JP7471963B2 - 多結晶シリコンの清浄化方法、清浄化多結晶シリコンの製造方法および多結晶シリコンの清浄化装置 - Google Patents

多結晶シリコンの清浄化方法、清浄化多結晶シリコンの製造方法および多結晶シリコンの清浄化装置 Download PDF

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Description

本発明は、多結晶シリコンの清浄化方法、清浄化多結晶シリコンの製造方法および多結晶シリコンの清浄化装置に関する。
シーメンス法などにより製造された多結晶シリコンは、半導体に用いられる単結晶シリコンの製造および太陽電池用多結晶シリコンの製造などに用いられる。特に上記の半導体用途では、高純度の多結晶シリコンが求められている。このような高純度の多結晶シリコンを得るために、洗浄が行われる。
特許文献1には、洗浄後のシリコン原料に80~150℃の温風又は熱風を当てて、シリコン原料を乾燥する方法が開示されている。
特開2001-106595号公報
洗浄後の多結晶シリコンの乾燥では、乾燥が不十分な場合、多結晶シリコンの表面酸化膜が不均一な部分「ウォーターマーク」と称される外観異常が発生する。その対策として、高温乾燥または真空加熱等が行われているが、上述の技術を含めた従来技術では、ウォーターマークが度々発生し、品質管理上大きな問題となっている。
本発明の一態様は、多結晶シリコンのウォーターマークの発生を低減することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの清浄化方法は、多結晶シリコンを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後の前記多結晶シリコンに対して、100℃以上180℃以下の熱風をガス線速1m/s以上で吹き付ける熱風乾燥工程と、前記熱風乾燥工程後の前記多結晶シリコンに対して、0℃以上40℃以下の冷風をガス線速1m/s以上で吹き付ける冷風乾燥工程と、を含む。
上記の方法によれば、熱風乾燥後の冷風乾燥により、多結晶シリコンの表面温度を低下させることにより、あくまでも推定であるが、多結晶シリコンの表面酸化膜上のシラノール基(-Si-OH)の反応活性を低減できると考えられる。その結果、冷風乾燥工程後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生を低減することができる。また、180℃を超える高温での乾燥および真空乾燥を必要とせずに、短時間で効率的に乾燥できるので、乾燥工程の乾燥コストを削減することができる。
また、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの清浄化方法において、前記熱風乾燥工程に供される前記多結晶シリコンは、複数の多結晶シリコン破砕片を含み、前記熱風乾燥工程および前記冷風乾燥工程のうちの少なくとも一方において、前記複数の多結晶シリコン破砕片は、コンベヤ上に広げられた状態で運搬されてもよい。
上記の方法によれば、複数の多結晶シリコン破砕片は、コンベヤ上に広げられた状態で運搬されるので、例えば複数の多結晶シリコン破砕片が籠などの中で積み重ねられた状態と比較して、複数の多結晶シリコン破砕片と熱風または冷風とが直接接触し易くなる。これにより、複数の多結晶シリコン破砕片を短時間で効率的に乾燥させることができる。
また、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの清浄化方法において、前記コンベヤにおける前記複数の多結晶シリコン破砕片と接触する箇所は、融点が150℃以上である樹脂製であってもよい。
上記の方法によれば、コンベヤにおける複数の多結晶シリコン破砕片と接触する箇所は、融点が150℃以上である樹脂製であるので、熱風との接触時または熱風により加熱された多結晶シリコン破砕片との接触時に、熱劣化し難い。その結果、コンベヤと多結晶シリコン破砕片との接触部から多結晶シリコン破砕片の表面に付着する不純物を低減することができる。したがって、冷風乾燥工程後に得られる多結晶シリコンの表面不純物濃度を低下させることができる。
また、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの清浄化方法において、前記熱風および前記冷風のうちの少なくとも一方は、前記多結晶シリコンの上方から吹き付けられてもよい。上記の方法によれば、熱風および冷風のうちの少なくとも一方は、多結晶シリコンの上方から吹き付けられるので、熱風または冷風により、多結晶シリコンを支持する支持体から不純物が発散される場合であっても、該不純物は下方へ強制輸送される。したがって、不純物が多結晶シリコンの表面に付着する可能性を低減し、冷風乾燥工程後に得られる多結晶シリコンの表面不純物濃度を低下させることができる。
また、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの清浄化方法において、前記熱風および前記冷風のうちの少なくとも一方は空気を含んでもよい。上記の方法によれば、熱風および冷風のうちの少なくとも一方は空気を含むので、多結晶シリコンを乾燥させるためのコストを削減することができる。
また、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの清浄化方法において、前記熱風および前記冷風のうちの少なくとも一方は不活性ガスを含んでもよい。上記の方法によれば、熱風および冷風のうちの少なくとも一方は不活性ガスを含むので、多結晶シリコン上のシラノール基の反応をより一層抑制できるものと考えられる。例えば、不活性ガスを含むことにより、酸素および水蒸気の分圧が低いガスを多結晶シリコンに吹き付けることになる。その結果、あくまでも推定であるが、多結晶シリコンの表面酸化膜上のシラノール基による悪影響を低減できると考えられ、多結晶シリコンの表面に形成される酸化膜厚の不均一性を低減することができる。したがって、冷風乾燥工程後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生を低減することができる。
また、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの清浄化方法において、前記洗浄工程は、前記多結晶シリコンに対して、フッ硝酸を接触させる第一洗浄工程と、前記第一洗浄工程を経た前記多結晶シリコンに対して、フッ酸を含む非酸化性薬液を接触させる第二洗浄工程と、を含んでもよい。
上記の方法によれば、第一洗浄工程において、多結晶シリコンに対して、フッ硝酸を接触させるので、例えば多結晶シリコンの析出炉から取り出された後に雰囲気ガスとの接触により生じる多結晶シリコンの表面の酸化膜の除去と、硝酸による新たな酸化膜の形成とが同時に進行するものと考えられる。これにより、多結晶シリコンがエッチングされ、洗浄前の多結晶シリコンの表面の酸化膜上に付着した汚染物質および多結晶シリコンの酸化膜形成時に取り込まれた汚染物質が除去できると考えられる。
また、第二洗浄工程において、第一洗浄工程を経た多結晶シリコンに対して、フッ酸を含む非酸化性薬液を接触させるので、第一洗浄工程で形成された酸化膜が除去されることにより、第一洗浄工程において酸化膜形成時に取り込まれた汚染物質が除去される。したがって、冷風乾燥工程後に得られる多結晶シリコンの不純物濃度を低下させることができる。
また、本発明の一態様に係る清浄化多結晶シリコンの製造方法は、多結晶シリコンを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後の前記多結晶シリコンに対して、100℃以上180℃以下の熱風をガス線速1m/s以上で吹き付ける熱風乾燥工程と、前記熱風乾燥工程後の前記多結晶シリコンに対して、0℃以上40℃以下の冷風をガス線速1m/s以上で吹き付ける冷風乾燥工程と、を含む。
また、本発明の一態様に係る多結晶シリコンの清浄化装置は、多結晶シリコンを洗浄する洗浄部と、前記洗浄部で洗浄後の前記多結晶シリコンに対して、100℃以上180℃以下の熱風をガス線速1m/s以上で吹き付ける熱風乾燥部と、前記熱風乾燥部で熱風乾燥後の前記多結晶シリコンに対して、0℃以上40℃以下の冷風をガス線速1m/s以上で吹き付ける冷風乾燥部と、を含む。
本発明の一態様によれば、多結晶シリコンのウォーターマークの発生を低減することができる。
本発明の一実施形態に係る多結晶シリコンの清浄化方法を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る多結晶シリコンの清浄化装置を示す概略図である。
本発明の実施の形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
清浄化の対象となる多結晶シリコンは、特に限定されないが、例えば、クロロシラン化合物と水素とを反応器中で反応させて多結晶シリコンを析出させることにより製造することができる。シリコンを析出させる方法としてシーメンス法が知られている。シーメンス法では、鐘型(ベルジャー型)反応器内でトリクロロシランと水素とを反応させる。そして、反応器内部に立設した多結晶シリコン析出用芯棒の表面に多結晶シリコンを析出させ、成長した多結晶シリコンロッドを得る。
また、清浄化の対象となる多結晶シリコンは、上記多結晶シリコンロッドが例えばハンマーにより破砕された多結晶シリコン破砕片(多結晶シリコンナゲットとも称される)であってもよい。なお、多結晶シリコン破砕片は、分級されていてもよい。多結晶シリコン破砕片の大きさは、例えば長軸が20mm以上90mm以下、且つ、短軸が10mm以上60mm以下であってもよい。
本明細書において、「ウォーターマーク」とは、多結晶シリコンの表面に観察される虹色の外観異常を意味する。ウォーターマークは目視で観察することができる。ウォーターマークの原因は、多結晶シリコンの表面の状態の違いに起因していると推測される。具体的には、ウォーターマークの原因は、多結晶シリコンの表面に生成される酸化膜の厚さが不均一であること、および多結晶シリコンの表面に汚染物質が不均一に付着することであると推測されている。酸化膜の厚さが不均一となる、または汚染物質が不均一に付着するメカニズムは明らかではないが、本発明者等は以下のメカニズムであると推定している。
多結晶シリコンの表面には、製造および洗浄の直後に、酸化膜が形成される。そして、その酸化膜上には、シラノール基(-Si-OH)が生成(残存)することが知られている。シラノール基が酸化膜上に残存したままであれば(反応しなければ)、酸化膜の厚みは不均一にならず、汚染物質の付着はないと考えられる。しかしながら、シラノール基は反応性が高いため、様々な反応が生じるものと考えられる。例えば、シラノール基は、温度、シラノール基の濃度、および/または雰囲気等の条件に依存して、以下のような反応が生じるものと考えられる。
・シラノール基同士の反応(-Si-OH + -Si-OH → -Si-O-Si- + HO)、
・シラノール基と雰囲気ガス中の有機物との反応(-Si-OH + 雰囲気ガス中の有機物 → -Si-O-有機基(該有機物由来の基))、
・シラノール基と雰囲気ガス中の無機物との反応(-Si-OH + 雰囲気ガス中の無機物 → -Si-O-無機基(該無機物由来の基))
これらの反応は、温度が高いほど、および/またはシラノール基の濃度が高いほど進行が速くなるものと考えられる。これらの反応が進行すると、酸化膜の基本的な構造(-(Si-O)-,nは繰り返し単位)とは異なる構造が形成され、そして、組成および/または膜厚が異なる酸化膜が形成されるものと考えられる。その結果、「ウォーターマーク」が生じるものと推定される。
以上のようなメカニズムで「ウォーターマーク」が発生するものと考えられる。さらに、この「ウォーターマーク」の発生は以下の問題も含んでいる。多結晶シリコン表面の酸化膜上に存在するシラノール基と雰囲気ガス中の成分との反応は、長時間に渡って徐々に生じる場合があると考えられる。そのため、例えば、洗浄後の多結晶シリコンを乾燥した直後には、「ウォーターマーク」は観察されないが、乾燥後、数週間経過した後に、「ウォーターマーク」が観察される場合もある。これは、乾燥が不十分な場合、酸化膜上のシラノール基の濃度が高くなり、上記反応が常温でも徐々に進行し、長時間の常温での保管後に、結果として、酸化膜の厚みが不均一になるものと考えられる。
以上の通り、「ウォーターマーク」は、表面の酸化膜、および酸化膜に固着した有機物および無機物が原因であると推定される。そのため、目視でウォーターマークが多く観察される多結晶シリコンは、多結晶シリコンの表面に不純物が存在する可能性を示唆する。したがって、高品質な製品とするためには、ウォーターマークの発生を低減することが好ましい。
加えて、上記の通り、乾燥条件によっては、乾燥後、数週間経過した後に「ウォーターマーク」が観察される場合もある。そのため、乾燥条件の評価に長時間を要することが、品質管理上、大きな課題となっている。
本発明者等は、以上のような問題を解決するため、特に、乾燥条件の違いによる「ウォーターマーク」の発生のメカニズムを推定し、それを解消するための検討を行った。
多結晶シリコンを所定の温度で加熱して乾燥することにより、シラノール基量は減少する。しかしながら、従来の方法では、乾燥条件に依存して、表面に残存するシラノール基量がそれぞれの場所で異なるものと考えられる。さらに、洗浄後の乾燥において、乾燥終了後の多結晶シリコンの表面は高温である。そのため、残存しているシラノール基の反応活性が高く、そのまま自然冷却しただけでは、前記の各種反応が促進されるものと考えられる。その結果、不均一な厚みの酸化膜が形成され、かつ、汚染物質の付着が起こり易くなり、そして、多結晶シリコンに「ウォーターマーク」が発生するのではないかと推定した。
以上のような推定のもと、洗浄後の多結晶シリコン表面の酸化膜にあるシラノール基の量の低減、およびシラノール基の反応活性の抑制により、「ウォーターマーク」の発生を低減することができるものと考え、多結晶シリコンの乾燥条件の検討を行った。なお、低減すべき「ウォーターマーク」は、乾燥工程直後に観察される「ウォーターマーク」および長期間放置後に観察される「ウォーターマーク」を含む。
具体的な方法としては、後述する熱風乾燥と冷風乾燥の組合せで乾燥した結果、「ウォーターマーク」の発生を低減することができた。つまり、これら熱風乾燥と冷風乾燥とを組み合わせることにより、残存するシラノール基を低減できると共に、シラノール基の反応活性を抑制できたと考えられる。そして、本発明によれば、「ウォーターマーク」の発生が低減できていることから、汚染物質による多結晶シリコン表面の汚染も低減できていると考えられる。以下、詳細について説明する。
〔1.多結晶シリコンの清浄化方法〕
図1は、本発明の一実施形態に係る多結晶シリコンの清浄化方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態に係る多結晶シリコンの清浄化方法は、洗浄工程S1と、熱風乾燥工程S2と、冷風乾燥工程S3と、を含む。また、図1は、本発明の一実施形態に係る清浄化多結晶シリコンの製造方法を示すフローチャートであると考えることもできる。本実施形態に係る清浄化多結晶シリコンの製造方法は、洗浄工程S1と、熱風乾燥工程S2と、冷風乾燥工程S3と、を含む。
<1-1.洗浄工程>
洗浄工程S1では、多結晶シリコンを洗浄する。多結晶シリコンは、任意の方法で洗浄することができる。例えば、多結晶シリコンに対して、フッ硝酸またはフッ酸を接触させることにより、多結晶シリコンを洗浄することができる。図1に示す例では、洗浄工程S1は、第一洗浄工程S11と、第二洗浄工程S12と、第三洗浄工程S13とを含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、洗浄工程S1は、第一洗浄工程S11と、第二洗浄工程S12と、を含み、第三洗浄工程S13を含まなくてもよい。
<1-1-1.第一洗浄工程S11>
第一洗浄工程S11では、多結晶シリコンに対して、フッ硝酸を接触させる。本明細書において、フッ硝酸は硝酸と、フッ化水素と、を混合した水溶液を意図する。フッ硝酸は硝酸を40~70質量%、フッ化水素を0.1~3.0質量%含むことが好ましく、硝酸を50~70質量%、フッ化水素を0.2~2.5質量%含むことがより好ましい。
上述の反応器から取り出された多結晶シリコンには、自然酸化によって汚染物質を含む酸化膜が、通常、数nmの厚みで形成され得る。この多結晶シリコンをフッ硝酸と接触させることにより下記に示す反応が起こる。主にフッ化水素の作用により、多結晶シリコンの表面がエッチングされ該表面に存在する酸化膜が除去される。一方で、主に硝酸の作用により、多結晶シリコンの表面に新たな酸化膜が形成される。酸化膜の除去と、酸化膜の形成と、が同時に進行することにより、多結晶シリコンがエッチングされ、多結晶シリコンの表面に付着した汚染物質および多結晶シリコンに取り込まれた汚染物質が除去される。汚染物質には、有機物、金属および樹脂等が含まれる。
除去された汚染物質はフッ硝酸中に存在するため、除去された汚染物質の一部は硝酸の作用による酸化膜形成時に多結晶シリコンの酸化膜に取り込まれ得る。使用した薬液を新しい薬液に交換することにより、この酸化膜に取り込まれる汚染物質を減少させることができる。しかし、薬液を交換すると、洗浄に用いる薬液の使用量が増加し得る。
そのため、薬液の使用量および洗浄効率を考慮すると、第一洗浄工程S11において1回~5回薬液を交換し多結晶シリコンと接触させることが好ましく、2回~3回交換することがより好ましい。また、薬液を交換すると同時に、フッ硝酸に対する、硝酸およびフッ化水素の濃度を変更してもよい。
第一洗浄工程S11は、常圧で、10℃以上の液温で実施してもよい。多結晶シリコンの表面に存在する酸化膜の除去性を高くし、且つ、酸化膜を含むシリコン層の除去厚さをコントロールする観点から、フッ硝酸の液温は10~35℃が好ましく、15~30℃がより好ましい。
<1-1-2.第二洗浄工程S12>
第二洗浄工程S12では、第一洗浄工程S11を経た多結晶シリコンに対して、フッ酸を含む非酸化性薬液を接触させる。本明細書において、フッ酸はフッ化水素の水溶液を意味する。また、非酸化性薬液とは、多結晶シリコンを酸化させない性質を示す薬液を意味する。すなわち、フッ酸を含む非酸化性薬液は、酸化膜を新たに形成させることなく、除去する性質を有する。フッ酸を含んでいても多結晶シリコンを酸化させる性質、すなわち、酸化膜を形成する薬液は、第二洗浄工程S12で用いられる非酸化性薬液には含まれない。非酸化性薬液は、フッ酸からなる非酸化性薬液であってもよく、フッ酸に非酸化性の酸である、塩酸および硫酸などを混合した薬液であってもよい。ここで、非酸化性の酸とは、水素イオン以外の電離生成物が酸化剤として働かない酸、つまり、水素イオンよりイオン化傾向の小さい金属と反応しない酸のことを示す。
洗浄工程S1が第一洗浄工程S11および第二洗浄工程S12を含む場合、フッ硝酸による洗浄のみを含む場合と比較して、フッ硝酸によって形成される酸化膜(通常、数nmの厚み)への汚染物質の取込みを低減することができる。そのため、洗浄に用いる薬液の使用量、廃液および排ガスの発生量を低減し、それらを処理するためのコストを削減することができる。また、洗浄工程S1が第一洗浄工程S11および第二洗浄工程S12を含む場合、フッ酸による洗浄の後にフッ硝酸による洗浄を組み合わせる場合と比較して、多結晶シリコンの内部に取り込まれた汚染物質が残存する可能性を低減することができる。以上のように、第一洗浄工程S11で形成された酸化膜を第二洗浄工程S12にて除去することにより、第一洗浄工程S11において酸化膜形成時に取り込まれた汚染物質を除去することができる。これにより、効率的に汚染物質を除去することができる。それゆえ、多結晶シリコンのエッチング量を減らしつつも、純度の高い多結晶シリコンを得ることができる。
非酸化性薬液は、フッ化水素を1~10質量%含むことが好ましく、1~6質量%含むことがより好ましい。フッ化水素の濃度が1質量%以上であれば、十分に酸化膜を除去することができる。フッ化水素の濃度が10質量%以下であれば、非酸化性薬液と多結晶シリコンの反応する速度のコントロールが容易となる。また、コストを抑えることができる。非酸化性薬液がフッ酸に非酸化性酸を混合した薬液である場合、非酸化性の酸は0.5~10質量%含むことが好ましく、1~6質量%含むことがより好ましい。
第二洗浄工程S12は、常圧で、10℃以上の液温で実施してもよい。多結晶シリコンの表面に存在する酸化膜の除去性を高くする観点から、フッ酸を含む非酸化性薬液の液温は10~50℃であることが好ましく、15~40℃であることがより好ましい。
第二洗浄工程S12において、多結晶シリコンに非酸化性薬液を接触させる具体的な方法としては、上述の第一洗浄工程S11における多結晶シリコンにフッ硝酸を接触させる方法と同様の方法を用いることができる。また、第二洗浄工程S12は第一洗浄工程S11と同様に、薬液を交換しながら複数回行うことが好ましい。
<1-1-3.第三洗浄工程>
第三洗浄工程S13では、第二洗浄工程S12を経た多結晶シリコンの表面に酸化膜を形成させる。第三洗浄工程S13では、多結晶シリコンの表面に酸化膜を形成させるために、多結晶シリコンに対して、フッ硝酸を接触させてもよい。
第二洗浄工程S12において酸化膜を除去された多結晶シリコンは大気中で徐々に酸化膜を形成し得る。大気中で徐々に形成された酸化膜は多結晶シリコンの表面に不均一に発生し、これにより汚染物質を取り込む場合もある。そこで、第三洗浄工程S13において所期の厚み(通常、数nmの厚み)の酸化膜を形成することにより、大気中の汚染物質を取り込むことを、より抑制できる。なお、すでに第一洗浄工程S11および第二洗浄工程S12によって汚染物質がかなり除去されているので、第三洗浄工程S13で形成した酸化膜内に汚染物質が残存するおそれはほとんどない。
第三洗浄工程S13において酸化膜を形成する方法としては、フッ硝酸を接触させる方法、オゾン水と接触させる処理、および過酸化水素を含む酸水溶液と接触させる方法が挙げられる。なかでも、フッ硝酸を接触させる方法は、第一洗浄工程S11および第二洗浄工程S12と同様の装置構成で行うことができるため、特別な設備を必要としないため好ましい。さらに、フッ硝酸を接触させる方法は、多結晶シリコンとフッ硝酸との接触時間、および、フッ硝酸の濃度、を変更することにより、酸化膜を形成する速度(酸化膜の形成および除去のバランス)および酸化膜の厚みを調整することができるため好ましい。
第三洗浄工程S13は、第一洗浄工程S11および第二洗浄工程S12と同様に、複数回、具体的には1回~5回、より好ましくは2回~3回、第三洗浄工程S13で使用する薬液を交換して実施してもよい。この際、薬液を交換すると同時に、第三洗浄工程S13に用いる薬液の配合成分の濃度を変更しても良い。
第三洗浄工程S13は、常圧において使用する薬液は10℃以上の液温で実施してもよい。また、第一洗浄工程S11と同様、フッ硝酸を接触させる方法であれば、薬液の液温は10~35℃であることが好ましく、15~30℃であることがより好ましい。
フッ硝酸を接触させる方法であれば、その詳細は、前記第一洗浄工程S11と同様に行えばよい。しかし、この工程は、フッ硝酸における硝酸による、多結晶シリコンの表面への酸化膜形成作用を発揮させることが目的であるため、該硝酸の濃度は、第一洗浄工程S11と同様に40~70質量%の高濃度であることが好ましい。一方、エッチングは、通常、第一洗浄工程S11に対して補完的に施されればよいため、フッ化水素濃度は、第一洗浄工程S11ほどに高濃度まで設定しなくてもよく、0.05~1.5質量%含むことが好ましい。酸化膜の十分な形成と、エッチング量の調整と、の観点から、フッ硝酸は、硝酸を50~70質量%含み、フッ化水素を0.1~1.0質量%含むことがより好ましい。
洗浄工程S1は、第一洗浄工程S11と、第二洗浄工程S12と、を含むことが好ましい。この場合、第一洗浄工程S11において、多結晶シリコンに対して、フッ硝酸を接触させるので、多結晶シリコンの表面で酸化膜の除去と酸化膜の形成とが同時に進行する。これにより、多結晶シリコンがエッチングされ、多結晶シリコンの表面に付着した汚染物質および多結晶シリコンに取り込まれた汚染物質が除去される。
また、第二洗浄工程S12において、多結晶シリコンに対して、フッ酸を含む非酸化性薬液を接触させるので、第一洗浄工程S11で形成された酸化膜が除去されることにより、第一洗浄工程S11において酸化膜形成時に取り込まれた汚染物質が除去される。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンの不純物濃度をより低下させることができる。
また、洗浄工程S1は、第一洗浄工程S11および第二洗浄工程S12に加えて、第三洗浄工程S13を更に含むことが好ましい。この場合、第三洗浄工程S13後の多結晶シリコンが、その後の酸化により大気中の汚染物質を取り込むことを抑制できる。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンの表面不純物濃度を更に低下させることができる。
<1-1-4.その他の洗浄工程>
洗浄工程S1は、第一洗浄工程S11の前に、予備洗浄工程を更に含んでもよい。予備洗浄工程は、フッ酸を含む非酸化性薬液を用いた予備洗浄工程であることが好ましい。フッ酸を含む非酸化性薬液を用いて予備洗浄を施すことにより、多結晶シリコンの表面に取り込まれた汚染物質を除去できる。なかでも、第一洗浄工程S11を施す前に表面に形成された自然酸化膜に含有した汚染物質をあらかた除去できるため、より純度の高い多結晶シリコンを製造しやすくなる。また、予備洗浄工程にてフッ酸を含む非酸化性薬液を用いて洗浄する条件は、第二洗浄工程S12と同様である。
洗浄工程S1は、第一洗浄工程S11前、第一洗浄工程S11と第二洗浄工程S12との間、第二洗浄工程S12と第三洗浄工程S13との間、および/または第三洗浄工程S13の後に、水洗工程を含んでもよい。水洗工程を含むことにより次工程への薬液の持込みを抑制することができ、且つ、多結晶シリコンの表面に付着した汚染物質を取り除くことができる。一方、水洗することにより次工程に水分を持込み、薬液に対するフッ硝酸またはフッ酸の濃度が低下し、それにより、薬液による汚染物質除去能が低下する場合もある。この観点から、水洗工程を省略してもよい。また、水洗工程に用いる水は、水中に含まれる汚染物質が少ない、精製した水を用いることが好ましく、超純水を用いることがより好ましい。
<1-2.熱風乾燥工程>
熱風乾燥工程S2では、洗浄工程S1後の多結晶シリコンに対して、100℃以上180℃以下の熱風をガス線速1m/s以上で吹き付ける。100℃未満の熱風を吹き付ける場合には、シラノール基の除去が十分ではなく、「ウォーターマーク」の発生を低減する効果が十分に発揮されない。一方、180℃を超える熱風を吹き付ける場合には、「ウォーターマーク」の発生を低減する効果に顕著性がなくなる。また、熱風ガスの線速が1m/s未満であると、シラノール基の除去が十分ではなく、「ウォーターマーク」の発生を低減する効果が十分に発揮されない。
(熱風乾燥工程の熱風温度条件)
熱風乾燥工程S2における熱風の温度は、110℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンを短時間で効率的に乾燥させることができる。また、熱風乾燥工程S2における熱風の温度は、170℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンの表面および内部の温度が過度に上昇することを防ぐことができる。そのため、熱風乾燥工程S2後の冷風乾燥工程S3において、多結晶シリコンの表面温度を速やかに低下させることができる。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生を更に低減することができる。また、熱風乾燥工程S2および冷風乾燥工程S3に要する時間を短縮することができる。
さらに、乾燥工程では、加熱温度と加熱時間がコストに重要な影響を与える因子となる。熱風の温度と、熱風を吹き付けるガスの線速を本発明の範囲とすることにより、ウォーターマークが発生せず、生産性がよく経済的な乾燥工程とすることができる。
(熱風乾燥工程のガス線速条件)
熱風乾燥工程S2におけるガス線速は、5m/s以下であることが好ましく、3m/s以下であることがより好ましい。この場合、熱風乾燥工程S2で使用される装置の操作性を向上し、熱風乾燥工程S2の乾燥コストを削減することができる。また、熱風乾燥工程S2におけるガス線速は、1.5m/s以上であることが好ましく、2m/s以上であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンを短時間で効率的に乾燥させることができる。
なお、この線速は、熱風乾燥工程(熱風乾燥部)で供給する単位時間当たりのガス供給量(体積/時間)を、多結晶シリコン破砕片が存在している箇所の面積で除して求めた値である。そのため、この線速で熱風が多結晶シリコン破砕片に当たっているものと考えられる。
(熱風乾燥工程の乾燥時間)
多結晶シリコンに対して熱風が吹き付けられる時間は、特に制限されるものではないが、長軸が20mm以上90mm以下、且つ、短軸が10mm以上60mm以下の多結晶シリコン破砕片であれば、以下の範囲であることが好ましい。具体的には、10分以上であることが好ましく、20分以上であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンを確実に乾燥させることができる。また、多結晶シリコンに対して熱風が吹き付けられる時間は、60分以下であることが好ましく、50分以下であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンの表面および内部の温度が過度に上昇することを防ぐことができる。そのため、熱風乾燥工程S2後の冷風乾燥工程S3において、多結晶シリコンの表面温度を速やかに低下させることができる。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生を更に低減することができる。また、熱風乾燥工程S2および冷風乾燥工程S3に要する時間を短縮することができる。
(熱風乾燥工程のその他の条件)
洗浄工程S1に供される多結晶シリコンが複数の多結晶シリコン破砕片を含む場合、熱風乾燥工程S2に供される多結晶シリコンも、複数の多結晶シリコン破砕片を含んでよい。熱風乾燥工程S2では、複数の多結晶シリコン破砕片が、コンベヤ上に広げられた状態で運搬されてもよい。この場合、例えば複数の多結晶シリコン破砕片が籠などの中で積み重ねられた状態と比較して、複数の多結晶シリコン破砕片と熱風とが直接接触し易くなる。これにより、複数の多結晶シリコン破砕片を短時間で効率的に乾燥させることができる。熱風乾燥工程S2で使用されるコンベヤは、例えばベルトコンベヤまたはチェーンコンベヤであってよい。
熱風乾燥工程S2において、コンベヤにおける複数の多結晶シリコン破砕片と接触する箇所は、耐熱性材料で構成されることが好ましく、耐熱性および非粘着性を有する材料で構成されることがより好ましい。これら材料は、添加剤の配合量が少ないものが好ましい。例えば、後述する図2において、熱風用コンベヤ21における多結晶シリコンP2と接触する箇所には、該耐熱性樹脂からなる、耐熱樹脂板211が配置されることが好ましい。
該耐熱材料は、具体的には、融点が150℃以上である樹脂からなる部材であることが好ましい。熱風の温度の上限は180℃であるが、多結晶シリコン破砕片の温度が熱風温度と同じ温度となるには相当の時間を要する。そのため、融点が150℃以上の樹脂製部材を使用することがきる。ただし、耐久性を考慮すると、該樹脂の融点は融点が200℃以上の樹脂を使用することが好ましく、さらに融点が300℃以上の樹脂を使用することが好ましい。融点の上限は、特に制限されるものではないが、添加剤の含有量が少なく(添加剤による多結晶シリコンの汚染を低減できるため)、汎用で入手し易い樹脂が好ましいことを考えれば、400℃であることが好ましい。
この場合、多結晶シリコン破砕片の表面に付着する不純物を低減することができる。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンの表面不純物濃度を低下させることができる。融点が150℃以上であって、耐熱性および非粘着性を有する樹脂材料の例としては、フッ素含有樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE;融点327℃)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF;融点151~178℃)、エンジニアリングプラスチック(スーパーエンジニアリングプラスチックを含む)、例えば、ポリアミド(融点;220~260℃)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK;融点334℃)およびポリフェニレンサルファイド(PPS;融点278℃)が挙げられる。この中でも、耐久性に優れ、かつ添加剤の配合量が少なく、多結晶シリコンの汚染を低減できるという点で、PTFE、又はPEEKを使用することが好ましい。
熱風は、多結晶シリコンの上方から吹き付けられることが好ましい。この場合、多結晶シリコンを支持する支持体、例えばコンベヤから、熱風により不純物が発散される場合であっても、該不純物は下方へ強制輸送される。したがって、不純物が多結晶シリコンの表面に付着する可能性を低減し、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンの表面不純物濃度を低下させることができる。
熱風は、空気を含むことが好ましい。この場合、多結晶シリコンを乾燥させるためのコストを削減することができる。特に、下記に詳述する清浄度を満足する空気であれば、より一層、高品質の多結晶シリコンを得ることができる。また、熱風は不活性ガスを含むことが好ましく、不活性ガスのみからなることがより好ましい。この場合、推定ではあるが、シラノール基同士の反応、およびシラノール基と雰囲気ガス中の有機物および無機物との反応をより一層抑制することができ、多結晶シリコンの表面に形成される酸化膜厚の不均一性を低減することができる。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生を低減することができる。
熱風の清浄度は、クラス1000以下であることが好ましく、クラス100以下であることがより好ましい。この場合、熱風に含まれる不純物が多結晶シリコンの表面に付着する可能性を低減し、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンの表面不純物濃度を低下させることができる。このような清浄度の熱風は、例えばエアフィルタを通過させることにより得ることができる。
なお、本明細書において、「清浄度」とは、米国連邦規格(FED-STD-209)による清浄度を意味する。したがって、「清浄度がクラス1000以下である」とは、1立方フィート中に存在する0.5μm以上の大きさの粒子が1000個以下であることを意味する。また、「清浄度がクラス100以下である」とは、1立方フィート中に存在する0.5μm以上の大きさの粒子が100個以下であることを意味する。
以上のような方法で、洗浄後の多結晶シリコン破砕片に熱風を吹き当てることが好ましい。そして、熱風乾燥工程における多結晶シリコン破砕片の表面到達温度は90℃以上160℃以下となることが好ましい。この範囲を満足することにより、ウォーターマークの発生を低減し、かつ十分な乾燥を実施できる。ウォーターマークの発生低減効果、乾燥および後工程のし易さ等を考慮すると、該表面到達温度は、110℃以上150℃以下となることがより好ましく、120℃以上150℃以下となることが更に好ましい。なお、熱風乾燥工程における多結晶シリコン破砕片の表面到達温度は、例えば後述する実施例に記載の測定方法により測定することができる。
<1-3.冷風乾燥工程>
冷風乾燥工程S3では、熱風乾燥工程S2後の多結晶シリコンに対して、0℃以上40℃以下の冷風をガス線速1m/s以上で吹き付ける。冷風の温度が0℃未満である場合には、ウォーターマーク発生の低減効果の顕著性がなくなり、また、冷風を発生させる冷却装置の負荷が大きくなるため好ましくない。冷風の温度が40℃を超える場合には、多結晶シリコンの表面温度を短時間で低下させることが難しくなり、生産性が低下するだけでなく、ウォーターマーク発生の低減効果が低下するため好ましくない。また、冷風を吹き付けるガスの線速が1m/s未満となる場合には、冷却効果が十分でなくなり、ウォーターマーク発生の低減効果が低下するため好ましくない。
(冷風乾燥工程の冷風温度条件)
冷風乾燥工程S3における冷風の温度は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンが必要以上に冷却される可能性を低減し、多結晶シリコンの表面に空気中の水分が凝結して付着することを防ぐことができる。また、冷風乾燥工程S3に使用される冷却装置の負荷を低減するとともに、冷風乾燥工程S3に要する電力を削減することができる。また、冷風乾燥工程S3における冷風の温度は、35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンの表面温度を短時間で効率的に低下させ、多結晶シリコンのウォーターマークの発生をより確実に低減することができる。
(冷風乾燥工程のガス線速条件)
冷風乾燥工程S3におけるガス線速は、5m/s以下であることが好ましく、3m/s以下であることがより好ましい。この場合、冷風乾燥工程S3で使用される装置の操作性を向上し、冷風乾燥工程S3に使用される冷却装置の負荷を低減することができる。また、冷風乾燥工程S3におけるガス線速は、1.5m/s以上であることが好ましく、2m/s以上であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンの表面温度を短時間で効率的に低下させ、多結晶シリコンのウォーターマークの発生をより確実に低減することができる。
なお、この線速は、冷風乾燥工程(冷風乾燥部)で供給する単位時間当たりのガス供給量(体積/時間)を、多結晶シリコン破砕片が存在している箇所の面積で除して求めた値である。そのため、この線速で冷風が多結晶シリコン破砕片に当たっているものと考えられる。
(冷風乾燥工程の時間)
多結晶シリコンに対して冷風が吹き付けられる時間は、特に制限されるものではないが、長軸が20mm以上90mm以下、且つ、短軸が10mm以上60mm以下の多結晶シリコン破砕片であれば、以下の範囲であることが好ましい。具体的には、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましい。この場合、多結晶シリコンの表面温度をより確実に低下させ、多結晶シリコンの表面の反応活性をより確実に低減することができる。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生をより確実に低減することができる。また、多結晶シリコンに対して冷風が吹き付けられる時間は、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましい。この場合、冷風乾燥工程S3に要する時間を短縮することができる。
(冷風乾燥工程のその他の条件)
洗浄工程S1に供される多結晶シリコンが複数の多結晶シリコン破砕片を含む場合、冷風乾燥工程S3に供される多結晶シリコンも、複数の多結晶シリコン破砕片を含んでよい。冷風乾燥工程S3では、複数の多結晶シリコン破砕片が、コンベヤ上に広げられた状態で運搬されてもよい。
この場合、例えば複数の多結晶シリコン破砕片が籠などの中で積み重ねられた状態と比較して、複数の多結晶シリコン破砕片と冷風とが直接接触し易くなる。これにより、複数の多結晶シリコン破砕片の表面温度を短時間で効率的に低下させることができる。そのため、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生を更に低減することができる。冷風乾燥工程S3で使用されるコンベヤは、例えばベルトコンベヤまたはチェーンコンベヤであってよい。
冷風乾燥工程S3において、複数の多結晶シリコン破砕片が、コンベヤ上に広げられた状態で運搬される場合、コンベヤにおける複数の多結晶シリコン破砕片と接触する箇所は、耐熱性および非粘着性を有する材料で構成されることがより好ましい。これら材料は、添加剤の配合量が少ないものが好ましい。例えば、後述する図2において、冷風用コンベヤ31における多結晶シリコンP3と接触する箇所には、該耐熱性樹脂からなる、耐熱樹脂板311が配置されることが好ましい。
該耐熱性および非粘着性を有する材料は、具体的には、融点が150℃以上である樹脂からなる部材であることが好ましい。ここで、冷風乾燥工程においては、コンベヤにおける多結晶シリコン破砕片と接触する箇所は、融点の低い樹脂であってもよい。しかし、熱風乾燥工程から供給される多結晶シリコンは、高温である場合もあるので、コンベヤにおける多結晶シリコン破砕片と接触する箇所は、融点が150℃以上の樹脂製であることが好ましい。
そのため、冷風乾燥工程のコンベヤにおける多結晶シリコン破砕片と接触する箇所は、上記の熱風乾燥工程で説明した同じ理由で、同様の樹脂からなる部材であることが好ましい。好ましい融点の範囲も前記範囲と同じである。
冷風は、多結晶シリコンの上方から吹き付けられることが好ましい。この場合、多結晶シリコンを支持する支持体、例えばコンベヤから、冷風により不純物が発散される場合であっても、該不純物は下方へ強制輸送される。したがって、不純物が多結晶シリコンの表面に付着する可能性を低減し、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンの表面不純物濃度を低下させることができる。
冷風は、空気を含むことが好ましい。この場合、多結晶シリコンを乾燥させるためのコストを削減することができる。特に、下記に詳述する清浄度を満足する空気であれば、より一層、高品質の多結晶シリコンを得ることができる。また、冷風は不活性ガスを含むことが好ましく、不活性ガスのみからなることがより好ましい。この場合、推定ではあるが、シラノール基同士の反応、シラノール基と雰囲気ガス中の有機物や無機物との反応をより一層抑制することができ、多結晶シリコンの表面に形成される酸化膜厚の不均一性を低減することができる。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生を低減することができる。
冷風の清浄度は、クラス1000以下であることが好ましく、クラス100以下であることがより好ましい。この場合、冷風に含まれる不純物が多結晶シリコンの表面に付着する可能性を低減し、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンの表面不純物濃度を低下させることができる。このような清浄度の冷風は、例えばエアフィルタを通過させることにより得ることができる。
以上のような方法で、熱風乾燥工程後の多結晶シリコン破砕片に冷風を吹き当てることが好ましい。そして、冷風乾燥工程後(直後)の多結晶シリコン破砕片の表面温度は、10℃以上35℃以下となることが好ましい。この範囲を満足することにより、ウォーターマークの発生をより一層効率よく低減できる。ウォーターマークの発生低減効果、冷却効率等を考慮すると、該表面温度は、20℃以上30℃以下となることがより好ましい。なお、冷風乾燥工程後(直後)の多結晶シリコン破砕片の表面温度は、例えば後述する実施例に記載の測定方法により測定することができる。
上記の方法によれば、熱風乾燥工程S2後の冷風乾燥工程S3により、多結晶シリコンの表面温度を低下させ、多結晶シリコンの表面の反応活性を低減することができる。したがって、冷風乾燥工程S3後に得られる多結晶シリコンについて、ウォーターマークの発生を低減することができる。
〔2.多結晶シリコンの清浄化装置〕
図2は、本発明の一実施形態に係る多結晶シリコンP1の清浄化装置1を示す概略図である。図2に示すように、清浄化装置1は、洗浄部10と、熱風乾燥部20と、冷風乾燥部30と、を備える。また、図2に示す例では、清浄化装置1の対象となる多結晶シリコンP1は、複数の多結晶シリコン破砕片を含む。ただし、本発明はこれに限定されず、清浄化装置1の対象となる多結晶シリコンP1は、多結晶シリコンロッドであってもよい。
以下の説明では、洗浄部10による処理を経る前の多結晶シリコンを多結晶シリコンP1と称し、洗浄部10で洗浄後の多結晶シリコンを多結晶シリコンP2と称する。また、熱風乾燥部20で熱風乾燥後の多結晶シリコンを多結晶シリコンP3と称し、冷風乾燥部30で冷風乾燥後の多結晶シリコンを多結晶シリコンP4と称する。また、熱風乾燥部20を基準として洗浄部10が位置する方向を前側と称し、冷風乾燥部30が位置する方向を後側と称する。また、図2における重力が働く方向を下方向と称し、下方向に対して逆方向を上方向と称する。
<2-1.洗浄部>
洗浄部10は、多結晶シリコンを洗浄する。図2に示す例では、洗浄部10は、第一洗浄部11と、第二洗浄部12と、第三洗浄部13と、水洗部14と、を備える。第一洗浄部11では、多結晶シリコンP1に対して、フッ硝酸を接触させる。第一洗浄部11では、フッ硝酸が多結晶シリコンP1と均一に接触することが好ましい。第一洗浄部11は、多結晶シリコンP1を収容する籠およびフッ硝酸を収容する洗浄槽を備える。あるいは、第一洗浄部11は、フッ硝酸を散布するシャワー(図示せず)を備えていてもよい。第一洗浄部11を構成する部品は、フッ硝酸により腐食されず、且つ、多結晶シリコンP1を汚染しない素材であることが好ましい。例えば、第一洗浄部11を構成する部品は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリフッ化ビニリデン等の樹脂製であることが好ましい。
第二洗浄部12では、第一洗浄部11による処理を経た多結晶シリコンP1に対して、フッ酸を含む非酸化性薬液を接触させる。第二洗浄部12では、フッ酸を含む非酸化性薬液が多結晶シリコンと均一に接触することが好ましい。第二洗浄部12は、多結晶シリコンP1を収容する籠および非酸化性薬液を収容する洗浄槽を備える。あるいは、第二洗浄部12は、非酸化性薬液を散布するシャワー(図示せず)を備えていてもよい。第二洗浄部12を構成する部品は、フッ酸を含む非酸化性薬液により腐食されず、且つ、多結晶シリコンを汚染しない素材であることが好ましい。例えば、第二洗浄部12を構成する部品は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリフッ化ビニリデン等の樹脂製であることが好ましい。
第三洗浄部13では、第二洗浄部12による処理を経た多結晶シリコンP1に対して、フッ硝酸を接触させる。第三洗浄部13では、フッ硝酸が多結晶シリコンP1と均一に接触し、略均一な酸化膜を形成することが好ましい。第三洗浄部13は、第一洗浄部11と同様の籠および洗浄槽を備える。あるいは、第三洗浄部13は、フッ硝酸を散布するシャワー(図示せず)を備えていてもよい。第三洗浄部13を構成する部品はフッ硝酸により腐食されず、且つ、多結晶シリコンを汚染しない素材であることが好ましい。例えば、第三洗浄部13を構成する部品は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリフッ化ビニリデン等の樹脂製であることが好ましい。
水洗部14では、第三洗浄部13による処理を経た多結晶シリコンP1に対して、洗浄水を接触させ、多結晶シリコンP1を水洗する。水洗部14では、洗浄水として、純水、超純水または水道水を使用することができる。多結晶シリコンP2の表面不純物濃度を低下させる観点から、洗浄水は、純水または超純水であることが好ましい。
水洗部14では、洗浄水が多結晶シリコンP1と均一に接触することが好ましい。水洗部14は、多結晶シリコンP1を収容する籠および洗浄水を収容する洗浄槽を備える。あるいは、水洗部14は、洗浄水を散布するシャワー(図示せず)を備えていてもよい。水洗部14を構成する部品は、第三洗浄部13から持ち込まれるフッ硝酸により腐食されず、且つ、多結晶シリコンP1を汚染しない素材であることが好ましい。例えば、水洗部14を構成する部品は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリフッ化ビニリデン等の樹脂製であることが好ましい。
なお、図2に示す例では、第一洗浄部11、第二洗浄部12、第三洗浄部13および水洗部14が、それぞれ1つの洗浄槽を備える。しかし、本発明はこれに限定されず、第一洗浄部11、第二洗浄部12、第三洗浄部13および水洗部14は、それぞれ複数の洗浄槽を備えてもよい。
また、水洗部14は、第三洗浄部13の後だけでなく、第一洗浄部11と第二洗浄部12との間または第二洗浄部12と第三洗浄部13との間にも設けられてもよい。この場合、各洗浄部への薬液の持込みを低減することができる。
また、洗浄部10は、予備洗浄部(図示せず)を更に備えてもよい。予備洗浄部では、第一洗浄部11による処理を施される前の多結晶シリコンP1に対して、予め予備洗浄薬液を接触させる。予備洗浄部では、予備洗浄薬液が、多結晶シリコンと均一に接触することが好ましく、予備洗浄薬液としては、フッ酸を含む非酸化性薬液が好ましい。予備洗浄薬液として、フッ酸を含む非酸化性薬液を用いる場合において、洗浄構造の詳細は、第二洗浄部12と同様であることが好ましい。
<2-2.熱風乾燥部>
熱風乾燥部20は、洗浄部10で洗浄後の多結晶シリコンP2に対して、100℃以上180℃以下の熱風をガス線速1m/s以上で吹き付ける。熱風乾燥部20は、熱風用コンベヤ21と、熱風供給機22と、を備える。熱風用コンベヤ21は、多結晶シリコンP2を広げた状態で運搬する。熱風用コンベヤ21は、例えばベルトコンベヤまたはチェーンコンベヤであってよい。熱風用コンベヤ21における多結晶シリコンが接触する箇所には、耐熱樹脂板211が取り付けられている。多結晶シリコンP2は、耐熱樹脂板211の上に配置される。
熱風用コンベヤ21における熱風が吹き付けられる部分の長さL1は、熱風を吹き付ける時間を十分に確保できる長さにすればよい。また、多結晶シリコンP2の運搬速度も多結晶シリコンに十分な熱風が吹き付けられる時間を確保できるように調整すればよい。具体的には、熱風が吹き付けられる部分の長さL1は、10分以上60分以下の時間、多結晶シリコンP2に熱風が吹き付けられるように調整することが好ましい。また、運搬速度も、多結晶シリコンP2に熱風が10分以上60分以下吹き付けられるように調整することが好ましい。
熱風用コンベヤ21における多結晶シリコンP2と接触する箇所(図2の例では耐熱樹脂板211)は、融点が150℃以上の樹脂製であることが好ましく、具体的には、PFTE製またはPEEK製であることが好ましい。この場合、多結晶シリコンP2の表面に付着する不純物を低減することができる。したがって、多結晶シリコンP3の表面不純物濃度を低下させることができる。
熱風供給機22は、100℃以上180℃以下の熱風を供給できる任意の送風機である。熱風供給機22には、エアフィルタが取り付けられることが好ましい。この場合、多結晶シリコンP2に吹き付けられる熱風に含まれる不純物を除去し、例えば熱風の清浄度をクラス1000以下、好ましくはクラス100以下にすることができる。したがって、熱風に含まれる不純物が多結晶シリコンP2の表面に付着する可能性を低減し、多結晶シリコンP3の表面不純物濃度を低下させることができる。
なお、図示はしていないが、清浄度の高い熱風を供給するには、以下のような態様を取ることもできる。例えば、熱風とする前のガスを、エアフィルタに通した後、熱風供給機22に送り、熱風に変換する。次いで、該熱風をさらにエアフィルタに通した後、多結晶シリコンP2に吹き付ける方法である。こうすることにより、清浄度の高い熱風をより効率よく多結晶シリコンP2に吹き付けることができる。
熱風供給機22は、熱風用コンベヤ21の上方に位置する。したがって、熱風供給機22は、熱風用コンベヤ21に広げられた多結晶シリコンP2の上方から、熱風を吹き付けることができる。この場合、熱風用コンベヤ21から、熱風により不純物が発散される場合であっても、該不純物は下方へ強制輸送される。したがって、不純物が多結晶シリコンP2の表面に付着する可能性を低減し、多結晶シリコンP3の表面不純物濃度を低下させることができる。
<2-3.冷風乾燥部>
冷風乾燥部30は、熱風乾燥部20で熱風乾燥後の多結晶シリコンP3に対して、0℃以上40℃以下の冷風をガス線速1m/s以上で吹き付ける。冷風乾燥部30は、冷風用コンベヤ31と、冷風供給機32と、を備える。冷風用コンベヤ31は、多結晶シリコンP3を広げた状態で運搬する。冷風用コンベヤ31は、例えばベルトコンベヤまたはチェーンコンベヤであってよい。冷風用コンベヤ31における多結晶シリコンが接触する箇所には、耐熱樹脂板311が取り付けられている。なお、図2では省略されているが、冷風用コンベヤ31の下面にも、耐熱樹脂板311が取り付けられている。多結晶シリコンP3は、耐熱樹脂板311の上に配置される。
冷風用コンベヤ31における冷風が吹き付けられる部分の長さL2は、冷風を吹き付ける時間を十分に確保できる長さにすればよい。また、多結晶シリコンP3の運搬速度も多結晶シリコンに十分な冷風が吹き付けられる時間を確保できるように調整すればよい。具体的には、冷風が吹き付けられる部分の長さL2は、5分以上30分以下の時間、多結晶シリコンP3に冷風が吹き付けられるように調整することが好ましい。また、運搬速度も、多結晶シリコンP3に熱風が5分以上30分以下吹き付けられるように調整することが好ましい。
冷風用コンベヤ31における多結晶シリコンP3と接触する箇所(図2の例では耐熱樹脂板311)は、融点が150℃以上の樹脂製であることが好ましく、具体的には、PFTE製またはPEEK製であることが好ましい。この場合、多結晶シリコンP3の表面に付着する不純物を低減することができる。したがって、多結晶シリコンP4の表面不純物濃度を低下させることができる。
冷風供給機32は、0℃以上40℃以下の冷風を供給できる任意の送風機である。冷風供給機32には、エアフィルタが取り付けられることが好ましい。この場合、多結晶シリコンP3に吹き付けられる冷風に含まれる不純物を除去し、例えば冷風の清浄度をクラス1000以下、好ましくはクラス100以下にすることができる。したがって、冷風に含まれる不純物が多結晶シリコンP3の表面に付着する可能性を低減し、多結晶シリコンP4の表面不純物濃度を低下させることができる。
なお、図示はしていないが、清浄度の高い冷風を供給するには、以下のような態様を取ることもできる。例えば、冷風とする前のガスを、エアフィルタに通した後、冷風供給機32に送り、冷風に変換する。次いで、該冷風をさらにエアフィルタに通した後、多結晶シリコンP3に吹き付ける方法である。こうすることにより、清浄度の高い冷風をより効率よく多結晶シリコンP3に吹き付けることができる。
冷風供給機32は、冷風用コンベヤ31の上方に位置する。したがって、冷風供給機32は、冷風用コンベヤ31に広げられた多結晶シリコンP3の上方から、冷風を吹き付けることができる。この場合、冷風用コンベヤ31から、冷風により不純物が発散される場合であっても、該不純物は下方へ強制輸送される。したがって、不純物が多結晶シリコンP3の表面に付着する可能性を低減し、多結晶シリコンP4の表面不純物濃度を低下させることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合せて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例、比較例においては、対象とする多結晶シリコンP1として、同程度の大きさであり、かつ同じ洗浄工程で洗浄した多結晶シリコン破砕片を用いた。
<対象となる多結晶シリコン破砕片>
シーメンス法で製造した多結晶シリコンロッドを、ハンマーを用いて、長軸が20mm以上90mm以下、かつ短軸が10mm以上60mm以下の塊状に破砕した。この塊状物を、多結晶シリコンP1として、下記の洗浄工程に供した。以下の実施例・比較例では、同一の条件で製造した多結晶シリコンP1を用いた。
<洗浄工程>
この洗浄工程は、WO2019/188912の方法を採用することができる。具体的な操作は以下の通りである。
先ず、第一水洗工程として、上記多結晶シリコン破砕片をポリプロピレン製の洗浄籠に入れ、超純水と接触させた。
次に、予備洗浄工程として、多結晶シリコン破砕片が入った洗浄籠を揺動させながらフッ化水素を1質量%含むフッ酸と接触させた。
次に、第一洗浄工程として、予備洗浄後の多結晶シリコン破砕片を、硝酸含有量69質量%、フッ化水素含有量0.2質量%のフッ硝酸と接触させた。
次に、第二水洗工程として、第一洗浄工程後の多結晶シリコン破砕片を超純水と接触させた。
次に、第二洗浄工程として、第二水洗工程後の多結晶シリコン破砕片を、フッ化水素含有量5質量%のフッ酸と接触させた。
次に、第三洗浄工程として、第二洗浄工程後の多結晶シリコンを、硝酸含有量69%、フッ化水素含有量0.2質量%のフッ硝酸と接触させた。
次に、第三水洗工程として、第三洗浄工程後の多結晶シリコン破砕片を超純水と接触させた。
以下の実施例・比較例においては、前記洗浄処理した(「前記第三水洗工程」した後の)多結晶シリコン破砕片を、乾燥対象の多結晶シリコンP2とした。
〔実施例1〕
<多結晶シリコンの供給>
各乾燥工程に、前記洗浄工程により洗浄した多結晶シリコンP2を、総重量約1000kg、供給速度500kg/hとなるように供給した。
<熱風乾燥工程;熱風乾燥部>
熱風供給機22(図2に示す)から吹き付ける熱風は、以下のように準備した。先ず、ファンを用いて、空気を中性能フィルターに通し、加熱装置により該空気の温度を150℃に加熱した。そして、該空気をHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)に通し、クラス100以下となる清浄度であって、温度150℃の熱風とした。
次に、複数の多結晶シリコンP2を熱風用コンベヤ21上に広げ、移動速度200mm/分で運搬しながら、多結晶シリコンP2に対して、上記熱風を上方からガス線速2m/sで25分間吹き付けた。熱風用コンベヤ21における多結晶シリコンP2が接触する箇所は、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PTFE;融点327℃)で製造したものとした。
多結晶シリコンP2の一部にサーモラベル(登録商標)を貼り付けて、多結晶シリコンP2の表面到達温度を測定したところ、135℃であった。また、熱風乾燥工程を経た多結晶シリコンP3は、その全表面が銀白色の金属光沢を有していた。これは、多結晶シリコンP3の表面の水分が除去されていることを示す。
<冷風乾燥工程;冷風乾燥部>
冷風供給機32から吹き付ける冷風は、以下のように準備した。先ず、ファンを用いて、空気を中性能フィルターに通し、冷却装置により該空気の温度を25℃に調整した。そして、該空気をHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)に通し、クラス100以下となる清浄度であって、温度25℃の冷風とした。
次に、複数の多結晶シリコンP3を冷風用コンベヤ31上に広げ、移動速度200mm/分で運搬しながら、多結晶シリコンP3に対して、上記冷風を上方からガス線速2m/sで15分間吹き付けた。冷風用コンベヤ31における多結晶シリコンP3が接触する箇所は、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PTFE;融点327℃)で製造したものとした。
冷風乾燥工程を経た多結晶シリコンP4の表面温度を、非接触式サーモグラフィで測定したところ、25℃であった。
<ウォーターマークの観察>
上記方法で全量の多結晶シリコンを乾燥させた。乾燥直後の多結晶シリコンP4にはウォーターマークは観察されなかった。この多結晶シリコンP4を透明なポリエチレン製袋に約10kgずつ梱包した。
梱包した多結晶シリコンP4を、25℃、クラス100以下のクリールームで1ヶ月保管した。保管後の多結晶シリコンP4を確認したところ、ウォーターマークは観察されなかった。
〔実施例2〕
実施例1において、<熱風乾燥工程>での熱風の温度を110℃にしたこと、および熱風をガス線速3.0m/sで吹き付けたことを除き、実施例1と同様の操作を行い、同様の方法でウォーターマークを評価した。
なお、<熱風乾燥工程>において、多結晶シリコンP2の一部にサーモラベル(登録商標)を貼り付けて、多結晶シリコンP2の表面到達温度を測定したところ、97℃であった。また、冷風乾燥した後の多結晶シリコンP4は、その全表面が銀白色の金属光沢を有していた。これは、多結晶シリコンP4の表面の水分が除去されていることを示す。
乾燥直後の多結晶シリコンP4には、ウォーターマークは観察されなかった。さらに、1ヶ月保管後の多結晶シリコンでも、ウォーターマークは観察されなかった。
〔比較例1〕
実施例1において、<冷風乾燥工程>を行わず、<熱風乾燥工程>で得られた多結晶シリコンを自然冷却したことを除き、実施例1と同様の操作を行い、同様の方法でウォーターマークを評価した。熱風乾燥工程を経た多結晶シリコンは、その表面温度が25℃となるまでに自然冷却でかかった時間は50分間であった。
熱風乾燥工程を経た直後の多結晶シリコンには、ウォーターマークは観察されなかったが、1ヶ月保管後の多結晶シリコンには、1~8mmサイズのウォーターマークが存在していた。ウォーターマークが観察された多結晶シリコンの質量を、多結晶シリコンの全質量で除し、ウォーターマークの存在比率を算出したところ、ウォーターマークの存在比率は4.6%であった。
〔比較例2〕
実施例1において、<熱風乾燥工程>を行わず、<冷風乾燥工程>のみを行い、冷風を上方から吹き付ける時間を60分間としたことを除き、実施例1と同様の操作を行い、同様の方法でウォーターマークを評価した。
60分間冷風乾燥した後の多結晶シリコンP4は、その全表面が銀白色の金属光沢を有していた。これは、多結晶シリコンP4の表面の水分が除去されていることを示す。
この冷風乾燥直後の多結晶シリコンには、ウォーターマークは観察されなかったが、1ヶ月保管後の多結晶シリコンには、1~8mmサイズのウォーターマークが存在していた。比較例1と同様に算出したウォーターマークの存在比率は、22%であった。
1 清浄化装置
10 洗浄部
11 第一洗浄部
12 第二洗浄部
13 第三洗浄部
14 水洗部
20 熱風乾燥部
21 熱風用コンベヤ
22 熱風供給機
30 冷風乾燥部
31 冷風用コンベヤ
32 冷風供給機
P1、P2、P3、P4 多結晶シリコン
S1 洗浄工程
S11 第一洗浄工程
S12 第二洗浄工程
S13 第三洗浄工程
S2 熱風乾燥工程
S3 冷風乾燥工程

Claims (9)

  1. 多結晶シリコンを洗浄する洗浄工程と、
    前記洗浄工程後の前記多結晶シリコンに対して、100℃以上180℃以下の熱風をガス線速1m/s以上で吹き付ける熱風乾燥工程と、
    前記熱風乾燥工程後の前記多結晶シリコンに対して、0℃以上40℃以下の冷風をガス線速1m/s以上で吹き付ける冷風乾燥工程と、を含む、多結晶シリコンの清浄化方法。
  2. 前記熱風乾燥工程に供される前記多結晶シリコンは、複数の多結晶シリコン破砕片を含み、
    前記熱風乾燥工程および前記冷風乾燥工程のうちの少なくとも一方において、前記複数の多結晶シリコン破砕片は、コンベヤ上に広げられた状態で運搬される、請求項1に記載の多結晶シリコンの清浄化方法。
  3. 前記コンベヤにおける前記複数の多結晶シリコン破砕片と接触する箇所は、融点が150℃以上である樹脂製である、請求項2に記載の多結晶シリコンの清浄化方法。
  4. 前記熱風および前記冷風のうちの少なくとも一方は、前記多結晶シリコンの上方から吹き付けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の多結晶シリコンの清浄化方法。
  5. 前記熱風および前記冷風のうちの少なくとも一方は空気を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の多結晶シリコンの清浄化方法。
  6. 前記熱風および前記冷風のうちの少なくとも一方は不活性ガスを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の多結晶シリコンの清浄化方法。
  7. 前記洗浄工程は、
    前記多結晶シリコンに対して、フッ硝酸を接触させる第一洗浄工程と、
    前記第一洗浄工程を経た前記多結晶シリコンに対して、フッ酸を含む非酸化性薬液を接触させる第二洗浄工程と、を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の多結晶シリコンの清浄化方法。
  8. 多結晶シリコンを洗浄する洗浄工程と、
    前記洗浄工程後の前記多結晶シリコンに対して、100℃以上180℃以下の熱風をガス線速1m/s以上で吹き付ける熱風乾燥工程と、
    前記熱風乾燥工程後の前記多結晶シリコンに対して、0℃以上40℃以下の冷風をガス線速1m/s以上で吹き付ける冷風乾燥工程と、を含む、清浄化多結晶シリコンの製造方法。
  9. 多結晶シリコンを洗浄する洗浄部と、
    前記洗浄部で洗浄後の前記多結晶シリコンに対して、100℃以上180℃以下の熱風をガス線速1m/s以上で吹き付ける熱風乾燥部と、
    前記熱風乾燥部で熱風乾燥後の前記多結晶シリコンに対して、0℃以上40℃以下の冷風をガス線速1m/s以上で吹き付ける冷風乾燥部と、を含む、多結晶シリコンの清浄化装置。
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