JP7475563B2 - ジルコニア焼結体とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ジルコニア焼結体とその製造方法に関する。なお、本出願は2021年12月20日に出願された日本国特許出願第2021-206405号および2022年9月7日出願された日本国特許出願第2022-142199号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
イットリア(Y)を少量固溶させたジルコニア焼結体(以下「部分安定化ジルコニア焼結体」ともいう)は、その強度、靭性および審美性の高さから歯科修復材料(例えば、義歯、歯科補綴物)等の生体材料として広く用いられている。例えば、特許文献1には、4.0mol%を超え6.5mol%以下のイットリアと、0.1wt%未満のアルミナを含有する透光性ジルコニア焼結体が開示されている。このジルコニア焼結体は、焼結体密度が高く、優れた透光性を有するため、特に前歯用義歯として適した透光性及び強度を兼ね備えている、とされている。
また、特許文献2には、安定化剤として2~4mol%のイットリアを含み、添加剤としてアルミナを0.1wt%未満含むジルコニアからなり、相対密度が99.8%以上、かつ厚さ1.0mmでの全光線透過率が35%以上であり、結晶粒径が0.20~0.45μmであることを特徴とする透光性ジルコニア焼結体が開示されている。このジルコニア焼結体は、焼結体密度及び強度が高く、透光感に優れるため、例えば、義歯材料等のミルブランク、歯列矯正ブラケットとして用いる焼成体として優れたものである、とされている。
また例えば、特許文献3には、イットリアを2.5~3.5mol%及びアルミナを0.05~0.3重量%含み、正方晶率が90重量%以上、かつ、試料厚み1.0mmでの波長600nmの光透過率が30%以上の透光性ジルコニア焼結体が開示されている。このジルコニア焼結体は、強度及び靭性に優れており、さらに耐水熱劣化性に優れている、とされている。
日本国特許出願公開2015-143178号公報 日本国特許出願公開2014-185078号公報 日本国特許出願公開2014-012627号公報
ところで、歯科修復材料としてジルコニア焼結体を用いる場合に、修復対象の歯の種類によって要求される特性が異なり得る。例えば、前歯用義歯には、所定以上の強度と優れた透光性とが要求され、その一方で、奥歯用義歯(臼歯用義歯)では、優れた強度と所定以上の透光性が要求され得る。そのため、歯科修復材料として用いられるジルコニア焼結体は、強度および透光性の両者に優れていることが望ましい。
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、強度および透光性に優れたジルコニア焼結体を提供することにある。また、かかるジルコニア焼結体を実現する製造方法を提供することを他の目的とする。さらに、かかるジルコニア焼結体を含む歯科修復材を提供することを他の目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明者が検討したところ、所定のイットリア及び/又はイッテルビア(Yb)濃度を有する部分安定化ジルコニアの仮焼結体をマイクロ波加熱により1600℃以上の温度で焼結させることで、優れた強度を有し、かつ、特許文献1~3で開示されている透光性ジルコニア焼結体の透光性よりもさらに優れた透光性を有したジルコニア焼結体が得られることを見出した。
即ち、ここで開示されるジルコニア焼結体の製造方法の一態様では、以下の工程:
ジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとを含む成形体であって、上記ジルコニアと、上記イットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたとき、上記イットリア及び/又はイッテルビアの割合が3mol%以上4.4mol%以下である成形体を準備する成形体準備工程、上記成形体を800℃以上1200℃以下で加熱して仮焼結体を得る第1加熱工程、および、上記仮焼結体をマイクロ波加熱により1600℃以上2000℃以下で加熱してジルコニア焼結体を得る第2加熱工程、を包含することを特徴とする。かかる製造方法によれば、強度および透光性に優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
ここで開示されるジルコニア焼結体の製造方法の好ましい一態様では、上記マイクロ波加熱の加熱方式が、マルチモードである。これにより、プラズマの発生を抑制しながら加熱することができる。この結果、ジルコニア焼結体の割れの発生が抑制され、強度および透光性により優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
ここで開示されるジルコニア焼結体の製造方法の好ましい一態様では、上記マイクロ波加熱が酸化雰囲気下で実施される。これにより、ジルコニア焼結体が黒ずむのを抑制することができるため、強度および透光性に優れ、かつ、審美性にも優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
また、ここで開示されるジルコニア焼結体の製造方法の好ましい一態様では、上記マイクロ波加熱が、酸素濃度が30vol%以上100vol%以下の雰囲気下で実施される。これにより、ジルコニア焼結体が黒ずむのを効果的に抑制することができるため、より審美性に優れ、かつ、強度および透光性に優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
また、ここで開示されるジルコニア焼結体の製造方法の好ましい一態様では、上記第2加熱工程において、SiCサセプタが前記仮焼結体を所定の方向の両側から挟むように配置されている。これにより、仮焼結体の内部の焼結をより好適に進行させることができるため、強度および透光性により優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
また、ここで開示されるジルコニア焼結体の製造方法の一態様では、上記ジルコニアは、顆粒状の粒子を含み得る。顆粒状の粒子が含まれることで、成形体の形状安定性が向上し、作業性および取扱性が向上し得る。
また、本開示によりジルコニア焼結体が提供される。このジルコニア焼結体は、上記のいずれかの製造方法により製造することができる。ここで開示されるジルコニア焼結体は、ジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとを含み、上記ジルコニアと、上記イットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたとき、上記イットリア及び/又はイッテルビアの割合は3mol%以上4.4mol%以下である。そして、このジルコニア焼結体は、JIS T 6526に準じて測定される2軸曲げ強度が800MPa以上であり、厚さ1mmの試験片の厚さ方向におけるD65光源に対する全光線透過率が44.5%以上であることを特徴とする。このジルコニア焼結体は、優れた強度および透光性を実現している。
ここで開示されるジルコニア焼結体の好ましい一態様では、さらに、アルミナを含み、上記ジルコニア焼結体全体を100質量%としたとき、上記アルミナの割合が0.15質量%以下である。これにより、ジルコニア焼結時の異常粒成長が抑制され、強度低下を抑制することができる。
また、本開示により、ここで開示されるジルコニア焼結体を含む歯科修復用材料が提供される。ここで開示されるジルコニア焼結体は、強度および透光性に優れているため、歯科修復材料として好適に用いることができる。
図1は、ジルコニア焼結体の製造方法の一実施形態の概要を示すフローチャートである。 図2は、仮焼結体をマイクロ波加熱する方法の一例を示す模式図である。
以下、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、マイクロ波加熱の温度)以外の事柄であって実施に必要な事柄は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。ここで開示される技術の内容は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」(A、Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下を意味し、Aを上回り且つBを下回る範囲を包含する。
ここで開示されるジルコニア焼結体は、少なくともジルコニア(ZrO)と、イットリア(Y)およびイッテルビア(Yb)の少なくとも一方とを含んでいる。即ち、ここで開示されるジルコニア焼結体は、イットリアとイッテルビアとの両方を含む態様と、イットリアを含み、イッテルビアを含まない態様と、イッテルビアを含み、イットリアを含まない態様とを有する。ジルコニア焼結体は、ジルコニアを主成分として含んでいる。ここで、「ジルコニアを主成分として含む」とは、ジルコニア焼結体を構成する化合物のうち、ジルコニアが占める割合が最も多いことを意味する。ジルコニア焼結体全体を100質量%としたとき、ジルコニアが占める割合は、例えば70質量%以上であって、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上であり得る。ジルコニアの割合が高いことで、ジルコニア焼結体の強度および靭性が向上する。
ジルコニア焼結体に含まれるイットリア及び/又はイッテルビアは、典型的には、安定化剤として含まれており、ジルコニアに部分的に固溶した部分安定化ジルコニアの少なくとも一部として含まれる。ジルコニアは、典型的には、単斜晶、正方晶、立方晶の結晶相のいずれかを有するが、部分安定化ジルコニアは、室温下において正方晶の割合が高くなるため、強度および靭性が向上する。また、部分安定化ジルコニアでは、結晶相のばらつきが抑制されるため、透光性が向上する。
ジルコニア焼結体に含まれるジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとの合計(換言すれば、ジルコニアと安定化剤との合計)を100mol%としたとき、イットリア及び/又はイッテルビアの割合は、3mol%以上4.4mol%以下であって、例えば、3mol%以上4.2mol%以下、3.5mol%以上4.2mol%以下、または3.5mol%以上4mol%以下であり得る。かかる割合であれば、ジルコニアの結晶相のバランスが好適に調整され、優れた強度と透光性とを両立することができる。また、イットリア及び/又はイッテルビアの割合は、3mol%以上3.5mol%以下、又は3mol%以上3.5mol%未満であり得る。かかる範囲では、一般的に透光性が低くなるが、ここで開示されるジルコニア焼結体では、優れた透光性を実現し得る。
なお、イットリア及び/又はイッテルビアは、全てがジルコニアに固溶していてもよく、ジルコニアに固溶していない未固溶の状態のものを含んでいてもよい。
ジルコニア焼結体は、さらにアルミナ(Al)を含み得る。アルミナを含むジルコニア焼結体では、異常粒成長が抑制されるため、ジルコニア焼結体の強度および透光性を向上し得る。また、耐低温劣化特性が向上するため、ジルコニア焼結体の強度および透光性を長期にわたり保持することができる。一方で、アルミナは、焼結体内部で不純物として残留し光散乱因子として働くためアルミナ含有量は高すぎない方がよい。そのため、アルミナの含有量は、ジルコニア焼結体全体を100質量%としたとき、例えば、0.15質量%以下であるとよく、好ましくは0.125質量%以下、例えば、0.1質量%以下、0.05質量%以下であり得る。
また、ジルコニア焼結体は、強度および透光性が著しく損なわれない範囲で、従来公知の着色剤を含み得る。着色剤としては、例えば、遷移金属元素やランタノイド系希土類元素等が挙げられる。このような元素としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、ニオブ、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、ガドリニウム、エルビウム等が挙げられる。着色剤は、例えば、ジルコニア焼結体全体に対して2質量%以下であるとよく、1質量%以下、0.5質量%以下であり得る。
また、ジルコニア焼結体は、不可避的に混入し得る元素を含み得る。例えば、ハフニウム、マグネシウム、ケイ素、チタン等が挙げられる。これらの元素の合計の含有量は、酸化物換算で2.5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下がより好ましく、例えば1.8質量%以下であるとよい。
図1は、ジルコニア焼結体の製造方法の概要を示すフローチャートである。ここで開示されるジルコニア焼結体の製造方法は、ジルコニアとイットリア及び/又はイッテルビアとを含む成形体を準備する成形体準備工程S10と、成形体を加熱して仮焼結体を得る第1加熱工程S20と、仮焼結体をマイクロ波加熱により加熱してジルコニア焼結体を得る第2加熱工程S30とを包含し得る。
<成形体準備工程S10>
成形体準備工程S10は、成形体を構成する材料(以下、「成形体材料」ともいう)を準備すること(以下「成形体材料準備工程」ともいう)と、成形体材料を成形すること(以下「成形工程」ともいう)とを包含し得る。
成形体材料準備工程では、まず、ジルコニア原料を準備する。ジルコニア原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジルコニウム塩またはその水和物を用いることができる。ジルコニウム塩としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
次に、ジルコニア原料の水溶液を準備し、加水分解反応を行うことで、ジルコニアゾルを調製する。加水分解反応は、かかる水溶液にアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア水溶液等を添加して行うことができる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができ、アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。
次に、加水分解により得られたジルコニアゾル(ZrO・nHO)に、イットリア及び/又はイッテルビア、若しくはその原料を添加(または混合)する。イットリアの原料としては、焼成によりイットリアとなり得るイットリウム含有化合物である。イットリウム含有化合物としては、塩化イットリウム、硝酸イットリウム等が例示される。イッテルビアの原料としては、焼成によりイッテルビアとなり得るイッテルビウム含有化合物であってもよい。イッテルビウム含有化合物としては、塩化イッテルビウム、硝酸イッテルビウム等が例示される。
上記ジルコニアゾルに、イットリア及び/又はイッテルビアを添加する場合には、添加するイットリア及び/又はイッテルビアの割合は、上述したジルコニア焼結体におけるイットリア及び/又はイッテルビアの割合と同様であり、ジルコニアゾル含まれるジルコニアと、添加するイットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたときに、該イットリア及び/又はイッテルビアの割合が3mol%以上4.4mol%以下であって、例えば、3mol%以上4.2mol%以下、3.5mol%以上4.2mol%以下、または3.5mol%以上4mol%以下となるように添加するとよい。また、イットリア及び/又はイッテルビアの割合は、3mol%以上3.5mol%以下、又は3mol%以上3.5mol%未満であり得る。なお、上述のイットリア及び/又はイッテルビアの割合は、後述する成形体におけるイットリア及び/又はイッテルビアの割合となり得る。
また、上記ジルコニアゾルにイットリア原料及び/又はイッテルビア原料を混合する場合には、これら原料を焼成して得られるイットリア及び/又はイッテルビアの量が、上述のイットリア及び/又はイッテルビアの割合の範囲となるようにすればよい。例えば、イットリア原料として塩化イットリウム(YCl)Xmol(Xは正の数)を用いた場合には、イットリア(Y)を0.5Xmol得ることができるため、イットリアそのものを混合するときと比較して、2倍の物質量となるように塩化イットリウムを混合すればよい。
次に、上記イットリア及び/又はイッテルビア、若しくはその原料を添加したジルコニアゾルを乾燥することで、各原料が均質に分散された乾燥粉末を得ることができる。乾燥方法は特に限定されるものではなく、例えば、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、加熱炉等を利用した加熱による乾燥、真空乾燥、吸引乾燥、凍結乾燥等を適宜選択することができる。
乾燥して得られた粉末を仮焼することで、イットリア及び/又はイッテルビア部分安定化ジルコニアを含む仮焼粉末を得ることができる。仮焼温度は、特に限定されるものではないが、例えば、800℃~1200℃、好ましくは1000℃~1200℃とすることができる。なお、かかる仮焼により、イットリア原料はイットリアへと酸化され、イッテルビア原料はイッテルビアへと酸化され得る。仮焼のための加熱装置は、従来公知の加熱装置を用いることができ、加熱装置としては、例えば、電気炉、マッフル炉、トンネル式加熱炉、マイクロ波焼成炉等が挙げられる。
仮焼粉末は、様々な形状および粒径を有する粒子を含むため、粉砕することが好ましい。粉砕方法は特に限定されず、例えば、公知の粉砕装置(例えばボールミル等)により粉砕することができる。ボールミルとしては、例えば、直径0.1mm~5mm程度のジルコニアボールを用いることが好ましい。
また、粉砕後の粉末は、所望の粒径に選別することが好ましい。例えば、メッシュ篩により所望の粒径のジルコニア粉末を得ることができ、メッシュの目開きの大きさは所望の粒径に合わせて適宜選択すればよい。
成形体材料として用いられるジルコニア粉末の好ましい平均粒径は、例えば、100nm~300nmであって、150nm~200nmがより好ましい。かかる範囲の平均粒径であれば、焼結性が高く、強度および透光性が向上し得る。なお、本明細書において、「平均粒径」とは、レーザー回折・光散乱法により測定された体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒径(D50)のことをいう。かかる測定には、例えば、粒子径分布測定装置LA950V2(株式会社堀場製作所製)を用いることができる。
上記のように製造されたジルコニア粉末は、主にイットリア及び/又はイッテルビア部分安定化ジルコニア粒子を含んでいる。かかるジルコニア粉末中のイットリア及び/又はイッテルビア部分安定化ジルコニア粒子の割合は、50個数%以上であって、60個数%以上が好ましく、70個数%以上、80個数%以上、90個数%以上、95個数%以上であり得る。なお、ジルコニア粉末は、完全安定化ジルコニアを含んでいてもよい。また、ジルコニア粉末は、イットリア及び/又はイッテルビアが固溶していないジルコニア粒子を含んでいてもよい。さらに、ジルコニア粉末は、イットリア粒子及び/又はイッテルビア粒子を含んでいてもよい。
このようにして、成形体材料としてのジルコニア粉末を得ることができるが、成形体材料は、このようなジルコニア粉末に限定されるものではない。
例えば、上記ジルコニア粉末にアルミニウム化合物を混合してもよい。アルミニウム化合物は、第1加熱工程S20および/又は第2加熱工程S30の加熱によりアルミナへと酸化され得る。そのため、アルミニウム化合物の混合量は、該アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムが全てアルミナに酸化されると仮定し、上述のジルコニア焼結体におけるアルミナの含有量となるように決定すればよい。アルミニウム化合物としては、アルミナ粉末、アルミナゾル、水和アルミナ、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等を用いることができる。なお、ジルコニア粉末と、アルミニウム化合物とを水等の溶媒に分散させたスラリーとしてもよい。スラリーとした場合には、スラリーを乾燥させることでアルミニウム化合物が好適に分散したジルコニア粉末を得ることができる。
アルミニウム化合物の平均粒径は、ジルコニア粉末と同程度、または、それよりも小さいことが好ましい。特に限定されるものではないが、アルミニウム化合物の平均粒径は、例えば、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下、100nm以下(例えば20nm~50nm)であってよい。これにより、アルミニウム化合物がジルコニア粉末中へ好適に分散させることができる。そのため、ジルコニア焼結体により均一にアルミナを分布させることができ、好適にジルコニア焼結体の異常粒成長を抑制することができる。
また、成形体材料は粉末状以外にも、顆粒状でも好適に使用することができる。顆粒状の成形体材料の平均粒径は、例えば、10μm~100μmであって、20μm~90μm、40μm~80μmであり得る。顆粒状とすることにより、形状安定性が向上し、取扱性や作業性が向上し得る。加えて、成形時の残留応力が緩和されることでマイクロ波加熱時の粉体粗密差に起因したホットスポットの発生が抑制され得る。また、ここで開示される製造方法では、マイクロ波による加熱によってジルコニア焼結体を得るため、粉末よりも平均粒径の大きい顆粒であっても、顆粒内部まで好適に加熱することができる。この結果、強度および透光性に優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
顆粒状の成形体材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ジルコニア粉末を噴霧乾燥(スプレードライ)させることにより製造することができる。なお、かかるジルコニア粉末はアルミニウム化合物が含まれていてもよく、さらに、バインダを含み得る。
バインダとしては、後述する第1加熱工程または第2加熱工程の加熱温度により燃え抜ける成分であるとよい。バインダとしては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アミン系樹脂、アルキド系樹脂、セルロース系高分子などが挙げられる。なかでも、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。アクリル系樹脂を含むことにより、ジルコニア粉末同士の接着性が高まり、ジルコニア顆粒を好適に製造することができる。また、成形体の形状安定性が高まり、成形体を安定的に保持することができる。アクリル系樹脂としては、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマー(単量体全体の50質量%以上を占める成分)として含む重合体や、かかる主モノマーと当該主モノマーに共重合性を有する副モノマーとを含む共重合体が挙げられる。なお、本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを意味する用語である。
バインダの量が多すぎる場合には、バインダが燃え抜けた後、ジルコニア焼結体に空隙が生じやすくなる場合がある。ジルコニア焼結体に空隙が生じると強度が低下し得る。また、空隙により光が屈折し易くなり、透光性が低下し得る。そのため、バインダの含有量は、噴霧乾燥に用いる粉末全体を100質量%としたとき、例えば、10質量%以下であるとよく、好ましくは5質量%以下である。また、バインダの量が少なすぎると、バインダの効果が不十分となり得る。そのため、バインダの含有量は、例えば、0.5質量%以上であるとよく、1質量%以上であり得る。
次に、成形工程について説明する。成形体材料を成形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、加圧成形、射出成形、押出成形、鋳込成形等を採用することができる。加圧成形としては、例えば、冷間静水圧加圧成形(Cold Isostatic Pressing:CIP)、熱間静水圧加圧成形(Hot Isostatic Pressing:HIP)等が好ましく採用される。CIPまたはHIPによれば、均質性が高く、高密度な成形体を製造できる。
<第1加熱工程S20>
第1加熱工程S20では、成形体を加熱することで成形体を仮焼結し、仮焼結体を得る。かかる加熱により、成形体中に含まれ得る水分、バインダ、不純物等の成分を除去することができ得る。また、仮焼結により、成形体中に存在し得る空隙を低減させることができるため、より高温かつ高速の加熱による焼結において生じ得るクラックを防止することができる。仮焼結は、例えば、800℃~1200℃、好ましくは1000℃~1100℃の加熱温度で実施することができる。仮焼結の時間は、成形体の形状、大きさ、組成等により変動し得るため、適宜調整すればよいが、例えば、1.5時間~5時間であってよく、2時間~4時間であり得る。仮焼結の加熱は、公知方法によって行うことができ、例えば、マッフル炉、電気炉、マイクロ波焼成炉等の加熱装置を用いることができる。
第1加熱工程S20の加熱における昇温速度は、特に限定されるものではないが、例えば、800℃に達するまでを100℃/h~250℃/h、所定温度(例えば、1000℃~1200℃)に達するまでを50℃/h~150℃/hとすることができる。これにより、急激な焼結を防止し、クラックの発生を抑制することができる。
<第2加熱工程S30>
第2加熱工程S30では、第1加熱工程S20で得られた仮焼結体をマイクロ波加熱により焼結させ、ジルコニア焼結体を得る。マイクロ波加熱を行うことで、仮焼結体の内部側を迅速に加熱することができるため、仮焼結体の表面側の焼結の進行と内部側の焼結の進行との差が小さくなり、ジルコニア焼結体の内部の空隙をより低減することができる。これにより、ジルコニア焼結体の強度および透光性を向上させることができる。以下、図を参照しながら第2加熱工程S30の一実施形態について説明する。なお、マイクロ波加熱の方法は以下の例に限定されるものではない。
図2は、仮焼結体をマイクロ波加熱する方法の一例を示す模式図である。なお、図2における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右の向きは、図中、U、D、L、Rの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、設置形態を限定するものではない。
図2に示すように、マイクロ波加熱装置10は、隔壁12と、加熱空間14とを有している。加熱空間14には、断熱容器20が設置され、断熱容器20の収容空間22にはサセプタ40と、仮焼結体50とが収容されている。また、断熱容器20の収容空間22は、ガス供給機30が接続されている。放射温度計60は、マイクロ波加熱装置10の外側の離れた位置に設置されている。
マイクロ波加熱装置10は、隔壁12に囲まれた加熱空間14を有している。加熱空間14は、マイクロ波加熱する対象物を収容する空間である。図示していないが、加熱空間14の側壁、天井及び/又は底壁は、マイクロ波照射部を有しており、加熱空間14に収容された対象物にマイクロ波を照射し、加熱することができる。なお、マイクロ波は、従来マイクロ波加熱に使用されている周波数を有していればよく、例えば、周波数0.3GHz~3GHz(例えば2.45GHz)のマイクロ波を利用することができる。
隔壁12はマイクロ波加熱装置10の加熱空間14と外部とを断熱しており、市販されているマイクロ波装置を使用することができる。また、断熱性を高める観点から、隔壁12の加熱空間14側に断熱材を裏張りしてもよい。
隔壁12には、加熱空間14内の対象物の温度を測定するための貫通孔16が設けられている。貫通孔16は、加熱空間14とマイクロ波加熱装置10の外部をつなぐように貫通している。この実施形態では、貫通孔16には、透明性のある耐熱部材(例えば石英ガラス等)が取り付けられており、加熱空間14を密閉すると共に、放射温度計60による被加熱物の温度測定を可能としている。
このような構成を有するマイクロ波加熱装置10としては、例えば、四国計測工業株式会社製のμ-Reactor EXやμ-Reactor Mx等を用いることができる。
断熱容器20は、内部にサセプタ40と仮焼結体50とを収容可能な収容空間22を有している。また、図2に示すように、この実施形態では、断熱容器20は、収容空間22とガス供給機30とを接続するためのガス導入孔24と、収容空間22と加熱空間14とを連通するガス排出孔26と、収容空間22内の被加熱物の温度を測定するための貫通孔28とを有している。この実施形態では、断熱容器20は直方体状の箱型容器であるが、その形状は特に限定されず、例えば、円筒状、角柱状等であってよい。また、図示していないが、この実施形態では、断熱容器20は、蓋部分と、ケース部分に分離可能なように設計されており、収容空間22に被加熱物を容易に出し入れ可能なように設計されている。断熱容器20の材質は、例えば、アルミナシリカファイバー等のセラミックファイバーを採用することができる。
ガス導入孔24は、収容空間22と加熱空間14とを連通する貫通孔であり、ガス供給機30と接続されたポンプ32が挿通できるように設計されている。これにより、収容空間22に所望のガスを供給し、収容空間22内の雰囲気を制御することができる。
ガス排出孔26は、収容空間22と加熱空間14とを連通する貫通孔であり、収容空間22が密閉されないように設計されている。これにより、仮焼結体50の焼成に進行に伴い、収容空間22の酸素が消費され、収容空間22が還元雰囲気になるのを防ぐことができる。また、ガス排出孔26は、ガス導入孔24から供給されるガスが収容空間22に滞留するのを防止することができる。なお、図2では、ガス排出孔26は1つ設けられているが、複数(2つ以上)設けられていてもよい。また、この実施形態では、ガス排出孔26は、ガス導入孔24が設けられた壁と対向する壁に設けられているが、ガス排出孔26の位置は特に限定されない。ガス排出孔26の直径は、特に限定されるものではないが、例えば、5mm~50mm程度、また例えば、5mm~20mm程度とすることができる。
図2に示すように、この実施形態では、断熱容器20の上側に、収容空間22と加熱空間14とを連通する貫通孔28が設けられている。また、貫通孔28とマイクロ波加熱装置10の貫通孔16とが直線上に並ぶように配置されている。これにより、マイクロ波加熱装置10の外部に設置された放射温度計60によって収容空間22に配置された被加熱物の温度を測定することができる。貫通孔28は、放射温度計60によって被加熱物の温度を測定できる大きさで設けられればよいため、特に限定されるものではないが、例えば、貫通孔28の直径は5mm~10mm程度とすることができる。なお、この実施形態では、ガス排出孔26と貫通孔28とがそれぞれ設けられているが、一つの貫通孔であっても、上述したガス排出孔26と貫通孔28の両者の機能を発揮し得るため、どちらか一方だけが設けられた構成であってもよい。
ガス供給機30は、ポンプ32を介して断熱容器20の収容空間22に所望のガスを供給し、収容空間22の雰囲気を調整することができる。ガス供給機30は、所望のガスに合わせて適宜変更され得るものであり、市販されているガス供給機(例えば、酸素供給機)を特に制限なく使用できる。なお、収容空間22を大気雰囲気下に調整する場合には、ガス供給機30として送風機等を採用してもよい。
仮焼結体50の焼成に伴い、仮焼結体50の周囲の酸素濃度が低下すると、仮焼結体50に含まれるジルコニアが還元される場合がある。これにより、ジルコニア焼結体が黒ずみ、審美性が損なわれ得る。そのため、マイクロ波加熱は、酸化雰囲気下で実施されることが好ましい。酸化雰囲気としては、例えば、大気雰囲気や、大気雰囲気よりも酸素濃度が高い雰囲気が挙げられる。特に、酸素濃度が30vol%以上であることが好ましく、例えば、50vol%以上、70vol%以上であり得る。このような酸化雰囲気下であれば、ジルコニア焼結体の黒ずみをより抑制することができる。なお、雰囲気中の酸素濃度の上限は特に制限されるものではなく、酸素濃度を100vol%以下とすることができるが、酸素濃度が高すぎると、酸素プラズマによる異常加熱が生じる場合がある。そのため、酸素濃度は、例えば、95vol%以下が好ましく、90vol%以下がより好ましい。なお、このような酸化雰囲気への制御は、仮焼結体50が設置されている断熱容器20の収容空間22で実施されればよい。
また、仮焼結体50の焼成中は、上記酸化雰囲気へ制御するため、大気または上記酸素濃度を含むガスを収容空間22(詳細には、仮焼結体50)へ供給し続けることが好ましい。これにより、焼成に伴う収容空間22の雰囲気の変動(例えば酸素濃度が低下する等)を抑制することができる。また、図2中の矢印に示されるように、ガス供給機30から供給されるガスは、収容空間22へ流入した後、ガス排出孔26及び/又は貫通孔28から排出される。このような酸素フロー環境を仮焼結体50の周囲に形成することで、酸素プラズマによる異常加熱の発生を抑制することができる。
サセプタ40は、マイクロ波のエネルギーを効率よく熱エネルギーに変換することで、マイクロ波加熱の効率を高めることができる加熱補助部材である。具体的には、サセプタ40は、マイクロ波を吸収することで仮焼結体50よりも素早く高温になるため、熱伝導により仮焼結体50の昇温を補助することができる。仮焼結体50は、高温に達すると、仮焼結体50自身がマイクロ波を吸収し易くなり、マイクロ波吸収体として振舞うことができるようになる。仮焼結体50がマイクロ波を吸収し易くなると、マイクロ波加熱によって仮焼結体50の内部加熱機構が促進され易くなる。これにより、仮焼結体50の内部の焼結が促進され、内部に空隙が残り難くなり、強度と透光性に優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
仮焼結体50をより短時間で昇温する観点から、サセプタ40は、仮焼結体50を所定の方向の両側から挟むように配置されることが好ましい。例えば、サセプタ40を仮焼結体50の鉛直方向(上下方向)の両側(即ち、上側と下側)に配置する、または、仮焼結体50の水平方向の少なくとも一方向の両側に配置する態様等が挙げられる。これにより、仮焼結体50の所定方向の両側の表面がサセプタ40によって加熱されるため、より短時間で仮焼結体50のマイクロ波吸収効率を高めることができる。この結果、マイクロ波加熱による仮焼結体50の内部加熱がより短時間で実現され得るため、内部の空隙がより低減された、強度と透光性に優れたジルコニア焼結体を製造することができる。なお、配置されるサセプタ40は、典型的には、仮焼結体50の表面に接するように配置されるが、サセプタ40と仮焼結体50の表面との間に隙間があってもよい。かかる隙間は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。
また、仮焼結体50はサセプタ40によって密閉されていないことが好ましい。これにより、マイクロ波がサセプタ40に阻害されることなく仮焼結体50へ直接吸収され易くなる。そのため、サセプタが仮焼結体を完全に被包している場合(例えば閉鎖式の箱型のサセプタの内部に仮焼結体を設置する場合)よりも、仮焼結体の内部加熱をより低温域から誘起することができる。この結果、表面からの熱伝導に起因した焼結様態と比較して、ジルコニア焼結体の内部に残留してしまう気孔が低減されることで、より高い強度、透光性を有したジルコニア焼結体を得ることができる。また、仮焼結体50がサセプタ40によって密閉されていないことで、仮焼結体50の周囲の酸素が消費されて還元雰囲気になるのを防ぐことができる。
また、仮焼結体50において、サセプタ40が配置される所定の方向とは異なる少なくとも一方向の両側にサセプタ40が設置されていない(開放されている)ことが好ましい。これにより、さらにマイクロ波が仮焼結体50へ直接吸収され易くなり、内部加熱をより低温域から且つより均質に誘起することができる。また、サセプタ40が設置されない一方向が設けられることで、ガス供給機30から供給されるガスの流れ(フロー)の中に仮焼結体50を配置できるため、仮焼結体50の周囲の雰囲気をより好適に制御することができる。
この実施形態では、図2に示すように、仮焼結体50が、2枚の板状のサセプタ40によって上下方向から挟持されており、仮焼結体50の水平方向はサセプタ40によって覆われていない。かかる構成では、仮焼結体50の水平方向のいずれにもサセプタ40が配置されていないため、特に、マイクロ波が仮焼結体50へ吸収され易くなり、強度および透光性により優れたジルコニア焼結体を製造し易くなる。
サセプタ40としては、炭化ケイ素(SiC)を主成分とするSiCサセプタが好ましく採用される。ここで、「SiCを主成分とする」とは、サセプタ40を構成する化合物において、SiCが50質量%以上を占めるものをいう。SiCサセプタとしては、例えば、単結晶SiC、再結晶SiC、反応焼結SiC、窒化物結合SiC、酸化物結合SiC、炭化ケイ素繊維等が挙げられる。また、マイクロ波吸収効率を高める観点から、このなかでも比較的気孔率の高い材料である、再結晶SiC、炭化ケイ素繊維を好ましく用いることができる。また、このなかでも再結晶SiCは耐熱性に優れているため、再結晶SiCを特に好ましく用いることができる。さらに、再結晶SiCにおいても、緻密な再結晶SiCではマイクロ波吸収効率が低下する場合があるため、再結晶SiCの気孔率は、例えば10%~90%であるとよく、好ましくは10%~30%である。なお、気孔率は、従来公知の方法で測定することができ、例えば、水銀圧入法によって測定することができる。
サセプタ40が板状である場合、1枚あたりの厚みは、例えば1mm~4mmであることが好ましく、2mm~3mmがより好ましい。サセプタ40が薄すぎると、サセプタの強度が下がり得る。また、サセプタ40が厚すぎると、サセプタ40が加熱され難く、昇温速度が遅くなる。そのため、上記厚みの範囲であれば、サセプタ40の強度と、サセプタ40の昇温速度の両者のバランスが好適となる。これにより、より好適に強度および透光性に優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
図2に示す実施形態では、仮焼結体50の上下にそれぞれ1枚ずつ板状のサセプタ40が配置されているが、板状のサセプタ40の場合、複数(2以上)であれば、その数は特に限定されない。例えば、サセプタ40を仮焼結体50の上側と下側それぞれで2枚以上重ねてもよい。また、仮焼結体50の上側と下側とで異なる枚数のサセプタ40を使用してもよい。
なお、本実施形態では、サセプタ40は板状であったが、サセプタ40は仮焼結体50の所定方向の両側に配置されれば特に限定されない。例えば、一対の対向面に貫通孔が設けられた箱型(例えば、六面体形状)のサセプタ、柱体状のサセプタ(例えば、円筒状、角柱状)等が挙げられる。
放射温度計60は、非接触で対象物の温度を測定することができる。図2に示すように、この実施形態では、放射温度計60は、マイクロ波加熱装置10と離れた位置に設置されており、仮焼結体50の上側のサセプタ40の表面温度を測定している。本明細書において、第2加熱工程S30におけるマイクロ波加熱における加熱温度は、放射温度計60で計測された温度のことをいう。なお、マイクロ波加熱による温度変化をより正確に測定する観点から、クランプ等によって放射温度計60を所定の位置を固定することが好ましい。放射温度計60としては、例えば、Optris社製のOPTCTRF1MHSFVFC3センサ(疑似放射率設定1.0)を使用することができる。
マイクロ波加熱は、例えば、1600℃以上(例えば1600℃超)であるとよく、1620℃以上が好ましく、1650℃以上がより好ましく、1700℃以上(例えば、1700℃超)がさらに好ましく、1720℃以上が特に好ましい。特にメカニズムが限定されるものではないが、マイクロ波加熱の温度を1600℃以上の高温に設定することにより、ジルコニア焼結体の結晶相において、正方晶の割合が高くなるため強度が向上すると推定される。また、結晶相のばらつきが低減することで結晶粒界の不連続性が低減され得る。これにより、ジルコニア焼結体を通過する光が、結晶の界面で反射や屈折し難くなるため、透光性が向上すると推定される。
また、特に限定されるものではないが、加熱装置の耐熱性等の観点から、マイクロ波加熱は、例えば、2000℃以下とするのが適当であり、また例えば1900℃以下、1800℃以下、1750℃以下、1730℃以下とすることができる。一例では、マイクロ波加熱は1600℃~2000℃であって、好ましくは1620℃~1800℃、1650℃~1730℃であり得る。マイクロ波加熱の保持時間は、仮焼結体50の形状、大きさ、組成等によって適宜変更されるが、例えば、1分~20分程度、また例えば1分~10分程度とすることができる。なお、ここでいう保持時間には、上記マイクロ加熱温度に達するまでの昇温時間を含めないものとする。
マイクロ波加熱の加熱方式は、特に限定されず、例えば、シングルモード、マルチモードのどちらも使用することができるが、好ましくはマルチモードが採用される。シングルモードでは、仮焼結体50の配置位置、大きさ等により、仮焼結体50にプラズマが生じる可能性があり、ジルコニア焼結体に割れが生じる場合がある。一方で、マルチモードでは、加熱空間14内の電磁界の集中が抑制されるため、プラズマが生じにくくなる。これにより、ジルコニア焼結体の割れの発生が抑制され、強度および透光性に優れたジルコニア焼結体を製造し易くなる。
マイクロ波加熱の昇温速度は、仮焼結体の形状、大きさ、組成等によって適宜変更されるため、特に限定されるものではないが、例えば、1000℃~1100℃程度に達するまでは、500℃/min~900℃/minとすることが好ましい。これにより、ジルコニア焼結体をより短時間で製造できる。また、1100℃~1200℃程度に達するまでは、例えば、昇温速度を20℃/min~50℃/minとすることが好ましい。これにより、ジルコニアの急激な焼結によるクラックの発生を低減することができ得る。また、1600℃~2000℃程度に達するまでは、例えば、昇温速度を40℃/min~60℃/minとすることが好ましい。これにより、仮焼結体の焼結の進行が適切に制御され、より強度および透光性に優れたジルコニア焼結体を製造することができる。
仮焼結体50の形状は、特に限定されるものではないが、より均一にマイクロ波による焼結を行う観点から、例えば、円盤状であることが好ましい。仮焼結体50の厚みは、例えば、0.5mm~10mmであることが好ましく、0.5mm~2mmがより好ましい。かかる範囲であれば、仮焼結体50の強度を保ちつつ、効率的にマイクロ波による焼結を実施することができる。また、仮焼結体50の最大径は、例えば、10mm~60mmが好ましく、10mm~20mmがより好ましい。かかる範囲であれば、より均一にマイクロ波による焼結を行うことができる。
このようにして製造されるジルコニア焼結体は、優れた強度と透光性とを実現している。例えば、かかるジルコニア焼結体の2軸曲げ強度は800MPa以上であり得、好ましくは850MPa以上、より好ましくは900MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上(例えば1200MPa以上)であり得る。また、2軸曲げ強度の上限は特に制限されるものではないが、例えば1500MPa以下、1300MPa以下、1250MPa以下等であり得る。なお、本明細書において、2軸曲げ強度はJIS T 6526に準じて測定されたものをいう。
ここで開示されるジルコニア焼結体の透光性は、例えば、全光線透過率が44.5%以上であり、好ましくは44.7%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは46%以上、さらには46.5%以上であり得る。また、特に限定されるものではないが、全光線透過率は、例えば、55%以下、51%以下であり得る。なお、本明細書において「全光線透過率」とは、厚さ1mmの円盤状の試験片の厚さ方向におけるD65光源に対する全光線透過率のことをいう。
ここで開示されるジルコニア焼結体は、優れた強度と優れた透光性とを兼ね備えているため、例えば、前歯用義歯、奥歯用義歯、歯科補綴物、ブリッジ等の歯科修復材料として好適に使用することができる。
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:ジルコニア焼結体の製造方法であって、以下の工程:
ジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとを含む成形体であって、上記ジルコニアと、上記イットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたとき、上記イットリア及び/又はイッテルビアの割合が3mol%以上4.4mol%以下である成形体を準備する成形体準備工程、
上記成形体を800℃以上1200℃以下で加熱して仮焼結体を得る第1加熱工程、および、
上記仮焼結体をマイクロ波加熱により1600℃以上2000℃以下で加熱してジルコニア焼結体を得る第2加熱工程、を包含する、ジルコニア焼結体製造方法。
項2:上記マイクロ波加熱の加熱方式が、マルチモードである、項1に記載のジルコニア焼結体製造方法。
項3:上記マイクロ波加熱が、酸化雰囲気下で実施される、項1または2に記載のジルコニア焼結体製造方法。
項4:上記マイクロ波加熱が、酸素濃度が30vol%以上100vol%以下の雰囲気下で実施される、項3に記載のジルコニア焼結体製造方法。
項5:上記第2加熱工程において、SiCサセプタが上記仮焼結体を所定の方向の両側から挟むように配置されている、項1~4のいずれかに記載のジルコニア焼結体製造方法。
項6:上記ジルコニアが顆粒状の粒子を含む、項1~5のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体製造方法。
項7:ジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとを含むジルコニア焼結体であって、上記ジルコニアと、上記イットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたとき、上記イットリア及び/又はイッテルビアの割合は3mol%以上4.4mol%以下であり、
ここで、JIS T 6526に準じて測定される2軸曲げ強度が800MPa以上であり、
厚さ1mmの試験片の厚さ方向におけるD65光源に対する全光線透過率が44.5%以上である、ジルコニア焼結体。
項8:さらに、アルミナを含み、上記ジルコニア焼結体全体を100質量%としたとき、上記アルミナの割合が0.15質量%以下である、項7に記載のジルコニア焼結体。
項9:項7または8に記載のジルコニア焼結体を含む、歯科修復材料。
また、上記項6に記載のジルコニア焼結体に包含される具体的な一態様では、ジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとを含むジルコニア焼結体であって、上記ジルコニアと、上記イットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたとき、上記イットリア及び/又はイッテルビアの割合は3mol%以上3.5mol%以下(例えば3mol%以上3.5mol%未満)であり、ここで、JIS T 6526に準じて測定される2軸曲げ強度が800MPa以上であり、厚さ1mmの試験片の厚さ方向におけるD65光源に対する全光線透過率が少なくとも44.5%以上であり得る。さらには、上記2軸曲げ強度は、900MPa以上、または1000MPa以上であり得る。ここで開示される製造方法によれば、イットリア及び/又はイッテルビアの割合が3.5mol%以下であっても、優れた全光線透過率を実現でき、強度および透光性に優れたジルコニア焼結体とすることができる。
さらに、上記項6に記載のジルコニア焼結体に包含される具体的な一態様では、ジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとを含むジルコニア焼結体であって、上記ジルコニアと、上記イットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたとき、上記イットリア及び/又はイッテルビアの割合は3.5mol%以上4.2mol%以下であり、ここで、JIS T 6526に準じて測定される2軸曲げ強度が800MPa以上であり、厚さ1mmの試験片の厚さ方向におけるD65光源に対する全光線透過率が少なくとも46%以上であり得る。ここで開示される製造方法によれば、イットリア及び/又はイッテルビアの割合が上記範囲のジルコニア焼結体において、優れた透光性が実現でき、強度および透光性に優れたジルコニア焼結体とすることができる。
以下、ここで開示される技術に関する実施例を説明するが、かかる実施例はここで開示される技術を限定することを意図したものではない。
(例1)
オキシ塩化ジルコニウム溶液を加水分解反応させて生成したジルコニアゾルに対し、イットリアを混合した。このとき、ジルコニアとイットリアの合計に対して、イットリアが3mol%となるようにした。かかる混合物を乾燥させたあと、1200℃、2時間仮焼し、部分安定化ジルコニア粉末を得た。かかるジルコニア粉末を直径1mmのジルコニアボールを用いたボールミルで粉砕後、メッシュ篩により選別し、成形体材料として平均粒径150nm~200nmのジルコニア粉末を得た。このジルコニア粉末を円盤状の金型に充填し、0.78MPaの圧力を加えた後、金型から成形体を取り出し、かかる成形体に対して196MPaのCIP成形を行った。その後、得られた成形体を1100℃で2時間加熱し、仮焼結体を得た。このときの昇温速度が800℃までを120℃/h、1100℃までを100℃/hとなるように実施した。
仮焼結体を厚さ2mmの板状SiCサセプタの上に載せ、仮焼結体の上に厚さ2mmの板状SiCサセプタを載せた状態で、断熱容器内に収容した。なお、断熱容器は、図2に示す断熱容器20と同様の構成のものを使用した。そして、断熱容器をマイクロ波加熱装置内に設置した。SiCサセプタは、再結晶SiCを用いた。マイクロ波加熱装置は、四国計測工業株式会社製のμ-Reactor EXを使用した。
次に、ガス供給機としてM1O2 silent(株式会社神戸メディケア製)を用いて、断熱容器内に酸素濃度90vol%のガスを供給した。そして、ガスを供給しながら、マイクロ波加熱を開始し、1000℃までを600℃/min、1100℃までを20℃/min、1730℃までを50℃/minとなるように昇温し、1730℃で1分間維持した。その後、マイクロ波加熱を停止して、室温まで自然放冷した。このようにして、例1のジルコニア焼結体を製造した。なお、マイクロ波加熱方式はマルチモードとした。また、加熱温度の測定には、Optris社製のOPTCTRF1MHSFVFC3センサを使用し、仮焼結体の上側のSiCサセプタの温度を測定した。
(例2)
例1の製造方法から、イットリア濃度を3.5mol%となるように変更した。また、部分安定化ジルコニア粉末を得るための仮焼条件を1120℃、4時間に変更した。さらに、部分安定化ジルコニア粉末に、平均粒径30nmのアルミナ粉末を0.05質量%となるように混合した。これら以外は例1と同様にして、例2のジルコニア焼結体を製造した。
(例3)
例1の製造方法から、イットリア濃度を4.2mol%となるように変更した。また、部分安定化ジルコニア粉末を得るための仮焼条件を1110℃、4時間に変更した。さらに、マイクロ波加熱の昇温速度が1050℃までを900℃/min、1730℃までを40℃/minとなるように実施した。これら以外は例1と同様にして例3のジルコニア焼結体を製造した。
(例4)
例3の製造方法から、部分安定化ジルコニア粉末に、平均粒径30nmのアルミナ粉末が0.05質量%となるように混合した点を変更した。これら以外は例3と同様にして、例4のジルコニア焼結体を製造した。
(例5)
例1の製造方法から、イットリア濃度を5.0mol%となるように変更した。また、部分安定化ジルコニア粉末を得るための仮焼条件を1120℃、4時間に変更した。さらに、部分安定化ジルコニア粉末に、平均粒径30nmのアルミナ粉末が0.02質量%となるように混合した。これに加え、マイクロ波加熱の昇温速度が1250℃までを900℃/min、1550℃までを5℃/min、1730℃までを40℃/minとなるように実施した。これら以外は例1と同様にして、例5のジルコニア焼結体を製造した。
(例6)
例1の製造方法から、イットリア濃度を4.2mol%となるように変更した。また、部分安定化ジルコニア粉末を得るための仮焼条件を1110℃、4時間に変更した。また、部分安定化ジルコニア粉末に、平均粒径30nmのアルミナ粉末が0.125質量%となるように混合し、さらにバインダとしてポリアクリル系バインダが3質量%となるように混合した。そして、かかる混合物を噴霧乾燥により顆粒状とし、平均粒径70μmのジルコニア顆粒を得た。かかるジルコニア顆粒を成形体材料とし、例1と同様にして仮焼結体を得た後、マイクロ波加熱の昇温速度が1150℃までを600℃/min、1200℃までを20℃/min、1730℃までを40℃/minとなるように実施した。これら以外の操作は例1と同様にして、例6のジルコニア焼結体を製造した。
(例7)
例1の製造方法から、イットリア濃度を4.2mol%となるように変更した。また、部分安定化ジルコニア粉末を得るための仮焼条件を1110℃、4時間に変更した。さらに、マイクロ波加熱の昇温速度が1050℃までを900℃/min、1650℃までを40℃/minとなるよう加熱し、1650℃で3分間保持した。これら以外は例1と同様にして例7のジルコニア焼結体を製造した。
(例8)
例1の製造方法から、イットリア濃度を3.5mol%となるように変更した。また、部分安定化ジルコニア粉末を得るための仮焼条件を1110℃、4時間に変更した。さらに、マイクロ波加熱の昇温速度が1050℃までを500℃/min、1620℃までを50℃/minとなるよう加熱し、1620℃で1分間保持した。これら以外は例1と同様にして例8のジルコニア焼結体を製造した。
(例9)
オキシ塩化ジルコニア溶液を加水分解反応させて生成したジルコニアゾルに対し、塩化イットリウムと塩化イッテルビウムとを混合した。なお、塩化イットリウムをイットリア換算し、塩化イッテルビウムをイッテルビア換算したとき、ジルコニアとイットリアとイッテルビアとの合計に対して、イットリアが1.8mol%、イッテルビアが2.4mol%となるように塩化イットリウムおよび塩化イッテルビウムを混合した。かかる混合物を乾燥させたあと、1120℃、4時間仮焼し、部分安定化ジルコニア粉末を得た。かかるジルコニア粉末を直径1mmのジルコニアボールを用いたボールミルで粉砕後、メッシュ篩により選別し、成形体材料として平均粒径150nm~200nmのジルコニア粉末を得た。この粉末に、平均粒径30nmのアルミナ粉末を0.05質量%となるように混合した。このジルコニア粉末を円盤状の金型に充填し、0.78MPaの圧力を加えた後、金型から成形体を取り出し、かかる成形体に対して196MPaのCIP成形を行った。その後、得られた成形体を1100℃で2時間加熱し、仮焼結体を得た。このときの昇温速度が800℃までを120℃/h、1100℃までを100℃/hとなるように実施した。その後、例1と同様にしてマイクロ波加熱を実施し、例9のジルコニア焼結体を得た。ただし、マイクロ波加熱の条件は、1050℃までを900℃/min、1730℃までを40℃/minとなるように昇温した後、1730℃で1分間維持、となるように変更した。
(例10)
例9の製造方法から、イッテルビア濃度が4.2mol%となるように塩化イッテルビウムを混合するように変更した。なお、塩化イットリウムは混合しなかった。また、部分安定化ジルコニア粉末を得るための仮焼条件を1100℃、4時間に変更した。これら以外は例9と同様にして例10のジルコニア焼結体を製造した。
(例11)
例10の製造方法から、イッテルビア濃度を3.0mol%となるように変更した。また、部分安定化ジルコニア粉末を得るための仮焼条件を1110℃、4時間に変更した。また、例11ではアルミナ粉末を混合しなかった。さらに、マイクロ波加熱の昇温速度を1100℃までを600℃/min、1700℃までを50℃/minに変更し、1700℃で1分間保持した。これら以外は例10と同様にして例11のジルコニア焼結体を製造した。
<透光性の評価>
各例で製造したジルコニア焼結体を厚さ1mmの円盤状の試験片となるように加工し、試験片の両面を0.5μmのダイアモンドスラリーを研磨剤として用いて鏡面研磨した後、厚み方向におけるD65光源の全光線透過率を測定した。かかる測定には、日本電色工業製のヘーズメーターNDH4000を用いた。結果を表1に示す。
<2軸曲げ強度の測定>
各例で製造したジルコニア焼結体を厚さ1.2mmの円盤状の試験片となるように切削加工した後、2軸曲げ強度をJIS T 6526に準じて測定した。かかる測定には、島津製作所社製の卓上精密万能試験機オートグラフAGS-5kNXを使用した。結果を表1に示す。
Figure 0007475563000001
表1に示すように、例1~11のいずれにおいても全光線透過率が44.5%以上(詳細には44.7%以上)であり、優れた透光性が実現されたことがわかる。このなかでも、例1~4、6~11は、2軸曲げ強度が800MPa以上であり、優れた強度を実現していることがわかる。即ち、ここで開示される製造方法によれば、優れた強度(2軸曲げ強度800MPa以上)および透光性(全光線透過率44.5%以上)を有したジルコニア焼結体を実現できることがわかる。
特に、例1、2、8、11の結果から、イットリア及び/又はイッテルビアの割合が3mol%以上3.5mol%以下の場合でも、優れた強度(2軸曲げ強度800MPa以上)に加え、優れた透光性(全光線透過率44.5%以上)が実現されている。一般的に、焼成炉等で焼結したイットリアの割合が比較的低い(例えば3.5mol%以下)部分安定化ジルコニアの焼結体では、強度が高くなる一方で、全光線透過率が低くなるトレードオフの関係がある。しかしながら、ここで開示されるジルコニア焼結体では、イットリア及び/又はイッテルビアの割合が比較的低い場合であっても全光線透過率を高くすることができる。
また、例2~4、6~7、9~11の結果から、イットリア及び/又はイッテルビアの割合が3.5mol%以上4.2mol%以下の場合でも、優れた透光性(全光線透過率46%以上)に加え、優れた強度(2軸曲げ強度800MPa以上)が実現されている。一般的に、焼成炉等で焼結したイットリアの割合が比較的高い(例えば3.5mol%以上)部分安定化ジルコニアの焼結体では、透光性が高くなる一方で、強度が低くなるトレードオフの関係がある。しかしながら、ここで開示されるジルコニア焼結体では、イットリア及び/又はイッテルビアの割合が比較的高い場合であっても、優れた強度が実現されている。また、イットリア及び/又はイッテルビアの割合が3.5mol%以上4.2mol%以下であるジルコニア焼結体において、全光線透過率46%以上が実現されていることは特に優れた透過性であると考えられる。
また、例3、4、7の比較により、アルミナを添加することにより、透光性および強度がより向上することがわかる。
また、例6に示されるように、成形体材料として顆粒状のジルコニア粉末を使用した際にも優れた透光性および強度を有するジルコニア焼結体を実現できることがわかる。
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (8)

  1. ジルコニア焼結体の製造方法であって、以下の工程:
    ジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとを含む成形体であって、前記ジルコニアと、前記イットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたとき、前記イットリア及び/又はイッテルビアの割合が3.5mol%以上4.4mol%以下である成形体を準備する成形体準備工程、
    前記成形体を800℃以上1200℃以下で加熱して仮焼結体を得る第1加熱工程、および、
    前記仮焼結体をマイクロ波加熱により1600℃以上2000℃以下で加熱してジルコニア焼結体を得る第2加熱工程、
    を包含し、
    前記マイクロ波加熱が、酸素濃度が70vol%以上95vol%以下の雰囲気下で実施される、ジルコニア焼結体製造方法。
  2. 前記マイクロ波加熱の加熱方式が、マルチモードである、請求項1に記載のジルコニア焼結体製造方法。
  3. 前記マイクロ波加熱が、酸化雰囲気下で実施される、請求項1または2に記載のジルコニア焼結体製造方法。
  4. 前記第2加熱工程において、SiCサセプタが前記仮焼結体を所定の方向の両側から挟むように配置されている、請求項1または2に記載のジルコニア焼結体製造方法。
  5. 前記ジルコニアが顆粒状の粒子を含む、請求項1または2に記載のジルコニア焼結体製造方法。
  6. ジルコニアと、イットリア及び/又はイッテルビアとを含むジルコニア焼結体であって、
    前記ジルコニアと、前記イットリア及び/又はイッテルビアとの合計を100mol%としたとき、前記イットリア及び/又はイッテルビアの割合は3.5mol%以上4.4mol%以下であり、
    ここで、JIS T 6526に準じて測定される2軸曲げ強度が800MPa以上であり、
    厚さ1mmの試験片の厚さ方向におけるD65光源に対する全光線透過率が45%以上51%以下である、
    ジルコニア焼結体。
  7. さらに、アルミナを含み、
    前記ジルコニア焼結体全体を100質量%としたとき、前記アルミナの割合が0.15質量%以下である、
    請求項6に記載のジルコニア焼結体。
  8. 請求項6または7に記載のジルコニア焼結体を含む、歯科修復材料。
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