JP7464362B2 - 高温・高圧処理して得られる組織化物の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明において高温・高圧処理とは110℃以上、1気圧以上の処理であって、タンパク質原料を加熱処理した場合に、硫化水素臭を発生させる処理を意味する。
魚介肉を二軸エクストルーダにて高温、高圧処理をして得られる繊維状に組織化された組織化物は、カニやホタテ様の食感を有し、食品素材として利用されている(特許文献1、2)。このようなエクストルーダ処理により得られた組織化物ではケーシングソーセージ等よりも更に高い温度(150℃以上)で処理されるため、硫化水素の発生量も格段に多く、非常に強い不快臭がする。
高温、高圧処理により得られた組織化物における硫化水素臭を防ぐために、エクストルーダによる組織化物の製造では、製造後の組織化物を凍結し加熱処理する方法、酸化剤あるいは還元剤の水溶液中で加熱処理する方法(特許文献3)のような工夫されているが、凍結後加熱処理は、製造工程として設備や時間を要するものであり、過酸化水素の溶液中での加熱も取扱いに注意が必要である。
本発明は(1)~(10)の組織化物の製造方法、及び(11)~(12)の魚介類ストリング練製品を要旨とする。
(1)タンパク質原料および必要に応じて副原料を高温・高圧処理して得られる組織化物の製造において、高温・高圧処理後に、官能基としてカルボニル基のみ、又はカルボニル基と水酸基のみを有する有機酸、又はそれらの酸性の塩の水溶液に浸漬する処理を行うことを特徴とする製造方法。
(2)魚介類ストリング練製品の製造において、エクストルーダから冷却ノズルを経て製造された繊維状組織化物に対して、官能基としてカルボニル基のみ、又はカルボニル基と水酸基のみを有する有機酸、又はそれらの酸性の塩の水溶液に浸漬する処理を行うことを特徴とする製造方法。
(3)魚介類ストリング練製品に水産物特有の食感を付与することを特徴とする(2)の方法。
(4)官能基としてカルボニル基のみ、又はカルボニル基と水酸基のみを有する有機酸、又はそれらの酸性の塩が、乳酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、又は、それらの酸性の塩のいずれか又はそれらの混合物である(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)有機酸、又は有機酸の酸性の塩の水溶液への浸漬処理により、組織化物のpHを3.7~7.7にすることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)有機酸、又は有機酸の酸性の塩の水溶液の濃度が0.003~1Mである(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)組織化物をほぐしてから有機酸、又は有機酸の酸性の塩の水溶液に浸漬することを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)有機酸、又は有機酸の酸性の塩の水溶液に浸漬後、水洗、又は、ボイルすることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)さらに、中和処理を行うことを特徴とする(1)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)組織化物を酸化剤を含有する水溶液で前処理後、有機酸、又は有機酸の酸性の塩の水溶液に浸漬することを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の方法。
(12)細断、又はほぐされている(11)の魚介類ストリング練製品。
タンパク質原料としては、魚肉、畜肉、大豆等のタンパク質であれば何にでも適用できるが、魚介類すり身または落し身を原料とする製品に特に適している。魚種は何でも良いが、エソ類、タラ類などの白身魚やサバ、イワシなどの多獲魚などが適する。特に白身魚は汎用性が高く好ましい。これら各種魚体から頭、内臓、骨等不可食部分を除去し、魚肉採取器により採肉された落し身状のもの、または水晒ししてすり身状にしたものを用いることができる。また、カニ、エビ、イカ等、甲殻類、貝類、軟体動物等の肉も用いられる。これらは一種のみでもよく、また数種組み合わせてもよい。
例えば、冷凍魚肉すり身を主原料として用いる場合、解凍した後、所望に応じて副原料を添加し、更に卵白、食塩、澱粉、香辛料、調味料等の添加物を加えて、サイレントカッター等で混練してゾル状物として用いることができる。
原料の水分含量が多い場合、二軸型エクストルーダを用いるのが好ましい。周知のようにエクストルーダでは移送、圧縮、混合、混練、せん断、加熱、殺菌、膨化、成形などの温度処理もしくは機械処理を短時間に行なう能力を有しており、各種食品の製造に用いられている。エクストルーダの構成は、フィーダー、バレル、スクリュー、ダイ、ヒーターの5つからなり、混練、加熱、溶融、押出等の各処理を行なう。必要に応じてそのダイと一体にまたはダイの先端に着脱自在に扁平状、円形状、二重円筒状などの誘導ノズルが設けられる。さらに、冷却するための冷却ダイを用いることができる。
本発明は、高温・高圧処理後に、「官能基としてカルボニル基のみ、又はカルボニル基と水酸基のみを有する有機酸、又はそれらの酸性の塩の水溶液に浸漬処理を行うこと」により硫化水素臭を低下させる方法である。
「官能基としてカルボニル基のみ、又はカルボニル基と水酸基のみを有する有機酸」は、乳酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、フマル酸などであり、これらのいずれか又はそれらの混合物を用いることができる。酸そのもの以外に、これらの有機酸の酸性の塩を用いることができる。例えば、フマル酸一ナトリウム等は、塩であっても酸として機能することができる。これらの有機酸の濃度が0.003~1M程度の水溶液を用いることにより、組織化物のpHが3.7~7.7になる条件で浸漬することができる。組織化物のpHとは、組織化物をホモジナイザーで粉砕後、10倍量の蒸留水で懸濁し、3000rpmで10分間遠心分離したのちの上澄のpHである。組織化物のpHは3.7~7.7、好ましくは、4.0~7.0とすることができる。
浸漬の温度は低温でもよいが、高温にするほど、pHが効率よく低下する傾向がある。
硫化水素が酸性水溶液に溶解することにより、脱臭されると考えられるが、高温にすることにより、より脱臭が進む。
浸漬後、組織化物から酸性水溶液を除去することができる。除去する方法は、脱水、水洗、湯洗などによることができる。好ましくは、80~100℃の温水中でボイルする。ボイル時間は組織化物の殺菌も兼ねて10分以上行う。好ましくは、20分以上、20~60分間である。
組織化物を酸性水溶液に浸漬する前に、前処理を行うことができる。前処理としては、冷水による洗浄、水でのボイル、過酸化水素水でのボイル、スチーム等が挙げられる。
酸性水溶液は、本発明の効果を妨げない範囲で、官能基としてカルボニル基のみ、又はカルボニル基と水酸基のみを有する有機酸以外の任意成分を含んでいても良い。任意成分としては、食塩、糖類、水産物エキス、香料等が挙げられる。これらは適宜組み合わせて用いてもよい。
魚介類ストリング練製品とは、魚介類を原料とし、高温高圧処理により、タンパク質を溶融させ、冷却によりタンパク質を再配列させて押し出された繊維状組織化物である。その一つの態様は、特許文献1に記載される魚介類ストリング練製品であって、「魚介類すり身を主原料とする原料を、バレル温度を進行方向に温度勾配をつけ、先端部では原料が完全に溶融している条件下でエクストルーダ処理し、そのエクストルーダを通過した溶融原料をエクストルーダの先端に連結する長い冷却ノズルに押し出し、この長い冷却ノズルを通過する原料を徐々に冷却して、長さ方向に平行に配向され、かつ棒状に結合された繊維状組織化物を形成させ、該組織化物は、一つの方向に配向された繊維が棒状に結合されており、繊維方向に沿って切り裂くことができ、しかも、各繊維間の結合が水中に投入して攪拌することにより解繊されない程度に強固であり、かつ繊維に対して垂直方向に切断されないものである魚介類ストリング練製品の製造方法」により製造される。
特許文献2には、この魚介類ストリング練製品が、「エクストルーダの先端に送りポンプを介在させて長さ3~7mの冷却ゾーンが接続され、このエクストルーダ内で後端から投入された魚介類原料を主成分とするゾル状態のゾル原料が前進する間にこのゾル原料を加圧、加熱、溶融して、エクストルーダの先端から加熱溶融原料を吐出し、その後、先端の冷却ゾーンにおいて冷却してストリング練り製品を製造する際に、前記エクストルーダから吐出された加熱溶融原料をエクスルーダと介在させた送りポンプの間で一時滞留集積させてから、送りポンプによって長さ3~7mの冷却ゾーン中に押出すとともに、送りポンプの回転数を調整することによって長さ3~7mの冷却ゾーン内の冷却条件を、加熱溶融原料が冷却されて細いフィラメントがストリング状になりかつ各フィラメントが中心軸方向に向って半径方向斜めに配向するよう、制御することを特徴とする魚介類を主成分とするエクストルーダによるストリング練り製品の製造方法。」により製造することができることが開示されている。
さらに、これら繊維状組織化物は有機酸で処理されることにより、繊維(フィラメント)の表面が酸により変性し、硬くなるため、繊維の1本1本が締まり独立性が高まったような食感となる。これが噛みしめたときに歯ごたえとなり、カニ肉や繊維感の強い魚肉で感じられるような繊維感となる。もともと、エクストルーダで製造した魚介類ストリング練製品は細い繊維状であるが、有機酸処理によりそれらの繊維一本一本の存在感が強くなる。この効果により、よりカニ肉、魚肉らしい食感を付与することができる。
特許文献1、2の製造方法に準じた方法で繊維状組織化物を製造した。
具体的には、スケソウダラの冷凍すり身を解凍した後、重量比で0.5%の食塩と1.7%の澱粉と、菜種油等の添加物を加え、サイレントカッターでよく混練し、ゾル状物を得た。得られたゾル状物を二軸エクストルーダ(KK末広鉄工所製α100型エクストルーダ)にて次の条件で処理した。フィード量 100kg/h、スクリュー回転数 170~200rpm、バレル温度;中間 170℃、先端 220℃、冷却ダイ 直径18mm×長さ4m。これにより、内部が長手方向に一方向性の繊維状の組織化された断面が円形の棒状構造体からなる繊維状組織化物を得ることができた。
得られた繊維状組織化物を表1に記載の添加物を0.1M濃度で溶解した水溶液に25℃で20分間浸漬した後、90℃の温水で40分間ボイルし、サンプルとした。水溶液は繊維状組織化物の5倍量を用いた。
得られたサンプルのpH、物性(W値)の測定と官能評価を行った。pHの測定方法は、サンプルをホモジナイザーで粉砕後、10倍量の蒸留水で懸濁し、3000rpmで10分間遠心分離したのち上澄をpH計測器(HORIBA、LAQUA、pH METER、F-71)で測定した。W値は、レオメーター(サン科学社 RHEO TEX )により測定を行った。プランジャーはピアノ線を用い、サンプルが破断する際の強度をW値(g)として数値化した。官能評価は、専門のパネル5名により、食感については、「カニの繊維のような食感」について、臭いについては、「硫化水素臭」について、「0:感じない、1:少し感じる、2:感じる、3:強く感じる」の4段階で評価した。
添加物として乳酸を用い、表2に記載の濃度の水溶液を用いて、実施例1と同様の方法で、サンプルを製造した。得られたサンプルの評価も実施例1と同様に行った。
濃度が0.03M~0.3Mの濃度で、サンプルのpHは3.8~6.7となり、効果が認められたが、1Mでは酸分解が進み過ぎ、物性が低下した。高濃度の水溶液を用いる場合、浸漬時間を調節することはできる。
浸漬温度の違いは効果に影響を与えなかった。
実施例1と同様に製造した繊維状組織化物をチョッパーで繊維状にほぐした上で、表3に示した濃度の乳酸水溶液で25℃、20分間浸漬した後、90℃の温水で40分間ボイルしサンプルとした。得られたサンプルのpH測定と官能評価を実施例1と同様の方法で行った。
繊維をほぐし、有機酸水溶液に接触しやすくすることにより、同じ時間の浸漬の場合、より低濃度で同様の効果が得られた。ここでも、0.1M水溶液では、組織化物のpHが3.4と低くなりすぎ、食感は酸分解が進み繊維感が喪失した好ましくないものであった。
実施例1と同様の方法で得られた直径16mmの組織化物の外周の薄膜に4mm間隔に繊維方向の浅い(1mm)切込みをいれ、厚さ6mmに切断し、スライスしたホタテ様のサンプルを作製した。5倍量の0.75%の乳酸水溶液に、90℃で40分間浸漬した後、90℃の温水で20分間ボイルした(試験区1)。さらに、0.5%炭酸水素ナトリウム、2%クエン酸ナトリウムの水溶液に、90℃で20分間浸漬する中和処理を行ったものを試験区2とした。
得られたサンプルの評価を実施例1と同様に行った。但し、官能検査の食感は、「ホタテらしい食感」について4段階で評価した。
実施例1と同様に製造した繊維状組織化物を、過酸化水素を0.1M濃度で溶解した水溶液に浸漬した後、90℃の温水で30分間ボイルした。次いで、チョッパーで繊維状にほぐした後、表4に記載の濃度の乳酸を含む調味液に浸漬した状態で、120℃20分間レトルト加熱し、サンプルとした。得られたサンプルのpHの測定と官能評価を実施例1と同様に行った。
Claims (10)
- 魚介類原料であるタンパク質原料(ただし、pH9.5以上にしたものを除く)および必要に応じて副原料を高温・高圧処理して得られる組織化物の製造において、高温・高圧処理後に、官能基としてカルボニル基と水酸基のみを有する有機酸、又はその酸性の塩の水溶液に浸漬する処理を行うことを特徴とする製造方法。
- 魚介類ストリング練製品の製造において、エクストルーダから冷却ノズルを経て製造された繊維状組織化物に対して、官能基としてカルボニル基と水酸基のみを有する有機酸、又はその酸性の塩の水溶液に浸漬する処理を行うことを特徴とする製造方法(ただし、pH9.5以上にした魚介類原料を用いる方法を除く)。
- 魚介類ストリング練製品に水産物特有の食感を付与することを特徴とする請求項2の方法。
- 前記有機酸、又はその酸性の塩が、乳酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、又は、それらの酸性の塩のいずれか又はそれらの混合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記有機酸、又はその酸性の塩の水溶液への浸漬処理により、組織化物のpHを3.7~7.7にすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
- 有機酸、又は有機酸の酸性の塩の水溶液の濃度が0.003~1Mである請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
- 組織化物をほぐしてから有機酸、又は有機酸の酸性の塩の水溶液に浸漬することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記有機酸、又はその酸性の塩の水溶液に浸漬後、水洗、又は、ボイルすることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
- さらに、中和処理を行うことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
- 組織化物を酸化剤を含有する水溶液で前処理後、前記有機酸、又はその酸性の塩の水溶液に浸漬することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
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