JP7483809B2 - 転がり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり軸受に関し、特に、いわゆる軌道輪案内型の転がり軸受に関する。
径方向に対向配置された状態で複数の転動体を介して相対回転する一対の軌道輪(内輪及び外輪)と、複数の転動体を周方向に間隔を空けて保持する環状の保持器と、を備えた転がり軸受において、保持器は、通常、径方向及び周方向に移動可能な状態で内外輪間に組み込まれる。従って、中立位置に位置する保持器は、各軌道輪との間に径方向すきまを形成すると共に、転動体の収容部(ポケット)に収容された転動体との間に径方向すきま及び周方向すきまを形成する。軌道輪と保持器の間の径方向すきまは「案内すきま」と、また、ポケットの内面と転動体の間の径方向すきま及び周方向すきまはそれぞれ「ポケット径方向すきま」及び「ポケット周方向すきま」とも称される。但し、例えばポケットの形状が径方向に一様な保持器を採用した転がり軸受では「ポケット径方向すきま」が存在しない(ポケット径方向すきまは無限大となる)。
転がり軸受は、「転動体案内型」と「軌道輪案内型」とに大別される。転動体案内型の転がり軸受では、ポケット径方向すきまが案内すきまよりも小さく、保持器の径方向移動がポケットの内面(ポケット面)と転動体の接触により制限されることから、保持器と軌道輪が接触することはない。一方、軌道輪案内型の転がり軸受は、案内すきまがポケット径方向すきまよりも小さい転がり軸受である。軌道輪案内型の転がり軸受のうち、案内すきまがポケット周方向すきまより小さい場合、保持器が中立位置から径方向に移動すると、最初に軌道輪と接触する。案内すきまがポケット周方向すきまより大きい場合は、転動体の配置が等配であれば、保持器が径方向に移動したときに最初に転動体と接触するが、転動体の配置が等配からずれると保持器の可動範囲が変わるため、軌道輪と接触することもあり得る。転がり軸受を転動体案内型又は軌道輪案内型の何れにするか(保持器の案内形式を転動体案内又は軌道輪案内の何れにするか)は、転がり軸受の用途等に応じて適宜選択される。
軌道輪案内型の転がり軸受の作動時(内輪と外輪の相対回転時)には、保持器と軌道輪(内輪又は外輪)の接触に伴って生じる摩擦力により、異音、振動、トルクの増大などの不具合、さらには保持器の破断等の致命的な不具合の発生要因である保持器の高速振れ回り現象(高速ホワール現象)が発生することがある。
そこで、例えば下記の特許文献1においては、保持器に所定のアンバランス量を与えることで保持器を偏心回転可能とし、回転中の保持器の一部を外輪又は転動体に常時接触させることにより、高速ホワール現象の発生、さらにはこれに起因した異音・振動等の不具合発生を可及的に防止するようにしている。
特開2011-196513号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている、高速ホワール現象の発生を防止するための技術手段は、保持器の案内方式として内輪案内方式を採用する転がり軸受には適さないとされており(同文献の段落0036を参照)、実質的には、軌道輪案内方式のうち外輪案内方式の転がり軸受にしか適用することができない。また、特許文献1に記載されている技術手段は、回転数の増加に伴い接触部の接触面圧が上昇し易いことから、軸受のピッチ円直径[mm]と回転数[rpm]の積で表されるdmn値が所定値を超えるような高速回転タイプの転がり軸受には適さない、とされている。しかしながら、高速ホワール現象は、特許文献1に記載の技術手段の適用が難しいとされている転がり軸受、すなわち内輪案内方式の転がり軸受や、軌道輪案内方式でかつ高速回転タイプの転がり軸受においても生じ得る。
係る実情に鑑み、本発明は、高速ホワール現象の発生を可及的に防止することができる軌道輪案内型の転がり軸受を提供することを目的とする。
前述したとおり、軌道輪案内型の転がり軸受では、保持器の径方向移動が、軌道輪(の案内面)と保持器(の被案内面)の接触により制限されることから、案内面及び被案内面の形状等に基づいて幾何学的に保持器中心が存在できる領域、換言すると、保持器が軌道輪(案内輪)と接触することなく移動できる領域(以下、この領域を「保持器可動領域」と言う。)をシミュレーションにより推定することができる。そして、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、高速ホワール現象が発生すると認められる解析条件においては、保持器可動領域の形状が真円形に近づくほど高速ホワール現象が発生し易く、これとは逆に、保持器可動領域の形状が、円形(真円形)から乖離する「いびつな形状」になるほど、高速ホワール現象が発生し難くなることを見出した。本発明は、係る知見に基づいて創案されたものである。
すなわち、上記の目的を達成するために創案された本発明は、複数の転動体を介して相対回転する内輪及び外輪と、転動体を個別に収容した複数のポケットが周方向に間隔を空けて設けられた保持器と、を備え、保持器が、内輪の外周面又は外輪の内周面に設けられた環状の案内面に案内される環状の被案内面を有し、上記案内面と上記被案内面の間に形成される径方向すきまが、保持器のポケット内面と転動体の間に形成される径方向すきまよりも小さい転がり軸受において、中立位置に位置している保持器が内輪、外輪及び転動体と接触せずに存在可能な位置を、二次元座標上に無数にプロットすることで得られる散布図の外縁部を繋ぐ線で囲まれた領域を保持器可動領域と定義したとき、この保持器可動領域の最小外接円径Reに対する保持器可動領域の最大内接円径Riの比Ri/Reが0.990未満であることを特徴とする。
上記の比Ri/Reが0.990未満であるということは、保持器可動領域の形状が、真円形状から乖離したいびつな形状であることを意味する。そのため、上記構成を有する転がり軸受は、本発明者らの検証結果から、高速ホワール現象の発生を効果的に防止することができる。なお、保持器可動領域の形状をいびつな形状とすることが高速ホワール現象の発生防止に有効である詳細理由を断定することはできないものの、保持器可動領域がいびつな形状になることによって案内面と被案内面の接触時に生じる摩擦力の方向が円軌道から外れ、保持器の振れ回り運動を継続的に加速させることができなくなったためであると推察される。言い換えれば、高速ホワール現象を発生させるには、保持器に作用する力の向きが時計の針のように回転し、常に円運動の加速度として働く必要があり、可動領域の形状をいびつにすればこの作用を妨げることができるものと推察される。
また、本発明で採用する技術手段は、特許文献1で提案されている技術手段のように保持器のアンバランスを意図的に増加させようとするものではないことから、本発明を転がり軸受(特に軌道輪案内型の転がり軸受)に適用してもアンバランスに起因する遠心力の増加や軸のNRROの増加の懸念はない。このため、本発明は軌道輪案内型の転がり軸受に広く適用することができる。
外輪の内周面に案内面が設けられると共に保持器の外周面に被案内面が設けられる場合には、例えば、転がり軸受の軸心に沿って延びる軸平行平面と平行なストレート部を上記被案内面に設けることにより、上記の比Ri/Reを0.990未満とすることができる。
内輪の外周面に案内面が設けられると共に保持器の内周面に被案内面が設けられる場合には、例えば、転がり軸受の軸心に沿って延びる軸平行平面と平行なストレート部を上記案内面に設けることにより、上記の比Ri/Reを0.990未満とすることができる。
上記のストレート部は周方向等間隔で複数設けるのが好ましい。これにより、保持器や内輪の質量アンバランスに起因する振動等の問題発生を可及的に防止することができる。
以上から、本発明によれば、内輪案内又は外輪案内の別を問わず、また軸受の回転数(dmn値)を問わず、高速ホワール現象の発生を可及的に防止することができる軌道輪案内型の転がり軸受を実現することが可能となる。
本発明の実施形態に係る転がり軸受の平面図である。 図1のA-A線矢視断面図である。 (a)図は、図1の転がり軸受の保持器の平面図、(b)図は、(a)図の右側面図である。 保持器可動領域の求め方を説明するための概念図である。 (a)図は、図1の転がり軸受の保持器の可動領域を示す図、(b)図は、同軸受の内輪が10回転する間の保持器中心の移動軌跡を示す図、(c)図は、同軸受の内輪が10回転する間の保持器の速度(並進速度)の推移を示す図である。 (a)図は、本発明の特徴的構成を有さない比較対象の転がり軸受の保持器の可動領域を示す図、(b)図は、同軸受の内輪が10回転する間の保持器中心の移動軌跡を示す図、(c)図は、同軸受の内輪が10回転する間の保持器の速度(並進速度)の推移を示す図である。 (a)図は、変形例に係る保持器の平面図、(b)図は、(a)図の右側面図である。 本発明の他の実施形態に係る転がり軸受を構成する内輪の平面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、方向性を示すために以下使用する「軸方向」、「径方向」及び「周方向」とは、それぞれ、図1等に示す転がり軸受1の軸受中心(軸心)Oと平行な方向、軸心Oを中心とする円の径方向、及び軸心Oを中心とする円の周方向である。
図1は、本発明の実施形態に係る転がり軸受1の平面図、図2は、図1のA-A線矢視概略断面図、図3(a)は、転がり軸受1を構成する保持器5の平面図、図3(b)は、同保持器5の右側面図である。この転がり軸受1は、軸受鋼(高炭素クロム軸受鋼)等の高剛性の金属材料で形成され、径方向に対向配置された一対の軌道輪(内輪2及び外輪3)と、内輪2の外周面2aに形成された内側軌道面と外輪3の内周面3aに形成された外側軌道面の間に転動自在に介在する複数の転動体(ここでは10個のボール4)と、ボール4を周方向に間隔を空けて保持した円環状の保持器5とを備えた、いわゆる玉軸受である。
保持器5は、周方向等間隔で配置された複数(10個)のポケット6を有し、各ポケット6にボール4が1個ずつ収容されている。図示例の保持器5は、各ポケット6の内面(ポケット面)6aが径一定の円筒面に形成された保持器、すなわちポケット6の形状が径方向に一様な保持器である。そして、保持器5は、内輪2及び外輪3との間に径方向すきまを、また、ポケット6に収容したボール4との間に周方向すきまをそれぞれ形成するように内輪2と外輪3の間に組み込まれている。すなわち、図1に示すように、保持器5が中立位置に位置しているとき、対向する内輪2の外周面2aと保持器5の内周面5aの間、及び外輪3の内周面3aと保持器5の外周面5bの間には、それぞれ、「案内すきま」とも称される径方向すきま(第1径方向すきまδ1及び第2径方向すきまδ2)が形成され、また、ボール4とポケット面6aの間には「ポケット周方向すきま」とも称される周方向すきまεが形成される(図2参照)。これにより、転がり軸受1は滑らかに作動可能である。
図示例の転がり軸受1では、第1径方向すきまδ1よりも第2径方向すきまδ2の方が小さく、第2径方向すきまδ2は、例えば直径値で0.8mmとされる。つまり、外輪3の内周面3aの直径寸法は、保持器5の外周面5bの直径寸法よりも0.8mm大きい。また、周方向すきまεは、例えば直径値で1.2mmとされる。つまり、ポケット6の直径寸法W[図3(b)参照]は、ボール4の直径寸法よりも1.2mm大きい。従って、本実施形態の転がり軸受1では、第1径方向すきまδ1、第2径方向すきまδ2及び周方向すきまεのうち、第2径方向すきまδ2が最も小さい。そのため、本実施形態の転がり軸受1は、保持器5の径方向移動が軌道輪である外輪3と保持器5の接触によって制限される。
図3(a)にも示すように、本実施形態の保持器5は、これを平面視したとき、内周面5aが真円形状に形成されている一方、外周面5bが非真円形状に形成されている。ここでは、外周面5bの周方向一箇所に、転がり軸受1の軸心O(保持器5の中心Oc)に沿って延びる軸平行平面P-Pと平行なストレート部7を形成することにより、外周面5bが非真円形状に形成されている。保持器5の内径寸法φaは、例えば42.8mmとされ、保持器5の外周面5bが真円形状であると仮定した場合の外径寸法φbは、例えば51.4mmとされ、上記の軸平行平面P-P(保持器5の中心Oc)とストレート部7の離間距離Dは、例えば25.3mmとされる。この場合、ストレート部7は、保持器5の外周面5bの一部を径方向に最大0.4mm肉取りすることにより得られる。
保持器5の外周面5bにストレート部7を形成したことにより、ストレート部7が形成された周方向領域における第2径方向すきまδ2は、ストレート部7が形成されていない周方向領域における第2径方向すきまδ2よりも大きくなっている(図1参照)。
以上の構成を有する本実施形態の保持器5は、樹脂材料の射出成形品からなる樹脂保持器とされ、ポケット6は保持器5を射出成形するのと同時に型成形される。ストレート部7は、ポケット6と同様に、保持器5を射出成形するのと同時に型成形しても良いし、型成形後の機械加工により形成しても良い。但し、保持器5としては、用途・要求特性等に応じて、樹脂保持器以外の保持器、例えば金属材料を所定形状に削り出すことで得られるもみ抜き保持器、あるいは、所定の環状形態にプレス成形(打ち抜き加工)された一対の保持器素材を結合して得られるプレス保持器、が使用される場合もある。
以上の構成を有する転がり軸受1について、「保持器可動領域」、つまり、中立位置に位置している保持器5が外輪3(及び内輪2)と接触せずに存在可能な位置を、二次元座標上に無数にプロットすることで得られる散布図の外縁部を繋ぐ線で囲まれた領域、を求めた。なお、前述したとおり、本実施形態の転がり軸受1では、内輪2と保持器5の間に形成される第1径方向すきまδ1よりも、外輪3と保持器5の間に形成される第2径方向すきまδ2の方が小さいことから、保持器5と外輪3の非接触状態が維持されている間は保持器5と内輪2の非接触状態も維持される。要するに、保持器5が外輪3と接触せずに存在可能な位置に位置している場合、保持器5は内輪2(及びボール4)とも接触しない。本実施形態の転がり軸受1における「保持器可動領域」を求めるに当たって必要となる、保持器5が外輪3と接触せずに存在可能な位置、の求め方を図4に示す概念図に基づいて説明する。
図4は、保持器5、及び外輪3の内周面3aの一部を抜き出して示す概念図である。同図中の符号O,Oは前述したとおり軸受中心及び保持器5の中心をそれぞれ示し、符号Pは保持器5の外周面5b上の任意の点を示している。なお、符号Pの下付き文字(添え字)は、保持器5の外周面5bを離散化(メッシュ分割)したときのj番目の点、を示している。
まず、軸受中心Oから保持器5の外周面5b上の任意の点Pに向かうベクトルの大きさ(絶対値d)と外輪3の内周面3aの半径rとを比較し、
・上記絶対値dが半径r以上である場合は、保持器5の外周面5b上の任意の点Pは外輪3と干渉する、と判定し、
・上記絶対値dが半径rよりも小さい場合は、保持器5の外周面5b上の任意の点Pは外輪3と干渉しない、と判定する。
以降、これと同様の判定作業を、保持器5の外周面5b上の他の任意の点Pj+nに対して実行する。
図4に示す例では、保持器5の外周面5b上の任意の点P、Pj+1は、外輪3と干渉しない、と言える。
そして、f(j)=d-rとしたときに、全てのjに対してf(j)<0の関係式が成立すれば、そのときの保持器中心Oの位置は、保持器5が外輪3と接触せずに存在可能な保持器可動領域上の点であると判定される。
次に、保持器中心Oの位置、及び保持器5の位相を変化させ、上記の判定作業と同様の判定作業を実行する。そして、選択した保持器中心Oの位置において一つでも上記の「保持器可動領域上の点」と判定される位相があれば、その選択したOの位置、及び保持器中心Oの位置は「保持器可動領域上の点」であると判定する。
図1~3に示す構成を有する本実施形態の転がり軸受1の保持器可動領域10の形状は、図5(a)に示すように、真円形状から多少崩れた形状となり、この保持器可動領域10の最小外接円径Reに対する最大内接円径Riの比(=Ri/Re)は0.986である。一方、これとの比較対象として、保持器6の形状が部分的に異なる転がり軸受1、具体的には、外周面の周方向一箇所にストレート部7が設けられ、かつストレート部7と中心Ocの離間距離Dを25.5mmとした保持器6を具備する転がり軸受1における保持器可動領域を求めた。この場合の保持器可動領域10の形状は図6(a)に示すものとなり、この保持器可動領域10の最小外接円径Reに対する最大内接円径Riの比(=Ri/Re)は0.990である。
そして、上述した本実施形態の転がり軸受1、及び比較対象の転がり軸受を同一条件で運転したときに、各保持器の中心がどのような移動軌跡を辿るか、また各保持器の移動速度(並進速度)がどのように推移するかを動力学解析により検証した。図5(b)及び図5(c)に、本実施形態の転がり軸受1の内輪2が10回転する間の保持器中心の移動軌跡及び速度(並進速度)の推移をそれぞれ示し、また、図6(b)及び図6(c)に、比較対象の転がり軸受の内輪が10回転する間の保持器中心の移動軌跡及び速度(並進速度)の推移をそれぞれ示す。
図5(b)と図6(b)を対比すると、本実施形態の転がり軸受1よりも比較対象の転がり軸受の方が、保持器中心の移動軌跡を示す線が遥かに密になっている。また、図5(c)と図6(c)を対比すると、本実施形態の転がり軸受1では、その運転開始後、時間が経過するにつれて保持器5の並進速度がゼロに収束するように徐々に低下しているのに対し、比較対象の転がり軸受では、その運転開始後、所定時間が経過した段階で保持器の並進速度が急激に高速化し、かつその高速化した状態が継続している。この解析結果から、本実施形態の転がり軸受1においては保持器5の高速ホワール現象が発生しないと認められるのに対し、比較対象の転がり軸受においては保持器の高速ホワール現象が発生すると認められる。
従って、保持器可動領域10の最小外接円径Reに対する保持器可動領域10の最大内接円径Riの比Ri/Reを0.990未満、すなわち、保持器可動領域10の形状を、真円形状から乖離した「いびつな形状」とすれば、保持器5の高速ホワール現象の発生を効果的に防止することができると考えられる。保持器可動領域10の形状をいびつな形状とすることが高速ホワール現象の発生防止に有効である詳細理由を断定することはできないものの、保持器可動領域10の形状がいびつな形状になることにより、案内面(外輪3の内周面3a)と被案内面(保持器5の外周面5b)の接触時に生じる摩擦力の方向が円軌道から外れ、保持器5の振れ回り運動を継続的に加速させることができなくなったためであると推察される。言い換えれば、高速ホワール現象を発生させるには、保持器に作用する力の向きが時計の針のように回転し、常に円運動の加速度として働く必要があり、可動領域の形状をいびつにすることがこの作用を妨げていると推察される。
保持器5の高速ホワール現象の発生を効果的に防止するためには、上記のとおり、保持器可動領域10の最小外接円径Reに対する最大内接円径Riの比Ri/Reを0.990未満とすれば良いが、この比Ri/Reがあまりに小さくなると、保持器5に必要とされる機械的強度等を確保することができなくなる、周方向で保持器5の質量バランスが崩れる、などといった問題が生じ、転がり軸受1の軸受性能に悪影響が及ぶ可能性がある。そのため、上記の比Ri/Reの下限値は、要求特性やサイズに応じて適宜選定する。
また、本実施形態の転がり軸受1で採用した上記の技術手段は、特許文献1で提案されている技術手段のように保持器のアンバランスを意図的に増加させようとするものではないことから、本発明を転がり軸受1に適用してもアンバランスに起因する遠心力の増加や軸のNRROの増加の懸念はない。このため、本発明は軌道輪案内型の転がり軸受に広く適用することができる。
以上で説明した実施形態では、保持器5の外周面5bの周方向一箇所にストレート部7を設けたが、このストレート部7は、周方向の二箇所以上に設けても良い。図7(a)(b)は、その具体的な一例を示す図であり、外周面5bのうち、中心Ocを挟んで対向する二箇所にストレート部7を設けた保持器5(ストレート部7を外周面5bの二箇所に等配した保持器5)を示している。係る態様でストレート部7を設けるようにすれば、保持器5の質量アンバランスに起因する振動等の問題発生を防止することができるので、転がり軸受1の信頼性向上を図る上で有利である。
なお、保持器可動領域10の最小外接円径Reに対する保持器可動領域10の最大内接円径Riの比Ri/Reを0.990未満とするために設けるストレート部7は、保持器5の外周面5b(被案内面)に替えて、第2径方向すきまδ2を介して対向する外輪3の内周面3a(案内面)に設けることも可能である。但し、加工の容易性等を考慮すると保持器5の外周面5bにストレート部7を設けるのが好ましい。
以上で説明した本発明の実施形態に係る転がり軸受1は、外輪3の内周面3aを保持器5を案内するための案内面とした外輪案内型であるが、本発明は、内輪2の外周面2aを案内面とし、保持器5の内周面5aを被案内面とした内輪案内型の転がり軸受に適用することもできる。内輪案内型の転がり軸受についての図示は省略するが、この場合には、例えば図8に示すように、案内面である内輪2の外周面2aの周方向一箇所にストレート部7を設けることにより、保持器可動領域10の最小外接円径Reに対する保持器可動領域10の最大内接円径Riの比Ri/Reを0.990未満とすれば、前述した外輪案内型の転がり軸受1と同様の作用効果を享受することができる。なお、ストレート部7は、内輪2の外周面2aの周方向二箇所以上に設けても良いが、その場合には、内輪2に質量アンバランスが生じるのを防止する観点から、ストレート部7を周方向等間隔で配置するのが好ましい。
内輪案内型の転がり軸受1においては、ストレート部7を、内輪2の外周面2a(案内面)に替えて、第1径方向すきまδ1を介して対向する保持器5の内周面5a(被案内面)に設けることも可能である。但し、加工の容易性等を考慮すると、内輪2の外周面2aにストレート部7を設けるのが好ましい。
以上、本発明の実施形態に係る転がり軸受1について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施すことができる。
例えば、転がり軸受1を構成する転動体には、ボール4に替えてころ(円筒ころ、針状ころ等)を用いることも可能である。すなわち、本発明は、玉軸受のみならず、円筒ころ軸受や針状ころ軸受等、公知の他の転がり軸受にも適用可能である。また、保持器5に設けられるポケット6の形状は、図2に示すような平面視真円形に形成される以外に、例えば周方向に沿って長軸が配置された楕円状に形成される場合もある。また、単列軸受のみならず複列軸受にも適用可能である。
以上で説明したとおり、本発明は、転がり軸受1を構成する保持器5の高速ホワール現象の発生を効果的に防止し得るものであることから、高速ホワール現象が発生し易い用途等で使用される転がり軸受に特に好ましく適用することができる。
例えば、工作機械の主軸や宇宙機器のリアクションホイールを支持するための転がり軸受(特に玉軸受)は、使用時に比較的大きな軸方向の予圧を受けている。具体的には、運転中に受ける径方向荷重Frと軸方向荷重Faの比(=Fr/Fa)が3以下である場合が多く、このような場合には高速ホワール現象が特に発生し易い。これは、転動体の周方向での配置間隔が一定になるほど高速ホワール現象が発生し易いためである。逆に言えば、玉軸受に作用する径方向荷重が軸方向荷重に比べて格段に大きい場合(例えば、上記の比Fr/Faが3を超える場合)には、各転動体(ボール)に進み遅れが生じて転動体の配置間隔が不均一になるため、高速ホワール現象が発生しにくくなる。従って、工作機械の主軸や宇宙機器のリアクションホイールの支持軸受等、下記の式(1)が成立する用途で使用される玉軸受には、本発明を特に好適に適用することができる。
また、保持器の理論回転数をNc(rpm)、ポケットすきまをc(mm)、保持器質量をm(kg)、軸受内の平均転動体荷重をQ(N)としたとき、下記の式(2)が成立するときには高速ホワール現象が発生し易い。すなわち、下記の式(2)が成立する運転状況では、保持器の遠心力により転動体が外輪の軌道面(外側軌道面)に対して滑り難いため、転動体の配置間隔が不均一になり難い。従って、本発明は、下記の式(2)が成立する状況で運転される転がり軸受に好適に適用することができる。
なお、上記の式(2)における、保持器理論回転数Ncは、内輪回転数をNi(rpm)、外輪回転数をNe(rpm)、転動体径をDw(mm)、転動体のピッチ円直径をdp(mm)、軌道面に対する転動体の接触角をα(rad)としたとき、以下の式(3)によって算出することができる。
以上、本発明に係る転がり軸受1について説明したが、本発明は以上で説明した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは言うまでもない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 ボール(転動体)
5 保持器
6 ポケット
6a ポケット面
10 保持器可動領域
Re 最小外接円径
Ri 最大内接円径
δ1 第1径方向すきま(案内すきま)
δ2 第2径方向すきま(案内すきま)
ε 周方向すきま(ポケット周方向すきま)

Claims (4)

  1. 複数の転動体を介して相対回転する内輪及び外輪と、前記転動体を個別に収容した複数のポケットが周方向に間隔を空けて設けられた保持器と、を備え、前記保持器が、前記外輪の内周面又は前記内輪の外周面に設けられた環状の案内面に案内される環状の被案内面を有し、前記案内面と前記被案内面の間に形成される径方向すきまが、前記保持器のポケット内面と前記転動体の間に形成される径方向すきまよりも小さい転がり軸受において、
    中立位置に位置している前記保持器が前記内輪、前記外輪及び前記転動体と接触せずに存在可能な位置を、二次元座標上に無数にプロットすることで得られる散布図の外縁部を繋ぐ線で囲まれた領域を保持器可動領域と定義したとき、この保持器可動領域の最小外接円径Reに対する前記保持器可動領域の最大内接円径Riの比Ri/Reが0.990未満であることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記外輪の内周面に前記案内面が設けられると共に前記保持器の外周面に前記被案内面が設けられ、前記転がり軸受の軸心に沿って延びる軸平行平面と平行なストレート部を前記被案内面に設けることにより、前記比Ri/Reを0.990未満にした請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記内輪の外周面に前記案内面が設けられると共に前記保持器の外周面に前記被案内面が設けられ、前記転がり軸受の軸心に沿って延びる軸平行平面と平行なストレート部を前記案内面に設けることにより、前記比Ri/Reを0.990未満にした請求項1に記載の転がり軸受。
  4. 前記ストレート部を周方向等間隔で複数設けた請求項2又は3に記載の転がり軸受。
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