本発明は、車体側に固定された支持軸に対してサンバイザー本体を回動可能に支持するとともに、支持軸に弾性作用してサンバイザー本体の回動に抵抗を付与するバネを備えた構成において、バネの形状等を工夫することにより、サンバイザー本体の回動操作について高級感のある操作フィーリングを実現し、品質を向上しようとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るサンバイザー1は、自動車の車室2内に設けられた車両用サンバイザーであり、車室2内において、ステアリングハンドル3の後方に位置する運転席4、および運転席4の側方(左側方)にセンターコンソール5を介して設けられた助手席6の各座席に対応して、座席の前上方の位置に設けられている。サンバイザー1は、フロントウィンドウ7の上側において、車室2の天井8に対して設置されている。すなわち、サンバイザー1は、その設置対象を自動車の車体を構成する天井8としている。
サンバイザー1は、略矩形板状の外形を有するサンバイザー本体11と、サンバイザー本体11を車体側に対して回動可能に支持する支持軸12とを備える。サンバイザー本体11は、支持軸12により、自動車における略左右方向に沿う所定の回動軸O1を中心として回動するように支持されている(図2参照)。
サンバイザー1は、サンバイザー本体11の長手方向を自動車の左右方向に沿わせるように設けられている。サンバイザー1は、サンバイザー本体11に対し、回動軸O1を、サンバイザー本体11の短手方向の一側の縁部において、サンバイザー本体11の長手方向に沿わせるように位置させている。サンバイザー本体11の短手方向について、回動軸O1が位置する側(図2における上側)を支持基部側とし、その反対側(図2における下側)を先端側とする。
サンバイザー1は、サンバイザー本体11の回動動作に関し、フロントウィンドウ7の上側の天井8にサンバイザー本体11を沿わせた状態を格納状態とし、格納状態からサンバイザー本体11が下方に回動することで使用状態となる。サンバイザー1は、格納状態において、回動軸O1を車両における前側に位置させ、サンバイザー本体11の支持基部側の縁部を、フロントウィンドウ7の上縁に沿わせた状態となる。サンバイザー1は、格納状態から、サンバイザー本体11における先端側の縁部を下側に下ろすようにサンバイザー本体11を回動させることで、天井8に対してサンバイザー本体11を開いた状態となり、かかる状態で使用される。
図1および図3に示すように、サンバイザー1は、格納状態において、サンバイザー本体11の外形に沿って天井8に形成された凹部8a内に位置する。凹部8aは、サンバイザー本体11の板厚に対して浅い略矩形状の扁平な凹み部分であり、サンバイザー本体11と略同じ大きさの底面を有する。サンバイザー1の格納状態において、サンバイザー本体11は、一側の板面である本体裏面部11aを、凹部8aの底面に対して接触あるいは近接状態で対向させ、他側の板面である本体表面部11bを下側に向ける。
図3に示すように、サンバイザー1は、サンバイザー本体11を凹部8aに位置させる格納状態から、サンバイザー本体11を、天井8における凹部8aの前側の部分に沿わせた最大開状態となるまでの略180°の角度範囲で回動軸O1を中心として回動可能とするように設けられている。図3には、サンバイザー本体11の回動位置として、サンバイザー1の格納状態でのサンバイザー本体11Aと、サンバイザー1の最大開状態でのサンバイザー本体11Bと、鉛直状に垂下した状態のサンバイザー本体11Cとをそれぞれ二点鎖線で示している。なお、図3は、回動軸O1の軸方向視の図であり、図3において、左方が自動車の前方(FR)であり、上方が自動車の上方(UP)である。
図1に示すように、運転席4の前上方に設置されたサンバイザー1(1A)と、助手席6の前上方に設置されたサンバイザー1(1B)とは、左右対称に構成されている。図2は、運転席4に対応して設置されたサンバイザー1Aを示している。
本実施形態に係るサンバイザー1が備えるサンバイザーの支持部構造(以下「サンバイザー支持部構造」という。)について説明する。本実施形態に係るサンバイザー支持部構造は、図1から図4に示すように、サンバイザー本体11を回動可能に支持するものであって、車体側に取り付けられた支持軸12と、サンバイザー本体11に対して所定の軸支持部材(図示略)を介して取り付けられるとともに支持軸12に弾性作用するバネ20とを備える。
支持軸12は、比較的硬質の樹脂材料や金属材料等により構成されており、短辺側の縦軸部14と長辺側の横軸部15とにより略「L」字状をなす屈曲棒状の軸本体部を有する。支持軸12は、横軸部15により、回動軸O1を中心としてサンバイザー本体11を回動可能に支持する。横軸部15は、直線状の軸部分であって、長さ方向の略全体にわたって円形の横断面形状を有し、横軸部15の中心軸が、回動軸O1に一致する。横軸部15は、その先端部を、他の部分に対して外径が小さい縮径部15aとしている。
支持軸12は、横軸部15の略全体を、サンバイザー本体11内に挿入させている。横軸部15は、サンバイザー本体11の支持基部側の縁部に沿って、サンバイザー本体11の長手方向の両端部を除いた中間部の略全体にわたる範囲に挿入されている。
サンバイザー本体11は、その外形形状において、支持基部側であって自動車における左右方向の外側(図2における右側)の角部に、略「L」字状の切欠部11cを有する。支持軸12は、縦軸部14と横軸部15による直角状の角部を、サンバイザー本体11の切欠部11cにおいてサンバイザー本体11の外部に露出させ、縦軸部14を天井8側へ延出させている。
支持軸12において、軸本体部の基端部となる縦軸部14の端部には、楕円形状をなすブラケット16が鍔状に設けられている。ブラケット16は、支持軸12を車体側に固定するための部分である。ブラケット16の裏側には、車体側に設けられた所定の被係合部に対して係合する係合部16aが突設されている。
ブラケット16は、例えばフロントルーフレール等の、車体のルーフを構成する骨格部材に対して、ボルト等の締結部材によって固定されることで、天井8に取り付けられた状態となる。これにより、支持軸12は、その軸本体部をブラケット16から延出させた態様で設けられる。ブラケット16には、締結部材を貫通させるための固定用孔16bが形成されている。支持軸12の軸本体部は、ブラケット16に対して、縦軸部14の軸方向を回動軸方向として回動可能に設けられている。
図2に示すように、サンバイザー本体11の長手方向について、切欠部11cと反対側の角部の近傍には、支持基部側を開放側とした凹状の切欠部11dが設けられている。切欠部11dには、係止軸17が固定状態で架設されている。係止軸17は、支持軸12の横軸部15と同軸心上に配置されている。つまり、係止軸17は、その中心軸を回動軸O1に一致させている。係止軸17は、天井8側に設けられたフック状の係止部18に対して、手動操作によって着脱可能な部分として設けられている。
以上のように、サンバイザー本体11は、支持軸12のブラケット16による固定支持部と、係止部18に係合する係止軸17による係止支持部とにより、天井8に対して両持ち支持の態様で支持されている。係止軸17を係止部18に係合させた状態において、サンバイザー本体11は、車体に対して固定位置にある回動軸O1を中心として回動可能な状態となる。
一方、係止軸17を係止部18から取り外すことで、サンバイザー本体11は、縦軸部14をピボット軸として、縦軸部14の軸回りに回動可能な状態となる。サンバイザー1は、縦軸部14の軸回りのサンバイザー本体11の回動により、例えば車体のルーフを構成するサイドルーフレールに横軸部15を沿わせたサイド使用位置での使用が可能となっている。サイド使用位置での使用においては、サンバイザー本体11が回動軸O1を中心とした回動位置によってドアウインドウ9(図1参照)に対向した状態となる。
サンバイザー本体11は、樹脂材料により形成された中空板状の部材を基材とし、この基材をシート状の外装部材により被覆した構成を備える。サンバイザー本体11の樹脂製の基材は、例えば、薄肉状のヒンジ部分を介して互いにつながった部分であって略線対称の形状を有する2つのプレート部を重ね合わせることで形成される。サンバイザー本体11の本体裏面部11a側には、サンバイザー本体11の長手方向に沿って移動するスライド扉19aによって開閉可能なミラー19が設けられている(図2参照)。
図4から図6に示すように、バネ20は、サンバイザー本体11に対して固定状態で取り付けられるとともに支持軸12の横軸部15に弾性作用することでサンバイザー本体11の回動に抵抗を付与する弾性部材である。本実施形態では、バネ20は、サンバイザー本体11に対して図示せぬ軸支持部材を介して取り付けられている。バネ20は、支持軸12の横軸部15(以下単に「支持軸12」ともいう。)において、先端側寄りの部位、詳細には先端部をなす縮径部15aの近傍部分に設けられている。
図4および図6に示すように、バネ20は、支持軸12の軸方向視で所定の屈曲形状ないし湾曲形状を有する板バネである。バネ20は、ステンレス鋼や炭素鋼等の金属を材料として形成された金属製の板バネである。バネ20は、支持軸12の軸方向の両端において、回動軸O1に対して垂直な平面に沿う端面を形成している。ここで、支持軸12の軸方向視は、図6に示すように、回動軸O1の軸方向視であり、以下では、「支持軸方向視」という。また、説明の便宜上、図6における上下左右を、バネ20における上下左右に対応させる。
図4および図6に示すように、バネ20は、全体として回動軸O1を筒軸方向とする略筒状に形成されており、一定の横断面形状をなすように形成されている。バネ20は、軸抱持部21と、軸押圧片部22と、押圧片支持部23とを有する。
軸抱持部21は、支持軸方向視で円弧状をなし、支持軸12を抱持する部分である。本実施形態では、軸抱持部21は、支持軸方向視で下側を凸側とした半円形状をなす。つまり、軸抱持部21は、下側を凸側とした半円筒状の面部である。
軸抱持部21は、半円筒状の内周面21aについて、支持軸方向視において支持軸12の外周面12aと略同じ曲率半径の円弧形状を有し、内周面21aを、全体的に支持軸12の外周面12aの下半部に接触させている。したがって、バネ20に対する支持軸12の回動動作において、軸抱持部21の内周面21aは、支持軸12の外周面12aに対する摺接面となる。軸抱持部21の湾曲方向(周方向)の一側(右側)の縁部には、上側を向く端面21bが形成されている。
軸押圧片部22は、軸抱持部21とともに支持軸12を挟持する部分であって支持軸12に形成された係合部としての係止凹部40に係合する部分となる。軸押圧片部22は、下側の板面を、係止凹部40に対する係合面22aとする。
軸押圧片部22が係合する支持軸12の係止凹部40について説明する。係止凹部40は、図5および図6に示すように、支持軸12におけるバネ20の配置位置に対応した部位において、支持軸12の外周部に、切欠き状の凹部として形成されている。係止凹部40は、回動軸方向について、軸押圧片部22の形成範囲に対応して、軸押圧片部22の全体を含むようにバネ20と略同じ長さ範囲に形成されており、回動軸方向に延伸した細長い形状を有する。
係止凹部40は、支持軸12の横断面視において直線状をなす平面状のバネ受面41を有する。バネ受面41は、バネ20の弾性により軸押圧片部22の圧接を受ける面となる。バネ受面41は、支持軸12の横断面視における円形状の一側を截頭状に切り欠いた面に沿うように形成されている。バネ受面41は、例えば、支持軸12の横断面視において、外周面12aが沿う周方向について70~90°の角度範囲で形成されている。
係止凹部40において、バネ受面41の長手方向である回動軸方向の両側には、支持軸12の外周面12aに対するバネ受面41の段差をなす段差面42,42が形成されている。
一方、バネ受面41に対して、支持軸12の周方向の両側は、外周面12aにつながっている。つまり、バネ受面41の、支持軸12の周方向の両側においては、バネ受面41と外周面12aとによる稜線部45,46が形成されている。
以上のような係止凹部40に係合する軸押圧片部22は、一方の板面である係合面22aをバネ受面41に対する接触面とし支持軸方向視において左右方向に沿う直線状をなす平板状の部分である。軸押圧片部22は、支持軸方向視において、バネ受面41よりも長く、係合面22aをバネ受面41の全体に接触させている。軸押圧片部22の縁端部には、上下方向に沿う端面22bが形成されている。
押圧片支持部23は、支持軸方向視で軸抱持部21の一側から延出し、軸抱持部21に対して軸押圧片部22を片持ち状に支持する部分である。押圧片支持部23は、第1平面部25と、湾曲面部26と、第2平面部27と、角面部28とを有する。
第1平面部25は、支持軸方向視で軸抱持部21の端面21b側と反対側から、軸抱持部21が沿う円周形状に対する接線に沿うように上方に向けて直線状に延出した部分である。第1平面部25の上側に、湾曲面部26の一側がつながっている。
湾曲面部26は、上側を凸側とした半円筒状の面部であり、支持軸方向視で上側を凸側とした半円形状をなす。湾曲面部26は、支持軸方向視において軸抱持部21と略同じ曲率半径の円弧形状を有し、湾曲面部26と略上下対称の形状を有する。
第2平面部27は、第1平面部25と平行状な面部であり、支持軸方向視で湾曲面部26の第1平面部25とつながる側と反対側から、湾曲面部26が沿う円周形状に対する接線に沿うように下方に向けて直線状に延出した部分である。湾曲面部26の他側に、第2平面部27の上側がつながっている。
角面部28は、第2平面部27と軸押圧片部22との間において直角状の角部をなす湾曲面部である。つまり、押圧片支持部23は、軸押圧片部22を、第2平面部27の下側からバネ20の内側(左側)に向けて直角状に屈曲した部分としている。これにより、押圧片支持部23は、第2平面部27に対して、角面部28を介して軸押圧片部22を片持ち状に支持している。
以上のように、バネ20において、軸抱持部21および軸押圧片部22は、押圧片支持部23を介して互いにつながった部分であり、互いの間に支持軸12を挟み込んで挟持する。バネ20は、軸抱持部21、軸押圧片部22、および押圧片支持部23により、支持軸方向視で略「e」字状の形態を有する。
以上のような構成を備えたバネ20は、例えば樹脂製の部材である軸支持部材を介して、サンバイザー本体11を構成する2つのプレート部により挟み込まれた態様で、サンバイザー本体11の内部において所定の位置に固定状態で設けられる。軸支持部材は、バネ20とともに支持軸12を回動可能に支持する。これにより、支持軸12に対し、サンバイザー本体11、軸支持部材、およびバネ20が一体的に回動する構成が得られる。
なお、サンバイザー本体11におけるバネ20の取付け構造としては、軸支持部材を介することなく、サンバイザー本体11に対して直接的にバネ20を固定状態で取り付ける構成のものであってもよい。この場合、例えば、サンバイザー本体11を構成するプレート部にバネ20の取付け部分が一体的に形成され、バネ20がサンバイザー本体11内に取り付けられる。
以上のようにサンバイザー本体11に対して固定状態で設けられるバネ20は、軸抱持部21と軸押圧片部22との間に支持軸12を挟み込んだ状態で、支持軸12を圧接挟持している。
具体的には、図6に示すように、軸抱持部21は、支持軸12の下半部を嵌合させた態様で、内周面21aの全体を支持軸12に対する接触部としている。
また、図6に示すように、軸押圧片部22は、サンバイザー1の格納状態(図3、サンバイザー本体11A参照)において、係止凹部40に係合する。すなわち、サンバイザー1の格納状態において、軸押圧片部22は、係合面22aをバネ受面41に圧接させ、係止凹部40に係合した状態(以下「係合状態」という。)となる。係合面22aは、その略全体をバネ受面41に接触させる。
サンバイザー1の格納状態において、軸押圧片部22の係止凹部40に対する係合により、サンバイザー本体11の回動動作について係止作用が得られ、サンバイザー本体11が位置決めされた状態となる。そして、サンバイザー1が格納状態から使用状態となるべく、サンバイザー本体11が下方に回動操作されることで、係止凹部40に対する軸押圧片部22の係合が解除され、支持軸12に対するバネ20の係止状態が解除される。
図7は、サンバイザー1の格納状態からサンバイザー本体11を回動操作した状態を示している。図7は、格納状態でのサンバイザー本体11を基準、つまり回動角度0°として、サンバイザー本体11が約30°回動した状態を示している(矢印A1参照)。なお、サンバイザー本体11の回動動作においては、車体側に設けられた支持軸12側を固定側として、支持軸12に対してサンバイザー本体11がバネ20および軸支持部材とともに一体的に回動するが、図6および図7においては、サンバイザー本体11側(バネ20側)を固定側として、バネ20に対する回動軸O1を中心とした支持軸12の相対的な回動を示している。
したがって、図6および図7に示す支持軸方向視は、図3に示す側と反対側の支持軸方向視であり、図7に示す状態は、サンバイザー本体11の下側への回動にともなって、バネ20が支持軸12に対して図7における左回転方向(反時計方向)に回動した状態である。以下では、支持軸12に対するサンバイザー本体11(バネ20)の回動動作を、バネ20に対する支持軸12の相対的な回動動作として説明する。
図7に示すように、サンバイザー本体11が格納状態から回動操作されると、バネ20に対する支持軸12の相対的な回動にともない、軸押圧片部22の係合状態が解除される。すなわち、支持軸12の回動にともなって、まず、支持軸12は、係合面22aに対してバネ受面41を面接触させた状態から、係合面22aに対して一側(左側)の稜線部45を線接触させた状態となる。そして、支持軸12の回動が進むと、係合面22aに対して外周面12aを接触させた状態となる。なお、支持軸12の回動動作において、支持軸12の外周面12aによる軸抱持部21に対する接触態様は保持される。
以上のような本実施形態に係るサンバイザー支持部構造において、支持軸12の回動動作にともない、バネ20において実質的に弾性変形する部分(弾性変形により移動する部分)は、軸押圧片部22の部分となる。すなわち、図6および図7に示すように、軸押圧片部22の係合状態から、支持軸12の回動によって係止凹部40に対する軸押圧片部22の係合が解除される際に、係合面22aに稜線部45の接触を受ける軸押圧片部22が、支持軸12により押し上げられ、第2平面部27に対する屈曲角度を小さくするように上側に移動する。
このように、バネ20は、支持軸方向視において第2平面部27および軸押圧片部22がなす角度を小さくするように弾性変形する。なお、図7においては、バネ20の変形前の状態を二点鎖線で示している。
このように、バネ20において、支持軸12の回動動作にともなって弾性変形部分である軸押圧片部22を移動させる変形態様を示す本実施形態に係るサンバイザー支持部構造は、支持軸12およびバネ20の相対的な回動動作に関し、次のように構成されている。すなわち、サンバイザー支持部構造は、サンバイザー本体11の格納位置からの回動角度であるサンバイザー回動角度θ(図3参照)について、所定の回動角度θ1以降、支持軸方向視において、軸押圧片部22の弾性変形の起点Q1から軸押圧片部22に対する支持軸の接触点T1までの長さl、およびバネ20の撓みによる軸押圧片部22の移動量である撓み量δが一定となるように構成されている。
図7に示すように、長さlは、支持軸方向視において、軸押圧片部22の変形(移動)の起点Q1から、軸押圧片部22に対する支持軸12の接触点T1までの距離である。本実施形態では、接触点T1は、係合面22aに対する稜線部45または外周面12aの接触位置となる。ここで、起点Q1は、軸押圧片部22の係合面22a側における軸押圧片部22と角面部28との境界の位置である。言い換えると、起点Q1は、係合面22aの角面部28側の端点であり、図7に示すように軸押圧片部22が上側に回動するように移動した状態における係合面22aの下端の位置である。
撓み量δは、バネ20の基準状態からの軸押圧片部22の変位量であり、支持軸方向視において、係合状態の軸押圧片部22が沿う方向(左右方向)に直交する方向、つまり上下方向についての起点Q1と接触点T1との間の寸法である。ここで、バネ20についての「基準状態」は、バネ20が軸押圧片部22を係止凹部40に係合させた状態、つまりサンバイザー1の格納状態に対応するバネ20の状態である。撓み量δ(mm)は、次式(1)で表される。
式(1)において、Fは、バネ反力(N)であり、Eは、バネ20のヤング率(縦弾性係数)(N/mm2)である。バネ反力F(N)は、支持軸12から軸押圧片部22に作用する力の反力として、軸押圧片部22から支持軸12に作用する力であり、支持軸方向視において、支持軸12の接触点T1に対して下方に向けて作用する力である。
式(1)において、Iは、断面2次モーメント(mm4)であり、次式(2)で表される。
式(2)において、bは、軸押圧片部22の板幅(mm)であり、hは、軸押圧片部22の板厚である。本実施形態において、板幅bは、バネ20の長さ(回動軸方向の寸法)に一致する。
式(1)より、バネ反力F(N)は、次式(3)で表される。
式(3)において、長さlおよび撓み量δは、支持軸12の回動動作において変化する変動値である。一方、式(3)において、ヤング率E、および断面2次モーメントIは、支持軸12の回動動作にかかわらず一定の固定値である。
式(1)から、撓み量δの変化量Δδが、長さlの変化量Δlよりも大きい場合、つまり、Δδ>Δlの場合、バネ反力Fは増加する。なお、変化量Δδおよび変化量Δlは、いずれも支持軸12の単位回動量当たりの変化量である。
本実施形態に係るサンバイザー支持部構造においては、サンバイザー回動角度θについて、所定の回動角度θ1(本実施形態では56.2°)以降、長さlおよび撓み量δが一定となるように、つまり、回動角度θ1以降、変化量Δδおよび変化量Δlが0となるように構成されている。このような構成によれば、サンバイザー本体11の回動操作について高級感のある操作フィーリングを実現することができ、サンバイザー1の品質を向上させることができる。
このような効果が得られることについて、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造に対する比較対象の構造である比較構造を用いて説明する。図8を用いて、比較構造に係るバネ120が有する構成について説明する。
図8に示すように、バネ120は、支持軸方向視で所定の屈曲形状ないし湾曲形状を有する板バネである。バネ120は、支持軸方向視で略U字状をなす基部121と、支持軸12を貫通させた態様で挟持する軸挟持部122とを有する。基部121は、例えばバネ120が所定の軸支持部材を介してサンバイザー本体11に取り付けられるものである場合、軸支持部材に対する取付け部分となる。
基部121は、支持軸方向視で半円形状をなす円弧状端部124と、円弧状端部124の一側(図8における上側)から延出した上側平面部125と、円弧状端部124の他側(図8における下側)から延出した下側平面部126とを有する。
軸挟持部122は、支持軸方向視で、下側平面部126から延出し支持軸12を抱持する軸抱持部128と、上側平面部125から延出し軸抱持部128とともに支持軸12を挟持する係合片部129とを含む。係合片部129は、支持軸12の係止凹部40に係合する部分となる。軸抱持部128および係合片部129は、基部121を介して互いにつながった部分であり、互いの間に支持軸12を挟み込んで挟持する。
軸抱持部128は、下側平面部126から延出した下傾斜面部131と、支持軸方向視におけるバネ120の長手方向の一側の端部をなす湾曲面部132と、下傾斜面部131と湾曲面部132との間の屈曲部133とを有する。湾曲面部132は、支持軸方向視において円弧状の湾曲形状をなす部分であり、湾曲面部132がなす円弧状が沿う円周形状の曲率半径は、支持軸12の外周面12aが沿う円周形状の曲率半径よりも大きい。
係合片部129は、バネ受面41に面接触する部分である軸接触面部134として形成されている。軸接触面部134は、上側平面部125に対して、上り傾斜するように屈曲状に形成された平面部である。軸接触面部134は、下傾斜面部131に対して、支持軸方向視においてバネ120の長手方向に直交する方向(図8における上下方向)について略対称な傾斜態様を有する。軸接触面部134の内側の面が、バネ受面41に圧接する係合面134bとなる。
以上のような構成を備えた比較構造に係るバネ120は、軸挟持部122において、軸抱持部128と係合片部129との間に支持軸12を挟み込んだ状態で、支持軸12を圧接挟持する。
具体的には、軸抱持部128は、支持軸方向視において、下傾斜面部131の中央部と、湾曲面部132の中央部とを、支持軸12に対する接触部としている。また、係合片部129は、サンバイザーの格納状態において、係合面134bをバネ受面41に圧接させ、係止凹部40に係合した状態となる(図11A参照)。
サンバイザーの格納状態において、係合片部129の係止凹部40に対する係合により、サンバイザー本体11の回動動作について係止作用が得られ、サンバイザー本体11が位置決めされた状態となる。そして、サンバイザーが格納状態から使用状態となるべく、サンバイザー本体11が下方に回動操作されることで、係止凹部40に対する係合片部129の係合が解除され、支持軸12に対するバネ20の係止状態が解除される。
図8は、サンバイザー1の格納状態からサンバイザー本体11を回動操作した状態を示している。図8は、格納状態でのサンバイザー本体11を基準、つまり回動角度0°として、サンバイザー本体11が約26°回動した状態を示している(矢印A1参照)。
図8に示すように、サンバイザー本体11が格納状態から回動操作されると、バネ120に対する支持軸12の相対的な回動にともない、係合片部129の係合状態が解除される。すなわち、支持軸12の回動にともなって、まず、支持軸12は、係合面134bに対してバネ受面41を面接触させた状態から、係合面134bに対して稜線部45を線接触させた状態となる。そして、支持軸12の回動が進むと、係合面134bに対して外周面12aを接触させた状態となる。
以上のような比較構造のバネ120において、支持軸12の回動動作にともない、バネ120において実質的に弾性変形する部分(弾性変形により移動する部分)は、上側平面部125および係合片部129の部分となる。このように、バネ120は、上側平面部125および係合片部129と、下側平面部126および下傾斜面部131との間の間隔を広げるように弾性変形する。なお、図8においては、バネ120の変形前の状態を二点鎖線で示している。バネ120において、支持軸12の回動動作にともなう弾性変形による実質的な移動部分となる弾性変形部分は、上側平面部125および係合片部129の部分となる。
バネ120から支持軸12に作用する力であるバネ反力F(N)は、次式(4)で表される。なお、バネ反力Fは、支持軸方向視において、支持軸12の接触点T2に対して係合面134bに垂直な方向に作用する力である。
式(4)において、lは、支持軸方向視において、円弧状端部124が沿う円周の中心点P1から係合片部129に対する支持軸12の接触点T2までの長さである。図8に示すように、長さlは、支持軸方向視において、円弧状端部124が沿う仮想円周S1の中心点P1から、係合片部129に対する支持軸12の接触点T2までの距離である。接触点T2は、係合面134bに対する稜線部45または外周面12aの接触位置となる。
式(4)において、ζは、バネ120の撓みによる係合片部129の移動量である撓み量である。図8に示すように、撓み量ζは、バネ120の基準状態からの弾性変形部分の変位量であり、支持軸方向視において、変形後の係合面134bに直交する方向についての、接触点T2から変形前の係合面134bまでの長さ寸法である。ここで、バネ120についての「基準状態」は、バネ120が係合片部129を係止凹部40に係合させた状態、つまりサンバイザー1の格納状態に対応するバネ120の状態である。
式(4)において、rは、円弧状端部124が沿う仮想円周S1の半径(バネ半径)である。式(4)において、Lは、サンバイザー本体11の長さであり、図3に示すように、支持軸方向視における回動軸O1からサンバイザー本体11の先端までの長さ(サンバイザー長さ)である。式(4)において、Eは、バネ120のヤング率である。
式(4)において、長さlおよび撓み量ζは、支持軸12の回動動作において変化する変動値である。一方、式(4)において、バネ半径r、サンバイザー長さL、およびヤング率Eは、支持軸12の回動動作にかかわらず一定の固定値である。
式(4)から、撓み量ζの変化量Δζが、長さlの変化量Δlよりも大きい場合、つまり、Δζ>Δlの場合、バネ反力Fは増加する。一方、撓み量ζの変化量Δζが、長さlの変化量Δlよりも小さい場合、つまり、Δζ<Δlの場合、バネ反力Fは減少する。なお、変化量Δζおよび変化量Δlは、いずれも支持軸12の単位回動量当たりの変化量である。
このような比較構造のバネ120によれば、サンバイザー本体11の回動操作について、操作荷重の変化が大きくなり、また、操作荷重の最大値が小さくなることから、操作フィーリングが悪いという問題がある。かかる問題に関し、図9に、比較構造におけるサンバイザー操作荷重の推移(F-S線図)を示す。図9に示すグラフにおいて、横軸はサンバイザー回動角度θ(°)であり、縦軸は操作荷重(N)である。なお、操作荷重は、上記の式(4)で表せるバネ反力Fに依存する。
図9のグラフに示されるように、格納状態(θ=0°)からのサンバイザー本体11の回動動作、つまりサンバイザーを開くときの回動動作において、サンバイザー回動角度θが20°近傍となるまでは操作荷重が比較的急勾配で増大し、その後、サンバイザー回動角度θが50°近傍となるまでに操作荷重が比較的急勾配で減少している。そして、サンバイザー回動角度θの50°以降は、サンバイザーが最大開状態となるまで、操作荷重は、変動しながら概ね徐々に増大している。
このような比較構造における操作荷重の推移においては、操作荷重の変化が大きく、特に、サンバイザー回動角度θが20°付近から50°付近にかけての落差が大きく勾配が急である(矢印B1参照)。こうした操作荷重の急激な変化は、サンバイザー本体11の回動操作において、安定感を損ない、操作フィーリングを悪化させる原因となる。図9に示す例では、サンバイザーを開く際、最初に操作荷重が急上昇した後に急激に減少するため、回動操作の抵抗が急に小さくなり不安定となる。
続いて、比較構造のバネ120おけるバネ反力Fの推移(変化)について、図10および図11を用いて説明する。図10に示すグラフにおいて、横軸はサンバイザー回動角度θ(°)であり、縦軸はバネ反力F(N)である。
図10に示すように、バネ反力Fの推移において、サンバイザー回動角度θ(°)を、区間A、区間B、および区間Cに分けている。
区間Aは、サンバイザーを開くときのサンバイザー本体11の回動動作において、バネ反力Fが増大してピークに達するまでの区間である。この区間Aにおいては、変化量Δζが変化量Δlよりも大きい(Δζ>Δl)。本例では、区間Aは、θ=0~21°の範囲である。
図11Aおよび図11Bに示すように、サンバイザー本体11が格納状態から回動操作されると、バネ120に対する支持軸12の相対的な回動にともない、係合片部129の係合状態が解除される。つまり、支持軸12は、係合面134bに対してバネ受面41を面接触させた状態から、係合面134bに対して稜線部45を接触させた状態となり、バネ120の弾性変形部分を押し開くように作用する。図11Aは、サンバイザー回動角度θが0°の状態を示しており、図11Bは、サンバイザー回動角度θが21°の状態を示している。
長さlに関し、サンバイザー回動角度θが21°の状態での長さl2は、サンバイザー回動角度θが0°の状態での長さl1よりも長くなる(l2>l1)。なお、サンバイザー回動角度θが0°の状態での長さlに関し、接触点T2は、バネ受面41の縁端である稜線部45の位置となる。また、サンバイザー回動角度θが21°の状態での撓み量ζを、撓み量ζ1とする。
区間Bは、サンバイザー本体11の回動動作において、サンバイザー回動角度θが21°の状態から、バネ反力Fが徐々に減少する区間である。この区間Bにおいては、変化量Δζが変化量Δlよりも小さい(Δζ<Δl)。本例では、区間Bは、θ=21~38.6°の範囲である。
図11Bおよび図11Cに示すように、サンバイザー回動角度θが21°の状態からさらにサンバイザー本体11が回動操作されると、支持軸12は、稜線部45による係合面134bに対する接触部位を軸接触面部134の縁端側へと移動させ、バネ120の弾性変形部分をさらに押し開くように作用する。
そして、サンバイザー回動角度θが38.6°となったタイミングで、支持軸12は、係合面134bに対する接触部を、稜線部45から外周面12aに切り替える。つまり、支持軸12は、外周面12aを係合面134bに接触させ、バネ120に対して接地した状態となる。図11Cは、サンバイザー回動角度θが38.6°の状態を示している。ここで、支持軸12とバネ120が接地した状態とは、支持軸方向視において、係合面134bに垂直な直線のうち、係合面134bに対する支持軸12の接触点T2となる稜線部45を通る直線が、回動軸O1を通る状態である。
長さlに関し、サンバイザー回動角度θが38.6°の状態での長さl3は、サンバイザー回動角度θが21°の状態での長さl2よりも長くなる(l3>l2)。また、撓み量ζに関し、サンバイザー回動角度θが38.6°の状態での撓み量ζ2は、サンバイザー回動角度θが21°の状態での撓み量ζ1よりも長くなる(ζ2>ζ1)。
区間Cは、サンバイザー本体11の回動動作において、サンバイザー回動角度θが38.6°以降の区間である。この区間Cにおいては、撓み量ζおよび長さlが一定となり、変化量Δζと変化量Δlが同一(いずれも0)となる(Δζ=Δl)。
図11Cおよび図11Dに示すように、サンバイザー回動角度θが38.6°の状態からさらにサンバイザー本体11が回動操作されても、支持軸12は、係合面134bに対して所定の部位に外周面12aを接触させた状態を保持する。支持軸12が係合面134bに外周面12aを接触させた状態においては、バネ120に対する支持軸12の接触態様、言い換えるとバネ120による支持軸12の被挟持形態は、回動角度によらず、支持軸方向視において、支持軸12の横断面形状が沿う回動軸O1を中心とした円周形状となる。このため、区間Cにおいて、長さlおよび撓み量ζは、それぞれ支持軸12がバネ120に接地した状態での長さl3および撓み量ζ2を保持する。図11Dは、区間Cの状態の一例として、サンバイザー回動角度θが60°の状態を示している。
以上のように、比較構造によれば、区間Aにおいて、バネ反力Fが増大し(矢印C1参照)、区間Bにおいて、バネ反力Fが減少し(矢印C2参照)、その後、区間Cにおいて、バネ反力Fが一定となる(矢印C3参照)。このようなバネ反力Fの変化において、サンバイザー回動角度θについて、21°と38.6°が、変化量Δζと変化量Δlの関係が変わるポイントとなる。すなわち、サンバイザー回動角度θが増加する過程において、θ=21°で、Δζ>ΔlからΔζ<Δlに変わり、θ=38.6°で、Δζ<ΔlからΔζ=Δlに変わる。
図10に示すグラフにおいて、θ=21°の点が、変化量Δζと変化量Δlの大小関係が入れ替わるポイント、つまりバネ反力Fについての荷重変曲点となる。これにより、区間Bにおいて、バネ反力Fの落ち込みが発生している(符号D1で示す部分参照)。
このように、比較構造においては、変化量Δζと変化量Δlの大小関係が入れ替わるポイントが存在しており、バネ反力Fの落ち込みが発生している。このことは、区間Bの最後に、支持軸12とバネ120が接地した状態が生じることに起因する。こうしたバネ反力Fの落ち込みは、サンバイザー1の回動操作について操作フィーリングを悪化させる要因となる。また、良好な操作フィーリングを得るためには、バネ反力Fの最大値F1をある程度大きくすることが好ましい。
以上のような比較構造に係るバネ120に対し、本実施形態に係るバネ20によれば、バネ反力Fの落ち込みを抑制することができるとともに、バネ反力Fの最大値を増大させることができる。本実施形態に係るサンバイザー支持部構造におけるバネ反力Fの推移について、図12および図13を用いて説明する。図12に示すグラフにおいて、横軸はサンバイザー回動角度θ(°)であり、縦軸はバネ反力F(N)である。
図12に示すように、バネ反力Fの推移において、サンバイザー回動角度θ(°)についての区間A、区間B、および区間Cは、図10に示す比較構造の場合と同様の角度範囲である。
すなわち、区間Aは、バネ反力Fが増大する区間であり、この区間Aにおいては、変化量Δδが変化量Δlよりも大きい(Δδ>Δl)。
図13Aおよび図13Bに示すように、サンバイザー本体11が格納状態から回動操作されると、バネ20に対する支持軸12の相対的な回動にともない、軸押圧片部22の係合状態が解除される。つまり、支持軸12は、係合面22aに対してバネ受面41を面接触させた状態から、係合面22aに対して稜線部45を接触させた状態となり、バネ20の弾性変形部分を押し上げるように作用する。図13Aは、サンバイザー回動角度θが0°の状態を示しており、図13Bは、サンバイザー回動角度θが21°の状態を示している。
長さlに関し、サンバイザー回動角度θが21°の状態での長さl02は、サンバイザー回動角度θが0°の状態での長さl01よりも短くなる(l02<l01)。なお、サンバイザー回動角度θが0°の状態での長さlに関し、接触点T2は、バネ受面41の縁端である稜線部45の位置となる。また、サンバイザー回動角度θが21°の状態での撓み量δを、撓み量δ01とする。
本実施形態に係るサンバイザー支持部構造によれば、区間Aから区間B、区間Cにかけてのバネ反力Fの変化態様が、比較構造の場合と異なる。すなわち、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造の場合、バネ反力Fが、区間Aから区間Cの始めの部分まで、比較的緩やかな勾配で増大し続ける。したがって、区間Bから区間Cの始めの部分までは、区間Aと同様に、撓み量δの変化量Δδが長さlの変化量Δlよりも大きい(Δδ>Δl)。
図13Bおよび図13Cに示すように、サンバイザー回動角度θが21°の状態からさらにサンバイザー本体11が回動操作されると、支持軸12は、稜線部45による係合面22aに対する接触部位を角面部28側(起点Q1側)へと移動させるとともに、係合面22aに対して外周面12aを接触させる。
すなわち、サンバイザー回動角度θが38.6°以降の所定のタイミングで、支持軸12は、係合面22aに対する接触部を、稜線部45から外周面12aに切り替える。本実施形態では、支持軸12は、係合面22aに対する接触部が稜線部45から外周面12aに切り替わるタイミングは、サンバイザー回動角度θが56.2°のタイミングとなっている。
図13Cに示すように、サンバイザー回動角度θが56.2°の状態での長さl03は、サンバイザー回動角度θが21°の状態での長さl02よりも短く、サンバイザー回動角度θが56.2°の状態での撓み量δ02は、サンバイザー回動角度θが21°の状態での撓み量δ01と略同じとなる(わずかに小さくなる)。図13Cは、サンバイザー回動角度θが56.2°の状態を示している。
区間Cの始めの方に位置するサンバイザー回動角度θが56.2°の角度状態以降、バネ反力Fの大きさが、サンバイザー回動角度θが56.2°の状態でのバネ反力Fの大きさと略同じ大きさで保持される。したがって、サンバイザー回動角度θが56.2°以降においては、撓み量δおよび長さlが一定となり、変化量Δδと変化量Δlが同一(いずれも0)となる(Δδ=Δl)。支持軸12は、サンバイザー回動角度θが56.2°以降、バネ20に対する作用状態を変化させることなく、サンバイザー回動角度θが56.2°の状態における作用状態と略同じ作用状態を保持する。
θ=56.2°以降において保持されるバネ反力Fの最大値F2は、比較構造におけるバネ反力Fの最大値F1よりも大きい。具体的には、比較構造におけるバネ反力Fの最大値F1が約6Nであるのに対し、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造におけるバネ反力Fの最大値F2は約10.5Nである。
図13Cおよび図13Dに示すように、サンバイザー回動角度θが56.2°の状態からさらにサンバイザー本体11が回動操作されても、支持軸12は、係合面22aに対して所定の部位に外周面12aを接触させた状態を保持する。つまり、支持軸12は、バネ20による被挟持形態を、支持軸方向視において支持軸12の横断面形状が沿う回動軸O1を中心とした円周形状に保持する。このため、θ=56.2°以降において、長さlおよび撓み量δは、それぞれθ=56.2°における長さl03および撓み量δ02を保持する。図13Dは、区間Cの状態の一例として、サンバイザー回動角度θが90°の状態を示している。
以上のように、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造によれば、区間Aから区間Bを経て区間Cの始めまで、バネ反力Fが増大し(矢印H1参照)、最大(最大値F2)となった後、θ=56.2°以降は、バネ反力Fが一定となる(矢印H2参照)。このようなバネ反力Fの変化において、サンバイザー回動角度θについて、θ=56.2°が、変化量Δδと変化量Δlの関係が変わるポイントとなる。すなわち、サンバイザー回動角度θが増加する過程において、θ=56.2°で、Δδ>ΔlからΔδ=Δlに変わり、θ=56.2°以降、Δδ=Δlの関係が保持される。したがって、本実施形態では、所定の回動角度θ1は56.2°となる。
このように、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造においては、変化量Δδと変化量Δlの大小関係が入れ替わるポイントが存在しておらず、バネ反力Fの落ち込みが発生していない。
以上のように、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造は、サンバイザー1を開く際に、ある一定の回転角度までは、良好な操作フィーリングを得るために十分な操作荷重が得られるまでバネ反力Fが漸増し、それ以降の回転角度においてバネ反力Fが略一定に保たれるように構成されている。本実施形態に係るサンバイザー支持部構造によれば、サンバイザー本体11の回動操作について、バネ反力Fの落ち込みを抑制することができ、操作荷重の変化を小さくすることができるとともに、一定となる操作荷重の最大値を増大させることができる。これにより、サンバイザー本体11の回動操作について、適度な重さを得ながら、滑らかさと安定感を向上させることができ、高級感のある操作フィーリングを得ることができる。結果として、サンバイザー1の質感を向上させることができる。
また、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造は、上述したような支持軸12の回動にともなうバネ20の挙動を実現するための構成として、次のような構成を備える。すなわち、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造において、支持軸12の係止凹部40は、支持軸12の横断面視において直線状をなし軸押圧片部22の圧接を受ける平面状のバネ受面41を有し、軸押圧片部22は、一方の板面である係合面22aをバネ受面41に対する接触面とし支持軸方向視において直線状をなす平板状の部分である。
このような構成によれば、上述したような支持軸12の回動にともなうバネ20の挙動を簡単な構成により実現することができる。本実施形態では、サンバイザー回動角度θが56.2°の状態で、バネ20に対する接触部が稜線部45から外周面12aに切り替わるように、支持軸方向視における軸押圧片部22の長さや、バネ受面41の形成範囲等が設定されている。
また、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造によれば、支持軸12と板バネであるバネ20とによる簡単な支持構成において、支持軸12の係止凹部40に対するバネ20の形状を工夫することで、操作フィーリングを向上することができる。これにより、少ない部品点数で安価な構成により、サンバイザー1の質感を向上させることができる。
また、本実施形態に係るサンバイザー支持部構造によれば、サンバイザー本体11の回動にともなうバネ20の弾性変形部分を、片持ちバネの態様で変形する軸押圧片部22とすることができる。これにより、バネ反力Fの式として、片持ち梁構造による単純な力学式を実現することができる。結果として、操作フィーリングに大きく影響するバネ反力Fの調整を容易に行うことが可能となる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るサンバイザー支持部構造およびサンバイザーは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
また、上述した実施形態では、図10および図12に示すバネ反力Fの推移図において、サンバイザー回動角度θについての区間A、区間B、および区間Cを規定する角度は21°および38.6°であるが、これらの角度の大きさはあくまでも一例である。また、上述した実施形態では、所定の回動角度θ1は56.2°であるが、この回動角度θ1の大きさはあくまでも一例である。
また、上述した実施形態では、バネ20は、全体として回動軸O1を筒軸方向とする略筒状に形成されており、一定の横断面形状をなすように形成されているが、バネ20は、横断面形状を回動軸方向について部分的に異ならせた形態のものであってもよい。つまり、バネ20は、回動軸方向について少なくとも支持軸12を挟持する部分において図6に示すような横断面形状をなすものであればよい。
バネ20の形状は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の形状を採用することができる。バネ20の変形例について、図14を用いて説明する。
図14Aに、バネ20の第1の変形例であるバネ20Aを示す。第1の変形例のバネ20Aにおいては、第2平面部27と軸押圧片部22との間に、上述した実施形態における角面部28に対して比較的曲率半径が大きい湾曲面部58が設けられている。湾曲面部58は、略1/4円筒状の部分であり、第2平面部27と軸押圧片部22とを支持軸方向視で円弧状をなす湾曲形態によりつなぐ部分である。
第1の変形例のバネ20Aによれば、第2平面部27と軸押圧片部22とによる角部分における応力の集中を避けることができる。すなわち、第2平面部27と軸押圧片部22とによる角部分が直角形状に近いほど、支持軸12の回動にともなって軸押圧片部22を移動させるバネ20の弾性変形においてその角部分に応力が集中しやすくなるが、湾曲面部58を有することで、バネ20の弾性変形による応力を分散させることができる。これにより、サンバイザー1の開閉操作にともなうバネ20の金属疲労を抑制することができ、バネ20の耐久性を向上することができる。
図14Bに、バネ20の第2の変形例であるバネ20Bを示す。第2の変形例のバネ20Bにおいては、湾曲面部26、第2平面部27、および軸押圧片部22からなる部分が、右方に向けて延出されている。すなわち、図14Bに示すように、バネ20Bにおいては、湾曲面部26が、左側湾曲部26aと、左側湾曲部26aから右方に向けて延設された水平面状の上面部26bと、上面部26bと第2平面部27とをつなぐ右側湾曲部26cとを有する。また、湾曲面部26が右方に延設された分、軸押圧片部22が、バネ受面41に接触する本体部22cと、本体部22cから右方に伸びた延設部22dとを有する。
第2の変形例のバネ20Bによれば、軸押圧片部22が延設部22dを有することで、支持軸方向視において軸押圧片部22の長さを十分に確保することができる。これにより、片持ちバネ状の軸押圧片部22を有する構成において、支持軸12の回動にともなう軸押圧片部22の移動を緩やかに(勾配を小さく)することができるので、操作フィーリングに大きく影響する操作荷重の細やかな調整が可能となる。