JP7486201B2 - 板状金属ナノ粒子の製造方法、金属イオン還元剤、金属イオン還元剤と板状金属ナノ粒子とを含む複合体及びそれを含む分散液、複合体に含まれる板状金属ナノ粒子 - Google Patents

板状金属ナノ粒子の製造方法、金属イオン還元剤、金属イオン還元剤と板状金属ナノ粒子とを含む複合体及びそれを含む分散液、複合体に含まれる板状金属ナノ粒子 Download PDF

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Description

本発明は、金属イオンの還元方法、板状金属ナノ粒子、板状金属ナノ粒子を含む複合体及びその分散液、並びに多分枝金属ナノ粒子及びその製造方法に関する。
金や銀、白金等の貴金属ナノ粒子及びその分散液は、通常、貴金属イオンを含む溶液に還元剤を添加し、金属イオンを還元する方法によって得られる。例えば、非特許文献1には、金イオンを水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)で還元することによって、金ナノ粒子を生成する方法が記載されている。しかしながら非特許文献1に記載の方法は、NaBHやアルカンチオール(R-SH)等の有害な試薬を用いることが多く、また、還元剤や安定剤を溶解させる目的でトルエン等の有機溶媒を用いるため、環境への影響が懸念されている。
非特許文献2には、シクロヘキサノンを用いた塩化金酸の常温での還元方法が記載されているが、この方法も有害なシクロヘキサノンを還元剤として使用する必要がある。さらに、この方法で作成された金ナノ粒子は、その平均粒子径が最大で400nm程度であり、サイズや形状の制御が困難である。
これまでに報告されている貴金属ナノ粒子の生成方法のほとんどは、非特許文献3に記載されているように、多種類の試薬を用いた多段階反応による方法であり、合成手順が複雑である。
特許文献1には、金イオン及び塩化物イオンを含む溶液と、ジブチルカルビトールとの接触により金ナノ粒子を含む有機相を得たのち、水相としてシュウ酸カリウムを加えることにより、金イオンを水相へ移行させると共に、常温付近の温度で還元処理を行って金を回収する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、工程が複雑である上に、アルカリ金属であるカリウムが混入する恐れがあるため、回収された金の応用先が限定される懸念がある。また、特許文献1に記載の方法でも、得られる金ナノ粒子のサイズや形状の制御が難しいという問題がある。
ところで、金属ナノ粒子の中には、その表面が細かい枝状に分枝した「多分枝金属ナノ粒子」と呼ばれるものがある。このような多分枝金属ナノ粒子として、例えば、非特許文献4、5には、ウニのようなトゲを有する多分枝金属ナノ粒子、表面に細かい凹凸を有する多分枝金属ナノ粒子等が報告されている。これら非特許文献では、多種類の試薬を用いた多段階の反応によって多分枝金属ナノ粒子を作成しているため、合成手順が複雑である。
特許第5351747号公報
Brust,M.et al.,Synthesis of Thiol-Derivatized Gold Nanoparticles in a Two phase Liquid-Liquid System.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1994,801-802. M.A.Uppal et al.,J.Matter.Chem.,A1,7351(2013). H.Liu et al.,CrysEngComm.,2011,13,2281. Priya Vijayaraghavan et al.,ACS Appl.Mater.Interfaces 2016,8,23909. Song et al.,J.Mater.Chem.B,2016,4,7112.
そこで本発明は、金属イオンを還元して金属ナノ粒子を得る方法であって、環境への負荷が少なく、簡便かつ省エネルギーな方法で金属ナノ粒子を得ることができ、かつ金属ナノ粒子のサイズや形状を簡単かつ詳細に制御できる金属イオンの還元方法、及び板状金属ナノ粒子を含む複合体とその分散液、並びに板状金属ナノ粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、新規な多分枝金属ナノ粒子及びその製造方法を提供することも目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、不飽和脂肪酸との接触によって金属イオンを還元することで、上記全ての課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させる、金属イオンの還元方法。
[2]前記不飽和脂肪酸が、炭素数2~23のアルケニルカルボン酸である、[1]に記載の金属イオンの還元方法。
[3]前記アルケニルカルボン酸が、下記式(X1)又は下記式(X2)の構造を有する、[2]に記載の金属イオンの還元方法。
-CH=CH-COOH ・・・(X1)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X2)
(式(X1)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表す。式(X2)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
[4]溶液中で前記不飽和脂肪酸と前記金属イオンとを混合する工程を含む、[1]から[3]のいずれか一項に記載の金属イオンの還元方法。
[5]前記金属イオンが貴金属イオンを含む、[1]から[4]のいずれか一項に記載の金属イオンの還元方法。
[6]不飽和脂肪酸を含む、金属イオン還元剤。
[7]前記不飽和脂肪酸が、炭素数2~23のアルケニルカルボン酸である、[6]に記載の金属イオン還元剤。
[8]前記アルケニルカルボン酸が、下記式(X1)又は下記式(X2)の構造を有する、[7]に記載の金属イオン還元剤。
-CH=CH-COOH ・・・(X1)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X2)
(式(X1)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表す。式(X2)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
[9]不飽和脂肪酸と板状金属ナノ粒子とを含む、複合体。
[10]前記不飽和脂肪酸が、炭素数2~23のアルケニルカルボン酸である、[9]に記載の複合体。
[11]前記アルケニルカルボン酸が、下記式(X1)又は下記式(X2)の構造を有する、[10]に記載の複合体。
-CH=CH-COOH ・・・(X1)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X2)
(式(X1)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表す。式(X2)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
[12]前記不飽和脂肪酸が、前記板状金属ナノ粒子の少なくとも一方の表面に付着している、[9]から[11]のいずれか一項に記載の複合体。
[13]前記複合体の総質量に対する前記板状金属ナノ粒子の含有量が、80質量%以上である、[9]から[12]のいずれか一項に記載の複合体。
[14]前記板状金属ナノ粒子が、貴金属の板状金属ナノ粒子を含む、[9]から[13]のいずれか一項に記載の複合体。
[15]前記板状金属ナノ粒子が、金の板状金属ナノ粒子を含む、[9]から[14]のいずれか一項に記載の複合体。
[16]電気抵抗率が1×10-4Ω・m以下である、[15]に記載の複合体。
[17]ヤング率が1MPa以下である、[15]または[16]に記載の複合体。
[18][9]から[17]のいずれか一項に記載の複合体を含む、分散液。
[19]直径(d)と厚み(t)の比(d/t)が100~1200であり、前記厚み(t)が30nm未満である板状金属ナノ粒子。
[20]前記板状金属ナノ粒子が、貴金属の板状金属ナノ粒子を含む、[19]に記載の板状金属ナノ粒子。
[21]前記板状金属ナノ粒子が、金の板状金属ナノ粒子を含む、[19]または[20]に記載の板状金属ナノ粒子。
[22]中心部と、前記中心部から外方へ延出する複数の分枝部とを有する多分枝金属ナノ粒子であって、前記分枝部の結晶構造が単結晶を含み、前記多分枝金属ナノ粒子全体の結晶構造が多結晶である、多分枝金属ナノ粒子。
[23]前記分枝部は、複数の板状片を含む、[22]に記載の多分枝金属ナノ粒子。
[24]前記分枝部が、前記中心部から外方へ立体的に、かつ不規則に延出する複数の板状片で構成されている、[22]または[23]に記載の多分枝金属ナノ粒子。
[25]前記板状片の延出部の結晶構造が単結晶である、[23]または[24]に記載の多分枝金属ナノ粒子。
[26]前記板状片の平均長さが、20~100nmである、[23]から[25]のいずれか一項に記載の多分枝金属ナノ粒子。
[27]前記多分枝金属ナノ粒子が、貴金属の多分枝金属ナノ粒子を含む、[22]から[26]のいずれか一項に記載の多分枝金属ナノ粒子。
[28]前記多分枝金属ナノ粒子が、金の多分枝金属ナノ粒子を含む、[22]から[27]のいずれか一項に記載の多分枝金属ナノ粒子。
[29][22]から[28]のいずれか一項に記載の多分枝金属ナノ粒子を含む分散液。
[30][22]から[28]のいずれか一項に記載の多分枝金属ナノ粒子と、不飽和脂肪酸とを含む、複合体。
[31]前記不飽和脂肪酸が、炭素数5~23のアルケニルカルボン酸である、[30]に記載の複合体。
[32]前記アルケニルカルボン酸が、下記式(X3)又は下記式(X4)の構造を有する、[31]に記載の複合体。
-CH=CH-COOH ・・・(X3)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X4)
(式(X3)中、Rは、炭素数3~16のアルキル基を表す。式(X4)中、Rは、炭素数3~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
[33]不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させる工程を含む、[22]から[28]のいずれか一項に記載の多分枝金属ナノ粒子の製造方法。
[34]前記不飽和脂肪酸が、炭素数5~23のアルケニルカルボン酸である、[33]に記載の多分枝金属ナノ粒子の製造方法。
[35]前記アルケニルカルボン酸が、下記式(X3)又は下記式(X4)の構造を有する、[34]に記載の多分枝金属ナノ粒子の製造方法。
-CH=CH-COOH ・・・(X3)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X4)
(式(X3)中、Rは、炭素数3~16のアルキル基を表す。式(X4)中、Rは、炭素数3~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
本発明によれば、金属イオンを還元して金属ナノ粒子を得る方法であって、環境への負荷が少なく、簡便かつ省エネルギーな方法で金属ナノ粒子を得ることができ、かつ金属ナノ粒子のサイズや形状を簡単かつ詳細に制御できる金属イオンの還元方法、及び板状金属ナノ粒子を含む複合体とその分散液、並びに板状金属ナノ粒子を提供することができる。また、本発明によれば、新規な多分枝金属ナノ粒子と、環境への負荷が少なく、簡便かつ省エネルギーな方法で多分枝金属ナノ粒子を製造できる、多分枝金属ナノ粒子の製造方法を提供することができる。
本発明の1つの態様による方法で得られた金属ナノ粒子の一例を示す電子顕微鏡写真である。 本発明の別の態様による方法で得られた金属ナノ粒子の一例を示す電子顕微鏡写真である。 本発明の第1の態様及び第2の態様における金属ナノ粒子の生成過程を示す概念図の一例である。 本発明の第1の態様及び第2の態様における金属ナノ粒子の生成過程を示す概念図の一例である。 本発明の1つの態様の多分枝金属ナノ粒子の一例を示す透過電子顕微鏡写真である。 本発明の1つの態様の多分子金属ナノ粒子の分枝部の一例を示す透過電子顕微鏡写真である。 本発明の1つの態様の多分枝金属ナノ粒子全体の結晶構造の一例を示す、選択面積電子回折像写真である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
[金属イオンの還元方法]
本発明の第1の態様は、不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させる、金属イオンの還元方法である。第1の態様によれば、不飽和脂肪酸を金属イオンと接触させることで金属イオンが還元され、金属ナノ粒子が生成される。本態様の還元方法によれば、簡便且つ省エネルギーな方法で金属ナノ粒子を製造することができる。
なお本明細書において、「金属イオン」とは、金属原子から生じる陽イオンを意味し、その価数は、本発明の効果を有する限り特に限定されない。
また本明細書において、「金属ナノ粒子」には、「粒状金属ナノ粒子」及び「板状金属ナノ粒子」の両方が含まれる。ここで、「粒状金属ナノ粒子」とは、粒子形状が球形に近似しており、かつ粒子の長軸(b)と短軸(a)の比(b/a)で表されるアスペクト比が、1.0~1.5の金属ナノ粒子のことを意味する。また、「板状金属ナノ粒子」とは、粒子形状が板状をしており、粒子の直径(d)に対して、厚み(t)が非常に小さい薄片の粒子のことを意味する。ここで、板状金属ナノ粒子の直径(d)とは、板状金属ナノの突出した一方の端部と他方の端部とが円周上に接するように、前記板状金属ナノ粒子を内包する真円を描いた際、その真円の直径のことを意味する。なお、粒状金属ナノ粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
本明細書において、前記アスペクト比は、10個の粒状金属ナノ粒子の長軸(b)と短軸(a)を測定し、その平均値から算出した値を意味する。
また、板状金属ナノ粒子の直径及び厚みは、走査型電子顕微鏡と原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。本明細書において、板状金属ナノ粒子の前記直径(d)及び前記厚み(t)は、10個の板状金属ナノ粒子の平均値である。
<不飽和脂肪酸>
第1の態様では、不飽和脂肪酸を用いて金属イオンを還元する。不飽和脂肪酸とは、分子構造内に少なくとも1つの不飽和結合と、少なくとも1つのカルボキシ基を有する脂肪酸のことを意味する。不飽和結合の位置は本発明の効果を有する限り特に限定されない。本態様において、不飽和脂肪酸はシス体であってもよく、トランス体であってもよい。
1つの好ましい態様においては、前記不飽和脂肪酸は炭素数2~23のアルケニルカルボン酸であることが好ましい。炭素数2~23のアルケニルカルボン酸であれば、金属イオンが還元されやすくなる。なお、前記炭素数はアルケニル基の炭素数を表す。アルケニル基の炭素数は2~21がより好ましく、2~17がさらに好ましい。また、前記アルケニルカルボン酸は、分子内に2つ以上のカルボキシ基を有していてもよい。
1つのより好ましい態様においては、前記アルケニルカルボン酸は、下記式(X1)又は下記式(X2)の構造を有することが好ましい。
-CH=CH-COOH ・・・(X1)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X2)
(式(X1)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表す。式(X2)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
上記式(X1)又は(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸であれば、金属イオンの還元と形状制御の効果が得られやすくなる。このうち、式(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸であることがさらに好ましい。また、RがCHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基である、アルケニルジカルボン酸が特に好ましい。このようなアルケニルジカルボン酸としては、例えば、2-オクテニルコハク酸、2-ドデセン-1-イルコハク酸、オクテニルコハク酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられ、2-オクテニルコハク酸、2-ドデセン-1-イルコハク酸が特に好ましい。
<金属イオン>
第1の態様において、不飽和脂肪酸により還元される金属イオンは、貴金属イオンを含むことが好ましい。貴金属イオンとしては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等の陽イオンが挙げられる。このうち、金属イオンとしては、金、銀、又は白金を含むことがより好ましく、金を含むことが特に好ましい。
<還元条件>
本発明の第1の態様における金属イオンの還元方法は、溶液中、より好ましくは水溶液中で、不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させる工程を含むことが好ましい。このように、水溶液中で金属イオンを還元する方法であれば、環境への負荷がより小さくなるため好ましい。また、不飽和脂肪酸と金属イオンとの接触は、これらを含む溶液を混合することによって行われることがより好ましい。
還元時の温度は、常温~90℃であることが好ましく、20~70℃であることがより好ましい。なお、「常温」とは、室温、又は20℃を意味する。
溶液中の不飽和脂肪酸の濃度は、溶液の総重量に対して、0.1~5wt%であることが好ましく、0.8~1.5wt%であることがより好ましい。不飽和脂肪酸の濃度が前記範囲内であれば、金属イオンを還元しやすくなる。
なお、前記溶液中には、不飽和脂肪酸及び金属イオン以外のその他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、エタノール等が挙げられる。その他成分を含む場合、その配合量は、例えば、水等の溶媒に対して0.1~50(V/V%)の範囲であることが好ましい。
本発明の第1の態様によれば、前述の通り、不飽和脂肪酸、好ましくは特定の構造を有するアルケニルカルボン酸と金属イオンとを接触させることにより、容易に金属イオンを還元することができる。その結果、0価の金属ナノ粒子が生成される。第1の態様の方法によれば、粒状金属ナノ粒子、板状金属ナノ粒子、及び不飽和脂肪酸と板状金属ナノ粒子とを含む複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む金属ナノ粒子を得ることができる。
第1の態様において、粒状金属ナノ粒子は、例えば、前記式(X1)の構造を有するアルケニルカルボン酸において、Rが水素、又は炭素数1~16のアルキル基であるアルケニルカルボン酸を用いて金属イオンを還元することにより、調製されやすい。また、室温又は加熱の条件(例えば、50~60℃)で金属イオンと不飽和脂肪酸とを接触させることで調製されやすくなる。得られる粒状金属ナノ粒子は、その平均粒子径が50~120nmであり、アスペクト比が1~1.5の範囲のものである。なお、粒状金属ナノ粒子の平均粒子径とは、粒状金属ナノ粒子10個の長軸を測定し、その平均値のことを意味する。
また、本態様の還元方法によれば、特異的な構造を有する板状の金属ナノ粒子も得ることができる。板状金属ナノ粒子は、前記式(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸において、Rが、炭素数5~16のアルキル基、Rが、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基であるアルケニルカルボン酸で金属イオンを還元することにより調製されやすい。
本態様の還元方法で得られる板状金属ナノ粒子は、厚み(t)が数nmであるのに対し、その直径(d)が数μmまでに成長する。本態様の還元方法であれば、このように、厚み(t)と直径(d)の比が非常に大きな薄片の金属ナノ粒子を、簡便かつ省エネルギーな方法で得ることが可能である。また、板状金属ナノ粒子と不飽和脂肪酸との複合体も得ることができる。これら板状金属ナノ粒子及び複合体の詳細については後述する。なお、金属イオンの還元状態については、目視による色変化によっても確認することができる。
その他、具体的には、吸収スペクトル、走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、透過電子顕微鏡等の分析方法で確認できる。
以上、第1の態様によれば、簡便かつ省エネルギーな方法で金属イオンを還元して金属ナノ粒子を生成することができる。すなわち、本発明の第1の態様の別の側面は、不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数2~23のアルケニルカルボン酸、より好ましくは前記式(X1)又は(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸の、金属イオンの還元剤としての使用である。また、本発明の第1の態様のその他の側面は、不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数2~23のアルケニルカルボン酸、より好ましくは前記式(X1)又は(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸を含む、金属イオン還元剤である。
[金属ナノ粒子の製造方法]
本発明の第2の態様は、不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させる工程を含む、金属ナノ粒子の製造方法である。前述の通り、本願発明者らは、不飽和脂肪酸を用いて金属イオンを還元することで、容易に金属ナノ粒子を製造できることを見出した。すなわち、不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させることによって金属イオンを還元し、0価の金属ナノ粒子を製造することができる。
<不飽和脂肪酸>
第2の態様における不飽和脂肪酸は、第1の態様と同様のものが挙げられる。
1つの好ましい態様においては、前記不飽和脂肪酸は炭素数2~23のアルケニルカルボン酸であることが好ましい。炭素数2~23のアルケニルカルボン酸であれば、金属イオンが還元されやすくなる。なお、前記炭素数はアルケニル基の炭素数を表す。アルケニル基の炭素数は2~21がより好ましく、2~17がさらに好ましい。また、前記アルケニルカルボン酸は、分子内に2つ以上のカルボキシ基を有していてもよい。
1つのより好ましい態様においては、前記アルケニルカルボン酸は、下記式(X1)又は下記式(X2)の構造を有することが好ましい。
-CH=CH-COOH ・・・(X1)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X2)
(式(X1)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表す。式(X2)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
上記式(X1)又は(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸であれば、金属イオンが還元されやすくなる。このうち、式(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸であることがさらに好ましい。また、RがCHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基であるアルケニルジカルボン酸が特に好ましい。このようなアルケニルジカルボン酸としては、例えば、2-オクテニルコハク酸、2-ドデセン-1-イルコハク酸、オクテニルコハク酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられ、2-オクテニルコハク酸、2-ドデセン-1-イルコハク酸が特に好ましい。
<金属イオン>
第2の態様における金属イオンとしては、第1の態様と同じものが挙げられ、好ましい例もまた同じである。
第2の態様において、金属イオンは塩化金酸等の金属塩から調製されることが好ましい。このような金属塩を水に溶解させることで、より容易に金属イオンを調製できる。
<製造工程>
第2の態様において、不飽和脂肪酸と金属イオンとの接触(以下、単に「接触工程」と言うこともある)は溶液中で行われる。また、前記溶液は水溶液、あるいは水を含む混合溶液であることが好ましい。第2の態様においては、溶液中で不飽和脂肪酸と金属イオンとを混合することによって、不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させることが好ましい。
接触工程における好ましい条件、すなわち、溶液の温度、不飽和脂肪酸の濃度、混合条件等は、第1の態様と同様である。このような条件で不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させることにより、容易に金属イオンが還元され、金属ナノ粒子が生成される。なお、金属イオンが還元されたかどうかの確認方法は、第1の態様と同様の方法で確認することができる。
前述の接触工程により、金属イオンが還元されて、金属ナノ粒子が生成する。金属ナノ粒子は、溶液中に分散した状態(金属ナノ粒子を含む分散液)で得られる。そのため、本態様の製造方法では、前記接触工程の後、金属ナノ粒子を回収する工程を含んでいてもよい。
金属ナノ粒子の回収方法としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、従来公知の方法、例えば、前記の溶液中に酢酸エチル等を添加して有機溶媒相に金属ナノ粒子を移行させた後、前記有機溶媒相に含まれる金属ナノ粒子を回収する方法等によって回収してもよい。
<金属ナノ粒子>
第2の態様の製造方法によれば、粒状金属ナノ粒子、板状金属ナノ粒子、及び不飽和脂肪酸と板状金属ナノ粒子とを含む複合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む金属ナノ粒子が得られる。
第2の態様において、粒状金属ナノ粒子は、例えば、前記式(X1)の構造を有するアルケニルカルボン酸において、Rが水素、又は炭素数1~16のアルキル基であるアルケニルカルボン酸を用いて金属イオンを還元することにより、より調製されやすい。また、室温又は加熱の条件(例えば、50~60℃)で金属イオンと不飽和脂肪酸とを接触させることで調製されやすくなる。得られる粒状ナノ粒子は、その平均粒子径が50~120nmであり、アスペクト比が1~1.5の範囲のものである。
また、本態様の金属ナノ粒子の製造方法によれば、特異的な構造を有する板状の金属ナノ粒子を得ることができる。本態様の製造方法で得られる板状金属ナノ粒子は、厚み(t)が数nmであるのに対し、その直径(d)が数μmまでに成長する。このように、厚み(t)と直径(d)の比が非常に大きな板状金属ナノ粒子が得られるのは、下記の理由によるものと考えられる。
不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数2~23のアルケニルカルボン酸は、図3A又は図3Bに示すように、溶液中で二分子層構造を形成することがある。このような二分子層構造は、例えば、40~70℃に加熱して水等の溶媒に溶解させた後に冷却することによって生じやすい。
このような不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させると、二分子層構造の間で金属イオンの還元反応が起こり、その結果、前記層構造の間で金属ナノ粒子が生成することがある。二分子層構造は、厚み方向(すなわち、図3A又は図3Bにおいて、二分子層構造の高さ方向)における幅が制御されているため、直径方向(すなわち、図3A又は図3Bにおいて、二分子層構造の横方向)に粒子が成長しやすくなる。その結果、直径(d)方向に粒子が大きく成長した非常に厚みの薄い板状の金属ナノ粒子が生成すると考えられる。すなわち、本態様の金属ナノ粒子の製造方法によれば、前記式(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸において、Rが炭素数5~16のアルキル基であり、RがCHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基のときに、金属ナノ粒子の形状を「非常に薄い板状」に制御しやすくなる。さらに、このような特異的な形状を有する板状金属ナノ粒子を、非常にマイルドな条件、かつ環境への負荷の少ない方法で製造することができる。
なお、本態様の製造方法では、板状金属ナノ粒子と不飽和脂肪酸との複合体も得ることができる。このような複合体は可塑性や粘着性を有しているため、成形性が良好となりやすい。
上記の通り、本発明の不飽和脂肪酸は、1つの物質で、還元剤、安定化剤(金属ナノ粒子の分散・安定化剤)、金属ナノ粒子の形状及びサイズの制御という、3つの役割を併せ持つ物質であるため、これらの役割を担う他の物質を追加する必要がない。したがって、本発明の第2の態様の製造方法によれば、不飽和脂肪酸、金属イオン、及びこれらの溶剤の3つの成分のみで、金属ナノ粒子を製造することができる。
なお、本製造方法で得られる複合体は、100~600℃、好ましくは210~350℃で加熱することによって不飽和脂肪酸を除去して板状金属ナノ粒子のみを取り出すことができる。従って、第2の態様は、複合体から不飽和脂肪酸を除去する工程を含んでいてもよい。
以下、本発明の板状金属ナノ粒子、及び複合体について詳細に説明する。
[板状金属ナノ粒子]
本発明の第3の態様は、直径(d)と厚み(t)の比(d/t)が100~1200であり、前記厚み(t)が30nm未満である板状金属ナノ粒子である。本態様の板状金属ナノ粒子は、その直径(d)に対して、厚み(t)が非常に小さいという特徴を持つ。このような板状金属ナノ粒子は、例えば、製膜性の点で有利である。
前記(d/t)は、100~1200であり、250~800が好ましく、400~800がより好ましい。また、厚み(t)は、5nm以上30nm未満が好ましく、5~12nmがより好ましい。なお、板状金属ナノ粒子の直径(d)は、走査型電子顕微鏡を用いて測定した値のことを指す。また、板状金属ナノ粒子の厚み(t)は、原子間力顕微鏡を用いて測定した値のことを指す。
第3の態様において、板状金属ナノ粒子は、貴金属の板状金属ナノ粒子を含むことが好ましい。貴金属としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等が挙げられる。このうち、金、銀、又は白金の板状金属ナノ粒子を含むことがより好ましく、金の板状金属ナノ粒子を含むことが特に好ましい。
第3の態様における板状金属ナノ粒子は、例えば、本発明の第1及び第2の態様に記載の方法にて製造することができる。
前述の通り、不飽和脂肪酸は水などの溶液中で二分子層構造を形成することがある。このような二分子層構造中で金属イオンを還元することにより、直径方向に粒子が大きく成長した(すなわち、(d/t)の大きな)板状金属ナノ粒子を製造することができる。なお、第1及び第2の態様において、板状金属ナノ粒子は、不飽和脂肪酸を含む複合体として得られる場合がある。この複合体を加熱処理して不飽和脂肪酸を除去することにより、板状金属ナノ粒子のみを取り出すことが可能である。
このような板状金属ナノ粒子は、例えば、触媒、薬物輸送、腫瘍検出等への応用が可能である。
<板状金属ナノ粒子の集合体>
第3の態様の板状金属ナノ粒子は、溶媒(水等)を除去することにより、板状金属ナノ粒子の集合体を形成することができる。板状金属ナノ粒子の集合体は可塑性を有しており、圧縮によって、成形可能である。さらに、圧縮によって、導電性等の諸物性が著しく向上する。
[複合体]
本発明の第4の態様は、不飽和脂肪酸と板状金属ナノ粒子とを含む、複合体である。
第1及び第2の態様に記載の方法により、金属イオンを還元して金属ナノ粒子を製造することができる。前記金属ナノ粒子には、不飽和脂肪酸と板状金属ナノ粒子を含む複合体が含まれる。この複合体は、直径方向に大きく成長している一方で、厚みが小さいという特徴がある。本発明の第4の態様の複合体において、直径(d)と厚み(t)に対する比(d/t)は、100~1200あることが好ましく、250~800であることがより好ましく、400~800であることがさらに好ましい。また、前記複合体の厚み(t)は、30nm以下であることが好ましく、5~15nmであることがより好ましい。なお、複合体の直径(d)は、走査型電子顕微鏡を用いて測定した値のことを指す。また、複合体の厚み(t)は、原子間力顕微鏡を用いて測定した値のことを指す。
<不飽和脂肪酸>
第4の態様における不飽和脂肪酸とは、第1及び第2の態様と同様のものが挙げられる。
1つの好ましい態様においては、前記不飽和脂肪酸は炭素数2~23のアルケニルカルボン酸であることが好ましい。炭素数2~23のアルケニルカルボン酸であれば、金属イオンが還元されやすくなる。なお、前記炭素数はアルケニル基の炭素数を表す。アルケニル基の炭素数は2~21がより好ましく、2~17がさらに好ましい。また、前記アルケニルカルボン酸は、分子内に2つ以上のカルボキシ基を有していてもよい。
1つのより好ましい態様においては、前記アルケニルカルボン酸は、下記式(X1)又は下記式(X2)の構造を有することが好ましい。
-CH=CH-COOH ・・・(X1)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X2)
(式(X1)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表す。式(X2)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
上記式(X1)又は(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸であれば、金属イオンが還元されやすくなる。このうち、式(X2)の構造を有するアルケニルカルボン酸であることがさらに好ましい。また、RがCHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基であるアルケニルジカルボン酸が特に好ましい。このようなアルケニルジカルボン酸としては、例えば、2-オクテニルコハク酸、2-ドデセン-1-イルコハク酸、オクテニルコハク酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられ、2-オクテニルコハク酸、2-ドデセン-1-イルコハク酸が特に好ましい。
第4の態様において、前記不飽和脂肪酸は、前記板状金属ナノ粒子の少なくとも一方の表面に付着していることが好ましく、両方の表面に付着していることが好ましい。このように、不飽和脂肪酸がバインダーとして板状金属ナノ粒子の少なくとも一方の表面に付着していることによって粘着性と可塑性が発現しやすくなる。その結果、複合体の成形性が向上しやすくなる。なお、「板状金属ナノ粒子の表面」とは、直径(d)方向の表面のことを意味する。また、不飽和脂肪酸は、板状金属ナノ粒子の表面の一部に付着していてもよく、表面全体に付着していてもよい。
板状金属ナノ粒子の表面に不飽和脂肪酸が付着しているかどうかについては、エネルギー分散型X線分析を用いて元素分析によって確認することができる。
<板状金属ナノ粒子>
複合体に含まれる板状金属ナノ粒子は、前述の第3の態様において説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例もまた同様である。
第4の態様において、複合体の総質量に対する板状金属ナノ粒子の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90~97質量%であることがより好ましい。複合体の総質量に対する板状金属ナノ粒子の含有量が前記範囲内であれば、可塑性の効果を発現しやすくなる。なお、複合体に含まれる板状金属ナノ粒子の含有量は、エネルギー分散型X線分析や熱重量示差熱分析等の方法で算出することができる。
第4の態様の好ましい例の1つとして、金の板状金属ナノ粒子を含む複合体がある。金の板状金属ナノ粒子を含む複合体の電気抵抗率は、1×10-4Ω・m以下であることが好ましく、5×10-7~1×10-4Ω・mであることがより好ましい。なお、前記電気抵抗率は、複合体を室温の条件で圧縮(60%)した後、四探針法の装置(接触式抵抗測定器等)を用いて、室温で測定した値のことを指す。また、前記金の板状金属ナノ粒子を含む複合体のヤング率は、1MPa以下であることが好ましく、0.1~0.8MPaであることがより好ましい。前記ヤング率は、複合体を室温で、小型卓上試験機((株)島津製作所製、製品名:EZ-LX)を用いて圧縮した後、一方向の圧縮応力の方向に対するひずみ量の関係から計算した値のことを指す。
<複合体を含む分散液>
第4の態様のその他の側面は、複合体を含む分散液である。複合体の分散液としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、水、エタノール等が挙げられる。前述の通り、本態様の複合体は溶液中で金属イオンを還元して得られる。そのため、製造時の溶液を分散液としてそのまま利用することも可能である。このような分散液は、例えば、導電性インク等への応用が可能である。
[多分枝金属ナノ粒子]
本発明の第5の態様は、中心部と、前記中心部から外方へ延出する複数の分枝部とを有する多分枝金属ナノ粒子であって、前記分枝部の結晶構造が単結晶を含み、前記多分枝金属ナノ粒子全体の結晶構造が多結晶である、多分枝金属ナノ粒子である。本明細書において「多分枝金属ナノ粒子」とは、中心部と分枝部とを有する金属ナノ粒子であり、「分枝部」とは、粒子の中心から外方に延出する枝状に分枝した部分を指す。本発明の第5の態様における多分枝金属ナノ粒子は、分枝部の結晶構造が単結晶を含み、多分枝金属ナノ粒子全体の結晶構造が多結晶である。なお、多分枝金属ナノ粒子の結晶構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、1つの多分枝金属ナノ粒子の分枝部、及び多分枝金属ナノ粒子全体の電子線回折像を撮影することにより判別することができる。本明細書において、「分枝部の結晶構造が単結晶を含む」とは、1つの多分枝金属ナノ粒子に存在する複数の分枝部のいずれかに、単結晶の結晶構造が含まれることを意味する。
前記分枝部は、複数の板状片を含むことが好ましい。また、前記分枝部は、前記中心部から外方へ立体的に、かつ不規則に延出する複数の板状片で構成されていることがより好ましい。ここで、「板状片」とは、その形状が板状の片のことであり、片の長さ(d1)に対して、厚み(t1)が非常に小さい薄片のことを意味する。なお、板状片の長さ(d1)とは、1つの板状片の突出した一方の端部と他方の端部とが円周上に接するように、前記板状片を内包する真円を描いた際、その真円の直径のことを意味する。前記片の長さ(d1)は、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。前記板状片の平均長さ(d1av)は、20~100nmであることが好ましく、40~60nmであることがより好ましい。なお、前記平均長さ(d1av)は、1つの多分枝金属ナノ粒子に含まれる板状片のうち、15枚の板状片の長さ(d1)の平均値を意味する。
なお、1つの態様においては、前記板状片は、第3の態様の板状金属ナノ粒子であってもよい。
図4は、本発明の1つの態様の多分枝金属ナノ粒子の一例を示す透過電子顕微鏡写真である。また、図5は、本発明の1つの態様の多分子金属ナノ粒子の分枝部の一例を示す透過電子顕微鏡写真である。図4に示すように、第5の態様の多分枝金属ナノ粒子は、粒子の外方へ向けて延出する分枝部を有している。また、前記分枝部は、粒子の中心部から延出している。さらに、前記分枝部は、図4、5に示すような、板状の形状をしている。すなわち、図4に示す多分枝金属ナノ粒子は、中心部と、前記中心部から外方へ立体的に、かつ不規則に延出する複数の板状片から構成されている。
本発明の1つの態様においては、前記板状片の延出部の結晶構造が単結晶であることが好ましい。ここで、「板状片の延出部」とは、多分枝金属ナノ粒子の中心部から、外方に立体的に延出した板状片において、他の板状片との重なりを有さない部位のことを指す。第5の態様の多分枝金属ナノ粒子は、中心部と、前記中心部から外方に向けて延出する複数の板状片とから構成されており、前記板状片の延出部が単結晶であり、多分枝金属ナノ粒子全体の結晶構造が多結晶であることが好ましい。
多分枝金属ナノ粒子の平均粒子径は、100~500nmであることが好ましく、150~350nmであることがより好ましい。なお、多分枝金属ナノ粒子の粒子径は、多分枝金属ナノ粒子の分枝部と円周とが接するように、前記多分枝金属ナノ粒子を内包する真円を描いた際、その真円の直径を意味する。また、多分枝金属ナノ粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。なお、本明細書において、多分枝金属ナノ粒子の平均粒子径とは、15個の多分枝金属ナノ粒子についてその粒子径を測定し、その平均値から算出した値を意味する。
第5の態様において、多分枝金属ナノ粒子は、貴金属の多分枝金属ナノ粒子を含むことが好ましい。貴金属としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等が挙げられる。このうち、金、銀、又は白金の多分枝金属ナノ粒子を含むことがより好ましく、金の多分枝金属ナノ粒子を含むことが特に好ましい。
<多分枝金属ナノ粒子を含む分散液>
第5の態様のその他の側面は、多分枝金属ナノ粒子を含む分散液である。多分枝金属ナノ粒子の分散液としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、水、エタノール等が挙げられる。後述の多分枝金属ナノ粒子の製造方法の通り、本態様の多分枝金属ナノ粒子は溶液中で金属イオンを還元して得られる。そのため、製造時の溶液を分散液としてそのまま利用することも可能である。このような分散液は、例えば、免疫染色およびバイオセンサー等への応用が可能である。
<多分枝金属ナノ粒子と不飽和脂肪酸とを含む複合体>
また、本発明の第5の態様の別の側面は、多分枝金属ナノ粒子と不飽和脂肪酸とを含む、複合体である。
(不飽和脂肪酸)
第5の態様における不飽和脂肪酸とは、第1及び第2の態様と同様のものが挙げられる。
1つの好ましい態様においては、前記不飽和脂肪酸は炭素数5~23のアルケニルカルボン酸であることが好ましい。前記炭素数はアルケニル基の炭素数を表す。アルケニル基の炭素数は6~8がより好ましく、6~7がさらに好ましい。また、前記アルケニルカルボン酸は、分子内に2つ以上のカルボキシ基を有していてもよい。
1つのより好ましい態様においては、前記アルケニルカルボン酸は、下記式(X3)又は下記式(X4)の構造を有することが好ましい。
-CH=CH-COOH ・・・(X3)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X4)
(式(X3)中、Rは、炭素数3~16のアルキル基を表す。式(X4)中、Rは、炭素数3~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
このうち、式(X4)の構造を有するアルケニルカルボン酸であることがさらに好ましい。また、Rが炭素数3~4のアルケニル基、RがCHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基であるアルケニルジカルボン酸が特に好ましい。このようなアルケニルジカルボン酸としては、例えば、2-ヘキセニルコハク酸が特に好ましい。
第5の態様において、前記不飽和脂肪酸は、前記多分枝金属ナノ粒子の少なくとも一部に付着していることが好ましい。このような複合体は、不飽和脂肪酸がバインダーとして働くことにより、粘着性と可塑性が発現しやすくなる。その結果、複合体の成形性が向上しやすくなる。
多分枝金属ナノ粒子の表面に不飽和脂肪酸が付着しているかどうかについては、エネルギー分散型X線分析を用いて元素分析によって確認することができる。
[多分枝金属ナノ粒子の製造方法]
本発明の第6の態様は、不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させる工程を含む、前記多分枝金属ナノ粒子の製造方法である。前述の通り、本願発明者らは、不飽和脂肪酸を用いて金属イオンを還元することで、容易に金属ナノ粒子を製造できることを見出した。すなわち、不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させることによって金属イオンを還元し、0価の金属ナノ粒子を製造することができる。また、同様の方法にて、多分枝金属ナノ粒子を製造できることも見出した。
<不飽和脂肪酸>
第6の態様における不飽和脂肪酸としては、例えば、第1の態様と同様のものが挙げられる。
1つの好ましい態様においては、前記不飽和脂肪酸は炭素数5~23のアルケニルカルボン酸であることが好ましい。炭素数5~23のアルケニルカルボン酸であれば、多分枝金属ナノ粒子が生成しやすくなる。なお、前記炭素数はアルケニル基の炭素数を表す。アルケニル基の炭素数は6~8がより好ましく、6~7がさらに好ましい。また、前記アルケニルカルボン酸は、分子内に2つ以上のカルボキシ基を有していてもよい。
1つのより好ましい態様においては、前記アルケニルカルボン酸は、下記式(X3)又は下記式(X4)の構造を有することが好ましい。
-CH=CH-COOH ・・・(X3)
-CH=CH-R-COOH ・・・(X4)
(式(X3)中、Rは、炭素数3~16のアルキル基を表す。式(X4)中、Rは、炭素数3~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
上記式(X3)又は(X4)の構造を有するアルケニルカルボン酸であれば、金属イオンが還元されやすくなり、多分枝金属ナノ粒子が生成しやすくなる。このうち、式(X4)の構造を有するアルケニルカルボン酸であることがさらに好ましい。また、Rが炭素数3~4のアルケニル基、RがCHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基であるアルケニルジカルボン酸が特に好ましい。このようなアルケニルジカルボン酸としては、例えば、2-ヘキセニルコハク酸が特に好ましい。
<金属イオン>
第6の態様における金属イオンとしては、第1の態様と同じものが挙げられ、好ましい例もまた同じである。
第6の態様において、金属イオンは塩化金酸等の金属塩から調製されることが好ましい。このような金属塩を水に溶解させることで、より容易に金属イオンを調製できる。
<製造工程>
第6の態様において、不飽和脂肪酸と金属イオンとの接触(以下、単に「接触工程」と言うこともある)は溶液中で行われる。また、前記溶液は水溶液、あるいは水を含む混合溶液であることが好ましい。第6の態様においては、溶液中で不飽和脂肪酸と金属イオンとを混合することによって、不飽和脂肪酸と金属イオンとを接触させることが好ましい。
接触工程における溶液の温度は、常温~90℃であることが好ましく、20~70℃であることがより好ましく、50~70℃であることが特に好ましい。なお、「常温」とは、室温、又は20℃を意味する。
溶液中の不飽和脂肪酸の濃度は、溶液の総重量に対して、0.1~5wt%であることが好ましく、0.8~1.5wt%であることがより好ましい。不飽和脂肪酸の濃度が前記範囲内であれば、金属イオンを還元しやすくなる。
なお、前記溶液中には、不飽和脂肪酸及び金属イオン以外のその他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、エタノール等が挙げられる。その他成分を含む場合、その配合量は、例えば、水等の溶媒に対して0.1~50(V/V%)の範囲であることが好ましい。
本態様の多分枝金属ナノ粒子の製造方法によれば、上記のような条件で簡便に多分枝金属ナノ粒子を調製することができる。多分枝金属ナノ粒子の調製に要する時間、すなわち、前記の接触工程の時間は、10秒間~15分間程度であり、短時間の反応で多分枝金属ナノ粒子を調製することができる。また、接触工程の時間と、溶液温度を前述の範囲内で調整することにより、多分枝金属ナノ粒子の平均粒子径を制御することも可能である。
前述の接触工程により、金属イオンが還元されて、多分枝金属ナノ粒子が生成する。多分枝金属ナノ粒子は、溶液中に分散した状態(金属ナノ粒子を含む分散液)で得られる。そのため、本態様の製造方法では、前記接触工程の後、金属ナノ粒子を回収する工程を含んでいてもよい。
多分枝金属ナノ粒子の回収方法としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、従来公知の方法、例えば、前記の溶液中に酢酸エチル等を添加して有機溶媒相に金属ナノ粒子を移行させた後、前記有機溶媒相に含まれる金属ナノ粒子を回収する方法等によって回収してもよい。
<用途>
本発明の第3の態様における板状金属ナノ粒子は、例えば、触媒、薬物輸送、腫瘍検出等への応用が可能である。
また、本発明の第4の態様における複合体は、例えば、導電性インク、導電性コーティング、導電性隙間充填剤、装飾剤、エンボス等の塑性造形、触媒等への応用が可能である。
また、本発明の第5の態様における多分枝金属ナノ粒子は、例えば、触媒、免疫染色およびバイオセンサー等への応用が可能である。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
[実施例1]
<金ナノ粒子の合成>
不飽和脂肪酸として、式(X2)において、Rが炭素数16のアルキル基であり、RがCH(-COOH)CH基であるアルケニルカルボン酸を用い、前記不飽和脂肪酸を水中に500μL添加して、不飽和脂肪酸の水溶液(1.1wt%)を調製した。その後、この水溶液を69℃に加熱した後、塩化金酸溶液(2mmoL/L)を添加して混合した。水溶液の色変化が観測されたため、金ナノ粒子の生成が確認された。溶媒を除去し、板状金ナノ粒子と不飽和脂肪酸を含む複合体を得た。
得られた複合体の平均直径(d)は、8μmであり、平均厚み(t)は15nmであった。また、(d/t)は、533であった。また、複合体の電気抵抗率は、5×10-7Ω・mであった。ヤング率は0.4MPaであった。
なお、金属ナノ粒子の評価は以下の方法に沿って行った。
<金属ナノ粒子の評価>
金属ナノ粒子を走査型電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡で観察して、その種類を特定した。また得られた金属ナノ粒子の平均粒子径、アスペクト比、直径(d)、厚み(t)を、以下の条件に沿って測定した。
(平均粒子径、アスペクト比、直径(d))
装置:走査型電子顕微鏡 型式:JSM-6340F(日本電子(株)製)
観察条件:10kV,10μA
上記装置を用いて、粒状金属ナノ粒子10個について、長軸(b)、短軸(a)、粒子径を測定し、その平均値を算出した。同様に、板状金属ナノ粒子10個の直径(d)を測定し、その平均値を算出した。
(厚み(t))
装置:原子間力顕微鏡(セイコーインスツル(株)製)
ユニット部:SPA-300 ステーション部:SPI 4000
測定範囲:20μm×20μm
上記装置を用いて、板状金属ナノ粒子10個の厚み(t)を測定し、その平均値を算出した。
金属ナノ粒子を含む複合体について、下記の条件で導電率とヤング率を測定した。
(導電率評価)
装置:接触式抵抗測定器((株)三菱ケミカルアナリテック製、製品名:MCP-T370、四探針法)
得られた複合体を小型卓上試験機((株)島津製作所製、製品名:EZ-LX)を用いて、80%まで圧縮した後、上記測定器を用いて電気抵抗率を測定した。
(ヤング率評価)
装置:小型卓上試験機((株)島津製作所製、製品名:EZ-LX)
得られた複合体を、室温で、速度0.5mm/minで60%(ひずみ)まで圧縮した後、一方向の圧縮応力の方向に対するひずみ量の関係からヤング率を算出した。
[実施例2]
不飽和脂肪酸として、式(X2)において、Rが炭素数12のアルキル基であり、RがCH(-COOH)CH基であるアルケニルカルボン酸を用い、反応温度を56℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、板状金ナノ粒子と前記不飽和脂肪酸を含む複合体が得られた。得られた複合体について、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子の評価を行った。その結果、平均直径(d)は、6μmであり、平均厚み(t)は8nmであった。また、(d/t)は、750であった。また、複合体の電気抵抗率は、5×10-7Ω・mであった。ヤング率は0.4MPaであった。
[実施例3]
不飽和脂肪酸として、ドデセニルコハク酸(式(X2)において、Rがノニル基であり、RがCHCH(-COOH)CH基であるアルケニルカルボン酸)を用い、反応温度を53℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、板状金ナノ粒子と前記不飽和脂肪酸との複合体が得られた。得られた複合体について、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子の評価を行った。その結果、平均直径(d)は、6μmであり、平均厚み(t)は8nmであった。また、(d/t)は、750であった。また、複合体の電気抵抗率は、5×10-7Ω・mであった。ヤング率は0.4MPaであった。
[実施例4]
不飽和脂肪酸として、式(X2)において、Rがペンチル基であり、RがCHCH(-COOH)CH基であるアルケニルカルボン酸を用い、反応温度を53℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、板状金ナノ粒子と前記不飽和脂肪酸との複合体が得られた。得られた複合体について、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子の評価を行った。その結果、平均直径(d)は、6μmであり、平均厚み(t)は8nmであった。また、(d/t)は、750であった。また、複合体の電気抵抗率は、5×10-7Ω・mであった。ヤング率は0.4MPaであった。
[実施例5]
不飽和脂肪酸として、式(X2)において、Rがプロピル基であり、RがCHCH(-COOH)CH基であるアルケニルカルボン酸を用い、反応温度を53℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、多分枝金ナノ粒子が得られた。得られた多分枝金ナノ粒子は、板状片の分枝部を有し、前記分枝部が単結晶であった。一方、多分枝金ナノ粒子全体の結晶構造は多結晶であった。さらに、多分枝金ナノ粒子の平均粒子径は350nmであった。なお、多分枝金ナノ粒子の結晶構造と、平均粒子径は以下の方法で測定した。
(平均粒子径)
装置:走査型電子顕微鏡 型式:JSM-6340F(日本電子(株)製)
観察条件:10kV,10μA
上記装置を用いて、多分枝金ナノ粒子を内包する真円の直径を測定し、多分枝金ナノ粒子の粒子径を測定した。同様の方法で、多分枝金ナノ粒子15個について粒子径を測定し、その平均値を算出した。
(結晶構造)
装置:透過型電子顕微鏡 型式:Tecnai Osiris(FEI Company製)
上記装置を用いて、分枝部と1つの多分枝金ナノ粒子全体の電子線回折像を測定して結晶構造を調べた。
[実施例6]
不飽和脂肪酸として、式(X2)において、Rがメチル基であり、RがCHCH(-COOH)CH基であるアルケニルカルボン酸を用い、反応温度を53℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、粒状金ナノ粒子が得られた。得られた粒状金ナノ粒子について、実施例1と同様の方法で平均粒子径とアスペクト比を算出した。その結果、粒状金ナノ粒子の平均粒子径は120nmであり、アスペクト比は1.5であった。
[実施例7]
不飽和脂肪酸として、5-ヘキセン酸(式(X2)において、Rが水素であり、Rがプロピレン基であるアルケニルカルボン酸)を用い、反応温度を53℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、粒状金ナノ粒子が得られた。得られた粒状金ナノ粒子について、実施例1と同様の方法で平均粒子径とアスペクト比を算出した。その結果、粒状金ナノ粒子の平均粒子径は120nmであり、アスペクト比は1.5であった。
[実施例8]
不飽和脂肪酸として、trans-2-ヘキセン酸(式(X1)において、Rがプロピル基であるアルケニルカルボン酸)を用い、反応温度を53℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、粒状金ナノ粒子が得られた。得られた粒状金ナノ粒子について、実施例1と同様の方法で平均粒子径とアスペクト比を算出した。その結果、粒状金ナノ粒子の平均粒子径は120nmであり、アスペクト比は1.5であった。
[実施例9]
不飽和脂肪酸として、4-ペンテン酸(式(X2)において、Rが水素であり、Rがエチレン基であるアルケニルカルボン酸)を用い、反応温度を53℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、粒状金ナノ粒子が得られた。得られた粒状金ナノ粒子について、実施例1と同様の方法で平均粒子径とアスペクト比を算出した。その結果、粒状金ナノ粒子の平均粒子径は120nmであり、アスペクト比は1.5であった。
[実施例10]
不飽和脂肪酸として、3-ブテン酸(式(X2)において、Rが水素であり、Rがメチレン基であるアルケニルカルボン酸)を用い、反応温度を53℃とした以外は、実施例1と同様の方法で金ナノ粒子を製造した。その結果、粒状金ナノ粒子が得られた。得られた粒状金ナノ粒子について、実施例1と同様の方法で平均粒子径とアスペクト比を算出した。その結果、粒状金ナノ粒子の平均粒子径は120nmであり、アスペクト比は1.5であった。
[比較例1]
不飽和脂肪酸の代わりにドデシルコハク酸を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて反応を行ったが、金属ナノ粒子は生成しなかった。
以上の結果より、実施例1~10の方法では、金属イオンが容易に還元されて金属ナノ粒子が生成することが分かった。また実施例1~4で得られた複合体は(d/t)値が大きく、直径方向に粒子が大きく成長していることが分かった。また、不飽和脂肪酸としてヘキセニルコハク酸を用いた実施例5では、多分枝金属ナノ粒子が生成した。得られた多分枝金属ナノ粒子は、分枝部が単結晶の結晶構造を有していたが、一つの多分枝金属ナノ粒子全体の結晶構造は多結晶であった。一方、比較例1に示すように、脂肪酸を還元剤として用いた場合は、金属ナノ粒子は生成しなかった。以上の結果より、本発明の金属イオンの還元方法によれば、環境への負荷が少なく、簡便かつ省エネルギーな方法で金属ナノ粒子が得られることが分かった。また、金属ナノ粒子の形状を特定の範囲に制御可能であることも分かった。また、得られた板状金属ナノ粒子及びその複合体は、導電性インク、導電性コーティング、導電性隙間充填剤、装飾剤、エンボス等の塑性造形への応用が期待できる。

Claims (2)

  1. 板状金属ナノ粒子の製造方法であって、
    前記製造方法は、下記式(X2)の構造を有する不飽和脂肪酸を含む溶液と、金属イオンを含む溶液とを混合して、前記金属イオンを還元させることを含み、
    前記不飽和脂肪酸を含む溶液中の前記不飽和脂肪酸の濃度が、前記不飽和脂肪酸を含む溶液の総重量に対して、0.1~5wt%であり、
    前記還元時の反応温度が室温~90℃である、板状金属ナノ粒子の製造方法。
    -CH=CH-R-COOH ・・・(X2)
    (式(X2)中、Rは、水素、又は炭素数1~16のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~4のアルキレン基、CHCH(-COOH)CH基、又はCH(-COOH)CH基を表す。)
  2. 前記金属イオンが貴金属イオンを含む、請求項1に記載の板状金属ナノ粒子の製造方法。
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