熱成形装置を構成する加熱装置として、シートの被加熱部を加熱するヒータユニットを有する加熱装置が知られている。この加熱装置は、搬送装置による搬送方向へのシートの搬送が停止された状態で被加熱部を加熱する停止状態加熱を、予め設定した設定加熱時間行う。ヒータユニットは、シートの搬送方向に並ぶ複数のヒータからなるヒータ列を、1または複数有する。停止状態加熱を終えた被加熱部は、搬送装置によるシートの搬送によって、搬送方向について加熱装置よりも下流側に位置する成形装置によって成形される成形領域に配置され、成形装置によって成形されて、1または複数の成形品を有する被加熱部になる。
ところで、成形装置によって成形される成形品の品質を安定させるためには、成形領域に配置されて成形装置によって成形されるときの被加熱部(停止状態加熱を終えた被加熱部)において、搬送方向についての温度バラツキを小さくすることが求められる。
ところが、従来、このような熱成形装置によって同時に成形された複数の成形品において、加熱位置において搬送方向の上流側に位置していた成形品が、下流側に位置していた成形品よりも品質が劣ることがあった。また、一度に1つの成形品を成形する場合でも、加熱位置において搬送方向の上流側に位置していた部位が、下流側に位置していた部位よりも品質が劣ることがあった。このようになる原因について調査したところ、成形領域に配置されて成形装置によって成形されるときの被加熱部において、搬送方向の上流側部分と下流側部分とで、温度差が大きくなっていることがあった。具体的には、成形領域に配置されて成形装置によって成形されるときの被加熱部において、搬送方向の下流側部分(加熱位置において搬送方向上流側に位置していた部分)のほうが上流側部分(加熱位置において搬送方向下流側に位置していた部分)よりも温度が高くなる傾向にあった。
このようになる原因は、加熱装置による停止状態加熱を終えた時点では、当該停止状態加熱を終えた被加熱部の温度が搬送方向についてほぼ均一になっていたとしても、停止状態加熱を終えた時点において、当該停止状態加熱を終えた被加熱部は、加熱装置によって加熱される加熱領域内に配置されているからである。このため、当該停止状態加熱を終えた被加熱部のうち搬送方向の上流側に位置する部位ほど、シートの搬送によって当該停止状態加熱を終えた被加熱部を成形領域まで移動させる成形直前移動が開始された時点から加熱領域外に移動するまでの時間が長くなる。換言すれば、停止状態加熱を終えた後、成形直前移動をしている期間中に、当該成形直前移動をしている被加熱部のうち搬送方向の上流側に位置する部位ほど、加熱装置によって加熱される加熱領域を移動することによって加熱される時間が長くなる。このために、成形領域に配置されて成形装置によって成形されるときの被加熱部において、搬送方向の下流側部分(加熱位置において搬送方向上流側に位置していた部分)のほうが上流側部分(加熱位置において搬送方向下流側に位置していた部分)よりも温度が高くなる傾向にあった。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、成形領域に配置されて成形装置によって成形されるときの被加熱部において、搬送方向についての温度バラツキを小さくすることができる熱成形装置、を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、熱可塑性のシートを搬送方向に搬送する搬送装置と、前記シートの被加熱部を加熱する加熱装置であって、前記搬送装置による前記シートの搬送が停止された状態で前記被加熱部を加熱する停止状態加熱を、予め設定した設定加熱時間行う加熱装置と、前記搬送方向について前記加熱装置よりも下流側に位置し、前記停止状態加熱を終えた前記被加熱部を成形する成形装置と、を備え、前記加熱装置は、前記被加熱部を加熱するヒータユニットを有し、前記ヒータユニットは、前記搬送方向に並ぶ複数のヒータからなるヒータ列を、1または複数有し、前記搬送装置は、前記停止状態加熱が終了したら、前記シートを前記搬送方向に搬送することによって、前記停止状態加熱を終えた前記被加熱部を、前記成形装置によって成形される成形領域に配置する熱成形装置であって、前記搬送方向について前記成形装置よりも上流側の測定位置に固定された温度センサであって、前記搬送装置によって前記シートが前記搬送方向に搬送されることによって、前記停止状態加熱を終えた前記被加熱部が前記成形領域に移動する成形直前移動が行われるときに、前記成形直前移動をする前記被加熱部の温度を測定できる前記測定位置に設けられた温度センサと、設定した温度測定間隔で、前記成形直前移動が開始される時点から前記温度センサによって順次測定された複数の温度測定値を、予め設定された表示個数を上限として、測定順に並べて表示する表示部であって、新たな前記成形直前移動が行われる毎に、前記温度測定間隔で各々の前記成形直前移動の開始時点から前記温度センサによって順次測定された複数の前記温度測定値を、前記表示個数を上限として、改めて測定順に表示する表示部と、を備え、前記加熱装置を構成する各々の前記ヒータの出力が個別に調節可能に構成され、且つ、前記温度測定間隔の設定が変更可能に構成されている熱成形装置である。
上述の熱成形装置は、シートの被加熱部を加熱するヒータユニットを有する加熱装置を備える。この加熱装置は、搬送装置による搬送方向へのシートの搬送が停止された状態で被加熱部を加熱する停止状態加熱を、予め設定した時間(設定加熱時間とする)行う。
なお、停止状態加熱は、複数回(例えば2回)に分けて加熱するようにしても良い。すなわち、停止状態加熱を、複数回に分割した分割停止状態加熱として行うようにしても良い。例えば、シートとして、同時に停止状態加熱がなされる被加熱部(同時被加熱部とする)が、シートの長さ方向(搬送方向に一致する方向)に複数並ぶ帯状のシート(以下、これを単に、帯状シートともいう)を用いた場合において、停止状態加熱を2回に分けて行う(すなわち、2回の分割停止状態加熱を行うことによって、設定加熱時間の停止状態加熱を完了させる)場合を挙げることができる。この場合は、まず、加熱装置を構成するヒータユニットのうち搬送方向の上流側の範囲に位置する上流側ヒータユニットによって、1回目の分割停止状態加熱を、前記設定加熱時間の半分の時間行い、その後、シートを搬送方向に搬送することによって、1回目の分割停止状態加熱を終えた被加熱部を、加熱装置を構成するヒータユニットのうち搬送方向の下流側の範囲に位置する下流側ヒータユニットによって加熱される領域(下流側加熱領域とする)に移動させる。その後、下流側ヒータユニットによって、2回目の分割停止状態加熱を前記設定加熱時間の半分の時間行うことで、設定加熱時間の停止状態加熱を完了させる。従って、この場合は、2回目の分割停止状態加熱を終えることで、停止状態加熱を終えることになる。
さらに、上述の熱成形装置は、搬送方向について成形装置よりも上流側の測定位置に固定された温度センサを備える。この温度センサは、搬送装置によってシートが搬送方向に搬送されることによって、停止状態加熱を終えた被加熱部が成形領域に移動する(この移動を成形直前移動とする)ときに、前記成形直前移動をする被加熱部の温度を測定できる測定位置に設けられている。
これにより、温度センサによって、成形直前移動をしている被加熱部の温度を測定することができる。なお、この温度センサは、設定された温度測定間隔で、停止状態加熱を終えた被加熱部が前記成形直前移動を開始する時点から、当該成形直前移動をする被加熱部の温度を順次測定する。従って、前記成形直前移動をする被加熱部について、搬送方向の下流側から上流側に向かう順で、一定の間隔で搬送方向に並ぶ複数の部位(被測定部)の温度を順次測定することができる。
さらに、上述の熱成形装置は、設定した温度測定間隔で、成形直前移動が開始される時点から温度センサによって順次測定された複数の温度測定値を、予め設定された表示個数(表示上限個数ともいう。例えば16個)を上限として、測定順に並べて表示する表示部を備える。この表示部は、成形直前移動が行われる毎に、各々の成形直前移動の開始時点から温度センサによって順次測定された複数の温度測定値を、予め設定された表示個数を上限として測定順に表示する。従って、この表示部は、新たな(次回の)成形直前移動が行われる毎に、各々の成形直前移動の開始時点から温度センサによって順次測定された複数の温度測定値を、表示上限個数(例えば16個)を上限として、改めて測定順に表示する。
すなわち、表示部は、成形直前移動が開始された時点から温度センサによって測定された温度測定値を、表示上限個数を上限として測定順に一連の温度測定値として表示した後、新たな(次の)成形直前移動が開始された時点から測定された温度測定値を、改めて、表示上限個数を上限として測定順に一連の温度測定値として表示する。従って、各々の成形直前移動の開始時点に測定された温度測定値が、表示部において、第1番目の温度測定値として表示される。
なお、温度センサによって測定される「温度測定間隔」としては、時間間隔(例えば、0.05秒間隔。すなわち、0.05秒経過する毎に温度測定する)や、シートの搬送距離間隔(例えば、125mm間隔。すなわち、シートが125mm搬送される毎に温度測定する)を挙げることができる。
また、表示部には、停止状態加熱を終えた被加熱部の温度のみならず、停止状態加熱を終えていないシート部分の温度も表示され得る。例えば、今回の成形直前移動が開始された時点から、新たな(次回の)成形直前移動が開始される時点までの間(成形直前移動間隔とする)に、停止状態加熱を終えた被加熱部の温度のみならず、停止状態加熱を終えていないシート部分の温度も測定され、今回の成形直前移動が行われた被加熱部について測定された温度測定値の個数が、表示上限個数よりも少なく、且つ、前記成形直前移動間隔内に測定された測定温度の個数が表示上限個数以上である場合には、停止状態加熱を終えていないシート部分の温度も表示部に表示される。
なお、停止状態加熱を終えていないシート部分としては、例えば、シートとして、前述の帯状シートを用いた場合において、今回の停止状態加熱を終えた被加熱部よりも搬送方向の上流側に位置し、次回の停止状態加熱を終えた被加熱部の一部となって、次回の成形直前移動をする部位(被加熱部)を挙げることができる。
ところで、停止状態加熱を終えていないシート部分の温度は、停止状態加熱を終えた被加熱部(成形直前移動をする被加熱部)の温度に比べて、明らかに(極端に)低くなる。このため、作業者は、表示上限個数を上限として測定順に表示部に表示された一連の温度測定値を目視して、先の温度測定値に比べて明らかに低い(例えば、20℃以上低い)温度測定値(これを低温測定値とする)が存在している場合には、当該低温測定値が停止状態加熱を終えていないシート部分の温度であると判断することができる。従って、これよりも前に測定された温度測定値が、停止状態加熱を終えた被加熱部の温度であると判断することができる。
これにより、作業者は、シートの搬送方向について下流側から上流側に向かう順で、停止状態加熱を終えた被加熱部の温度分布を把握することができる。例えば、第1回目の成形直前移動が開始された時点から測定された温度測定値にかかる前記温度分布から、作業者は、測定順が遅くなるにしたがって(すなわち、停止状態加熱を終えた被加熱部において搬送方向の上流側に向かうにしたがって)、温度測定値が高くなっていることを把握することがある。このようになる理由は、加熱装置による停止状態加熱を終えた時点では、当該停止状態加熱を終えた被加熱部の温度が搬送方向についてほぼ均一になっていたとしても、停止状態加熱を終えた時点では、当該停止状態加熱を終えた被加熱部は、加熱装置によって加熱される加熱領域内に配置されているため、当該停止状態加熱を終えた被加熱部のうち搬送方向の上流側に位置する部位ほど、成形直前移動が開始された時点から加熱領域外に移動するまでの時間が長くなるからである。換言すれば、停止状態加熱を終えた後、成形直前移動をしている期間中に、当該成形直前移動をしている被加熱部のうち搬送方向の上流側に位置する部位ほど、加熱装置によって加熱される加熱領域を移動することによって加熱される時間が長くなるためである。
これに対し、上述の熱成形装置は、加熱装置(ヒータユニット)を構成する各々のヒータの出力の設定が個別に調節可能に構成されている。換言すれば、上述の熱成形装置は、加熱装置を構成する各々のヒータの出力を個別に調節できるヒータ出力調節部を備える。
従って、停止状態加熱を1回で完了させる熱成形装置の場合は、作業者は、前記温度分布に基づいて、例えば、加熱装置(ヒータユニット)に含まれるヒータのうち、相対的に搬送方向の上流側に位置するヒータの出力を低下させることができる。詳細には、例えば、当該出力を低下させるヒータについて、搬送方向の上流側に位置するヒータほど、現在の出力値からの出力低下量が多くなるように、出力を低下させることができる。これにより、成形領域に配置されて成形装置によって成形されるときの被加熱部において、搬送方向についての温度バラツキを小さくすることができる。従って、成形装置によって成形される成形品の品質を安定させることができる。
また、停止状態加熱を2回に分けて加熱する(すなわち、2回の分割停止状態加熱を行って、設定加熱時間の停止状態加熱を完了させる)熱成形装置の場合は、例えば、加熱装置(ヒータユニット)に含まれるヒータのうち、2回目の分割停止状態加熱を行う下流側ヒータユニットにおいて、相対的に搬送方向の上流側に位置するヒータの出力を低下させることができる。詳細には、例えば、当該出力を低下させるヒータについて、搬送方向の上流側に位置するヒータほど、現在の出力値からの出力低下量が多くなるように、出力を低下させることができる。これにより、成形領域に配置されて成形装置によって成形されるときの被加熱部において、搬送方向についての温度バラツキを小さくすることができる。従って、成形装置によって成形される成形品の品質を安定させることができる。
一方、表示上限個数を上限として表示部に表示された一連の温度測定値に、停止状態加熱を終えた被加熱部の温度測定値のみが表示され、停止状態加熱を終えていないシート部分の温度測定値が表示されない場合には、表示されている温度測定値が、停止状態加熱を終えた被加熱部について、搬送方向についてどこまでの範囲の温度測定値が表示されているのか不明となる。このため、作業者は、加熱装置(ヒータユニット)に含まれるヒータについて、出力を調節すべきであるか否かを判断することができない(あるいは、いずれのヒータの出力を調整すべきであるのかを判断できない)。このようなことが生じる場合としては、例えば、シートの搬送速度に対して温度測定間隔が短すぎて、成形直前移動が行われた被加熱部について測定された温度測定値の個数が、表示上限個数よりも多くなった場合を挙げることができる。
これに対し、上述の熱成形装置では、温度測定間隔の設定が変更可能に構成されている。換言すれば、上述の熱成形装置は、温度測定間隔を調節する測定間隔調節部を備える。これにより、表示部に表示された一連の温度測定値に基づいて、ヒータの出力を調節すべきであるか否かを判断することができない(あるいは、いずれのヒータの出力を調整すべきであるのかを判断できない)場合には、温度測定間隔の設定を変更(調節)することで、その後、表示部に表示された温度測定値(変更した温度測定間隔で測定された温度測定値)に基づいて、ヒータの出力を調節すべきであるか否かを判断することができる(あるいは、いずれのヒータの出力を調整すべきであるのかを判断できる)状態にすることが可能となる。
具体的には、例えば、温度測定間隔を長くすることで、その後、表示部に、表示上限個数を上限として表示された一連の温度測定値の中に、先の温度測定値に比べて明らかに低い(例えば、20℃以上低い)温度測定値(低温測定値)が現れるように調節することが可能となる。このように調節することで、作業者は、当該低温測定値が停止状態加熱を終えていないシート部分の温度であると判断することができ、これよりも前に測定された温度測定値が、停止状態加熱を終えた被加熱部の温度であると判断することができる。これにより、表示部に表示された一連の温度測定値に基づいて、ヒータの出力を調節すべきであるか否かを判断することができる(あるいは、いずれのヒータの出力を調整すべきであるのかを判断できる)ようになる。
また、上述の熱成形装置では、シートの搬送速度が変更される場合がある。例えば、成形装置の成形型を変更した場合である。シートの搬送速度が変更された場合も、例えば、現在設定されている温度測定間隔が、変更されたシートの搬送速度に対して短すぎるようになってしまい、表示上限個数を上限として表示部に表示される一連の温度測定値として、停止状態加熱を終えた被加熱部の温度測定値のみが表示されるようになってしまうことがある。これにより、表示部に表示された一連の温度測定値に基づいて、ヒータの出力を調節すべきであるか否かを判断することができなくなる(あるいは、いずれのヒータの出力を調整すべきであるのかを判断できなくなる)ことがある。
このような場合でも、前述したように、温度測定間隔の設定を変更(調節)することで、その後、表示部に表示された一連の温度測定値に基づいて、ヒータの出力を調節すべきであるか否かを判断することができる(あるいは、いずれのヒータの出力を調整すべきであるかを判断できる)状態に調節することが可能となる。
以上説明したように、上述の熱成形装置によれば、成形領域に配置されて成形装置によって成形されるときの被加熱部において、搬送方向についての温度バラツキを小さくすることができる。従って、成形装置によって成形される成形品の品質を安定させることができる。
さらに、前記の熱成形装置であって、前記温度センサとして、1個の放射温度計を有し、前記放射温度計は、前記ヒータユニットのうち前記搬送方向について下流側の端部に固定されている熱成形装置とすると良い。
上述の熱成形装置は、温度センサとして、1個の放射温度計を有する。従って、上述の熱成形装置は、複数の温度センサを設けた熱成形装置に比べて、簡易な構成となる。
さらに、上述の熱成形装置では、放射温度計が、ヒータユニットのうち搬送方向について下流側の端部(例えば、ヒータユニットを構成するヒータのうち搬送方向について最も下流側に位置する第1ヒータに隣接する位置)に固定されている。これにより、表示上限個数を上限として表示部に表示される一連の温度測定値において、第1番目に表示される温度測定値を、常に、ヒータユニットの下流側端部に位置するヒータによって停止状態加熱された部位の温度測定値にすることができる。さらには、表示上限個数を上限として表示部に表示される一連の温度測定値の中に、停止状態加熱を終えた被加熱部(同時被加熱部)について、搬送方向の略全範囲にわたる温度測定値を含ませることが可能になる。これにより、表示部に表示された一連の温度測定値に基づいて、いずれのヒータの出力を調整すべきであるかを判断し易くなる。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、実施形態にかかる熱成形装置1の概略構成図である。また、図2は、熱成形装置1の説明図であり、搬送装置10によって搬送されるシート90(被加熱部91)を平面視した図である。図3は、熱成形装置1のヒータユニット21,22の平面図(シート90を加熱する加熱面側の平面図)である。図4は、熱成形装置1の成形装置30の概略断面図である。
本実施形態の熱成形装置1は、図1に示すように、搬送装置10と、加熱装置20と、成形装置30と、トリミング装置40と、スクラップ回収装置50と、成形品取り出し装置60と、制御装置80とを備える。このうち、搬送装置10は、熱可塑性のシート90を搬送方向D1(図1において左から右に向かう方向)に搬送する。なお、図1~図4では、左側が搬送方向D1の上流側、右側が搬送方向D1の下流側となる。
また、本実施形態では、シート90として、帯状シートを用いている。より具体的には、シート90は、加熱装置20によって同時に停止状態加熱がなされる被加熱部91(同時被加熱部91bとする)が、シート90の長さ方向DL(搬送方向D1に沿う方向)に複数並ぶ帯状のシートである(図2参照)。このシート90は、ロール状に捲回されたものが搬送方向D1に送り出されるようにして用いられる(図1参照)。
搬送装置10は、図2に示すように、シート90の幅方向D2の両端部に隣接して配置された一対の搬送ユニット10Aを備える。搬送ユニット10Aは、チェーン11とスプロケット12,13とサーボモーター14と環状ベルト15と備えている。このうち、チェーン11は、複数のリンクを連結して環状にした金属製のエンドレスチェーンとされ、スプロケット12,13に架けられて、周回動作するように配置されている。スプロケット13には、環状ベルト15を介してサーボモーター14の駆動力が伝達される。チェーン11は、シート90に接する部分が搬送方向D1へ移動し、シート90から幅方向D2の外側に離間する部分が搬送方向D1とは反対の戻り方向へ移動する。
この搬送装置10は、搬送ユニット10Aによって、搬送方向D1について、加熱装置20の上流側の端部の位置からトリミング装置40の下流側の端部の位置までの範囲で、シート90の幅方向D2(図2において上下方向)の両端部を把持するようにして、シート90を搬送方向D1に搬送する。なお、シート90は、搬送装置10によって、間欠的に搬送方向D1に搬送される。具体的には、搬送装置10は、後述する停止状態加熱、成形、及びトリミングを行う期間中は、シート90の搬送を停止するようにして、間欠的にシート90を搬送方向D1に搬送する。なお、搬送装置10によるシート90の搬送速度は、制御装置80によって変更可能とされている。搬送装置10は、搬送方向D1について複数に分割されていても良い。また、搬送装置を、ローラー等によって構成しても良い。
加熱装置20は、シート90の被加熱部91を加熱する。この加熱装置20は、搬送装置10によるシート90の搬送が停止された状態でシート90の被加熱部91を加熱する処理(これを停止状態加熱という)を、予め設定した設定加熱時間t1ずつ、順次行う。この加熱装置20は、図1に示すように、シート90の被加熱部91を加熱するヒータユニット21,22を有する。ヒータユニット21は、シート90の上方(表面側)に配置されており、シート90の上方(表面側)から被加熱部91を加熱する。一方、ヒータユニット22は、シート90の下方(裏面側)に配置されており、シート90の下方(裏面側)から被加熱部91を加熱する。従って、本実施形態では、シート90の被加熱部91を、シート90の両面から加熱する。
ヒータユニット21は、図3に示すように、搬送方向D1に並ぶ複数(本実施形態では、16個)のヒータ25(平面視8角形)からなるヒータ列26を、複数(本実施形態では、9列)有する。従って、ヒータユニット21は、合計144個(=16×9)のヒータ25を備えている。ヒータユニット22は、ヒータユニット21と同等である。なお、ヒータユニット21、22のうち、搬送方向D1の上流側の範囲(図3において左側半分の領域)に位置する部位を上流側ヒータユニット21b,22bとし、下流側の範囲(図3において右側半分の領域)に位置する部位を下流側ヒータユニット21c,22cとする。
なお、本実施形態では、熱成形装置1の電源がONとされている間は、ヒータユニット21,22の電源もONの状態とされる。すなわち、熱成形装置1の稼働中は、常に、ヒータユニット21,22のヒータ25に電力が供給されて、ヒータユニット21,22のヒータ25による加熱が行われる。
また、本実施形態では、1つの同時被加熱部91b(加熱装置20によって同時に停止状態加熱がなされる被加熱部91の領域)について、停止状態加熱を、複数回(本実施形態では、2回)に分けて行う。すなわち、停止状態加熱を、複数回(本実施形態では、2回)に分割した分割停止状態加熱として行う。本実施形態では、各々の同時被加熱部91bについて、2回の分割停止状態加熱を、設定加熱時間t1(例えば10秒間)の半分の時間ずつ行うことによって、設定加熱時間t1の停止状態加熱を完了させる。
具体的には、まず、搬送装置10によってシート90を搬送方向D1に搬送して、ヒータユニット21,22に対して搬送方向D1の上流側に隣接していた未加熱の同時被加熱部91bを、ヒータユニット21,22の上流側ヒータユニット21b,22bによって加熱される領域(上流側加熱領域P11とする)に配置する(図2参照)。そして、この状態で、搬送装置10によるシート90の搬送を、設定加熱時間t1の半分の時間(例えば5秒間)だけ停止する。これにより、加熱装置20を構成するヒータユニット21,22の上流側ヒータユニット21b,22bによって、1回目の分割停止状態加熱が、設定加熱時間t1の半分の時間(例えば5秒間)行われる。
次いで、搬送装置10によってシート90を搬送方向D1に搬送することによって、1回目の分割停止状態加熱を終えた被加熱部91(同時被加熱部91b)を、ヒータユニット21,22の下流側ヒータユニット21c,22cによって加熱される領域(下流側加熱領域P12とする)に移動させる(図2参照)。そして、この状態で、搬送装置10によるシート90の搬送を、設定加熱時間t1の半分の時間(例えば5秒間)だけ停止する。これにより、下流側ヒータユニット21c,22cによって、2回目の分割停止状態加熱が、設定加熱時間t1の半分の時間(例えば5秒間)行われる。これにより、設定加熱時間t1の停止状態加熱が完了する。停止状態加熱を終えた被加熱部91(同時被加熱部91b)は、搬送装置10によってシート90が搬送方向D1に搬送されることにより、成形装置30によって成形される成形領域P2に配置される(図2参照)。
成形装置30は、搬送方向D1について加熱装置20よりも下流側(図1において右側)に位置し、前述の停止状態加熱を終えて成形領域P2に配置された被加熱部91(同時被加熱部91b)を成形して、成形品PRを形成する。成形装置30は、図4に示すように、上テーブル31と、下テーブル32と、成形型33と、クランプ34とを備える。上テーブル31と下テーブル32は、設定された離間位置と近接位置との間で上下方向D3に近接及び離間する。これにより、上テーブル31に対して下方に固定された成形型33が、離間位置L11と近接位置L13との間で昇降すると共に、下テーブル32に対して上方に固定されたクランプ34が、離間位置L12と近接位置L14との間で昇降する。
この成形装置30は、停止状態加熱を終えた被加熱部91(同時被加熱部91b)が成形領域P2に配置されると、成形型33とクランプ34とを近接させて、成形型33とクランプ34との間でシート90を挟む。この状態で、成形型33のうち成形面33bと被加熱部91とによって囲まれた空間内を減圧(真空引き)し、これによって、シート90の被加熱部91(同時被加熱部91b)を成形面33bに密接させて、被加熱部91(同時被加熱部91b)を成形することで、成形品PRを形成する。その後、成形型33とクランプ34とを離間させることで、被加熱部91(同時被加熱部91b)の成形が終了する。なお、停止状態加熱を終えた被加熱部91が成形領域P2に配置されてから、被加熱部91の成形が終了するまでの間、搬送装置10は、シート90の搬送を停止する。
トリミング装置40は、成形品PRが形成されたシート90(成形シート)から成形品PRの外周を切断して、シート90から成形品PRを分離する。具体的には、搬送装置10によるシート90の搬送によって、成形装置30によって成形品PRが成形された被加熱部91が、トリミング装置40によってトリミングされる位置に配置されると、トリミング装置40が、シート90(成形シート)の被加熱部91から成形品PRを切り離す(トリミングする)。なお、成形品PRが成形された被加熱部91がトリミングされる位置に配置されてから、トリミングが終了するまでの間、搬送装置10は、シート90の搬送を停止する。成形品PRが切除されたシート90(スクラップシート)は、搬送装置10によって搬送方向D1に搬送されて、スクラップ回収装置50に搬入される。一方、シート90から切り離された成形品PRは、成形品取出装置60に搬入される(図1参照)。
さらに、本実施形態の熱成形装置1は、搬送方向D1について成形装置30よりも上流側の測定位置P3に固定された温度センサ70を備える(図1及び図2参照)。この温度センサ70は、搬送装置10によってシート90が搬送方向D1に搬送されることによって、停止状態加熱を終えた被加熱部91が成形領域P2に移動する(この移動を成形直前移動とする)ときに、当該成形直前移動をする被加熱部91の温度を測定できる測定位置P3に設けられている。
これにより、温度センサ70によって、成形直前移動をしている被加熱部91の温度を測定することができる。なお、この温度センサ70は、停止状態加熱を終えた被加熱部91が成形直前移動を開始する時点から、設定した温度測定間隔で、当該成形直前移動をする被加熱部91の温度を順次測定する。従って、成形直前移動をする被加熱部91について、搬送方向D1の下流側から上流側に向かう順で、一定の間隔で搬送方向D1に並ぶ複数の部位の温度を順次測定することができる。
なお、本実施形態では、温度センサ70によって測定される「温度測定間隔」として、時間間隔(例えば、0.05秒間隔。すなわち、0.05秒経過する毎に温度測定する)、または、シート90の搬送距離間隔(例えば、125mm間隔。すなわち、シート90が搬送方向D1に125mm搬送される毎に温度測定する)のいずれかを選択して設定することができる。
また、本実施形態では、温度センサ70として、1個の放射温度計を設けている。従って、本実施形態の熱成形装置1は、複数の温度センサを設けた熱成形装置に比べて、簡易な構成となる。なお、本実施形態の熱成形装置1では、図1に示すように、温度センサ70(放射温度計)が、ヒータユニット21のうち搬送方向D1について下流側(図1において右側)の端部に固定されている。詳細には、温度センサ70(放射温度計)は、図3に示すように、ヒータユニット21を構成するヒータ25のうち搬送方向D1について最も下流側(図3において右側)に位置するヒータ25に隣接する位置に設けられている。
また、制御装置80は、搬送装置10、加熱装置20、成形装置30、トリミング装置40、スクラップ回収装置50、成形品取出装置60、及び温度センサ70の駆動(作動)を制御する。この制御装置80は、表示部81を有する。この表示部81は、温度センサ70によって測定された温度測定値等を画面に表示する(図5参照)。
具体的には、表示部81は、図5に示すように、設定した温度測定間隔で、成形直前移動が開始される時点から温度センサ70によって順次測定された複数の温度測定値を、予め設定された表示個数(表示上限個数ともいう。本実施形態では16個)を上限として、測定順に並べて画面(温度表示画面81B)に表示する。なお、図5には、温度測定間隔を0.05秒に設定して、表示部81(温度表示画面81B)に、成形直前移動が開始される時点から温度センサ70によって順次測定された温度測定値が、測定順に16個(表示上限個数)横方向に並べて表示された例を示している。
図5に示すように、表示部81(温度表示画面81B)において、表示欄の上方で左から右に向かって並ぶ1~16の数字が、温度測定値の測定順を表している。左から右に向かって並ぶ1~16の数字の下方の表示欄に表示されている数字が、温度測定値(℃)である。従って、成形直前移動の開始時点に測定された温度測定値が、表示部81(温度表示画面81B)の第1番目の欄に表示され、図5に示す例では、112℃となっている。その後、0.05秒間隔で測定された温度測定値が、第2番目の欄から第16番目の欄に測定順に表示され、図5に示す例では、114℃、115℃、116℃、・・・93℃となっている。
この表示部81(温度表示画面81B)は、成形直前移動が行われる毎に、各々の成形直前移動の開始時点から温度センサ70によって順次測定された複数の温度測定値を、予め設定された表示個数を上限として測定順に表示する。従って、この表示部81は、新たな(次回の)成形直前移動が行われる毎に、各々の成形直前移動の開始時点から温度センサ70によって順次測定された複数の温度測定値を、表示上限個数(本実施形態では16個)を上限として、改めて測定順に表示する。
すなわち、表示部81は、図5に示すように、成形直前移動が開始された時点から温度センサ70によって測定された温度測定値を、表示上限個数を上限として測定順に一連の温度測定値として表示した後、新たな(次の)成形直前移動が開始された時点から測定された温度測定値を、改めて、表示上限個数を上限として測定順に一連の温度測定値として表示する。従って、各々の成形直前移動の開始時点に測定された温度測定値が、表示部81の第1番目の欄(最も左の表示欄)に表示される。
詳細に説明すると、表示部81には、直近の6回の成形直前移動にかかる一連の温度測定値(16個の温度測定値)が、履歴として表示される。表示部81(温度表示画面81B)において、表示欄の左側で上から下に向かって並ぶ1~6の数字が、温度測定値の履歴を表しており、数字が小さいほど新しい履歴となる。従って、第1の履歴欄(横の列)に表示される一連の温度測定値(16個の温度測定値)が、最新の温度測定値の履歴となる。図5には、初回の成形直前移動にかかる一連の温度測定値(16個の温度測定値)のみが示されている。従って、2回目の成形直前移動にかかる一連の温度測定値(16個の温度測定値)が表示部81に表示されるときは、現在、第1の履歴欄(横の列)に表示されている一連の温度測定値(16個の温度測定値)が、その下の第2の履歴欄(横の列)に繰り下がって表示され、2回目の成形直前移動にかかる一連の温度測定値(16個の温度測定値)が、第1の履歴欄に新たに表示される。
なお、表示部81には、温度測定値の他、ヒータ25の出力値(点火率)等も表示することができる。本実施形態の熱成形装置1の制御装置80では、表示部81を、図示しない切り替えボタンによって、温度測定値を表示する温度表示画面81B(図5参照)にすることができ、また、ヒータ25の出力(点火率)を調節するヒータ出力調節画面81A(図6参照)にすることもできる。
また、表示部81には、停止状態加熱を終えた(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えた)被加熱部91の温度のみならず、停止状態加熱を終えていない(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えていない)被加熱部91の温度も表示され得る。例えば、今回の成形直前移動が開始された時点から、新たな(次回の)成形直前移動が開始される時点までの間(成形直前移動間隔とする)に、停止状態加熱を終えた被加熱部91の温度のみならず、停止状態加熱を終えていない被加熱部91の温度も測定され、今回の成形直前移動が行われた被加熱部91について測定された温度測定値の個数が、表示上限個数(本実施形態では16個)よりも少なく、且つ、前記成形直前移動間隔内に測定された測定温度値の個数が表示上限個数以上である場合には、停止状態加熱を終えていない被加熱部91の温度も表示部81に表示される。
なお、図5に示す例では、測定順に表示された16個の温度測定値のうち、第1番目から第10番目の温度測定値が、停止状態加熱を終えた(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えた)被加熱部91の温度測定値であり、第11番目から第16番目の温度測定値が、停止状態加熱を終えていない(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えていない)被加熱部91の温度測定値である。詳細に説明すると、成形直前移動が開始された時点から0.05秒間隔(温度測定間隔)で、成形直前移動する被加熱部91の温度を測定してゆくと、第11番目の温度測定値を測定するとき(すなわち、成形直前移動開始から0.5秒後)には、上流側ヒータユニット21b,22bによる1回目の分割停止状態加熱を終えて、2回目の分割停止状態加熱を行うために下流側ヒータユニット21c,22cによって加熱される下流側加熱領域P12に移動してきた被加熱部91の下流側部分が、温度センサ70によって測定される位置に搬送されている。従って、これ以降は、1回目の分割停止状態加熱を終えて、2回目の分割停止状態加熱を行うために、下流側加熱領域P12に移動してきた被加熱部91の温度が、温度センサ70によって測定されることになる。このため、第11番目から第16番目の温度測定値が、停止状態加熱を終えていない(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えていない)被加熱部91の温度測定値となる。
また、本実施形態の熱成形装置1では、後述するように、ヒータユニット21,22を構成する各々のヒータ25の出力(点火率)の設定を、個別に調節することができる。本実施形態の熱成形装置1では、シート90の被加熱部91を均一に加熱できるように、予め、ヒータユニット21,22を構成する各々のヒータ25の出力(点火率)が初期設定されている。図6には、ヒータユニット21,22を構成する各々のヒータ25の出力(点火率)の初期設定値が示されている。
具体的に説明すると、図6に示すように、表示部81のヒータ出力調節画面81Aでは、1つの四角形の欄が、1つのヒータ25の出力値(点火率)を表示する欄であり、ヒータユニット21(または22)を構成する合計144個(=16×9)のヒータ25の出力値(点火率)が表示される。詳細には、搬送方向D1に並んでヒータ列26を構成する16個のヒータ25を、表示欄の下方で右から左に向かって昇順に並ぶ1~16の数字で示しており、シート90の幅方向D2(図6において上下方向)に並ぶ9個のヒータ列26を、表示欄の右側で下から上に向かって昇順に並ぶ1~9の数字で示している。
なお、ヒータ25の出力(点火率)は、最高出力(点火率)を100(%)として、0~100(%)の範囲で、1%ずつ調節することができる。図6に示す初期設定値では、ヒータユニット21(または22)を構成する合計144個のヒータ25のうち、4つの角部に位置するヒータ25の出力(点火率)を90(%)とし、それ以外の最外周に位置するヒータ25の出力(点火率)を80(%)とし、その内側に隣接するヒータ25の出力(点火率)を70(%)とし、これらよりも内側に位置するヒータ25の出力(点火率)を60(%)としている。このように設定することで、シート90の被加熱部91を全面にわたって略均一に加熱することができる。なお、ヒータユニット21(または22)では、最外周に近いヒータ25ほど、外気との接触によって温度が低下し易いため、内側に位置するヒータ25に比べて、出力(点火率)を高くしている。また、図5に示す温度測定値は、ヒータ25の出力(点火率)を図6に示す初期設定値としたヒータユニット21,22によって加熱された被加熱部91が、成形直前移動を開始した時点から、測定位置P3に固定されている温度センサ70によって測定された温度測定値である。
ところで、停止状態加熱を終えていない(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えていない)被加熱部91の温度は、停止状態加熱を終えた被加熱部91(成形直前移動をする被加熱部91)の温度に比べて、明らかに(極端に)低くなる。このため、作業者は、表示上限個数を上限として測定順に表示部81に表示された一連の温度測定値を目視して、先の温度測定値に比べて明らかに低い(具体的には、20℃以上低い)温度測定値(これを低温測定値とする)が存在している場合には、当該低温測定値が停止状態加熱を終えていない(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えていない)被加熱部91の温度であると判断することができる。
図5に示す例では、第11番目から第16番目の温度測定値が、第1番目から第10番目の温度測定値に比べて20℃以上も低いため、作業者は、第11番目から第16番目の温度測定値が、停止状態加熱を終えていない(すなわち、1回目の分割停止状態加熱は終えているが、2回目の分割停止状態加熱を終えていない)被加熱部91の温度であると判断することができる。従って、作業者は、これよりも前に測定された第1番目から第10番目の温度測定値が、停止状態加熱を終えた(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えた)被加熱部91の温度であると判断することができる。
これにより、作業者は、表示部81(温度表示画面81B)に表示されている第1番目から第10番目の温度測定値から、シート90の搬送方向D1について下流側から上流側に向かう順で、停止状態加熱を終えた被加熱部91の温度分布を把握することができる。具体的には、図5に示すように、第1回目の成形直前移動が開始された時点から測定された温度測定値にかかる温度分布(第1番目から第10番目の温度測定値の分布)から、作業者は、測定順が遅くなるにしたがって(すなわち、停止状態加熱を終えた被加熱部91において搬送方向D1の上流側に向かうにしたがって)、温度測定値が高くなっていることを把握することができる。なお、表示部81(温度表示画面81B)に表示されている第1番目から第10番目の温度測定値の中では、第1番目に測定された1番の表示欄の温度測定値が、搬送方向D1について最も下流側の被加熱部91の温度測定値であり、第10番目に測定された10番の表示欄の温度測定値が、搬送方向D1について最も上流側の被加熱部91の温度測定値である。
このように、測定順が遅くなるにしたがって(すなわち、停止状態加熱を終えた被加熱部91において搬送方向D1の上流側に向かうにしたがって)、温度測定値が高くなる原因は、以下の通りである。具体的には、停止状態加熱を終えた時点(すなわち、下流側ヒータユニット21c,22cによる2回目の分割停止状態加熱を終えた時点)では、当該停止状態加熱を終えた被加熱部91の温度が、搬送方向D1についてほぼ均一になっていたとしても、停止状態加熱を終えた時点において、当該停止状態加熱を終えた被加熱部91(同時被加熱部91b)は、ヒータユニット21,22の下流側ヒータユニット21c,22cによって加熱される下流側加熱領域P12内(図2参照)に配置されている。
このため、当該停止状態加熱を終えた(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えた)被加熱部91(同時被加熱部91b)のうち搬送方向D1の上流側に位置する部位ほど、シート90の搬送によって当該停止状態加熱を終えた被加熱部91を成形領域P2(図2参照)まで移動させる成形直前移動が開始された時点から、加熱領域外(ヒータユニット21,22よりも下流側)に移動するまでの時間が長くなる。換言すれば、停止状態加熱を終えた後、成形直前移動をしている期間中に、当該成形直前移動をしている被加熱部91(同時被加熱部91b)のうち搬送方向D1の上流側に位置する部位ほど、下流側ヒータユニット21c,22cによって加熱される時間が長くなる。
このために、停止状態加熱を終えた(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えた)被加熱部91において、成形直前移動の期間中に、搬送方向D1の上流側に向かうにしたがって温度測定値が高くなってゆく傾向にあった。その結果、成形領域P2に配置されて成形装置30によって成形されるときの被加熱部91(同時被加熱部91b)において、搬送方向D1の下流側部分(加熱装置20において搬送方向上流側に位置していた部分)のほうが上流側部分(加熱装置20において搬送方向下流側に位置していた部分)よりも温度が高くなる傾向にあった。
しかしながら、成形装置30によって成形される成形品PRの品質を安定させるためには、成形領域P2に配置されて成形装置30によって成形されるときの被加熱部91(同時被加熱部91b)において、搬送方向D1についての温度バラツキを小さくすることが求められる。
これに対し、本実施形態の熱成形装置1では、加熱装置20(ヒータユニット21,22)を構成する各々のヒータ25の出力の設定が個別に調節可能に構成されている。換言すれば、本実施形態の熱成形装置1は、加熱装置20(ヒータユニット21,22)を構成する各々のヒータ25の出力を個別に調節できるヒータ出力調節部80Aを備える。なお、ヒータ出力調節部80Aは、表示部81をヒータ出力調節画面81A(図6参照)にした状態の制御装置80によって構成される。
従って、作業者は、成形領域P2に配置されて成形装置30によって成形されるときの被加熱部91(同時被加熱部91b)において、搬送方向D1についての温度差を小さくするために、例えば、加熱装置20(ヒータユニット21,22)に含まれるヒータ25のうち、2回目の分割停止状態加熱を行う下流側ヒータユニット21c,22cにおいて、相対的に搬送方向D1の上流側(図3において左側)に位置するヒータ25の出力を低下させることができる。
詳細には、作業者は、下流側ヒータユニット21c,22cにおいて相対的に搬送方向D1の上流側に位置するヒータ25について、上流側に位置するヒータ25ほど現在の出力値からの出力低下量が多くなるように出力を低下させることで、成形領域P2に配置される被加熱部91において搬送方向D1についての温度差を小さくすることができることに想到する。
従って、作業者は、ヒータ出力調節画面81A(図6参照)を有するヒータ出力調節部80Aを用いて、例えば、搬送方向D1の下流側(図6において右側)から5番目に位置する9個のヒータ25の出力値を、現在の出力値から3%低下させる。具体的には、作業者は、ヒータ出力調節画面81A(図6参照)において、出力を変更したいヒータ25を選択し、図示しない数値入力部を用いて、選択したヒータ25の出力値を3%低下させる。さらに、作業者は、搬送方向D1の下流側から6番目に位置する9個のヒータ25の出力値を、現在の出力値から5%低下させる。さらに、搬送方向D1の下流側から7番目に位置する9個のヒータ25の出力値を、現在の出力値から8%低下させる。さらに、搬送方向D1の下流側から8番目に位置する9個のヒータ25の出力値を、現在の出力値から10%低下させる。
なお、ヒータユニット21のヒータ出力調節画面81A(図6参照)と、ヒータユニット22のヒータ出力調節画面81Aとが切り替え可能となっているので、ヒータ25の出力値は、ヒータユニット21と22とにおいて、それぞれ個別に調節することができる。従って、作業者は、例えば、上述したヒータ25の出力調節作業を、ヒータユニット21とヒータユニット22とについてそれぞれ行う。
このようにヒータ25の出力を調節することで、成形領域P2に配置されて成形装置30によって成形されるときの被加熱部91(同時被加熱部91b)において、搬送方向D1についての温度バラツキを小さくすることができる。従って、成形装置30によって成形される成形品PRの品質を安定させることができる。
なお、本実施形態の熱成形装置1では、図1に示すように、温度センサ70(放射温度計)が、ヒータユニット21のうち搬送方向D1について下流側(図1において右側)の端部に固定されている。詳細には、温度センサ70(放射温度計)は、図3に示すように、ヒータユニット21を構成するヒータ25のうち搬送方向D1について最も下流側(図3において右側)に位置するヒータ25に隣接する位置に設けられている。
これにより、表示上限個数を上限として表示部81に表示される一連の温度測定値(図5参照)において、第1番目に表示される温度測定値を、常に、ヒータユニット21,22の下流側端部に位置するヒータ25によって停止状態加熱された部位の温度測定値にすることができる。従って、各々の同時被加熱部91bについて、搬送方向D1の下流側端部に位置する部位の温度測定値が、表示部81(温度表示画面81B)の表示欄の第1番目に表示される。さらには、表示上限個数を上限として表示部81に表示される一連の温度測定値の中に、停止状態加熱を終えた同時被加熱部91bについて、搬送方向D1の略全範囲にわたる温度測定値を含ませることが可能になる。これにより、表示部81に表示された一連の温度測定値に基づいて、いずれのヒータ25の出力を調整すべきであるかを判断し易くなる。
なお、図5に示す例では、表示部81(温度表示画面81B)に表示されている第1番目から第10番目の温度測定値が、停止状態加熱を同時に終えた被加熱部91(同時被加熱部91b)に関する温度測定値となり、同時被加熱部91bについて、搬送方向D1の略全範囲にわたって等間隔で10箇所の温度が測定されたことになる。
一方、表示上限個数を上限として表示部81(温度表示画面81B、図5参照)に表示された一連の温度測定値に、停止状態加熱を終えた(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えた)被加熱部91の温度測定値のみが表示され、停止状態加熱を終えていない(すなわち、2回目の分割停止状態加熱を終えていない)被加熱部91の温度測定値が表示されない場合には、表示されている温度測定値が、停止状態加熱を終えた被加熱部91について、搬送方向D1についてどこまでの範囲の温度測定値が表示されているのか不明となる。このような場合とは、表示部81(温度表示画面81B、図5参照)に表示された一連の温度測定値において、先の温度測定値に比べて明らかに低い(具体的には、20℃以上低い)温度測定値が存在しない場合である。例えば、表示部81の温度表示画面81Bにおいて、1~16番の表示欄に表示された温度測定値が、いずれも、110℃~120℃の範囲内であった場合である。
このような場合、作業者は、加熱装置20(ヒータユニット21,22)に含まれるヒータ25について、出力を調節すべきであるか否かを判断することができない。あるいは、いずれのヒータ25の出力を調整すべきであるのかを判断できない。このようなことが生じる場合としては、例えば、シート90の搬送速度に対して温度測定間隔が短すぎて、成形直前移動が行われた被加熱部91(同時被加熱部91b)について測定された温度測定値の個数が、表示上限個数(本実施形態では16個)よりも多くなった場合を挙げることができる。
これに対し、本実施形態の熱成形装置1では、温度測定間隔の設定が変更可能に構成されている。換言すれば、本実施形態の熱成形装置1は、温度測定間隔を調節する測定間隔調節部80Bを備える。なお、測定間隔調節部80Bは、表示部81を温度表示画面81B(図5参照)にした状態の制御装置80によって構成される。図5に示すように、温度表示画面81Bには、温度測定値に加えて、温度測定間隔も表示され、図示しない数値入力部を用いて、温度測定間隔を任意の値に変更することができる。例えば、温度測定間隔として時間間隔を選択している場合は、温度測定間隔を0.01秒単位で調節することができる。また、温度測定間隔としてシート90の搬送距離間隔を選択している場合は、温度測定間隔を1mm単位で調節することができる。
これにより、前述したように、表示部81(温度表示画面81B)に表示された一連の温度測定値に基づいて、ヒータ25の出力を調節すべきであるか否かを判断することができない(あるいは、いずれのヒータ25の出力を調整すべきであるのかを判断できない)場合には、温度測定間隔の設定を変更(調節)することで、その後、表示部81(温度表示画面81B)に表示された温度測定値(変更した温度測定間隔で測定された温度測定値)に基づいて、ヒータ25の出力を調節すべきであるか否かを判断することができる(あるいは、いずれのヒータ25の出力を調整すべきであるのかを判断できる)状態にすることが可能となる。
具体的には、例えば、温度測定間隔を、現在の設定値よりも長くすることで、その後、表示部81(温度表示画面81B)に、表示上限個数を上限として表示された一連の温度測定値の中に、先の温度測定値に比べて明らかに低い(例えば、20℃程度低い)温度測定値(これを低温測定値とする)が現れるように調節することが可能となる。このように調節することで、作業者は、当該低温測定値が、停止状態加熱を終えていない被加熱部91の温度であると判断することができ、これよりも前に測定された温度測定値が、停止状態加熱を終えた被加熱部91の温度であると判断することができる。これにより、表示部81に表示された一連の温度測定値に基づいて、ヒータ25の出力を調節すべきであるか否かを判断することができる(あるいは、いずれのヒータ25の出力を調整すべきであるのかを判断できる)ようになる。
なお、本実施形態の熱成形装置1では、温度測定間隔として時間間隔が設定されている場合は、設定されている時間間隔で、常に、温度センサ70によって被加熱部91の温度が測定されており、成形直前移動が開始される時点から温度センサ70によって順次測定された温度測定値が、制御装置80に入力され、表示上限個数(本実施形態では16個)を上限として、測定順に並べて表示部81(温度表示画面81B)に表示される。また、温度測定間隔としてシート90の搬送距離間隔が設定されている場合は、成形直前移動が開始される時点から、設定されている温度測定間隔で温度センサ70によって温度測定し、成形直前移動を終了した時点で、温度センサ70による温度測定を終了し、この間に測定された温度測定値(成形直前移動期間中の温度測定値)が、表示上限個数(本実施形態では16個)を上限として表示部81(温度表示画面81B)に表示される。
また、本実施形態の熱成形装置1では、シート90の搬送速度が変更される場合がある。例えば、成形装置30の成形型を変更した場合である。シート90の搬送速度が変更された場合も、例えば、現在設定されている温度測定間隔が、変更されたシート90の搬送速度に対して短すぎるようになってしまい、表示上限個数を上限として表示部81(温度表示画面81B)に表示される一連の温度測定値として、停止状態加熱を終えた被加熱部91の温度測定値のみ(例えば、同時被加熱部91bのうち搬送方向D1の下流側部分の温度測定値のみ)が表示されるようになってしまうことがある。これにより、表示部81(温度表示画面81B)に表示された一連の温度測定値に基づいて、ヒータ25の出力を調節すべきであるか否かを判断することができなくなることがある。あるいは、いずれのヒータ25の出力を調整すべきであるのかを判断できなくなることがある。
このような場合でも、前述したように、温度測定間隔の設定を変更(調節)することで、表示部81(温度表示画面81B)に表示された一連の温度測定値に基づいて、ヒータ25の出力を調節すべきであるか否かを判断することができる(あるいは、いずれのヒータ25の出力を調整すべきであるかを判断できる)状態に調節することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の熱成形装置1によれば、成形領域P2に配置されて成形装置30によって成形されるときの被加熱部91(同時被加熱部91b)において、搬送方向D1についての温度バラツキを小さくすることができる。従って、成形装置30によって成形される成形品PRの品質を安定させることができる。
また、本実施形態の熱成形装置1では、図5に示すように、温度表示画面81Bには、温度測定値に加えて、停止状態加熱を終えている被加熱部91(同時被加熱部91b)の温度測定値(図5に示す例では、1番~10番の表示欄の温度測定値)の平均温度も表示される。従って、作業者は、表示された平均温度を、予め設定されている目標温度(成形装置30による成形に適切な温度)と比較して、ヒータユニット21,22を構成するヒータ25の出力の設定が適切であるか否かを判断することができる。例えば、表示された平均温度が目標温度よりも低く、平均温度と目標温度との温度差が許容範囲から外れている場合は、前述したヒータ出力調節部80Aによって各々のヒータ25の出力を上昇させることで、平均温度を目標温度に近づけることができる。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、温度測定間隔を時間間隔(具体的には、0.05秒)に設定して、シート90の被加熱部91の温度を測定した例を示したが、温度測定間隔をシート90の搬送距離間隔(例えば、125mm間隔)に設定して、シート90の被加熱部91の温度を測定するようにしても良い。なお、シート90の搬送距離は、搬送ユニット10Aを構成するサーボモーター14の回転量を、制御装置80が検知することによって把握される。
例えば、ヒータユニット21,22を構成する各々のヒータ25の搬送方向D1にかかる長さが125mmであるため、温度測定間隔を125mmに設定すると良い。このようにすることで、表示部81の温度表示画面81B(図5参照)の第1~第8番目の表示欄に表示される温度測定値が、停止状態加熱時(2回目の分割停止状態加熱時)において、搬送方向D1について下流側から順に並ぶ第1~第8番目のヒータ25のそれぞれによって加熱された部位の温度測定値となる。従って、表示部81の温度表示画面81Bにおいて左から右に向かって並ぶ1~8の番号が、表示部81のヒータ出力調節画面81A(図6参照)において右から左に向かって並ぶ1~8の番号に対応する。
このため、作業者は、表示部81の温度表示画面81B(図5参照)の第1~第8番目の表示欄に表示された温度測定値を確認し、例えば、第8番目の温度測定値が他の温度測定値に比べて特に高い場合には、表示部81のヒータ出力調節画面81Aにおいて、搬送方向D1の下流側(図6において右側)から第8番目に位置する各々のヒータ25の出力を低下させることで、その後、表示部81の温度表示画面81Bの第8番目の表示欄に表示される温度測定値を、第1~第7番目の表示欄に表示される温度測定値に近づけることができる。これにより、表示部81の温度表示画面81B(図5参照)の第1~第8番目の表示欄に表示される温度測定値のバラツキを小さくすることができる。すなわち、成形領域P2に配置されて成形装置30によって成形されるときの被加熱部91(同時被加熱部91b)において、搬送方向D1についての温度バラツキを小さくすることができる。
また、実施形態では、シートとして、帯状のシート90を用いた例を示した。しかしながら、シートとして、枚葉型のシート(例えば、帯状のシート90を所定の長さに切断して複数枚に分割した平面視矩形状のシート)を用いて、加熱装置によってシートを1枚ずつ加熱して、その後、成形装置30によってシートを1枚ずつ成形するようにしても良い。このような場合でも、本発明の熱成形装置によれば、成形領域P2に配置されて成形装置30によって成形されるときの被加熱部91(同時被加熱部91b)において、搬送方向D1についての温度バラツキを小さくすることができる。
また、実施形態では、停止状態加熱を2回に分けて加熱する(すなわち、2回の分割停止状態加熱を行って、設定加熱時間t1の停止状態加熱を完了させる)例を示した。しかしながら、停止状態加熱を1回で完了させるようにしても良い。例えば、下流側ヒータユニット21c,22cのみを用いて、シート90の被加熱部91を加熱するようにしても良い。