JP7474388B1 - 光ファイバテープ心線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
なかでも、欧米諸国における情報通信用ケーブルは、地下埋設のダクトに布設されることが多く、ダクト内の布設スペースに物理的な制約をうける。欧米諸国の高速大容量な光ファイバ通信網の整備・構築を経済的に実現させるには、既存ダクト内に、より多くの単心被覆光ファイバを収容することが重要である。
しかしながら、本発明者らの鋭意検討によれば、光ファイバテープ心線の形成直後にインクジェット法等で識別マークを形成すると、光の伝送損失が大きくなることがあることが明らかとなり、特に識別マーク形成のためのインク塗布や乾燥時の光ファイバテープ心線の温度が非常に重要であることを突き止め、本発明に至った。
並列に配置された複数の単心被覆光ファイバを連結するように配置された、光硬化型樹脂に光を照射して前記光硬化型樹脂を硬化させる工程と、
硬化後の前記光硬化型樹脂上に、インクジェット法にてインクを塗布し、複数の識別マークを形成する工程とを含み、
前記識別マークを形成する工程を、前記光硬化型樹脂の温度が37.3℃以下である状態で行う、光ファイバテープ心線の製造方法が提供される。
まず、本実施形態の製造方法で製造する光ファイバテープ心線の構造について説明する。
図1に、本実施形態で製造する光ファイバテープ心線1の概略平面図を示す。また、図2に、図1におけるX-X線での断面図を示す。
図1に示すように、光ファイバテープ心線1は、複数の単心被覆光ファイバ(以下、単に「光ファイバ」とも称する)2を含んでいる。1つの光ファイバテープ心線1が含む光ファイバ2の本数は、光ファイバテープ心線1の用途に応じて適宜選択されるが、通常4~12本程度である。
各光ファイバ2は、図2に示すように、光ファイバ素線2aが1次被覆層2bおよび2次被覆層2cで順に被覆された構造を有しており、これらは公知の光ファイバの光ファイバ素線や、第1被覆層、第2被覆層と同様である。各光ファイバ2の表面には、さらに着色層(図示せず)が配置されていてもよい。各光ファイバ2は着色されていることが好ましく、光ファイバテープ心線1内の光ファイバ2は、互いに色が異なることが好ましい。これにより、1つの光ファイバテープ心線1内で、複数の光ファイバ2を識別することが可能となる。
また、識別マーク9は、当該光ファイバテープ心線1を認識できるように、一定の規則性をもって配置されていればよい。本実施形態では、略円形状の同一の大きさ、かつ同一色の識別マーク9が複数配置されているが、異なる形状や異なる大きさ、異なる色の識別マーク9が、光ファイバテープ心線1内に配置されていてもよい。また、識別マーク9の形状は、円形状に制限されず、例えば数字や文字等であってもよい。さらに、本実施形態では、複数の識別マーク9が等間隔に配置されているが、複数の識別マーク9を異なる間隔で配置することで、光ファイバテープ心線1に識別性を付与してもよい。
識別マーク9は、光ファイバ2上に配置されていてもよく、連結部4上に配置されていてもよく、これら両方の上に配置されていてもよい。また、本実施形態では、各識別マーク9が、隣り合う2つの光ファイバ2に跨がるように配置されているが、当該実施形態に制限されない。なお、2つの光ファイバ2に跨るように配置された識別マーク9は、つながっていてもよく、分離部6によって分断されていてもよい。さらに、本実施形態では、複数の光ファイバ2が1心毎に独立しており、各光ファイバ2の間に連結部4および分離部6が配置されているが、光ファイバテープ心線1の構造は当該構造に限定されない。例えば、複数本(例えば2本)の光ファイバ2が1ユニットになっており、これらのユニットを繋ぐように、連結部4や分離部6が配置されていてもよい。また、本実施形態では、識別マーク9が、光ファイバテープ心線1の一方の面のみに配置されているが、識別マーク9は、光ファイバテープ心線1の両方の面に配置されていてもよい。
本実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造方法では、並列に配置された、複数の単心被覆光ファイバを連結するように配置された、光硬化型樹脂に光を照射して、光硬化型樹脂を硬化させる工程(以下、「光ファイバ連結工程」とも称する)と、硬化後の光硬化型樹脂上に、インクジェット法にてインクを塗布し、複数の識別マークを形成する工程(以下、「識別マーク形成工程」とも称する)と、を行う。本実施形態では、光ファイバ連結工程および識別マーク形成工程の間に、光ファイバテープ心線の連結体をボビンに巻き取ったりする工程を行わずに、連続して、これらの工程を行う。
ここで、本実施形態の光ファイバ連結工程および識別マーク形成工程を行う装置は特に制限されないが、例えば以下の製造装置によって行うことができる。
図3は光ファイバテープ心線の製造装置10の概略構成を示す図である。
図3に示すとおり、光ファイバテープ心線の製造装置10では主に、上述の光ファイバ2の搬送方向Aに沿ってテープダイス20、分離ダイス30、2つの光照射装置40、50、ならびにインク塗布装置60がこの順に設置され、光ファイバ2が順に通過するようになっている。
分離ダイス30には余分な光硬化型樹脂を吸引するための樹脂吸引装置38が設置されている。樹脂吸引装置38は分離ニードル32、34、36の下降により堰き止められた余分な光硬化型樹脂を吸引するようになっている。
上流側の光照射装置40と下流側の光照射装置50とでは、上流側の光照射装置40は積算照射量が少なく、下流側の光照射装置50は積算照射量が多くなるように、それぞれ出力が調整される。
当該製造装置では、下流側の光照射装置50とインク塗布装置60との間に、光硬化型樹脂の温度を測定する測定部や、光硬化型樹脂の温度を調節するための温度調整装置(例えば冷却装置)等をさらに有していてもよい。また、インク塗布装置60より下流側に、インクを乾燥(硬化)させるための硬化装置や光ファイバテープ心線をボビンに巻き取るための巻き取り装置等をさらに有していてもよい。
本実施形態の光ファイバテープ心線の製造方法の各工程について詳しく説明する。
光ファイバ連結工程では、複数本の光ファイバ2を搬送方向Aに沿って搬送させた状態で、複数本の光ファイバ2に対しテープダイス20で未硬化の光硬化型樹脂をテープ状に塗布し、テープ層8を形成する。
その後、当該テープ層8に対し分離ダイス30の分離ニードル32、34、36を昇降させ、テープ層8の一部を除去し、上述の分離部6(および連結部4)を形成する。併せて、樹脂吸引装置38によって、分離ニードル32、34、36の下降により堰き止められた余分な光硬化型樹脂を吸引する。
次いで、テープ層8に対し光照射装置40で光を照射し未硬化の光硬化型樹脂を半硬化させ、最終的に光照射装置50でさらに光を照射し半硬化の光硬化型樹脂を完全硬化させる。なお、上流側の光照射装置40と下流側の光照射装置50とでは、上流側の光照射装置40の積算照射量が少なく、下流側の光照射装置50の積算照射量が多くなるように、それぞれの積算照射量を調整する。
識別マーク形成工程では、例えば図3に示すように、上述の光ファイバ連結工程によって硬化された光硬化型樹脂の所定の位置(図3では、2つの光ファイバ2にインクが跨るように)インク塗布装置60からインクを塗布する。そして、塗布されたインクを乾燥(硬化)させて、識別マーク9を形成する。
本実施形態では、インクの塗布および乾燥(硬化)を、光硬化型樹脂の温度が37.3℃以下である状態で行う。本明細書における「光硬化型樹脂の温度」とは、光硬化型樹脂の表面温度をいう。当該温度は、接触式温度計で測定した温度であってもよく、非接触式温度計で測定した温度であってもよい。
なお、識別マーク形成工程を行う際の光硬化型樹脂の温度は、光の伝送損失の発生を確実に抑制するとの観点で、15℃以上32.7℃以下がより好ましく、25℃以下がさらに好ましい。
なお、識別マークを形成するためのインクが、ケトン系溶媒またはアルコール系溶媒を含む場合に、特に上記伝送損失が生じやすかった。これに対し、上記温度範囲で識別マーク形成工程を行う場合には、インクがケトン系溶媒やアルコール系溶媒を含んでいても、その影響が生じ難い。したがって、本実施形態のインクでは、これらを含んでいてもよい。
(1)光ファイバ連結工程
外径125μmの石英ガラス系SM光ファイバ上に、23℃におけるヤング率が約5MPaのウレタンアクリレート系光硬化型樹脂からなる1次被覆、および23℃におけるヤング率が約700MPaのウレタンアクリレート系光硬化型樹脂からなる2次被覆を施した外径250μmの単心被覆光ファイバを準備した。
その後、図3と同様の製造装置を使用し、単心被覆光ファイバを12本整列させながら、ウレタンアクリレート系光硬化型樹脂を塗布してテープ層8を形成した。
その後、当該テープ層8に対し分離ダイス30の分離ニードル32、34、36を昇降させ、テープ層8の一部を除去し、上述の分離部6(および連結部4)を形成し、光照射装置40で光を照射し未硬化の光硬化型樹脂を半硬化させ、最終的に光照射装置50でさらに光を照射し半硬化の光硬化型樹脂を完全硬化させた。
硬化後の光硬化型樹脂表面の温度を測定しながら、その温度が25℃、32.7℃および37.3℃の各温度であるときに、識別マーク形成用のインクを塗布(滴下)し、自然乾燥させた。インクは、メチルエチルケトン(ケトン系溶媒)を含むものを使用した。
当該光ファイバテープ心線について、伝送損失をIEC60793-1-40に準拠して、波長1310nmの光の伝送損失を単心被覆光ファイバごとに1本ずつ測定した。測定結果を図4に示す。図4では、光の伝送損失の上限値と下限値との間を黒帯で表現している。
上記(2)識別マーク形成工程(インクの塗布)を、光硬化樹脂表面の温度が50℃であるときに行った以外は、上記実施例1-3と同様の製造方法および測定評価基準で、光ファイバテープ心線を作製し、波長1310nmの光の伝送損失を測定した。測定結果を図4に示す。
波長1310nmの光の伝送損失が0.34dB/km以下である場合に製品として良品と判断されるところ、図4に示すように、光硬化型樹脂の温度が37.3℃以下の状態で識別マークを形成した場合には、光の伝送損失が0.34dB/km以下に抑えられた(実施例1-3)。これに対し、光硬化型樹脂の温度が50℃程度で識別マークを形成した場合には、光の伝送損失が大きかった(比較例)。
2 単心被覆光ファイバ
2a 光ファイバ素線
2b 第1次被覆層
2c 第2次被覆層
4 連結部
6 分離部
8 テープ層
10 光ファイバテープ心線の製造装置
20 テープダイス
30 分離ダイス
32、34、36 分離ニードル
38 樹脂吸引装置
40 (上流側の)光照射装置
50 (下流側の)光照射装置
60 インク塗布装置
Claims (2)
- 並列に配置された複数の単心被覆光ファイバを連結するように配置された、光硬化型樹脂に光を照射して前記光硬化型樹脂を硬化させる工程と、
硬化後の前記光硬化型樹脂の温度を測定する工程と、
硬化後の前記光硬化型樹脂上に、インクジェット法にてインクを塗布し、複数の識別マークを形成する工程とを含み、
前記識別マークを形成する工程を、硬化後の前記光硬化型樹脂の温度が37.3℃以下である状態で行う、光ファイバテープ心線の製造方法。 - 請求項1の光ファイバテープ心線の製造方法において、
前記インクが、ケトン系溶媒および/またはアルコール系溶媒を含む、光ファイバテープ心線の製造方法。
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