JP7463033B2 - ハイブリッドリング回路 - Google Patents
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Description
W12=Za√{N/(1-N)} (1)
W34=Zb√{N/(1-N)} (2)
W14=√(Za×Zb×N) (3)
W23=√(Za×Zb×N) (4)
図22では、実線でP101-P104端子間の挿入損失の周波数特性が示され、破線でP101-P103端子間の結合損失の周波数特性が示されており、周波数範囲は100~200MHzとされている。図22を参照すると、Foにおいて挿入損失および結合損失が約3dBとなって均等分配されていることが分かる。また、図23を参照すると、周波数範囲は100~200MHzとされ、P101-P102端子間のアイソレーションはFoにおいて最大となっており、アイソレーションが20dB得られる周波数範囲は約142~約158MHzとされていることが分かる。さらに、図24にはP101-P103端子間の位相からP101-P104端子間の位相を差し引いた相対位相偏差の周波数特性が示されており、周波数範囲は100~200MHzとされている。図24を参照すると、約142~約158MHzの周波数範囲においてほぼ-90°の位相が得られていることが分かる。
図25に示すハイブリッドリング回路110は、図21に示すハイブリッドリング回路100が実質的に2連結されて構成されており、それぞれλo/4の電気長とされた4本の分布定数線路D111,D112,D113,D114がリング状に接続されたハイブリッドリングと、それぞれλo/4の電気長とされた4本の分布定数線路D113,D115,D116,D117がリング状に接続されたハイブリッドリングとが2段縦続に連結されて接続されている。2連結されたハイブリッドリング回路110において、D111とD114との接続点を第1端子P111、D111とD112との接続点を第2端子P112とし、D115とD116との接続点を第3端子P113、D116とD117との接続点を第4端子P114とする。第1端子P111の対向側が第4端子P114となり、第1端子P111の対角方向が第3端子P113となる。
ここで、ハイブリッドリング回路110を均等分配に設定すると、第1端子P111と第2端子P112との間に接続されている分布定数線路D111の特性インピーダンスと、第3端子P113と第4端子P114との間に接続されている分布定数線路D116との特性インピーダンスは等しくなりZ1とする。また、第1端子P111と第4端子P114との間に縦続に接続されている2本の分布定数線路D114,D117の特性インピーダンスは等しくZ2となり、第2端子P112と第3端子P113との間に縦続に接続されている2本の分布定数線路D112,D115の特性インピーダンスも等しくZ2となる。さらに、分布定数線路D112,D115との接続点と分布定数線路D114,D117との接続点との間を接続している分布定数線路D113の特性インピーダンスはZ2’となる。
図29に示すハイブリッドリング回路120は、それぞれλo/4の電気長とされた4本の分布定数線路D111,D112,D113’,D114がリング状に接続された第1ハイブリッドリングと、それぞれλo/4の電気長とされた4本の分布定数線路D113’,D115,D116,D117がリング状に接続された第2ハイブリッドリングとが2段縦続に連結されて接続されている。ハイブリッドリング回路120において、D111とD114との接続点aを第1端子P111、D111とD112との接続点を第2端子P112とし、D115とD116との接続点eを第3端子P113、D116とD117との接続点cを第4端子P114とする。また、第1ハイブリッドリングのD114と第2ハイブリッドリングのD117との接続点をb、第1ハイブリッドリングのD112と第2ハイブリッドリングのD115との接続点をdとする。第1端子P111の対向側が第4端子P114となり、第1端子P111の対角方向が第3端子P113となる。
すると、接続点a→接続点cへの対向経路においては、接続点a→接続点b→接続点cの第1経路と、接続点a→接続点d→接続点cの第2経路とがある。第1経路では、接続点a→接続点bへの第1ハイブリッドリングの分配比がNで位相遅延量が-90°となり、接続点b→接続点cへの第2ハイブリッドリングの分配比がNで位相遅延量が-90°となるから、第1経路の分配比はN2で位相遅延量が-180°となる。また、第2経路では、接続点a→接続点dへの第1ハイブリッドリングの分配比が(1-N)で位相遅延量が-180°となり、接続点d→接続点cへの第2ハイブリッドリングの分配比が(1-N)で位相遅延量が-180°となるから、第1経路の分配比は(1-N)2で位相遅延量が-360°となる。
対向経路における合成電圧比と対角経路の合成電圧比を求めて、求めた合成電圧比からNを求めると、
N=(2+√2)/4 (5)
と求められ、第1ハイブリッドリングおよび第2ハイブリッドリングは不等分配のハイブリッドリングとなることが分かる。
すなわち、それぞれ(5)式で示す分配比Nの不等分配の第1ハイブリッドリングおよび第2ハイブリッドリングとを縦続接続することにより、均等分配のハイブリッドリング回路120とすることができる。
Zk=Zo/(1+√0.5) (6)
とおいてみる。そして、ハイブリッドリング回路120の分布定数線路D111~D117の特性インピーダンスZ1,Z2,Z3を上記(1)式ないし(4)式から求める。この場合、Z1=W12と、Z2=W23=W14と、Z3=W34と置き換えられると共に、Nは上記(5)式で示される。Z1を求めると、
Z1=W12=Zo√{N/(1-N)}=(1+√2)Zo (7)
と求められる。また、Z3を求めると、
Z3=W34=Zk√{N/(1-N)}=(1+√2)Zk=Zo√2 (8)
と求められる。さらに、Z2を求めると、
Z2=W14=W23=√(Zo×Zk×N)=Zo/√2 (9)
と求められる。なお、ハイブリッドリング回路110におけるZ2’は、Z3の並列接続となるから、
Z2’=Z3/2 (10)
となる。
図26では、実線でP111-P114端子間の挿入損失の周波数特性が示され、破線でP101-P113端子間の結合損失の周波数特性が示されており、周波数範囲は100~200MHzとされている。図26を参照すると、Foにおいて挿入損失および結合損失が約3dBとなって均等分配されていることが分かる。また、図27を参照すると、周波数範囲は100~200MHzとされ、P111-P112端子間のアイソレーションはFoにおいて最大値が得られており、アイソレーションが25dB得られる周波数範囲は約132~約167MHzとハイブリッドリング回路100より広帯域とされていることが分かる。さらに、図28にはP111-P113端子間の位相からP111-P114端子間の位相を差し引いた相対位相偏差の周波数特性が示されており、周波数範囲は100~200MHzとされている。図28を参照すると、約132~約167MHzの周波数範囲においてほぼ-90°の位相が得られていることが分かる。このように、ハイブリッドリング回路110では、ハイブリッドリング回路100より広帯域化されていることが分かる。
そこで、本発明は通過周波数帯域における電気的特性を改善することのできるハイブリッドリング回路を提供することを目的としている。
また、上記本発明のハイブリッドリング回路において、前記第1端子ないし前記第4端子のインピーダンスをZoとした時に、前記第1直列共振回路と前記第2直列共振回路と前記第5直列共振回路と前記第6直列共振回路とにおけるキャパシタンスの値がA/(Fo・Zo)と、前記第3直列共振回路と前記第4直列共振回路とにおけるキャパシタンスの値がB(Fo・Zo)と、前記第1直列共振回路と前記第2直列共振回路と前記第5直列共振回路と前記第6直列共振回路とにおけるインダクタンスの値が(C・Zo)/Foと、前記第3直列共振回路と前記第4直列共振回路とにおけるインダクタンスの値が(D・Zo)/Foと正規化され、定数Aないし定数Dが得ようとする所定のアイソレーションの値に応じた値となる。
さらに、上記本発明のハイブリッドリング回路において、前記第1ハイブリッドリングおよび前記第2ハイブリッドリングを構成しているλo/4の電気長とされた前記分布定数線路を、集中定数のインダクタンスとキャパシタンスとからなる低域通過型の90°位相回路で構成することができる。
さらに、上記本発明のハイブリッドリング回路において、nを2以上の整数とした時に、90°/nの位相の単位位相回路をn段縦続接続して前記90°位相回路を構成することができる。
本発明の第1実施例のハイブリッドリング回路の構成を示す回路図を図1に示す。
図1に示す第1実施例のハイブリッドリング回路1は、高周波の分配や合成に用いられており、使用中心周波数Foの波長をλoとすると、それぞれλo/4の電気長とされた4本の分布定数線路D1,D2,D3,D4がリング状に接続されて構成された一周がλoの電気長を有する第1ハイブリッドリングと、それぞれλo/4の電気長とされた4本の分布定数線路D5,D6,D7,D8がリング状に接続された一周がλoの電気長を有する第2ハイブリッドリングとが2段縦続に連結されて構成されている。また、第1実施例のハイブリッドリング回路1の第1端子P1と第1ハイブリッドリングのD1とD4との第1接続点とがキャパシタンスCsとインダクタンスLsが直列接続されたFoで共振する第1直列共振回路で結合され、第2端子P2と第1ハイブリッドリングのD1とD2との第2接続点とがキャパシタンスCsとインダクタンスLsが直列接続されたFoで共振する第2直列共振回路で結合されている。さらに、第1実施例のハイブリッドリング回路1の第3端子P3と第2ハイブリッドリングのD6とD7との第7接続点とがキャパシタンスCsとインダクタンスLsが直列接続されたFoで共振する第3直列共振回路で結合され、第4端子P4と第2ハイブリッドリングのD7とD8との第8接続点とがキャパシタンスCsとインダクタンスLsが直列接続されたFoで共振する第4直列共振回路で結合されている。さらにまた、第1実施例のハイブリッドリング回路1の第1ハイブリッドリングのD2とD3との第3接続点と第2ハイブリッドリングのD6とD5との第6接続点とがキャパシタンスCoとインダクタンスLoが直列接続されたFoで共振する第5直列共振回路で結合され、第1ハイブリッドリングのD3とD4との第4接続点と第2ハイブリッドリングのD5とD8との第5接続点とがキャパシタンスCoとインダクタンスLoが直列接続されたFoで共振する第6直列共振回路で結合されている。
第1実施例のハイブリッドリング回路1において、第1端子P1を基準とした場合のFoにおける端子間の位相は、通過端子に相当する対向側の第4端子P4に対しては-180°、結合端子に相当する対角方向の第3端子P3に対しては-270°となる。また、第2端子P2には電力は現れずアイソレーション端子となる。基準端子を第1端子P1以外とした場合の位相においても、基準入力端子の対向側の端子に対しては-180°、対角方向の端子に対しては-270°となり、残りの端子がアイソレーション端子となる。
N=(2+√2)/4 (5)
となる。この(5)式で示す分配比Nとなる第1ハイブリッドリングにおける分布定数線路のD2とD3との第3接続点および分布定数線路のD3とD4との第4接続点におけるインピーダンスは図29で説明したインピーダンスZkとなり、(5)式で示す分配比Nとなる第2ハイブリッドリングにおける分布定数線路のD5とD6との第6接続点および分布定数線路のD5とD8との第5接続点におけるインピーダンスも同様にZkとなり、Zkは上記(6)で求められる。(6)式を再掲すると、
Zk=Zo/{1+√0.5} (6)
となる。なお、上記(6)式で求められるZkとすると、第1実施例のハイブリッドリング回路1を最も広帯域とすることができる。
Z1=(1+√2)Zo (7)
となる。さらに、第1ハイブリッドリングにおける分布定数線路のD3と第2ハイブリッドリングにおけるD5の特性インピーダンスはZ3と等しくなり、Z3は上記した(8)式で求められる。(8)式を再掲すると、
Z3=(1+√2)Zk=Zo√2 (8)
さらにまた、第1ハイブリッドリングにおける分布定数線路のD2,D4と第2ハイブリッドリングにおける分布定数線路のD6,D8の特性インピーダンスはZ2と等しくなり、Z2は上記した(9)式で求められる。(9)式を再掲すると、
Z2=Zo/√2 (9)
となる。
Z1≒ 120.710678Ω
Z2≒ 35.3553391Ω
Z3≒ 70.7106781Ω
と求められる。
図25に示す従来の広帯域化されたハイブリッドリング回路110において、端子間分配偏差および結合損失の最大帯域内振幅偏差の偏差が生じるのは、第1端子P111から見たインピーダンス特性がFoの低域からFoまでは誘導性を示すが、FoからFoの高域に向かって容量性に変動することが原因であることが分かった。これに対して、キャパシタンスCs(Co)とインダクタンスLs(Lo)が直列接続されたFoで共振する第1直列共振回路ないし第6直列共振回路は、Foの低域からFoまでは容量性を示すが、FoからFoの高域に向かって誘導性に逆方向に変動する。そこで、第1端子P1および第2端子P2と第1ハイブリッドリングとの間と、第1ハイブリッドリングと第2ハイブリッドリングとの間と、第2ハイブリッドリングと第3端子P3および第4端子P4との間をFoで共振する第1直列共振回路ないし第6直列共振回路で結合することにより、第1ハイブリッドリングおよび第2ハイブリッドリングのインピーダンス特性を第1直列共振回路ないし第6直列共振回路のインピーダンス特性により補償されるようになる。これにより、端子間分配偏差および結合損失の最大帯域内振幅偏差の偏差が極力生じないようにすることができる。
キャパシタンスCoとインダクタンスLoとの値を求めるためのハイブリッドリング回路の構成を示す回路図を図8に示し、キャパシタンスCsとインダクタンスLsとの値を求めるためのハイブリッドリング回路の構成を示す回路図を図11に示す。
ところで、第11直列共振回路のように集中定数の共振回路では、低域側が共振周波数から直流までのインピーダンス変化が急激なのに対して、高域側は共振周波数から無限大周波数までの広い帯域で緩やかにインピーダンスが変化する。従って、インピーダンス変化が周波数に対して対称な分布定数線路に集中定数回路を付加して、インピーダンス特性の補償を行う場合は、低域側の帯域拡大を優先した方が、対象となるハイブリッドリング全体の周波数帯域の対称性が良好になる。
R=Zk≒29.289322 Ω
C2=59.8pF
L2≒18.826nH
とされており、図10に実線で示すアイソレーションの周波数特性を参照すると、
FL≒110.943MHz
FH≒187.619MHz
BW=76.676MHz
と読み取れる。なお、BWは(FH-FL)で算出される帯域幅である。
また、図10に破線で示すアイソレーションの周波数特性を参照すると、
FL≒129.5MHz
FH≒170.84MHz
BW=41.34MHz
と読み取れる。
図10に実線で示すアイソレーションの周波数特性と、図10に破線で示すアイソレーションの周波数特性とを対比すると、直列接続されたキャパシタンスC2とインダクタンスL2とを有するハイブリッドリング回路11では帯域幅が約1.85倍に拡大していることが分かる。
以上のことからキャパシタンスCoとインダクタンスLoとの値を求めると、ハイブリッドリング回路11における第11直列共振回路および第12直列共振回路が2段直列接続されたのが、第1実施例のハイブリッドリング回路1における第5直列共振回路と第6直列共振回路となるから、キャパシタンスCoはキャパシタンスC2の1/2倍となり、インダクタンスLoはインダクタンスL2の2倍となる。すなわち、
Co=C2/2=29.9pF
Lo=2L2≒37.65nH
と求められる。
R=Zo=50 Ω
C1=22.1pF
L1≒50.941nH
とされており、図12に実線で示すアイソレーションの周波数特性を参照すると、
FL≒122.2483MHz
FH≒177.072MHz
BW=54.824MHz
と読み取れる。
また、図12に破線で示すアイソレーションの周波数特性を参照すると、
FL≒136.07MHz
FH≒163.99MHz
BW=27.92MHz
と読み取れる。
図12に実線で示すアイソレーションの周波数特性と、図12に破線で示すアイソレーションの周波数特性とを対比すると、直列接続されたキャパシタンスC1とインダクタンスL1とを有するハイブリッドリング回路12では帯域幅が約1.96倍に拡大していることが分かる。
Cs=C1=22.1pF
Ls=L1≒50.941nH
と求められる。
Cs=22.1pF
Ls≒50.941nH
Co=29.9pF
Lo≒37.65nH
また、上記の値をFo[Hz] とZo[Ω] で正規化して一般式にすると、次のようになる。
Cs[F] ≒ 0.16575 /(Fo・Zo)
Ls[H] ≒(0.15282・Zo)/ Fo
Co[F] ≒ 0.22425/(Fo・Zo)
Lo[H] ≒(0.11296・Zo)/ Fo
第1実施例のハイブリッドリング回路1は、図8に示すハイブリッドリング回路11と図11に示すハイブリッドリング回路12を連結したハイブリッドリング回路に相当し、分布定数線路D1~D7の特性インピーダンスは次のとおりとなる。
Z1≒ 120.710678Ω
Z2≒ 35.3553391Ω
Z3≒ 70.7106781Ω
なお、第1直列共振回路ないし第6直列共振回路におけるキャパシタンスとインダクタンスの配列は図1に示す配列と逆の配列であっても電気的には等価であるから、製品化する際は設計上の都合等によって配列を決定することが好適である。
図2では、実線でP1-P4端子間の挿入損失の周波数特性が示され、破線でP1-P3端子間の結合損失の周波数特性が示されており、周波数範囲は100MHz~200MHzとされている。図2を参照すると、Foにおいて挿入損失および結合損失が約3dBとなって均等分配されており、約126MHz~176MHzの広帯域において挿入損失および結合損失もほぼ3dBとなっていることが分かる。また、図3に示す周波数範囲が100MHz~200MHzとされた第1端子P1のリターンロスの周波数特性を参照すると、約126MHz~176MHzの広帯域においてリターンロスが25dB以上得られていることが分かる。
アイソレーションを15dBに設定した場合は、
Cs=29.1pF
Ls≒38.690nH
Co=44.3pF
Lo≒25.413nH
と求められ、上記の値をFo[Hz] とZo[Ω] で正規化して一般式にすると、
Cs[F] ≒ 0.21825 /(Fo・Zo)
Ls[H] ≒(0.11606・Zo)/ Fo
Co[F] ≒ 0.33225/(Fo・Zo)
Lo[H] ≒(0.076239・Zo)/ Fo
となる。
Cs=17.1pF
Ls≒65.836nH
Co=22.1pF
Lo≒50.941nH
と求められ、上記の値をFo[Hz] とZo[Ω] で正規化して一般式にすると、
Cs[F] ≒ 0.12825 /(Fo・Zo)
Ls[H] ≒(0.19751・Zo)/ Fo
Co[F] ≒ 0.16575/(Fo・Zo)
Lo[H] ≒(0.15282・Zo)/ Fo
となる。
図示は省略するが、第1実施例のハイブリッドリング回路1における直列共振回路の定数を、アイソレーションを15dBに設定した場合と30dBに設定した場合とにおいて算出したFLに基づいて求めた直列共振回路の定数とした場合の電気特性は、アイソレーションを20dBと設定した場合と大きな差異はないが、15dBに設定した場合は全般的に広帯域となるものの、挿入損失と結合損失の偏差が拡大する。一方、30dBに設定した場合は全般的に狭帯域となるが、挿入損失と結合損失の偏差が殆ど無い理想的な伝送特性となる。このことから、所望する周波数特性に応じて、設定するアイソレーションを選択することが好適となる。
本発明の第2実施例のハイブリッドリング回路の構成を示す回路図を図14に示す。
図14に示す第2実施例のハイブリッドリング回路2は、第1実施例のハイブリッドリング回路1における分布定数線路を集中定数化したハイブリッドリング回路とされている。分布定数線路を集中定数化することにより、小型化することができると共に、ハイブリッドリング回路を容易に実現することができる。すなわち、第1実施例のハイブリッドリング回路1では、第1ハイブリッドリングおよび第2ハイブリッドリングを構成する分布定数線路の数は合計で8本と多く、それぞれ1/4波長の線路長とされることから、使用周波数によっては大型になることがある。また、分布定数線路D1,D7の特性インピーダンスは100Ωを超える高インピーダンスとなるので、分布定数線路をマイクロストリップ線路で形成する場合には線路幅が非常に細くなることから作成が困難になる場合があるが、第2実施例のハイブリッドリング回路2ではこれらの問題は生じない。
C=(1-cosθo)/(2πFo・Zt・sinθo) (11)
L=(Zt・sinθo)/(2πFo) (12)
第2実施例のハイブリッドリング回路2において、第1端子P41を基準とした場合のFoにおける端子間の位相は、通過端子に相当する対向側の第4端子P44に対しては-180°、結合端子に相当する対角方向の第3端子P43に対しては-270°となる。また、第2端子P42には電力は現れずアイソレーション端子となる。基準端子を第1端子P41以外とした場合の位相においても、基準入力端子の対向側の端子に対しては-180°、対角方向の端子に対しては-270°となり、残りの端子がアイソレーション端子となる。
Cd1≒7.2818pF
Cd2≒16.072pF
Cd3≒24.862pF
Cd4≒18.646pF
Cd5≒12.431pF
Ld1≒90.565nH
Ld2≒26.526nH
Ld3≒53.052nH
と求められる。また、第1直列共振回路ないし第4直列共振回路のキャパシタンスCsとインダクタンスLsおよび第5直列共振回路と第6直列共振回路のキャパシタンスCoとインダクタンスLoとの値は、第1実施例のハイブリッドリング回路1と同じ手順で求めることができ、次のように求められる。
Cs=20.9pF
Ls≒53.866nH
Co=27.6pF
Lo≒40.790nH
Cd1 [F] ≒ 0.054613/(Fo・Zo)
Cd2 [F] ≒ 0.12054/(Fo・Zo)
Cd3 [F] ≒ 0.18646/(Fo・Zo)
Cd4 [F] ≒ 0.13985/(Fo・Zo)
Cd5 [F] ≒ 0.10073/(Fo・Zo)
Ld1 [H] ≒(0.27169・Zo)/ Fo
Ld2 [H] ≒(0.079577・Zo)/ Fo
Ld3 [H] ≒(0.15915・Zo)/ Fo
Cs [F] ≒ 0.15675/(Fo・Zo)
Ls [H] ≒(0.16160・Zo)/ Fo
Co [F] ≒ 0.20700/(Fo・Zo)
Lo [H] ≒(0.12237・Zo)/ Fo
図15では、実線でP41-P44端子間の挿入損失の周波数特性が示され、破線でP41-P43端子間の結合損失の周波数特性が示されており、周波数範囲は100MHz~200MHzとされている。図15を参照すると、Foにおいて挿入損失および結合損失が約3dBとなって均等分配されており、約130MHz~175MHzの広帯域において挿入損失および結合損失がほぼ3dBとなっていることが分かる。また、図16に示す周波数範囲が100MHz~200MHzとされた第1端子P41のリターンロスの周波数特性を参照すると、約130MHz~175MHzの広帯域においてリターンロスが25dB以上得られていることが分かる。
第2実施例のハイブリッドリング回路2において、nを2以上の整数とした時に、90°/nの位相の単位位相回路をn段縦続接続して90°位相回路を構成してもよい。例えば30°の単位位相回路を3段縦続接続して構成した90°位相回路とすると、さらに第1実施例のハイブリッドリング回路1の特性に近づけることができる。このように、90°位相回路の集中定数素子数を増やせば、90°位相回路の特性を分布定数線路の特性に漸近させることができる。また、90°位相回路は、π型接続回路に替えてLPF回路構成のT型接続回路を用いて構成してもよい。
以上説明した本発明にかかる実施例のハイブリッドリング回路は、第1ハイブリッドリングと第2ハイブリッドリングとを連結して、第1端子および第2端子と第1ハイブリッドリングとの間、第3端子および第4端子と第2ハイブリッドリングとの間、第1ハイブリッドリングと第2ハイブリッドリングとの間を、それぞれ使用中心周波数Foで共振する直列共振回路で結合している。直列共振回路で結合することにより、第1ハイブリッドリングおよび第2ハイブリッドリングのインピーダンス特性が補償されて、Foを中心周波数とする通過周波数帯域における電気的特性が改善される。この場合、直列共振回路を構成するインダクタンスとキャパシタンスとの値を、Foより低域の周波数であって最も低域の周波数において所定のアイソレーションが得られる値とすることにより、ハイブリッドリング全体の周波数帯域の対称性を極力改善して広帯域とすることができる。これに替えて、Foより高域の周波数であって最も高域の周波数において所定のアイソレーションが得られる値とすることもでき、この場合でもハイブリッドリング全体の周波数帯域の対称性を改善することができる。
Claims (5)
- 使用中心周波数をFoとしFoの波長をλoとした時に、それぞれλo/4の電気長とされた4本の分布定数線路が第1接続点ないし第4接続点で接続されてリング状とされた第1ハイブリッドリングと、
それぞれλo/4の電気長とされた4本の分布定数線路が第5接続点ないし第8接続点で接続されてリング状とされ、前記第1ハイブリッドリングに連結された第2ハイブリッドリングと、
第1端子と前記第1ハイブリッドリングの第1接続点とを結合するFoで共振する第1直列共振回路と、
第2端子と前記第1ハイブリッドリングの第2接続点とを結合するFoで共振する第2直列共振回路と、
前記第1ハイブリッドリングの第3接続点と前記第2ハイブリッドリングの第6接続点とを結合するFoで共振する第3直列共振回路と、
前記第1ハイブリッドリングの第4接続点と前記第2ハイブリッドリングの第5接続点とを結合するFoで共振する第4直列共振回路と、
前記第2ハイブリッドリングの第7接続点と第3端子とを結合するFoで共振する第5直列共振回路と、
前記第2ハイブリッドリングの第8接続点と第4端子とを結合するFoで共振する第6直列共振回路とを備え、
インダクタンスとキャパシタンスとが直列に接続されて構成された前記第1直列共振回路ないし前記第6直列共振回路により、前記第1ハイブリッドリングおよび前記第2ハイブリッドリングのインピーダンス特性が補償されて、Foを中心周波数とする通過周波数帯域における電気的特性が改善されることを特徴とするハイブリッドリング回路。 - 前記第1直列共振回路ないし前記第6直列共振回路を構成するインダクタンスとキャパシタンスとの値が、Foより低域の周波数であって最も低域の周波数において所定のアイソレーションが得られる値とされることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドリング回路。
- 前記第1端子ないし前記第4端子のインピーダンスをZoとした時に、前記第1直列共振回路と前記第2直列共振回路と前記第5直列共振回路と前記第6直列共振回路とにおけるキャパシタンスの値がA/(Fo・Zo)と、前記第3直列共振回路と前記第4直列共振回路とにおけるキャパシタンスの値がB(Fo・Zo)と、前記第1直列共振回路と前記第2直列共振回路と前記第5直列共振回路と前記第6直列共振回路とにおけるインダクタンスの値が(C・Zo)/Foと、前記第3直列共振回路と前記第4直列共振回路とにおけるインダクタンスの値が(D・Zo)/Foと正規化され、定数Aないし定数Dが得ようとする所定のアイソレーションの値に応じた値となることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドリング回路。
- 前記第1ハイブリッドリングおよび前記第2ハイブリッドリングを構成しているλo/4の電気長とされた前記分布定数線路を、集中定数のインダクタンスとキャパシタンスとからなる低域通過型の90°位相回路で構成したことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドリング回路。
- nを2以上の整数とした時に、90°/nの位相の単位位相回路をn段縦続接続して前記90°位相回路を構成したことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッドリング回路。
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