラズマ処理装置における他の例の電圧波形整形部を示す図である。 第5の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。 第5の実施形態のプラズマ処理装置における他の例の電圧波形整形部を示す図である。 第6の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。 電圧波形整形部を用いた図23のプラズマ処理装置と電圧波形整形部を用いないプラズマ処理装置における、Si上にTi膜を成膜したときの成膜時間と膜厚との関係を示す図である。 電圧波形整形部を用いた図23のプラズマ処理装置と電圧波形整形部を用いないプラズマ処理装置における、SiN上にTi膜を成膜したときの成膜時間と膜厚との関係を示す図である。 電圧波形整形部を用いた図23のプラズマ処理装置と電圧波形整形部を用いないプラズマ処理装置における、Si上とSiN上でのTi膜の膜厚の選択比(Si/SiN選択比)の平均値を示す図である。 第7の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。 連続波の高周波電力を印加した際の上部電圧波形を示す図である。 パルス状の高周波電力を印加した際の上部電極波形を示す図であり、(a)はデューティ比が30%、(b)はデューティ比が50%、(c)はデューティ比が80%の場合である。 第8の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。 電圧波形整形部を用いた図30のプラズマ処理装置と電圧波形整形部を用いないプラズマ処理装置における、上部電極の電圧波形を示す図である。 電圧波形整形部を用いた図30のプラズマ処理装置と電圧波形整形部を用いないプラズマ処理装置における、各ウエハ位置(X方向およびY方向)におけるエッチングレートを示す図である。 電圧波形整形部を用いた図30のプラズマ処理装置と電圧波形整形部を用いないプラズマ処理装置における、高周波パワーと電子密度(平均値)との関係を示す図である。
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
まず、基本的な実施形態である第1の実施形態について説明する。
図1は第1の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。
プラズマ処理装置100は、基板Wに対してプラズマ処理を行うものであり、容量結合プラズマ処理装置として構成されている。基板Wとしては、例えば半導体ウエハを挙げることができるが、これに限定されない。
プラズマ処理装置100は、略円筒状の金属製の処理容器1を有している。処理容器1は接地されている。処理容器1の内部には、基板Wを水平に載置するための基板載置台2が設けられている。基板載置台2は接地された下部電極を含んでいる。図示の例では、基板載置台2が金属製であり、基板載置台2が下部電極として機能し、基板載置台2は接地されている。基板載置台2は絶縁体で構成されていてもよく、その場合は、基板載置台2は金属製の接地された下部電極が埋設された構成をとることができる。
基板載置台2には、プラズマ処理に応じて、加熱機構または冷却機構を有していてもよい。また基板載置台2には、その上面に対し突没可能に複数の昇降ピン(図示せず)が挿通されており、昇降機構(図示せず)による複数の昇降ピンの昇降動作により、基板載置台2に対する基板Wの授受が行われるようになっている。
処理容器1の上部には、開口が形成されており、開口には絶縁部材9を介してシャワーヘッド10が基板載置台2に対向するように嵌め込まれている。シャワーヘッド10は金属製であり、全体形状が円筒状をなし、上部電極を含んでいる。図示の例ではシャワーヘッド10自体が上部電極として機能するが、シャワーヘッド10の一部が上部電極であってもよい。シャワーヘッド10は、下部に開口を有する本体部11と、本体部11の開口を塞ぐように設けられたシャワープレート12とを有し、これらの間の内部空間はガス拡散空間として機能する。シャワープレート12には複数のガス吐出孔13が形成されている。
シャワーヘッド10にはガス導入孔14が形成されており、ガス供給部20から供給されたプラズマ処理のための処理ガスがガス導入孔14を介してシャワーヘッド10内に導入される。そして、シャワーヘッド10内に導入された処理ガスがガス吐出孔13から処理容器1内に吐出され、上部電極であるシャワーヘッド10と下部電極である基板載置台2との間の空間に処理ガスが供給される。
ガス供給部20は、プラズマ処理に必要な処理ガス、プラズマ生成ガス、パージガス等の複数のガスを供給する。処理ガスとしては、実施されるプラズマ処理に応じて適切なものが選択される。ガス供給部20は、複数のガス供給源およびガス供給配管を有し、ガス供給配管には、バルブ類およびマスフローコントローラのような流量制御器が設けられている。
上部電極であるシャワーヘッド10のほぼ中央には、給電ライン31を介して高周波電源30が接続されている。高周波電源30としては、周波数が10kHz~60MHzのものを用いることができる。高周波電源30から上部電極であるシャワーヘッド10に高周波電力が供給されることにより、上部電極であるシャワーヘッド10と下部電極である基板載置台2との間に容量結合プラズマが生成される。
給電ライン31の高周波電源30下流側には整合器32が接続されている。整合器32は高周波電源30の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるものである。
高周波電源30と上部電極との間、より詳しくは給電ライン31の整合器32下流側部分には、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制するように高周波電源の電圧波形を整形する電圧波形整形部33が設けられている。本実施形態において、電圧波形整形部33は、整合器32の下流側に設けられたキャパシタ34と、キャパシタ34の下流側から分岐し、ダイオード35を介して接地される接地回路36とを有する。キャパシタ34としては、高周波電源30から見てインピーダンスが低くなる程度の十分な容量を有するものが用いられる。キャパシタ34の代わりに、整合器32のブロッキングキャパシタを用いてもよい。
電圧波形整形部33は、キャパシタ34による電荷を蓄える機能と、接地回路36におけるダイオード35の整流機能により、高周波電源30がプラス電圧を出力した際に、電流がダイオード35を通過して接地側に流れるように構成される。このとき、高周波電源30が出力する電力はキャパシタ34に蓄えられる。これにより、上部電極電圧がプラス側に大きく振れる現象をなくすことができ、プラズマ電位の上昇が抑制される。すなわち、電圧波形整形部33を設けることにより、電圧波形整形部33が存在しない場合よりもプラズマ電位を低減することができる。一方、高周波電源30がマイナス電圧を出力した際には、高周波電源30が出力する電力およびキャパシタ34に蓄えられた電力はプラズマに投入される。この時の電力は上部電極のシースに投入されるため、基板Wへのイオン衝撃にはほとんど影響を与えない。
また、ダイオード35を有する電圧波形整形部33を設けた状態でプラズマを励起すると、上部電極であるシャワーヘッド10の近傍に偏って高密度プラズマが生成される。このため、シャワーヘッド10のガス吐出孔13から吐出されたガスが確実に高密度プラズマ領域を通過し、供給されたガスが効率的にプラズマ化またはラジカル化されプロセス領域に供給される。
処理容器1の底壁には排気口41が設けられており、排気口41には排気管42を介して排気装置43が接続されている。排気装置43は自動圧力制御バルブと真空ポンプを有し、排気装置43により処理容器1内を排気するとともに、処理容器1内を所望の真空度に保持することが可能となっている。
図示していないが、処理容器1の側壁には、処理容器1に対して基板Wを搬入出するための搬入出口が設けられており、この搬入出口はゲートバルブで開閉するように構成されている。
プラズマ処理装置100の構成部であるガス供給部20のバルブ類や流量制御器、高周波電源等は、制御部50により制御される。制御部50は、CPUを有する主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、および記憶装置とを有している。そして、記憶装置の記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいてプラズマ処理装置100の処理が制御される。
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置100における動作について説明する。
まず、ゲートバルブを開にして搬送装置(図示せず)により基板Wを搬入出口を介して処理容器1内に搬入し、基板載置台2上に載置する。搬送装置を退避させた後、ゲートバルブを閉じる。
次いで、処理容器1を調圧した後、処理容器1内に処理ガスを導入しつつ、高周波電源30から高周波電力を上部電極であるシャワーヘッド10に供給する。これにより、上部電極であるシャワーヘッド10と下部電極である基板載置台2との間に高周波電界が形成され、これらの間に容量結合プラズマが生成される。
このとき、一般的な容量結合プラズマ処理装置では、下部電極が接地されている場合、プラズマ電位は上部電極電位に大きく依存する。図2に示すように、上部電極が0Vの瞬間ではプラズマ電位がαVであったものが、図3に示すように、上部電極が100Vの瞬間では、プラズマ電位は100+αV程度となる。
プラズマ中のイオンは基板上面のシース電圧(プラズマ電位と基板電位の差分)で加速され、基板Wへ流入する。上部電極には図4に示すような正弦波が印加されるが、生成されるプラズマの強度を高くするため、高周波電源30より印加される電力を高くすると、プラス側にも高い電圧がかかる。このため、図5に示すように、プラス側の部分でプラズマ電位が引き上げられてシース電圧が高くなり、イオンの加速度が大きくなって基板Wへのイオン衝撃が強くなってしまう。
そこで、本実施形態では、整合器32下流側部分に、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制するように高周波電源の電圧波形を整形する電圧波形整形部33を設ける。
本実施形態では、電圧波形整形部33は、具体的には、キャパシタ34による電荷を蓄える機能と、接地回路36のダイオード35の整流機能により、以下のように動作する。まず、高周波電源30がプラス電圧を出力した際には、電流はダイオード35を通過して接地側に流れる。このとき、高周波電源30が出力する電力はキャパシタ34に蓄えられる。これにより、上部電極電圧がプラス側に大きく振れる現象をなくすことができ、プラズマ電位の上昇が抑制される。このため、基板Wに対するイオンの衝撃を低減できる。一方、高周波電源30がマイナス電圧を出力した際には、高周波電源30が出力する電力およびキャパシタ34に蓄えられた電力はプラズマに投入される。この時の電力は上部電極のシースに投入されるため、基板Wへのイオン衝撃にはほとんど影響を与えない。
図6は、電圧波形整形部33を設けた図1のプラズマ処理装置と電圧波形整形部33を設けない一般的な容量結合プラズマ処理装置の上部電極電圧波形を示す図である。この図に示すように、電圧波形整形部33を設けることにより、電圧波形整形部33を設けない場合に生じていた、上部電極電圧がプラス側に大きく振れる現象をなくすことができ、プラズマ電位の上昇が抑制されることがわかる。これにより、基板Wに対するイオンの衝撃を抑制することができる。すなわち、プラズマの強度の制御と基板Wに対するイオンの衝撃の抑制とを独立して行うことができる。
図7は、電圧波形整形部33を設けた図1のプラズマ処理装置と電圧波形整形部33を設けない一般的な容量結合プラズマ処理装置のイオンを加速するシース電圧を簡易的な計算で導出した結果を示す図である。この図に示すように、電圧波形整形部33を設けることによりシース電圧が0V近傍まで低下し、基板Wに対するイオンの衝撃を低減できることがわかる。
次に、電圧波形整形部33を設けた図1のプラズマ処理装置と電圧波形整形部33を設けない一般的な容量結合プラズマ処理装置のイオンエネルギーを実測した結果について説明する。図8は高周波電源30の出力パワーが100Wのときのイオンのエネルギー分布を示し、図9は高周波電源30の出力パワーが500Wのときのイオンのエネルギー分布を示す。これらの図に示すように、電圧波形整形部33を設けることにより、イオンエネルギーが低減することが実際の評価でも確認された。
また、ダイオード35を有する電圧波形整形部33を設けた状態でプラズマを励起すると、上部電極がプラス側に振れないため、図10に示すように、高密度プラズマ領域Pは上部電極であるシャワーヘッド10近傍に偏って生成される。このため、シャワーヘッド10のガス吐出孔13から吐出されたガスが確実に高密度プラズマ領域Pを通過し、供給されたガスが効率的にプラズマ化またはラジカル化されプロセス領域に供給される。また、高周波電源30からの電力は、シャワーヘッド10の近傍に偏って生成された高プラズマ領域Pに投入されるので、電力面でも高効率である。
これに対し、電圧波形整形部33を設けない場合は、図11に示すように、上部電極近傍の高密度プラズマ領域Pの他、下部電極である基板載置台2側にも高密度プラズマ領域P´が生成され、投入される電力は高密度プラズマ領域Pと高密度プラズマ領域P´に分散される。このため、シャワーヘッド10のガス吐出孔13から吐出されたガスが確実に通過する上部電極近傍の高密度プラズマ領域Pの密度は、電圧波形整形部33を設けた場合に比べ低減してしまう。したがって、ラジカル生成の効率が低下してしまう。
さらに、図12に示すように、特許文献1と同様、下部電極である基板載置台2に高周波電源30´を接続し、下部電極側の整合器32´の下流側にキャパシタ34´およびダイオード35´を介して接地される接地回路36´を有する電圧波形整形部33´を設けた場合には、基板載置台2側に偏ってプラズマP´のみが生成される。このため、一部のガスは高密度プラズマ領域P´と接することなくプロセス空間から排気されるため、ラジカル生成の効率が低下してしまう。
以上のように、本実施形態では、基板Wへのイオン衝撃を抑制しつつ、効率良くプラズマを生成してプラズマ処理を行うことができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図13は、第2の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。
第2の実施形態に係るプラズマ処理装置101は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置100と同様、基本的な実施形態である。本実施形態のプラズマ処理装置101は、第1の実施形態の電圧波形整形部33の代わりに、構造が異なる電圧波形整形部331を設けた点のみがプラズマ処理装置100とは異なっている。したがって、図13中、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
電圧波形整形部331は、給電ライン31の整合器32下流側部分に設けられ、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制するように高周波電源の電圧波形を整形する機能を有する。本実施形態においては、電圧波形整形部331は、整合器32の下流側に設けられたキャパシタ34と、キャパシタ34の下流側から分岐し、スイッチング素子37を介して接地される接地回路361とを有する。すなわち、本実施形態では、上部電極に正電圧が印加された際に選択的に接地側へ電流を流す機能を有する素子として、第1の実施形態のダイオード35の代わりにスイッチング素子37が設けられている。キャパシタ34として、整合器32のブロッキングキャパシタを用いてもよい。また、スイッチング素子37は、メカニカルリレーでも、トランジスター等の半導体スイッチでもよい。
電圧波形整形部331は、キャパシタ34による電荷を蓄える機能と、接地回路361におけるスイッチング素子37の開閉機能により、高周波電源30がプラス電圧を出力した際に、電流が接地側に流れるようにすることができる。すなわち、スイッチング素子37を例えば電圧波形が0Vに近づいた時点で開閉し、高周波電源30がプラス電圧を出力した際に電流が接地側に流れるようにすることにより、第1の実施形態におけるダイオード35と同じ機能を持たせることができる。このとき、高周波電源30が出力する電力はキャパシタ34に蓄えられる。これにより、上部電極電圧がプラス側に大きく振れる現象をなくすことができ、プラズマ電位の上昇が抑制される。一方、高周波電源30がマイナス電圧を出力した際には、高周波電源30が出力する電力およびキャパシタ34に蓄えられた電力はプラズマに投入される。この時の電力は上部電極のシースに投入されるため、基板Wへのイオン衝撃にはほとんど影響を与えない。
図14は、(a)電圧波形整形部331を設けない一般的な容量結合プラズマ処理装置の上部電極の電圧波形と、(b)電圧波形整形部331のスイッチング素子37を適切に開閉した場合の上部電極の電圧波形とを示す図である。この図に示すように、電圧波形整形部331のスイッチング素子37を適切に開閉することにより、上部電極電圧がプラス側に大きく振れる現象をなくすことができ、プラズマ電位の上昇が抑制されることがわかる。これにより、基板Wに対するイオンの衝撃を抑制することができる。
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、供給されたガスが効率的にプラズマ化またはラジカル化されプロセス領域に供給される。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
図15は、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。
第3の実施形態に係るプラズマ処理装置102は、第1の実施形態の電圧波形整形部33の代わりに、上部電極に印加される電圧を調整する電圧調整部としてツェナーダイオード381を有する電圧波形整形部332を設けた点のみが第1の実施形態のプラズマ処理装置100とは異なっている。したがって、図15中、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
電圧波形整形部332は、給電ライン31の整合器32下流側部分に設けられ、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制しつつ、上部電極の正電圧の上限が任意に決定された電圧波形になるように電圧波形を整形する機能を有する。本実施形態において、電圧波形整形部332は、整合器32の下流側に設けられたキャパシタ34と、キャパシタ34の下流側から分岐する接地回路362とを有する。接地回路362は、ダイオード35およびダイオード35と直列に設けられた電圧調整部としてのツェナーダイオード381を有し、これらを介して接地される。
ツェナーダイオード381は、電圧が一定値(ツェナー電圧Vz)になると、それ以上電圧がかからないように電流を流し始める機能を有するものである。この機能により、ダイオード35の機能を緩和して、上部電極(シャワーヘッド10)の正側(プラス側)電圧の上限を任意に決めることができる。すなわち、ツェナー電圧Vzを調整することにより、上部電極に印加される正電圧を任意に変化させて、プラズマ電位を調整し、基板Wに供給されるイオンエネルギーを適度に調整することができる。
図16は、図15のダイオード35およびツェナーダイオード381を設けた接地回路362を有するプラズマ処理装置において、ツェナーダイオード381としてツェナー電圧Vzが39Vのものを用いた場合における上部電極の電圧波形を示す図である。この図に示すように、ダイオード35およびツェナーダイオード381を有する接地回路362を用いることにより、上部電極の正側(プラス側)の最大電圧をツェナー電圧Vz程度にできることがわかる。
図17は、図15のプラズマ処理装置において、イオンを加速するシース電圧を簡易的な計算で導出した結果を示す図である。この図に示すように、ダイオード35およびツェナーダイオード381を設けた接地回路362を有する電圧波形整形部332を設けることによりシース電圧がツェナー電圧Vzの近傍の値をとり、基板Wに対するイオンエネルギーを調整できることがわかる。
また、本実施形態においても、上部電極のプラス側の電圧が抑制される効果を有するため、供給されたガスが効率的にプラズマ化またはラジカル化されるという効果が維持される。
本実施形態において、異なるツェナー電圧に切替可能にして上部電極の正側電圧の上限値を切り替え可能にした電圧波形整形部333としてもよい。図18は、そのような電圧波形整形部333を示す図である。電圧波形整形部333は、ダイオード35の下流側に、スイッチ39により切替可能な、ツェナー電圧が異なる接地された複数の線路を有する接地回路363を有する。本例では、複数の線路として、ツェナーダイオードを設けない(Vz=0)第1の線路382a、第1のツェナーダイオード381a(Vz=40)を設けた第2の線路382b、第2のツェナーダイオード381b(Vz=80)を設けた第3の線路382c、第3のツェナーダイオード381c(Vz=120)を設けた第3の線路382dを有する。なお、ここでの各線路のツェナー電圧Vzは例示であって、これらに限定されるものではない。
このように、各線路にツェナー電圧Vzが異なるツェナーダイオードを設けてスイッチにより切り替えるようにすることにより、上部電極(シャワーヘッド10)の正側電圧の上限を複数段階に切り替えることができる。これにより、スイッチの切り替えのみで、基板Wに供給されるイオンエネルギーを制御することができる。
なお、本実施形態において、ダイオード35の代わりに第2の実施形態のスイッチング素子を用いてもよい。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。
図19は、第4の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。
第4の実施形態に係るプラズマ処理装置103は、電圧調整部として抵抗383を有する電圧波形整形部334を設けた点のみが第1の実施形態のプラズマ処理装置100とは異なっている。したがって、図19中、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
電圧波形整形部334は、給電ライン31の整合器32下流側部分に設けられ、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制しつつ、上部電極の正電圧の上限が任意に決定された電圧波形になるように電圧波形を整形する機能を有する。本実施形態において、電圧波形整形部334は、整合器32の下流側に設けられたキャパシタ34と、キャパシタ34の下流側から分岐する接地回路364とを有する。接地回路364は、ダイオード35およびダイオード35と直列に設けられた電圧調整部としての抵抗383を有し、これらを介して接地される。
抵抗383により、上部電極(シャワーヘッド10)の正側(プラス側)電圧の上限を任意に決めることができる。すなわち、抵抗383の抵抗値を調整することにより、上部電極に印加される正電圧を任意に変化させて、プラズマ電位を調整し、基板Wに供給されるイオンエネルギーを適度に調整することができる。これにより、プラズマ処理に応じて、基板Wに対し適度な量のイオンを供給することができる。
また、本実施形態においても、上部電極のプラス側の電圧が抑制される効果を有するため、供給されたガスが効率的にプラズマ化またはラジカル化されるという効果が維持される。
本実施形態において、抵抗を可変抵抗にしてもよい。図20は、抵抗383の代わりに可変抵抗384を設けた接地回路365を有する電圧波形整形部335を示す図である。このように可変抵抗384を設けることによりその抵抗値を切り替えるのみで、基板Wに供給されるイオンエネルギーを制御することができる。
なお、本実施形態において、ダイオード35の代わりに第2の実施形態のスイッチング素子を用いてもよい。
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。
図21は、第5の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。
第5の実施形態に係るプラズマ処理装置104は、電圧調整部として電源385を有する電圧波形整形部336を設けた点のみが第1の実施形態のプラズマ処理装置100とは異なっている。したがって、図21中、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
電圧波形整形部336は、給電ライン31の整合器32下流側部分に設けられ、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制しつつ、上部電極の正電圧の上限が任意に決定された電圧波形になるように電圧波形を整形する機能を有する。本実施形態において、電圧波形整形部336は、整合器32の下流側に設けられたキャパシタ34と、キャパシタ34の下流側から分岐する接地回路366とを有する。接地回路366は、ダイオード35およびダイオード35と直列に設けられた電圧調整部としての電源385を有し、これらを介して接地される。本例では電源385として直流電源を設けている。
電源385により、上部電極(シャワーヘッド10)の正側(プラス側)電圧の上限を任意に決めることができる。すなわち、電源385の電圧を調整することにより、上部電極に印加される正電圧を任意に変化させて、プラズマ電位を調整し、基板Wに供給されるイオンエネルギーを適度に調整することができる。
また、本実施形態においても、上部電極のプラス側の電圧が抑制される効果を有するため、供給されたガスが効率的にプラズマ化またはラジカル化されるという効果が維持される。
本実施形態において、電源を可変電源にしてもよい。図22は、電源385の代わりに可変電源386を設けた接地回路367を有する電圧波形整形部337を示す図である。このように可変電源386を設けることにより、その抵抗値を切り替えるのみで、基板Wに供給されるイオンエネルギーを制御することができる。
なお、本実施形態において、ダイオード35の代わりに第2の実施形態のスイッチング素子を用いてもよい。
<第6の実施形態>
次に、具体的な実施形態である第6の実施形態について説明する。
本実施形態では、第1の実施形態に示した基本的構造のプラズマ処理装置を成膜装置に適用した例を示す。
図23は、第6の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
プラズマ処理装置105は、基板Wに対してプラズマCVDによりTi膜を成膜するプラズマCVD装置であり、容量結合プラズマ処理装置として構成されている。基板Wとしては、例えば半導体ウエハを挙げることができるが、これに限定されない。
プラズマ処理装置105は、略円筒状をなす金属製の処理容器111を有している。処理容器111は、本体の底壁111bの中央部に形成された円形の穴150を覆うように下方に向けて突出する排気室151を有している。排気室151の側面には排気管152が接続されており、この排気管152には自動圧力制御バルブおよび真空ポンプを有する排気装置153が設けられている。この排気装置153により、処理容器111内を排気するとともに、処理容器111内を所望の真空度に保持することが可能となっている。
処理容器111の側壁には、処理容器111に対して基板Wを搬入出するための搬入出口157が設けられており、この搬入出口157はゲートバルブ158で開閉するように構成されている。
処理容器111の内部には、基板Wを水平に載置するための基板載置台112が設けられている。基板載置台112は、Ni等の金属で構成された本体113と、その内部に設けられた下部電極114およびヒーター115とを有している。下部電極114は接地されている。ヒーター115はヒーター電源116から給電されることにより発熱し、載置された基板Wを所望の温度に加熱する。基板載置台112は、本体113の下部中央から下方に延びる円筒状の支持部材117により支持されており、支持部材117は絶縁部材118を介して排気室151の底壁に取り付けられている。
処理容器111の天壁111aには、開口が形成されており、開口には絶縁部材119を介してシャワーヘッド120が基板載置台112に対向するように嵌め込まれている。シャワーヘッド120は金属製であり、全体形状が円筒状をなし、上部電極を含んでいる。図示の例ではシャワーヘッド120自体が上部電極として機能するが、シャワーヘッド120の一部が上部電極であってもよい。シャワーヘッド120は、ベース部材121とシャワープレート122とを有しており、シャワープレート122は円板状をなし、その外周にはフランジ部122aが形成されており、フランジ部122aは円環状をなす中間部材123を介してベース部材121にねじ止めされている。そして、ベース部材121とシャワープレート122との間にガス拡散空間124が形成されている。ベース部材121はその外周にフランジ部121aが形成されており、このフランジ部121aが絶縁部材119に支持されている。シャワープレート122には複数のガス吐出孔125が形成されている。ベース部材121の上部中央付近には一つのガス導入孔126が形成されている。ガス導入孔126には、後述するガス供給部130に接続されたガス配管130aが接続され、ガス供給部130から供給された処理ガスがシャワーヘッド120を介して処理容器111内にシャワー状に導入される。すなわち、上部電極であるシャワーヘッド120と下部電極114を含む基板載置台112との間の空間に処理ガスが供給される。
また、シャワーヘッド120のベース部材121には、シャワーヘッド120を加熱するためのヒーター147が設けられている。このヒーター147はヒーター電源(図示せず)から給電され、シャワーヘッド120を所望の温度に加熱する。ベース部材121の上部に形成された凹部には断熱部材149が設けられている。
ガス供給部130は、TiClガス、Arガス、およびHガスを個別的に供給する複数のガス供給源と、これら複数のガス供給源から各ガスを供給するための複数のガス供給配管とを有している。各ガス供給配管には、開閉バルブと、マスフローコントローラのような流量制御器とが設けられており(いずれも図示せず)、これらにより、上記ガスの供給・停止および各ガスの流量制御を行うことができるようになっている。これらガスの他にNガスやNHガス等の他のガスを含んでいてもよい。
上部電極であるシャワーヘッド120には、第1の実施形態と同様、給電ライン31を介して高周波電源30が接続されている。高周波電源30としては、周波数が10kHz~60MHzのものを用いることができる。高周波電源30から上部電極であるシャワーヘッド120に高周波電力が供給されることにより、上部電極であるシャワーヘッド120と基板載置台112に含まれる下部電極114との間に容量結合プラズマが生成される。給電ライン31の高周波電源30下流側には整合器32が接続されている。
第1の実施形態と同様、給電ライン31の整合器32下流側部分には、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制するように高周波電源の電圧波形を整形する電圧波形整形部33が設けられている。電圧波形整形部33は、整合器32の下流側に設けられたキャパシタ34と、キャパシタ34の下流側から分岐し、ダイオード35を介して接地される接地回路36とを有する。キャパシタ34としては、高周波電源30から見てインピーダンスが低くなる程度の十分な容量を有するものが用いられる。キャパシタ34の代わりに、整合器32のブロッキングキャパシタを用いてもよい。
電圧波形整形部33は、第1の実施形態と同様、キャパシタ34による電荷を蓄える機能と、接地回路36におけるダイオード35の整流機能により、高周波電源30がプラス電圧を出力した際に、電流がダイオード35を通過して接地側に流れるように構成される。これにより、プラズマ電位の上昇が抑制され、基板Wに対するイオンの衝撃が抑制される。
プラズマ処理装置105の構成部であるガス供給部130のバルブ類や流量制御器、高周波電源等は、制御部160により制御される。制御部160は、第1の実施形態の制御部50と同様に構成される。
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置105における動作について説明する。
まず、ゲートバルブ158を開にして、基板Wを、搬入出口157を介して処理容器111内へ搬入し、予め定められた温度に保持された基板載置台112に載置する。そして、処理容器111内の圧力を調整するとともに、プラズマ生成ガスであるArガス、還元ガスであるHガス、Ti原料ガスであるTiClガスを図示しないプリフローラインに流してプリフローを行う。次いで、ガス流量および圧力を同じに保ったまま成膜用のラインに切り替え、これらのガスをシャワーヘッド120を介して処理容器111内に導入する。
そして、Arガス、Hガス、TiClガスを処理容器111に導入したままの状態で、高周波電源30をオンにし、プラズマを生成して、プラズマCVDにより、基板Wの表面にTi膜を成膜する。
このときの条件としては、基板載置台112の温度を300~700℃、処理容器111内の圧力を13.3~1333Pa(0.1~10Torr)の範囲とすることができる。
プラズマCVDによるTi膜の成膜は、プラズマによるイオン衝撃により、下地膜表面を壊し、ダングリングボンドを形成させ、成膜原料(プリカーサー)であるTiClの解離種であるTiClまたはTiClをダングリングボンド形成部分に吸着させることによりなされる。
SiまたはSiGeのような結合エネルギーが小さい下地にTi膜を成膜する場合は、イオン衝撃は小さくてよく、プラズマのイオンエネルギーを極力低下させることが望ましい。
また、表面にSiまたはSiGeと、他の材料(例えばSiNまたはSiO)とを有する基板において、SiまたはSiGe上に選択的にTi膜を成膜したいという要請がある。このような場合にもイオンエネルギーを低下させることが有効である。
すなわち、SiおよびSiGeの結合エネルギーは、それぞれ327kJ/molおよび301kJ/molと小さいのに対し、SiNおよびSiOの結合エネルギーは、それぞれ798kJ/molおよび439kJ/molとSiやSiGeに比べて大きい。そのため、イオンエネルギーを、SiまたはSiGeのみが解離できるように低下させることにより、SiまたはSiGeへの選択成膜が実現できると考えられる。
なお、Ti膜の選択成膜は、SiおよびSiGeに限らず、表面に結合エネルギーが相対的に小さい第1の材料部分と、相対的に結合エネルギーが大きい第2の材料部分とを有する場合であれば、第1の材料部分に選択的にTi膜を成膜することができる。
イオンエネルギーを低下させる手段としては、一般的には、処理容器内の圧力を高圧にする、高周波パワーを下げる等が考えられるが、TiClガスを用いたプラズマ処理では、その分解に電力を消費するため、高圧・低パワーでは放電を維持し難い。
これに対し、本実施形態では、第1の実施形態と同様、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制するように高周波電源30の電圧波形を整形する電圧波形整形部33を用いる。具体的には、キャパシタ34によりバイアスを発生させてVppを維持し、接地回路36におけるダイオード35の整流機能により、上部電極電圧がプラス側に大きく振れる現象をなくして、プラズマ電位の上昇を抑制する。これにより、プラズマ生成条件を変えることなく基板Wに対するイオンエネルギーを低下させることができ、所望の成膜処理を実現させることができる。
また、高周波電源30の周波数が高い場合は、電子温度が低く放電マージンが低下してしまうため、高周波電源30の周波数は10kHz~60MHz程度、例えば450kHzが好ましい。
次に、電圧波形整形部33を用いた装置と用いない装置により、基板表面のSiおよびSiN上にTi膜を成膜した実験結果について説明する。ここでは、SiおよびSiN表面の自然酸化膜をドライ処理で除去した後、Ti成膜を行った。
このときの条件は以下の通りである。
高周波電力周波数:450kHz
高周波パワー:40W
圧力:2.0Torr
電極間ギャップ:13.5mm
基板載置台温度:450℃
ガス:TiCl/Ar/H=25/2400/1000sccm
図24は、電圧波形整形部33を用いた図23のプラズマ処理装置と電圧波形整形部33を用いないプラズマ処理装置における、Si上にTi膜を成膜したときの成膜時間と膜厚との関係を示す図である。この図に示すように、Si上では、電圧波形整形部33を用いても用いなくても膜厚はほぼ同等であることがわかる。
一方、図25は、電圧波形整形部33を用いた図23のプラズマ処理装置と電圧波形整形部33を用いないプラズマ処理装置における、SiN上にTi膜を成膜したときの成膜時間と膜厚との関係を示す図である。この図に示すように、SiN上では、電圧波形整形部33を用いることにより、膜厚が約6割減少することが確認された。
図26は、以上の結果からSi上とSiN上でのTi膜の膜厚の選択比(Si/SiN選択比)の平均値を示す図である。この図に示すように、Si/SiN選択比が、電圧波形整形部33を用いない場合に1.5~1.6程度であったものが、電圧波形整形部33を用いることにより3.3~3.6と大きく改善することが確認された。また、図には示されてはいないが、基板のセンターについては、Si/SiN選択比が1.6から4.9に改善され、さらに改善幅が大きいことが確認された。
なお、本実施形態においても、電圧波形整形部33を設けた状態でプラズマを励起することにより、プラズマは上部電極であるシャワーヘッド120近傍に偏って生成される。このため、吐出されたガスは確実に高密度プラズマ領域を通過するため、効率的にプラズマ化またはラジカル化することが可能となる。
本実施形態においても、正電圧が印加された際に選択的に接地側へ電流を流す素子として、ダイオードの代わりに第2の実施形態のようにスイッチング素子を用いてもよい。また、接地回路として、ダイオードやスイッチング素子のような正電圧が印加された際に選択的に接地側へ電流を流す素子に加えて、第3の実施形態から第5の実施形態のように、ツェナーダイオード、抵抗、電源のような電圧調整部を設けてもよい。これにより、下地によって適切にイオンエネルギーの制御を行うことができ、成膜性、特に選択成膜性を制御することができる。
<第7の実施形態>
次に、具体的な実施形態である第7の実施形態について説明する。
図27は、第7の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
本実施形態のプラズマ処理装置105aは、高周波電源30の代わりに高周波パルス電源60を用いた点のみが図23の第6の実施形態に係るプラズマ処理装置105と異なっている。他は図23のプラズマ処理装置と同じ構成なので同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図27のプラズマ処理装置105aにより、第6の実施形態と同様にTi膜の選択成膜を実現することに加え、パルス状の高周波電力を用いてTi膜の腐食を抑制する。
上記第6の実施形態では、電圧波形整形部33を用いてプラズマ電位の上昇を抑制することにより、プラズマ生成条件を変えることなく基板Wに対するイオンエネルギーを、結合エネルギーが小さい第1の材料部分のみが解離できるように低下させ、選択成膜を実現する。具体例を挙げると、イオンエネルギーを、結合エネルギーが相対的に大きいSiNまたはSiOは解離せず、結合エネルギーが相対的に小さいSiまたはSiGeのみが解離するように低下させて選択成膜を実現する。
このように電圧波形整形部33を用いたTi膜の選択成膜でTi膜を厚膜化しようとする場合、高周波電力を高パワーにするか、または成膜時間を延長することが考えられる。しかし、いずれの場合も、膜中のCl残留濃度が高くなって膜の腐食が進行してしまうことが見出された。腐食していないTi膜では、Ti膜の表面側でO、N、Clが検出され、酸化層がTi膜の表面に生成されているが、Ti膜が腐食した場合は、膜中からO、N、Clが検出され、Ti膜と下地のSi膜との間に酸化層が生成された状態となる。
そこで、本実施形態では、高周波パルス電源60を用いてパルス状の高周波電力を上部電極であるシャワーヘッド120に印加してプラズマを生成する。パルス状の高周波電力は、典型的には、高周波電力を周期的に印加し、高周波電力がONの状態とOFFの状態を繰り返し出現させる。
このように、パルス状の高周波電力を供給することにより、Ti膜の選択成膜においてTi膜を厚膜化するために、高パワー化または成膜時間を長時間化しても、膜の腐食を抑制することができる。
このようにパルス状の高周波電力を供給することによりTi膜の腐食が抑制されるメカニズムについては、以下のように想定される。
パルスがOFFの時間では、TiClが成膜ではなく、膜表面の弱いCl結合のエッチングに寄与する。また、成膜レートも遅くなるため脱Clの時間を確保できる。
さらに、パルスがOFFになった後のアフターグロー領域ではシースが消失し、電子がイオンに取り込まれてイオン-イオンプラズマが生じている。また、パルスOFFの瞬間には基板は負に帯電しているため、プラズマ中の正イオンであるH3+イオンが基板に向かうこととなる。この結果、H3+がTi膜中のClを還元し、腐食を抑制する効果が大きくなると考えられる。
高周波パルス電源60の高周波の周波数は、第6の実施形態の高周波電源30の周波数と同様、10kHz~60MHz程度が好ましく、例えば450kHzである。また、パルスの周波数は0.1~500kHzが好ましく、例えば10kHzである。また、パルスのデューティ比は1~99%の範囲とすることができ、好ましくは、10~90%である。
高周波電力を印加した際の上部電圧波形については、連続波(CW)の場合は図28のようになるのに対して、パルス状の高周波電力を印加した場合は図29のようになる。図29の(a)はデューティ比が30%、(b)はデューティ比が50%、(c)はデューティ比が80%の場合である。なお、高周波電力の周波数は450kHz、パルス周波数は10kHzである。
なお、パルス状の高周波電力は、上記のように完全なON・OFFでなくてもよく、パワーが大きい状態と小さい状態を繰り返すものであってもよい。
次に、連続波の高周波電力を印加する図23の装置およびパルス状の高周波電力を印加する図27の装置から、電圧波形整形部33を除いた装置により、基板表面のSiおよびSiN上にTi膜を成膜した実験結果について説明する。ここでは、SiおよびSiN表面の自然酸化膜をドライ処理で除去した後、Ti成膜を行った。
ここでは、パルス状の高周波電力を印加する場合は、デューティ比を80%および50%とした。成膜時間は、連続波の場合は360secとし、パルス状の高周波電力の場合は、高周波電力が印加されている時間が同じになるように、デューティ比が80%の場合は450sec、デューティ比が50%の場合は720secとした。
他の条件は以下の通りである。
高周波電力周波数:450kHz
高周波パワー:100W
圧力:4.0Torr
電極間ギャップ:13.5mm
基板載置台温度:450℃
ガス:TiCl/Ar/H=25/2400/1000sccm
パルス周波数:10kHz
成膜後、基板を処理容器から搬出し、Ti膜の腐食の有無を確認するとともに、シート抵抗を測定した。その結果、連続波の場合はTi膜の腐食が進み、膜のシート抵抗が510.1Ω/sq.であった。これに対し、デューティ比80%のパルスの場合はTi膜の腐食は見られたが連続波の場合よりも抑制され、シート抵抗は276.4Ω/sq.であった。また、デューティ比50%のパルスの場合はTi膜の腐食は見られなかった。
すなわち、連続波の高周波電力では腐食が進むのに対し、パルス状の高周波電力により、Ti膜の腐食が抑制され、さらに、パルスのデューティ比を低下させることにより、Ti膜の腐食がより一層抑制されることが確認された。
なお、上の実験では、電圧波形整形部を設けない装置を用いたため、Si膜上およびSiN膜上に同程度の膜厚のTi膜が形成され、選択性は見られなかった。
次に、電圧波形整形部33を有し連続波の高周波電力を印加する図23の装置および電圧波形整形部33を有しパルス状の高周波電力を印加する図27の装置により、基板表面のSiおよびSiN上にTi膜を成膜した実験結果について説明する。ここでは、SiおよびSiN表面の自然酸化膜をドライ処理で除去した後、Ti成膜を行った。
ここでは、条件A、Bとして、パワー40Wの連続波の高周波電力を印加し、処理時間をそれぞれ900secおよび1200secとした。また、条件Cとして、デューティ比を20%のパルス状の高周波電力を印加し、高周波パワーを60W、処理時間を1500secとした。
他の条件は以下の通りである。
高周波電力周波数:450kHz
圧力:6.0Torr
電極間ギャップ:13.5mm
基板載置台温度:450℃
ガス:TiCl/Ar/H=25/2400/1000sccm
パルス周波数:10kHz
成膜後、基板を処理容器から搬出し、各条件におけるSi膜上のTi膜の膜厚とSiN膜上のTi膜の膜厚を測定した。
その結果、条件Aでは、Si膜上およびSiN膜上のTi膜の平均厚さはそれぞれ5.7nm、0.8nmであり、Si/SiN選択比の平均値は7.2であった。条件Bでは、Si膜上およびSiN膜上のTi膜の平均厚さはそれぞれ6.2nm、0.8nmであり、Si/SiN選択比の平均値は7.8であった。条件Cでは、Si膜上およびSiN膜上のTi膜の平均厚さはそれぞれ8.15nm、1.07nmであり、Si/SiN選択比の平均値は7.63であった。このように、いずれの場合も、電圧波形整形部33を用いているためSi/SiN選択比が高かった。
次に、Ti膜の腐食を確認したところ、条件Aでは腐食は確認されなかったが、処理時間を長くした条件Bでは腐食が確認された。パルス状の高周波電力を印加した条件Cでは、条件Bよりも膜厚が厚いにもかかわらず、Ti膜の腐食が確認されなかった。また、シート抵抗を確認したところ、条件Aでは336.2Ω/sq.であったのに対し、条件Cでは259.1Ω/sq.であり、パルス状の高周波電力を印加して膜の腐食が抑制された結果、シート抵抗が低下していることが確認された。
以上の結果から、電圧波形整形部33とパルス状の高周波電力を併用することにより、Si膜上に高選択比でTi膜を成膜できる効果を維持し、腐食を抑制しつつ、Si膜上のTi膜の膜厚を厚くできることが確認された。
<第8の実施形態>
次に、具体的な実施形態である第8の実施形態について説明する。
本実施形態では、第1の実施形態に示した基本的構造のプラズマ処理装置をエッチング装置に適用した例を示す。
図30は、第8の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す断面図である。
本実施形態に係るプラズマ処理装置106は、基板Wに存在する膜をエッチングするエッチング装置であり、容量結合プラズマ処理装置として構成されている。基板Wとしては、例えば半導体ウエハを挙げることができるが、これに限定されない。
プラズマ処理装置106は、略円筒状をなす金属製の処理容器201を有している。この処理容器201は保安接地されている。
処理容器201の底部には、セラミックス等からなる絶縁板212を介して円柱状をなす金属製の支持台214が配置され、この支持台214の上に例えばアルミニウムからなる円柱状の基板載置台216が設けられている。基板載置台216は下部電極を構成し、接地されている。基板載置台216は上面に基板Wを静電力で吸着保持する静電チャック218を有している。この静電チャック218は、絶縁体の内部に電極220が設けられた構造を有するものであり、電極220に直流電源222から直流電圧を印加することにより、クーロン力等の静電力により基板Wが吸着保持される。
基板載置台216の上面の静電チャック218の周囲部分には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング224が配置されている。基板載置台216および支持台214の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材226が設けられている。
支持台214の内部には冷媒室228が設けられている。この冷媒室には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管230a,230bを介して冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によって基板載置台216上の基板Wの処理温度が制御される。
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン232を介して静電チャック218の上面と基板Wの裏面との間に供給される。
下部電極である基板載置台216の上方には、基板載置台216と対向するように上部電極であるシャワーヘッド234が設けられている。そして、上部電極であるシャワーヘッド234と下部電極である基板載置台216の空間がプラズマ生成空間となる。
上部電極であるシャワーヘッド234は、絶縁性遮蔽部材243を介して、処理容器201の上部に支持されている。シャワーヘッド234は、基板載置台216との対向面を構成しかつ多数のガス吐出孔237を有する電極板236と、この電極板236を着脱自在に支持する水冷構造の電極支持体238とによって構成されている。電極支持体238の内部には、ガス拡散室240が設けられ、このガス拡散室240からはガス吐出孔237に連通する多数のガス通流孔241が下方に延びている。電極支持体238にはガス拡散室240へ処理ガスを導くガス導入孔242が形成されており、このガス導入孔242には後述するガス供給部250に接続されたガス配管251が接続され、ガス供給部250から供給された処理ガスがシャワーヘッド234を介して処理容器201内にシャワー状に吐出される。すなわち、処理ガスは、上部電極であるシャワーヘッド234と、下部電極である基板載置台216との間に供給される。
ガス供給部250は、ArガスおよびOガスを含む複数のガスを個別的に供給するガス供給源と、これら複数のガス供給源から各ガスを供給するための複数のガス供給配管とを有している。なお、図中には、ガス供給部250にArとOしか描いていないが、ArガスとOガス以外に、エッチングに必要な他のガスが含まれていてもよい。他のガスとしては、例えば、CF、C、CHF、HBr、Cl等のハロゲン含有ガスを挙げることができる。各ガス供給配管には、開閉バルブと、マスフローコントローラのような流量制御器とが設けられており(いずれも図示せず)、これらにより、上記ガスの供給・停止および各ガスの流量制御を行うことができるようになっている。
処理容器201の底部には排気口260が設けられ、この排気口260に排気管262を介して排気装置264が接続されている。排気装置264は、自動圧力制御バルブおよび真空ポンプを有し、この排気装置264により、処理容器201内を排気するとともに、処理容器201内を所望の真空度に保持することが可能となっている。
処理容器201の側壁には、処理容器201に対して基板Wを搬入出するための搬入出口265が設けられており、この搬入出口265はゲートバルブ266で開閉するように構成されている。
上部電極であるシャワーヘッド234には、第1の実施形態と同様、給電ライン31を介して高周波電源30が接続されている。高周波電源30としては、周波数が10kHz~60MHzのものを用いることができる。高周波電源30から上部電極であるシャワーヘッド234に高周波電力が供給されることにより、上部電極であるシャワーヘッド234と下部電極としての基板載置台216との間に容量結合プラズマが生成される。給電ライン31の高周波電源30下流側には整合器32が接続されている。
第1の実施形態と同様、給電ライン31の整合器32下流側部分には、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制するように高周波電源の電圧波形を整形する電圧波形整形部33が設けられている。電圧波形整形部33は、整合器32の下流側に設けられたキャパシタ34と、キャパシタ34の下流側から分岐し、ダイオード35を介して接地される接地回路36とを有する。キャパシタ34としては、高周波電源30から見てインピーダンスが低くなる程度の十分な容量を有するものが用いられる。キャパシタ34の代わりに、整合器32のブロッキングキャパシタを用いてもよい。
電圧波形整形部33は、第1の実施形態と同様、キャパシタ34による電荷を蓄える機能と、接地回路36におけるダイオード35の整流機能により、高周波電源30がプラス電圧を出力した際に、電流がダイオード35を通過して接地側に流れるように構成される。これにより、プラズマ電位の上昇が抑制され、基板Wに対するイオンエネルギーが低減される。
プラズマ処理装置106の構成部であるガス供給部250のバルブ類や流量制御器、高周波電源等は、制御部270により制御される。制御部270は、第1の実施形態の制御部50と同様に構成される。
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置106における動作について説明する。
まず、ゲートバルブ266を開とし、搬入出口265を介してエッチング対象膜を有する基板Wを処理容器201内に搬入し、基板載置台216上に載置する。そして、排気装置264により処理容器201内を排気し、圧力を調整するとともに、ガス供給部250からエッチングのための処理ガスとしてArガスおよびOガスを含むガスをシャワーヘッド234へ供給し、ガス吐出孔237を介して処理容器201内へ供給する。それと同時に高周波電源30をオンにし、プラズマを生成して基板Wのエッチング対象膜をプラズマエッチングする。
このときの条件としては、基板載置台216(静電チャック218)の温度を30℃以下、処理容器201内の圧力を0.133~133Pa(1~1000mTorr)、例えば67Pa(500mTorr)とすることができる。
Ar/O混合プラズマは、プラズマエッチングまたはプラズマアッシングに多用されており、その制御性を高めることは技術的に重要である。特にプラズマと基板との界面の反応が重要であり、界面でのイオンエネルギーの違いが表面反応およびプロセス結果に大きく影響する。
本実施形態では、第1の実施形態と同様、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧(プラス電圧)を抑制するように高周波電源30の電圧波形を整形する電圧波形整形部33を用いる。具体的には、キャパシタ34の電化蓄積機能によりバイアスを発生させ、接地回路36におけるダイオード35の整流機能により、上部電極電圧がプラス側に大きく振れる現象をなくして、プラズマ電位の上昇を抑制する。これにより、プラズマ状態を変えることなく基板Wに対するイオンエネルギーを低下させてエッチング性を制御することができる。基板載置台216(静電チャック218)の温度が30℃以下と低温である場合は、イオンエネルギーによるエッチングが支配的であるため、特にイオンエネルギーの低下によるエッチング制御性を高めることができる。
次に、電圧波形整形部33を用いた装置と用いない装置により、Ar/Oプラズマを用いてフォトレジストをプラズマエッチングした実験結果について説明する。
このときの条件は以下の通りである。
基板:300mmSiウエハ
高周波電力周波数:450kHz
高周波パワー:300W
圧力:800mTorr
ガス:Ar/O=1000/500sccm
電極間ギャップ:15mm
静電チャック温度:23℃~
フォーカスリング:Si(フローティング)
図31は、電圧波形整形部33を用いた図30のプラズマ処理装置と電圧波形整形部33を用いないプラズマ処理装置における、上部電極の電圧波形を示す図である。この図に示すように、電圧波形整形部33を用いることにより、上部電極のプラス側の電圧が低下していることがわかる。
図32は、電圧波形整形部33を用いた図30のプラズマ処理装置と電圧波形整形部33を用いないプラズマ処理装置における、各ウエハ位置(X方向およびY方向)におけるエッチングレートを示す図である。この図に示すように、電圧波形整形部33を用いることにより、エッチングレートが電圧波形整形部33を用いない場合の0.44倍となることが確認された。本実験における静電チャック温度は30℃以下と十分に低いため、Oラジカルよりもイオンエネルギーのエッチングが支配的であり、電圧波形整形部33を用いることによるエッチングレートの低下は、イオンエネルギーの低下による効果である。
次に、電圧波形整形部33を用いた図30のプラズマ処理装置と電圧波形整形部33を用いないプラズマ処理装置において、高周波パワーを100W、300W、500W、800Wと変化させて、上部電極であるシャワーヘッド234と下部電極である基板載置台216の間の中間の高さ位置におけるX方向およびY方向の電子密度を求めた。その結果を図33に示す。図33は、このときの高周波パワーと、X方向、Y方向の各位置での電子密度の平均値との関係を示す図である。この図に示すように、電圧波形整形部33を用いた場合も用いない場合も、電子密度(プラズマ密度)に大きな変化がないことが確認された。
以上の結果より、電圧波形整形部33を用いることにより、Ar/O混合プラズマによって、電子密度を大きく変えず、イオンエネルギーのみ低下させることが可能であり、制御性のよいプラズマエッチングを行えることが確認された。
なお、本実施形態においても、電圧波形整形部33を設けた状態でプラズマを励起することにより、プラズマは上部電極であるシャワーヘッド234近傍に偏って生成される。このため、吐出されたガスは確実に高密度プラズマ領域を通過するため、効率的にプラズマ化またはラジカル化することが可能となる。
本実施形態においても、正電圧が印加された際に選択的に接地側へ電流を流す素子として、ダイオードの代わりに第2の実施形態のようにスイッチング素子を用いてもよい。また、接地回路として、ダイオードやスイッチング素子のような正電圧が印加された際に選択的に接地側へ電流を流す素子に加えて、第3の実施形態から第5の実施形態のように、ツェナーダイオード、抵抗、電源のような電圧調整部を設けてもよい。これにより、イオンエネルギーの制御を行うことができ、プラズマエッチングの制御性をより高めることができる。
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
例えば、上記実施形態では、上部電極と下部電極の間にガスを導入するシャワーヘッドを上部電極として用いた例を示したが、ガス導入部を上部電極と別個に設けてもよい。また、上記実施形態の装置は例示に過ぎず、上部電極に高周波電力を印加し、下部電極を接地した容量結合タイプのプラズマ処理装置であれば適用することができる。また、基板として半導体ウエハを例示したが、半導体ウエハに限らず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
1,111,201;処理容器
2,216;基板載置台(下部電極)
10,120,234;シャワーヘッド(上部電極)
20,130,250;ガス供給部
30;高周波電源
33,331,332,333,334,335,336,337;電圧波形整形部
34;キャパシタ
35;ダイオード
36,361,362,363,364,365,366,367;接地回路
37;スイッチング素子
60;高周波パルス電源
100,101,102,103,104,105,105a,106;プラズマ処理装置
112;基板載置台
114;下部電極
381,381a、381b、381c;ツェナーダイオード
383;抵抗
384;可変抵抗
385;電源
386;可変電源
W;基板

Claims (18)

  1. 基板に対してプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
    処理容器と、
    前記処理容器内に設けられ、基板が載置される基板載置台と、
    前記基板載置台に含まれる接地された下部電極と、
    前記下部電極に対向して設けられた上部電極と、
    処理ガスを前記上部電極と前記基板載置台との間に供給するガス供給部と、
    前記上部電極に高周波電力を印加して前記処理ガスのプラズマを生成する高周波電源と、
    前記高周波電源と前記上部電極の間に設けられ、上部電極に印加される高周波電圧のうち正電圧を抑制するように高周波電源の電圧波形を整形する電圧波形整形部と、
    を備える、プラズマ処理装置。
  2. 前記電圧波形整形部は、前記高周波電源の給電ラインに設けられたキャパシタと、前記給電ラインの前記キャパシタの下流側から分岐しダイオードを介して接地される接地回路と、を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
  3. 前記電圧波形整形部は、前記高周波電源の給電ラインに設けられたキャパシタと、前記給電ラインの前記キャパシタの下流側から分岐し、前記上部電極に正電圧が印加された際に選択的に接地側へ電流を流すようにオン・オフするスイッチング素子を介して接地される接地回路と、を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
  4. 前記接地回路は、前記上部電極に印加される電圧を調整する電圧調整部をさらに有する、請求項2または請求項3に記載のプラズマ処理装置。
  5. 前記電圧調整部は、ツェナーダイオードを含む、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
  6. 前記接地回路は、ツェナー電圧が異なる接地された複数の線路と、前記複数の線路のいずれかに切り替えるスイッチとを有する、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
  7. 前記電圧調整部は抵抗を含む、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
  8. 前記抵抗は可変抵抗である、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
  9. 前記電圧調整部は電源を含む、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
  10. 前記電源は可変電源である、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
  11. 前記ガス供給部は前記基板に向けて前記処理ガスを吐出するシャワーヘッドを有し、前記シャワーヘッドは前記上部電極を含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  12. 前記処理ガスは、TiClとHとArとを含み、
    前記プラズマ処理は、前記基板の表面にTi膜を成膜する処理である、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  13. 前記基板は、表面に結合エネルギーが相対的に小さい第1の材料部分と、相対的に結合エネルギーが大きい第2の材料部分とを有し、前記第1の材料部分に選択的にTi膜を成膜する、請求項12に記載のプラズマ処理装置。
  14. 前記第1の材料部分は、SiまたはSiGeである、請求項13に記載のプラズマ処理装置。
  15. 前記第2の材料部分は、SiNまたはSiOである、請求項13または請求項14に記載のプラズマ処理装置。
  16. 前記高周波電源は、パルス状の高周波電力を供給する高周波パルス電源である、請求項12から請求項15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  17. 前記処理ガスは、ArとOとを含み、
    前記プラズマ処理は、前記基板の表面部分をプラズマエッチングするエッチング処理である、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  18. 請求項1から請求項17のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置を用いて基板にプラズマ処理を行うプラズマ処理方法であって、
    前記基板載置台に基板を載置することと、
    前記上部電極と前記基板載置台との間に処理ガスを供給することと、
    前記高周波電源から高周波電力を前記上部電極に供給し、プラズマを生成することと、
    前記プラズマにより前記基板にプラズマ処理を行うことと、
    を有する、プラズマ処理方法。
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