JP7484974B2 - 凝集状態の判断方法及び凝集処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、凝集状態の判断方法及び凝集処理方法に関する。
各種排水・用水から濁質及び有機物等を除去するために凝集処理を行う場合、塩化鉄やポリ塩化アルミニウムなどの無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用することがある。これにより、被処理液中の粒子が凝集し、後段の固液分離操作が容易になる。さらに無機凝集剤の添加量を抑えることによる汚泥発生量の削減が可能となる。
また、排水の生物処理によって発生した汚泥を脱水処理する場合にも、脱水処理に先立ち、無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用して凝集処理することがある。これにより、効率的に汚泥を荷電中和するとともにフロック強度が向上し、脱水処理後の汚泥(脱水ケーキ)の含水率を大きく低下させることが可能となる。
凝集剤は、被処理液の水質や被処理汚泥の性状に応じて適切な量を添加する必要がある。排水、用水の凝集処理においては、凝集剤の添加量(薬注量)が不足すると、被処理液中に含まれる濁質や有機物の除去が不十分となり、処理液の水質が悪化する。一方、薬注量が過剰であると、凝集剤が後段へリークし、後段処理での負荷増大や後段の処理装置の汚染を引き起こす可能性がある。
また、汚泥処理においては、薬注量が不足すると汚泥の荷電中和が不十分となり、更にはフロック強度が低下して脱水ケーキの含水率が上昇したり、脱水分離液に汚泥がリークしたりすることがある。また、薬注量が過剰となった場合にもフロック強度は低下するため、脱水ケーキの含水率が上昇したり、脱水分離液に汚泥がリークしたりすることがあった。
最適な薬注量を決定するためには、ジャーテストや凝集、濾過、圧搾テスト(ヌッチェテスト)等の机上テストを行うことが基本である。また、従来、脱水機の運転管理において、問題が生じた際に操作すべき因子と操作量は、作業者の運転経験による判断や、上記のような机上試験による脱水効果(ろ過性やフロック強度、脱水ケーキ含水率など)の確認結果によって決定される。
しかしながら、作業者の経験による判断は、定性的なものであるため、状況改善を達成するために予定以上の時間を必要としたり、間違った操作をすることでかえって脱水効果を悪化させたりしてしまうことがある。また、机上テストによる判断は、定量的ではあるが連続的な評価が困難であるため、机上テストの結果を反映した運転条件の変更までに時間を要する。
上記のような問題を解決する方法として、特許文献1には、レーザ光を被処理液中に向けて照射し、被処理液中の粒子によって散乱される散乱光を受光して粒子の凝集状態を測定する凝集状態モニタリングセンサを用いて凝集剤添加を制御することが記載されている。
特開2017-26438号公報
特許文献1に記載の技術によれば、被処理液中の散乱光を利用した凝集モニタリング装置によって得られる散乱光の受光信号強度の振幅(変化幅)から凝集指標を生成し、凝集粒の粒子径分布状態を推定できるとされており、凝集剤の添加量の過不足を評価し、凝集剤の添加量を連続的に調整することが可能であるとされている。しかしながら、本発明者らによる検討の結果、凝集フロック粒子径と受光信号強度の振幅から生成した凝集指標の相関関係は、水中散乱光を利用した凝集モニタリング装置の物理的な計測領域との関係で、前記凝集指標が変動する場合があることが見出された。つまり、要求される薬注量と凝集指標との関係が一様でなくなり、薬注量が過剰な状態であっても、薬注量が不足していると判断してしまうことがある、言い換えると、実際の粒子径が大きいにもかかわらず、粒子径が小さいと判断してしまうことがある。その結果、薬注量の制御が安定せず、過剰量の凝集剤を添加し続ける事態が発生してしまうことがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被処理液中の粒子の凝集状態を広範囲の粒子径にわたって判断することが可能な凝集状態の判断方法及び凝集処理方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 本発明の第1の態様に係る凝集状態の判断方法は、粒子を含む液体中にレーザ光を照射して上記レーザ光が上記粒子により散乱した散乱光の受光強度を基に上記粒子の凝集状態を判断する方法であって、上記受光強度の変動を表す変動指標に基づいて上記粒子の凝集状態を判断する。
[2] 上記[1]に記載の凝集状態の判断方法では、上記変動指標が(1)式で表される受光量変動指標CIであってもよい。
Figure 0007484974000001
上記(1)式中、
i:i回目のフロック形成状態計測時間域における上記受光強度の積分値
ave:上記フロック形成状態計測時間域において上記受光強度をn回取得したときの、上記フロック形成状態計測時間域における上記受光強度の積分値の平均値
である。
[3] 上記[1]又は[2]に記載の凝集状態の判断方法では、上記変動指標が、第1の閾値以上、かつ上記第1の閾値よりも大きな値である第2の閾値以下である場合に凝集状態が良好であると判断してもよい。
[4] 上記[1]~[3]のいずれかに記載の凝集状態の判断方法では、上記変動指標に加え、上記粒子の粒子径と上記受光強度の変化幅の関係に基づいて、上記粒子の凝集状態を判断してもよい。
[5] 上記[1]~[4]のいずれかに記載の凝集状態の判断方法では、上記変動指標と粒子径との関係を予め取得し、上記関係を基に決定された粒子径範囲で上記変動指標に基づく判断を行ってもよい。
[6] また、本発明の別の態様に係る凝集処理方法は、粒子を含む液体中に凝集剤を添加して上記粒子を凝集する凝集処理方法であって、上記液体中にレーザ光を照射し、上記レーザ光が上記粒子により散乱した散乱光の受光強度の変動を表す変動指標に基づいて上記粒子の凝集状態を判断する判断工程と、上記判断工程において判断された上記粒子の凝集状態に基づいた添加量で上記凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、を有する。
[7] 上記[6]に記載の凝集処理方法では、上記変動指標が(2)式で表される受光量変動指標値CIであってもよい。
Figure 0007484974000002
上記(2)式中、
i:i回目のフロック形成状態計測時間域における上記受光強度の積分値
ave:上記フロック形成状態計測時間域において上記受光強度をn回取得したときの、上記フロック形成状態計測時間域における上記受光強度の積分値の平均値
である。
[8] 上記[6]又は[7]に記載の凝集処理方法では、上記変動指標が第1の閾値未満である場合、上記凝集剤の添加量を増加し、上記変動指標が上記第1の閾値より大きな値である第2の閾値超である場合、上記凝集剤の添加量を減少してもよい。
[9] 上記[8]に記載の凝集処理方法では、上記変動指標が、上記第2の閾値超となった後、上記第1の閾値よりも大きく、上記第2の閾値よりも小さい値である第3の閾値に到達したときに、上記凝集剤の添加量の減少を停止してもよい。
本発明の上記態様によれば、被処理液中の粒子の凝集状態を広範囲の粒子径にわたって判断することができる。
本発明の第1の実施形態に係る凝集状態の判断方法を適用可能な凝集処理装置の構成の一例を示す構成図である。 凝集状態モニタリングセンサが有するプローブの構成の一例を示す構成図である。 凝集状態モニタリングセンサの計測領域の模式図である。 凝集状態モニタリングセンサによる検出波形の一例を示す図である。 凝集状態モニタリングセンサによる検出波形の一例を示す図である。 粒子径と受光強度変化幅の関係の検討に用いた装置を説明するための図である。 粒子径と大ピーク出現率の関係を示すグラフである。 本発明者らの考察を説明するための図である。 本発明者らの考察を説明するための図である。 計測領域Aの直径より大きい粒子径を有する粒子が計測領域Aを通過する際の通過パターンと散乱光の散乱方向を説明するための図である。 受光強度の経時変化を示す検出波形図の面積を説明するための図である。 粒子径と受光量変動指標CI(3)との関係の一例を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る凝集処理方法の流れを示すフローチャートである。 実施例における高分子凝集剤の薬注出力の経時変化を示すグラフである。 受光量変動指標CI(3)の経時変化を示すグラフである。
<<凝集処理装置の構成例>>
まず、本発明の一実施形態に係る凝集状態の判断方法を適用可能な凝集処理装置の一例を説明する。図1は、本実施形態に係る凝集状態の判断方法を適用可能な凝集処理装置の一例を示す構成図である。
図1に示すとおり、この凝集処理装置では、被処理液が流量計2を有する流入管1を介して処理槽3に導入され、薬注装置4によって凝集剤が処理槽3に添加される。処理槽3には撹拌機3aと、凝集状態モニタリングセンサ10が設置されており、凝集状態モニタリングセンサ10により生成される検出信号が制御器8に入力される。制御器8はこの検出信号に基づいて薬注装置4を制御する。
凝集剤は、無機凝集剤であってもよく、有機凝集剤であってもよく、それらの併用であってもよい。
凝集状態モニタリングセンサ10には、好ましくは、特許文献1に記載のものが用いられる。凝集状態モニタリングセンサ10は、プローブ100を有する。図2は、凝集状態モニタリングセンサ10が有するプローブ100の構成を示している。このプローブ100は、互いに直交する面101a,101b及びそれらが交わる頂部101cを有したブロック101と、面101aに沿って設けられ、被処理液に向ってレーザ光を照射する発光部102と、面101bに沿って設けられ、受光光軸を発光部102の発光光軸と直交方向とした受光部103とを有する。また、凝集状態モニタリングセンサ10は、発光部102の発光作動及び受光部103の受光信号の解析を行うために、発光回路、検波回路及び計測回路(図示せず。)を備えている。計測回路は、タイミング回路、A/D変換部、演算部等を有する。
特許文献1と同様に、プローブ100では、発光部102から、頂部101c近傍の計測領域Aに照射されたレーザ光が計測領域A内の粒子によって散乱される。この散乱光が受光部103で受光され、受光部103が受光した散乱光の強度の経時変化に基づいて凝集状態が計測される。なお、ブロック101は不透明材料よりなる。レーザ光Lの光軸と垂直な断面における計測領域Aの直径、言い換えるとレーザ光Lの直径は、例えば、1mmである。後述するように、計測領域Aの直径は、粒子径と受光部103が受ける散乱光の強度である受光強度の変化幅との相関が反転する閾値である。したがって、要求される凝集状態を適切に判断するため、計測領域Aの直径は適宜変更されてもよい。
発光回路は、タイミング回路からの信号に応じて発光部に一定の変調周波数を持った電気信号を発光部102に送信する。発光部102は、発光回路からの信号によって、レーザ光を発光する。受光部103は、レーザ光が被処理水に含まれる粒子に当たって発生した散乱光を受けて、散乱光を電気信号に変換する。検波回路は、受光部103からの電気信号に含まれる変調成分を除去し、受光強度に応じた受光電圧を出力する。
計測回路は、発光回路に発光のための信号(特定の周波数変調波)を送信すると共に、検波回路からの信号をデジタル信号に変換し、論理演算して凝集に関する情報を出力する。
凝集状態モニタリングセンサ10としては、特許文献1のモニタリング装置、特にそれが特許された特許第6281534号公報に記載のモニタリング装置を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
なお、特許第6281534号の凝集モニタリング装置は、
「 凝集処理される被処理液の処理状態を監視する凝集モニタリング装置であって、
計測光を前記被処理液の計測領域に照射する計測光照射部と、
前記計測領域にある前記被処理液の粒子による散乱光を受光する散乱光受光部と、
前記散乱光受光部に得られる受光信号の振幅を計測する振幅計測手段を含み、計測された前記振幅の出現を監視及び集計し、特定の振幅の発生率又は発生頻度を算出して、前記被処理液中のフロックの粒子径を表す前記被処理液の凝集に関わる指標を算出する計測値演算部と、
を備え、
前記振幅計測手段は、前記受光信号が上昇から下降に変化する第1の変曲点及び下降から上昇に変化する第2の変曲点を検出し、前記第1の変曲点及び第2の変曲点のレベル差から前記振幅を計測することを特徴とする凝集モニタリング装置。」
である。
ここまで、本実施形態に係る凝集状態の判断方法を適用可能な凝集処理装置の一例を説明した。
<<凝集状態の判断方法>>
続いて、本発明の第1の実施形態に係る凝集状態の判断方法を説明する。本実施形態に係る凝集状態の判断方法は、粒子を含む液体中にレーザ光を照射してレーザ光が粒子により散乱した散乱光の受光強度を基に粒子の凝集状態を判断する方法であって、受光強度の変動を表す変動指標の値に基づいて粒子の凝集状態を判断する。
本実施形態に係る凝集状態の判断方法は、粒子を含む液体中にレーザ光を照射して当該レーザ光が当該粒子により散乱した散乱光の受光強度を基に粒子の凝集状態を判断する方法である。レーザ光の照射、散乱光の受光、及び受光強度の算出には、公知の方法を採用することができ、例えば、上述した凝集処理装置に設けられた凝集状態モニタリングセンサ10を用いてもよい。以下では、凝集状態モニタリングセンサ10を用いた場合を例に挙げて凝集状態の判断方法を説明する。
本実施形態では、凝集状態モニタリングセンサ10により受光強度を取得する。図3に示すように、ある時点では、例えば、計測領域Aに5個の粒子が存在している。図2に示すように、この時点で計測領域Aに照射されたレーザ光Lが、各粒子によって散乱され、散乱光Lsが受光部103に入射する。この時点から所定時間Δtが経過した時点では、計測領域Aに存在する粒子数が変動する。理論上は、粒子数が変化しないこともあるが、粒子がブラウン運動し、また処理槽3内の被処理液が撹拌されているので、通常は該粒子数は変動する。所定時間Δtは、好ましくは0.1~10mSecの間から選定された時間であり、例えば、約1mSecである。
粒子数が変動すると、それに連動して散乱光強度が変動し、受光部103による散乱光の受光強度が変動する。
粒子径が計測領域Aの直径以下である場合、粒子径が大きいほど、1個の粒子が計測領域Aに出入りしたときの受光強度変化幅が大きくなる。従って、この受光強度変化幅から、計測領域Aに出入りした粒子の粒子径の大小を検出することができる。すなわち、任意の時刻tの受光強度と、Δt経過後の時刻tk+1の受光強度との差は、該Δtの間に計測領域Aに出入りした粒子の表面積に比例した値となる。
図4Aは、受光強度の経時変化の一例を示している。図4Aにおける出力信号は、受光部103の受光強度であり、単位は、例えばmVである。
図4Aは、時刻t,t…tの各時刻において測定された受光強度をプロットしたグラフであり、各時刻の間隔Δt(すなわちt-tk-1)は前述の通り、好ましくは0.1~10mSec、例えば1mSecである。
図4Bは、図4Aにおいて、極小点P,P…と、極大点Q,Q…とを記入し、受光強度変化幅すなわち極小点と極大点との差h,h…を記入した説明図である。なお、以下、極大点の数をピーク数ということがある。
上述の通り、任意の時刻tk-1の受光強度と時刻tの受光強度との差hは、時刻tk-1~t間に計測領域A出入りした粒子の表面積に比例した値である。
時刻t~tのΔt×z秒間におけるすべての受光強度変化幅h,h…hより、この時刻t~tの間に計測領域A付近に存在する粒子の粒子径分布が検出される。zは例えば200とされ、Δt=1mSecである場合Δt×zは0.2秒となる。ただし、これは一例であり、0.01~900秒程度であればよい。
ここで、図5~8を参照して、粒子径と受光強度変化幅の関係を説明する。本発明者らは、粒子径と受光強度変化幅の関係について検討を行った。図5は、粒子径と受光強度変化幅の関係の検討に用いた装置を説明するための図であり、図6は、粒子径と受光強度変化幅の関係の検討により得られた粒子径と大ピーク出現率との関係を示すグラフである。大ピーク出現率とは、全ピーク数に対する受光強度変化幅が4000mV以上のピークの出現率をいう。図7、8は、本発明者らの考察を説明するための図である。
濃度が乾燥重量で1.0重量%となるように、黒色の人工粒子を水中に分散させた模擬被処理液を調製した。人工粒子には、先端にシリンジを設けたチューブを通じて1質量%塩化カルシウム水溶液に1質量%の塗料を含有するアルギン酸ナトリウム水溶液を添加してゲル化させて製造したものを用いた。アルギン酸ナトリウム水溶液の添加速度は株式会社タクミナ製のスムースフローポンプを用いて流量を調整した。アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度、添加速度、及びシリンジ形状を変更して0.5~3.0μmの人工粒子を製造した。
処理槽は、図5に示すように、内径Rが154mm、正面視でθ=90°の角度のテーパを底部に有するものを用いた。模擬被処理液の撹拌には、水平面から45°傾斜した4枚の羽根板を有するピッチドパドル型撹拌翼を用いた。撹拌翼の直径r(回転中心を通る、羽根板先端間の距離r)は75mmであり、各羽根板の上端と下端の距離は10mmであった。当該撹拌翼を、処理槽の中心であってテーパ上端から各羽根板の上端までの距離dを45mmとした。
凝集状態モニタリングセンサ(栗田工業株式会社製S.sensing CS-P)を撹拌翼の上部に配置し、3Lの被処理液を処理槽に供給した。凝集状態モニタリングセンサが有するプローブの計測領域の直径は1mmである。そして、撹拌速度を300rpm、解析時間を3分間として、受光強度を測定し、人工粒子の粒子径ごとの大ピーク出現率を算出した。なお、照射するレーザ光のデューティ比は10%(発光時間200mSec、休止時間1800mSec)とした。結果を図6に示す。
図6に示すように、粒子径が計測領域の直径より小さい場合、粒子径の増大に伴って大ピーク出現率が高くなり、粒子径が計測領域の直径より大きい場合、粒子径の増大に伴って大ピーク出現率が低くなることが分かった。
上記の検討結果について、本発明者らは以下のように考察している。図7に示すように、計測領域A内を通過する粒子径が計測領域Aの直径より小さい範囲では、粒子径が大きくなるほど、レーザ光の投影面積が大きくなるので、大きい散乱光量変化をもたらす。これにより、受光部103が受光する散乱光の光量である受光量の変化も大きくなる。一方、図8に示すように、計測領域A内を通過する粒子の粒子径が計測領域の直径より大きい範囲では、粒子径が大きくなるほど粒子表面の曲率が小さくなることで散乱光の散乱角度が小さくなり、受光部103に到達する散乱光が減少するので、小さい散乱光量変化をもたらす。これにより、受光量の変化が小さくなる。このことから、計測領域A内を通過する粒子の粒子径に対する受光強度変化幅の相関関係は、計測領域直径を境に反転する。
また、図9に、計測領域Aの直径より大きい粒子径を有する粒子が計測領域Aを通過する際の通過パターンと散乱光の散乱方向を説明するための図を示す。図9の(A)に示すような、計測領域Aにおける受光部103とは反対側の部分を粒子の一部が通過する場合、発光部102から照射されるレーザ光の方向と、散乱光の散乱方向とのなす角が小さいため、受光部103が受光する散乱光量が減少する。その結果、受光部103が生成する受光強度が小さくなる。言い換えると、検波波形のピーク高さが低くなる。
図9の(B)に示すような、計測領域A全体を粒子が通過する場合、散乱光が受光部103に向かいやすくなるため、受光部103が受光する散乱光量は多くなる。その結果、受光部103が生成する受光強度が大きくなる。言い換えると、検波波形のピーク高さが高くなる。
図9の(C)に示すような、計測領域Aにおける受光部103側の部分を粒子の一部が通過する場合、散乱光が受光部103とは反対方向に向かうため、受光部103は散乱光を受光しない。その結果、検波波形はピークを示さない。
このように、計測領域Aを粒子が通過する際の通過パターンによってレーザ光の投影面積や散乱光の散乱方向が変わるため、検波波形がばらつくと考えられる。
本発明者らは、さらに鋭意検討し、粒子径が計測領域の直径の前後で変化しても、粒子径の大小を把握できる指標「受光量変動指標CI(3)」を見出した。受光量変動指標CI(3)は、フロック形成状態計測時間域をn回取ったときの受光強度の各積分値(面積Si)の不偏絶対偏差をS1~Snの平均値Saveで除した統計量であり、下記(3)式で表される。受光強度の積分値は、図10の斜線部の領域で示される面積に対応する。
Figure 0007484974000003
図6の結果が得られた検討で得られたデータから算出した、受光量変動指標CI(3)と粒子径との関係を図11に示す。図11は、粒子径と受光量変動指標CI(3)との関係の一例を示すグラフである。図11に示すように、粒子径が大きい程、受光量変動指標CI(3)が上昇することが分かった。
したがって、上述した受光量変動指標CI(3)を用いることで、被処理液中の凝集状態を判断することができる。詳細には、表1に示すとおり、受光量変動指標CI(3)が大きい程、粒子径が大きいと判断する。
Figure 0007484974000004
上記のとおり、粒子径と受光強度変化幅との相関に基づいて粒子の凝集状態を判断することができる。以下では、より詳細に凝集状態の判断方法の例を説明する。
凝集状態の判断は、例えば、以下の方法で行われればよい。例えば、受光量変動指標CI(3)が予め設定した第1の閾値以上、第1の閾値より大きい第2の閾値以下であれば、凝集状態が良好と判断する。受光量変動指標CI(3)が第1の閾値未満であれば、凝集が不十分であり、粒子径が小さ過ぎると判断することができ、受光量変動指標CI(3)が第2の閾値超であれば、粒子径が大きすぎると判断することができる。
第1の閾値及び第2の閾値を求めるには、例えば、凝集処理装置により所定期間(例えば1週間~1か月程度)被処理液に対して凝集処理を行う。このとき、凝集状況を見ながら薬注量を調整するとともに、凝集状態モニタリングセンサの受光強度の経時変化を記録する。そして、当該期間において、粒子径が適正範囲の下限になったときの受光量変動指標CI(3)を第1の閾値とし、粒子径が適正範囲の上限になったときの受光量変動指標CI(3)を第2の閾値とする。
<<凝集状態の判断方法の第1の変形例>>
上述した凝集状態の判断方法は、受光量変動指標CI(3)のみに基づく判断を含む凝集処理方法であったが、本実施形態に係る凝集処理方法は、受光量変動指標CI(3)に加え、散乱光の受光強度変化幅に基づく判断を行うことが好ましい。粒子径が小さい範囲では、受光強度変化幅の方が受光量変動係数よりも粒子径の変化をより正確に把握することができる。そのため、受光量変動指標CI(3)に加え、散乱光の受光強度変化幅に基づく判断を行うことで、より正確に凝集状態を判断することができる。なお、散乱光の受光強度変化幅に基づく判断とは、例えば、上述した粒子径と受光強度変化幅の関係を用いた凝集状態の判断である。
<<凝集状態の判断方法の第2の変形例>>
また、受光量変動指標CI(3)と粒子径との関係を予め取得し、関係を基に決定された粒子径範囲で受光量変動指標CI(3)に基づく判断を行ってもよい。これにより、定められた粒子径範囲での判断を複雑にすることなく、正確に凝集状態を把握することができる。
<<凝集状態の判断方法の第3の変形例>>
上述した凝集状態の判断方法は、第1の閾値及び第2の閾値が設定された場合の凝集処理方法であったが、本実施形態に係る凝集処理方法は、第1の閾値又は第2の閾値のいずれかのみを設定した凝集処理方法であってもよい。このような場合にも、受光量変動指標CI(3)に基づく判断に加え、上述した散乱光の受光強度変化幅に基づく判断を行ってもよい。
通常、凝集処理において供給される被処理液の粒子濃度は、基本的に大きな変動はないが、一時的に粒子濃度が変動する場合がある。例えば、被処理液の粒子濃度が一時的に減少した場合、粒子濃度あたりの凝集剤量が増加することになる。このとき、粒子濃度の減少前よりも粒子径が大きくなりやすくなる。散乱光の受光強度変化幅に基づく判断を行っている場合、粒子径が計測領域の直径よりも大きくなると、受光強度変化幅が小さくなるため、受光強度変化幅に基づく判断のみでは、正確な凝集状態の判断が不十分になることがある。しかしながら、粒子径と受光量変動係数は広い範囲で正の相関を有するため、受光強度変化幅に基づく判断に加え、第2の閾値を設定した受光量変動指標CI(3)に基づく判断を行うことで、正確な凝集状態の判断が可能となる。
粒子径が計測領域の直径よりも大きくなるようなことが想定されないような凝集処理においては、第1の閾値を設定した受光量変動指標CI(3)に基づく判断を行うことで、凝集が不十分となることを防止することができる。
<<凝集処理方法>>
続いて、本発明の第2の実施形態に係る凝集処理方法を説明する。本実施形態に係る凝集処理方法は、粒子を含む液体中に凝集剤を添加して前記粒子を凝集する凝集処理方法であって、前記液体中にレーザ光を照射し、前記レーザ光が前記粒子により散乱した散乱光の受光強度より、(3)式から算出される受光量変動指標CI(3)に基づいて前記粒子の凝集状態を判断する判断工程と、前記判断工程において判断された前記粒子の凝集状態に基づいた添加量で前記凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、を有する。以下に、図12を参照して、本実施形態に係る凝集処理方法の具体的流れの一例を説明する。図12は、本実施形態に係る凝集処理方法の流れを示すフローチャートである。
まず、被処理液が撹拌されている処理槽に凝集剤の供給を開始する(ステップS1)。このとき、被処理液は処理槽に連続的に供給されている。
続いて、受光強度を連続して算出し、算出された受光強度から受光量変動指標CI(3)を算出し、受光量変動指標CI(3)が第1の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS2)。
受光量変動指標CI(3)が第1の閾値未満である場合(ステップS2/NO)、薬注量(薬注速度)を増量する(ステップS3)。薬注量の増量には、薬注装置の出力(ポンプストローク、ポンプパルス、回転速度等)を上昇させる。その後、増量後の薬注量で凝集剤の添加が継続される。言い換えるとステップS1以降のステップが実施される。一方、受光量変動指標CI(3)が第1の閾値以上である場合(ステップS2/YES)、受光量変動指標CI(3)が第2の閾値以下であるか否か判定される(ステップS4)。
受光量変動指標CI(3)が第2の閾値以下である場合(ステップS4/YES)、薬注速度が変更されることなく、凝集剤の添加が継続される。一方、受光量変動指標CI(3)が第2の閾値超である場合(ステップS4/NO)、薬注装置4は薬注量(薬注速度)を減量する(ステップS5)。薬注量の減量には、薬注装置の出力を低下させる。その後、減量後の薬注量で凝集剤の添加が継続される。言い換えるとステップS1以降のステップが実施される。
受光量変動指標CI(3)が第1の閾値以上、第2の閾値以下の場合(ステップS4/YES)、被処理液の添加が終了しているか否か判断される(ステップS6)。被処理液の添加が終了した場合(ステップS6/YES)、凝集剤の添加を終了し、凝集処理が終了する。一方、被処理液の添加が継続している場合(ステップS6/NO)、ステップS1以降のステップが順次繰り返される。
<<凝集処理方法の変形例>>
本実施形態に係る凝集処理方法では、受光量変動指標CI(3)が、第2の閾値超となった後、第1の閾値よりも大きく、第2の閾値よりも小さい値である第3の閾値に到達したときに、薬注量の減少を停止することが好ましい。受光量変動指標CI(3)が第2の閾値から第1の閾値まで低下した段階で薬注量の減少を停止すると、薬注量が過少になり、粒子の凝集が不十分になることがある。しかしながら、受光量変動指標CI(3)が、第2の閾値超から第1の閾値よりも大きく、第2の閾値よりも小さい値である第3の閾値に到達したときに薬注量の減少を停止することで、薬注量が過少にならず、凝集を継続することができる。
以上、本発明の実施形態に基づき、本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。上記はあくまでも例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、上述した凝集処理装置は、あくまでも一例であり、図1では、制御器8と凝集状態モニタリングセンサ10とを別個に設置しているが、凝集状態モニタリングセンサ10の信号処理部に制御器8の制御プログラムを組み込み、凝集状態モニタリングセンサ10から薬注装置4に制御信号を与えるようにしてもよい。
また、凝集状態モニタリングセンサ10は、処理槽3からの凝集液流出配管に設置されてもよい。また、処理槽3内の液が導入される計測槽を設け、この計測槽に凝集状態モニタリングセンサ10を設置してもよい。
また、上述したプローブでは、発光部102と受光部103とは互いに直交しているが、これに限らず、発光部102と受光部103とは他の角度をなすように配置されていてもよい。発光部102と受光部103とのなす角は、例えば、10°以上170°以下とすることができる。
また、所定の時間間隔で発光、非発光を繰り返すことで発光素子の使用時間を延長することができる。例えば、発光時間を0.2秒/回、発光間隔を2秒とした場合、連続で発光した場合に比較して発光素子の使用時間(寿命)を10倍に延長することが可能となる。
また、上述した凝集剤添加工程の例は、あくまでも一例であり、本発明に係る凝集状態の判断方法により判断された凝集状態に基づいて凝集剤は添加されればよい。
<<その他の変形例>>
上述した凝集状態の判断方法及び凝集処理方法では、変動指標には上記(3)式で表される受光量変動指標CI(3)を用いたが、以下の(4)~(8)式で表される受光量変動指標CI(4)~CI(8)を用いてもよい。
受光量変動指標CI(4)は、フロック形成状態計測時間域をn回取ったときの受光強度の各積分値(面積Si)の不偏標準偏差をS1~Snの平均値Saveで除した統計量であり、下記(4)式で表される。
Figure 0007484974000005
受光量変動指標CI(5)は、フロック形成状態計測時間域をn回取ったときの受光強度の各積分値(面積Si)の絶対偏差をS1~Snの平均値Saveで除した統計量であり、下記(5)式で表される。
Figure 0007484974000006
受光量変動指標CI(6)は、フロック形成状態計測時間域をn回取ったときの受光強度の各積分値(面積Si)の標準偏差をS1~Snの平均値Saveで除した統計量であり、下記(6)式で表される。
Figure 0007484974000007
上記(4)~(6)式中、
i:i回目のフロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値
ave:フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の平均値
である。
受光量変動指標CI(7)は、フロック形成状態計測時間域をn回取ったときの受光強度の各積分値(面積Si)の中央絶対偏差を中央値S50で除した統計量であり、下記(7)式で表される。
Figure 0007484974000008
受光量変動指標CI(8)は、フロック形成状態計測時間域をn回取ったときの受光強度の各積分値(面積Si)の中央標準偏差を中央値S50で除した統計量であり、下記(8)式で表される。
Figure 0007484974000009
上記(7)~(8)式中、
i:i回目のフロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値
50:フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の中央値(50パーセンタイル値)
である。
また、変動指標には、粒子径との相関が取れれば、上記(3)~(8)式における基準点(Save、S50)は、第一四分位、中央値、第三四分位、最大値、その他任意のパーセンタイルに変更されてよい。また、上記(3)~(8)式に任意の係数を掛けた統計量、平均値又は中央値での除算をせずに算出された統計量、分子及び分母の少なくともいずれかをその値で乗じた統計量等を用いてもよい。
次に本発明の実施例を示すが、実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
<実施例1>
複数の変動指標と粒子径の各相関関係の比較を行った。
濃度が乾燥重量で1.0重量%となるように、黒色の人工粒子を水中に分散させた模擬被処理液を調製した。人工粒子には、先端にシリンジを設けたチューブを通じて1質量%塩化カルシウム水溶液に1質量%の塗料を含有するアルギン酸ナトリウム水溶液を添加してゲル化させて製造したものを用いた。アルギン酸ナトリウム水溶液の添加速度は株式会社タクミナ製のスムースフローポンプを用いて流量を調整した。アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度、添加速度、及びシリンジ形状を変更して、表2に示すような、平均粒子径及び粒子径ごとの重量比率を有する人工粒子を製造した。
Figure 0007484974000010
処理槽には、図5に示すように、内径Rが154mm、正面視でθ=90°の角度のテーパを底部に有するものを用いた。被処理液の撹拌には、水平面から45°傾斜した4枚の羽根板を有するピッチドパドル型撹拌翼を用いた。撹拌翼の直径r(回転中心を通る、羽根板先端間の距離r)は75mmであり、各羽根板の上端と下端の距離は10mmであった。当該撹拌翼を、処理槽の中心であってテーパ上端から各羽根板の上端までの距離dを45mmとした。
凝集状態モニタリングセンサ(栗田工業株式会社製S.sensing CS-P)を撹拌翼の上部に配置し、3Lの被処理液を処理槽に供給した。凝集状態モニタリングセンサが有するプローブの計測領域の直径は1mmであった。そして、撹拌速度を300rpm、解析時間を3分間として、受光強度を測定し、人工粒子の粒子径ごとの大ピーク出現率を算出した。なお、照射するレーザ光のデューティ比は10%(発光時間200mSec、休止時間1800mSec)とした。
表3に示す各計算式[1]~[6]で表される統計量を変動指標として、各変動指標と粒子径との相関性を示す決定係数Rを算出した。表3に示される各計算式における、Siは、i回目のフロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値であり、Sαは、各変動指標を算出するための基準点であり、表3に示す、フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の平均値(表3におけるave)、フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の最小値(表3におけるmin)、フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の各パーセンタイル、及び、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の最大値(表3におけるmax)である。表3に、算出された決定係数Rを示す。
Figure 0007484974000011
表3に示すように、概ね良好な関係性(R≧0.80)であった。ただし、表4中の計算式[3]において、Sαを、フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の最小値とした場合、フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の95パーセンタイルとした場合、及び、フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の最大値とした場合、並びに、計算式[6]において、Sαを、フロック形成状態計測時間域において受光強度をn回取得したときの、フロック形成状態計測時間域における受光強度の積分値の最大値とした場合、決定係数Rが0.80未満となり、他の場合と比較して、相関性が低かった。
凝集センサでは間欠的な計測を行うことによる標本データの解析を行っていること、パーセンタイルの解析の必要なく算術平均値を用いる分かりやすい計算であることから、表3中の計算式[2]及び計算式[5]において基準点SαにSaveを適用した変動指標を用いることが好ましい。表3中の計算式[2]及び計算式[5]において基準点SαにSaveを適用した変動指標のうち、計算式[2]において基準点SαにSaveを適用した変動指標を用いた場合に、より高い相関性が得られた。したがって、計算式[2]において基準点SαにSaveを適用した変動指標を用いることがより好ましいことが分かった。ただし、決定係数Rが0.80以上であれば、表3に示したいずれの統計量を用いても被処理液中の粒子の凝集状態を広範囲の粒子径にわたって判断することができる。さらに、決定係数Rが0.80以上であれば、上記計算式[1]~[6]に任意の係数を掛けた統計量、平均値又は中央値での除算をせずに算出された統計量、分子及び分母の少なくともいずれかをその値で乗じた統計量等を用いてもよい。
<実施例2>
浮遊物質(Suspended Solids;SS)量が0.8%である被処理液を供給速度23m/hで処理槽に供給し、処理槽内の被処理液に凝集剤を連続的に添加した。凝集剤には、無機凝集剤と高分子凝集剤を併用した。無機凝集剤には、ポリ硫酸第2鉄を用い、その濃度は1432mg/Lとし、浮遊物質量に対する添加率は18.2%/SSとした。無機凝集剤の添加率は、浮遊物質の重量に対する無機凝集剤の乾燥重量の比率(単位%/SS)とした。高分子凝集剤には、両性高分子凝集剤である、2-(メタクロイルオキシ)エチル(トリメチル)アンモニウムクロリドと、2-(アクロイルオキシ)エチル(トリメチル)アンモニウムクロリドと、アクリル酸と、アクリルアミドと、を構成単位とする共重合物を用いた。なお、2-(メタクロイルオキシ)エチル(トリメチル)アンモニウムクロリド及び2-(アクロイルオキシ)エチル(トリメチル)アンモニウムクロリドはカチオン性単量体であり、アクリル酸はアニオン性単量体であり、アクリルアミドは非イオン性単量体である。高分子凝集剤の薬注出力を意図的に変更した。
凝集状態モニタリングセンサ(栗田工業株式会社製S.sensing CS-P)を用いて受光強度を連続的に測定し、受光量変動指標CI(3)を算出した。
図13Aに高分子凝集剤の薬注出力の経時変化を示し、図13Bに受光量変動指標CI(3)の経時変化を示す。
時刻T0からT1までは、図13Bに示すように、受光量変動指標CI(3)が15%となるように高分子凝集剤の薬注出力を制御した。時刻T1、T2において、それぞれ高分子凝集剤の薬注出力を26%及び30%に設定した。図13Aに示すように、薬注出力を変更した、時刻T1、T2の時点から実際の薬注が変化するまでにはタイムラグがあった。受光量変動指標CI(3)が25%となった時点から、PID制御にて、高分子凝集剤の薬注出力を減少させ、その後、図13Bに示すように、受光量変動指標CI(3)が20%になった時刻T3以降は、受光量変動指標CI(3)が15%となるように高分子凝集剤の薬注出力を制御した。受光量変動指標CI(3)25%は、粒子径の適正範囲の上限に対応し、上述した第2の閾値に相当する。また、受光量変動指標CI(3)20%は、上述した第3の閾値に相当する。
また、図13A、13Bに示す各時刻T0、T2、T2’、T4の各時点から3分後において処理液を分取し、分取液を用いてヌッチェテストを行って粒子径を測定した。また、時刻T0、T2、T4の各時点から15分後における処理液を脱水機を用いて脱水した後のろ液中の浮遊物質濃度、及び、脱水ケーキの含水率を測定した。
粒子径は目視にて測定した。具体的には、粒子径を表す標準図に示された、粒子径の異なる粒子を表す複数の図と、ヌッチェテストにより得られた粒子とを比較して、粒子径を測定した。
ろ液中の浮遊物質濃度は、JIS K 0102:2021における「14.2 懸濁物質」に準拠して測定した。
脱水ケーキの含水率は、下水試験方法(2012年版)、第5編第1章第6節に記載の方法で測定した。
図13A、図13Bに示すように、受光量変動指標CI(3)により高分子凝集剤の薬注出力を制御することができることが分かった。
表4に、粒子径、ろ液中の浮遊物質濃度及び脱水ケーキの含水率を示す。表4中の、T0、T2、T2’、T4における、粒子径は、時刻T0、T2、T2’、T4の各時点から3分後の処理液中の粒子の粒子径であることを示している。また、表2中の、T0、T2、T2’、T4における、ろ液中浮遊物質濃度及び脱水ケーキ含水率は、時刻T0、T2、T2’、T4の各時点から15分後の検体についての測定結果を示している。
Figure 0007484974000012
時刻T0、T2、T4の時点では、受光量変動指標CI(3)が第2の閾値25%以下であるが、表4に示すように、受光量変動指標CI(3)が第2の閾値以下であれば、粒子径が1.00mm以下であり、脱水後のろ液に含まれる浮遊物質濃度を低減しつつ、脱水ケーキの含水率も低い値とすることができた。したがって、受光量変動指標CI(3)を用いて凝集剤の添加量を制御することができ、所望の粒子径に調整することができることが分かった。また、受光量変動指標CI(3)を用いることで、脱水ケーキの含水率の上昇の防止、及び、ろ液への粒子の漏出の抑制が可能であることが分かった。
また、第3の閾値(受光量変動指標CI(3)が20%)でPID制御を無効としたことにより、薬注量が過少にならず、適切な粒子径となる添加速度での凝集剤の添加が継続された。
上記実施例では、粒子径の適正範囲の上限である第2の閾値を設定した場合の実施例を説明したが、粒子径の適正範囲の下限である第1の閾値を設定した場合、粒子径が過小になることを防止でき、脱水ケーキの含水率の上昇の防止、及び、ろ液への粒子の漏出の抑制が可能であることは明らかである。
3 処理槽
4 薬注装置
8 制御器
10 凝集状態モニタリングセンサ

Claims (9)

  1. 粒子を含む液体中にレーザ光を照射して前記レーザ光が前記粒子により散乱した散乱光の受光強度を基に前記粒子の凝集状態を判断する方法であって、
    前記受光強度の変動を表す変動指標に基づいて前記粒子の凝集状態を判断し、
    前記変動指標は、フロック形成状態計測時間域をn回取ったときの受光強度の各積分値を使用した統計量である、凝集状態の判断方法。
  2. 前記変動指標が(1)式で表される受光量変動指標CIである、請求項1に記載の凝集状態の判断方法。
    Figure 0007484974000013
    前記(1)式中、
    i:i回目のフロック形成状態計測時間域における前記受光強度の積分値
    ave:前記フロック形成状態計測時間域において前記受光強度をn回取得したときの、前記フロック形成状態計測時間域における前記受光強度の積分値の平均値
    である。
  3. 前記変動指標が、第1の閾値以上、かつ前記第1の閾値よりも大きな値である第2の閾値以下である場合に凝集状態が良好であると判断する、請求項1又は2に記載の凝集状態の判断方法。
  4. 前記変動指標に加え、前記粒子の粒子径と前記受光強度の変化幅の関係に基づいて、前記粒子の凝集状態を判断する、請求項1又は2に記載の凝集状態の判断方法。
  5. 前記変動指標と粒子径との関係を予め取得し、前記関係を基に決定された粒子径範囲で前記変動指標に基づく判断を行う、請求項1又は2に記載の凝集状態の判断方法。
  6. 粒子を含む液体中に凝集剤を添加して前記粒子を凝集する凝集処理方法であって、
    前記液体中にレーザ光を照射し、前記レーザ光が前記粒子により散乱した散乱光の受光強度の変動を表す変動指標に基づいて前記粒子の凝集状態を判断する判断工程と、
    前記判断工程において判断された前記粒子の凝集状態に基づいた添加量で前記凝集剤を添加する凝集剤添加工程と、を有し、
    前記変動指標は、フロック形成状態計測時間域をn回取ったときの受光強度の各積分値を使用した統計量である、凝集処理方法。
  7. 前記変動指標が(2)式で表される受光量変動指標値CIである、請求項6に記載の凝集処理方法。
    Figure 0007484974000014
    前記(2)式中、
    i:i回目のフロック形成状態計測時間域における前記受光強度の積分値
    ave:前記フロック形成状態計測時間域において前記受光強度をn回取得したときの、前記フロック形成状態計測時間域における前記受光強度の積分値の平均値
    である。
  8. 前記変動指標が第1の閾値未満である場合、前記凝集剤の添加量を増加し、前記変動指標が前記第1の閾値より大きな値である第2の閾値超である場合、前記凝集剤の添加量を減少する、請求項6又は7に記載の凝集処理方法。
  9. 前記変動指標が、前記第2の閾値超となった後、前記第1の閾値よりも大きく、前記第2の閾値よりも小さい値である第3の閾値に到達したときに、前記凝集剤の添加量の減少を停止する、請求項8に記載の凝集処理方法。
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