JP7481424B1 - ポリウレタン樹脂の水系分散体、及びその製造方法 - Google Patents

ポリウレタン樹脂の水系分散体、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】分散安定性を維持しつつ、樹脂に対する塗膜の密着性を向上することができるポリウレタン樹脂の水系分散体を提供する。【解決手段】実施形態に係るポリウレタン樹脂の水系分散体は、水を70質量%以上含む分散媒にポリウレタン樹脂が分散してなる水系分散体であって、ショ糖芳香族カルボン酸エステルを含む。該水系分散体は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させ、得られたポリウレタン樹脂とショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合し、水を70質量%以上含む分散媒を用いてポリウレタン樹脂を分散媒に分散させることにより、製造することができる。【選択図】なし

Description

本発明の実施形態は、ポリウレタン樹脂の水系分散体、及びその製造方法、並びに前記水系分散体を含む水性塗料に関する。
ポリウレタン樹脂の水系分散体は、例えば、塗料、インク、接着剤等に幅広く使用されている(特許文献1参照)。例えば、特許文献1には、様々な基材フィルムに対する密着性が良好な水性ポリウレタンエマルジョン組成物として、ポリエステルポリオール、カルボキシ基含有アクリルポリオール、カルボキシ基含有ポリオール、有機ジイソシアネート、鎖延長剤、及び分子量調整剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を中和剤で中和したエマルジョン組成物が開示されている。
特開2007-119772号公報 特表2004-510861号公報
ポリウレタン樹脂の水系分散体には、例えば樹脂表面に塗布する塗料として用いる場合、被塗物である樹脂に対して塗膜が十分に密着することが求められる。また、水系分散体の分散状態を安定して維持すること、すなわち分散安定性が求められる。しかるに、従来のポリウレタン樹脂の水系分散体では、分散安定性を維持しつつ、樹脂に対する塗膜の密着性を向上する点で必ずしも満足できるものではなかった。
なお、上記特許文献2には、ポリウレタン等の各種熱可塑性親水性ポリマーを含む熱可塑性親水性エラストマー組成物において、液体不透過性と水蒸気透過性を両立するために、熱可塑性親水性ポリマーのハードセグメントに結びついて当該ハードセグメントを軟化させる可塑剤を配合することが記載されており、該可塑剤としてショ糖安息香酸エステル等の様々な化合物が列挙されている。しかしながら、ポリウレタン樹脂を水に分散してなる水系分散体にショ糖安息香酸エステルを含有させること、及び、それにより分散安定性を維持しつつ樹脂に対する密着性を向上できることは、特許文献2には記載されていない。
本発明の実施形態は、分散安定性を維持しつつ、樹脂に対する塗膜の密着性を向上することができるポリウレタン樹脂の水系分散体を提供することを目的とする。
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 水を70質量%以上含む分散媒にポリウレタン樹脂が分散してなる水系分散体であって、ショ糖芳香族カルボン酸エステルを含む、ポリウレタン樹脂の水系分散体。
[2] 前記ショ糖芳香族カルボン酸エステルが、前記ポリウレタン樹脂の粒子に含まれている、[1]に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体。
[3] 前記ショ糖芳香族カルボン酸エステルが、ショ糖安息香酸エステル、ショ糖アルキル安息香酸エステル、ショ糖ジアルキル安息香酸エステル、及びショ糖トリアルキル安息香酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体。
[4] 前記ショ糖芳香族カルボン酸エステルの平均エステル化度が4.0以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体。
[5] 前記ショ糖芳香族カルボン酸エステルの含有量が、前記ポリウレタン樹脂100質量部に対して1~40質量部である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体を含む、水性塗料。
[7] プライマーとして用いられる[6]に記載の水性塗料。
[8] [1]~[5]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体を製造する方法であって、
ポリオールとポリイソシアネートを反応させること、
前記反応により得られたポリウレタン樹脂とショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合すること、及び、
得られた混合物と分散媒を用いてポリウレタン樹脂を分散媒に分散させること、
を含むポリウレタン樹脂の水系分散体の製造方法。
本発明の実施形態によれば、ポリウレタン樹脂の水系分散体の分散安定性を維持しながら、樹脂に対する塗膜の密着性を向上することができる。
本実施形態に係るポリウレタン樹脂の水系分散体(以下、単に水系分散体ということがある。)は、ポリウレタン樹脂(A)、ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)、及び、分散媒(C)を含む。
[ポリウレタン樹脂(A)]
ポリウレタン樹脂(A)は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるものであり、分子内にウレタン結合を有する重合体である。ポリウレタン樹脂(A)としては、アニオン性ポリウレタン樹脂、カチオン性ポリウレタン樹脂、及びノニオン性ポリウレタン樹脂等の各種水系ポリウレタン樹脂を用いることができる。
アニオン性ポリウレタン樹脂は、アニオン性基を有する水系ポリウレタン樹脂である。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン塩が挙げられる。
カチオン性ポリウレタン樹脂は、カチオン性基を有する水系ポリウレタン樹脂である。カチオン性基としては、例えば第四級アンモニウム基等が挙げられる。
ノニオン性ポリウレタン樹脂は、アニオン性基及びカチオン性基を有しない、非電荷の水系ポリウレタン樹脂である。ノニオン性ポリウレタン樹脂としては、例えばポリオキシエチレン基等の親水性セグメントを持つポリウレタン樹脂が挙げられる。
ポリウレタン樹脂(A)を合成するために用いられるポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール(例えば、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオール)、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリテトラメチレングリコール)、ポリブタジエンポリオール等の重合体のポリオールが挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら重合体のポリオールの分子量は、特に限定されず、例えば、数平均分子量(Mn)が500~5000でもよく、800~4000でもよく、1000~3000でもよい。
本明細書において、数平均分子量(Mn)は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)により測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出した値である。詳細には、GPCの条件として、カラム:東ソー(株)製「TSKgelG4000HXL+TSKgel G3000HXL+TSKgel G2000HXL+TSKgel G1000HXL+TSKgel G1000HXL」、移動相:THF(テトラヒドロフラン)、移動相流量:1.0mL/min、カラム温度:40℃、試料注入量:50μL、試料濃度:0.2質量%として測定することができる。
ポリウレタン樹脂(A)を合成するために用いられるポリオールとしては、上記重合体のポリオールとともに、又はこれとは別に、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子の多価アルコール(好ましくは、二価アルコール、三価アルコール)を用いてもよい。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂(A)を合成するために用いられるポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどを挙げることができる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
また、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、ビュレット体、アロフェネート体、カルボジイミド体などを用いてもよい。また、これらのポリイソシアネートは、いずれか1種用いてもよく2種以上を併用してもよい。
一実施形態において、ポリウレタン樹脂(A)としては、アニオン性基非含有ポリオール及びアニオン性基含有ポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートと、を反応させることにより得られるアニオン性ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。かかるアニオン性ポリウレタン樹脂としては、例えば、下記(A1)~(A3)が挙げられる。
(A1)アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートからイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長してなるアニオン性ポリウレタン樹脂。
(A2)アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートからイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーのイソシアネート基をブロック化剤でブロックしてなるアニオン性ポリウレタン樹脂。
(A3)アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られるヒドロキシ基含有アニオン性ポリウレタン樹脂。
上記(A2)のアニオン性ポリウレタン樹脂では、例えば水性塗料に用いた場合、加熱乾燥によりブロック化剤が解離し、解離したイソシアネート基が反応して鎖伸長等することにより、強固な塗膜を形成することができる。
上記(A3)のアニオン性ポリウレタン樹脂では、例えば水性塗料に用いた場合、ヒドロキシ基と相性のよい基材との密着性に優れた塗膜を形成することができる。
アニオン性ポリウレタン樹脂を合成するために用いられるアニオン性基非含有ポリオールとしては、上記列挙の各種ポリオールを用いることができる。
アニオン性基含有ポリオールとしては、分子内にカルボキシ基を有するカルボキシ基含有ポリオールが好ましく、例えば、ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6-ジオキシ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物及びこれらの誘導体並びにそれらの塩が挙げられる。これらはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ここで、アニオン性基は、酸型(カルボキシ基の場合:-COOH)だけでなく、塩型(カルボキシ基の場合:-COOXで表されるカルボン酸塩基。但し、Xはカルボン酸と塩を形成する陽イオン)も含む概念であり、酸型と塩型が混在してもよい。該アニオン性基は中和して塩にすることにより、最終的に得られるポリウレタン樹脂を水分散性にすることができる。そのため、ポリウレタン樹脂の水系分散体において、アニオン性基は塩型として存在する。一方、該水系分散体を乾燥させて得られた塗膜の状態においては、中和剤として不揮発性塩基を用いた場合は塩型として存在し、揮発性塩基を用いた場合は酸型として存在する。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを鎖伸長させる鎖伸長剤としては、特に限定されず、例えば、水が挙げられ、また、脂肪族ポリアミン化合物(例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、芳香族ポリアミン化合物(例えば、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン)、脂環式ポリアミン化合物(例えば、ピペラジン、イソホロンジアミン)、ポリヒドラジド化合物(例えば、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド)等の多価アミン化合物が挙げられる。
イソシアネート基をブロックするためのブロック化剤としては、特に限定されず、オキシム系ブロック化剤、フェノール系ブロック化剤、ラクタム系ブロック化剤、イミダゾール系ブロック化剤等を使用することができる。
アニオン性ポリウレタン樹脂において、ポリオール中におけるアニオン性基非含有ポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して80~99質量%でもよく、85~97質量%でもよく、90~95質量%でもよい。この場合において、上記のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリブタジエンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールの量も特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して80~99質量%でもよく、85~96質量%でもよく、88~95質量%でもよい。
アニオン性ポリウレタン樹脂において、ポリオール中におけるアニオン性基含有ポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して1~20質量%でもよく、3~15質量%でもよく、5~10質量%でもよい。
ここで、ポリオールを構成する各成分の量について、その基準とするポリオール100質量%は、ポリオールがアニオン性親水基を含む場合、当該アニオン性親水基を酸型として計算される。アニオン性基含有ポリオールの量についても同様に、アニオン性基を酸型として計算される。
一実施形態において、ポリウレタン樹脂(A)としては、親水性セグメント含有ポリオール及び親水性セグメント非含有ポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートと、を反応させることにより得られるノニオン性ポリウレタン樹脂を用いてもよい。かかるノニオン性ポリウレタン樹脂として、例えば下記(A4)が挙げられる。
(A4)親水性セグメント含有ポリオール、親水性セグメント非含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートからイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーのイソシアネート基をブロック化剤でブロックしてなるノニオン性ポリウレタン樹脂。
親水性セグメント含有ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン基のようなノニオン性の親水性セグメントを持つポリオールが挙げられる。親水性セグメント非含有ポリオールとしては、上記列挙の各種ポリオールのうち、アニオン性基やカチオン性基、親水性セグメントを有しないポリオールが挙げられる。
ノニオン性ポリウレタン樹脂において、ポリオール中における親水性セグメント含有ポリオールの量は、特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して5~50質量%でもよく、10~30質量%でもよい。親水性セグメント非含有ポリオールの量も特に限定されず、例えば、ポリオール100質量%に対して50~95質量%でもよく、70~90質量%でもよい。
[ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)]
ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)は、ショ糖と芳香族カルボン酸とのエステルである。ショ糖1分子には8個のヒドロキシ基があり、該8個のヒドロキシ基に対して脂肪酸がエステル結合した数に応じてモノエステルからオクタエステルまである。
ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)を構成する芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、ベンゼン環上にアルキル基又はアルコキシ基の少なくとも1種を有する安息香酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等の芳香族モノカルボン酸が挙げられる。上記のベンゼン環上にアルキル基又はアルコキシ基の少なくとも1種を有する安息香酸としては、例えば、トルイル酸等のアルキル安息香酸、ジメチル安息香酸等のジアルキル安息香酸、トリメチル安息香酸等のトリアルキル安息香酸が挙げられる。また、該ベンゼン環上のアルキル基又はアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、それぞれ炭素数1~20であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~5であり、更に好ましくは炭素数1~3である。上記で列挙した芳香族カルボン酸は、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、ベンゼン環上にアルキル基を有する安息香酸が好ましい。従って、ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)としては、ショ糖安息香酸エステル、ショ糖アルキル安息香酸エステル、ショ糖ジアルキル安息香酸エステル、及びショ糖トリアルキル安息香酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは、ショ糖安息香酸エステルである。
ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)における平均エステル化度は4.0以上であること、すなわち4.0~8.0であることが好ましい。これにより、ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)の疎水性が高くなり、ポリウレタン樹脂(A)との親和性が高くなって、水系分散体においてポリウレタン樹脂(A)の粒子に含まれやすくなる。ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)の平均エステル化度は、より好ましくは5.0~7.9であり、更に好ましくは5.5~7.8であり、更に好ましくは6.5~7.5である。
本明細書において、平均エステル化度とは、1分子のショ糖における、エステル化されたヒドロキシ基の数の平均値をいう。平均エステル化度(Y)は、以下の一般式にしたがって算出することができる。
式(I):Y=(a×56110-Ma×X)/[(Mb-Mc)×X]+56110
(式(I)中、Yは平均エステル化度、aはショ糖の水酸基数である8、Maはショ糖の分子量である342、XはJIS K0070に準じて求められる平均水酸基価、Mbはカルボン酸の分子量、Mcは水の分子量である18を表す。)
[分散媒]
分散媒(C)としては、水、又は、水と親水性有機溶媒との混合媒体が挙げられる。本実施形態において、分散媒(C)は水を70質量%以上含み、これにより水系分散体の分散安定性を向上することができる。すなわち、分散媒(C)は水が好ましく、有機溶媒は含まれてもよいが少量であることが好ましい。分散媒(C)は、好ましくは水を80質量%以上含むことであり、より好ましくは90質量%以上含むことであり、100質量%でもよい。すなわち、分散媒(C)において、水/親水性有機溶媒は、質量比で、70/30~100/0であり、好ましくは80/20~100/0であり、更に好ましくは90/10~100/0である。
親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級1価アルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
[ポリウレタン樹脂の水系分散体]
ポリウレタン樹脂の水系分散体は、分散媒(C)にポリウレタン樹脂(A)が分散してなる水系分散体であって、ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)を含む。このようにポリウレタン樹脂の水系分散体にショ糖芳香族カルボン酸エステルを配合したことにより、分散安定性を損なうことなく、樹脂に対する塗膜の密着性を向上することができる。また、該水系分散体を用いて基材に塗膜を形成した場合に耐ブロッキング性を向上することができる。耐ブロッキング性とは、塗膜を形成した基材を積み重ねたときに塗膜の粘着性により互いに接着しにくい性能をいう。
ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)は疎水性であることから、水系分散体においてポリウレタン樹脂(A)の粒子に含まれていることが好ましい。ここで、粒子に含まれるとは、粒子内部に存在すること、及び/又は、粒子表面に存在することを包含する概念である。好ましくは、ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)の少なくとも一部がポリウレタン樹脂(A)の粒子内部に存在することである。ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)は疎水性であるため、水を主成分とする分散媒(C)中には存在しないと考えられるが、分散媒に存在することを完全に排除するものではなく、その効果が損なわれない範囲で少量存在してもよい。
水系分散体におけるポリウレタン樹脂(A)の含有量は、特に限定されず、水系分散体の全質量に対して、例えば10~50質量%でもよく、20~45質量%でもよく、25~40質量%でもよい。
ショ糖芳香族カルボン酸エステル(B)の含有量は、ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して1~40質量部であることが好ましく、より好ましくは3~35質量部であり、更に好ましくは4~30質量部であり、更に好ましくは10~25質量部である。
水系分散体におけるポリウレタン樹脂(A)の粒子の大きさは、特に限定されず、例えば平均粒子径が0.001~0.5μmでもよい。ここで、平均粒子径は、日機装(株)製「Microtrac UPA-UZ152」を用いて測定される50%累積の粒子径(d50)である。
ポリウレタン樹脂の水系分散体には、その効果が損なわれない限り、他の成分を含んでもよい。例えば、ポリウレタン樹脂(A)を分散媒に分散させるための界面活性剤が含まれてもよい。
[水系分散体の製造方法]
本実施形態に係るポリウレタン樹脂の水系分散体を製造する方法は特に限定されないが、下記工程(1)~(3)を含む方法により製造することが好ましい。
工程(1):ポリオールとポリイソシアネートを反応させる工程。
工程(2):工程(1)により得られたポリウレタン樹脂とショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合する工程。
工程(3):工程(2)により得られた混合物と分散媒を用いてポリウレタン樹脂を分散媒に分散させる工程。
このようにポリウレタン樹脂とショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合してから分散媒に分散させることにより、ショ糖芳香族カルボン酸エステルをポリウレタン樹脂の粒子に効率良く取り込ませることができ、それにより、水系分散体の分散安定性を損なうことなく、樹脂に対する密着性の向上効果を高めることができる。
上記工程(1)において、ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、有機溶媒なしで実施してもよく、メチルエチルケトンやアセトン等の活性水素基を有しない有機溶媒中で実施してもよい。工程(1)の反応により得られるポリウレタン樹脂は、鎖伸長等する前のウレタンプレポリマーも包含する概念である。そのため、工程(2)では、かかるウレタンプレポリマーとショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合してもよい。
また、ポリウレタン樹脂がアニオン性基を有する場合、工程(2)においてポリウレタン樹脂とショ糖芳香族カルボン酸エステルとを混合する前又は混合した後に、中和剤により当該アニオン性基を中和してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基等が挙げられる。
工程(3)においてポリウレタン樹脂を分散媒中に分散させる方法は特に限定されず、例えば、(i)分散媒をホモジナイザーやホモミキサー等によって攪拌しながら、ポリウレタン樹脂又はその樹脂溶液を添加する方法、(ii)ポリウレタン樹脂又はその樹脂溶液をホモジナイザーやホモミキサー等によって撹拌しながら、分散媒を添加する方法等が挙げられる。なお、ポリウレタン樹脂が自己乳化できないものである場合、ポリウレタン樹脂を分散媒に乳化分散させるために界面活性剤を添加してもよい。
工程(1)においてウレタンプレポリマーを合成した場合、工程(3)でウレタンプレポリマーを分散媒に分散させた後に、鎖伸長剤により鎖伸長させてもよい。また、工程(1)においてポリオールとポリイソシアネートとの反応を有機溶媒中で行った場合、工程(3)でポリウレタン樹脂を分散媒に分散させた後に、当該有機溶媒を除去してもよい。
一実施形態において、ポリウレタン樹脂(A)として上記(A1)のアニオン性ポリウレタン樹脂を用いる場合、下記工程(a1)~(a5)により製造してもよい。
工程(a1):アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成する工程。
工程(a2):前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのアニオン性基を中和する工程。
工程(a3):前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合する工程。
工程(a4):工程(a3)により得られた混合物と分散媒を用いて、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを分散媒に分散させる工程。
工程(a5):分散媒に分散させたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する工程。
工程(a1)が上記工程(1)に相当し、工程(a3)が上記工程(2)に相当し、工程(a4)が上記工程(3)に相当し、工程(a2)及び(a5)は追加の工程である。
工程(a1)において、ポリイソシアネートは、ポリオールに含まれるヒドロキシ基の量よりも、イソシアネート基が化学量論的に過剰、例えばヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.05~1.70(より好ましくは1.10~1.60)となるように用いられる。
工程(a2)と工程(a3)の順番は問わず、アニオン性基を中和剤で中和してからショ糖芳香族カルボン酸エステルを加えてもよく、ショ糖芳香族カルボン酸エステルを加えてからアニオン性基を中和してもよい。
工程(a5)において、鎖伸長剤の添加は、工程(a4)におけるポリウレタンプレポリマーの分散媒への分散後でもよく、分散中でもよい。鎖伸長剤については、上述したとおりであり、水も鎖伸長剤となる。水を鎖伸長剤とする場合、分散媒としての水が鎖伸長剤を兼ねる。
工程(a1)の反応を有機溶媒中で行った場合、工程(a5)で鎖伸長した後に当該有機溶媒を除去してもよい。
一実施形態において、ポリウレタン樹脂(A)として上記(A2)のアニオン性ポリウレタン樹脂を用いる場合、下記工程(b1)~(b5)により製造してもよい。
工程(b1):アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成する工程。
工程(b2):イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基をブロック化剤でブロックする工程。
工程(b3):前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのアニオン性基を中和する工程。
工程(b4):前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合する工程。
工程(b5):工程(b4)により得られた混合物と分散媒を用いて、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを分散媒に分散させる工程。
工程(b1)が上記工程(1)に相当し、工程(b4)が上記工程(2)に相当し、工程(b5)が上記工程(3)に相当し、工程(b2)及び(b3)は追加の工程である。
工程(b1)において、ポリイソシアネートは、工程(a1)と同様、ポリオールに含まれるヒドロキシ基の量よりも、イソシアネート基が化学量論的に過剰、例えばヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.05~1.70(より好ましくは1.10~1.60)となるように用いられる。
工程(b2)、(b3)及び(b4)の順番は問わず、例えば、イソシアネート基をブロックし、アニオン性基を中和剤で中和してからショ糖芳香族カルボン酸エステルを加えてもよく、また、イソシアネート基をブロックし、ショ糖芳香族カルボン酸エステルを加えてからアニオン性基を中和してもよい。また、アニオン性基を中和してからイソシアネート基をブロックしてもよい。
工程(b1)の反応を有機溶媒中で行った場合、工程(b5)でポリウレタン樹脂を分散媒に分散させた後に、当該有機溶媒を除去してもよい。
一実施形態において、ポリウレタン樹脂(A)として上記(A3)のアニオン性ポリウレタン樹脂を用いる場合、下記工程(c1)~(c4)により製造してもよい。
工程(c1):アニオン性基非含有ポリオール、アニオン性基含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて、ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂を合成する工程。
工程(c2):ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂のアニオン性基を中和する工程。
工程(c3):前記ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂とショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合する工程。
工程(c4):工程(c3)により得られた混合物と分散媒を用いて、前記ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂を分散媒に分散させる工程。
工程(c1)が上記工程(1)に相当し、工程(c3)が上記工程(2)に相当し、工程(c4)が上記工程(3)に相当し、工程(c2)は追加の工程である。
工程(c1)において、ポリオールは、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の量よりも、ヒドロキシ基が化学量論的に過剰、例えばヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が0.70~0.95(より好ましくは0.80~0.90)となるように用いられる。
工程(c2)及び(c3)の順番は問わず、アニオン性基を中和剤で中和してからショ糖芳香族カルボン酸エステルを加えてもよく、ショ糖芳香族カルボン酸エステルを加えてからアニオン性基を中和してもよい。
工程(c1)の反応を有機溶媒中で行った場合、工程(c4)でポリウレタン樹脂を分散媒に分散させた後に、当該有機溶媒を除去してもよい。
一実施形態において、ポリウレタン樹脂(A)として上記(A4)のノニオン性ポリウレタン樹脂を用いる場合、下記工程(d1)~(d4)により製造してもよい。
工程(d1):親水性セグメント含有ポリオール、親水性セグメント非含有ポリオール、及び、ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成する工程。
工程(d2):イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基をブロック化剤でブロックする工程。
工程(d3):前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合する工程。
工程(d4):工程(d3)により得られた混合物と分散媒を用いて、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを分散媒に分散させる工程。
工程(d1)が上記工程(1)に相当し、工程(d3)が上記工程(2)に相当し、工程(d4)が上記工程(3)に相当し、工程(d2)は追加の工程である。
工程(d1)において、ポリイソシアネートは、ポリオールに含まれるヒドロキシ基の量よりも、イソシアネート基が化学量論的に過剰、例えばヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.05~1.70(より好ましくは1.10~1.60)となるように用いられる。
工程(d2)及び(d3)の順番は問わず、例えば、イソシアネート基をブロックしてからショ糖芳香族カルボン酸エステルを加えてもよく、また、ショ糖芳香族カルボン酸エステルを加えてからイソシアネート基をブロックしてもよい。
工程(d1)の反応を有機溶媒中で行った場合、工程(d4)でポリウレタン樹脂を分散媒に分散させた後に、当該有機溶媒を除去してもよい。
[水性塗料]
本実施形態に係る水性塗料は、上記ポリウレタン樹脂の水系分散体を含むものであり、従って、分散媒と、分散媒中に分散したポリウレタン樹脂と、ショ糖芳香族カルボン酸エステルを含む。該水性塗料は、樹脂基材や金属基材等の種々の基材に塗布して用いることができるが、上記のように水系分散体が樹脂に対する塗膜の密着性に優れるため、表面が樹脂からなる基材に塗布するための水性塗料として好適に用いられる。より好ましくはPETフィルム等のポリエステル樹脂基材に塗布するための水性塗料である。ここで、基材はフィルムでもよく、また、板状の基板でもよく、厚み等の形状は特に限定されない。
一実施形態において、水性塗料はプライマーとして用いられるプライマー塗料でもよい。例えば、ポリエステル樹脂基材等の樹脂基材上に、本実施形態に係る水性塗料を塗布して塗膜を形成し、該塗膜上に紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)を塗布してUV硬化樹脂層を形成してなる積層体のプライマー層として用いてもよい。該積層体の用途の一例として、光学フィルムが挙げられる。本実施形態に係る水性塗料からなる塗膜は、ポリエステル樹脂等の樹脂基材との密着性に優れるとともに、紫外線硬化樹脂との密着性にも優れる。そのため、このようなプライマー用として好適である。
水性塗料には、一般に水性塗料の膜形成成分として使用される他の水性樹脂を、上記ポリウレタン樹脂とともに併用してもよく、併用しなくてもよい。他の水性樹脂としては、水溶性又は水分散性のアクリル樹脂、水溶性又は水分散性のポリエステル樹脂、水溶性又は水分散性のアルキド系樹脂、水溶性又は水分散性のセルロース系樹脂等が挙げられる。
水性塗料における上記ポリウレタン樹脂及びショ糖芳香族カルボン酸エステルの含有量は特に限定されず、例えば、水性塗料に含まれる全樹脂固形分100質量%に対して、両者の合計で20~100質量%でもよく、50~100質量%でもよい。
水性塗料には、また、その効果が損なわれない限り、一般に水性塗料に配合される各種添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、無機充填剤、有機充填剤、分散助剤、防腐剤、防錆剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、消泡剤、粘度調整剤、帯電防止剤、架橋剤、有機溶剤等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、より詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例で使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
[ポリオール]
・ポリオール(1):芳香族ポリエステルジオール(官能基数:2、数平均分子量:2000)。合成方法は以下の通り。
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イソフタル酸51.4質量部、アジピン酸6.8質量部、ネオペンチルグリコール41.5質量部及びエチレングリコール0.3質量部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応し、芳香族ポリエステルジオールを得た。
・ポリオール(2):芳香族ポリエステルジオール(官能基数:2、数平均分子量:2000)。合成方法は以下の通り。
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸48.5質量部、アジピン酸10.0質量部、ネオペンチルグリコール40.0質量部及びエチレングリコール1.5質量部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら250℃まで昇温した。酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応し、芳香族ポリエステルジオールを得た。
・ポリオール(3):ポリカーボネートジオール(官能基数:2、数平均分子量:2000)、三菱ケミカル(株)製「 BENEBiOL(登録商標)NL2030DB」
・ポリオール(4):ポリテトラメチレングリコール(PTMG)(官能基数:2、数平均分子量:2000)、BASF社製「PolyTHF(登録商標)2000」
・ポリオール(5):ポリブタジエンポリオール(官能基数:2.4、数平均分子量:2700)、エボニック社製「POLYVEST HT」
・ポリオール(6):ポリオキシエチレン基含有ノニオン性ポリオール(官能基数:2、数平均分子量:600)、Perstorp社製「Ymer N180」
・トリメチロールプロパン:三菱ガス化学(株)製、官能基数:3
・ジメチロールプロピオン酸:Perstorp社製「Bis-MPA(登録商標)」、官能基数:2
[ポリイソシアネート]
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(官能基数:2)、Evonik社製「VESTANAT(登録商標)IPDI」
・MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(官能基数:2)、東ソー(株)製「ミリオネートMT-F」
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(官能基数:2)、旭化成(株)製「デュラネート(登録商標)50M-HDI」
[ショ糖安息香酸エステル]
・ショ糖安息香酸エステル(1):下記合成方法により得られたショ糖安息香酸エステル(平均エステル化度:7.4)
撹拌棒、温度計、冷却コンデンサー、滴下漏斗、及びpHメーターに接続したpH電極を備えた1L五つ口フラスコに、ショ糖34.2質量部と水70.0質量部を仕込み溶解させた後、水浴で10℃以下に冷却しながら、シクロヘキサノン100質量部に塩化ベンゾイル106.7質量部を溶解させた溶液を徐々に加えた。その後、20℃以下の温度に保ちながら、48質量%苛性ソーダ水溶液69.0質量部を滴下漏斗よりpHが10~11に保たれるような速度で加えた。水浴を取り去り20~30℃の室温で1時間撹拌を続け熟成して反応を完結させた後、若干量の炭酸ソーダを加え加熱して、微量に残っている塩化ベンゾイルを安息香酸ソーダに変換した。その後、約30分間静置させて、水相を分離させ、除去した。新たに水70質量部を加え、湯浴で40~50℃に昇温させ、30分撹拌した後、約30分間静置させて、水相を分離させ、除去した。同操作をさらに3回繰り返した後(合計の水洗回数:4回)、120℃に昇温し、減圧下溶媒を留去し、ショ糖安息香酸エステルを得た。
・ショ糖安息香酸エステル(2):下記合成方法により得られたショ糖安息香酸エステル(平均エステル化度:5.7)
撹拌棒、温度計、冷却コンデンサー、滴下漏斗、及びpHメーターに接続したpH電極を備えた1L五つ口フラスコに、ショ糖34.2質量部と水70.0質量部を仕込み溶解させた後、水浴で10℃以下に冷却しながら、シクロヘキサノン100質量部に塩化ベンゾイル82.1質量部を溶解させた溶液を徐々に加えた。その後、20℃以下の温度に保ちながら、48質量%苛性ソーダ水溶液53.1質量部を滴下漏斗よりpHが10~11に保たれるような速度で加えた。水浴を取り去り20~30℃の室温で1時間撹拌を続け熟成して反応を完結させた後、若干量の炭酸ソーダを加え加熱して、微量に残っている塩化ベンゾイルを安息香酸ソーダに変換した。その後、約30分間静置させて、水相を分離させ、除去した。新たに水70質量部を加え、湯浴で40~50℃に昇温させ、30分撹拌した後、約30分間静置させて、水相を分離させ、除去した。同操作をさらに3回繰り返した後(合計の水洗回数:4回)、120℃に昇温し、減圧下溶媒を留去し、ショ糖安息香酸エステルを得た。
・ショ糖トルイル酸エステル:下記合成方法により得られたショ糖トルイル酸エステル(平均エステル化度:6.3)
撹拌棒、温度計、冷却コンデンサー、滴下漏斗、及びpHメーターに接続したpH電極を備えた五つ口フラスコに、ショ糖30.0質量部と水70.0質量部を仕込み溶解した後、水浴で10℃以下に冷却しながら、トルイル酸クロライド85.3部を含むシクロヘキサノン100部を徐々に加え、均一に溶かした。20℃以下の温度を保ちながら、48%苛性ソーダ水溶液50.1部を、滴下漏斗よりpHが10~11に保たれるような速度で加えた。滴下は1時間以内で終了した。その後、水浴を取り去り、20~30℃の室温で、1時間撹拌を続け熟成して反応を完結させた。その後、若干量の炭酸ソーダを加え加熱して、微量に残っているトルイル酸クロライドをトルイル酸ソーダに変換した。そして溶媒をロータリーエバポレーターにより除去することにより、ショ糖トルイル酸エステルを得た。
・ショ糖酢酸エステル:下記合成方法により得られたショ糖酢酸エステル(平均エステル化度:7.9)
攪拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた5Lセパラブルフラスコを加熱用オイルバスに装着した。このセパラブルフラスコを用いて、ショ糖250g(0.75モル)、ピリジン2850g(36モル)及び無水酢酸600g(5.9モル)を混合し、窒素ガスを50mL/分の流量でバブリングさせながら70℃で2時間反応させ、ピリジン、未反応の無水酢酸及び副生する酢酸を減圧下で留去した。次に、トルエンを1500g、0.5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液2250gを添加し、50℃で30分間攪拌後、静置してトルエンを分取した。続いて、トルエンを減圧下で留去し、ショ糖酢酸エステルを得た。
[界面活性剤]
・非イオン界面活性剤(1):第一工業製薬(株)製「ノイゲン(登録商標)EA-157」
ポリウレタン樹脂の水系分散体の評価方法は以下のとおりである。
[分散安定性]
ポリウレタン樹脂の水系分散体を40℃で1ヶ月保管した後の外観を目視で確認し、分離が認められなかったものを「○」(良好)、分離が認められたものを「×」(不良)と評価した。
[PET層との密着性]
ポリウレタン樹脂の水系分散体の塗膜とPETとの密着性を以下の方法で評価した。基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(「ルミラーT-60」、東レ社製))をイソプロピルアルコールにより脱脂し、次いで、ポリウレタン樹脂の水系分散体をバーコーターで乾燥膜厚10μmになるように塗布し、80℃で10分間乾燥し、さらに120℃で10分間乾燥して、ポリウレタン樹脂の塗膜が形成された試験片Aを得た。この試験片Aをサンプルとして、JIS K5400-8.5:1990に準拠した2mm碁盤目試験を実施し、ポリウレタン樹脂の塗膜とPETとの密着性を、下記式により算出した。
密着性(%)=100-(剥がれたマス目の数)
[UV硬化樹脂との密着性]
ポリウレタン樹脂の水系分散体の塗膜とUV硬化樹脂との密着性を、PETフィルム/ポリウレタン樹脂層/UV硬化樹脂層との三層重ねた状態で、以下の方法により評価した。上記PET層との密着性評価における試験片Aを用いて、該試験片Aのポリウレタン樹脂の塗膜上に、UV硬化樹脂処方液をバーコーターで乾燥膜厚7μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、UV硬化樹脂処方液の塗布面に対し、高圧水銀灯を用いて600mJ/cmの紫外線を照射し試験片Bを得た。UV硬化樹脂処方液は、メチルエチルケトン30質量部、エポキシアクリレート(GX-8821L-M9、第一工業製薬製)68質量部、光重合開始剤(Irgacure184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)2質量部を用いて調製した。この試験片Bをサンプルとして、JIS K5400-8.5:1990に準拠した2mm碁盤目試験を実施し、UV硬化樹脂と、ポリウレタン樹脂と、PETとの密着性を、下記式により算出した。
密着性(%)=100-(剥がれたマス目の数)
[耐ブロッキング性]
ポリウレタン樹脂の水系分散体の耐ブロッキング性を以下の方法で評価した。上記PET層との密着性評価における試験片Aを用いて、その塗装面を上に向けた状態でサンプル(5cm×4.5cm)を、湿度95%、温度30℃のオーブンに1時間静置した。その後、塗装面を内側にして2枚のサンプルを重ね合わせて、スライドガラス2枚に挟み、重り(1500g)を乗せて温度20℃、湿度95%にて16時間静置した。16時間後、2枚のサンプルを手で剥がして外観を観察した。外観に変化がないものを「○」(良好)、塗膜の一部に剥がれが見られたものを「△」(不良)、一方の塗膜が剥がれて他方に密着していたものを「×」(不良)と評価した。
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリオール(1)68.53質量部、トリメチロールプロパン1.45質量部、ジメチロールプロピオン酸5.50質量部、メチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでIPDIを24.52質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が1.88質量%になるまで75℃で反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。このプレポリマー溶液を45℃まで冷却し、中和剤としてトリエチルアミン4.15質量部を加えることにより中和した後、ショ糖安息香酸エステル(1)20質量部をメチルエチルケトン20質量部で溶解させた液を添加し撹拌した。ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水308質量部を添加して乳化分散させた。その後、乳化体を40℃で1時間撹拌し、水による鎖伸長反応を完了させた。これを加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去して、固形分30質量%のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
[実施例2~13]
ポリオール、ポリイソシアネート、及びショ糖安息香酸エステル又はショ糖トルイル酸エステルの種類及び仕込み量を、下記表1に示す通りに変更し、その他は実施例1と同様にして、実施例2~13のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。但し、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得る際のウレタン反応終了時の遊離イソシアネート基の量を、実施例5では1.65質量%、実施例6では1.86質量%、実施例7では1.93質量%、実施例12では4.04質量%、実施例13では1.33質量%とした。また、分散媒としての蒸留水の添加量は、水系分散体の固形分濃度が30質量%になるように調整した。
[実施例14]
乳化分散後の乳化体に鎖伸長剤としてのエチレンジアミン1.21質量部を添加してから40℃で1時間攪拌して鎖伸長反応を完了させ、その他は実施例1と同様にして、実施例14のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
[実施例15]
分散媒としての蒸留水308質量部に代えて、蒸留水277質量部とN-メチルピロリドン(NMP)31質量部(蒸留水/NMP=90/10)を添加し、その他は実施例1と同様にして、実施例15のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
[実施例16]
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリオール(1)80.25質量部、トリメチロールプロパン1.45質量部、ジメチロールプロピオン酸1.05質量部、メチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでIPDIを17.26質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が1.43質量%になるまで75℃で反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。このプレポリマー溶液を45℃まで冷却し、トリエチルアミン0.79質量部を加えることにより中和した後、非イオン界面活性剤(1)5質量部をメチルエチルケトン5質量部に溶解した液、及び、ショ糖安息香酸エステル(1)20質量部をメチルエチルケトン20質量部で溶解させた液を添加し、撹拌した。ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水308質量部を添加して乳化分散させた。その後、乳化体を40℃で1時間撹拌し、水による鎖伸長反応を完了させた。これを加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去して、固形分30質量%のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
[比較例1]
ショ糖安息香酸エステル(1)を添加せず、その他は実施例1と同様にして、比較例1のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
[比較例2]
分散媒としての蒸留水308質量部に代えて、蒸留水154質量部とN-メチルピロリドン(NMP)154質量部(蒸留水/NMP=50/50)を添加し、その他は実施例1と同様にして、比較例2のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
[比較例3]
ショ糖安息香酸エステル(1)20質量部の代わりにショ糖酢酸エステル20質量部を用い、その他は実施例1と同様にして、比較例3のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
実施例1~16及び比較例1~3のポリウレタン樹脂の水系分散体について、分散安定性、PET層との密着性、UV硬化樹脂との密着性、及び、耐ブロッキング性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1中において、「ショ糖エステルの含有量(質量部)」は、水系分散体における、ポリウレタン樹脂100質量部に対するショ糖エステル(ショ糖安息香酸エステル、ショ糖トルイル酸エステル、ショ糖酢酸エステル)の質量部である(表2、表3において同じ)。
結果は表1に示すとおりである。比較例1では、ショ糖エステルを配合していないため、分散安定性には優れていたが、密着性に劣っており、また耐ブロッキング性にも劣っていた。一方、ショ糖酢酸エステルを配合した比較例3では、PET層との密着性は改善されたものの水系分散体の分散安定性に劣っていた。比較例2では、ショ糖安息香酸エステルを配合したが分散媒の水含有量が50質量%であったため、水系分散体の分散安定性に劣っていた。これに対し、実施例1~16であると、水系分散体の良好な分散安定性を維持しつつ、PET層との密着性及びUV硬化樹脂との密着性がともに顕著に改善されており、また耐ブロッキング性にも優れていた。
Figure 0007481424000001
[実施例17]
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリオール(1)66.60質量部、ジメチロールプロピオン酸5.50質量部、メチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでMDIを27.9質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が3.42質量%になるまで75℃で反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。このプレポリマー溶液を45℃まで冷却し、ブロック化剤としてMEKオキシム(メチルエチルケトンオキシム、UBE(株)製)7.1質量部を添加撹拌し、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が0.05質量%以下になるまで反応させた。その後、中和剤としてトリエチルアミン4.15質量部を加えることにより中和した後、ショ糖安息香酸エステル(1)20質量部をメチルエチルケトン20質量部で溶解させた液を添加し撹拌した。ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水308質量部を添加して乳化分散させた。その後、乳化体を40℃で1時間撹拌した。これを加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去して、固形分30質量%のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
[実施例18~20]
ポリオール、ポリイソシアネート及びブロック化剤の種類及び仕込み量を、下記表2に示す通りに変更し、その他は実施例17と同様にして、実施例18~20のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。但し、ブロック化前のウレタン反応終了時の遊離イソシアネート基の量を、実施例18では3.34質量%、実施例19では3.59質量%、実施例20では3.42質量%とした。また、ブロック化剤としてε-カプロラクタムを用いた実施例20では、プレポリマー溶液を冷却せずに75℃のまま反応させ、ブロック化反応が完了した後に室温まで冷却した。
[実施例21]
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリオール(1)76.2質量部、ポリオール(6)10.0質量部、メチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでHDIを13.8質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が2.60質量%になるまで75℃で反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。このプレポリマー溶液を45℃まで冷却し、ブロック化剤としてMEKオキシム(メチルエチルケトンオキシム、UBE(株)製)5.4質量部を添加撹拌し、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が0.05質量%以下になるまで反応させた。その後、ショ糖安息香酸エステル(1)20質量部をメチルエチルケトン20質量部で溶解させた液を添加し撹拌した。ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水308質量部を添加して乳化分散させた。その後、乳化体を40℃で1時間撹拌した。これを加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去して、固形分30質量%のノニオン性ポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
実施例17~21のポリウレタン樹脂の水系分散体について、分散安定性、PET層との密着性、UV硬化樹脂との密着性、及び、耐ブロッキング性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0007481424000002
[実施例22]
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリオール(1)79.50質量部、ジメチロールプロピオン酸5.50質量部、メチルエチルケトン100質量部を加え十分に攪拌溶解し、次いでIPDIを15.00質量部加え、固形分に対する遊離イソシアネート基の含有量が0.05質量%以下になるまで75℃で反応させて、ヒドロキシ基含有ポリウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。このポリウレタン樹脂溶液を45℃まで冷却し、中和剤としてトリエチルアミン4.15質量部を加えることにより中和した後、ショ糖安息香酸エステル(1)20質量部をメチルエチルケトン20質量部で溶解させた液を添加し撹拌した。ホモジナイザーを用いて攪拌しながら、分散媒として蒸留水308質量部を添加して乳化分散させた。その後、乳化体を40℃で1時間撹拌した。これを加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去して、固形分30質量%のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
[実施例23~24]
ポリオール及びポリイソシアネートの種類及び仕込み量を、下記表3に示す通りに変更し、その他は実施例22と同様にして、実施例23~24のポリウレタン樹脂の水系分散体を得た。
実施例22~24のポリウレタン樹脂の水系分散体について、分散安定性、PET層との密着性、UV硬化樹脂との密着性、及び、耐ブロッキング性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0007481424000003
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

Claims (7)

  1. 水を70質量%以上含む分散媒にポリウレタン樹脂が分散してなる水系分散体であって、ショ糖芳香族カルボン酸エステルを含み、前記ショ糖芳香族カルボン酸エステルの含有量が前記ポリウレタン樹脂100質量部に対して1~40質量部である、ポリウレタン樹脂の水系分散体。
  2. 前記ショ糖芳香族カルボン酸エステルが、前記ポリウレタン樹脂の粒子に含まれている、請求項1に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体。
  3. 前記ショ糖芳香族カルボン酸エステルが、ショ糖安息香酸エステル、ショ糖アルキル安息香酸エステル、ショ糖ジアルキル安息香酸エステル、及びショ糖トリアルキル安息香酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体。
  4. 前記ショ糖芳香族カルボン酸エステルの平均エステル化度が4.0以上である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体を含む、水性塗料。
  6. プライマーとして用いられる請求項に記載の水性塗料。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂の水系分散体を製造する方法であって、
    ポリオールとポリイソシアネートを反応させること、
    前記反応により得られたポリウレタン樹脂とショ糖芳香族カルボン酸エステルを混合すること、及び、
    得られた混合物と分散媒を用いてポリウレタン樹脂を分散媒に分散させること、
    を含むポリウレタン樹脂の水系分散体の製造方法。
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