JP7467925B2 - 熱伝導性グリース用充填剤、熱伝導性グリース、およびこれらの製造方法 - Google Patents

熱伝導性グリース用充填剤、熱伝導性グリース、およびこれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導性グリース用充填剤、熱伝導性グリース、およびこれらの製造方法に関する。
近年、半導体デバイスのパワー密度上昇に伴い、放熱材料にはより高度な放熱特性が求められている。デバイスの放熱を実現する材料としては、サーマルインターフェースマテリアル(TIM:Thermal Interface Material)と呼ばれる材料があり、その使用量は急速に拡大している。
電子機器に使用されている半導体部品の中には、コンピューターのCPU、ペルチェ素子、LED、インバーターなどの電源制御用パワー半導体のように、使用中に発熱をともなう電子部品がある。これらの電子部品を熱から保護し、正常に機能させるためには、熱伝導性グリースなどを介して、発生した熱をヒートスプレッダーやヒートシンクなどの放熱部品(冷却装置)へ伝導させ放熱することが重要である。熱伝導性グリースは、これら半導体部品と放熱部品を密着させるように両者の間に介在し、半導体部品の熱を放熱部品へ効率よく伝導させるために用いられるTIMの一種である。熱伝導性グリースとしては、液状炭化水素、シリコーン油、フッ素油などからなる基油に、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの金属酸化物や、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの無機窒化物や、アルミニウムや銅などの金属粉末など、熱伝導率の高い充填剤を多量に分散したグリース状組成物が知られている。
近年、電子部品を用いた電子機器の性能向上や小型化および高密度実装化が進んでおり、電力制御機器の大電力動作や電子機器の高速動作が要求され、発熱量が増大する傾向にある。このため、熱伝導性グリースにはより高い熱伝導率が求められている。
たとえば、特開2008-280516号公報は、無機粉末充填剤と基油とを含む熱伝導性グリースに特定の表面改質剤を加えることによって、無機粉末充填剤の分散性を向上させ、これにより熱伝導率などを改善する技術を開示している。
熱伝導性グリースの熱伝導率を改善するためには、充填剤同士を橋渡しする基油も重要である。たとえば、特開2007-106809号公報は、オイル状のポリオルガノシロキサンに、熱伝導性に優れた成分としてモース硬度が5以下の粒状熱伝導性フィラーと、融点が0℃~100℃の低融点合金を配合した熱伝導性グリース組成物を、発熱性電子部品と放熱体との間に設置し、0.2MPa以上で押圧することによって、界面熱抵抗を著しく低減させて熱伝導性を改善する技術を開示している。
しかしながら、今後、電子機器のさらなる性能向上や小型化および高密度実装化が進むことが予想され、より熱伝導率に優れた熱伝導性グリースの開発が望まれている。
特開2008-280516号公報 特開2007-106809号公報
本発明は、熱伝導率をさらに改善可能な熱伝導性グリース用充填剤、熱伝導性グリース、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、表面が露出した無機粉末と、無機粉末の表面が含炭素化合物の被覆膜によって覆われた表面処理粉末とを含有する熱伝導性グリース用充填剤に関する。
特に、本発明では、前記被覆膜の平均膜厚は1.0nm以上120nm以下であり、前記充填剤中の前記表面処理粉末の含有量は32質量%以上88質量%以下であることを特徴とする。
前記被覆膜の前記平均膜厚に対する膜厚のばらつきは、20%以下であることが好ましい。
前記表面が露出した無機粉末および前記表面処理粉末を構成する無機粉末は、銅、アルミニウム、銀、カーボン材料、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、シリカ、ダイヤモンドの群から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。
前記表面が露出した無機粉末と、前記表面処理粉末を構成する無機粉末とは、異なる種類の無機粉末からなることが好ましい。
前記表面が露出した無機粉末および前記表面処理粉末を構成する無機粉末の形状は、球状、紡錘形状、偏平形状、および不定形状の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の一態様は、熱伝導性グリース用充填剤と、基油とを含有する、熱伝導性グリースに関する。特に、本発明の熱伝導性グリースは、前記熱伝導性グリース用充填剤が、本発明の熱伝導性グリース用充填剤からなる。
前記熱伝導性グリース用充填剤の含有量は82質量%以上98質量%以下であり、前記基油の含有量は2質量%以上18質量%以下であることが好ましい。
前記基油は、エステル油、鉱油、合成炭化水素油、および、フッ素油の群から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。
前記エステル油は、ポリオールエステルおよび芳香族エステルからなることが好ましい。
本発明の熱伝導性グリースは、分散剤、消泡剤、さび止め剤、腐食防止剤、酸化防止剤、増粘剤、および、増ちょう剤の群から選ばれる少なくとも1種からなる添加剤を含むことができる。
本発明の一態様は、熱伝導性グリース用充填剤の製造方法に関する。特に、本発明の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法は、
大気圧下でプラズマ化された反応ガスと、キャリアガスを介して供給された炭化水素化合物とを混合し、該炭化水素化合物をラジカル化させて、ラジカル化炭化水素化合物を得るラジカル化工程と、
前記ラジカル化炭化水素化合物を、無機粉末の表面と反応させることにより、該無機粉末の表面に含炭素化合物の被覆膜が形成された表面処理粉末を得る被覆膜形成工程と、
前記表面処理粉末と、表面が露出した無機粉末とを混合して、熱伝導性グリース用充填剤を得る混合工程と、
を備え、
前記被覆膜形成工程において、前記被覆膜をその平均膜厚が1.0nm以上120nm以下となるように形成し、および、
前記混合工程において、前記熱伝導性グリース用充填剤中の前記表面処理粉末が32質量%以上88質量%以下となるように混合する、
ことを特徴とする。
前記被覆膜の前記平均膜厚に対する膜厚のばらつきを、20%以下とすることが好ましい。
前記ラジカル化工程において、前記無機粉末1gに対する前記ラジカル化炭化水素化合物の反応量が0.005g以上0.4g以下となるように、前記炭化水素化合物を供給することが好ましい。
前記ラジカル化工程の後であって前記被覆膜形成工程の前に、螺旋状のガス流によって画定され、前記ラジカル化炭化水素化合物が均一に分散した反応領域を形成する反応領域形成工程をさらに有し、前記被覆膜形成工程において、前記反応領域内に前記無機粉末を供給することが好ましい。
前記螺旋状のガス流として、酸素または空気を用いることが好ましい。
前記被覆膜形成工程において、該無機粉末の単位時間当たりの投入量を1g/分以上100g/分以下とすることが好ましい。
前記炭化水素化合物として、炭素数が4以下の炭化水素系ガス、炭素数が4以下の炭化水素系ガスを主成分とする炭化水素化合物、炭素数が5~10の範囲にある炭化水素系溶剤、または、炭素数が5~10の範囲にある炭化水素系溶剤を主成分とする炭化水素化合物を用いることが好ましい。
前記プラズマ化された反応ガスを生成するためのガスとして、アルゴン、ヘリウム、窒素、酸素、および、空気の群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記キャリアガスとして、アルゴン、ヘリウム、および窒素の群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記被覆膜形成工程を複数回繰り返すことが好ましい。
本発明の一態様は、熱伝導性グリースの製造方法に関する。特に、本発明の熱伝導性グリースの製造方法は、
熱伝導性グリース用充填剤と、基油とを混合して、熱伝導性グリースを得る混合工程を備え、
前記混合工程において、前記熱伝導性グリース用充填剤として、本発明の熱伝導性グリース用充填剤を用い、および、前記熱伝導性グリース用充填剤の含有量を82質量%以上98質量%以下、前記基油の含有量を2質量%以上18質量%以下となるようにすることに特徴がある。
本発明によれば、熱伝導率をさらに改善可能な熱伝導性グリース用充填剤、熱伝導性グリース、およびこれらの製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法の一例の概略を示すフロー図である。 図2(a)は、本発明の熱伝導性グリース用充填剤に含まれる表面処理粉末を製造する工程のうちの被覆膜形成工程の一例を示す概略斜視図である。図2(b)は、この方法で作製される表面処理粉末の断面図である。
以下、本発明の実施形態の一例について、熱伝導性グリース用充填剤、熱伝導性グリース、およびこれらの製造方法について詳細に説明する。
1.熱伝導性グリース用充填剤
本発明の実施形態の一例に係る熱伝導性グリース用充填剤は、表面が露出した無機粉末と、無機粉末の表面が含炭素化合物の被覆膜によって覆われた表面処理粉末とを含有する。この熱伝導性グリース用充填剤において、表面処理粉末の被覆膜の平均膜厚は1.0nm以上120nm以下である。また、熱伝導性グリース用充填剤中の表面処理粉末の含有量は、32質量%以上88質量%以下である。
(1)無機粉末
本発明の熱伝導性グリース用充填剤において、表面が露出した無機粉末および表面処理粉末を構成する無機粉末は、いずれも無機化合物から構成される粉末を意味する。また、表面が露出した無機粉末とは、表面処理粉末のように表面が被覆膜によって覆われていない無機粉末を意味し、表面に酸化膜などが形成された無機粉末も含まれる。なお、表面が露出した無機粉末と表面処理粉末を構成する無機粉末とは、同一の無機化合物から構成されていてもよく、異なる無機化合物から構成されていてもよい。いずれの無機粉末も、特に制限されないが、基油よりも高い熱伝導率を有するものが好ましい。
具体的には、金属酸化物、無機窒化物、金属、ケイ素化合物、カーボン材料などの粉末を好適に用いることができる。
なお、熱伝導性グリースに電気絶縁性を求める場合には、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素などのセラミックや、シリカ、ダイヤモンドなどの半導体ないしは絶縁体の粉末を使用することが好ましい。これらの中でも、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、シリカの粉末がより好ましく、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムの粉末が特に好ましい。
一方、電気絶縁性を求めず、高い熱伝導性を求める場合には、銅、アルミニウム、銀などの金属粉末、グラファイト、フラーレン、およびカーボンナノチューブなどのカーボン材料粉末などを含む、導電性粉末を使用することが好ましい。これらの中でも、金属粉末がより好ましく、銅あるいはアルミニウムの粉末が特に好ましい。
いずれの場合も、表面が露出した無機粉末および表面処理粉末を構成する無機粉末は、1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせ使用してもよい。また、半導体ないしは絶縁体の粉末を導電性粉末と組み合わせて使用してもよい。
[平均粒径]
表面が露出した無機粉末および表面処理粉末を構成する無機粉末の平均粒径は、特に限定されず、使用する半導体部品のサイズにより適宜設定することができる。また、表面が露出した無機粉末および表面処理粉末を構成する無機粉末として、熱伝導性グリースに要求される特性に応じて、細粒のみを用いてもよく、細粒と粗粒とを組み合わせて用いてもよい。
たとえば、熱伝導性グリースに高展性という特性が要求される場合、表面が露出した無機粉末および表面処理粉末を構成する無機粉末として、細粒のみを用いることが好ましい。この場合の平均粒径は、0.15μm以上3μm以下が好ましく、0.3μm以上1μm以下がより好ましい。平均粒径が0.15μm以上であれば、充填剤の表面積に対する液体成分(基油など)の割合のバランスがよくなり、熱伝導性グリースのちょう度を高くすることができる。一方、平均粒径が3μm以下であれば、最密充填をしやすくなり、熱伝導性グリースの熱伝導率をより高くすることができるばかりでなく、離油しづらくすることもできる。
これに対して、熱伝導性グリースの用途に、より高い熱伝導率が要求される場合、表面が露出した無機粉末および表面処理粉末を構成する無機粉末として、細粒と粗粒とを組み合わせた粉末を用いることが好ましい。この場合、平均粒径が上記範囲の細粒と、平均粒径が5μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下の範囲の粗粒とを組み合わせて用いることができる。粗粒の平均粒径を5μm以上とすることで、熱伝導性グリースの熱伝導率をより高くすることができる。一方、粗粒の平均粒径を50μm以下とすることで、被覆膜の厚さを薄く形成し、実装時の放熱性能を一層高めることができる。なお、粗粒としては、平均粒径の異なる2種類以上のものを用いてもよい。この場合も、熱伝導率の実装時の放熱性能の観点から、それぞれの粗粒の平均粒径を5μm以上50μm以下の範囲とすることが好ましい。
また、細粒と粗粒とを組み合わせて用いる場合、細粒と粗粒の質量比は、細粒:粗粒=20:80~85:15の範囲とすることが好ましい。粗粒を2種類以上用いる場合については、粗粒同士の質量比は特に限定されないが、細粒と粗粒総量との質量比は、細粒:粗粒=20:80~85:15の範囲とすることが好ましい。細粒と粗粒の質量比が上記範囲であれば、充填剤の表面積に対する液体成分(基油など)の割合のバランスがよくなり、熱伝導性グリースのちょう度を高くしながら、充填剤を高密度に充填することができ、離油もしづらくなる。
なお、本実施形態における平均粒径とは、レーザー回折法で得られる体積基準の粒度分布より求めた算術平均径を意味する。
[形状]
表面が露出した無機粉末および表面処理粉末を構成する無機粉末の形状としては、球状、紡錘形状、偏平形状、不定形状などが挙げられるが、これらに限定されることはない。通常の用途では、不定形状のものを用いれば十分である。ただし、表面に形成する被覆膜の厚みが熱伝導率に影響を及ぼすため、ばらつきが小さく、高い熱伝導率を示すためには、被覆膜の厚みを薄くかつ均一にすることが好ましいため、そのような被覆膜を形成する観点からは、表面処理粉末を構成する無機粉末は、球状の無機粉末を用いることが好ましい。この場合、無機粉末の真球度、たとえば、無機粉末50個について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、それぞれの粉末の短径および長径を測定し、短径/長径で求めた値の平均値として算出した真球度が、0.85以上であることが好ましい。
(2)表面処理粉末
本発明において、表面処理粉末とは、上述した無機粉末の表面が含炭素化合物の被覆膜によって覆われた粉末を意味する。
すなわち、表面処理粉末を構成する被覆膜は、後述するように、大気圧プラズマ重合法によって、ラジカル化した炭化水素化合物が無機粉末の表面にある原子と反応することにより無機粉末の表面に形成された含炭素化合物からなる。このため、被覆膜は、主として炭素が3次元架橋されたポリマーから構成され、被覆膜を構成する含炭素化合物は、炭素と水素によりその骨格が基本的に構成される。ただし、大気圧プラズマ重合法の性質上、被覆膜には、鎖状の炭素成分や炭化水素などが含まれる場合がある。
また、被覆膜には、表面処理粉末の耐水性や安定性などの向上を目的として、含炭素化合物のほかに、酸化防止剤、導電性微粒子、カップリング剤などの任意の添加成分を含ませることも可能である。ただし、これらの添加成分の含有量は、10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。
このような含炭素化合物を含む被覆膜は、高い緻密性を備えており、無機粉末の表面に強固に密着している。このため、被覆膜の存在により充填剤と基油との親和性を向上させて、熱伝導性グリースの熱伝導率を改善することができる。
[被覆膜の厚さ]
被覆膜の平均膜厚は、1.0nm以上120nm以下、好ましくは3nm以上80nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下である。被覆膜の平均膜厚が1.0nm未満では、無機粉末と基油との親和性を十分に改善することができない。また、保管時や実装時における無機粉末の表面の酸化を抑制することが困難となる。このため、表面処理粉末の熱伝導率が低下してしまうおそれがある。一方、被覆膜の平均膜厚が120nmを超えると、被覆膜により無機粉末と基油との間の熱伝導経路網などが遮断されてしまい、熱伝導率を十分に改善することができなくなる。また、被覆膜が粘着性を帯びるようになり、表面処理粉末同士が凝集固着してしまい、表面処理粉末を基油中に均一に分散させることができない場合がある。
なお、被覆膜の平均膜厚は、表面処理粉末を樹脂に埋包し、該樹脂の表面をポリッシャーなどにより機械研磨して、表面処理粉末の断面を露出させた上で、任意に選択した50箇所について、それぞれの表面処理粉末の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、測定したそれぞれの被覆膜の膜厚から平均値を算出することにより求めることができる。
[厚さの均一性(ばらつき)]
本発明においては、被覆膜は、厚さの均一性にも優れる。具体的には、本発明の表面処理粉末における、被覆膜の平均膜厚に対する膜厚のばらつきは20%以下である。この膜厚のばらつきは、前記50箇所の膜厚と前記平均膜厚との差の絶対値の最大値を前記平均膜厚で除算し百分率で表した値である。この膜厚のばらつきが20%を超えると、被覆膜が薄すぎる部分が生じて、無機粉末と基油との親和性の改善や無機粉末の表面の酸化防止効果が十分に図られない、あるいは、被覆膜が厚すぎる部分が生じて、熱伝導性の改善が十分に図られないといった問題が生じうる。なお、この膜厚のばらつきは20%以下であれば十分ではあるが、18%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
[充填剤中の表面処理粉末の含有量]
充填剤中の表面処理粉末の含有量は、32質量%以上88質量%以下、好ましくは34質量%以上87.5質量%以下、より好ましくは40質量%以上70質量%以下に制御される。表面処理粉末が32質量%未満では、充填剤と基油との親和性を十分に向上させることができず、熱伝導性グリースの熱伝導率を十分に改善することができない。一方、被覆膜が88質量%を超えると、熱伝導性グリースが高粘度化するため、塗布性が維持できないという問題がある。
2.熱伝導性グリース
本実施形態の熱伝導性グリースは、上述した充填剤を82質量%以上98質量%以下、および基油を2質量%以上18質量%以下含有する。
(1)基油
基油は、特に制限されることはなく、種々のものを用いることができる。しかしながら、基油としてシリコーン油を用いた場合には、加熱による発生するシロキサンガスに起因して接点障害が生じるおそれがある。このため、基油としては、シリコーン油以外のものを用いることが好ましい。たとえば、エステル油、鉱油、合成炭化水素油、フッ素油などを好適に使用できる。これらの中でも、固化しにくい基油、蒸発損失が小さい基油、あるいは、高温安定性に優れる基油の1種または2種以上の組み合わせを好適に用いることがでる。具体的には、ポリオールエステルおよび芳香族エステルからなるエステル油が好ましい。これらのエステル油を組み合わせて用いることによって、蒸発損失を大幅に改善することができる。以下、基油として、ポリオールエステルと芳香族エステルとを組み合わせて使用する場合について詳細に説明する。
[ポリオールエステル]
ポリオールエステルとしては、従来から高温用潤滑油の基油として用いられてきたものを用いることができる。たとえば、アルコール成分がジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、または、ネオペンチルグリコールである、ポリオールエステルを好適に用いることができる。
一方、ポリオールエステルの酸成分は、特に制限されることはなく、熱伝導性グリースの粘度が所望の範囲となるように適宜選択すればよい。たとえば、酸成分としては、炭素数7~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和または不飽和の脂肪酸などが好ましく、分岐鎖状の脂肪酸がより好ましい。このような酸成分としては、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2-エチルペンタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチル-2-メチルブタン酸、2-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-プロピルペンタン酸、2,2-ジメチルへキサン酸、2-エチル-2-メチルヘプタン酸、2-メチルオクタン酸、2,2-ジメチルヘプタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸などを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性に優れる3,5,5-トリメチルヘキサン酸が好ましい。
本発明の熱伝導性グリースにおいて好適に用いることができるポリオールエステルとしては、ジペンタエリスリトールイソノナン酸エステル、ジペンタエリスリトール2-エチルヘキサン酸エステル、ネオペンチルグリコール2-ジメチルへプタン酸エステル、ペンタエリスリトールイソノナン酸エステルなどを挙げることができる。これらの中でも、特に、ジペンタエリスリトールイソノナン酸エステル、ネオペンチルグリコール2-ジメチルへプタン酸エステルなどを用いることが好ましい。
[芳香族エステル]
芳香族エステルについても、特に制限されることなく、任意のものを用いることができる。たとえば、カルボン酸成分が、フタル酸、4-t-ブチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、4,4’-チオビス安息香酸などの芳香族カルボン酸、これらの無水物、並びに、これらの芳香族カルボン酸とメタノール、エタノールなどの炭素数1~4の低級アルコールからなるエステルからなる、芳香族エステルを好適に用いることができる。これらの芳香族カルボン酸成分の中でも、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、およびピロメリット酸が推奨される。非常に厳しい高温条件で使用される場合には、高粘度で蒸発損失の少ないエステルを提供するトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などを用いることが望ましい。
一方、芳香族エステルを構成するアルコール成分としては、炭素数4~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を有する脂肪族一価アルコールが好ましい。具体的には、3,5,5-トリメチルヘキサノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘキサノール、イソヘキサノール、n-ヘプタノール、イソヘプタノール、n-オクタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール、n-ノナノール、イソノナノール、n-デカノール、イソデカノール、n-ウンデカノール、イソウンデカノール、n-ドデカノール、イソドデカノール、n-トリデカノール、イソトリデカノール、n-テトラデカノール、イソテトラデカノール、n-ペンタデカノール、イソペンタデカノール,n-キサデカノール、イソヘキサデカノール、n-オクタデカノール、イソオクタデカノールなどが好ましい。アルコール成分としては、これらのアルコールに代替して、酢酸エステルなどの低級アルキルエステルを用いることも可能である。アルコール成分としては、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノールなどを用いることが好ましい。
本発明の熱伝導性グリースにおいて好適に用いることができる芳香族エステルとしては、フタル酸ジ(3,5,5-トリメチルヘキシル)、イソフタル酸ジ(3,5,5-トリメチルヘキシル)、トリメリット酸トリ(3,5,5-トリメチルヘキシル)、トリメシン酸トリ(3,5,5-トリメチルヘキシル)、ピロメリット酸テトラ(3,5,5-トリメチルヘキシル)、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、イソフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメシン酸トリ(2-エチルヘキシル)、ピロメリット酸テトラ(2-エチルヘキシル)などを挙げることができる。これらの中でも、特に、トリメリット酸トリ(3,5,5-トリメチルヘキシル)、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)などを用いることが好ましい。
[ポリオールエステルおよび芳香族エステルの含有量]
基油の全量に対して、ポリオールエステルの含有量を69質量%以上85質量%以下とし、芳香族系エステルの含有量を5質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。ポリオールエステルの含有量が69質量%より少ないと、スラッジ量が増加し、85質量%より多いと芳香族エステルと十分に組み合わせることができなくなる。一方、芳香族エステルの含有量が5質量%よりも少ないと十分な初期耐蒸発性が得られず、20質量よりも多いと、スラッジ量が増加する。
(2)添加剤
本発明の熱伝導性グリースには、上述した熱伝導性グリース用充填剤および基油のほか、添加剤として、分散剤、消泡剤、さび止め剤、腐食防止剤、酸化防止剤、増粘剤、および増ちょう剤を加えることができる。
分散剤としては、上述した無機粉末を基油中に分散させることが可能であれば特に限定されず、たとえば高分子系分散剤が挙げられる。このような高分子系分散剤としては、酸性高分子系分散剤、塩基性高分子系分散剤、中性高分子系分散剤などが挙げられる。また、高分子系分散剤の主骨格として、アクリル系、ポリリン酸エステル系、ポリエステル系(ただし、ポリリン酸エステル系を除く。以下同じ。)、ポリエーテル系、ウレタン系などの構造を有するものを使用することができる。具体的な高分子系分散剤としては、Disperbyk(登録商標)-101、102、103、107、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190(以上、ビックケミー社製);EFKA(登録商標)4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4330、4340、4015、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製);SOLSPERSE(登録商標)-3000、9000、13000、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、32000、32500、32550、33500、35100、35200、36000、36600、38500、41000、41090、20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパー(登録商標)PA-111、PN―411、PB711、PB821、PB822、PB824(味の素ファインテクノ株式会社製)などが市販されており、好適に用いることができる。消泡剤としては、アクリルポリマー、ビニルエタノールポリマー、ブタジエンポリマー、金属石鹸などを用いることができる。さび止め剤としては、スルホン酸塩、カルボン酸およびカルボン酸塩などの化合物を用いることができる。腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体などの化合物、チアジアゾール系化合物を用いることができる。酸化防止剤としては、アミン系、フェノール系、チオエーテル系、およびリン酸系などの化合物を用いることができる。増粘剤および増ちょう剤としては、ポリブテン、ポリメタクリレート、脂肪酸塩、ウレア化合物、石油ワックス、ポリエチレンワックス、有機処理ベントナイト、およびシリカなどを用いることができる。
これらの添加剤は、本発明の熱伝導性グリースの熱伝導率を著しく低下させない範囲で添加することができる。
(3)組成比
熱伝導性グリース用充填剤の含有量は82質量%以上98質量%以下、基油の含有量は2質量%以上18質量%以下とする。熱伝導性グリース用充填剤の含有量が82質量%未満では熱伝導率が低くなるばかりでなく、離油が生じて基油が滲み出してしまうことがある。一方、熱伝導性グリース用充填剤の含有量が98質量%を超えると、ちょう度が低くなりすぎるため、熱伝導性グリースが調製できなくなる。なお、熱伝導性グリース用充填剤の比率が高いほど熱伝導性グリースの熱伝導率が優れるため、熱伝導性グリース用充填剤の含有量を、好ましくは85質量%以上97質量%以下、より好ましくは87質量%以上96質量%以下とし、基油の含油量を、好ましくは3質量%以上15質量%以下、より好ましくは4質量%以上13質量%以下とする。なお、添加剤を添加する場合におけるその含有量は、1質量%以下とすることが好ましい。
(4)熱伝導性グリースの特性
本発明の熱伝導性グリースは、従来の熱伝導性グリースと比べて優れた熱伝導率を有する。具体的には、本発明の熱伝導性グリースの熱伝導率をλ、表面処理粉末を含有しないこと以外は同様の構成の熱伝導性グリースの熱伝導率をλとした場合、下記(式1)で表される熱伝導率向上度Rを好ましくは1.30以上、より好ましくは1.35以上とすることができる。
R=λ/λ (式1)
3.熱伝導性グリースの製造方法
本発明の熱伝導性グリースの製造方法の実施形態の一例について、図1を参照しながら、詳細に説明する。
(1)ラジカル化工程(S1)
ラジカル化工程(S1)は、大気圧下でプラズマ化された反応ガスと、キャリアガスを介して供給された炭化水素化合物とを混合し、炭化水素化合物をラジカル化させて、ラジカル化炭化水素化合物を得る工程である。
[大気圧プラズマ重合処理]
プラズマ重合処理は従来から広く知られた技術であり、近年、大気圧下でのプラズマ重合処理の技術が開発されている。大気圧プラズマ重合処理は、常態では進行しない化学反応を、大気圧プラズマによる反応粒子の活性化により進行させるものである。大気圧プラズマ重合処理は、連続処理が可能であるため生産性が高く、真空装置が不要であるため処理コストが低く、かつ、装置構成を簡易化できるといった利点を有する。
ただし、従来から知られている大気圧プラズマCVD法を利用した被覆膜の形成方法では、反応ガスと、キャリアガスと、被覆材料とを装置内に供給した後、反応領域において、反応ガスのプラズマ化と被覆材料のラジカル化(活性化)を同時に行うことが一般的である。この方法では、被覆材料のラジカル化が不均一なものとなってしまう場合がある。このような状態で被覆膜が形成されると、被覆膜が緻密なものとならず、無機粉末の表面全体に被覆膜を均一に形成することが困難となる。
本例では、予めプラズマ化した反応ガス中に、キャリアガスを介して導入した炭化水素化合物を混合噴霧することによって、瞬時にラジカル化した炭化水素化合物を形成させ、このラジカル化した炭化水素化合物の基本骨格を維持したまま、ラジカル化した炭化水素化合物を、無機粉末の表面に反応させることにより、含炭素化合物の緻密な被覆膜を無機粉末の表面全体にわたって均一に形成することを可能としている。
すなわち、本例では、含炭素化合物の緻密な被覆膜を無機粉末の表面全体にわたって均一に形成するために、反応ガスのプラズマ化と被覆材料のラジカル化とを同時に行わず、反応ガスのプラズマ化を行った後、反応ガスのプラズマ化を行った領域とは別の領域において、被覆材料のラジカル化を行うことが重要である。
大気圧プラズマに用いる放電方法としては、コロナ放電、誘電体バリア放電、RF放電、マイクロ波放電、アーク放電などを挙げることができるが、本実施形態では、特に制限されることなく、いずれも適用可能である。このため、プラズマ化するために使用する装置としては、大気圧下で反応ガスをプラズマ化することができるものであれば、特に制限されることなく、公知のプラズマ発生装置を使用することができる。なお、本実施形態において、大気圧とは、大気圧(1013.25hPa)およびその近傍の気圧を含み、通常の大気圧の変化の範囲内の気圧も含まれる。
[プラズマ化条件]
反応ガスをプラズマ化するための条件としては、使用するプラズマ装置や、目的とする被覆膜の厚さなどにより適宜選択されるべきものであるが、炭化水素化合物を効率よくラジカル化し、高品質の被覆膜を形成する観点から、ジェネレータ出力電圧は150V~350Vの範囲に設定することが好ましく、200V~330Vの範囲に設定することがより好ましい。ジェネレータ出力電圧が150V以上であれば、反応ガスが十分にプラズマ化することができ、炭化水素化合物を十分にラジカル化することができる。一方、350V以下であれば、装置の破損といった問題が生じることがない。
[反応ガス]
反応ガスとしては、プラズマ化が容易なものであれば特に制限されることはない。たとえば、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)、N(窒素)、O(酸素)、および空気などの群から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。これらの反応ガスは、単独で使用してもよく、2種類以上を所定の割合で混合して使用してもよい。なお、生産コストの観点から、N、O、または空気を使用することが好ましい。なお、反応ガスの流速は、特に限定されない。
[キャリアガス]
キャリアガスとしては、気化した炭化水素化合物を搬送することができるものであれば、特に制限されることはない。たとえば、Ar、He、およびNなどの群から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。これらのキャリアガスは、単独で使用してもよく、2種類以上を所定の割合で混合して使用してもよい。なお、生産コストの観点から、Nを使用することが好ましい。
[炭化水素化合物]
被覆膜を形成するための被覆材料として用いる炭化水素化合物は、特に限定されず、被覆対象の表面状態などによって選択することが可能である。本実施形態に好適な炭化水素化合物としては、炭素数が4以下の炭化水素系ガス、炭素数が4以下の炭化水素系ガスを主成分とする炭化水素化合物、炭素数が5~10の範囲にある炭化水素系溶剤、あるいは、炭素数が5~10の範囲にある炭化水素系溶剤を主成分とする炭化水素化合物を用いることが好ましい。
これらの炭化水素化合物は、常態で気体もしくは適度な揮発性を有しているため、キャリアガスとともに、プラズマ化された反応ガス中に容易に導入することができる。このため、無機粉末の表面に、緻密な被覆膜を満遍なく均一に形成することが可能となる。
なお、炭化水素系ガスと炭化水素系溶剤のいずれか一方を用いれば十分であるが、取扱性や安全性を確保することができる限り、炭化水素系ガスと炭化水素系溶剤を混合して用いることも可能である。また、炭化水素化合物を導入する際、必ずしも炭化水素化合物のみで導入する必要はなく、炭化水素化合物を主成分とする限り、安定化剤や酸化防止剤などと混合した状態反応ガスに導入することができる。
[炭化水素系ガス]
炭化水素系ガスは、常態で気体であり、キャリアガスや反応ガスとの均一な混合を容易に行うことが可能であり、かつ、その混合状態を比較的長時間にわたって維持することが可能である。
炭素数が4以下の炭化水素系ガスとしては、炭素数が4以下の脂肪族化合物および/または脂環式化合物を用いることが好ましい。
具体的には、安全性や取り扱いの容易性の観点から、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、nブタン、イソブタン、メチルアセチレン、エチルアセチレン、シクロプロパン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエンから選択される少なくとも1種を好適に用いることできる。
[炭化水素系溶剤]
炭化水素系溶剤は、常態で液体であり、かつ、適度な揮発性を有するため、安全性に優れるばかりでなく、キャリアガスや反応ガスとの均一な混合が可能である。炭化水素系溶剤としては、脂肪族化合物、脂環式化合物、および芳香族化合物から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
炭素数が5~10の範囲にある脂肪族化合物としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの直鎖状の化合物のほか、2-メチルブタン〔イソペンタン〕、2,2-ジメチルプロパン〔ネオペンタン〕、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2-エチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2-メチルヘプタン、2,3-ジメチルヘキサン、3-エチルヘキサンなどの分岐を有する化合物を好適に用いることができる。
炭素数が5~10の範囲にある脂環式化合物としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、エチルシクロペンタン、シス-1,3-ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ノルボルナン、シクロヘキセン、1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン〔リモネン〕などを用いることができる。
炭素数が5~10の範囲にある芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを用いることができる。
これらの中でも、取扱いの容易性や含炭素化合物の膜を形成した場合の熱分解性を考慮すると、直鎖状のn-ペンタン、n-ヘキサン、およびn-ヘプタンを用いることが好ましく、n-ヘキサンを用いることが特に好ましい。
[炭化水素化合物の導入量]
炭化水素化合物の導入量は、ベースとなる無機粉末の平均粒径や形成される被覆膜の厚さ、プラズマ化条件などによっても異なるが、たとえば、レーザー回折法で得られる体積基準の粒度分布より求めた算術平均径が、1μm以上50μm以下の範囲にある無機粉末を対象とした場合に、炭化水素化合物の導入量は、無機粉末1gに対する炭化水素化合物の反応量が、0.005g以上0.4g以下の範囲となるように設定することが好ましく、0.006g以上0.33g以下の範囲となるように設定することがより好ましく、0.008g以上0.25g以下の範囲となるように設定することがさらに好ましい。炭化水素化合物の反応量が0.005g以上であれば、平均膜厚が1.0nm以上である緻密な被覆膜を、無機粉末の表面全体に均一かつ満遍なく形成することができる。一方、炭化水素化合物の反応量が0.4g以下であれば、被覆膜の平均膜厚を120nm以下することができ、被覆膜による影響を抑制して、表面処理粉末を構成する無機粉末の高い熱伝導率が維持される。炭化水素化合物の導入量は、予備試験を実施するなどして、炭化水素化合物の反応量の結果から、適宜設定される。
(2)反応領域形成工程(S2)
反応領域形成工程(S2)は、ラジカル化工程(S1)で得られたラジカル化炭化水素化合物が、螺旋状のガス流によって均一に分散している反応領域を形成する工程である。本実施形態では、反応領域形成工程(S2)を設けることは任意であるが、無機粉末を反応領域に投入する前に、反応領域形成工程(S2)に十分な時間を設けて、螺旋状のガス流内にラジカル化した炭化水素化合物を十分かつ均一に分散させて、ラジカル化した炭化水素化合物が無機粉末と均一に反応することを可能とする反応領域を予め形成しておくことが好ましい。なお、この反応領域内においてラジカル化した炭化水素化合物の状態は、特に制限されることはなく、単量体、半重合体、および重合体のうちのいずれの状態であってもよい。
[反応領域]
螺旋状のガス流で画定される反応領域では、ベースとなる無機粉末は、螺旋状のガス流内で均一に分散されたラジカル化炭化水素化合物と反応するため、それぞれの無機粉末の表面全体に対する表面処理反応を同時かつ同程度の反応速度で進行させることができる。このため、本実施形態の製造方法で得られた表面処理粉末は、きわめて均一に形成された被覆膜を有することが可能となる。また、この表面処理粉末は、被覆膜が緻密に形成されるため、表面処理粉末の耐水性や接合性などの特性がより良好なものとなる。
このような反応領域を形成する方法は、特に制限されることはない。たとえば、装置内において反応領域となる空間に予め螺旋状のガス流を導入した後に、装置内のラジカル化工程(S1)で生成したラジカル化炭化水素化合物を、この螺旋状のガス流に導入して混合することにより反応領域を形成することができる。また、装置外でラジカル化工程(S1)を実施し、生成したラジカル化炭化水素化合物をキャリアガスとともに螺旋状のガス流として装置内に導入することもできる。ただし、ラジカル化炭化水素化合物は不安定であり、すぐに通常の炭化水素化合物と戻ってしまうことを考慮すると、装置内においてラジカル化工程(S1)を直前に実施し、得られたラジカル化炭化水素化合物を反応領域に導入する方法を採用することが好ましい。
[螺旋状のガス流]
螺旋状のガス流を用いた反応領域の形成には、たとえば、Ar、He、N、O、および空気の群から選択される少なくとも1種を、螺旋状のガス流を形成するガスとして用いることができる。すなわち、螺旋状のガス流を形成した後にラジカル化炭化水素化合物を導入する場合には、これらのガスにより別途螺旋状のガス流を形成することができる。一方、装置外で生成したラジカル化炭化水素化合物をキャリアガスとともに装置内に導入する場合には、ラジカル化炭化水素化合物を含むキャリアガスを螺旋状に流れるように装置内に導入する。
被覆膜を薄く形成する場合には、これらのガス(キャリアガスを含む)として、Oや空気(特に乾燥空気)を用いて、螺旋状のガス流を用いた反応領域を形成することが好ましい。これにより、被覆膜中の酸素導入量を増加させることでき、その結果、被覆膜の緻密性や平滑性をより向上させることが可能となる。
螺旋状のガス流により画定される反応領域は、その反応領域の断面積が、被覆対象となる無機粉末の直径よりも十分大きくなるように形成する。また、螺旋状のガス流の速度(進行方向に対する速度および周方向に対する速度)は、目的とする被覆膜の厚さや無機粉末の性状(ラジカル化炭化水素化合物との反応性)に応じて、適宜選択することが必要となる。このため、予備試験を実施するなどして、螺旋状のガス流の速度を設定することが好ましい。
(3)被覆膜形成工程(S3)
被覆膜形成工程(S3)は、ラジカル化工程(S1)で得られたラジカル化炭化水素化合物を無機粉末の表面と反応させる工程である。具体的には、ラジカル化炭化水素化合物を運搬するキャリアガス内に、ベース材料である無機粉末を導入すればよい。
反応領域形成工程(S2)を設けた態様では、反応領域形成工程(S2)で事前に形成していた反応領域に、ベース材料である無機粉末を供給する。
被覆膜形成工程(S3)では、大気圧プラズマ重合処理により、ラジカル化炭化水素化合物が無機粉末の表面と反応して、無機粉末の表面に含炭素化合物の被覆膜が形成される。
本例の大気圧プラズマ重合処理により、ラジカル化炭化水素化合物をプラズマ重合させて、平均膜厚が1.0nm以上120nm以下の範囲にある含炭素化合物の被覆膜を備えた表面処理粉末を得ることができる。
特に、反応領域形成工程(S2)を設けた態様では、ラジカル化炭化水素化合物が均一に分散した状態で螺旋状に流れている反応領域に、無機粉末を投入することにより、含炭素化合物からなり、緻密で、きわめて均一かつ薄い被覆膜を有する表面処理粉末を簡易かつ確実に製造することが可能となる。
たとえば、反応領域形成工程(S2)を設けた態様の一例では、ラジカル化炭化水素化合物と無機粉末の表面との反応は、反応領域の内部で進行する。具体的には、図2(a)に示すように、反応領域形成工程(S2)において、ラジカル化炭化水素化合物用ノズル8から、ラジカル化炭化水素化合物5が、螺旋状のガス流4内に供給され、螺旋状のガス流4とラジカル化炭化水素化合物5によって画定される反応領域6が形成される。反応領域6が十分に形成された後、反応領域6の内部に、無機粉末用ノズル7からベース材料である無機粉末2が供給される。無機粉末2は、反応領域6内を矢印Aの方向に搬送されるが、この際、反応領域6内には、ラジカル化炭化水素化合物5が均一に分散しているため、螺旋状のガス流4の作用により、ラジカル化炭化水素化合物5は、それぞれの無機粉末2の表面全体に等しく接触し、また、無機粉末2が反応領域6内を概ね同じ時間で通過していくことから、無機粉末2同士の間でも、ラジカル化炭化水素化合物5が等しく接触する。この結果、ラジカル化炭化水素化合物5と無機粉末2表面(金属原子)との反応が、粒子同士の間で、かつ、それぞれの粒子の表面の部分間でも、同時かつ同程度の反応速度で進行することとなる。
なお、上述したように反応領域6内では、ラジカル化炭化水素化合物5が、単量体、半重合体および重合体といった種々の形態で存在している。したがって、ラジカル化炭化水素化合物5と無機粉末の表面の反応としては、(i)ラジカル化炭化水素化合物5が、無機粉末2の表面と反応した後に重合する態様、(ii)ラジカル化炭化水素化合物5が重合しながら、無機粉末2の表面と反応する態様、(iii)ラジカル化炭化水素化合物5が重合した後に、無機粉末2の表面と反応する態様が考えられる。ただし、上述した被覆膜を備えた表面処理粉末が得られる限り、いずれかの態様に制限されることはない。
被覆膜形成工程(S3)では、無機粉末の表面に形成される被覆膜の平均膜厚が1.0nm以上120nm以下の範囲になるように、処理条件が調整される。このような被覆膜の平均膜厚を特定の範囲に調整するためには、被覆材料として導入される炭化水素化合物の量や螺旋状のガス流の速度のほか、無機粉末の搬送速度を制御する。
たとえば、反応領域形成工程(S2)を設けた態様の一例においては、大気圧プラズマ重合装置を用いた試験において、反応領域形成工程(S2)で設定したラジカル化炭化水素化合物5を螺旋状に流す条件は一定のまま、投入する無機粉末2の搬送速度を変化させて、形成される被覆膜の平均膜厚のデータを得ることにより、所望の平均膜厚を有する被覆膜の形成が可能となる。
この場合、無機粉末用ノズル7の投入口のサイズは一定なので、無機粉末2の搬送速度を変えて、単位時間当たりの投入量を1g/分以上100g/分以下とすることが好ましく、5g/分以上50g/分以下とすることがより好ましく、8g/分以上20g/分以下とすることがさらに好ましい。無機粉末の投入量が1g/分未満となる搬送速度では、搬送速度が遅くなり過ぎ、無機粉末が反応領域に留まる時間が長くなってしまい、被覆膜が厚くなりすぎたり、生産性が著しく低下したりするおそれがある。
一方、投入量が100g/分を超える搬送速度では、搬送速度が速くなり過ぎて、被覆膜の平均膜厚が1.0nm未満となる程度まで薄くなり過ぎたり、被覆膜の厚さにばらつきが生じたりするおそれがある。好ましくは、1g/分以上100g/分以下の範囲の単位時間当たりの投入量の中で、所望の被覆膜の平均膜厚に応じた投入量を試験的に決定する。
被覆膜形成工程(S)は、1回のみに限らず、複数回繰り返し行ってもよい。作業効率の観点からは、被覆膜形成工程(S)の回数(被覆回数)を1回とすることが好ましいが、厚い被覆膜を形成するために炭化水素化合物の導入量を過度に増やすと、膜厚のばらつきが大きくなる。一方、被覆膜形成工程(S)を繰り返し行う場合、作業効率は低下するが、被覆膜の平均膜厚を累積的に厚くすることで膜厚のばらつきを抑制し、より平滑な被覆膜を形成することができる。このような事情から、熱伝導性グリース用充填剤に要求される精度や生産効率を考慮の上、炭化水素化合物の1回の導入量と被覆膜形成工程(S)の繰り返し回数を決定することが好ましい。なお、無機粉末と炭化水素化合物との割合にもよるが、被覆膜の平均膜厚を120nm以下とする場合、被覆回数を5回より多くしても平滑性の向上は認められず、単に作業工数が増えるだけなので、被覆回数は5回以下に設定することが好ましい。
図2(b)に示すように、本例の表面処理粉末の製造方法により得られた本例の表面処理粉末1は、無機粉末2の表面を含炭素化合物からなる均一で緻密な被覆膜3を備えているため、無機粉末2の表面が周囲空気と直接接触することがない。
このため、本例の表面処理粉末は、含炭素化合物の被覆膜を備えない無機粉末と比べ、耐水性が向上する。また、本例の表面処理粉末では、被覆膜の平均膜厚が120nm以下と薄く、かつ、均一に形成されるため、樹脂との親和性を向上させつつ、無機粉末の有する高い熱伝導率を発揮することができる。よって、この表面処理粉末を熱伝導性充填剤として用いた熱伝導性グリースも、耐熱性や耐久性が向上し、電子材料として使用温度域が広がり、かつ、その信頼性にも優れるといえる。
(4)混合工程(S4)
混合工程(S4)は、表面処理粉末と、表面が露出した無機粉末と、基油とを混合して、熱伝導性グリースを得る工程である。具体的には、表面処理粉末と、表面が露出した無機粉末と、基油とを混合機に投入して、室温(5℃~30℃)で所定時間(10分間~1時間)ほど撹拌混合する。混合機としては、特に限定されないが、たとえば、自公転ミキサー、撹拌混合機、ニーダー、ハイブリッドミキサーなどを用いることができる。
この際、表面処理粉末と表面が露出した無機粉末とを含む熱伝導性グリース用充填剤中の表面処理粉末の含有量が32質量%以上88質量%以下となるように混合する。なお、熱伝導性グリース用充填剤と基油の混合比は、熱伝導性グリースを形成することができる限り制限されることはないが、熱伝導性グリース用充填剤が82質量%以上98質量%以下、基油が2質量%以上18質量%以下となるように混合する。また、充填剤中の表面処理粉末が34質量%以上87.3質量%以下となるように混合することが好ましく、熱伝導性グリース用充填剤が85質量%以上97質量%以下、基油が3質量%以上15質量%以下となるように混合することが好ましい。
以下、本実施形態の実施例について、図1および図2を参照しつつ具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されることはない。
(実施例1)
[熱伝導性グリースの作製]
表面処理粉末を構成する無機粉末として、平均粒径が10μmの球状アルミナ粉末を、炭化水素化合物としてn-ヘキサンを準備した。
(1)ラジカル化工程(S1)
まず、大気圧重合処理装置(日本プラズマトリート株式会社製、プラズマポリマーラボシステム PAD-1型)を用いて、大気圧下でプラズマ化された反応ガス(N2)に、キャリアガス(N2)を介して導入したn-ヘキサンを混合し、n-ヘキサンをラジカル化することにより、ラジカル化炭化水素化合物5であるラジカル化n-ヘキサンを得た。プラズマ化条件を以下に示す。
<プラズマ化条件>
・プラズマ発生装置の発信周波数:21kHz
・ジェネレータの出力電圧 :280V
・圧力 :大気圧(1013.25hPa)
(2)反応領域形成工程(S2)
次に、装置内の金属製で円柱状の空間内(直径55mm、長さ75mm)にNを螺旋状のガス流4として導入し、この螺旋状のガス流4に対して、大気圧重合処理装置のラジカル化炭化水素化合物用ノズル8から、ラジカル化n-ヘキサン5を噴霧し、螺旋状のガス流4とラジカル化n-ヘキサン5が混合した反応領域6を形成した(反応領域形成工程:S2)。
(3)被覆膜形成工程(S3)
反応領域6が十分に形成された後、無機粉末用ノズル7から、球状アルミナ粉末2を、反応領域6の略中心部を通過するように供給することにより、この球状アルミナ粉末2の表面に、含炭素化合物の被覆膜3を形成した。この際、球状アルミナ粉末の単位時間当たりの供給量(搬送速度)を10g/分とし、球状アルミナ粉末1g当たりのラジカル化n-ヘキサンの反応量が0.02gとなるように、n-ヘキサンの導入量を調整した。
上記処理を1回行い、球状アルミナ粉末2の表面に、含炭素化合物からなり、平均膜厚が10nmの被覆膜3が形成された表面処理粉末1を得た。被覆膜形成工程の条件、被覆膜の厚さ(平均膜厚)、および膜厚のばらつきに関する評価の結果を表1に示す。
なお、表面処理粉末1の被覆膜の平均膜厚と膜厚のばらつきは、次のように評価した。すなわち、表面処理粉末1を樹脂に埋包し、FIB加工装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、FB2200)を用いた断面加工により剥片化試料を作製した。得られた剥片化試料の中から、任意に選択した50箇所について、透過型電子顕微鏡(TEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、HF200)で観察し、測定したそれぞれの被覆膜の膜厚から、その平均値を算出して平均膜厚とした。また、上記50箇所の膜厚と平均膜厚との差の絶対値の最も大きな値を、平均膜厚で除算し百分率で表した値を、膜厚ばらつきの評価に用いた。前記膜厚ばらつき評価用に算出した値が20%以下のものを○(良品)と判断し、20%を超すものを×(不良品)と判断した。
(4)混合工程(S4)
続いて、表面が露出した無機粉末および基油として、平均粒径が0.4μmで不定形の酸化亜鉛粉末と、エステル油(ポリオールエステルとして、ジペンタエリスリトールイソノナン酸エステル(ユニスターH-609B/日油株式会社製)を80質量%、芳香族エステルとして、トリメット酸トリ(2-エチルヘキシルエステル)(東京化成工業株式会社製)を20質量%、それぞれ含有する)とをそれぞれ準備した。そして、上述の表面処理粉末29.25gと、酸化亜鉛粉末17.67gと、エステル油4.41gとを自公転ミキサー(株式会社シンキー製、あわとり練太郎ARV-930Twin)を用いて撹拌混合することにより、熱伝導性グリースを作製した。以上の熱伝導性グリースの作製条件を、構成ごとの含有量比に換算し直して表2に示す。
[熱伝導性グリースの評価]
作製した熱伝導性グリースの熱伝導率を、過渡熱測定装置(ASTMD5470準拠)を用いて室温にて測定した。また、本実施例の熱伝導性グリースの熱伝導率をλ、後述する比較例1(従来技術に相当)、すなわち、表面処理粉末を含有しないこと以外は同様の構成の熱伝導性グリースの熱伝導率をλとして、下記(式1)を用いて、本例の熱伝導性グリースの熱伝導率向上度Rを算出した。これらの結果を表2に示す。
R=λ/λ (式1)
(実施例2)
被覆膜形成工程(S)を5回繰り返すことにより、表面処理粉末の被覆膜の平均膜厚を50nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表1および表2に示す。
(実施例3)
炭化水素化合物としてアセチレンを用いたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表1および表2に示す。
(実施例4)
炭化水素化合物としてシクロオクタンを用いたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表1および表2に示す。
(比較例1)
アルミナ粉末の表面に被覆膜を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表1および表2に示す。
(比較例2)
ラジカル化工程(S1)において、n-ヘキサンの導入量を、球状アルミナ粉末1gに対するn-ヘキサンの反応量が0.0015gとなるように設定して、被覆膜の平均膜厚が0.9nmの表面処理粉末を作製した。そして、混合工程(S)において、この表面処理粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表1および表2に示す。
(比較例3)
ラジカル化工程(S1)において、n-ヘキサンの導入量を、球状アルミナ粉末1gに対するn-ヘキサンの反応量が0.5gとなるように設定して、被覆膜の平均膜厚が150nmの表面処理粉末を作製した。そして、混合工程(Sにおいて、この表面処理粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表1および表2に示す。
Figure 0007467925000001
Figure 0007467925000002
(実施例5)
混合工程(S4)において、表面処理粉末14.45gと、酸化亜鉛粉末28.05gと、エステル油7.50gとを混合したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表3に示す。
(実施例6)
混合工程(S4)において、表面処理粉末37.10gと、酸化亜鉛粉末5.40gと、エステル油7.50gとを混合したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表3に示す。
(実施例7)
混合工程(S4)において、表面処理粉末16.49gと、酸化亜鉛粉末32.01gと、エステル油1.50gとを混合したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表3に示す。
(実施例8)
混合工程(S4)において、表面処理粉末42.34gと、酸化亜鉛粉末6.16gと、エステル油1.50gとを混合したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表3に示す。
(比較例4)
混合工程(S4)において、表面処理粉末24.00gと、酸化亜鉛粉末16.00gと、エステル油10.00gとを混合したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表3に示す。
(比較例5)
混合工程(S4)において、表面処理粉末13.50gと、酸化亜鉛粉末31.50gと、エステル油5.00gとを混合したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表3に示す。
(比較例6)
混合工程(S4)において、表面処理粉末40.50gと、酸化亜鉛粉末4.50gと、エステル油5.00gとを混合したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースを作製し、熱伝導率および熱伝導率向上度を算出した。この試料の作製条件や評価結果を表3に示す。
(比較例7)
混合工程(S4)において、表面処理粉末29.70gと、酸化亜鉛粉末19.80gと、エステル油0.50gとを混合したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性グリースの作製を試みた。しかしながら、基油が少なくすぎてグリース状に混錬することができず、熱伝導性グリースを作製することができなかった。この試料の作製条件や評価結果を表3に示す。
Figure 0007467925000003
(考察)
実施例1~4は、いずれも熱伝導率向上度Rが1.30以上である。すなわち、従来技術に相当する比較例1と比べて、熱伝導率が30%以上向上していることが分かる。一方、比較例2は、熱伝導率が向上しているものの、被覆膜の平均膜厚が1.0μmであり、保管時における酸化などの影響を回避することは困難と考えらえる。また、比較例3は、被覆膜の平均膜厚が120nmを超えており、比較例1よりも熱伝導率が低下している。これは厚すぎる被覆膜が熱伝導を妨げているためと考えられる。
また、表面処理粉末、表面が露出した無機粉末および基油の含有量が本発明の範囲内にある実施例5~8も、アルミナ粉末として、非表面処理のアルミナ粉末を用いた、同一組成および同一製造条件で得られた熱伝導性グリースとの比較において、熱伝導率向上度Rが1.30以上となっている。一方、表面処理粉末の含有量、あるいは、充填剤の含有量が本発明の範囲外にある比較例4~6は、アルミナ粉末として、非表面処理のアルミナ粉末を用いた、同一組成および同一製造条件で得られた熱伝導性グリースとの比較において、十分な熱伝導率の向上が図られていない。また、基油の含有量が少なすぎる比較例7は、基油中に充填剤を分散させるには基油量が少なすぎ、グリース状にすることができなかった。
S1 ラジカル化工程
S2 反応領域形成工程
S3 被覆膜形成工程
S4 混合工程
1 表面処理粉末
2 無機粉末(球状アルミナ粉末)
3 被覆膜
4 螺旋状のガス流
5 ラジカル化炭化水素化合物
6 反応領域
7 無機粉末用ノズル
8 ラジカル化炭化水素化合物用ノズル

Claims (19)

  1. 表面が露出した無機粉末と、無機粉末の表面が含炭素化合物(ただし、ケイ素を含む含炭素化合物を除く。)の被覆膜によって覆われた表面処理粉末とを含有する熱伝導性グリース用充填剤であって、
    前記被覆膜の平均膜厚は1.0nm以上120nm以下であり、
    前記充填剤中の前記表面処理粉末の含有量は32質量%以上88質量%以下である、
    熱伝導性グリース用充填剤。
  2. 前記被覆膜の前記平均膜厚に対する膜厚のばらつきは、20%以下である、請求項1に記載の熱伝導性グリース用充填剤。
  3. 前記表面が露出した無機粉末および前記表面処理粉末を構成する無機粉末は、銅、アルミニウム、銀、カーボン材料、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、シリカ、ダイヤモンドの群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1または2に記載の熱伝導性グリース用充填剤。
  4. 前記表面が露出した無機粉末と、前記表面処理粉末を構成する無機粉末とは、異なる種類の無機粉末からなる、請求項3に記載の熱伝導性グリース用充填剤。
  5. 前記表面が露出した無機粉末および前記表面処理粉末を構成する無機粉末の形状は、球状、紡錘形状、偏平形状、および不定形状の群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤。
  6. 熱伝導性グリース用充填剤と、基油とを含有し、前記熱伝導性グリース用充填剤は、請求項1~5のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤からなり、前記熱伝導性グリース用充填剤の含有量は82質量%以上98質量%以下であり、前記基油の含有量は2質量%以上18質量%以下である、熱伝導性グリース。
  7. 前記基油は、エステル油、鉱油、合成炭化水素油、および、フッ素油の群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項6に記載の熱伝導性グリース。
  8. 前記エステル油は、ポリオールエステルおよび芳香族エステルからなる、請求項に記載の熱伝導性グリース。
  9. 大気圧下でプラズマ化された反応ガスと、キャリアガスを介して供給された炭化水素化合物とを混合し、該炭化水素化合物をラジカル化させて、ラジカル化炭化水素化合物を得るラジカル化工程と、
    前記ラジカル化炭化水素化合物を、無機粉末の表面と反応させることにより、該無機粉末の表面に含炭素化合物(ただし、ケイ素を含む含炭素化合物を除く。)の被覆膜が形成された表面処理粉末を得る被覆膜形成工程と、
    前記表面処理粉末と、表面が露出した無機粉末とを混合して、熱伝導性グリース用充填剤を得る混合工程と、
    を備え、
    前記被覆膜形成工程において、前記被覆膜をその平均膜厚が1.0nm以上120nm以下となるように形成し、および、
    前記混合工程において、前記熱伝導性グリース用充填剤中の前記表面処理粉末が32質量%以上88質量%以下となるように混合する、
    熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  10. 前記被覆膜の前記平均膜厚に対する膜厚のばらつきを、20%以下とする、請求項に記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  11. 前記ラジカル化工程において、前記無機粉末1gに対する前記ラジカル化炭化水素化合物の反応量が0.005g以上0.4g以下となるように、前記炭化水素化合物を供給する、請求項または10に記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  12. 前記ラジカル化工程の後であって前記被覆膜形成工程の前に、螺旋状のガス流によって画定され、前記ラジカル化炭化水素化合物が均一に分散した反応領域を形成する反応領域形成工程をさらに有し、前記被覆膜形成工程において、前記反応領域内に前記無機粉末を供給する、請求項11のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  13. 前記螺旋状のガス流として、Ar、He、N 、O 、および空気の群から選択される少なくとも1種を用いる、請求項12に記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  14. 前記被覆膜形成工程において、該無機粉末の単位時間当たりの投入量を1g/分~100g/分とする、請求項13のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  15. 前記炭化水素化合物として、炭素数が4以下の炭化水素系ガス、炭素数が4以下の炭化水素系ガスを主成分とする炭化水素化合物、炭素数が5~10の範囲にある炭化水素系溶剤、または、炭素数が5~10の範囲にある炭化水素系溶剤を主成分とする炭化水素化合物を用いる、請求項14のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  16. 前記プラズマ化された反応ガスを生成するためのガスとして、アルゴン、ヘリウム、窒素、酸素、および、空気の群から選択される少なくとも1種を用いる、請求項15のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  17. 前記キャリアガスとして、アルゴン、ヘリウム、および窒素の群から選択される少なくとも1種を用いる、請求項16のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  18. 前記被覆膜形成工程を複数回繰り返す、請求項17のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤の製造方法。
  19. 熱伝導性グリース用充填剤と、基油とを混合して、熱伝導性グリースを得る混合工程を備え、前記混合工程において、前記熱伝導性グリース用充填剤として、請求項1~5のいずれかに記載の熱伝導性グリース用充填剤を用い、および、前記熱伝導性グリース用充填剤の含有量を82質量%以上98質量%以下、前記基油の含有量を2質量%以上18質量%以下となるようにする、熱伝導性グリースの製造方法。
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