JP7457213B2 - 多孔質フィルム、その製造方法、及びそれを備えた吸収性物品 - Google Patents

多孔質フィルム、その製造方法、及びそれを備えた吸収性物品 Download PDF

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Description

本発明は多孔質フィルムに関する。また本発明は、多孔質フィルムの製造方法及びそれを備えた吸収性物品に関する。
耐水圧が高く且つ透湿性を有する多孔質フィルムが知られている。かかる多孔質フィルムは一般に、充填剤及び添加剤を含有する樹脂フィルムを一軸又は二軸延伸して多数の微細孔を形成することで製造される。
例えば特許文献1には、線状低密度ポリエチレンと、分岐低密度ポリエチレンと、充填剤と、該充填剤の分散剤を含む多孔質フィルムが記載されている。分散剤は、充填剤の均一分散性を向上させる目的で用いられており、その具体例としてステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウムが挙げられている。
特許文献2には、ポリオレフィン、硫酸バリウム、及び脂肪酸亜鉛を含む多孔質フィルムが記載されている。脂肪酸亜鉛は、硫酸バリウムの分散性を向上させる目的で用いられている。
特許文献3には、α-オレフィンコモノマーを含有する結晶性低密度ポリエチレンと、無機充填剤とを含む多孔質フィルムが記載されている。結晶性低密度ポリエチレンは、多孔質フィルムに伸縮性を付与する目的で用いられている。
特開平01-144432号公報 特開平11-116714号公報 特開2000-001557号公報
本発明は、オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含む多孔質フィルムであって、
前記無機充填剤を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して50質量部以上400質量部以下、前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、前記脂肪酸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含み、
前記オレフィン系樹脂組成物は、融点が90℃未満である低融点オレフィン系樹脂を含み、
前記金属石鹸の融点が200℃以下であり、
前記金属石鹸の析出温度が、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高い、多孔質フィルムを提供するものである。
また本発明は、前記の多孔質フィルムを有する、吸収性物品を提供するものである。
更に本発明は、オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含むコンパウンドを溶融成形してなる樹脂シートを、少なくとも一軸方向に延伸する工程を有し、
前記延伸を30℃以上100℃以下にて、1.1倍以上5.0倍以下の延伸倍率で行う、多孔質フィルムの製造方法であって、
前記無機充填剤を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して50質量部以上400質量部以下、前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、前記脂肪酸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含み、
前記オレフィン系樹脂組成物は、融点が90℃未満である低融点オレフィン系樹脂を含み、
前記金属石鹸の融点が200℃以下であり、
前記金属石鹸の析出温度が、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高い、多孔質フィルムの製造方法を提供するものである。
発明の詳細な説明
多孔質フィルムは、使い捨ておむつをはじめとする吸収性物品の裏面シートとして種々用いられているところ、近年の吸収性物品の柔軟化に対応するべく裏面シートにも柔軟化が求められている。つまり、変形させるために必要な荷重が小さい裏面シートが求められている。裏面シートとして用いられる多孔質フィルムの柔軟化は、例えば該多孔質フィルムを構成する樹脂の密度を低下させることで達成可能である。
しかし、低密度の樹脂を用いた場合、充填剤を含む樹脂フィルムの延伸による微細孔の形成を首尾よく行えない場合がある。この理由は、低密度の樹脂は、樹脂が柔らかく、樹脂フィルムの延伸時に、充填剤との間での界面剥離が起こりにくいからである。
したがって本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る多孔質フィルムに関する。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の多孔質フィルムは多数の微細孔を有している。本発明の多孔質フィルムは、この微細孔によって透湿性を有するものである。また本発明の多孔質フィルムは耐水性が高く、高い防漏性を有するものである。更に本発明の多孔質フィルムは柔軟性が高く、変形させるために必要な荷重が小さいものである。本発明の多孔質フィルムは、オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、開孔促進剤としての金属石鹸、及び無機充填剤の分散剤としての脂肪酸を少なくとも含んでいる。本発明の多孔質フィルムは、これらの成分に加えて、該多孔質フィルムの各種の特性を向上させることを目的として種々の添加剤を含んでいてもよい。
本明細書において「オレフィン系樹脂組成物」は、各種のオレフィン系樹脂を1種のみ含む場合、及び2種以上含む場合の双方を包含する。また、「オレフィン系樹脂組成物」は、各種のオレフィン系樹脂のみからなり、他の樹脂及び樹脂以外の成分を含まない概念である。なお、本発明の多孔質フィルムが、オレフィン系樹脂以外の樹脂を含むことは妨げられない。
本発明に用いられるオレフィン系樹脂組成物は、エチレン、プロピレン、ブテン等のモノオレフィンの重合体及び共重合体を主成分とするものである。例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの任意の2種以上の組み合わせからなる混合物が挙げられる。
本発明において用いられるオレフィン系樹脂組成物はその密度が低いことが、本発明の多孔質フィルムに満足すべき柔軟性を付与し得る点から好ましい。この観点から、オレフィン系樹脂組成物はその密度が0.900g/cm未満であることが好ましく、0.895g/cm以下であることが更に好ましく、0.885g/cm以下であることが一層好ましい。
また、本発明において用いられるオレフィン系樹脂組成物は、その密度が好ましくは0.840g/cm以上であれば本発明の多孔質フィルムにブロッキングが生じにくくなり、0.850g/cm以上であることが更に好ましく、0.860g/cm以上であることが一層好ましい。
以上を総合すると、オレフィン系樹脂組成物は、その密度が0.840g/cm以上0.900g/cm未満であることが好ましく、0.850g/cm以上0.895g/cm以下であることが更に好ましく、0.860g/cm以上0.885g/cm以下であることが一層好ましい。
オレフィン系樹脂組成物の密度を上述した範囲内に設定する目的で、オレフィン系樹脂組成物は、オレフィン系樹脂として、低融点オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。また、低融点オレフィン系樹脂は、本発明の多孔質フィルムに柔軟性を付与する目的でも用いられる。低融点オレフィン系樹脂は、エチレンとαオレフィンとのコポリマー(以下「エチレン-αオレフィンコポリマー」ともいう。)であることが好ましい。αオレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン及び1-ヘキセンなどが挙げられる。特に、メタロセン触媒により重合されたエチレンとαオレフィンとのコポリマーは、引裂きや突き抜けなどに対するフィルムの強度が一層向上するので、より好ましい。
本発明の多孔質フィルムに柔軟性を付与する観点から、低融点オレフィン系樹脂は、その融点が90℃未満であることが好ましく、80℃未満であることが更に好ましく、70℃未満であることが一層好ましい。また、多孔質フィルムの形態安定性を得るため、低融点オレフィン系樹脂は、その融点が40℃以上であることが好ましい。多孔質フィルムに含まれる融点90℃未満の低融点オレフィン系樹脂の融点は、以下の方法で測定される。およそ2.0mgの多孔質フィルムを試料とし、示差走査熱熱量計(DSC7000X、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、測定温度範囲10℃~260℃、昇温速度10℃/min、空気環境下の条件で示差走査熱量測定(DSC)を実施する。得られたDSC曲線には、90℃よりも低い温度域に、低融点オレフィン系樹脂が融解する際に生じる吸熱ピークが観察され、低融点オレフィン系樹脂の融点は、観察された吸熱ピークの頂点の温度である。
なお、多孔質フィルムに含まれる添加剤の融点と低融点オレフィン系樹脂の融点は、多孔質フィルムからブリードアウトした添加剤を収集し、その融点を測定することで、両者を区別することが可能である。多孔質フィルムから添加剤を効率よく収集する方法には下記手法がある。
先ず、ラボプラストミル(東洋精機製)を使用して、多孔質フィルムを160℃、30rpmで10分間混錬して樹脂塊を得る。
次に、ラボプレス(東洋精機製)を用い、樹脂塊を150℃、13MPaで1分間プレスし、次いで、常温、13MPaで1分間冷却プレスして厚みがおよそ0.5mmであるプレスフィルムを得る。
最後に、プレスフィルムを50℃の環境下で1週間保存する。そうすることで、プレスフィルム表面には多孔質フィルムの状態よりも多くの添加剤がブリードアウトするため、添加剤を効率よく収集することができる。プレスフィルム表面から添加剤を収集する方法には、例えば、ワイプで拭き取る、スパチュラで掻き採るなどがある。
本発明の多孔質フィルムに一層の柔軟性を付与する観点から、低融点オレフィン系樹脂は、その密度が0.895g/cm以下であることが好ましく、0.885g/cm以下であることが更に好ましく、0.875g/cm以下であることが一層好ましい。多孔質フィルムの強度維持の観点から、低融点オレフィン系樹脂は、その密度が0.840g/cm以上であることが好ましく、0.850g/cm以上であることが更に好ましく、0.860g/cm以上であることが一層好ましい。
低融点オレフィン系樹脂が前記好ましい密度の範囲と、前記好ましい融点の範囲を両立するため、低融点オレフィン系樹脂はランダム共重合体であることが好ましい。
本発明で用いられるオレフィン系樹脂組成物は、上述した低融点オレフィン系樹脂を、該オレフィン系樹脂組成物100質量部中に30質量部以上含むことが、本発明の多孔質フィルムに満足すべき柔軟性を与えつつ、伸長変形後の残留歪を小さく保ち得る点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、低融点オレフィン系樹脂は、オレフィン系樹脂組成物100質量部中に更に好ましくは35質量部以上含まれ、一層好ましくは40質量部以上含まれる。
また、本発明で用いられるオレフィン系樹脂組成物は、上述した低融点オレフィン系樹脂を、該オレフィン系樹脂組成物100質量部中に95質量部以下含むことが、本発明の多孔質フィルムにブロッキングが生じにくくなることから好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、低融点オレフィン系樹脂は、オレフィン系樹脂組成物100質量部中に、更に好ましくは92質量部以下含まれ、一層好ましくは90質量部以下含まれる。
以上を総合すると、本発明で用いられるオレフィン系樹脂組成物は、上述した低融点オレフィン系樹脂を、該オレフィン系樹脂組成物100質量部中に30質量部以上95質量部以下含むことが好ましく、35質量部以上92質量部以下含むことが更に好ましく、40質量部以上90質量部以下含むことが一層好ましい。
本発明で用いられるオレフィン系樹脂組成物は、上述した低融点オレフィン系樹脂に加えて高融点オレフィン系樹脂を含むことが、本発明の多孔質フィルムに耐熱性や形態の安定性、加工性を一層付与し得る点から好ましい。多孔質フィルムの柔軟性と両立させる観点から、高融点オレフィン系樹脂は、その密度が比較的低いことが好ましく、具体的には0.950g/cm以下であることが好ましく、0.940g/cm以下であることが更に好ましく、0.930g/cm以下であることが一層好ましい。
また、ブロッキングを生じにくくする観点から、高融点オレフィン系樹脂の密度は0.900g/cm以上であることが好ましく、0.905g/cm以上であることが更に好ましく、0.910g/cm以上であることが一層好ましい。
以上を総合すると、高融点オレフィン系樹脂の密度は0.900g/cm以上0.950g/cm以下であることが好ましく、0.905g/cm以上0.940g/cm以下であることが更に好ましく、0.910g/cm以上0.930g/cm以下であることが一層好ましい。
前記の密度を有する高融点オレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレンを用いることが好ましく、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが、延伸時の耐熱性が向上し、延伸を均一に行い得るので好ましい。特に、メタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンは、引裂きや突き抜けなどに対するフィルムの強度が一層向上するので、より好ましい。
メタロセン触媒とは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属をπ電子系のシクロペンタジエニル基又は置換シクロペンタジエニル基等を含有する不飽和環状化合物で挟んだ構造の化合物であるメタロセンと、アルミニウム化合物等の助触媒とを組み合わせたものである。メタロセンとしては、例えば、チタノセン、ジルコノセン等が挙げられる。アルミニウム化合物としては、例えば、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウム、アルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハライド等が挙げられる。
本発明で用いられるオレフィン系樹脂組成物は、上述した密度を有する高融点オレフィン系樹脂を、該オレフィン系樹脂組成物100質量部中に5質量部以上含むことが、多孔質フィルムに耐熱性や形態の安定性、加工性を一層付与し得る点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、高融点オレフィン系樹脂は、オレフィン系樹脂組成物100質量部中に更に好ましくは8質量部以上含まれ、一層好ましくは10質量部以上含まれる。
また、本発明で用いられるオレフィン系樹脂組成物は、上述した高融点オレフィン系樹脂を、該オレフィン系樹脂組成物100質量部中に70質量部以下含むことが、多孔質フィルムの柔軟性と両立させる観点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、高融点オレフィン系樹脂は、オレフィン系樹脂組成物100質量部中に更に好ましくは65質量部以下含まれ、一層好ましくは60質量部以下含まれる。
以上を総合すると、本発明で用いられるオレフィン系樹脂組成物は、上述した密度を有する高融点オレフィン系樹脂を、該オレフィン系樹脂組成物100質量部中に5質量部以上70質量部以下含むことが好ましく、8質量部以上65質量部以下含むことが更に好ましく、10質量部以上60質量部以下含むことが一層好ましい。
本発明で用いられる高融点オレフィン系樹脂は、溶融成形される多孔質フィルムの高速成型を実現するため、短時間の固化を実現できるように融点が95℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが更に好ましく、110℃以上であることが一層好ましい。多孔質フィルムに含まれる高融点オレフィン系樹脂の融点は、以下の方法で測定される。およそ2.0mgの多孔質フィルムを試料とし、示差走査熱熱量計(DSC7000X、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、測定温度範囲10℃~260℃、昇温速度10℃/min、空気環境下の条件で示差走査熱量測定(DSC)を実施する。得られたDSC曲線の95℃以上の温度域に高融点オレフィン系樹脂が融解する際に生じる吸熱ピークが観察され、その吸熱ピークの頂点が高融点オレフィン系樹脂の融点である。なお、多孔質フィルムに含まれる添加剤と高融点オレフィン系樹脂を区別する方法は、上述した、多孔質フィルムに含まれる添加剤と低融点オレフィン系樹脂を区別する方法と同様である。
本発明の好ましい実施形態として、オレフィン系樹脂組成物が、低融点ポリエチレン樹脂であるメタロセン触媒により重合されたエチレン-αオレフィンコポリマーと、高融点ポリエチレン樹脂であるメタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンとを含む形態が挙げられる。この実施形態の多孔質フィルムは、柔軟性が非常に高いものとなる。また、後述する開孔促進剤である金属石鹸との併用によって、多孔質フィルムの透湿性及び防漏性が非常に高いものとなる。
本発明に用いられる開孔促進剤としての金属石鹸は、オレフィン系樹脂組成物及び無機充填剤を含む樹脂フィルムを延伸して微細孔を発生させることを円滑に行う目的で用いられるものである。上述したとおり、オレフィン系樹脂組成物が低密度であることで、本発明の多孔質フィルムに柔軟性が付与されるところ、密度が低いオレフィン系樹脂は、無機充填剤との間での界面剥離が起こりづらい傾向にある。そこで本発明においては、オレフィン系樹脂組成物と無機充填剤との間での界面剥離を促進させる目的で開孔促進剤である金属石鹸を用いている。後述する比較例1と比較例3との対比から明らかなとおり、高密度のオレフィン系樹脂組成物、つまり硬いオレフィン系樹脂組成物に金属石鹸を添加しても、微細孔の形成に差異は生じない。つまり、金属石鹸を用いることで微細孔の形成に効果がある場合は、オレフィン系樹脂組成物として低密度のもの、つまり柔らかいものを用いた場合のみである。
金属石鹸としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸の金属塩が好適に用いられる。脂肪酸としては、例えばカプリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、カプリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。金属塩としては、これらの脂肪酸のカルシウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の塩が挙げられる。
脂肪酸の金属塩に類似した物質であって且つ多孔質フィルムに配合される物質として脂肪酸そのものが知られている。脂肪酸は後述するとおり、無機充填剤の分散性を高める目的で用いられる。しかし脂肪酸は、オレフィン系樹脂組成物と無機充填剤との間での界面剥離を促進させる機能を有さない。したがって本発明においては、脂肪酸の金属塩と、脂肪酸とは、物質的に及び機能的に明確に区別される。
特に金属石鹸として、その融点が200℃以下のものを用いると、本発明の多孔質フィルムの製造過程におけるコンパウンドの混練時に、金属石鹸が十分に溶融して、溶融樹脂中に均一に混合される観点から好ましい。この観点から、金属石鹸の融点は、180℃以下であることが更に好ましく、160℃以下であることが一層好ましい。
また、金属石鹸は、上述したオレフィン系樹脂組成物との関係で、該金属石鹸の析出温度が、オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高いものを用いることが、微細孔を首尾よく形成でき、高い透湿度を有し且つ高い耐水性を有する多孔質フィルムが得られる観点から好ましい。詳細には、金属石鹸の析出温度が、オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高いことで、オレフィン系樹脂組成物が固化するよりも早く金属石鹸が析出するので、該金属石鹸は無機充填剤の表面に円滑に移行できるようになる。その結果、延伸時における無機充填剤とオレフィン系樹脂組成物との離型性が良好になり、微細孔が円滑に生じる。この利点を一層顕著なものとする観点から、金属石鹸の析出温度をTs(℃)とし、オレフィン系樹脂組成物の固化温度をTp(℃)としたとき、Ts-Tpの値が0℃よりも大きいことが好ましく、1℃以上であることが更に好ましく、2℃以上であることが一層好ましい。また、Ts-Tpの値は50℃以下であることが好ましい。
Ts-Tpの値が上述の範囲であることを条件として、金属石鹸の析出温度Tsは80℃以上180℃以下であることが好ましく、90℃以上170℃以下であることが更に好ましく、100℃以上160℃以下であることが一層好ましい。
一方、オレフィン系樹脂組成物の固化温度Tpは、Ts-Tpの値が上述の範囲であることを条件として、60℃以上130℃以下であることが好ましく、70℃以上120℃以下であることが更に好ましく、80℃以上115℃以下であることが一層好ましい。
金属石鹸の析出温度Tsは、ホットスターラーと熱電対を用い、以下の方法で測定される。ホットスターラーを使い、5.0gのパラフィンオイルに0.43gの金属石鹸を加え、攪拌しながら金属石鹸が溶解するまで加熱する。スターラーによる液の攪拌を止めたのち、パラフィンオイルの温度を降温速度0.2℃/minで下げていき、金属石鹸が析出してきたときのパラフィンオイルの温度を熱電対で読み取り、その温度を金属石鹸の析出温度とする。なお、パラフィンオイルを210℃に加熱したにもかかわらず、金属石鹸がパラフィンオイルに溶解しない場合には、析出温度は210℃と定義する。
一方、オレフィン系樹脂組成物の固化温度Tpは、JIS K 7121(補外結晶化終了温度の求め方)に準拠して、以下方法で測定される。およそ2.0mgの多孔質フィルムを試料とし、示差走査熱量計(DSC7000X、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、測定温度範囲を30℃~260℃、昇温速度を10℃/min、降温速度を50℃/min、空気環境下、データサンプリング周期0.5sの条件で示差走査熱量測定(DSC)を実施する。得られたDSC曲線の降温過程には、オレフィン系樹脂組成物が固化(結晶化)する際に生じる発熱ピークが観察される。オレフィン系樹脂組成物の固化温度は、降温過程で最も発熱量の多いピークに対し、ピークの温度よりも低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ピークの低温側の曲線で傾きが最大となる2点のデータ間で引いた近似直線の交点の温度とする。発熱ピークが重なって2個以上存在する場合は、例えばソフトウェアPeakFIT v4.12(株式会社ヒューリンクス製)を使用し、ピーク分離を行った後に前記方法で固化温度を求める。
本発明の多孔質フィルムにおいて、金属石鹸は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以上含まれることが、微細孔を首尾よく発生させ得る点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、金属石鹸は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して1.0質量部以上含まれることが更に好ましく、2.0質量部以上含まれることが一層好ましい。
また、本発明の多孔質フィルムにおいて、金属石鹸は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して20質量部以下含まれることが、良好な成形性を維持する点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、金属石鹸は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して15質量部以下含まれることが更に好ましく、10質量部以下含まれることが一層好ましい。
以上を総合すると、本発明の多孔質フィルムにおいて、金属石鹸は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下含まれることが好ましく、1.0質量部以上15質量部以下含まれることが更に好ましく、2.0質量部以上10質量部以下含まれることが一層好ましい。
本発明の多孔質フィルムに含まれる金属石鹸の量は、該多孔質フィルムに含まれる無機充填剤の量とも関係している。詳細には、本発明の多孔質フィルムにおいて、金属石鹸は、無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上含まれることが、微細孔を首尾よく発生させ得る点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、金属石鹸は、無機充填剤100質量部に対して1.5質量部以上含まれることが更に好ましく、2.0質量部以上含まれることが一層好ましい。
また、本発明の多孔質フィルムにおいて、金属石鹸は、無機充填剤100質量部に対して15質量部以下含まれることが、良好な成形性を維持する点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、金属石鹸は、無機充填剤100質量部に対して10質量部以下含まれることが更に好ましく、9.0質量部以下含まれることが更に好ましく、8.0質量部以下含まれることが一層好ましい。
以上を総合すると、本発明の多孔質フィルムにおいて、金属石鹸は、無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下含まれることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下含まれることが更に好ましく、1.5質量部以上9.0質量部以下含まれることが一層好ましく、2.0質量部以上8.0質量部以下含まれることが更に一層好ましい。
本発明に用いられる無機充填剤は、オレフィン系樹脂組成物との界面で剥離を生じて微細孔を形成させる物質である。この観点から、無機充填剤はその平均粒径D50が30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、また0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることが一層好ましい。無機充填剤の平均粒径D50とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積重量50質量%における重量累積粒径のことである。
無機充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト及びカーボンブラック並びにこれらの混合物が挙げられる。特に、上述した粒径に調整しやすいことから炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
無機充填剤は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して、50質量部以上含まれることが、十分な量の微細孔を形成して、多孔質フィルムの透湿性を十分に高くする点から好ましく、更に好ましくは60質量部以上であり、一層好ましくは80質量部以上である。
また、無機充填剤は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して、400質量部以下含まれることが、多孔質フィルムの防漏性を十分に高める観点から好ましく、更に好ましくは350質量部以下であり、一層好ましくは200質量部以下である。
本発明の多孔質フィルムには無機充填剤の分散剤が含まれている。分散剤としては、無機充填剤の表面を疎水化することができるものが好ましく用いられる。この観点から、分散剤として、例えば脂肪酸を用いることが好ましい。脂肪酸としては、例えばカプリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、カプリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。
特に、脂肪酸における炭化水素鎖の鎖長と、金属石鹸を構成する脂肪酸における炭化水素鎖の鎖長とが同じであると、脂肪酸で表面修飾された無機充填剤へ金属石鹸がより円滑に移行できるようになることから好ましい。とりわけ、脂肪酸と、金属石鹸を構成する脂肪酸がいずれもステアリン酸であることが好ましい。
本発明の多孔質フィルムは、上述した脂肪酸を、無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上含むことが、無機充填剤の分散性を高める点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、脂肪酸は、無機充填剤100質量部に対して、更に好ましくは0.8質量部以上含まれ、一層好ましくは1.0質量部以上含まれる。
また、本発明の多孔質フィルムは、上述した脂肪酸を、無機充填剤100質量部に対して5.0質量部以下含むことが、フィルムの成形性を損なわない点から好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、脂肪酸は、無機充填剤100質量部に対して、更に好ましくは4.0質量部以下含まれ、一層好ましくは3.0質量部以下含まれる。
以上を総合すると、本発明の多孔質フィルムは、上述した脂肪酸を、無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含むことが好ましく、0.8質量部以上4.0質量部以下含むことが更に好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下含むことが一層好ましい。
本発明の多孔質フィルムには添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、多孔質フィルムに各種の付加的性能を付与し得るものが用いられる。そのような添加剤としては、例えば可塑剤や、撥水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤などが挙げられる。
可塑剤は、本発明の多孔質フィルムに柔軟性やしなやかさを付与したり、本発明の多孔質フィルムにカサツキ音が発生することを防止したりする目的で用いられる。可塑剤としては、モノエステル、ポリエステル、エチレン-αオレフィンコオリゴマー、低分子量ポリエチレン、オレフィンオリゴマー、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン等が好ましく用いられる。
モノエステルは1塩基酸と1価アルコールとから得られる化合物である。
一方、ポリエステルは多塩基酸と1価アルコール、1塩基酸と多価アルコール、及び多塩基酸と多価アルコールのいずれかの組み合わせによって得られた化合物である。
エチレン-αオレフィンコオリゴマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン及び1-ヘキセンなどのαオレフィンと、エチレンとの低分子量共重合体である。
上述した1塩基酸、多塩基酸、1価アルコール、及び多価アルコールとしては、例えば以下に挙げるものが好ましく用いられる。
1塩基酸としては、例えば炭素数10~22の長鎖炭化水素のモノカルボン酸等が挙げられる。
多塩基酸としては、例えばジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等が挙げられる。
1価アルコールとしては、例えば炭素数10~22の長鎖炭化水素のモノアルコール等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えばジオール類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース等が挙げられる。
特に好ましいポリエステルは、例えばジエチレングリコールとダイマー酸とのポリエステルにおける両末端のカルボン酸又はアルコールをステアリルアルコール又はステアリン酸で部分的に又は全部を封鎖したポリエステル、1,3-ブタンジオールとアジピン酸のポリエステル、トリメチロールプロパン-アジピン酸-ステアリン酸からなるヘキサエステル、ペンタエリスリトール-アジピン酸-ステアリン酸からなるオクタエステル、ジペンタエリスリトール-アジピン酸-ステアリン酸からなるドデカエステル等が挙げられる。
一方、特に好ましいモノエステルとしては、例えば炭素数1~40のモノカルボン酸と炭素数1~40のモノアルコールとから脱水して得られる合計炭素数30以上のエステルが挙げられる。中でもモノカルボン酸とモノアルコールとから得られる合計炭素数が30以上のものが好ましく、該炭素数が38以上であって分岐鎖を有するモノエステルがより好ましい。具体的は、イソデシルステアレート、イソデシルベヘネート、イソトリデシルステアレート、2-オクタデシルステアレート、2-デシルテトラデシルラウレート、2-デシルテトラデシルステアレート、2-オクタデシルベヘネート、ステアリルイソステアレート、ステアリン酸とC20ゲルベアルコールとのエステル、及びα-分岐脂肪酸(炭素数18~40)とモノアルコール(炭素数6~36)とのエステル等が挙げられる。
撥水剤としては、トリグリセリドを用いることが好ましい。トリグリセリドを用いることで、多孔質フィルム表面の撥水性が高まり、防漏性が高まる。多孔質フィルムの技術分野においては、多孔質フィルムにトリグリセリドを配合することがこれまで行われてきたが、本発明で用いるトリグリセリドは、当該技術分野でこれまで用いられてきたトリグリセリドと異なる種類のものであることが好ましい。詳細には、本発明で好適に用いられるトリグリセリドは、炭素原子数16以上22以下である脂肪酸に由来する基を含み且つ当該基が不飽和結合及び置換基をもたない炭化水素基であるものである。かかるトリグリセリドを用いることで、該トリグリセリドを含む多孔質フィルム表面の撥水性がこれまでよりも高まり、該多孔質フィルムの防漏性がこれまでよりも高まることが本発明者の検討の結果判明した。
上述の利点を一層顕著なものとする観点から、本発明の多孔質フィルムにおける前記トリグリセリドの配合量は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましく、1.0質量部以上であることが一層好ましい。
また、フィルム成形性の観点から、前記トリグリセリドの配合量は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることが更に好ましく、20質量部以下であることが一層好ましい。
以上を総合すると、前記トリグリセリドの配合量は、オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上25質量部以下であることが更に好ましく、1.0質量部以上20質量部以下であることが一層好ましい。
また、開孔促進剤として用いられる金属石鹸による効果と撥水剤による効果の双方を十分に発揮させる観点、及び添加剤の過含有による加工性の悪化を防ぐ観点から、本発明の多孔質フィルムに含まれる前記トリグリセリドと前記金属石鹸との比率は、前記トリグリセリド100質量部に対して前記金属石鹸が30質量部以上300質量部以下であることが好ましい。この利点を一層顕著なものとする観点から、前記金属石鹸は、前記トリグリセリド100質量部に対して、35質量部以上250質量部以下用いられることが更に好ましく、40質量部以上230質量部以下用いられることが一層好ましい。
本発明で用いられるトリグリセリドは、下記の式(1)で表されるものである。
Figure 0007457213000001
式中、RからRは同一の又は異なる炭化水素基を表す。RからRのうちの少なくとも1つは、炭素原子数16以上22以下である脂肪酸に由来する基であり、当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基であることが好ましい。なお、炭素原子数16の脂肪酸であるパルミチン酸のアルキル基の炭素数は15である。
「不飽和結合を有さない炭化水素基」とは、炭素-炭素の二重結合及び三重結合のいずれも有さない炭化水素基のことである。つまりアルキル基のことである。また「置換基を有さない炭化水素基」とは、炭化水素基に含まれる水素原子が、他の原子又は原子団(例えば水酸基)によって置換されていないことをいう。したがって、「不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基」とは、無置換のアルキル基と同義である。
以下の説明では、本発明で用いられるトリグリセリドのことを便宜的に「本発明のトリグリセリド」ともいう。
式(1)で表されるトリグリセリドにおいては、防漏性が一層高い多孔質フィルムを得る観点から、RからRのうちの少なくとも1つは、炭素原子数16以上20以下である脂肪酸に由来する基であり、当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数16以上18以下である脂肪酸に由来する基であり、当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基であることが更に好ましい。
また、式(1)で表されるトリグリセリドにおいて、RからRのうちのいずれか1つ又は2つが、炭素原子数16以上22以下である脂肪酸に由来する基(当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基である。)以外の基である場合、当該基は脂肪酸に由来する基であればその種類に特に制限はないが、防漏性が一層高い多孔質フィルムを得る観点から、当該基は不飽和結合及び置換基を有していないことが好ましい。
本発明のトリグリセリドは、脂肪酸残基の炭素数が調整されたものであることが好ましい。詳細には、トリグリセリドとして以下の(a)又は(b)であることが好ましい。
(a)炭素原子数16の脂肪酸(すなわちパルミチン酸)に由来する基(当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基である。)を一分子内に少なくとも含むトリグリセリドと、炭素原子数18の脂肪酸(すなわちステアリン酸)に由来する基(当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基である。)を一分子内に少なくとも含むトリグリセリドとの混合物を含むトリグリセリド。
(b)炭素原子数16の脂肪酸に由来する基及び炭素原子数18の脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも含むトリグリセリドを含むトリグリセリド。
(a)の場合のように、本発明のトリグリセリドが複数種のトリグリセリドを含む場合、少なくとも1種のトリグリセリドは、炭素原子数16の飽和脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも1個含んでいる(このトリグリセリドのことを「トリグリセリド16」ともいう。)ことが好ましい。トリグリセリド16は、炭素原子数16の飽和脂肪酸に由来する基を一分子内に1個含んでいてもよく(このトリグリセリドのことを「トリグリセリドP」ともいう。)、2個含んでいてもよく(このトリグリセリドのことを「トリグリセリドPP」ともいう。)、あるいは3個含んでいてもよい(このトリグリセリドのことを「トリグリセリドPPP」ともいう。)。
なお、トリグリセリドP及びトリグリセリドPPにおける残りの脂肪酸残基の種類に特に制限はなく、例えば炭素数12以上24以下の飽和脂肪酸の残基であり得る。
トリグリセリド16は、トリグリセリドPのみから構成されていてもよく、トリグリセリドPPのみから構成されていてもよく、あるいはトリグリセリドPPPのみから構成されていてもよい。
トリグリセリド16は、トリグリセリドP、トリグリセリドPP及びトリグリセリドPPPから選択される2種以上の組み合わせであってもよい。例えばトリグリセリド16は、トリグリセリドPとトリグリセリドPPとの組み合わせ、トリグリセリドPとトリグリセリドPPPとの組み合わせ、トリグリセリドPPとトリグリセリドPPPとの組み合わせ、あるいはトリグリセリドPと、トリグリセリドPPとトリグリセリドPPPとの組み合わせであり得る。
(a)の場合のように、本発明のトリグリセリドが複数種のトリグリセリドを含む場合、少なくとも1種のトリグリセリドは、炭素原子数18の飽和脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも1個含んでいる(このトリグリセリドのことを「トリグリセリド18」ともいう。)ことも好ましい。トリグリセリド18は、炭素原子数18の脂肪酸に由来する基を一分子内に1個含んでいてもよく(このトリグリセリドのことを「トリグリセリドS」ともいう。)、2個含んでいてもよく(このトリグリセリドのことを「トリグリセリドSS」ともいう。)、あるいは3個含んでいてもよい(このトリグリセリドのことを「トリグリセリドSSS」ともいう。)。
なお、トリグリセリドS及びトリグリセリドSSにおける残りの脂肪酸残基の種類に特に制限はなく、例えば炭素数12以上24以下の飽和脂肪酸の残基であり得る。
トリグリセリド18は、トリグリセリドSのみから構成されていてもよく、トリグリセリドSSのみから構成されていてもよく、あるいはトリグリセリドSSSのみから構成されていてもよい。
トリグリセリド18は、トリグリセリドS、トリグリセリドSS及びトリグリセリドSSSから選択される2種以上の組み合わせであってもよい。例えばトリグリセリド18は、トリグリセリドSとトリグリセリドSSとの組み合わせ、トリグリセリドSとトリグリセリドSSSとの組み合わせ、トリグリセリドSSとトリグリセリドSSSとの組み合わせ、あるいはトリグリセリドSと、トリグリセリドSSとトリグリセリドSSSとの組み合わせであり得る。
(a)の場合においては、本発明のトリグリセリドは、トリグリセリド16及びトリグリセリド18のみから構成されていてもよく、あるいはトリグリセリド16及びトリグリセリド18に加えて他のトリグリセリドを含んで構成されていてもよい。他のトリグリセリドとしては、炭素原子数16以上22以下の脂肪酸に由来する基を全く有さないトリグリセリド、及び炭素原子数16以上22以下である脂肪酸に由来する基を含むトリグリセリド(ただしトリグリセリド16及びトリグリセリド18を除く)が挙げられる。
炭素原子数16の飽和脂肪酸に由来する基を「P」とし、炭素原子数18の飽和脂肪酸に由来する基を「S」とし、炭素原子数16の飽和脂肪酸及び炭素原子数18の飽和脂肪酸以外の脂肪酸に由来する基を「X」及び「Y」とした場合、本発明のトリグリセリドを構成する脂肪族基の組み合わせとして、例えばPPP、SSS、PPX、SSX、PXY、SXY、PPS、PSS及びPSXが挙げられる。PPX、SSX、PXY、SXY及びPSXで表されるトリグリセリドの構造は以下の(A)ないし(M)である。なお、PPS及びPSSの構造は示していないが、PPSの構造はPPXの構造に準じ、PSSの構造はSSXの構造に準じる。
Figure 0007457213000002
Figure 0007457213000003
Figure 0007457213000004
Figure 0007457213000005
Figure 0007457213000006
本発明のトリグリセリドは、上述した各種のトリグリセリドを単独で用いることができる。例えば、(b)の場合では、本発明のトリグリセリドは、上述したPPS、PSS及びPSXのトリグリセリドを単独で用いることができる。例えば本発明のトリグリセリドは、一分子内に、炭素原子数16の飽和脂肪酸に由来する基を少なくとも1個含み、炭素原子数18の飽和脂肪酸に由来する基を少なくとも1個含み、且つそれら以外の脂肪酸に由来する基を含まないものから構成されていてもよい。あるいは、本発明トリグリセリドは、炭素原子数16の飽和脂肪酸に由来する基を1個含み、炭素原子数18の飽和脂肪酸に由来する基を1個含み、且つその他の脂肪酸に由来する基を1個含むトリグリセリドから構成されていてもよい。
本発明のトリグリセリドは、上述した各種のトリグリセリドの2種以上の組み合わせであってもよい。例えば本発明のトリグリセリドは、上述した(a)と(b)の組み合わせでもよい。あるいは2種以上の(b)の組み合わせでもよい。
更に、本発明のトリグリセリドは、上述した1種又は2種以上のトリグリセリドと、その他のトリグリセリドとの組み合わせであってもよい。その他のトリグリセリドとしては、例えば、炭素原子数14以上22以下である脂肪酸に由来する基を含むトリグリセリド(ただしトリグリセリド16及びトリグリセリド18を除く)が挙げられる。
本発明においては、上述した各種のトリグリセリドを単独で用いるか、又は上述した各種のトリグリセリドのみの2種以上の組み合わせを用いることが、本発明の多孔質フィルムの防漏性を一層高くする観点から好ましい。
本発明の多孔質フィルムに含まれるトリグリセリドは、すべてのトリグリセリドに含まれる脂肪酸に由来する基の総量に対して、30質量%以上70質量%以下、特に35質量%以上70質量%以下、とりわけ50質量%以上70質量%以下が、炭素原子数18個の脂肪酸に由来する基(当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基である。)であることが、防漏性が一層高い多孔質フィルムを得る観点から好ましい。
前記と同様の観点から、本発明の多孔質フィルムに含まれるトリグリセリドは、すべてのトリグリセリドに含まれる脂肪酸に由来する基の総量に対して、30質量%以上70質量%以下が、炭素原子数18個の脂肪酸に由来する基(当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基である。)であり、25質量%以上50質量%以下が、炭素原子数16個の脂肪酸に由来する基(当該基は不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基である。)であることが好ましい。ただし、炭素原子数18個の脂肪酸に由来する基の割合と炭素原子数16個の脂肪酸に由来する基の割合との合計は100質量%を超えないことを条件とする。
この場合、炭素原子数18個の脂肪酸に由来する基の割合は、35質量%以上70質量%以下であることが好ましく、50質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
一方、炭素原子数16個の脂肪酸に由来する基の割合は、25質量%以上45質量%以下であることが好ましく、35質量%以上45質量%以下であることが更に好ましい。
すべてのトリグリセリドに含まれる、脂肪酸に由来する基の総量を基準とした、炭素原子数16の脂肪酸に由来する基及び炭素原子数18の脂肪酸に由来する基のそれぞれ割合は以下の方法で測定される。
トリグリセリドの良溶媒、例えばトルエンを用いて多孔質フィルム表面に存在するトリグリセリドを抽出する。
抽出されたトリグリセリドにおけるエステル結合をアルカリで加水分解させ、メチルエステル化した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで定量分析する。
なお、トリグリセリドの一分子中に異なる炭素数を有するアルキル鎖が存在しているか否かはTOF-MS(飛行時間型質量分析法)で判断できる。詳細には、トリグリセリドの分子量分布をTOF-MSによって測定し、一分子の分子量から分子内に異なる炭素数を有するアルキル基が含まれているか否かを判別する。分子量が同じ化合物で、一分子中に異なる炭素数を有するアルキル鎖が存在しているか否かは、質量分析計としてタンデム質量分析計(MS/MS)で判断できる。1つ目の質量分離部で特定のイオンを選択し、不活性化ガスと衝突させることで生じたフラグメントイオンを2つ目の質量分離部で分離し検出することで判別する。
本発明のトリグリセリドは、不飽和脂肪酸に由来する基を含まないことが、本発明の多孔質フィルムの防漏性を一層高くする観点から好ましい。不飽和脂肪酸に由来する基を含まないとは、不飽和脂肪酸に由来する基を全く含まない場合、及び不可避的に少量の不飽和脂肪酸が含まれる場合の双方を包含する。不可避的に少量の不飽和脂肪酸が含まれる場合とは、例えば、多孔質フィルムに含有されるすべてのトリグリセリドに含まれる、脂肪酸に由来する基の総量を基準として、不飽和脂肪酸に由来する基の割合が2質量%以下である場合である。
前記と同様に、本発明のトリグリセリドは、水酸基を有する脂肪酸に由来する基を含まないことが、本発明の多孔質フィルムの防漏性を一層高くする観点から好ましい。水酸基を有する脂肪酸とは、脂肪酸の炭化水素基における少なくとも1個の水素原子が水酸基で置換された脂肪酸のことである。水酸基を有する脂肪酸に由来する基を含まないとは、水酸基を有する脂肪酸に由来する基を全く含まない場合、及び水酸基を有する脂肪酸に由来する基を不可避的に少量含む場合の双方を包含する。水酸基を有する脂肪酸に由来する基を不可避的に少量含む場合とは、例えば、多孔質フィルムに含有されるすべてのトリグリセリドに含まれる、脂肪酸に由来する基の総量を基準として、水酸基を有する脂肪酸に由来する基の割合が2質量%以下である場合である。
本発明の多孔質フィルムには、グリセリドとしてトリグリセリドのみが含まれていてもよく、あるいは本発明の所期の効果が奏される範囲においてトリグリセリドに加えてモノグリセリド及び/又はジグリセリドが含まれていてもよい。
次に、本発明の多孔質フィルムの好適な製造方法について説明する。
本発明の多孔質フィルムの製造方法は、オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含むコンパウンドを溶融成形してなる樹脂シートを少なくとも一軸方向に延伸する工程を有する。
前記コンパウンドに含まれるオレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸の詳細については先に述べたとおりである。また、前記コンパウンドに含まれるオレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸の配合量について、多孔質フィルムに含まれるこれらの成分の配合量と同じである。更に、前記コンパウンドに含まれる任意成分の種類及び量についても、多孔質フィルムに含まれる任意成分の種類及び量と同様である。
本発明の多孔質フィルムは、例えば次の方法によって効率よく製造できる。
先ず、前述したコンパウンドを構成する各成分を、ヘンシェルミキサやスーパーミキサ等を用いて予備混合した後、一軸又は二軸押出機で混練してペレット化する。次に、得られたペレットを用い成形機によって成膜し樹脂シートを得る。成形機としては例えばTダイ型やインフレーション型のものを用いることができる。
分散剤については、これを単独で、コンパウンドを構成する他の成分と混合してもよいが、好ましくは無機充填剤の表面に予め付着させて、表面修飾された無機充填剤を製造しておき、この表面修飾無機充填剤を、コンパウンドを構成する他の成分と混合して、コンパウンドを調製することが好ましい。こうすることで、意図しないピンホールの発生を抑制させながら、樹脂シートの延伸を首尾よく行うことができ、高い透湿度と高い耐水性とを兼ね備えた多孔質フィルムを得ることができる。
上述した樹脂シートは、これを一軸又は二軸延伸することで、オレフィン系樹脂組成物と無機充填剤との界面剥離が生じ多孔質化する。この延伸には機械方向に延伸できるロール法や機械方向に加えてフィルム幅方向にも延伸できるテンター法などが用いられる。このようにして本発明の多孔質フィルムが得られる。樹脂シートは、延伸に伴い面積が増大するよう、少なくとも一軸方向に1.1倍以上に延伸することが好ましく、1.5倍以上に延伸することがより好ましく、2倍以上に延伸することが更に好ましい。また、過剰な延伸に伴う過度な分子配向に伴い引裂き強度が低下することを避ける観点から、5.0倍以下で延伸することが好ましく、4.5倍以下で延伸することがより好ましく、4倍以下で延伸することが更に好ましい。
一軸延伸する場合及び二軸延伸する場合のいずれにおいても、延伸時の樹脂フィルムの温度は、フィルムを破断させることなく、フィルムを均一に延伸できる観点から30℃以上100℃以下に設定することが好ましく、更に好ましくは35℃以上95℃以下であり、一層好ましくは40℃以上90℃以下である。
以上の方法で製造された多孔質フィルムは高い柔軟性及び高い通気性を有するものとなる。柔軟性の程度を柔軟変形度で表した場合、本発明の多孔質フィルムは、機械方向の柔軟変形度が好ましくは0.060N/(mm・(g/m))以下という低い値を示し、更に好ましくは0.057N/(mm・(g/m))以下、一層好ましくは0.055N/(mm・(g/m))以下である。柔軟変形度の下限値は、本発明の多孔質フィルムの強度保持の観点から、0.005N/(mm・(g/m))以上であることが好ましい。
多孔質フィルムの柔軟変形度は以下の方法で測定される。多孔質フィルムを機械方向150mm、幅方向30mmに3枚切り出す。切り出した試験片を、該試験片の初期長Lが100mmとなるように、引張試験機(商品名:AG-1S、株式会社島津製作所製)に固定する。固定後、引張試験機が読み取る荷重をゼロとし、試験片を変形速度200mm/分でLの1.3倍まで伸長させた後、すぐに変形速度200mm/分でLまで収縮させるサイクル試験を実施する。得られたデータから伸長過程における1.03倍変形時の荷重(F3%)を読み取り、下記式から柔軟変形度(N/(mm・(g/m)))を算出する。
柔軟変形度(N/(mm・(g/m)))=F3%(N)/(0.03×30(mm)×フィルムの坪量(g/m))
本発明の多孔質フィルムの透湿度の値は、好ましくは0.8g/(100cm・h)、より好ましくは1.0g/(100cm2・h)以上であり、更に好ましくは1.2g/(100cm2・h)以上である。これにより、本発明の多孔質フィルムは高い透湿性を有し、吸収性物品内部の湿度を適切に外部へ放散することができる。一方、多孔質フィルムの透湿度の上限値は、過大な多孔化によって、裏面シートに必要な防漏性を喪失させないため、好ましくは4.5g/(100cm2・h)以下、更に好ましくは3.5g/(100cm2・h)以下、一層好ましくは3.0g/(100cm2・h)以下である。
本発明の多孔質フィルムの透湿度は、JIS L 1099 A-2法に準拠して以下の方法で測定される。
口径2.03cm(面積3.23cm)のガラス瓶(ラボランスクリュー瓶No.8、アズワン製)にイオン交換水を約25mL入れ、ガラス瓶の口を試験片1枚で隙間がないように覆い、試験片をガラス瓶に輪ゴムで固定し、評価サンプルとする。評価サンプルの質量(W1)を測定した後、40℃・20%RHで管理された恒温槽にサンプルを10~15時間保管する。保管後、評価サンプルの質量(W2)を測定し、保管時間(T1、単位:h)を記録し、下記式(1)から透湿度を算出する。
透湿度(g/(100cm・h))=(W1―W2)/(T1×3.23)×100 (1)
本発明の多孔質フィルムの坪量は、その用途にもよるが、好ましくは5g/m以上、より好ましくは10g/m以上、そして、好ましくは100g/m以下、より好ましくは50g/m以下である。また、本発明の多孔質フィルムの厚みは、その用途にもよるが、例えば4μm以上90μm以下程度とすることができる。
本発明の多孔質フィルムは、透湿性を有するとともに、液体、特に水に対する防漏性が高いことから、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品用の防漏シート、雨具などの防水シートなどに本発明の多孔質フィルムを適用することができる。
本発明の多孔質フィルムは、吸収性物品の構成部材として特に有用である。本発明には、前述した本発明の多孔質フィルムを有する吸収性物品が包含される。
本発明の吸収性物品は、典型的には、肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する防漏シート、及びこれら両シート間に配置された液保持性の吸収体を具備する。吸収性物品は更に、肌対向面における長手方向に沿う両側部に防漏カフを有していてもよい。
表面シートは典型的には液透過性である。
吸収体は、典型的には、吸収性コアとそれを包むコアラップシートを含む。
本発明の多孔質フィルムは、防漏シート又は防漏カフとして用いられることが、特に効果的であるため、好ましい。
本発明の多孔質フィルムを吸収性物品用の防漏シート又は防漏カフとして用いる場合には、該多孔質フィルムそのものを防漏シートとして用いてもよく、あるいは該多孔質フィルムを他のシート材料、例えば不織布と組み合わせて用いてもよい。
なお、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性コア)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。
前記の表面シート、吸収性コア及びコアラップシートとしては、それぞれ、この種の吸収性物品において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。
本発明の吸収性物品には、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品が広く包含され、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ、失禁パッド等が包含される。
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の多孔質フィルム、多孔質フィルムの製造方法及び吸収性物品を開示する。
<1>
オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含む多孔質フィルムであって、
前記無機充填剤を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して50質量部以上400質量部以下、前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、前記脂肪酸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含み、
前記オレフィン系樹脂組成物は、融点が90℃未満である低融点オレフィン系樹脂を含み、
前記金属石鹸の融点が200℃以下であり、
前記金属石鹸の析出温度が、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高い、多孔質フィルム。
<2>
機械方向の柔軟変形度が0.060N/(mm・(g/m))以下である、前記<1>に記載の多孔質フィルム。
<3>
機械方向の柔軟変形度が好ましくは0.057N/(mm・(g/m))以下、一層好ましくは0.055N/(mm・(g/m))以下であり、好ましくは0.005N/(mm・(g/m))以上である、前記<1>又は<2>に記載の多孔質フィルム。
<4>
前記金属石鹸を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下含む、前記<1>ないし<3>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<5>
前記金属石鹸は、前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して1.0質量部以上15質量部以下含まれることが好ましく、2.0質量部以上10質量部以下含まれることが更に好ましい、前記<1>ないし<4>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<6>
前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下含む、前記<1>ないし<5>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<7>
前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して1.5質量部以上9.0質量部以下含むことが好ましく、2.0質量部以上8.0質量部以下含むことが一層好ましい、前記<1>ないし<6>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<8>
前記金属石鹸の析出温度をTs(℃)とし、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度をTp(℃)としたとき、Ts-Tpの値が0℃より大きいことが好ましく、1℃以上であることが更に好ましく、2℃以上であることが一層好ましく、50℃以下であることが好ましい、前記<1>ないし<7>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<9>
前記金属石鹸の析出温度Tsは80℃以上180℃以下であることが好ましく、90℃以上170℃以下であることが更に好ましく、100℃以上160℃以下であることが一層好ましい、前記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<10>
前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度Tpは、60℃以上130℃以下であるであることが好ましく、70℃以上120℃以下であることが更に好ましく、80℃以上115℃以下であることが一層好ましい、前記<1>ないし<9>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<11>
前記脂肪酸における炭化水素鎖の鎖長と、前記金属石鹸を構成する脂肪酸における炭化水素鎖の鎖長とが同じである、前記<1>ないし<10>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<12>
前記オレフィン系樹脂組成物は、その密度が0.900g/cm未満であることが好ましく、0.895g/cm以下であることが更に好ましく、0.885g/cm以下であることが一層好ましく、
前記オレフィン系樹脂組成物は、その密度が0.840g/cm以上であることが好ましく、0.850g/cm以上であることが更に好ましく、0.860g/cm以上であることが一層好ましい、前記<1>ないし<11>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<13>
前記低融点オレフィン系樹脂は、その密度が0.895g/cm以下であることが好ましく、0.885g/cm以下であることが更に好ましく、0.875g/cm以下であることが一層好ましく、
前記低融点オレフィン系樹脂は、その密度が0.840g/cm以上であることが好ましく、0.850g/cm以上であることが更に好ましく、0.860g/cm以上であることが一層好ましい、前記<1>ないし<12>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<14>
前記低融点オレフィン系樹脂を、前記オレフィン系樹脂組成物100質量部中に30質量部以上95質量部以下含むことが好ましく、35質量部以上92質量部以下含むことが更に好ましく、40質量部以上90質量部以下含むことが一層好ましい、前記<1>ないし<13>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<15>
前記オレフィン系樹脂組成物が、融点が95℃以上である高融点オレフィン系樹脂を含み、
前記高融点オレフィン系樹脂の密度は0.900g/cm以上0.950g/cm以下であることが好ましく、0.905g/cm以上0.940g/cm以下であることが更に好ましく、0.910g/cm以上0.930g/cm以下であることが一層好ましい、前記<1>ないし<14>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<16>
前記高融点オレフィン系樹脂がポリエチレンを含む、前記<15>に記載の多孔質フィルム。
<17>
前記高融点オレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンを含む、前記<16>に記載の多孔質フィルム。
<18>
前記直鎖状低密度ポリエチレンが、メタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンを含む、前記<17>に記載の多孔質フィルム。
<19>
前記低融点オレフィン系樹脂が、エチレン-αオレフィンコポリマーを含む、前記<1>ないし<18>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<20>
前記エチレン-αオレフィンコポリマーが、メタロセン触媒により重合されたエチレン-αオレフィンコポリマーを含む、前記<19>に記載の多孔質フィルム。
<21>
前記高融点オレフィン系樹脂が、メタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記低融点オレフィン系樹脂が、メタロセン触媒により重合されたエチレン-αオレフィンコポリマーを含む、前記<17>に記載の多孔質フィルム。
<22>
前記脂肪酸における炭化水素鎖の鎖長と、前記金属石鹸を構成する脂肪酸における炭化水素鎖の鎖長とが同じであり、
前記高融点オレフィン系樹脂が、メタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記低融点オレフィン系樹脂が、メタロセン触媒により重合されたエチレン-αオレフィンコポリマーを含む、前記<17>に記載の多孔質フィルム。
<23>
前記脂肪酸と、前記金属石鹸を構成する脂肪酸がいずれもステアリン酸である、前記<1>ないし<22>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<24>
前記脂肪酸を、前記無機充填剤100質量部に対して0.8質量部以上4.0質量部以下含むことが好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下含むことが更に好ましい、前記<1>ないし<23>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<25>
前記無機充填剤は、前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して、60質量部以上含まれることが好ましく、80質量部以上含まれることが更に好ましく、
前記無機充填剤は、前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して、350質量部以下含まれることが好ましく、200質量部以下含まれることが更に好ましい、前記<1>ないし<24>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<26>
前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対してトリグリセリドを0.1質量部以上30質量部以下含む、前記<1>ないし<25>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<27>
前記トリグリセリドの配合量は、前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以上25質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上20質量部以下であることが更に好ましい、前記<26>に記載の多孔質フィルム。
<28>
前記トリグリセリドと前記金属石鹸との比率は、前記トリグリセリド100質量部に対して前記金属石鹸が30質量部以上300質量部以下であることが好ましく、35質量部以上250質量部以下であることが更に好ましく、40質量部以上230質量部以下であることが一層好ましい、前記<26>又は<27>に記載の多孔質フィルム。
<29>
前記トリグリセリドは、不飽和脂肪酸に由来する基を含まない、前記<26>ないし<28>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<30>
前記トリグリセリドは、水酸基を有する脂肪酸に由来する基を含まない、前記<26>ないし<29>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<31>
前記トリグリセリドが、炭素原子数16以上22以下である脂肪酸に由来する基を含み、当該基が不飽和結合及び置換基を有さない炭化水素基である、前記<26>ないし<30>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<32>
前記トリグリセリドが、
(a)炭素原子数16の脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも含むトリグリセリドと、炭素原子数18の脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも含むトリグリセリドとの混合物、又は
(b)炭素原子数16の脂肪酸に由来する基及び炭素原子数18の脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも含むトリグリセリド、である、前記<26>ないし<31>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<33>
JIS L 1099に準拠して測定された透湿度が、0.80g/(100cm・h)以上4.5g/(100cm・h)以下であることが好ましく、1.0g/(100cm2・h)以上3.5g/(100cm2・h)以下であることが更に好ましく、1.2g/(100cm2・h)以上3.0g/(100cm2・h)以下であることが一層好ましい、前記<1>ないし<32>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<34>
オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含む樹脂組成物からなるコンパウンドを溶融成形してなる樹脂シートを少なくとも一軸延伸して製造された多孔質フィルムであって、
前記無機充填剤を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して50質量部以上400質量部以下、前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、前記脂肪酸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含み、
前記オレフィン系樹脂組成物は、融点が90℃未満である低融点オレフィン系樹脂を含み、
前記金属石鹸の融点が200℃以下であり、
前記金属石鹸の析出温度が、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高い、多孔質フィルム。
<35>
機械方向の柔軟変形度が0.060N/(mm・(g/m))以下であることが好ましく、0.057N/(mm・(g/m))以下であることが更に好ましく、0.055N/(mm・(g/m))以下であることが一層好ましい、前記<34>に記載の多孔質フィルム。
<36>
前記低融点オレフィン系樹脂の融点が80℃未満であることが好ましく、70℃未満であることが更に好ましい、前記<1>ないし<35>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<37>
吸収性物品用である、前記<1>ないし<36>のいずれか一に記載の多孔質フィルム。
<38>
前記<1>ないし<37>のいずれか一に記載の多孔質フィルムを有する、吸収性物品。
<39>
オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含む樹脂組成物からなるコンパウンドを溶融成形してなる樹脂シートを、少なくとも一軸方向に延伸する工程を有し、
前記延伸を30℃以上100℃以下にて、1.1倍以上5.0倍以下の延伸倍率で行う、多孔質フィルムの製造方法であって、
前記無機充填剤を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して50質量部以上400質量部以下、前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、前記脂肪酸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含み、
前記オレフィン系樹脂は、融点が90℃未満である低融点オレフィン系樹脂を含み、
前記金属石鹸の融点が200℃以下であり、
前記金属石鹸の析出温度が、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高い、多孔質フィルムの製造方法。
<40>
前記脂肪酸を前記無機充填剤の表面に予め付着させて、表面修飾された無機充填剤を製造しておき、表面修飾された該無機充填剤を、前記コンパウンドを構成する他の成分と混合して、前記コンパウンドを調製する、前記<39>に記載の製造方法。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り「部」は「質量部」を意味する。
〔実施例1ないし8及び比較例1ないし6〕
(1)コンパウンドの製造
以下の表1及び表2に示す成分を、同表に示す量となるように計量した。これらをヘンシェルミキサ(株式会社カワタ製)で混合した。得られた混合物を、二軸押出機(東洋精機製)を用い、設定温度180℃、スクリュー回転数180rpmの条件で混練し、ペレット化したコンパウンドを得た。
表1及び表2に示す成分の詳細は、表3に示すとおりである。また表1及び表2中の組成の単位は質量部である。
(2)樹脂シートの製造
幅150mmのTダイ(東洋精機製)を用いて、コンパウンドから樹脂シートを成形した。
実施例1から8、比較例2及び比較例4から6の成形条件は、Tダイ設定温度200℃、キャストロール周速3m/minとした。比較例1及び3の成形条件は、Tダイ設定温度150℃、キャストロール周速3m/minとした。
(3)多孔質フィルムの製造
実施例1から8及び比較例1から6で得られた樹脂シートを機械方向120mm×幅方向60mmに切り出し、機械方向両端10mmを持ち手とした。テンター延伸機(アイエス技研株式会社製)を用いて、初期長100mmとし、樹脂シートの持ち手を把持し、樹脂シートを機械方向に一軸延伸して、表1及び表2にそれぞれ示す坪量の多孔質フィルムを得た。この時、樹脂シートの幅方向は把持していない。延伸温度及び機械設定の延伸倍率は表1及び表2に示すとおりである。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた多孔質フィルムについて、上述の方法で機械方向の柔軟変形度及び透湿度を測定した。更に以下の方法で残留歪を測定した。更に、液の染み出しの程度を以下の方法で評価した。それらの結果を表1に示す。
〔残留歪〕
多孔質フィルムの柔軟変形度の測定と同じ測定を実施し、フィルムを変形速度200mm/分でLまで収縮させる過程で、荷重が0.01N以下を示した歪を残留歪とした。
〔液の染み出しの程度〕
ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、No.2、直径70mm)の上に、機械方向50mm×幅方向35mm以上に裁断した多孔質フィルムを載置した。載置した多孔質フィルムの上に、乾式パルプシート(ライオン株式会社製、リードヘルシークッキングペーパーダブル(商品名)、目付40g/m)を3cm×2.5cmに裁断したものを載置した。
乾式パルプシートの中央部に、0.265gのぬれ張力試験液(25℃における表面張力:35mN/m、関東化学製)をスポイトによって注入した。注入後、直径60mm厚み5mmの円柱状のアクリルプレートを重ね、その上に500gの錘を載置して1時間加圧した。
1時間経過後、錘を取り除き、ろ紙への液の染み出しの程度を目視観察し、染み出しの有無を判断した。この評価を、各水準3セット行い、以下の基準で染み出しの程度を評価した。
A:3枚のろ紙すべてに染み出しが観察されない。
B:1枚でも染み出しが観察される。
Figure 0007457213000007
Figure 0007457213000008
Figure 0007457213000009
表1及び表2に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた多孔質フィルムは、柔軟変形度が低く、高い透湿性を有し、且つ液の染み出し防止性が高いことが分かる。
特に、実施例1と比較例1との対比から明らかなとおり、密度が高いオレフィン系樹脂組成物を用いた比較例1は、密度が低いオレフィン系樹脂組成物を用いた実施例1よりも柔軟変形度の値が高くなってしまうことが分かる。
また、実施例3のフィルムは、40℃で一軸延伸した場合、フィルムは延伸を開始してすぐに破断した。23℃で一軸延伸した場合、延伸温度が低いため、5.5倍まで延伸しないとフィルムを均一に延伸できなかった。一方で、実施例1のフィルムは、40℃で一軸延伸した場合、フィルムが破断することなくフィルムを延伸倍率4.5倍まで延伸することが可能であり、また、延伸倍率4.5倍でもフィルムは均一に延伸されていた。このことから、実施例1と実施例3との対比から明らかなとおり、オレフィン系樹脂組成物として、メタロセン触媒により重合されたエチレン-αオレフィンコポリマーとメタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンとの組み合わせを用いると、より高い温度で延伸することが可能であり、比較的小さな延伸倍率で均一に延伸されたフィルムを得ることが可能であることが分かる。
また、実施例3と比較例5との対比から明らかなとおり、無機充填剤の分散剤として脂肪酸を添加しない場合には、オレフィン系樹脂への無機充填剤の分散が十分でなく、フィルムの形成が不能になることが分かる。
また、比較例1と比較例3との対比から明らかなとおり、オレフィン系樹脂組成物として高密度のもの(高融点オレフィン系樹脂3、密度0.922g/cm)を用いた場合には、透湿度の値は金属石鹸の添加の有無によって実質的に異ならないことが分かる。
〔実施例9ないし12並びに比較例7及び8〕
(1)コンパウンドの製造
以下の表4に示す成分を、同表に示す量となるように計量した。それ以外は実施例1と同様にしてコンパウンドを製造した。
(2)樹脂シートの製造
ダイス吐出部のスリットの直径が100mm、隙間0.9mmのインフレーション成型機を用いて、溶融させたコンパウンドから樹脂シートを成形した。ダイスの設定温度は200℃、引き取り速度は10m/min、ブロー比は2.5倍とした。
(3)多孔質フィルムの製造
ロール延伸機を用いて樹脂シートを機械方向に一軸延伸し、表4に示す坪量の多孔質フィルムを得た。延伸倍率、延伸温度は同表に示すとおりである。得られた多孔質フィルムについては実施例1と同様の測定を行った。その結果を表4に示す。
Figure 0007457213000010
表4に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた多孔質フィルムは、柔軟変形度が低く、高い透湿性を有し、且つ液の染み出し防止性が高いことが分かる。
〔実施例13ないし15並びに比較例9及び10〕
以下の表5に示す成分を用いた以外は実施例1と同様にして多孔質フィルムを製造した。延伸温度及び機械設定の延伸倍率は同表に示すとおりである。同表中、組成の単位は質量部である。得られた多孔質フィルムについて以下の方法でブロッキングを評価した。その結果を表5に示す。
〔ブロッキング評価〕
多孔質フィルム2枚を重ね、ラボプレス(東洋精機製)を用いて50℃、127MPaの条件で1分間プレスした。次いで、常温で5分間冷却し、ブロッキング評価用のサンプルとした。ブロッキング評価は、作製した評価用サンプルの2枚のフィルムを手で剥がし、ブロッキングの有無を確認した。この評価を各水準3セットで行い、以下の基準でブロッキングを評価した。
A:手で剥離したときに、3枚すべて容易に剥離した。
B:手で剥離したときに、1枚でも容易に剥離せず、フィルムが破断した。
Figure 0007457213000011
表5に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた多孔質フィルムはブロッキングが起こりにくいものであることが分かる。
〔参考例1並びに比較参考例1ないし3〕
(1)コンパウンドの製造
以下の表6に示す成分を、同表に示す量となるように計量した。これらをラボプラストミル(東洋精機製)に投入し、160℃、30rpmで10分間混練してコンパウンドを得た。
表6に示す成分の詳細は、表7に示すとおりである。また、表6中の組成の単位は質量部である。
(2)フィルムの製造
ラボプレス(東洋精機製)を用い、コンパウンドを150℃、13MPaで1分間プレスした。次いで、常温、13MPaで1分間冷却プレスしてフィルム(樹脂シート)を製造した。このとき、フィルムの厚みが0.5mmになるよう調整した。
〔評価〕
参考例1並びに比較参考例1、2及び3で得られたフィルムの撥水性を、以下の方法で評価した。その結果を以下の表6に示す。
〔フィルムの撥水性〕
作製したフィルムを電気乾燥機に入れ、40℃で7日間保管した。保管後、フィルム表面の接触角を接触角計(Drop Master500、協和界面科学製)を用いて測定した。評価液として、表面張力が44.0mN/mの試験液、及び表面張力が35.0mN/mの試験液の2種類を用いた。
・測定法:液滴法
・評価液:ぬれ張力試験用混合液(25℃の表面張力:44.0mN/m、及び35.0mN/m、関東化学製)
・液滴量:2μL
・着滴1秒後の接触角を、試料片1枚につき5箇所で測定し、5滴の平均値を接触角値とした。
Figure 0007457213000012
Figure 0007457213000013
表6及び表7に示す結果から明らかなとおり、参考例1のフィルムは、比較参考例1のフィルムに比べて評価液に対する接触角が高いことが分かる。このことから、金属石鹸とトリグリセリドがともにフィルムに含まれる場合、トリグリセリド単独の場合よりも撥液性が向上することが示されている。
以上、詳述したとおり、本発明によれば、透湿性、防漏性及び柔軟性が高い多孔質フィルムが提供される。

Claims (15)

  1. オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含む多孔質フィルムであって、
    前記無機充填剤を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して50質量部以上400質量部以下、前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、前記脂肪酸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含み、
    前記オレフィン系樹脂組成物は、融点が90℃未満である低融点オレフィン系樹脂を含み、
    前記金属石鹸の融点が200℃以下であり、
    前記金属石鹸の析出温度が、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高く、
    JIS L 1099に準拠して測定された透湿度が、0.80g/(100cm・h)以上4.5g/(100cm・h)以下であり、
    吸収性物品用である、多孔質フィルム。
  2. オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含む多孔質フィルムであって、
    前記無機充填剤を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して50質量部以上400質量部以下、前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、前記脂肪酸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含み、
    前記オレフィン系樹脂組成物は、融点が90℃未満である低融点オレフィン系樹脂を含み、
    前記金属石鹸の融点が200℃以下であり、
    前記金属石鹸の析出温度が、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高く、
    前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対してトリグリセリドを0.1質量部以上30質量部以下含む、多孔質フィルム。
  3. 機械方向の柔軟変形度が0.060N/(mm・(g/m))以下である、請求項1又は2に記載の多孔質フィルム。
  4. 前記金属石鹸を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  5. 前記金属石鹸の析出温度をTs(℃)とし、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度をTp(℃)としたとき、Ts-Tpの値が0℃より大きい、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  6. 前記金属石鹸の析出温度Tsは80℃以上180℃以下である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  7. 前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度Tpは、60℃以上130℃以下である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  8. 前記脂肪酸における炭化水素鎖の鎖長と、前記金属石鹸を構成する脂肪酸における炭化水素鎖の鎖長とが同じである、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  9. 前記オレフィン系樹脂組成物は、その密度が0.900g/cm未満であり、
    前記オレフィン系樹脂組成物は、その密度が0.840g/cm以上である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  10. 前記低融点オレフィン系樹脂は、その密度が0.895g/cm以下であり、
    前記低融点オレフィン系樹脂は、その密度が0.840g/cm以上である、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  11. 前記脂肪酸と、前記金属石鹸を構成する脂肪酸がいずれもステアリン酸である、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  12. 前記トリグリセリドが、
    (a)炭素原子数16の脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも含むトリグリセリドと、炭素原子数18の脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも含むトリグリセリドとの混合物、又は
    (b)炭素原子数16の脂肪酸に由来する基及び炭素原子数18の脂肪酸に由来する基を一分子内に少なくとも含むトリグリセリド、である、請求項2に記載の多孔質フィルム。
  13. 吸収性物品用である、請求項に記載の多孔質フィルム。
  14. 前記オレフィン系樹脂組成物、前記無機充填剤、前記金属石鹸及び前記脂肪酸を含むコンパウンドを溶融成形してなる樹脂シートを少なくとも一軸方向に延伸したものである、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の多孔質フィルム。
  15. オレフィン系樹脂組成物、無機充填剤、金属石鹸及び脂肪酸を含む多孔質フィルムを有する、吸収性物品であって、
    前記多孔質フィルムは、前記無機充填剤を前記オレフィン系樹脂組成物100質量部に対して50質量部以上400質量部以下、前記金属石鹸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上15質量部以下、前記脂肪酸を前記無機充填剤100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下含み、
    前記オレフィン系樹脂組成物は、融点が90℃未満である低融点オレフィン系樹脂を含み、
    前記金属石鹸の融点が200℃以下であり、
    前記金属石鹸の析出温度が、前記オレフィン系樹脂組成物の固化温度よりも高い、吸収性物品。
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