JP7475700B2 - 黒ボク土を用いて栽培した大麦の葉及び/又は茎、阿蘇産大麦の葉及び/又は茎並びにそれを含有する飲食用組成物、大麦の茎及び/又は葉の栽培方法 - Google Patents

黒ボク土を用いて栽培した大麦の葉及び/又は茎、阿蘇産大麦の葉及び/又は茎並びにそれを含有する飲食用組成物、大麦の茎及び/又は葉の栽培方法 Download PDF

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Description

本発明は、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培され、かつ、飲食用組成物に使用される六条大麦の葉及び/又は茎、並びにこれらを含む飲食用組成物;熊本県阿蘇地域で栽培された大麦の葉及び/又は茎、並びにそれを含有する飲食用組成物;月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培された大麦の葉及び/又は茎、並びにそれを含有する飲食用組成物に関する。
青汁用の飲食用組成物は、植物の葉や茎などを含む、乾燥粉末や搾汁粉末などに加工してなるものである。青汁用の飲食用組成物は、簡易に野菜成分を摂取できるものであることから、健康食品として利用されている。
青汁用の飲食用組成物に用いられる植物の一つとして、大麦が挙げられる。大麦は中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本である。大麦の若葉は、ビタミンやミネラル、アミノ酸、食物繊維、葉緑素、SOD酵素などが豊富だと言われている。大麦は、穂形により、二条大麦や六条大麦などに分類される。二条大麦と六条大麦とでは、穂についている実の列数が異なり、穂を上から見ると二条大麦は2列に、六条大麦は6列に実がついている。六条大麦は、日本に2~3世紀に朝鮮を経て渡来したとされ、雑穀として利用されることに加えて、麦茶の原料として利用される。一方、二条大麦は日本には欧米から明治時代に導入されたとされ、主に醸造用に用いられる。
大麦の実の栽培方法として、その大半が水田の裏作又は転作で作付けされているが、関東などの一部の地域では畑で作付けされている。特に麦作の盛んな北関東では、火山灰土壌を母材とし腐植を多く含む土壌である黒ボク土からなる畑において大麦が作付けされている(非特許文献1を参照)。
また、健康食品として青汁の人気上昇を背景に、より栄養価が高く、かつ、おいしく飲みやすい青汁が消費者に求められている。例えば、特許文献1では、緑葉粉末及び/又は緑葉搾汁に白きくらげ粉末を含有させることにより、栄養素を損なわずに味、香り、のど越しが優れた青汁を提供する。特許文献2では、茶葉、桑の葉、大麦若葉を微粉砕し、黒砂糖粉末、蜂蜜粉末とグラニュ糖を添加し、飲みやすくて風味や色調も良好な粉末食品を提供する。
また、特許文献3には、バレイショについて、地上部生育期間中10~15時間の日長条件で、夜間の最低気温が25℃未満及び昼間の気温との日較差が3℃以上で水耕栽培することにより、効率よく多数の塊茎を生産できることが開示されている。特許文献4には、嗜好性を改善するための大麦若葉の加工方法が開示されている。
特開2006-166776号公報 特開2005-210972号公報 特開2004-73214号公報 特開平5-7471号公報
塔野岡卓司、外4名、「黒ボク土におけるオオムギ精麦品質の改良-粉状質胚乳を呈するデンプン変異形質の有用性-」、日本作物学会紀事、2010年、第79巻、第3号、p.296-307
しかし、非特許文献1に記載があるとおり、大麦を黒ボク土畑で作付けした場合、灰色低地土水田で作付けした場合と比べて、穀粒のタンパク質含量が高くなり、それにより硝子質粒の割合が高まることから、精麦品質が著しく劣化する。そこで、良質な精麦を得る場合は、大麦を水田で作付けすることが好ましいとされている。
一方、大麦の葉や茎を収穫する目的で、大麦をどのような圃場で作付けすべきかについては、詳細を記載した文献は知られていない。特に、青汁用の飲食用組成物に適した六条大麦の葉や茎はどのようにして得られるのかについて記載した文献はこれまでに知られていない。
また、大麦若葉を効率的に栽培することと、味や栄養価を両立させる方法についての発明は未だなされていない。
そこで、本発明の課題は、青汁などの飲食用組成物に適した六条大麦の葉及び/又は茎を提供すること、さらにこのような六条大麦の葉及び/又は茎を含むことから、栽培適性が高く、かつ、栄養が豊富で嗜好性の高い飲食用組成物を提供することにある。
また、本発明の課題は、添加物によって青汁などの飲食品の味の改善や栄養価の維持あるいは向上を図るというよりは、原料そのものによって味や栄養価が改善された六条大麦の葉及び/又は茎を提供することにある。
さらに、本発明の課題は、短期間で大きく成長し、効率的に大麦の茎及び/又は葉を生産することができ、味や栄養価を高めることのできる大麦の茎及び/又は葉の栽培方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題について鋭意研究したところ、驚くべきことに、精麦不良を引き起こすとされていた黒ボク土を用いた栽培方法により、六条大麦の葉や茎は、従前の栽培方法を用いて得られた六条大麦の葉や茎に比べて、栽培適性が高く、栄養が豊富で、見た目が美しく、風味が良好であることから、青汁などの飲食用組成物の原料として適し、これを用いた飲食用組成物は、栄養が豊富で、嗜好性が高いものであることを見出した。また、六条大麦を熊本県阿蘇地域で栽培することにより、大麦の茎や葉の生育が良好であり、特定の栄養素の含量が有意に向上し、かつその栄養素が味に影響していることを見出した。さらに、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培することにより、大麦の茎や葉を短期間で大きく生育させると同時に、味や栄養価も高めることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
本発明は、要約すると以下のとおりである。
[1]少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の葉及び/又は茎。
[2]少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培され、かつ、飲食用組成物に使用される六条大麦の葉及び/又は茎。
[3]赤土を用いて栽培されたものと比べて、丈、分けつ、色、茎径及び葉幅からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性が優れており、かつ、飲食用組成物に使用される六条大麦の葉及び/又は茎。
[4]六条大麦の種又は苗を少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培する工程
を含む、飲食用組成物に使用される六条大麦の葉及び/又は茎を栽培する方法。
[5]上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の六条大麦の葉及び/又は茎、又は[4]に記載の方法によって得られる六条大麦の葉及び/又は茎を含む飲食用組成物。
[6]熊本県阿蘇地域で栽培された六条大麦の葉及び/又は茎。
[7]上記[6]に記載の大麦の葉及び/又は茎を含有する飲食用組成物。
[8]月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培する、大麦の茎及び/又は葉の栽培方法。
[9]栽培期間が、播種から出穂前である、上記[8]に記載の方法。
[10]上記[8]又は[9]に記載された方法で栽培された大麦の茎及び/又は葉を含有する飲食用組成物。
[11]月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培する、大麦の茎及び/又は葉。
[12]少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて六条大麦を栽培することを特徴とする、黒ボク土農法。
[13]熊本県阿蘇地域で六条大麦を栽培することを特徴とする、阿蘇カルデラ農法。
本発明の六条大麦の葉及び/又は茎は、従前の栽培方法を用いて得られた六条大麦の葉や茎に比べて、栽培適性が高く、栄養が豊富であり、見た目が美しく、風味が良好であり、かつ、飲食用組成物、特に青汁用の飲食用組成物に適するものである。このような本発明の六条大麦の葉及び/又は茎を用いて得られる本発明の飲食用組成物は、栄養が豊富で、嗜好性が高いものである。
本発明の方法や農法によれば、大麦を早く生育させ、効率よく大麦若葉を生産することができると同時に、味や栄養価も高めることができる。
黒ボク土を撮影した写真図である。 赤土を撮影した写真図である。
以下、本発明の詳細について説明する。
[1.本発明の黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の茎葉]
六条大麦は、植物学上で六条大麦に分類されるもの、すなわち、イネ科オオムギ属オオムギのうちの六条大麦(Hordeum vulgare f. hexastichon)であり、形態学的な特徴としては穂を上から見ると6列に実がついているものであれば特に限定されず、野生種、交雑種などのいずれであってもよい。本発明における六条大麦の具体例としては、飲食用組成物、より具体的には青汁用の飲食用組成物を挙げることができる。本発明における六条大麦を原料として使用した飲食用組成物は、二条大麦の葉や茎を用いた従前の飲食用組成物に比べて、栽培適性の高さ、栄養成分の含有量、色が鮮やかであることによる見た目の美しさと、風味の良好さとを備えることができる。六条大麦の品種は、倍取、シルキースノウ、ファイバースノウ、ミノリムギ、カシマムギ、マサカドムギ、すすかぜ、赤神力(登録商標)、早生坊主、シュンライ、サヌキハダカ、ダイシモチ、イチバンボシ、はがねむぎ及びカシマゴールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、六条大麦の葉及び/又は茎は、六条大麦の葉、茎又はその両方であり、葉及び茎はそれぞれその一部又は全部であってもよい。本明細書において、葉及び/又は茎を、茎葉とよぶ場合がある。
本発明においては、特に限定されないが、大麦の茎葉の味や栄養価を高めるために、大麦を播種から出穂前まで栽培して収穫することが好ましく、出穂直前まで栽培して収穫することがより好ましい。
本発明の六条大麦の茎葉は、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培されたものである。本発明において、栽培は、当業界において通常知られる方法により六条大麦を種や苗などから葉や茎を収穫できる程度にまで生育させることであれば特に限定されず、使用する土以外の温度や湿度などの条件は当業者により適宜設定することができる。
本発明において、黒ボク土は、通常知られている黒ボク土であれば特に限定されないが、例えば、主に火山灰土と腐葉土からなり、黒色に近い色をしており、ボクボクした感触(軽くてサラサラしている)の土であると知られている(図1を参照)。赤土(図2を参照)と比べると、黒色が濃いことがわかる。また、黒ボク土は、赤土と比べると、有効態リン酸の含有量が小さく、N:P比が2~5:12~17程度である。したがって、大麦を黒ボク土で栽培した場合、大麦に対して過剰なリンの供給を回避できる。さらに、黒ボク土は、赤土より、陽イオン交換量が2倍程度多い。これにより、黒ボク土は、赤土に比べて、豊富な量の交換性石灰、交換性苦土及び交換性加里を含有する傾向にある。黒ボク土の土壌分析データの非限定的な一例は、下記表1のとおりとなる。なお、参考として、赤土の土壌分析データも併せて示す。
本発明において、少なくとも一部に黒ボク土を含む土は、黒ボク土又は黒ボク土と他の土とを混合させた混合土であれば特に限定されない。例えば、混合土の場合は黒ボク土と他の土との混合割合は黒ボク土:他の土=0.1~9.9:9.9~0.1とすることができるが、好ましくは1~9:9~1である。混合土で栽培する場合において、黒ボク土の割合を大きくすることにより、黒ボク土と異なる土、例えば、赤土で栽培されたものより、六条大麦の丈、分けつ、色、茎径及び葉幅のいずれかの特性又はこれらの2種以上の特性が優れたものになる。
六条大麦の丈、分けつ、色、茎径及び葉幅は、飲食用組成物の原料の品質に影響する特性である。六条大麦の丈、茎径、葉幅は大きければ大きいほど、また、分けつは多ければ多いほど生育状況が良好で、栽培適性に優れることを示す。六条大麦の色は、成分として使用する飲食用組成物の美観に影響することから、濃緑色であることが好ましい。具体的には、葉色スケールを用いた場合、1本の大麦の葉の平均値が例えば4.0以上であり、好ましくは4.5以上である。
少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培された六条大麦は、例えば、赤土で栽培されたものと比べて、使用する土以外の栽培条件や栽培日数が同一である場合、丈、分けつ、色、茎径及び葉幅からなる群から選ばれる少なくとも1つの特性が飲食用組成物の原料として良好であるものであれば特に限定されず、好ましくはこれらの1つの特性が赤土で栽培されたものと比べて1.1倍以上、より好ましくはこれらの1つの特性が赤土で栽培されたものと比べて1.2倍以上、さらに好ましくはこれらの1つの特性が赤土で栽培されたものと比べて1.3倍以上又はこれらの2つの特性が赤土で栽培されたものと比べて1.1倍以上である。例えば、赤土で栽培した大麦の葉幅が5cmであり、黒ボク土で栽培した大麦の葉幅が6cmである場合、黒ボク土で栽培した大麦の葉幅は、赤土で栽培されたものに比べて1.2倍以上となる。
また、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培された六条大麦は、例えば、赤土で栽培されたものと比べて、使用する土以外の栽培条件や栽培日数が同一である場合、総ポリフェノール量やアミノ酸含有量が高くなる傾向にある。そこで、本発明の六条大麦の茎葉は、赤土で栽培されたものと比べて、総ポリフェノール量、アミノ酸含有量又はその両方の総ポリフェノール量及びアミノ酸含有量が高いものであることが好ましい。
本発明の六条大麦の茎葉は、飲食用組成物に使用される。本発明の六条大麦の茎葉を飲食用組成物の原料として使用する際は、特定の1品種を単独で使用することができ、又は他の品種とともに2品種以上の組合せで使用することができる。
本発明の六条大麦の茎葉は、従前の栽培方法を用いて得られた六条大麦の葉や茎に比べて、栽培適性が高く、栄養が豊富で、見た目が美しく、風味が良好であることから、飲食用組成物の原料として適するものである。したがって、本発明の六条大麦の茎葉を原料として用いた飲食用組成物は、例えば、赤土で栽培したものを原料として用いた飲食用組成物と比べて、栄養が豊富であり、かつ、色が鮮やかであることによる見た目の美しさと風味の良好さとを備えた嗜好性が高いものである。特に、本発明の六条大麦の茎葉を含む飲食用組成物は、粉末の形態とした場合、これを水と混合すると、緑色が鮮やかなものとなる。また、本発明の飲食用組成物の風味について具体的に説明すると、本発明の飲食用組成物は、従来の飲食用組成物と比べて、上記のように緑色が鮮やかであるにも関わらず、甘みが強く、かつえぐみが弱い。また、本発明の飲食用組成物は、従来の飲食用組成物と比べて、えぐみが弱く、青臭さも弱く、かつ美味しく摂取することができる。
大麦の茎葉は、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されることが好ましい。具体的には、品種の違いによっても異なるが、一般に、背丈が10cm以上、特に10~90cm程度、とりわけ30~60cm程度である大麦から、茎葉を収穫することが好ましいが、これらに限定されるものではない。大麦の茎葉は、収穫後、直ちに処理されることが好ましい。処理までに時間を要する場合、大麦の茎葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵される。
大麦の茎葉は、飲食用組成物の原料として使用するために、各種の加工処理に供された加工物とすることができる。そのような加工物としては、例えば、茎葉の乾燥粉末、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末、茎葉のエキス及びその乾燥粉末等が挙げられる。
例えば、大麦の茎葉を乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、大麦の茎葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組合せてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
ブランチング処理とは、茎葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。ブランチング処理は、80~100℃、好ましくは90~100℃の熱水または水蒸気中で、茎葉を60~180秒間、好ましくは90~120秒間処理することが好ましい。また、ブランチング処理として熱水処理を行う場合、熱水中に炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を溶解させておくことで、茎葉の緑色をより鮮やかにすることができるため、好ましい。また、蒸煮処理としては、常圧または加圧下において、茎葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20~40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限しないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、茎葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ茎葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2~5回繰り返すことが好ましい。
また、殺菌処理とは、通常、温度・圧力・電磁波・薬剤等を用いて物理的・化学的に微生物細胞を殺滅させる処理である。乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
また、乾燥処理としては、茎葉の水分含量が10%以下、特に5%以下となるように乾燥する処理であることが好ましい。この乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、好ましくは40℃~140℃、より好ましくは80~130℃にて加温により茎葉が変色しない温度及び時間で行われうる。
また、粉砕処理としては、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用いて当業者が通常使用する任意の方法により粉砕する処理が挙げられる。粉砕された茎葉は必要に応じて篩にかけられ、例えば、30~250メッシュを通過するものを茎葉の粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、茎葉の粉末のさらなる加工時に取り扱いやすく、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、茎葉の粉末と他の素材との均一な混合が容易である。
具体的な乾燥粉末化の方法としては、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004-000210号公報を参照)。また例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002-065204号公報、特許第3428956号公報を参照)も挙げられる。また例えば、大麦の茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003-033151号公報、特許第3277181号公報を参照)も挙げられる。
大麦の茎葉を細片化する方法としては、スライス、破砕、細断等、当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、大麦の茎葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、大麦の茎葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、茎葉は、細片の80質量%以上が好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.1mm以下、最も好ましくは0.05mmとなるように細片化され、流動性を有するようになる。
大麦の茎葉を搾汁する方法としては、大麦の茎葉又はその細片化物を圧搾するか、又は、大麦の茎葉の細片化物を遠心又はろ過する方法を挙げることができる。代表的な例としては、ミキサー、ジューサー等の機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過等の手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。具体的には、特開平08-245408号公報、特開平09-047252号公報、特開平5-7471号公報、特開平4-341153号公報などに記載の方法が挙げられ、これらの公知の方法を当業者が適宜選択して実施できる。
また、大麦の茎葉のエキスを得る方法としては、大麦の茎葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法を挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
前記六条大麦の茎葉の加工物のうち、特に、茎葉の乾燥粉末を用いることが、本発明において、飲食用組成物をより一層色が鮮やかで風味が良好なものとできる点や、食物繊維の豊富なものとできる点等から好ましい。
本発明の別の態様として、本発明の六条大麦の茎葉を栽培する方法が提供される。本発明の方法は、六条大麦の種又は苗を少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培する工程を含む。本発明のさらなる別の態様として、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて六条大麦を栽培することを特徴とする、黒ボク土農法が提供される。本発明の方法や農法では、上記工程の前段又は後段に、本発明の六条大麦の茎葉を栽培することという目的を損なわない限り、任意の工程を採用し得る。
飲食品組成物の固形分中、大麦の茎葉の含有量は、乾燥質量で、下限値としては、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましく、最も好ましくは20質量%以上であり、上限値としては、99.9質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。本発明の六条大麦の茎葉の含有量が0.1質量%より少ない場合、本発明の効果が十分に発揮されない場合がある。
本発明の別の態様として、本発明の六条大麦の茎葉、又は本発明の方法によって得られる六条大麦の茎葉を含む飲食用組成物、好ましくは青汁用の飲食用組成物が提供される。本発明の飲食用組成物の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。本発明の飲食用組成物の形態としては、例えば、飲食などの経口摂取に適した形態、具体的には、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。
本発明の飲食用組成物の具体例としては、清涼飲料などの各種飲料、パン・菓子類、麺類などの各種食品、調理品等を挙げることができる。ここでいう飲料には、青汁や、青汁に果汁や野菜、乳製品等を添加してジュース、シェイク、スムージーにしたり、清涼飲料、炭酸飲料やそれらのもと等の形態としたものを挙げることができる。ここでいう飲料には、液体状の組成物だけでなく、固形状の組成物であって、飲用時に水などの溶媒と混合して液体状の飲料とするものが含まれる。また、パン・菓子類としては、食パン、菓子パン、フランスパン、イギリスパン、マフィン、蒸しパン、ドーナツ、ワッフル等のパン類や、バターケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ホットケーキ等のケーキ類、シャーベット、アイス等の冷菓、ゼリー、クッキー等を挙げることができる。麺類としては、うどんや素麺等が挙げられる。調理品としては、カレー、シチュー、味噌汁、野菜スープ等のスープやそれらのもと、粉末調味料等を挙げることができる。
本発明の飲食用組成物は、粉末状(粉末、顆粒などの粉の形態)であって、水と混合した混合物を経口摂取する形態であると、腐敗を防ぎ長期保存に適するとともに、この飲食用組成物が水と混合した時に色が鮮やかであることから好ましい。また本発明の飲食用組成物が固体の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用する等経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト、ホットケーキミックス等に添加して使用してもよい。また、栄養機能表示食品、特定保健用食品として用いても良いことは言うまでもない。
[2.本発明の熊本県阿蘇地域で栽培される六条大麦の茎葉]
本発明で用いる六条大麦の茎葉は、熊本県阿蘇地域で栽培されることに特徴がある。2012年の阿蘇地域(例えば、高森)の気候は、気象庁ホームページの気象統計情報によれば、年平均降水量240mm/月、年平均気温12.8℃、年平均日照時間135時間/月である。
一方、大麦を多く栽培している北海道(例えば、帯広)の気候(2012年)は、年平均降水量98.1mm/月、年平均気温7.2℃、年平均日照時間157時間/月であり、同様に大麦を多く栽培している佐賀県(例えば、鳥栖)の気候(2012年)は、年平均降水量190mm/月であり、鳥栖と近隣の久留米の気候は、年平均降水量238.9mm/月、年平均気温12.8℃、年平均日照時間135時間/月である。
このように、気候は地域差が大きく、大麦の生育に影響を与え、その結果、大麦の茎葉に含まれる栄養素の量にも影響を与える。大麦の生育が影響されると、例えば、丈、分けつ、色、葉幅、茎径、葉の長さ、葉の厚みなどの栽培適性が変化しうる。六条大麦の丈、分けつ、色、茎径及び葉幅が飲食用組成物の原料の品質に影響する特性であることは上記1に記載したとおりである。
阿蘇地域で栽培された六条大麦は、例えば、鳥栖地域で栽培されたものと比べて、栽培条件や栽培日数が同一である場合、丈、分けつ、色、茎径及び葉幅からなる群から選ばれる少なくとも1つの特性が飲食用組成物の原料として良好であるものであれば特に限定されず、好ましくはこれらの1つの特性が鳥栖地域で栽培されたものと比べて1.1倍以上、より好ましくはこれらの1つの特性が鳥栖地域で栽培されたものと比べて1.2倍以上、さらに好ましくはこれらの1つの特性が鳥栖地域で栽培されたものと比べて1.3倍以上又はこれらの2つの特性が鳥栖地域で栽培されたものと比べて1.1倍以上である。例えば、鳥栖地域で栽培した大麦の葉幅が5cmであり、阿蘇地域で栽培した大麦の葉幅が6cmである場合、阿蘇地域で栽培した大麦の葉幅は、鳥栖地域で栽培されたものに比べて1.2倍以上となる。なお、上記比較は、栽培日数は15日目以降のものを使用することが好ましい。
阿蘇地域で栽培された六条大麦に含まれる栄養素とは、特に限定されないが、例えば、脂質、糖質、食物繊維、各種ビタミン類、葉酸、カルシウムやマグネシウム、カリウムなどの無機類、ポリフェノール、葉緑素、各種アミノ酸などが挙げられ、具体的には、タンパク質、脂質、糖質、食物繊維、ナトリウム、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビオチン、パントテン酸、カロテン、葉酸、ナイアシン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン、亜鉛、銅、鉄、マンガン、クロム、ヨウ素、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン酸、システイン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、リジン、ロイシン、総アミノ酸、オクタコサノール、カテキン、グルコン酸、ポリフェノール、クロロフィル、ルテイン、γ-アミノ酪酸、β-グルカンなどが挙げられる。また、ここではSOD様活性も含むものとする。
本発明の六条大麦の茎葉に有意に多く含まれる栄養素として、例えば、アミノ酸が挙げられ、好ましくは、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸である。これらのアミノ酸のいくつかは、うまみ成分でもあり、味に影響を与えると考えられる。また、これらのアミノ酸は、同じ六条大麦を北海道と阿蘇地域でそれぞれ栽培したときに、阿蘇地域で栽培された六条大麦の茎葉の方に有意に多く含まれていることがわかった。
また、阿蘇地域で栽培された六条大麦は、例えば、鳥栖地域で栽培されたものと比べて、栽培条件や栽培日数が同一である場合、総アミノ酸量及び総クロロフィル量が高くなる傾向にある。そこで、本発明における六条大麦の茎葉は、栽培開始約31日後のものについて、鳥栖地域で栽培されたものと比べて、総アミノ酸量、総クロロフィル量又はそれらの2種全てが高いものであることが好ましい。また、本発明における六条大麦の茎葉は、栽培開始約31日後のものについて、鳥栖地域で栽培されたものと比べて、総アミノ酸量及び総クロロフィル量の全てが低くないことがより好ましい。
本発明の別の態様として、熊本県阿蘇地域で六条大麦を栽培することを特徴とする、阿蘇カルデラ農法が提供される。本発明の農法では、上記工程の前段又は後段に、本発明の六条大麦の茎葉を栽培することという目的を損なわない限り、任意の工程を採用し得る。
本発明の六条大麦の茎葉は、青汁等の飲食用組成物に加工することができる。本発明の六条大麦の茎葉を飲食用組成物の原料として使用する際は、特定の六条大麦の1品種を単独で使用することができ、又は他の品種とともに2品種以上の組合せで使用することができる。飲食用組成物のための加工方法に加えて、六条大麦の特性、飲食用組成物として配合してもよい添加物や飲食用組成物の形態については、上記[1.本発明の黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の茎葉]における該当する記載を参照できる。本発明の好ましい態様は、熊本県阿蘇地域において、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の茎葉である。
[3.本発明の月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培する、大麦の茎葉の栽培方法]
六条大麦は上記1で説明したとおりのものであり、二条大麦は穂に実を2列に付けるものであり、二条大麦の例として、ニシノホシ、はるか二条、ニシノチカラ、はるしずくなどが挙げられる。本発明においてはいずれの大麦でもよいが、好ましいのは六条大麦である。
本発明の大麦の茎葉の栽培方法は、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培する。10℃未満の日較差であると、播種後の草丈の伸びが悪い。好ましくは、日較差が月平均で10℃~20℃、より好ましくは10℃~15℃、さらに好ましくは10℃~13℃である。なお、日較差とは、1日のうちの最高気温と最低気温の差(気温差)である。
大麦の茎葉は、気温が4℃未満であるとあまり生育しないことから、1日の平均気温が少なくとも4℃以上であることが好ましい。また、気温が高すぎても大麦の栽培に適さないことから、1日の平均気温が30℃以下であることが好ましい。
大麦を収穫するまで、好ましくは大麦若葉を収穫するまで、月平均で10℃以上の日較差が安定して続くことが好ましい。大麦若葉を収穫するのに、一般的に20日~90日間栽培するので、その間、平均で10℃以上の日較差があることが求められる。なお、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く期間に栽培することが好ましく、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上、好ましくは6ヶ月以上、さらに好ましくは9ヶ月以上続くような場所で栽培すれば、繰り返し収穫することができる。
上記日較差は、そのような自然条件の圃場を選択して大麦を栽培してもよいし、グリーンハウスのような、人工でそのような条件を作れる圃場で大麦を栽培してもよい。
上記日較差以外の栽培条件、例えば、栽培温度、日長、排水、種子の準備、土壌改良、土壌pH、施肥、耕紀・整地、播種、除草、踏圧・排水、病害虫防除などは、当業者であれば容易に選択することができるが、例えば、農林水産省の「水稲・麦・大豆栽培基準」の「2.麦栽培基準」や、「麦類の栽培と利用/小柳敦史・渡邊好照編」などを参考にすることができる。
上記日較差は大麦の生育に影響を与え、その結果、大麦の茎葉に含まれる栄養素の量にも影響を与える。大麦の生育が影響されると、例えば、丈、分けつ、色、葉幅、茎径、葉の長さ、葉の厚みなどの栽培適性が変化しうる。大麦の丈、分けつ、色、茎径及び葉幅が飲食用組成物の原料の品質に影響する特性であることは上記1に記載したとおりである。
月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培された大麦は、例えば、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月未満である条件下で栽培されたものと比べて、栽培日数が同一である場合、丈、分けつ、色、茎径及び葉幅からなる群から選ばれる少なくとも1つの特性が飲食用組成物の原料として良好であるものであれば特に限定されず、好ましくはこれらの1つの特性が1.1倍以上、より好ましくはこれらの1つの特性が1.2倍以上、さらに好ましくはこれらの1つの特性が1.3倍以上又はこれらの2つの特性が1.1倍以上である。例えば、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月未満である条件下で栽培した大麦の葉幅が5cmであり、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培した大麦の葉幅が6cmである場合、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培した大麦の葉幅は、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月未満である条件下で栽培されたものに比べて1.2倍以上となる。なお、上記比較は、栽培日数は15日目以降のものを使用することが好ましい。
本発明の栽培方法によれば、播種から約1ヶ月で草丈が30cm以上になり、大麦の生育を促進することができる。また、本発明の栽培方法により収穫された大麦の茎葉に含まれる成分である炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素、植物に特有の色素、有機化合物等の含有量が向上していると考えられる。具体的には、タンパク質、脂質、糖質、食物繊維、ナトリウム、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビオチン、パントテン酸、カロテン、葉酸、ナイアシン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リン、亜鉛、銅、鉄、マンガン、クロム、ヨウ素、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン酸、システイン、スレオニン、セリン、チロシン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、リジン、ロイシン、総アミノ酸、オクタコサノール、カテキン、グルコン酸、ポリフェノール、クロロフィル、ルテイン、γ-アミノ酪酸、β-グルカンなどが挙げられる。さらに、SOD様活性(スーパーオキシド消去活性)も向上していると考えられる。
本発明の方法により栽培された大麦の茎葉に有意に多く含まれる栄養素として、例えば、アミノ酸が挙げられ、好ましくは、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、ヒスチジン、グリシン、スレオニン、バリン及びイソロイシンである。
これらのアミノ酸のいくつかは、うまみ成分でもあり、味に影響を与えると考えられる。
また、これらのアミノ酸は、同じ六条大麦を日較差が異なる地域で栽培したときに、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培された大麦の茎葉の方に有意に多く含まれていることがわかった。
また、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培された大麦は、例えば、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月未満である条件下で栽培されたものと比べて、栽培日数が同一である場合、総アミノ酸量及び総クロロフィル量が高くなる傾向にある。そこで、本発明の栽培方法によって得られる大麦の茎葉は、栽培開始約31日後のものについて、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月未満である条件下で栽培されたものと比べて、総アミノ酸量、総クロロフィル量又はそれらの2種全てが高いものであることが好ましい。また、本発明に栽培方法によって得られる大麦の茎葉は、栽培開始約31日後のものについて、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月未満である条件下で栽培されたものと比べて、総アミノ酸量及び総クロロフィル量の全てが低くないことがより好ましい。
本発明の六条大麦の茎葉は、青汁等の飲食用組成物に加工することができる。本発明の六条大麦の茎葉を飲食用組成物の原料として使用する際は、特定の六条大麦の1品種を単独で使用することができ、又は他の品種とともに2品種以上の組合せで使用することができる。飲食用組成物のための加工方法に加えて、六条大麦の特性、飲食用組成物として配合してもよい添加物や飲食用組成物の形態については、上記[1.本発明の黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の茎葉]における該当する記載を参照できる。本発明の好ましい態様は、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下にある熊本県阿蘇地域で栽培される六条大麦の茎葉である。本発明の好ましい別の態様は、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の茎葉である。本発明のより好ましい態様は、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下にある熊本県阿蘇地域において、少なくとも一部に黒ボク土を含む土を用いて栽培される六条大麦の茎葉である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[1.黒ボク土、赤土又はそれらの混合土を用いて栽培した大麦の比較評価]
1.黒ボク土を用いた栽培
プランターに黒ボク土を入れ、プランター毎に六条大麦「シルキースノウ」、「シュンライ」、「ファイバースノウ」及び「カシマゴール」の4品種又は二条大麦「ニシノホシ」及び「はるか二条」並びに六条大麦「イチバンボシ」の3品種の種4.8gを播種(20g/m)した。給水や雑草管理などの通常の植物栽培法により、上記6品種の大麦を栽培した。なお、「カシマゴール」及び「はるか二条」の種については、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の九州沖縄農業研究センターから提供されたものを使用した。
2.混合土を用いた栽培
黒ボク土の代わりに、黒ボク土及び赤土の混合土(黒ボク土:赤土=1:9)を用いた以外は、上記1と同様にして、大麦を栽培した。なお、赤土は、天日干しにより乾燥させ、固まっている部分を破砕したものを用いた。
3.赤土を用いた栽培
黒ボク土の代わりに、赤土を用いた以外は、上記1と同様にして、大麦を栽培した。なお、赤土は、天日干しにより乾燥させ、固まっている部分を破砕したものを用いた。
上記1~3の栽培条件について、使用品種、土及び栽培時期をまとめたものを表2とした。
4.評価例1
栽培中の六条大麦について、10日間隔で、丈(長さ)、分けつ数、茎径(太さ)、葉幅(幅)及び色(スケールを使用し、数値が大きいほど色合いが良い)を測定した。赤土の測定値を基準とした黒ボク土及び混合土の相対値を表3に示す。表3に示されているとおり、黒ボク土又は黒ボク土及び赤土の混合土で栽培した六条大麦は、赤土で栽培したものと比べて、同じ栽培日数において、丈、分けつ数、茎径、葉幅及び色のいずれかの特性又はこれらの2種以上の特性において優れたものであった。また、黒ボク土を用いた条件では栽培開始後3日目程度で発芽したのに対して、赤土及び混合土を用いた条件では栽培開始後7日目前後で発芽した。このことから、黒ボク土を用いることにより、発芽日数を短縮することができることがわかった。
同様に、栽培中の六条大麦について、播種後5日、11日、17日及び21日に、丈、分けつ数、色、葉幅及び茎径といった特性を測定した。黒ボク土及び赤土の測定値並びに赤土の測定値を基準とした黒ボク土の相対値を表4に示す。表4に示されているとおり、黒ボク土で栽培した六条大麦は、赤土で栽培したものと比べて、同じ栽培日数において、丈、分けつ数、茎径、葉幅及び色のいずれかの特性又はこれらの2種以上の特性において優れたものであった。しかし、同じ六条大麦でも、イチバンボシについては、このような傾向が弱かった。これらの結果から、黒ボク土で栽培する方が、赤土で栽培するよりも、ファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライの生育度を高めることができることがわかった。
※ 表中、「N.D.」はデータがないことを示す。
5.評価例2
栽培開始後33日後に収穫した六条大麦「シルキースノウ」及び「カシマゴール」並びに二条大麦「ニシノホシ」及び「はるか二条」の茎葉を水洗いし、付着した泥などを除去した後、得られた茎葉1gを用いて、Folin-Denis法(財団法人日本食品分析センター編集、五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説)により、総ポリフェノール量(質量%)を、クロロゲン酸を標準物質として測定した。結果を表5に示す。表5が示すとおりに、六条大麦「シルキースノウ」及び「カシマゴール」では、赤土で栽培した場合と比べて、黒ボク土及び混合土で栽培した場合に総ポリフェノール量が増加する傾向にあった。それに対して、二条大麦「ニシノホシ」及び「はるか二条」では、そのような傾向は見られなかった。このことは、黒ボク土を少なくとも一部に含む土で栽培すると、総ポリフェノール量が比較的高い六条大麦の茎葉が得られることを示す。
6.評価例3
栽培開始後33日後に収穫した茎葉を水洗いし、付着した泥などを除去した後、得られた茎葉についてジューサーを用いて搾汁し、得られた搾汁液を用いて、HPLCを用いた自動プレカラム誘導体化法でアミノ酸の含有量を測定した。結果、数種のアミノ酸については、総ポリフェノール量と同様に、六条大麦では、赤土で栽培した場合と比べて、黒ボク土及び混合土で栽培した場合にアミノ酸含有量が増加する傾向にあった。このことは、黒ボク土を少なくとも一部に含む土で栽培すると、アミノ酸含有量が比較的高い六条大麦の茎葉が得られることを示す。
[2.阿蘇地域及び鳥栖地域の気温差比較]
大麦を栽培する地域として、阿蘇地域と鳥栖地域を選択し、2013年10月2日に、それぞれの圃場に大麦を播種し、栽培した。なお、本明細書においては、阿蘇地域とは、熊本県の菊池を含む阿蘇山のすそ野一帯で同じような気候を示す地域をいい、鳥栖地域とは、佐賀県の鳥栖及び福岡県の久留米を含む平地一帯で同じような気候を示す地域をいう。
栽培期間の気温及び気温差について、阿蘇地域(菊池)及び鳥栖地域(久留米)における2013年10月1日~12月31日のデータを表6及び表7に示す(気象庁ホームページより)。また、2013年10月~12月の平均気温及び気温差を月毎にまとめたものを表8に示す。
表6~表8から、阿蘇地域における10月から12月の3ヶ月間の日較差(気温差)は、継続して10℃以上であることがわかった。それに対して、鳥栖地域における10月から12月の3ヶ月間の日較差(気温差)は、何れも10℃未満であった。
また、阿蘇地域(菊池)と鳥栖地域(久留米)の気温データ(気象庁ホームページより、計測期間1981年から2010年)を以下の表9に示す。
表9より、阿蘇地域では、日較差(気温差)が年平均10℃以上、具体的には年平均11.3℃であり、9月から5月までの9ヶ月間にわたって、日較差が月平均10℃以上であることがわかった。鳥栖地域では、日較差が年平均10℃未満、具体的には年平均9.3℃であり、4月から5月までの2ヶ月間にわたって、日較差が月平均10℃以上であることがわかった。
[3.阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した大麦の生育比較評価(1)]
2013年秋に、阿蘇地域と鳥栖地域の圃場において、二条大麦のニシノホシ、六条大麦のファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを栽培して、阿蘇地域において播種後8日目、19日目、29日目、39日目、44日目、51日目及び63日目に、鳥栖地域において播種後8日目、15日目、27日目、34日目、41日目、49日目及び63日目に、草丈を測定した。その結果を以下の表10に示す。
表10より、阿蘇地域と鳥栖地域とで、同様の播種後の日数で草丈を比較すると、いずれの品種においても阿蘇地域で栽培したときの生育が良好であることがわかった。さらに、阿蘇地域では、試験をしたすべての大麦品種で、播種後39日目で40cm以上になり、鳥栖地域で栽培されたものと比べて約1ヶ月で生育に明らかな差がみられた。
また、阿蘇地域での播種後39日目の草丈と、鳥栖地域での播種後41日目の草丈を比較すると、阿蘇地域での栽培期間が2日短いが、いずれの品種においても阿蘇地域の方が鳥栖地域以上に生育していることがわかった。
さらに、2013年秋の栽培時に、各品種において、背丈が45cmを超えた播種後日数を比較した結果を表11に示す。
表11に示すとおり、鳥栖地域に比べて、阿蘇地域で栽培したときには、いずれの品種においても背丈が45cmを超える日数が短く、生育が良いことが示された。
以上より、月平均で10℃以上の日較差が3ヶ月以上続く条件下で栽培した大麦は、そのような条件を満たさない条件下で栽培した大麦と比較して、生育が良くなっており、大麦の茎及び/又は葉を効率よく生育させることができることがわかった。
[4.阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した大麦の生育比較評価(2)]
2014年秋、阿蘇地域及び鳥栖地域の圃場において、六条大麦のファイバースノウ、シルキースノウ、シュンライ及びイチバンボシを栽培して、各品種において、播種後5日、11日、17日及び21日に、草丈(長さ)、分けつ数、色(スケールを使用し、数値が大きいほど色合いが良い)、葉幅(幅)及び茎径(太さ)といった特性を測定した。阿蘇地域栽培大麦及び鳥栖地域栽培大麦の測定値並びに鳥栖地域栽培大麦の測定値を基準とした阿蘇地域栽培大麦の相対値を表12に示す。表12に示されているとおり、阿蘇地域で栽培した六条大麦のうち、ファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライは、鳥栖地域で栽培したものと比べて、同じ栽培日数において、上記特性が全般的に優れたものであった。しかし、同じ六条大麦でも、イチバンボシについては、このような傾向が弱かった。これらの結果から、阿蘇地域で栽培する方が、鳥栖地域で栽培するよりも、ファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライの生育度を高めることができることがわかった。
※ 表中、「N.D.」はデータがないことを示す。
[5.阿蘇地域及び北海道地域において栽培した大麦の草丈比較評価]
2013年春、北海道及び阿蘇において、二条大麦のニシノホシ、六条大麦のファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを、栽培して、播種から約60日目の草丈を測定した。
結果を表13に示す。表中の数値の単位は「cm」である。
[6.阿蘇地域、鳥栖地域及び北海道地域において栽培した大麦の草丈比較評価]
2013年春、阿蘇地域、鳥栖地域及び北海道地域の圃場において、二条大麦のニシノホシ、六条大麦のファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを栽培して、各品種において、背丈が45cmを超えた播種後日数を比較した結果を表14に示す。
表14に示すとおり、鳥栖地域や北海道地域に比べて、阿蘇地域で栽培したときには、いずれの品種においても背丈が45cmを超える日数が短く、生育が良いことが示された。
[7.阿蘇地域、鳥栖地域及び北海道地域において栽培した大麦のアミノ酸含有量比較評価]
2013年春、阿蘇地域、鳥栖地域及び北海道地域において、六条大麦であるファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライ並びに二条大麦であるニシノホシを播種から約70日間栽培し、茎葉を収穫した。これを細片化し、この細片を搾汁することにより搾汁液を得た。
茎葉の搾汁液100g当たりのアミノ酸の含有量を、HPLCを用いた自動プレカラム誘導体化法で測定した。なお、上記した茎葉の搾汁液500mlに0.1N HCl 500μLを加え、よく混ぜ、15,000rpm、10分間遠心分離し、上清を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものを試料溶液とした。結果を表15に示す。
いずれの品種においても、全般的に、阿蘇地域で栽培したものは、北海道地域や鳥栖地域で栽培したものと比べて、茎葉中、明らかにアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸及びグルタミン酸の含量が高いことが分かった。また、二条大麦(ニシノホシ)に比べて、六条大麦(ファイバースノウ、シルキースノウ、シュンライ)の方が、より含量が向上する傾向にあった。
[8.阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した大麦のアミノ酸含有量比較評価]
2013年秋、阿蘇地域及び鳥栖地域において、二条大麦であるニシノホシ並びに六条大麦であるファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを播種から約70日間栽培及び収穫した茎葉を用いた以外は、上記7と同様に、茎葉の乾燥粉末100g当たりのアミノ酸の総含有量を、HPLCを用いた自動プレカラム誘導体化法で測定した。結果を表16に示す。
いずれの品種においても、阿蘇地域で栽培すると、鳥栖地域で栽培したものと比べて、茎葉中、明らかにアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、ヒスチジン、グリシン、スレオニン、バリン及びイソロイシンの含量が高いことが分かった。また、二条大麦(ニシノホシ)に比べて、六条大麦(ファイバースノウ、シルキースノウ、シュンライ)の方が、より含量が向上する傾向にあった。
[9.阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した大麦の総アミノ酸量及び総クロロフィル量評価]
2014年秋、阿蘇地域及び鳥栖地域において、六条大麦であるファイバースノウ、シルキースノウ、シュンライ及びイチバンボシ並びに二条大麦であるニシノホシを播種から約31日間栽培及び収穫した茎葉を用いた以外は、上記7と同様に、茎葉の搾汁液100g当たりのアミノ酸の総含有量を、HPLCを用いた自動プレカラム誘導体化法で測定した。
茎葉の搾汁液について、総クロロフィル量を測定した。上記した茎葉の搾汁液200μLにアセトン800μLと炭酸カルシウムを少量加え、よく混ぜ、1日暗室に静置した。遠心分離(15,000rpm、5分間)を行い、上澄みを試料原液とした。試料原液を80vol%アセトンで希釈したものを試料溶液とし、200μLずつ96ウェルプレートに分注した。バリオスキャンにて750nmで、663nm及び645nmの吸光度を測定した。クロロフィル量[mg/100g]は以下の計算式で求めた。
クロロフィルa[μg/mL]=12.7×(A663-A750)-2.59×(A645-A750
クロロフィルb[μg/mL]=-4.67×(A663-A750)+22.9×(A645-A750
クロロフィル量[mg/100g]=(クロロフィルa+b)[μg/mL]×希釈倍率×0.1
750:750nmの吸光度
663:663nmの吸光度
645:645nmの吸光度
総アミノ酸量及び総クロロフィル量の測定結果について、阿蘇地域栽培大麦及び鳥栖地域栽培大麦の測定値並びに鳥栖地域栽培大麦の測定値を基準とした阿蘇地域栽培大麦の相対値を表17に示す。表17に示されているとおり、阿蘇地域で栽培した六条大麦のうち、ファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライは、鳥栖地域で栽培したものと比べて、風味に影響する総アミノ酸量及び色合いに影響する総クロロフィル量が優れたものであった。しかし、同じ六条大麦でも、イチバンボシについては、このような傾向が認められなかった。これらの結果から、阿蘇地域の方が、鳥栖地域よりも、風味が良好であり、見た目が美しいことから、栽培適性が高く、かつ、栄養が豊富で嗜好性の高い青汁用の飲食用組成物に適したファイバースノウ、シルキースノウ及びシュンライを栽培することができることがわかった。
本発明によれば、原料由来の栄養素やうまみ成分の含有量が高い健康食品を提供することができる。また、本発明によれば、大麦の茎及び/又は葉を短期間で効率よく生育させると同時に、味や栄養価を高めることのできる栽培方法を提供することができる。

Claims (2)

  1. 月平均で10℃以上の日較差の条件下で栽培された、大麦であるファイバースノウの葉及び/又は茎、もしくはそれらの細片化物。
  2. 請求項1に記載された大麦であるファイバースノウの葉及び/又は茎、もしくはそれらの細片化物を、乾燥処理及び粉砕処理した乾燥粉末。
JP2021207772A 2013-10-31 2021-12-22 黒ボク土を用いて栽培した大麦の葉及び/又は茎、阿蘇産大麦の葉及び/又は茎並びにそれを含有する飲食用組成物、大麦の茎及び/又は葉の栽培方法 Active JP7475700B2 (ja)

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