JP7466145B2 - イオン透過膜積層体 - Google Patents

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Description

本発明はイオン透過膜積層体に関する。
レアメタルは、携帯電話・スマートフォン、家電品、および自動車部品など数多くのハイテク機器において必要不可欠であるものの、安定的な資源確保が難しいことから、レアメタル回収技術に注目が集まりつつある。また、今まで産業廃棄していた廃液に処理工程を加えることで、廃棄することなく再利用する技術も重要視されている。レアメタル回収技術および廃液の再利用技術には、イオン交換樹脂または吸着剤を用いることが主流であるが、近年、循環型社会構築のために環境に配慮した回収・再利用プロセスとして様々な機能膜を用いる分離技術活用が有効的と考えられつつある。
近年、リチウムイオン電池の原材料として、リチウム(Li)の産業上における重要性が高まっている。特に電気自動車(EV)用途でLiイオン電池が採用されるようになり、その原材料として大量のLiが必要とされつつある。Liは鉱石、または水分蒸発量の多い乾燥した地域の塩湖などから採取することも可能であるが、海水中に非常に多く含まれていることも知られており、地球上の全海水中に含まれるLiの総量は、地上埋蔵量よりはるかに多いことが知られている。また、他のレアメタルと同様に、安定的な資源確保の目的で、産業廃棄していたLiイオン電池からLiを回収する検討も進められつつある。
しかしながら、Liは、海水1リットル当たり約0.2mgしか含まれていない。また、産業廃棄していたLiイオン電池には、Li以外にニッケル(Ni)またはコバルト(Co)などの化合物も多く含まれている。そのため、Liは、海水およびLiイオン電池から効率よく回収することが難しい金属材料といえる。
こうした背景の下、特許文献1では、Liを選択的に透過させる選択透過膜を用いて、Liイオンを含む原液から効率的にLiのみ回収することを試みている。特許文献1では、Liイオンを選択的に透過させる選択透過膜が、Liを含む無機化合物の焼結体であり、焼結体の大きさとして5cm角程度のものを面内方向で接合して一体化し、実質的に大面積とした選択透過膜が開示されている。
WO2015/020121
しかしながら、このようなイオン透過膜では、イオンを選択的かつ高効率に透過させる十分なイオン透過機能を発揮できない場合があることがわかった。
本発明は、上記問題を解決するものであって、イオンを選択的かつ高効率に透過させる十分なイオン透過機能を発揮できるイオン透過膜積層体を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、イオン伝導体粒子および繊維基材を含む上部層と、イオン伝導体粒子の焼結体を含み、且つ前記上部層の下部に配置された下部層と、を有してなるイオン透過膜積層体であって、
前記上部層は前記下部層よりも疎水性であり、
前記上部層中の前記イオン伝導体粒子は、前記繊維基材内部に埋め込まれた部分と、前記繊維基材表面に露出した部分とを有し、
厚さ方向において、前記上部層中の前記露出した部分によって前記上部層の上面から下面まで連続した接続部を有し、且つ前記下部層中の前記イオン伝導体粒子の焼結体によって前記下部層の上面から下面まで連続しているイオン透過膜積層体である。
本発明の態様2は、前記上部層と前記下部層とが接している態様1に記載のイオン透過膜積層体である。
本発明の態様3は
前記上部層と前記下部層との間に中間層が配置されており、
前記中間層は、前記上部層および前記下部層よりも空隙率が高く、且つ前記下部層よりも親水性である態様1に記載のイオン透過膜積層体である。
本発明の態様4は、前記イオン伝導体粒子がリチウム(Li)を含む無機化合物である態様1~3のいずれか1つに記載のイオン透過膜積層体である。
本発明の態様5は、前記繊維基材が、フッ化ビニリデンのホモポリマーおよびコポリマー、テトラフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにクロロトリフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群より選択されるいずれか1つを含む、態様1~4のいずれか1つに記載のイオン透過膜積層体である。
本発明の態様6は、下記式(1)を満たす態様1~5のいずれか1つに記載のイオン透過膜積層体である。

B×0.2<A<B ・・・(1)

Aは、前記繊維基材の平均繊維径(nm)であり、Bは前記上部層中の前記イオン伝導体粒子の平均粒子径(nm)である。
本発明の実施形態に係るイオン透過膜積層体は、イオンを選択的かつ高効率に透過させる十分なイオン透過機能を発揮することができる。
図1Aは、本発明の実施形態1に係るイオン透過膜積層体1の模式図である。 図1Bは、図1Aのうち、破線で囲ったA部分の拡大図である。 図1Cは、図1Bに示すIC-IC線断面図である。 図1Dは、図1Aのうち、破線で囲ったB部分の拡大図である。 図1Eは、図1Aのうち、破線で囲ったC部分の拡大図である。 図2Aは、上部層2表面の走査型電子顕微鏡による観察結果の一例である。 図2Bは、下部層3表面の走査型電子顕微鏡による観察結果の一例である。 図3Aは、本発明の実施形態に係るイオン透過膜において、繊維基材の平均繊維径がイオン伝導体粒子の平均粒子径の0.8倍である場合の、繊維1本を拡大した模式図である。 図3Bは、図3Aに示すIIIB-IIIB線断面図である。 図3Cは、本発明の実施形態に係るイオン透過膜において、繊維基材の平均繊維径がイオン伝導体粒子の平均粒子径よりも大きい場合の、繊維1本を拡大した模式図である。 図3Dは、図3Cに示すIIID-IIID線断面図である。 図3Eは、本発明の実施形態に係るイオン透過膜において、繊維基材の平均繊維径がイオン伝導体粒子の平均粒子径の0.2倍以下である場合の、繊維基材の繊維1本を拡大した模式図である。 図3Fは、図3Eに示すIIIF-IIIF線断面図である。 図4Aは、本発明の実施形態2に係るイオン透過膜積層体10の模式図である。 図4Bは、図4Aのうち、破線で囲ったA部分の拡大図である。 図5Aは、イオン透過機能の評価方法を示す模式図である。 図5Bは、イオン透過機能の評価方法を示す模式図である。 図6は、実施例の結果をまとめた表である。
以下本発明の実施形態に係るイオン透過膜積層体について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、同じ構成部分には同じ符号を付して、適宜説明を省略している。また、本明細書において、「平均繊維径」および「平均粒子径」は、それぞれメジアン径を意味する。
<本発明の実施形態1>
図1Aは、本発明の実施形態1に係るイオン透過膜積層体1の模式図を示しており、図1Bは、図1Aのうち、破線で囲ったA部分の拡大図を示しており、図1Cは、図1Bに示すIC-IC線断面図を示しており、図1Dは、図1Aのうち、破線で囲ったB部分の拡大図を示しており、図1Eは、図1Aのうち、破線で囲ったC部分の拡大図を示している。
図1Aに示すように本発明の実施形態1に係るイオン透過膜積層体1は、上部層2と、上部層2の下部に配置された下部層3とを含む。なお、図1Aでは上部層2の上面の面積と、下部層3の上面の面積とが異なっているが、同じ面積を有していてもよい。
図1Bに示すように、上部層2はイオン伝導体粒子4と繊維基材5(ドットパターンで示される)とを含む。これにより、イオン透過膜積層体1表面に凹凸を効果的に形成できる。その結果、イオン透過膜積層体1で処理する対象との接触面積を大きくすることができ、選択的なイオンの透過を促進させることができる。
図1Cに示すように、イオン伝導体粒子4は、繊維基材5の内部に埋め込まれた部分(以下、「埋込部」と称することがある)4a(図1Cの破線で囲った部分)と、表面に露出した部分(以下、「露出部」と称することがある)4bとを有する。露出部4bにより選択的にイオンを透過させることができ、埋込部4aによりイオン伝導体粒子4を繊維基材5に固定することができる。
図1Dに示すように、下部層3は、イオン伝導体粒子の焼結体6を含む。このような構造をとることにより、下部層3の空隙率を低くすることができ、下部層3を含むイオン透過膜積層体1においてクロスオーバー現象を抑制することができる。ここで、「クロスオーバー現象」とは、イオンを含む大量の原液を高速に処理する場合に、イオンを選択的に透過させることなく、その原液がそのまま透過してしまう現象をいう。なお、図1Dでは、下部層3は若干の空隙7を含んでいるが、空隙7がなくてもよい。
図1Eに示すように、イオン透過膜積層体1の厚さ方向Zにおいて、上部層2の上面2aから下面2bまで、露出部4bによって連続した接続部2cを有する。これにより、上部層2において、イオンが接続部2c中を伝導することができる。
さらに、下部層3中のイオン伝導体粒子の焼結体6によって、下部層3の上面3aから下面3bまで連続している。これにより、下部層3において、イオンが広範囲にわたって上面3aから下面3bまで伝導することができる。
上記構成をとることにより、イオン伝導パス(一点鎖線の矢印)が形成されて、イオン透過膜積層体1の上面から下面まで、選択的にイオンを透過させることが可能となる。なお、上部層2と下部層3は接触していなくても、例えばその間に存在する水分等によりイオン伝導させることができるが、好ましくは、上部層2と下部層3が接触していることが好ましく、具体的には、上部層2の下面2bと下部層3の上面3aとが接触していることが好ましい。これにより、イオンを選択的に透過させる速度を向上させることができる。
また上部層2は、下部層3よりも疎水性である必要がある。上部層2が下部層3よりも親水性であると、上部層2にイオンを含む水溶液が浸透し、イオンを選択的に透過させるという上部層2の機能が失われてしまう。例えば、繊維基材5を疎水性とし、かつ上部層2中において繊維基材5を5体積%超とすることで、上部層2を下部層3よりも疎水性とすることができる。なお、上部層2の水接触角が下部層3の水接触角よりも大きい場合に、上部層2が下部層3よりも疎水性であると判断できる。
図2Aは、上部層2表面の走査型電子顕微鏡による観察結果の一例である。図2Aに示すように、破線部で囲まれた部分において、イオン伝導体粒子4および繊維基材5が結合した部分が観察される。このような部分を断面観察することにより、イオン伝導体粒子4の埋込部4aおよび露出部4bを確認することができる。
図2Bは下部層3表面の走査型電子顕微鏡写真による観察結果の一例である。図2Bに示すように下部層3は、イオン伝導体粒子の焼結体6を含むことにより、空隙が非常に少ないことが分かる。
上部層1中のイオン伝導体粒子4としては、例えば、リチウムイオン伝導体である窒化リチウム(LiN)、Li10GeP12、(La,Li)TiO、(ここで、x=2/3-a、y=3a―2b、z=3-b、0<a≦1/6、0≦b≦0.06、y>0)、Li置換型NASICON(Na Super Ionic Conductor)型結晶であるLi1+x+yAl(Ti,Ge)2-xSi3-y12(ここで、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6)などLiを含む無機化合物が好適に使用され得る。これらの材料は、いずれも10-4~10-3Scm-1以上の高いLiイオン伝導率を示す。なお、イオン伝導体粒子4は、イオン伝導性を有していれば上記の材料に限定されるものではない。なお、イオン伝導率が10-7Scm-1以上の場合、イオン伝導性を有すると判断する。
イオン伝導体粒子4の平均粒子径は、50nm以上500μm以下とすることが、イオン伝導体粒子4が埋込部4aと露出部4bとを有する構成を実現する上で好ましい。
イオン伝導体粒子4の、イオン伝導体粒子4および繊維基材5の合計体積に対する割合は、30体積%以上にしておくことが好ましい。この範囲にしておくことで、イオン伝導体粒子4の露出部4bが互いに接触しやすくなり、接続部2cが形成されやすくなる。より好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは40体積%以上である。
また、上記割合は、95体積%以下にしておくことが好ましい。これにより、繊維基材5が一定以上の体積を占めることとなり、十分な破断伸び率を確保できるとともに、イオン伝導体粒子4の埋込部4aを確保しやすくなり、イオン伝導体粒子4の脱落を抑制できる。より好ましくは90体積%以下であり、さらに好ましくは85体積%以下である。
繊維基材5は、疎水性および柔軟性を有してもよい。例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマーおよびコポリマー、テトラフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにクロロトリフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群より選択されるいずれか1つを含むことが好ましい。繊維基材5が疎水性を有することで、イオン透過膜積層体1による処理の対象、例えば海水などが、そのまま上部層2を透過してしまう現象を効果的に抑制することができる。また、繊維基材5が柔軟性を有することで、上部層2およびそれを含むイオン透過膜積層体に高い耐久性を付与することができる。例えば、ASTM D-570の試験方法により測定される吸水率が0.1%以下の場合、材料が疎水性を有すると判断し、JIS K7161の試験方法により測定される破断伸び率が1%以上の場合、材料が柔軟性を有すると判断する。
繊維基材5は、互いに接触していることが好ましく、この接触部分において、繊維基材5同士が融着していることがより好ましい。これにより、上部層2およびそれを含むイオン透過膜積層体1の機械的強度、特に破断伸び率が向上する。
図3Aは、繊維基材5の平均繊維径がイオン伝導体粒子4の平均粒子径の0.8倍である場合の、繊維1本を拡大した模式図であり、図3Bは、図3Aに示す繊維のIIIB-IIIB線断面図である。図3Bに示すように、イオン伝導体粒子4の埋込部4aが十分に確保できているため、イオン伝導体粒子4が繊維基材5にしっかりと固定でき、かつ、イオン伝導体粒子4の露出部4bも十分に大きく確保できている。そのことから、イオン伝導体粒子4が繊維基材5の表面にも十分露出した状態で担持できているため、イオン伝導体粒子4の脱落を抑制しつつ、イオンの移動を促進させることができる。なお、イオン伝導体粒子4のうち埋込部4aが体積比で5%以上であれば、埋込部4aが十分に確保できているといえる。また、イオン伝導体粒子4のうち露出部4bが体積比で50%以上であれば、露出部4bが十分に確保できているといえる。
図3Cは、繊維基材5の平均繊維径がイオン伝導体粒子4の平均粒子径よりも大きい場合の、(凝集していない部分の)繊維1本を拡大した模式図であり、図3Dは、図3Cに示す繊維のIIID-IIID線断面図である。図3Dに示すように、イオン伝導体粒子4の埋込部4aが十分に確保できているため、イオン伝導体粒子4が繊維基材5にしっかりと固定でき、その結果イオン伝導体粒子4の脱落を抑制できる。しかしながら、イオン伝導体粒子4の露出部4bがほとんどなく、つまりイオン伝導体粒子4が繊維基材5の表面にほとんど露出できていないため、図3Aおよび図3Bの場合と比較してイオンの移動を促進することはできない。
図3Eは、図3Eは、繊維基材5の平均繊維径がイオン伝導体粒子4の平均粒子径の0.2倍以下である場合の、(凝集していない部分の)繊維1本を拡大した模式図であり、図3Fは、図3Eに示す繊維のIIIF-IIIF線断面図である。図3Fに示すように、イオン伝導体粒子4の埋込部4aが、ほとんど確保できていないため、図3A~図3Dの場合と比較してイオン伝導体粒子4が脱落しやすくなる。
以上より、繊維基材5の平均繊維径をAナノメートル(nm)、イオン伝導体粒子4の平均粒子径をBナノメートル(nm)としたとき、B×0.2<A<Bを満たすことが好ましい。より好ましくは、B×0.2<A<B×0.75、さらに好ましくは、B×0.2<A<B×0.5を満たすことである。
繊維基材5の平均長さは、繊維基材の平均繊維径の100倍以上であることが好ましい。これにより、イオン透過膜積層体1の機械的強度、特に破断伸び率が向上する。
上部層2の膜厚は薄い程、イオンの移動を促進できるが、一方で耐久性は低下するため、イオン透過膜積層体1(または後述するイオン透過膜積層体10)の使用条件によって最適な範囲に設計され得る。また、上部層2は、本発明の目的が達成される範囲内で、イオン伝導体粒子4および繊維基材5以外の他の部材を含んでいてもよい。
上部層2の空隙率は、10%以上30%以下が好ましい。10%以上とすることで、上部層2の上面2a(すなわちイオン透過膜積層体1の上面)に凹凸を効果的に形成でき、イオン透過膜積層体1(または後述するイオン透過膜積層体10)で処理する対象との接触面積を向上させることができ、イオンの移動を促進できる。また30%以下とすることで、クロスオーバー現象を効果的に抑制することができ、さらに、接続部2cが形成されやすくなる。なお、空隙率は、上部層2がイオン伝導体粒子4および繊維基材5からなる場合、以下の式(2)により算出できる。

空隙率(%) = 1-Wa/(Va×(Dip×rip+D×r))×100 ・・・(2)

ここで、Waは、上部層2の重量(g)であり、Vaは上部層2の体積(cm)であり、Dipはイオン伝導体粒子4の密度(g/cm)であり、ripはイオン伝導体粒子4と繊維基材5との合計体積に対するイオン伝導体粒子4の体積比(%)であり、Dは繊維基材5の密度(g/cm)であり、rはイオン伝導体粒子4と繊維基材5との合計体積に対する繊維基材5の体積比(%)である。
上部層2の水接触角は、45°以上であることが好ましい。これにより、上部層2にイオンを含む水溶液が浸透するのを抑制し、イオンを選択的に透過させるという上部層2の機能を高めることができる。
下部層3のイオン伝導体粒子の焼結体6としては、例えば、リチウムイオン伝導体である窒化リチウム(LiN)、Li10GeP12、(La,Li)TiO、(ここで、x=2/3-a、y=3a―2b、z=3-b、0<a≦1/6、0≦b≦0.06、y>0)、Li置換型NASICON(Na Super Ionic Conductor)型結晶であるLi1+x+yAl(Ti,Ge)2-xSi3-y12(ここで、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6)などLiを含む無機化合物が好適に使用され得る。これらの材料は、いずれも10-4~10-3Scm-1以上の高いLiイオン伝導率を示す。なお、イオン伝導体粒子の焼結体6は、イオン伝導性を有していれば上記の材料に限定されるものではない。なお、イオン伝導率が10-7Scm-1以上の場合、イオン伝導性を有すると判断する。
イオン伝導体粒子の焼結体6は、上部層2に用いたイオン伝導体粒子4の焼結体としてもよい。
下部層3中のイオン伝導体粒子の焼結体6の含有率は、90体積%以上であることが好ましい。これにより、イオン伝導体粒子の焼結体6によって、下部層3の上面3aから下面3bまで広範囲にわたって連続した構造を形成することができる。より好ましくは、下部層3がイオン伝導体の焼結体6からなることである。
下部層3の空隙率は10%未満であることが好ましい。10%未満にすることで、クロスオーバー現象を効果的に抑制できる。なお、空隙率は、下部層3がイオン伝導体の焼結体6からなる場合、以下の式(3)により算出できる。

空隙率(%) = 1-Wb/(Vb×D)×100 ・・・(3)

ここで、Wbは、下部層3の重量(g)であり、Vbは下部層3の体積(cm)であり、Dはイオン伝導体粒子の焼結体6の密度(g/cm)である。
下部層3の膜厚は、薄い程、イオン透過機能が向上するが、一方で耐久性は低下するため、イオン透過膜積層体1(または後述するイオン透過膜積層体10)の使用条件によって最適な範囲に設計され得る。また、下部層3は、本発明の目的が達成される範囲内で、イオン伝導体粒子の焼結体6以外の他の部材を含んでいてもよい。
<本発明の実施形態2>
図4Aは、本発明の実施形態2に係るイオン透過膜積層体10の模式図を示している。図4Aに示すように、イオン透過膜積層体10は、本発明の実施形態1とは異なり、上部層2と下部層3との間に中間層11が配置されている。なお、図4Aでは上部層2の上面の面積、中間層11の上面の面積および下部層3の上面の面積とが異なっているが、同じ面積を有していてもよい。
中間層11は、水などの極性溶媒を含侵することが可能な層である。中間層11が例えば水を含むことにより、上部層2を透過したイオンを、中間層11で一旦保持することができる。中間層11に保持されたイオン水は、上部層2を透過する前のイオン水よりもイオン濃度を高くすることができ、(中間層11がない場合と比較して)下部層3中のイオン移動を促進することができる。
中間層11は、上部層2および下部層3よりも空隙率が高く、下部層3よりも親水性である。このような構成にすることにより、中間層11は十分に水などの極性溶媒を含侵することができるようになる。なお、中間層11の水接触角が下部層3の水接触角よりも小さい場合に、中間層11が下部層3よりも親水性であると判断できる。また、中間層11の吸水性が非常に高い場合、すなわち、水接触角測定の際中間層11に水が吸収されて中間層11の水接触角を測定できない場合においても、中間層11が下部層3よりも親水性であると判断できる。
図4Bは、図4Aのうち、破線で囲ったA部分の拡大図を示す。図4Bに示すように、イオン透過膜積層体10は、イオン透過膜積層体10の厚さ方向Zにおいて、上部層2の接続部2cと、水が含侵された中間層11と、下部層3のイオン伝導体粒子の焼結体6によって、イオン伝導パス(一点鎖線の矢印)が形成されて、選択的にイオンを透過させることが可能となる。
中間層11は、上部層2および下部層3よりも空隙率が高く、下部層3よりも親水性であればよく、例えば、布、紙、ガラス繊維シート、天然繊維シート、樹脂製不織布および合成樹脂連続気孔体などの高空隙な支持体から選択することができる。
中間層11の膜厚は、厚い程、イオンを濃縮する機能が向上するが、イオン透過膜積層体10の容積が大きくなるため、使用条件によって最適な範囲に設計され得る。
中間層11の空隙率は70%超であることが好ましい。70%超とすることで、水を含侵しやすくなる。なお、空隙率は、以下の式(4)により算出できる。

空隙率(%) = 1-Wc/(Vc×D)×100 ・・・(4)

ここで、Wcは、中間層11の重量(g)であり、Vcは中間層11の体積(cm)であり、Dは中間層11の原材料の密度(g/cm)である。
中間層11の水接触角は、30°以下であることが好ましい。これにより、中間層11が水を含侵しやすくなる。なお中間層11の水接触角は、イオン透過膜積層体10のうち上部層2または下部層3を除去して、中間層11表面を露出させてから測定することが可能である。また、イオン透過膜積層体10に使用されている中間層11と素材が同じ層を別途用意して水接触角を測定することも可能である。
イオン透過膜積層体1または10は、単体でイオン透過に使用されてもよいし、電気透析装置などのイオン透過装置に組み込まれても良い。
イオン透過膜積層体1または10がイオン透過装置に組み込まれていると、大量の原液を高速に処理する場合に、高い圧力がかかっても破壊されにくく、かつ、イオン伝導体粒子4の脱落が大幅に抑制された、イオン透過装置およびイオン透過方法を実現することができる。
イオン透過方法については、所望のイオンを含む水などの溶媒、土壌、および、産業廃棄物などにイオン透過膜積層体1または10を接触させることができればよい。
イオン透過膜積層体1または10が接触させられる土壌および産業廃棄物などは、水などの溶媒で濡れていることが望ましい。イオン透過膜積層体1または10が水などの溶媒を介して接触させられると、イオン透過が効率的に行われる。そして、水などの溶媒、土壌、および産業廃棄物などに含まれる所望のイオンを脱離するために、超音波処理、またはマイクロ/ナノバブル発生装置によるバブリング処理などが必要に応じて併用されると、イオン透過がより効率的に行われる。
次に、本発明の実施形態に係るイオン透過膜積層体1および10の製造方法について説明する。
本発明の実施形態1に係るイオン透過膜積層体1の製造方法は、(a)上部層2の原料を作製するステップと、(b)上部層2の原料を紡糸するステップと、(c)下部層3を用意するステップと、(d)上部層2と下部層3を積層するステップとを含む。
(a)上部層2の原料を作製するステップでは、イオン伝導体粒子4と繊維基材5の材料である樹脂を混合する。この際、混錬機を用いて溶媒に分散することもできるが、熱可塑性樹脂の場合には、粉体混合機によるドライブレンドを行うこともできる。
(b)上部層2の原料を紡糸するステップでは、作製した上部層2の原料が液体の場合には、通常の電界紡糸法のような湿式紡糸法によって紡糸することができる。
電界紡糸法により紡糸する場合、原料液に含まれる繊維基材5の原料の重量固形分濃度により、繊維基材5の繊維径を調整することができる。すなわち、繊維基材5の原料の重量固形分率を増大させることにより繊維基材5の繊維径を太くすることができ、繊維基材5の原料の重量固形分率を減少させることにより、繊維基材5の繊維径を細くすることができる。
ここで、イオン伝導体粒子4の埋込部4aおよび露出部4bを十分に確保するために、イオン伝導体粒子4の平均粒子径との関係において、繊維基材5の原料の重量固形分率により繊維基材5の繊維径を適宜調整すればよい。
また、作製した原料が粉体のドライブレンドの場合には、通常の溶融紡糸法、または、溶融紡糸法と電界紡糸法とを組み合わせた紡糸法によって紡糸することができる。以上により上部層2を形成することができる
(b)上部層2の原料を紡糸するステップ後に、上部層2をプレスするステップを含んでもよい。プレスするステップにおいては、紡糸した後の上部層2を通常の平板プレスまたはロールプレス装置によってプレスすることができる。この際、イオン伝導体粒子4および繊維基材5の材料である樹脂が溶融、変質しない程度に温度をかけてプレスすることもできる。このプレスするステップにより、空隙率を調整することができる。
また、このプレスするステップにより、複数のイオン伝導体粒子4の露出部4b同士が、より確実に互いに接触するようになる。また、複数の繊維基材5は、繊維基材5同士が、より確実に互いに接触するようになり、上部層2の機械的強度が向上する。
(c)下部層3を用意するステップでは、イオン伝導体粒子の焼結体6を含む下部層3を用意する。例えば、イオン伝導体粒子を焼結することによって、イオン伝導体粒子の焼結体6およびそれを含む下部層3を用意することができる。
(d)上部層2と下部層3を積層するステップでは、上部層2と下部層3を積層し、上記プレスするステップと同様の処理により、イオン透過膜積層体1を作製することができる。この際、剥離およびズレが発生しないように、上部層2および下部層3を固定することもでき、一般的な接着剤によって接合することもできる。
なお、(b)上部層2の紡糸するステップにおいて、下部層3を下地基材とすることで、直接積層体を形成することもできる。この場合、(d)下部層3を積層するステップを省略することもできる。
接続部2cの形成方法について、例えば、上部層2中のイオン伝導体粒子4および繊維基材5の合計体積に対するイオン伝導体粒子4の割合を30体積%以上とし、且つ通常の平板プレスまたはロールプレス装置によって上部層2をプレスして空隙率を30%以下にすることで、接続部2cを形成することができる。
本発明の実施形態2に係るイオン透過膜積層体10の製造方法は、(a)上部層2の原料を作製するステップと、(b)上部層2の原料を紡糸するステップと、(c)下部層3を用意するステップと、(c2)中間層11を用意するステップと、(d2)上部層2、中間層11および下部層3を積層するステップとを含む。ここで、(a)~(c)工程については、イオン透過膜積層体1の製造方法と同様であり、また(c)工程後に、上部層2をプレスするステップを含んでもよい。
(c2)中間層11を用意するステップでは、中間層11として、例えば、布、紙、ガラス繊維シート、天然繊維シート、樹脂製不織布または合成樹脂連続気孔体などの高空隙な支持体を用意する。
(d2)上部層2、中間層11および下部層3を積層するステップでは、上部層2と下部層3の間に中間層11を挟み、上記のプレスするステップと同様の処理により、積層体を作製することができる。この際、剥離およびズレが発生しないように、上部層2、中間層11および下部層3を固定することもでき、一般的な接着剤によって接合することもできる。また、上部層2および中間層3に含まれ得る熱可塑性樹脂成分を熱プレスによって溶融させて接合することもできる。
なお、(b)上部層2の紡糸するステップにおいて、中間層11を下地基材とすることで、上部層2および中間層11の積層体を形成することもできる。この場合、(d2)中間層11と下部層3を積層するステップでは、上部層2および中間層11の積層体と、下部層3とを積層するだけでよい。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の実施形態の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
以下の製造方法によってイオン透過膜積層体を製造した。
イオン伝導体粒子として、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉末(オハラ社製、LICGC粉末材)が、繊維基材の素材であるポリフッ化ビニリデン樹脂(スリーエム社製、ダイニオンフッ素ポリマーTHV221)との合計に対して重量比で68%(体積比で55%)となるように秤量し、これらをジメチルアセトアミド(DMA)に重量固形分率が35%となるようにホモミキサーを用いてポリフッ化ビニリデンを溶解させつつイオン伝導体粒子を分散させた。このようにして作製した分散液(すなわち上部層の原料)を気温23℃、湿度50%の恒温恒湿下で、内径φ720μmの金属ニードルノズルに20kVの高電圧を印加し、電界紡糸法によって紡糸した。上記以外の送液圧力および紡糸距離などの条件については、液滴などが発生せず、完全に紡糸できるように調整を行っている。紡糸後に、ロールプレス装置によってプレスを行うことで空隙率を調整し、50mm角サイズに切り出して上部層とした。
次に、下部層として、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス焼結体(オハラ社製、LICGC焼結体、50mm角サイズ)を用い、作製した上部層と重ねて、ロールプレス装置によってプレスすることにより、イオン透過膜積層体を作製した。なお、上部層で用いたリチウムイオン伝導性ガラスセラミック粉末は、下部層に用いた上記リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス焼結体を粉砕して得られたものである。
次に、様々な評価項目について具体的に説明する。
(イオン伝導体粒子の平均粒子径)
イオン伝導体粒子(リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉末)を水に分散させたものに対して、平均粒子径を測定した。具体的には、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、MT―3300EXII)を用いて、JIS Z8825(2013)に準拠して、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定により得られた体積基準の積算分率における50%粒子径(D50)を測定した。その結果、実施例1のイオン伝導体粒子の平均粒子径は400nmであった。
(繊維基材の平均繊維径および平均長さ)
SEM(PHENOM-World社製 走査型電子顕微鏡 Phenom G2Pro)を用いて、作製したイオン透過膜の表面像を、繊維が数10本表示される程度の倍率で10枚取得した。1枚のSEM像から10本の繊維をランダムに選択し、10枚のSEM像から選択した合計100本の繊維について、イオン伝導体粒子が埋め込まれていない箇所の繊維径および繊維長さを測定した。計測した繊維径から繊維基材の平均繊維径(メジアン繊維径)を算出し、390nmであった。また、計測した繊維長さから繊維基材の平均長さを算出し、平均繊維径の100倍以上であった。
(上部層、中間層および下部層の膜厚・空隙率)
50mm角サイズに切り出したイオン透過膜の密度および内部構造が変化しないよう潰さずにデジタルマイクロメータで膜厚を測定し、重量および原材料の密度を求めた上で、上記式(2)~(4)から空隙率を算出した。測定の結果、上部層においては、膜厚180μmであり、リチウムイオン伝導性ガラスセラミック粉末およびポリフッ化ビニリデン樹脂の密度は、それぞれ3.05g/cmおよび1.78g/cmであり、上部層の重量は0.87gであったことから、空隙率22.0%という結果を得た。下部層においては、膜厚90μmであり、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックの密度が3.05g/cmであり、下部層の重量は0.64gであったことから、空隙率6.7%という結果を得た。
(上部層、中間層および下部層の水接触角)
各層の水接触角については、接触角計CA-X(協和界面化学製)を用いてθ/2法にて測定を行った。上部層においては、114°、下部層においては、36°という結果を得た。
(イオン回収率、イオン移動速度、クロスオーバー率)
図5Aおよび図5Bは、イオン透過機能の評価方法を説明する模式図であり、図5Aはイオン透過前の模式図であり、図5Bはイオン透過後の模式図である。図5Aに示すような貯留槽12を、作製した50mm角のイオン透過膜積層体1(またはイオン透過膜積層体10)で原液側12aと回収側12bに間仕切りし、原液側12aには、イオン13を投入し、回収側12bには、純水のみを投入した。イオン13として、Liイオン、NiイオンおよびCoイオンをそれぞれ、純水に対して100ppmの濃度で投入した。この評価において、上部層、が乖離やずれが起こると正確な評価ができないため、端部を確実に固定して評価を行っている。原液側12aをマグネットスターラーで攪拌しながら、5時間後まで1時間毎に、誘導結合プラズマ発光分析装置(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製 iCAP7400)にて、図5Bに示すように回収側12bに移動したイオン13の移動量(mg)を測定した。5時間後の各イオン移動量(mg)を、初期の原液側各イオン量(mg)で除した比(百分率)を各イオン回収率(%)として算出した。イオン移動速度については、1時間毎に測定した各イオン移動量(mg)のうち最大の値を採用して、それを1時間で除した値(mg/hr)とした。クロスオーバー率は、全イオン(Li、NiおよびCo)回収率の和に対するNiイオン回収率およびCoイオン回収率の和の比(百分率)として計算した。Liイオン回収率は2.1%、Liイオン移動速度は0.71mg/hrとの結果を得た。一方、NiイオンおよびCoイオンについては、イオン回収率は0.00%、イオン移動速度は0.000mg/hrとの結果を得たため、クロスオーバー率は0.00%の結果を得た。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の条件で上部層を作製した。上部層を紡糸する際、中間層として使用した天然木材パルプ不織布(王子キノクロス株式会社製、キノクロス不織布K-40、厚み1mm)を下地基材として紡糸した。この方法により、上部層と中間層を密に接合することができた。その後、ロールプレス装置によってプレスを行うことで空隙率を調整し、50mm角サイズに切り出して上部層と中間層の積層体を作製した。そして、実施例1と同様の下部層1を重ねてロールプレス装置によってプレスすることによりイオン透過膜積層体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。なお、中間層として使用した天然木材パルプ不織布は、非常に親水・保水性が高く、水の接触角評価において瞬間的に吸水してしまうため「≒0°」という評価結果とした。中間層の空隙率としては、膜厚は350μmにプレスされており、天然木材パルプ不織布の原料であるパルプ繊維の密度は1.50g/cmであり、中間層の重量は0.09gであったことから、空隙率93.1%という結果を得た。
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様に作製した上部層の単層とした。
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同様に用意した下部層の単層とした。
(比較例3)
比較例3では、上部層において、イオン伝導体粒子として、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉末(オハラ社製、LICGC粉末材)が、繊維基材の素材であるポリビニルアルコール樹脂(クラレ社製、PVA217)と架橋剤(マツモトファインケミカル製、オルガチックスTC―310)との合計に対して重量比で76%(体積比で55%)となるように秤量し、これらを水に重量固形分率が30%となるようにホモミキサーを用いてポリビニルアルコール樹脂を溶解させつつイオン伝導体粒子を分散させた。ここで、架橋剤については、ポリビニルアルコール樹脂の耐水性を十分に上げるためにポリビニルアルコール樹脂に対して重量比で30%となるように添加している。このようにして作製した分散液を気温23℃、湿度50%の恒温恒湿下で、内径φ720μmの金属ニードルノズルに30kVの高電圧を印加し、電界紡糸法によって紡糸を行った。上記以外の送液圧力および紡糸距離などの条件については、液滴などが発生せず、完全に紡糸できるように調整を行っている。そして、紡糸した後、ロールプレス装置によってプレスを行うことで空隙率を調整し、50mm角サイズに切り出してイオン透過ファイバー層を作製した。ポリビニルアルコールの架橋を促進する目的で乾燥炉にて105℃の温度で2時間の乾燥処理を行った。そして、実施例1と同様の下部層を重ねてロールプレス装置によってプレスすることによりイオン透過膜積層体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。上部層の空隙率としては、膜厚182μmであり、リチウムイオン伝導性ガラスセラミック粉末およびポリビニルアルコール樹脂、架橋剤の密度は、それぞれ3.05g/cmおよび1.25g/cm、1.07g/cmであり、上部層の重量は0.78gであったことから、空隙率22.7%という結果を得た。
(比較例4)
比較例4では、実施例2と同様の条件で上部層を作製したが、上部層を紡糸する際、中間層として使用するポリプロピレン不織布(前田工繊製、スパンボンド不織布SP-1050E、厚み0.32mm)を下地基材として紡糸した。この方法により、上部層と中間層が密に接合することができた。そして、ロールプレス装置によってプレスを行うことで空隙率を調整し、実施例2と中間層の厚みを合わせるため、ポリプロピレン不織布を3枚重ねにして50mm角サイズに切り出して、上部層と中間層の積層体を作製した。そして、実施例1と同様の下部層を重ねてロールプレス装置によってプレスすることによりイオン透過膜積層体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。中間層の空隙率としては、膜厚は640μmにプレスされており、ポリプロピレン不織布の原料であるポリプロピレン樹脂の密度は、0.90g/cmであり、中間層の重量は0.36gであったことから、空隙率75.0%という結果を得た。
各実施例1~2および比較例1~4における測定結果を図6の表に示す。なお、表に示していないが、実施例2の上部層中の繊維基材の平均長さは、上部層中の繊維基材の平均繊維径の100倍以上であった。なお、イオン透過機能の判定として、以下のようにした。
Liイオンのイオン回収率について、1.0%以上を〇、1.0%未満を×とした。
Liイオンのイオン移動速度について、0.2mg/hr以上を〇、0.2mg/hr未満を×とした。
クロスオーバー率について、0.01%未満を〇、0.01%以上を×とした。
〇を良好な結果とし、×は不良な結果であるとした。
総合判定については、3性能(すなわち、Liイオン回収率、Liイオン移動速度およびクロスオーバー率)のうち、最も悪い判定を記載した。
図6の表に示すように、実施例1~2は、総合判定が〇であり、良好なイオン透過機能を示した。また、良好なイオン透過機能を示すことから、実施例1において接続部2cが形成され、イオン伝導パスを有することが判断できる。中でも実施例2は、本発明の実施形態2の要件を満たし、本発明の実施形態1の要件を満たす実施例1よりもLiイオン回収率およびLiイオン移動速度が高く、より良好なイオン透過機能を示した。
一方、比較例1~4は総合判定が×であり、イオン透過機能が不良であった。
比較例1では、下部層がないため、完全にLiイオン以外のイオン透過を抑制できず、クロスオーバー率が不良であった。
比較例2では上部層がないため、Liイオン回収率およびLiイオン移動速度が不良であった。
比較例3では、上部層が下部層よりも疎水性ではないことで、上部層に全イオンを含む水溶液が浸透し、イオンを選択的に透過させるという上部層の機能がなくなり、結果として、下部層単体である比較例2と同様にLiイオン回収率およびLiイオン移動速度が不良の結果となった。
比較例4では、中間層が下部層よりも親水性ではないことで、中間層が水を十分に保持できず、中間層でLiイオン濃度を高めることができなかったため(すなわち下部層における原液側と回収側のLiイオン濃度差を高めることができなかったため)、Liイオン回収率およびLiイオン移動速度が不良であった。
以上の評価から、本発明の実施形態によれば、イオン伝導体粒子および繊維基材を含む上部層と、イオン伝導体粒子の焼結体を含み上部層の下部に配置された下部層とを有してなるイオン透過膜積層体であって、上部層は下部層よりも疎水性であり、上部層中のイオン伝導体粒子は、繊維基材内部に埋め込まれた部分と、繊維基材表面に露出した部分とを有し、厚さ方向において、上部層中の露出した部分によって上部層の上面から下面まで連続した接続部を有し、且つ下部層中のイオン伝導体粒子の焼結体によって下部層の上面から下面まで連続していることにより、イオンを選択的かつ高効率に透過させる十分なイオン透過機能を発揮できるイオン透過膜積層体を提供できることが分かった。
本発明の実施形態に係るイオン透過膜積層体は、従来のイオン透過膜よりも柔軟性が高く、高い比表面積を実現できるため、レアメタル、特にリチウムを廃液、廃材、および低濃度原液などから選択的にイオン透過させて効率的に回収することに利用することができる。
1 イオン透過膜積層体
2 上部層
2a 上部層の上面
2b 上部層の下面
2c 接続部
3 下部層
3a 下部層の上面
3b 下部層の下面
4 イオン伝導体粒子
4a イオン伝導体粒子の埋込部
4b イオン伝導体粒子の露出部
5 繊維基材
6 イオン伝導体粒子の焼結体
7 空隙
10 イオン透過膜積層体
11 中間層
12 貯留槽
12a 貯蓄層の原液側
12b 貯蓄層の回収側
13 イオン

Claims (5)

  1. イオン伝導体粒子および繊維基材を含む上部層と、イオン伝導体粒子の焼結体を含み前記上部層の下部に配置された下部層とを有してなるイオン透過膜積層体であって、
    前記上部層は前記下部層よりも疎水性であり、
    前記上部層中の前記イオン伝導体粒子は、前記繊維基材内部に埋め込まれた部分と、前記繊維基材表面に露出した部分とを有し、
    厚さ方向において、前記上部層中の前記露出した部分によって前記上部層の上面から下面まで連続した接続部を有し、且つ前記下部層中の前記イオン伝導体粒子の焼結体によって前記下部層の上面から下面まで連続しており、
    前記イオン伝導体粒子がリチウム(Li)を含む無機化合物である、イオン透過膜積層体。
  2. 前記上部層と前記下部層とが接している請求項1に記載のイオン透過膜積層体。
  3. 前記上部層と前記下部層との間に中間層が配置されており、
    前記中間層は、前記上部層および前記下部層よりも空隙率が高く、且つ前記下部層よりも親水性である請求項1に記載のイオン透過膜積層体。
  4. 前記繊維基材が、フッ化ビニリデンのホモポリマーおよびコポリマー、テトラフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにクロロトリフルオロエチレンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群より選択されるいずれか1つを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のイオン透過膜積層体。
  5. 下記式(1)を満たす請求項1~のいずれか一項に記載のイオン透過膜積層体である。

    B×0.2<A<B ・・・(1)

    Aは、前記繊維基材の平均繊維径(nm)であり、Bは前記上部層中の前記イオン伝導体粒子の平均粒子径(nm)である。
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