JP7452671B2 - 電動機の制御方法及び電動機システム - Google Patents

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Description

本発明は、電動機の制御方法及び電動機システムに関する。
近年の電動機は、パルス幅変調によってその動作が制御される。また、パルス幅変調の変調率を1よりも大きい値に設定する過変調状態で、電動機が制御される場合がある。過変調状態は、変調率を大きくすることにより、インバータから電動機に印加する電圧の波形が実質的に矩形波となる矩形波状態になる。
過変調状態では、インバータから電動機に供給する電力の電圧ノルムが飽和した状態となるので、実質的にインバータから電動機に印加する電圧の位相が制御可能なパラメータである。一方、変調率が1以下である非過変調状態では、電圧ノルムと電圧位相の両方が制御可能である。このため、過変調状態で電動機が制御されるときには、非過変調状態で電動機が制御される場合と比較して、電動機の制御性が低下する。その結果、例えば、電動機の回転数が急変したときに、電動機に過電流が流れてしまうことがある。
このように、電動機の回転数が急変したときに生じる過電流を防止する技術が知られている。例えば、JP2006-320039Aには、過変調状態で電動機を制御するときに、電動機の回転数を検出し、検出した電動機の回転数に応じて、インバータから電動機に印加する電圧を修正することを開示している。
JP2006-320039Aに記載された電動機の制御方法は、上記のように電動機の回転数に応じて電動機に印加する電圧を修正することにより、過変調状態において電動機の回転数が急変したときに電動機に流れる電流量を適切に制御しようとするものである。
しかし、この制御方法では、回転数を検出し、その後、検出した電動機の回転数に応じて電動機に電圧を印加するまでの間に生じる応答遅れが考慮されていない。このため、この制御方法では、過変調状態において電動機の回転数が急変したときに、依然として、電動機に過電流が生じてしまう場合がある。また、過電流を確実に防止するために、電動機に印加する電圧に対して過剰な補償をすれば、電動機の回転数が急変する場合以外の通常の状況下において、電動機に印加する電圧が不足する。したがって、JP2006-320039Aに記載された電動機の制御方法では、電動機を適切に制御し得ない場合がある。
本発明は、電動機に電圧を印加するまでの間に生じる応答遅れを考慮することによって、過変調状態であっても電動機を適切に制御できる電動機の制御方法、及び、電動機システムを提供することを目的とする。
本発明のある態様による電動機の制御方法は、電動機に供給すべき電圧の大きさを表す電圧ノルム指令値と、その電圧の位相を表す電圧位相指令値と、に基づいて行う電圧位相制御によって電動機を制御する電動機の制御方法である。この電動機の制御方法では、電圧位相制御によって電動機に印加する電圧の最終指令値を、電動機の回転数に関連する回転数パラメータを用いて演算するための指令値演算モデルにしたがって演算するときに要する所要時間を取得する。そして、回転数パラメータが検出され、回転数パラメータが所要時間の経過後における回転数パラメータに近づくように、所要時間に基づいて、検出された回転数パラメータの位相を進めることにより、回転数パラメータが変更される。その後、変更後の回転数パラメータを用いて指令値演算が実行されることにより、最終指令値が演算される。
図1は、第1実施形態における電動機システムの構成を示すブロック図である。 図2は、電流ベクトル制御部のうち、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値を生成するための部分構成を示すブロック図である。 図3は、電圧位相制御部の構成を示すブロック図である。 図4は、電圧位相制御における電圧位相範囲の設定を示すためのグラフである。 図5は、位相変更部の構成を示すブロック図である。 図6は、切替判定部の構成を示すブロック図である。 図7は、制御モード判定部による制御モードの判定方法を示す説明図である。 図8は、出力制御器の構成を示すブロック図である。 図9は、本実施形態における電動機制御のフローチャートである。 図10は、電圧位相制御のフローチャートである。 図11は、(A)電気角速度、(B)電気角加速度、(C)電動機に流れる電流、(D)電動機に印加される電圧、を示すグラフである。 図12は、変形例における位相変更部の構成を示すブロック図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態における電動機システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、電動機システム100は、制御対象である電動機9と、電動機9を制御する回路類と、電動機9の制御に必要なパラメータを検出する検出器と、バッテリ15と、を含む。具体的には、電動機システム100は、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、出力制御器3、変換器4、パルス幅変調信号生成器5、及び、インバータ6を備える。さらに、電動機システム100は、バッテリ電圧検出器7、電流検出器8、回転子検出器10、回転数演算器11、変換器12、及び、制御モード切替判定部13等を備える。
電動機システム100を構成する各部のうち、電動機9を除く部分は、電動機9を制御するように構成された電動機9の制御装置である。バッテリ電圧検出器7、電流検出器8、及び、回転子検出器10は、電動機9の制御に必要なパラメータを検出する検出器である。電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、制御モード切替判定部13は、コントローラ(制御部)を構成する。コントローラは、例えば、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等から構成されるコンピュータである。コントローラは、電動機9の制御モードを決定し、必要に応じて電動機9の制御モードを変更し、決定等した制御モードで電動機9の動作を制御するように構成されている。また、コントローラは、これらを実現するための処理を所定の演算周期ごとに実行するようにプログラムされている。また、上記のコントローラ、出力制御器3、変換器4、パルス幅変調信号生成器5、インバータ6、回転数演算器11、及び、変換器12は、電動機システム100を制御する回路類である。
なお、本実施形態の電動機9は、複数相の巻線を備えるIPM(Interior Permanent Magnet)型の同期電動機である。本実施形態においては、電動機9の巻線はU相、V相、及び、W相の3相である。すなわち、電動機9は三相同期電動機である。また、電動機9は、パルス幅変調制御によって駆動される。なお、電動機システム100は例えば自動車等に組み込まれる。そして、電動機システム100が組み込まれた自動車において、電動機9はその自動車の駆動力源及び/または発電機として機能し得る。
電流ベクトル制御部1は、電流ベクトル制御を実行する。電流ベクトル制御は、電動機9の制御モードの1つである。電流ベクトル制御では、電動機9に対して供給する電流に関するベクトル(以下、電流ベクトルという)が制御される。電流ベクトル制御では、電流ベクトルは、電動機9に生じさせるトルクがその目標値(以下、トルク目標値T*という)に収束するように調整される。
より具体的には、電流ベクトル制御部1は、トルク目標値T*、電動機9の回転数N[rpm]、バッテリ15の直流電圧Vdc、の入力を受ける。また、電流ベクトル制御部1には、電動機9のd軸電流id及びq軸電流iqがフィードバックされる。そして、電流ベクトル制御部1は、これらの入力に基づいて、d軸電圧指令値Vdi_fin *とq軸電圧指令値Vqi_fin *を演算する。電流ベクトル制御のd軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *は出力制御器3に入力される。電流ベクトル制御では、電動機9がこのd軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *に基づいて制御されることによって、電動機9が生じさせるトルクはトルク目標値T*に収束する。
なお、d軸電圧指令値Vdi_fin *は、電流ベクトル制御におけるd軸の電圧に対する指令値である。同様に、q軸電圧指令値Vqi_fin *は、電流ベクトル制御におけるq軸の電圧に対する指令値である。
また、電流ベクトル制御部1は、d軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *の生成過程において、d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *を演算する。d軸電流目標値id *は、電流ベクトルにおけるd軸成分の目標値である。同様に、q軸電流目標値iq *は、電流ベクトルにおけるq軸成分の目標値である。d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *は電圧位相制御部2に出力される。
この他、電流ベクトル制御部1の具体的な構成、及び、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *とq軸電圧指令値Vqi_fin *の算出方法については、詳細を後述する。
電圧位相制御部2は、電圧位相制御を実行する。電圧位相制御は、電動機9の制御モードの1つである。電圧位相制御では、電動機9の各相間に供給される電圧(以下、相間電圧という)の位相が制御される。電圧位相制御では、相間電圧の位相は、電動機9に生じさせるトルクがトルク目標値T*に収束するように調整される。
より具体的には、電圧位相制御部2は、トルク目標値T*、電動機9の回転数N、バッテリ15の直流電圧Vdc、d軸電流目標値id *、q軸電流目標値iq *の入力を受ける。また、電圧位相制御部2には、d軸電流id及びq軸電流iqがフィードバックされる。そして、電圧位相制御部2は、これらの入力に基づいてd軸電圧指令値Vdv_fin *とq軸電圧指令値Vqv_fin *を出力制御器3に出力する。
なお、d軸電圧指令値Vdv_fin *は、電圧位相制御におけるd軸の電圧に対する指令値である。同様に、q軸電圧指令値Vqv_fin *は、電圧位相制御におけるq軸の電圧に対する指令値である。電圧位相制御部2の具体的な構成、及び、電圧位相制御におけるd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *の算出方法については、詳細を後述する。
出力制御器3には、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *と、電圧位相制御におけるd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *と、が入力される。また、出力制御器3には、制御モード切替判定部13から判定結果として、制御モード信号Smが入力される。そして、出力制御器3は、制御モード信号Smに基づいて、実行する電動機9の制御モードとして、電流ベクトル制御と電圧位相制御のいずれか一方を選択する。出力制御器3は、選択された制御モードのd軸電圧指令値及びq軸電圧指令値を、それぞれd軸最終電圧指令値Vd_fin *及びq軸最終電圧指令値Vq_fin *として変換器4に出力する。d軸最終電圧指令値Vd_fin *は、電動機のd軸方向に印加する電圧の最終的な指令値である。同様に、q軸最終電圧指令値Vq_fin *は、電動機9のq軸方向に印加する電圧の最終的な指令値である。出力制御器3の構成及び制御モード信号Smの生成については、詳細を後述する。
変換器4は、dq軸座標系における電圧指令値を、UVW3相の座標系における電圧指令値に変換する。すなわち、変換器4は、d軸最終電圧指令値Vd_fin *及びq軸最終電圧指令値Vq_fin *を、三相電圧指令値(Vu *,Vv *,Vw *)に変換する。三相電圧指令値は、UVW各相の電圧を定める指令値である。変換器4は、この座標変換を下記の式(1)に示す通り、電動機9の電気角θに基づいて行う。また、変換器4は、三相電圧指令値をパルス幅変調信号生成器5に出力する。
Figure 0007452671000001
パルス幅変調信号生成器5は、三相電圧指令値とバッテリ15の直流電圧Vdcに基づいて、パルス幅変調信号(Duu *,Dul *,Dvu *,Dvl *,Dwu *,Dwl *)を生成する。パルス幅変調信号(以下、PWM信号という)は、インバータ6が有するパワー素子の駆動信号である。このため、パルス幅変調信号はインバータ6に入力される。
インバータ6は、PWM信号に基づいて、バッテリ15の直流電圧Vdcを、電動機9を駆動するための三相交流電圧(Vu,Vv,Vw)に変換する。三相交流電圧は、電動機9に印加される。これにより、電動機9の各相に電流が流れる。U相、V相、及び、W相にそれぞれ流れる電流は、交流電流iu,iv,iw(以下、三相交流電流という)である。その結果、電動機9は、PWM信号に基づいて駆動され、トルクを発生する。
バッテリ電圧検出器7は、インバータ6に接続されたバッテリ15の電圧を検出する。本実施形態においては、バッテリ電圧検出器7は、バッテリ15の直流電圧Vdcを検出する。検出された直流電圧Vdcは、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、制御モード切替判定部13に出力される。
電流検出器8は、インバータ6から電動機9に供給される電流を検出する。本実施形態においては、電流検出器8は、三相交流電流(iu,iv,iw)のうち、少なくとも2相の交流電流を検出する。本実施形態では、電流検出器8は、U相の交流電流iu及びV相の交流電流ivを検出する。三相交流電流の検出値は、変換器12に入力される。
回転子検出器10は、電動機9の電気角θを検出する。検出された電気角θは、変換器4及び変換器12にそれぞれ入力される。また、電気角θは、回転数演算器11に入力される。
回転数演算器11は、電気角θの単位時間ΔtNaveにおける変化量に基づいて、電動機9の回転数N(機械角回転数)及び電気角速度ωeを演算する。回転数N及び電気角速度ωeは、電動機9の回転数Nに関連する回転数パラメータである。回転数パラメータとは、回転数N、または、回転数Nを用いて演算されるパラメータである。より、具体的には、回転数演算器11は、電動機9の回転数Nを検出する。そして、回転数演算器11は、電動機9の極対数を用いて回転数Nの単位変換をすることにより、電気角速度ωeを算出する。単位時間ΔtNaveは、回転数演算器11の演算周期(動作周期)であり、予め定められる所定値である。回転数Nは、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、制御モード切替判定部13に入力される。電気角速度ωeは、電圧位相制御部2に入力される。
変換器12は、回転子検出器10が検出した電気角θを用いて、電流検出器8が検出した三相交流電流を、dq軸座標系における電流に変換する。本実施形態においては、電流検出器8はU相の交流電流iu及びV相の交流電流ivを検出するので、変換器12は、下記の式(2)にしたがって、上記座標変換をする。
Figure 0007452671000002
制御モード切替判定部13は、電動機9の運転状態(いわゆる動作点または運転点)に応じて、その運転状態に適した電動機9の制御モードを判定する。電動機9の運転状態を示すパラメータは、例えば、d軸電流id、d軸電流目標値id *、d軸最終電圧指令値Vd_fin *、q軸電流iq、q軸電流目標値iq *、q軸最終電圧指令値Vq_fin *等である。また、バッテリ15の直流電圧Vdc、回転数N、及び、電気角速度ωe等も、電動機9の運転状態を示すパラメータである。本実施形態においては、制御モード切替判定部13は、d軸最終電圧指令値Vd_fin *、q軸最終電圧指令値Vq_fin *、d軸電流id、回転数N、及び、直流電圧Vdcに基づいて、電動機9の制御モードを判定する。制御モード切替判定部13は、制御モードの判定結果である制御モード信号Smを、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、出力制御器3に出力する。
上記のように、電動機システム100は、パルス幅変調制御により、電動機9を駆動するシステムである。また、電動機システム100は、電動機9の制御モードを、電動機9の運転状態に応じて、電流ベクトル制御と電圧位相制御とで適宜切り替える。
以下においては、電動機システム100の各部の具体的な構成等について詳述する。
[電流ベクトル制御]
図2は、電流ベクトル制御部1のうち、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *を生成するための部分構成(d軸電圧指令値演算部)を示すブロック図である。図2に示すように、電流ベクトル制御部1は、非干渉電圧演算部21、LPF(ローパスフィルタ)22、電流目標値演算部23、減算器24、PI制御部25、及び、加算部26を備える。
非干渉電圧演算部21は、トルク目標値T*、回転数N、バッテリ15の直流電圧Vdcに基づいて、非干渉電圧Vd_dcpl *を演算する。非干渉電圧Vd_dcpl *はLPF22に出力される。非干渉電圧Vd_dcpl *は、d軸及びq軸の間で相互に干渉する電圧(以下、干渉電圧という)を打ち消すための電圧値である。
非干渉電圧演算部21には、例えば非干渉テーブル(図示しない)が記憶されている。非干渉テーブルは、電動機9の運転状態ごとに、非干渉電圧Vd_dcpl *を予め対応付けたルックアップテーブルである。非干渉テーブルにおいては、電動機9の運転状態は、例えば、トルク目標値T*、回転数N、及びバッテリ15の直流電圧Vdcによって特定される。このように非干渉電圧演算部21が非干渉テーブルを有する場合、非干渉電圧演算部21は、トルク目標値T*、回転数N、バッテリ15の直流電圧Vdcを取得する。そして、非干渉電圧演算部21は、非干渉テーブルを参照することにより、電動機9の運転状態に応じた非干渉電圧Vd_dcpl *を演算(取得)する。なお、非干渉テーブルに格納された非干渉電圧Vd_dcpl *は、電動機9が最大効率でトルク目標値T*によって指定されるトルクを発生する場合のd軸電流目標値id *に応じて予め定められる。また、非干渉電圧Vd_dcpl *は、実験等に基づいて予め定められる。
LPF22は、干渉電圧が電流量に依存することを考慮したローパスフィルタである。LPF22の時定数は、目標とするd軸電流の応答性が確保されるように設定される。LPF22で処理された非干渉電圧Vd_dcpl_fltは、加算部26に入力される。
電流目標値演算部23は、トルク目標値T*、回転数N、バッテリ15の直流電圧Vdcに基づいて、d軸電流目標値id *を演算する。d軸電流目標値id *は、減算器24に出力される。また、d軸電流目標値id *は、電圧位相制御部2に出力される。
電流目標値演算部23には、例えば電流テーブル(図示しない)が記憶されている。電流テーブルは、電動機9の運転状態(動作点)ごとに、d軸電流目標値id *を予め対応付けたテーブルである。電流テーブルにおいては、電動機9の運転状態は、例えば、トルク目標値T*、回転数N、及びバッテリ15の直流電圧Vdcによって特定される。このように、電流目標値演算部23が電流テーブルを有する場合、電流目標値演算部23は、トルク目標値T*、回転数N、及びバッテリ15の直流電圧Vdcを取得する。そして、電流目標値演算部23は、電流テーブルを参照することにより、電動機9の運転状態に応じたd軸電流目標値id *を演算(取得)する。なお、電流テーブルに格納されたd軸電流目標値id *は、電動機9が最大効率でトルク目標値T*等によって指定されるトルクを発生するための値であり、実験等によって予め定められる。
減算器24は、d軸電流偏差を演算する。d軸電流偏差は、d軸電流の目標値と実際の検出値との偏差である。本実施形態においては、減算器24は、d軸電流目標値id *から、検出値であるd軸電流idを減算することにより、d軸電流偏差(id *-id)を演算する。d軸電流偏差は、PI制御部25に入力される。
PI制御部25は、d軸電流偏差をフィードバックするPI(Proportional-Integral)制御により、d軸用の電流フィードバック電圧指令値Vdi′を演算する。本実施形態では、PI制御部25は、下記の式(3)にしたがって電流フィードバック電圧指令値Vdi′を演算する。式(3)における「Kdp」はd軸用の比例ゲインである。また、式(3)における「Kdi」はd軸用の積分ゲインである。これらのPI制御のゲインは、実験等に基づいて予め定められる。d軸用の電流フィードバック電圧指令値Vdi′は加算部26に入力される。
Figure 0007452671000003
加算部26は、下記の式(4)に示すように、LPF22で処理された非干渉電圧Vd_dcpl_fltと電流フィードバック電圧指令値Vdi′を加算することにより、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *を演算する。
Figure 0007452671000004
以上のように、電流ベクトル制御部1は、d軸電流idをフィードバックすることにより、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *を演算する。この電流ベクトル制御は、電動機9に供給する電力の電圧ノルムが飽和せず、要求に応じて電圧ノルムを変更し得る状況における電動機9の制御に好適である。
なお、ここでは電流ベクトル制御部1の具体的構成のうち、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *を生成するd軸電圧指令値演算部の部分について説明した。しかし、電流ベクトル制御におけるq軸電圧指令値Vqi_fin *を生成するための部分は上記のd軸電圧指令値演算部と同様に構成される。すなわち、電流ベクトル制御部1は、電流ベクトル制御におけるq軸電圧指令値Vqi_fin *を生成するための構成として、q軸電圧指令値演算部を備える。q軸電圧指令値演算部は、非干渉電圧演算部、LPF、電流目標値演算部、減算部、PI制御部、及び、加算部を備える。そして、q軸電圧指令値演算部の各部は、q軸用である点を除き、上記のd軸電圧指令値演算部と同じ構成である。
[電圧位相制御]
図3は、電圧位相制御部2の構成を示すブロック図である。電圧位相制御部2は、(a)電圧ノルム決定部と、(b)電圧位相決定部と、(c)電圧指令値算出部と、を含む。
(a)電圧ノルム決定部は、電圧位相制御において電動機9に供給する電力の電圧ノルムを決定するように構成されている。電圧ノルム決定部は、具体的に、図3に示す電圧ノルム指令値生成部、磁束フィードバック制御部、電圧ノルム合成部40、及び、電圧ノルム制限部41によって構成される。電圧ノルム指令値生成部は、具体的に、図3に示す電圧ノルム上限値算出部31、位相変更部32、誘起電圧演算部33、及び、フィードフォワード電圧ノルム指令値演算部34によって構成される。また、磁束フィードバック制御部は、具体的に、図3に示す参照電流算出部35、磁束演算部36、磁束推定部37、磁束偏差演算部38、及び、PI制御部39によって構成される。
(b)電圧位相決定部は、電圧位相制御において電動機9に印加する電圧の位相を決定するように構成されている。電圧位相決定部は、具体的に、図3に示す電圧位相指令値生成部42、トルクフィードバック制御部、位相合成部47、及び、位相制限部48によって構成される。トルクフィードバック制御部は、具体的に、図3に示す参照トルク生成部43、トルク推定部44、トルク偏差演算部45、及び、PI制御部46によって構成される。
(c)電圧指令値算出部は、電圧位相制御におけるd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *を算出する。これらは、電圧ノルム決定部によって決定された電圧ノルムと、電圧位相決定部によって決定された電圧の位相と、に基づいて算出される。具体的には、電圧指令値算出部は、図3に示すベクトル変換部49及び安定化フィルタ50によって構成される。
(a-1)電圧ノルム指令値生成部
電圧ノルム指令値生成部は、フィードフォワード制御により、フィードフォワード電圧ノルム指令値(以下、FF電圧ノルム指令値Va_ffという)を生成する。FF電圧ノルム指令値Va_ffは、電圧位相制御において電動機9に印加する電圧の大きさを定める指令値である。また、FF電圧ノルム指令値Va_ffは、電動機9の運転状態によって決定される電圧ノルムの基本的な目標値である。本実施形態では、電圧ノルム指令値生成部が生成するFF電圧ノルム指令値Va_ffは、電圧位相制御における電圧ノルムの基本的な目標値(いわゆる基本値)である。したがって、電動機9に実際に印加される電圧のノルムは、電圧ノルム合成部40、及び、電圧ノルム制限部41によって制限を受ける。
FF電圧ノルム指令値Va_ffは、PWM制御の変調率Mを指定する指令値(以下、変調率指令値M*という)に相当する。したがって、電圧ノルム指令値生成部が生成するFF電圧ノルム指令値Va_ffは、変調率Mの基本的な目標値(基準変調率)に相当する。変調率指令値M*は、任意に設定可能である。変調率指令値M*は、例えば、バッテリ15の直流電圧Vdcと、後述する電圧ノルム指令値Va *とを用いて算出される。例えば、変調率指令値M*は、M*=(√2/Vdc)Va *にしたがって算出される。本実施形態において、PWM制御の変調率Mは、バッテリ15の直流電圧Vdcに対する基本波成分の振幅「Amp」の比率(|Amp/Vdc|)である。基本波成分とは、電動機9に印加しようとする相間電圧の波形が含む周波数成分のうち、基本周波数の成分である。
変調率Mが1以下である非過変調状態(通常のパルス幅変調状態)では、相関電圧の基本波成分は疑似的な正弦波となる。なお、変調率Mの下限は0である。
一方、変調率Mが1を超える過変調状態では、基本波成分の最大値及び最小値の周りでインバータ6のパワー素子がスイッチングしなくなる。このため、過変調状態では、相関電圧の波形は、基本波成分の最大値及び最小値の周りがカットされた波形となる。また、過変調状態においては、相関電圧の波形は高調波成分を含むようになる。そして、過変調状態において、変調率Mが例えば約1.1以上になると、相関電圧の波形は、実質的に矩形波となる。すなわち、過変調状態は、極限的に、相関電圧の波形が実質的に矩形波となる矩形波状態を含む。
電圧ノルム指令値生成部は、前述の通り、電圧ノルム上限値算出部31、位相変更部32、誘起電圧演算部33、及び、フィードフォワード電圧ノルム指令値演算部34によって構成される。
電圧ノルム上限値算出部31は、バッテリ15の直流電圧Vdcと変調率指令値M*に基づいて、電圧ノルム上限値Va_upperを算出する。電圧ノルム上限値Va_upperは、FF電圧ノルム指令値Va_ff及び電圧ノルム指令値Va *に対する上限値である。電圧ノルム上限値Va_upperは、例えば、Va_upper=(Vdc/√2)M*にしたがって算出される。電圧ノルム上限値Va_upperは、フィードフォワード電圧ノルム指令値演算部34に入力される。
位相変更部32は、電気角速度ωeの位相を変更する。より具体的には、位相変更部32は、d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *を演算するために予め定められた指令値演算モデル(電圧位相制御部2の構成)について、電気角速度ωeの検出からこれらの指令値を演算するまでに要する時間等を含む所定の所要時間Tsを取得する。所要時間Tsは、通常、指令値演算モデルを設計する時点で最小化されている。そして、この所要時間Tsに基づいて、電気角速度ωeの位相を変更する。より具体的には、位相変更部32は、電気角速度ωeの絶対値|ωe|の位相を進め、位相変更後の電気角速度の絶対値|ωe′|(以下、簡単のため、単に「位相変更後の電気角速度」という)を演算する。位相変更部32の構成、及び、位相変更の方法については詳細を後述する。位相変更後の電気角速度|ωe′|は、誘起電圧演算部33に入力される。
誘起電圧演算部33は、後述する参照磁束ノルムφ0_refと、位相変更後の電気角速度ωe′を用いて、参照誘起電圧Va0を算出する。本実施形態では、誘起電圧演算部33は、参照磁束ノルムφ0_refと位相変更後の電気角速度ωe′を乗算することにより、参照誘起電圧Va0が算出される。算出された参照誘起電圧Va0は、フィードフォワード電圧ノルム指令値演算部34に入力される。
フィードフォワード電圧ノルム指令値演算部34は、電圧ノルム上限値Va_upperと参照誘起電圧Va0を用いて、FF電圧ノルム指令値Va_ffを演算する。具体的には、フィードフォワード電圧ノルム指令値演算部34は、電圧ノルム上限値Va_upperと参照誘起電圧Va0を引数とする最小関数(min)で構成され、電圧ノルム上限値Va_upperと参照誘起電圧Va0のうちいずれか小さい方の値を、FF電圧ノルム指令値Va_ffとして出力する。したがって、原則として参照誘起電圧Va0がFF電圧ノルム指令値Va_ffであるが、参照誘起電圧Va0が電圧ノルム上限値Va_upperを超えるときには、電圧ノルム上限値Va_upperがFF電圧ノルム指令値Va_ffとなる。こうして算出されたFF電圧ノルム指令値Va_ffは、電圧ノルム合成部40と電圧ノルム制限部41に入力される。
(a-2)磁束フィードバック制御部
磁束フィードバック制御部は、前述の通り、参照電流算出部35、磁束演算部36、磁束推定部37、磁束偏差演算部38、及び、PI制御部39によって構成される。また、磁束フィードバック制御部は、全体として、電動機9に供給される電流に基づいて、電動機9に生じる磁束を表す磁束状態量を演算する。電動機9に生じる磁束とは、電動機9が備える永久磁石の磁束(以下、磁石磁束という)Φaと、電動機9の巻線(コイル)に供給される電流によって生じる磁束(以下、巻線磁束という)と、を合成した合成磁束である。磁束状態量とは、例えば、合成磁束を表すベクトルのノルム(以下、磁束ノルムという)の目標応答を表す参照磁束ノルムφ0_ref、磁束ノルムの推定値を表す磁束ノルム推定値φ0_est、及び、これらの偏差である磁束偏差φ0_errである。また、磁束フィードバック制御部は、磁束状態量に応じて、FF電圧ノルム指令値Va_ffにフィードバックするフィードバックノルム指令値(FB電圧ノルム指令値Va_fb)を算出する。
参照電流算出部35は、d軸電流目標値id *を用いて、d軸電流の目標応答を表すd軸参照電流id_ref *を算出する。また、参照電流算出部35は、q軸電流目標値iq *からq軸電流の目標応答を表すq軸参照電流iq_ref *を算出する。d軸参照電流id_ref *及びq軸参照電流iq_ref *は、磁束演算部36に入力される。なお、参照電流算出部35は、例えば、LPF22(図2参照)と同じ時定数を有するローパスフィルタ(LPF)である。
磁束演算部36は、d軸参照電流id_ref *及びq軸参照電流iq_ref *に基づいて参照磁束ノルムφ0_refを演算する。参照磁束ノルムφ0_refは、電圧位相制御における磁束ノルムの目標値を表す。磁束演算部36は、下記の式(5)にしたがって、d軸のインダクタンスLd、q軸のインダクタンスLq、磁石磁束Φaを用いて、参照磁束ノルムφ0_refを算出する。参照磁束ノルムφ0_refは、磁束偏差演算部38に入力される。
Figure 0007452671000005
なお、磁石磁束Φa、d軸のインダクタンスLd、及び、q軸のインダクタンスLqは定数である。d軸参照電流id_ref *及びq軸参照電流iq_ref *は変数である。但し、磁石磁束Φa、d軸のインダクタンスLd、及び、q軸のインダクタンスLqの各定数は、電動機9の磁石温度、d軸電流id、q軸電流iq、d軸電流目標値id *、及び/または、q軸電流目標値iq *によって変化する場合がある。このため、磁束演算部36は、各定数の一部または全部を、磁石温度等によって適宜変更することができる。この場合、磁束演算部36は、磁石温度等に応じて上記各定数を定めるマップを参照し、磁石温度等に応じた適切な定数を使用する。このマップは、実験やシミュレーション等によって予め定められる。
磁束推定部37は、検出値であるd軸電流id及びq軸電流iqに基づいて磁束ノルム推定値φ0_estを演算する。磁束ノルム推定値φ0_estは、電動機9における実際の磁束ノルムの推定値である。磁束ノルム推定値φ0_estの演算方法は、変数としてd軸電流id及びq軸電流iqを用いること以外は、参照磁束ノルムφ0_refの演算方法と同じである。すなわち、磁束推定部37は、下記の式(6)にしたがって、磁束ノルム推定値φ0_estを演算する。磁束ノルム推定値φ0_estは、磁束偏差演算部38に入力される。
Figure 0007452671000006
磁束偏差演算部38は、磁束偏差φ0_errを演算する。本実施形態においては、磁束偏差演算部38は、参照磁束ノルムφ0_refから磁束ノルム推定値φ0_estを減算することにより、磁束偏差φ0_errを算出する。磁束偏差φ0_errは、PI制御部39に入力される。
PI制御部39は、PI制御により、フィードバック電圧ノルム指令値(以下、FB電圧ノルム指令値という)Va_fbを算出する。FB電圧ノルム指令値Va_fbは、FF電圧ノルム指令値Va_ffにフィードバックするための電圧ノルム指令値である。具体的には、PI制御部39は、下記の式(7)にしたがって、電気角速度ωe及び磁束偏差φ0_errを用いてFB電圧ノルム指令値Va_fbを算出する。式(7)における「Kφp」は比例ゲインである。「Kφi」は積分ゲインである。これらのゲインは、実験またはシミュレーション等によって、予め定められる。また、電気角速度ωeは、回転数Nに応じて変動する可変ゲインとして機能する。FB電圧ノルム指令値Va_fbは、電圧ノルム合成部40に入力される。
Figure 0007452671000007
(a-3)電圧ノルム合成部
電圧ノルム合成部40は、FB電圧ノルム指令値Va_fbをFF電圧ノルム指令値Va_ffにフィードバックすることにより、電圧ノルム指令値Va *を生成する。電圧ノルム指令値Va *は連続値である。本実施形態においては、電圧ノルム合成部40は、FB電圧ノルム指令値Va_fbをFF電圧ノルム指令値Va_ffに加算することにより、電圧ノルム指令値Va *を算出する。電圧ノルム指令値Va *は、磁束状態量(あるいは磁束状態量の算出元である電流量)に基づいて修正された電圧ノルムの目標値である。このように、電圧位相制御の電圧ノルム指令値(電圧ノルム指令値Va *)は、FB電圧ノルム指令値Va_fbのフィードバックによって、調整可能となっている。この結果、電圧位相制御の電圧ノルム指令値(電圧ノルム指令値Va *)は、磁束偏差φ0_errがゼロに近づくように制御される。
なお、磁束偏差φ0_errは、前述のように、参照磁束ノルムφ0_refから磁束ノルム推定値φ0_estを減算した値である。このため、例えば、回転数Nが高い状態(電動機9が中速回転から高速回転である状態)から急ブレーキ等の高負荷によって回転数Nが急減すると、参照磁束ノルムφ0_refに対して磁束ノルム推定値φ0_estが急峻に大きくなる。そして、磁束偏差φ0_errは負値となり、FB電圧ノルム指令値Va_fbも負値となる。この場合、電圧ノルム指令値Va *は、当初の目標値であるFF電圧ノルム指令値Va_ffよりも小さくなる。その結果、電圧ノルム指令値Va *は、電流ベクトル制御において電動機9に印加する電力の電圧ノルムに近い値になる。電流ベクトル制御を行っていてるときに、急加速等によって電動機9に印加する電力の電圧ノルムが急増する場合等においても同様であり、電圧ノルム指令値Va *は、電流ベクトル制御において電動機9に印加する電力の電圧ノルムに近い値になる。すなわち、上記の磁束状態量に基づくフィードバック制御は、電圧位相制御と電流ベクトル制御の電圧ノルムのギャップが低減する作用がある。したがって、上記の磁束状態量に基づくフィードバック制御によって、電圧位相制御と電流ベクトル制御の切り替えが実質的にシームレスに行われるようなる。
(a-4)電圧ノルム制限部
電圧ノルム制限部41は、電圧ノルム指令値Va *を所定の下限値と電圧ノルム上限値Va_upperの間の値に制限する(電圧ノルム制限処理)。下限値は、例えばゼロである。電圧ノルム指令値Va *が下限値または上限値Va_maxに制限されているときには、電圧ノルム制限部41はその旨の通知信号をPI制御部39に出力する。PI制御部39はこの通知信号を受けると、アンチワインドアップのために、内包する積分部を初期化する。
(b-1)電圧位相指令値生成部
電圧位相指令値生成部42は、フィードフォーフォワード制御により、電動機9の運転状態に応じて、フィードフォワード電圧位相指令値(以下、FF電圧位相指令値という)αffを生成する。FF電圧位相指令値αffは、電動機9に供給すべき電圧の位相を表す。また、FF電圧位相指令値αffは、電動機9の運転状態によって決定される電圧位相の基本的な目標値である。電圧位相指令値生成部42は、FF電圧位相指令値αffを生成するためのルックアップテーブルである電圧位相テーブル42aを備える。電圧位相テーブル42aは、電動機9の運転状態(動作点)ごとに、FF電圧位相指令値αffを対応付けて記憶したルックアップテーブルである。電圧位相テーブル42aに格納されたFF電圧位相指令値αffは、例えば、実験等において、電動機9の運転状態ごとにノミナル状態で計測された電圧位相の値である。本実施形態においては、電圧位相テーブル42aは、FF電圧ノルム指令値Va_ff、回転数N、及び、トルク目標値T*と、FF電圧位相指令値αffと、を対応付けて記憶している。このため、電圧位相指令値生成部42は、これらのパラメータを取得すると、電圧位相テーブル42aを参照することにより、これらのパラメータの組み合わせに対応するFF電圧位相指令値αffを生成する。生成されたFF電圧位相指令値αffは、位相合成部47に入力される。
(b-2)トルクフィードバック制御部
トルクフィードバック制御部は、前述の通り、参照トルク生成部43、トルク推定部44、トルク偏差演算部45、及び、PI制御部46によって構成される。トルクフィードバック制御部は、全体として、フィードバック電圧位相指令値(以下、FB電圧位相指令値という)αfbを算出する。FB電圧位相指令値αfbは、FF電圧位相指令値αffにフィードバックするための電圧位相指令値である。
参照トルク生成部43は、トルク目標値T*を用いて、電動機9でのトルクの目標応答を表す参照トルクTrefを生成する。参照トルク生成部43は、例えば、LPF22(図2参照)と同じ時定数を有するローパスフィルタである。生成された参照トルクTrefは、トルク偏差演算部45に入力される。
トルク推定部44は、トルク推定値Testを算出する。トルク推定値Testは、特定の運転状態にある電動機9のトルクの推定値である。トルク推定部44は、トルク推定値Testを推定するためのトルクテーブル(図示しない)を備える。トルクテーブルは、電動機9の運転状態(動作点)ごとに、トルク推定値Testを対応付けて記憶するルックアップテーブルである。本実施形態においては、トルクテーブルは、d軸電流id及びq軸電流iqと、トルク推定値Testと、を対応付けて記憶している。このため、トルク推定部44は、これらのパラメータを取得すると、トルクテーブルを参照して、これらのパラメータの組み合わせに対応するトルク推定値Testを算出する。トルク推定値Testは、トルク偏差演算部45に入力される。
トルク偏差演算部45は、トルク偏差Terrを演算する。トルク偏差Terrは、参照トルクTrefとトルク推定値Testの偏差である。本実施形態においては、トルク偏差演算部45は、参照トルクTrefからトルク推定値Testを減算することにより、トルク偏差Terrを算出する。トルク偏差Terrは、PI制御部46に入力される。
PI制御部46は、トルク偏差Terr(=Tref-Test)を用いて、FB電圧位相指令値αfbを算出する。具体的には、PI制御部46は、下記の式(8)に従って、FB電圧位相指令値αfbを算出する。式(8)における「Kαp」は比例ゲインである。また、「Kαi」は積分ゲインである。これらのゲインは、実験やシミュレーション等によって予め定められる。FB電圧位相指令値αfbは、位相合成部47に入力される。
Figure 0007452671000008
(b-3)位相合成部
位相合成部47は、FB電圧位相指令値αfbをFF電圧位相指令値αffにフィードバックすることにより、電圧位相指令値α*を生成する。本実施形態においては、位相合成部47は、FB電圧位相指令値αfbをFF電圧位相指令値αffに加算することにより、電圧位相指令値α*を生成する。電圧位相指令値α*は、トルク偏差Terr(あるいはトルク偏差Terrの算出に用いる電流量)に基づいて修正された電圧位相の目標値である。この修正は、トルク偏差Terrがゼロに収束する修正である。このように、位相合成部47によって生成された電圧位相指令値α*は、位相制限部48に入力される。
(b-4)位相制限部
位相制限部48は、所定の電圧位相範囲に電圧位相指令値α*を制限する(電圧位相制限処理)。所定の電圧位相範囲とは、電圧位相に対する所定の下限値(以下、電圧位相下限値という)αminから、電圧位相に対する所定の上限値(以下、電圧位相上限値という)αmaxまでの範囲である。電圧位相下限値αmin及び電圧位相上限値αmaxの設定については、詳細を後述する。電圧位相指令値α*が電圧位相制限処理によって制限されているときには、位相制限部48はその旨の通知信号をPI制御部46に出力する。PI制御部46はこの通知信号を受けると、アンチワインドアップのために、内包する積分部を初期化する。
(c-1)ベクトル変換部
ベクトル変換部49は、下記の式(9)にしたがって、電圧ノルム指令値Va *及び電圧位相指令値α*を、d軸電圧指令値Vdv *及びq軸電圧指令値Vqv *に変換する。
Figure 0007452671000009
安定化フィルタ50は、上記のd軸電圧指令値Vdv *及びq軸電圧指令値Vqv *を用いて、電圧位相制御の電圧指令値であるd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *を算出する。具体的には、安定化フィルタ50は、式(10)にしたがって、これらd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *を算出する。この安定化フィルタ50は、ベクトル変換後のd軸電圧指令値Vdv *及びq軸電圧指令値Vqv *に対するd軸電流id及びq軸電流iqの共振特性を相殺する。これにより、安定化フィルタ50はフィードバックループを安定化する。
Figure 0007452671000010
なお、式(10)における「k11」「k12」「k21」及び「k22」は、電気角速度ωeによって変化する可変ゲインである。これらの可変ゲイン(k11、k12、k21、k22)は、下記の式(11)で定められる。式(11)における「Ld′」は、d軸の動的インダクタンスである。そして、「Lq′」は、q軸の動的インダクタンスである。
Figure 0007452671000011
式(10)から分かる通り、安定化フィルタ50においては、d軸電流id及びq軸電流iqが、過渡的に所定の時定数τmの1次遅れ応答となるように設計されている。d軸及びq軸のインダクタンスによって電動機9に印加する電圧の位相は進むが、系全体としてみれば、この位相の進みは無視し得る程度に十分に小さい。このため、d軸及びq軸のインダクタンスによる位相の進みを無視すると、電圧位相制御のd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *の過渡的なダイナミクスは、時定数τmの1次遅れ応答とみなすことができる。
以上のように、電圧位相制御部2は、トルク偏差Terrがゼロに収束するように、電圧位相指令値α*を変更する。このため、電圧位相制御では、電動機9に供給する電力の電圧ノルムが飽和するような状況においても、要求に応じて電動機9のトルクを変更できる。特に、過変調状態やその極限である矩形波状態においても、電圧位相制御によれば電動機9のトルクは適切に制御され得る。また、上記の電圧位相制御では磁束偏差φ0_errをフィードバックして電圧ノルム指令値Va *を変更しているので、電圧位相制御は、電流ベクトル制御との切り替えがシームレスである。
また、電圧位相制御部2は、上記のように、電圧位相制御によって電動機9に印加する電圧の最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)を、電動機9の回転数Nに関連する回転するパラメータ(電気角速度ωe)を用いて演算するために予め定められた「指令値演算モデル」(いわゆる伝達関数)にしたがって演算する。そして、電圧位相制御部2は、電圧位相制御における最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)を、この指令値演算モデルにしたがって演算するときに要する所要時間Tsを取得する。そして、この所要時間Tsに基づいて、検出された回転数パラメータ(電気角速度ωe)が変更され、指令値演算モデルにしたがって、変更後の回転数パラメータ(電気角速度|ωe′|)を用いて最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)が演算される。
この「指令値演算モデル」に応じた所要時間Tsは、例えば回転数パラメータ(電気角速度ωe)の検出から最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)が演算されるまでに要する時間を含む。また、所要時間Tsは、指令値演算モデルを設定する時点(電圧位相制御部2が設計された時点)で定まる。指令値演算モデルは、通常、所要時間Tsができる限り小さくなるように設定される。但し、指令値演算モデルが具体的にどのような系で実装されるとしても、内包する各種検出及び演算等による遅延時間が存在するので、所要時間Tsはゼロにはならない。また、所要時間Tsには、電圧位相制御部2の演算等によって発生する遅延時間だけでなく、電圧位相制御に必要なパラメータ(例えば回転数パラメータ)の取得に要する遅延時間があるときには、所要時間Tsにはこれを含むことができる。例えば、回転数Nの検出におけるタイムラグ(検出周期)は、所要時間Tsに含まれ得る。また、最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)に基づいてインバータ6から電動機9に実際に電圧が印加されるまでに遅延時間がある場合には、その遅延時間も所要時間Tsに含まれ得る。すなわち、所要時間Tsは、回転数Nに関連する回転数パラメータの検出から電動機9への電圧の印可までの間に内在する応答の遅延時間の一部または全部を表す。本実施形態においては、所要時間Tsは上記のように指令値演算モデルを設定したことによって既知である。このため、所要時間Tsに係る情報は、例えば図示しないメモリに予め保有されている。
[電圧位相上限値及び電圧位相下限値の設定]
図4は、電圧位相制御における電圧位相範囲の設定を示すためのグラフである。図4に示すように、ある電動機では、電圧位相αとトルクTの相関が維持されるのは、概ね電圧位相αが-105度から+105度の範囲である。この場合、電圧位相上限値αmaxは+105度に設定し、かつ、電圧位相下限値αminは-105度に設定する。したがって、図4の特性を有する電動機を、電動機システム100の電動機9として使用する場合、位相制限部48は、-105度から+105度の範囲に、電圧位相指令値α*を制限する。これは、電動機9のトルクとの相関を維持することで、電動機9の制御性を確保するためである。
[位相変更部の構成及び位相変更の方法]
図5は、位相変更部32の構成を示すブロック図である。図5に示すように、位相変更部32は、加速度演算部51、変更制限部52、位相変更量演算部53、加算部54、及び、最終制限部55を備える。
加速度演算部51は、電気角速度ωeの絶対値|ωe|を時間について微分し、電気角加速度Aeを算出する。本実施形態においては、加速度演算部51は、いわゆる不完全微分器であり、微分器「s」とローパスフィルタ「1/(τws+1)」を組み合わせたものである。このため、加速度演算部51は、近似的に電気角速度ωeの絶対値|ωe|を時間微分する。時定数「τw」は、回転数Nの検出値に含まれる高周波ノイズに対する耐性と回転数Nの変化に対する応答性を考慮して予め定められる定数である。電気角加速度Aeは、変更制限部52に入力される。
変更制限部52は、電気角加速度Aeに基づいて、電気角速度ωeの位相を変更するか否かを切り替えるスイッチである。本実施形態においては、変更制限部52は、電気角加速度Aeを予め定める所定の閾値Ae0と比較することにより、電気角速度ωeの位相を変更するか否かを判定する。具体的には、電気角加速度Aeが閾値Ae0よりも小さい場合、変更制限部52は、電気角速度ωeに対する位相の変更(以下、単に位相変更という)の実施を決定する。一方、電気角加速度Aeが閾値Ae0以上である場合、変更制限部52は、電気角速度ωeに対する位相変更を実施しないことを決定する。閾値Ae0は、実験またはシミュレーション等に基づいて予め定められる。また、閾値Ae0は、特定のシーンに対応するために、任意に定められる。
また、電気角加速度Aeが閾値Ae0よりも小さいと判定された場合、変更制限部52は、入力された電気角加速度Aeを出力する。一方、電気角加速度Aeが閾値Ae0以上であると判定された場合、変更制限部52は、予め定める初期値(本実施形態においてはゼロ)を出力する。変更制限部52の出力は、位相変更量演算部53に入力される。
位相変更量演算部53は、変更制限部52の出力を用いて、電気角速度ωeの位相の変更量(以下、位相変更量という)ωecmpを算出する。また、位相変更量演算部53は、位相変更量ωecmpを算出するときに、電圧位相制御の指令値演算モデルによって最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)が算出されるまでに要する所要時間Tsを取得する。そして、位相変更量演算部53は、この所要時間Tsを考慮して位相変更量ωecmpを算出する。算出された位相変更量ωecmpは、加算部54に入力される。
本実施形態では、位相変更量演算部53は、変更制限部52の出力に所要時間Tsを乗算することにより、位相変更量ωecmpを算出する。したがって、電気角加速度Aeが閾値Ae0よりも小さい場合、位相変更量ωecmpは電気角加速度Aeと所要時間Tsの積(Aes)である。これにより、位相変更量演算部53は、所要時間Tsの間に変化する分の電気角速度ωeに相当する位相変更量ωecmpを算出する。但し、電気角加速度Aeが閾値Ae0以上である場合、変更制限部52の出力がゼロなので、位相変更量ωecmpもゼロである。これは、電気角速度ωeの位相を変更しないシーンである。
また、本実施形態では、前述のように回転数演算器11が、単位時間ΔtNaveにおける電気角θの変化量を演算することによって電気角速度ωeを算出する。このため、ある一定の電気角加速度Aeにおいて、回転数Nの検出に要する無駄時間は概ねΔtNave/2程度とみなすことができる。また、前述のように、安定化フィルタ50では、d軸電圧指令値Vdv *及びq軸電圧指令値Vqv *に対するd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *の応答は、時定数τmの1次応答遅れとみなすことができる。このため、ある一定の電気角加速度Aeにおいて、電動機9への電圧の出力における無駄時間は時定数τm程度とみなすことができる。これらのことから、本実施形態においては、所要時間Tsは、これらの和で表せるとする。すなわち、所要時間Tsは、下記の式(12)にしたがって算出する。
Figure 0007452671000012
このように所要時間Tsを設定することにより、電気角加速度Aeがほぼ一定とみなせる時間範囲において、所要時間Tsあたりに電気角速度ωeに発生し得る変化量を超えない範囲で、電気角速度ωeの位相が変更される。その結果、位相変更後の電気角速度|ωe′|を用いて電圧ノルムを操作しても、所要時間Tsを上回るような過度の変更が防止される。
加算部54は、電気角速度ωeに位相変更量ωecmpを加算する。これにより、電気角速度ωeの位相が進められる。加算部54の出力は、位相変更後の電気角速度|ωe′|である。但し、位相変更後の電気角速度|ωe′|は最終制限部55を経て出力される。
最終制限部55は、加算部54の出力である位相変更後の電気角速度|ωe′|と、固定値「ゼロ(0)」と、を引数とする最大関数(max)で構成される。このため、最終制限部55によって、位相変更後の電気角速度|ωe′|は、負値とならないように下限値を制限される。
以上のように、位相変更部32は、電圧位相制御の指令値演算によって最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)が算出されるまでに要する所要時間Tsを取得する。そして、位相変更部32は、この所要時間Tsに基づいて、電気角速度ωeの位相が変更される。その後、位相が変更された電気角速度|ωe′|に基づいて、電圧位相制御の指令値演算モデルにしたがった最終指令値の演算が実行される。この位相変更処理は、位相変更後の電気角速度|ωe′|が所要時間Tsの経過後における電気角速度ωeに近づくように、予め電気角速度ωeの位相を変更するものである。
[出力制御器の具体的構成、及び、制御モード信号の生成]
図6は、制御モード切替判定部13の構成を示すブロック図である。図6に示すように、制御モード切替判定部13は、第1ノルム閾値演算部94、第2ノルム閾値演算部95、平均化フィルタ96、平均化フィルタ97、ノルム演算部98、及び、制御モード判定部99を備える。
第1ノルム閾値演算部94は、第1変調率閾値Mth1に基づいて、第1ノルム閾値Va_th1を演算する。第1変調率閾値Mth1は、PWM制御の変調率Mについて定める閾値であって、制御モードを電圧位相制御から電流ベクトル制御に切り替える基準となる変調率Mを表す。第1ノルム閾値Va_th1は、後述する平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *と比較される閾値であって、電圧位相制御から電流ベクトル制御への切り替え条件として用いられる。第1ノルム閾値Va_th1は、下記式(13)の第1式にしたがって、バッテリ15の直流電圧Vdcを用いて算出される。
第2ノルム閾値演算部95は、第2変調率閾値Mth2に基づいて、第2ノルム閾値Va_th2を演算する。第2変調率閾値Mth2は、PWM制御の変調率Mについて定める閾値であって、制御モードを電流ベクトル制御から電圧位相制御に切り替える基準となる変調率Mを表す。第2ノルム閾値Va_th2は、後述する平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *と比較される閾値であって、電流ベクトル制御から電圧位相制御への切り替え条件として用いられる。第2ノルム閾値Va_th2は、下記式(13)の第2式にしたがって、バッテリ15の直流電圧Vdcを用いて算出される。
Figure 0007452671000013
なお、本実施形態においては、変調率Mの上限値Mmax *、第1変調率閾値Mth1、及び、第2変調率閾値Mth2の大小関係は、下記の式(14)に示す通りである。すなわち、電圧位相制御から電流ベクトル制御への切り替えに関連する第1変調率閾値Mth1は、これらの中で最も小さい。そして、電流ベクトル制御から電圧位相制御への切り替えに関連する第2変調率閾値Mth2は、上限値Mmax *と第1変調率閾値Mth1の間の値である。すなわち、本実施形態においては、第1変調率閾値Mth1と第2変調率閾値Mth2は少なくとも互いに異なる値である。このため、第1変調率閾値Mth1を用いて算出する第1ノルム閾値Va_th1と、第2変調率閾値Mth2を用いて算出する第2ノルム閾値Va_th2も、互いに異なる値である。この結果として、電流ベクトル制御と電圧位相制御の切り替えには、ヒステリシスが設けられている。本実施形態では電流ベクトル制御と電圧位相制御の切り替えがシームレスに行われようにしているので、これらの切り替えにヒステリシスを設けておくことにより、これらの切り替えが繰り返される現象(いわゆるチャタリング)の発生を抑制できる。
Figure 0007452671000014
なお、変調率Mの上限値Mmax *、第1変調率閾値Mth1、及び、第2変調率閾値Mth2は、例えば、次のように設定される。すなわち、上限値Mmax *は矩形波状態の変調率Mの値「1.1」である。第2変調率閾値Mth2は、非過変調状態と過変調状態の境界の変調率Mの値「1.0」である。第1変調率閾値Mth1は、確実に非過変調状態となったとみなせる変調率Mの値「0.9」である。
平均化フィルタ96は、d軸最終電圧指令値Vd_fin *に平均化処理を施すことにより、d軸最終電圧指令値Vd_fin *のノイズを低減する。平均化フィルタ96は、例えば、ローパスフィルタ(LPF)である。平均化フィルタ96の出力は、平均化d軸最終電圧指令値Vd_fin_flt *である。この平均化d軸最終電圧指令値Vd_fin_flt *は、ノルム演算部98に入力される。
平均化フィルタ97は、q軸最終電圧指令値Vq_fin *に平均化処理を施すことにより、q軸最終電圧指令値Vq_fin *のノイズを低減する。平均化フィルタ97は、例えば、ローパスフィルタ(LPF)である。平均化フィルタ97の出力は、平均化q軸最終電圧指令値Vq_fin_flt *である。この平均化q軸最終電圧指令値Vq_fin_flt *は、ノルム演算部98に入力される。
ノルム演算部98は、下記の式(15)にしたがって、平均化d軸最終電圧指令値Vd_fin_flt *及び平均化q軸最終電圧指令値Vq_fin_flt *を用いて、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *を演算する。具体的には、ノルム演算部98は、下記の式(15)にしたがって、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *を演算する。平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *は、制御モード判定部99に入力される。
Figure 0007452671000015
なお、出力制御器3が、d軸最終電圧指令値Vd_fin *及びq軸最終電圧指令値Vq_fin *として、電圧位相制御のd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *を出力する場合がある。この場合、上記の平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *の代わりに、ベクトル変換部49に入力される最終電圧ノルム指令値Va_fin *を制御モード判定部99に入力してもよい。
制御モード判定部99は、第1ノルム閾値Va_th1、第2ノルム閾値Va_th2、及び、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *を用いて、電動機9の運転状態に応じて適用すべき制御モードを判定する。制御モード判定部99の判定結果は、制御モード信号Smとして、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、出力制御器3に出力される。
図7は、制御モード判定部99による制御モードの判定方法を示す説明図である。図7に示すように、制御モード判定部99は、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *と、第1ノルム閾値Va_th1及び第2ノルム閾値Va_th2と、を比較する。この比較の結果、電動機9を電圧位相制御によって制御しているときに、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *が第1ノルム閾値Va_th1以下となったことを検出した場合、その検出結果に基づいて、電流ベクトル制御に切り替えることを決定する。そして、その旨を表す制御モード信号Sm(例えば制御モードの切り替え指令)を出力する。また、電動機9を電圧位相制御によって制御しているときに、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *が第2ノルム閾値Va_th2以上となったことを検出した場合、その検出結果に基づいて、電圧位相制御に切り替えることを決定する。そして、その旨を表す制御モード信号Smを出力する。
[出力制御器の具体的構成]
図8は、出力制御器3の構成を示すブロック図である。図8に示すように、制御モード信号Smにしたがって、電流ベクトル制御と電圧位相制御を切り替えるスイッチである。制御モード信号Smに基づいて制御モードを電流ベクトル制御に設定するときには、出力制御器3は、電流ベクトル制御のd軸電圧指令値Vdi_fin *を、d軸最終電圧指令値Vd_fin *として出力する。また、これと同時に、出力制御器3は、電流ベクトル制御のq軸電圧指令値Vqi_fin *を、q軸最終電圧指令値Vq_fin *として出力する。一方、制御モード信号Smに基づいて制御モードを電圧位相制御に設定するときには、出力制御器3は、電圧位相制御のd軸電圧指令値Vdv_fin *を、d軸最終電圧指令値Vd_fin *として出力する。また、これと同時に、出力制御器3は、電圧位相制御のq軸電圧指令値Vqv_fin *を、q軸最終電圧指令値Vq_fin *として出力する。
[本実施形態の作用]
以下では、上記のように構成される本実施形態の電動機システム100及び電動機9の作用について説明する。
図9は、本実施形態における電動機制御のフローチャートである。図9に示すように、まず、ステップS101において、電流検出器8によって電動機9の三相交流電流が検出され、検出された三相交流電流は変換器12の座標変換処理によってd軸電流id及びq軸電流iqに変換される。また、ステップS102において、回転子検出器10によって電動機9の電気角θが検出され、回転数演算器11の回転数演算処理によって、検出された電気角θから回転数Nが演算される。また、ステップS103において、トルク目標値T*が取得され、バッテリ15の直流電圧Vdcも取得される。すなわち、電動機9の制御において必要な各種パラメータが取得または演算等される。
こうして各種パラメータが取得されると、ステップS104において、制御モード切替判定部13によって制御モード切替判定が行われる。ステップS105において、制御モード切替判定の結果が電流ベクトル制御で電動機9を制御すると判定されたときには、ステップS106以降が実行される。ステップS106では、電流ベクトル制御部1によって、d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *と非干渉電圧Vd_dcpl *が算出される。その後、ステップS107において、d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *をそれぞれフィードバックする電流フィードバック処理によって、d軸の電流フィードバック電圧指令値Vdi′及びq軸の電流フィードバック電圧指令値Vqi′が算出される。さらに、ステップS108において、LPF22で処理された非干渉電圧Vd_dcpl_fltと電流フィードバック電圧指令値Vdi′を加算する非干渉制御が行われることにより、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *が演算される。同様に、ステップS108において、電流ベクトル制御におけるq軸電圧指令値Vqi_fin *が演算される。
このように電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *が演算されると、ステップS109の出力制御器3による出力制御処理を経て、ステップS110において、変換器4により、三相電圧指令値が算出される。その後、パルス幅変調信号生成器5によって三相電圧指令値に基づくPWM信号が生成され、パルス幅変調による電動機9の制御が実行される。
一方、ステップS104の制御モード切替判定の結果、ステップS105において、電動機9の運転状態が電流ベクトル制御に適さないと判定されると、ステップS111において電流位相制御が実行される。
図10は、電圧位相制御のフローチャートである。図10に示すように、電圧位相制御では、ステップS201において、電気角速度ωeの位相変更処理が実行される。また、ステップS202において、電流ベクトル制御部1からd軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *が取得される。ステップS203では、参照磁束ノルムφ0_ref及び参照トルクTrefが演算される。
その後、ステップS204において、位相変更処理後の電気角速度|ωe′|と参照磁束ノルムφ0_refから誘起電圧Va0が演算される。そして、ステップS205において、電圧ノルム上限値Va_upper、FF電圧ノルム指令値Va_ff、及び、FF電圧位相指令値αffが算出される。ステップS206では、d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *を用いて磁束ノルム推定値φ0_est及びトルク推定値Testが演算される。そして、ステップS207では、FB電圧ノルム指令値Va_fbが算出される。
次いで、FF電圧ノルム指令値Va_ffとFB電圧ノルム指令値Va_fbが加算されることにより、電圧ノルム指令値Va *が算出される。こうして算出された電圧ノルム指令値Va *は、ステップS208において、所定の下限値と電圧ノルム上限値Va_upperの間の値に制限される。
ステップS209において、この電圧ノルム制限処理で電圧ノルム指令値Va *が制限されているときには、ステップS210が実行され、PI制御部39が初期化される。一方、ステップS209において、上記の電圧ノルム制限処理で電圧ノルム指令値Va *が制限されていない場合は、ステップS210は省略される。これらの結果、ベクトル変換部49に、電圧ノルム制限処理後の電圧ノルム指令値Va *が入力される。
一方、ステップS211では、FB電圧位相指令値αfbが算出される。次いで、FF電圧位相指令値αffとFB電圧位相指令値αfbが加算されることにより、電圧位相指令値α*が算出される。こうして算出された電圧位相指令値α*には、ステップS212において、電圧位相制限処理が施される。ステップS213において、電圧位相指令値α*が電圧位相性得源処理によって制限されている場合には、ステップS214においてPI制御部46が初期化される。一方、ステップS213において、電圧位相指令値α*が電圧位相制限処理によって制限されていない場合には、ステップS214は省略される。これらの結果、ベクトル変換部49に、位相制限処理後の電圧位相指令値α*が入力される。
ステップS215では、ベクトル変換部49が、電圧ノルム指令値Va *及び電圧位相指令値α*を、d軸電圧指令値Vdv *及びq軸電圧指令値Vqv *に変換する。そして、d軸電圧指令値Vdv *及びq軸電圧指令値Vqv *は、ステップS216の安定化フィルタ処理を経て出力される。その後は電流ベクトル制御と同様であり、図9に示すように、ステップS109の出力制御器3による出力制御処理を経て、ステップS110において、変換器4により、三相電圧指令値が算出される。そして、パルス幅変調信号生成器5によって三相電圧指令値に基づくPWM信号が生成され、パルス幅変調による電動機9の制御が実行される。
以上のように、本実施形態の電圧位相制御では、運転状態によって、過変調状態で電動機9が制御される場合がある。また、回転数Nが検出されると、回転数Nは電気角速度ωeに変換される。そして、電圧位相制御の指令値演算では電気角速度ωeが使用される。但し、検出した回転数Nに相当する電気角速度ωeがそのまま使用されるのではなく、電気角速度ωeに対して所要時間Tsを考慮した位相変更処理が実行される。このため、本実施形態の電圧位相制御では、位相変更処理後の電気角速度|ωe′|を用いて電圧位相制御の指令値演算モデルにしたがった最終指令値の演算が実行される。その結果、本実施形態の電圧位相制御では、運転状況によらず、電動機9を適切に制御し得る。すなわち、本実施形態の電圧位相制御によれば、以下に示すように、電動機9に印加する電圧に過不足が生じず、かつ、過変調状態で制御しているときに電動機9の回転数Nが急変するようなシーンにおいて懸念される過電流も適切に防止できる。
図11は、(A)電気角速度ωe、(B)電気角加速度Ae、(C)電動機9に流れる電流Im、(D)電動機9に印加される電圧Vm、を示すグラフである。図11は、電動機9が、時刻t0から時刻t5までの全期間で、電圧位相制御によって過変調状態で制御されている状況での各パラメータを示している。また、時刻t0から時刻t1までの間、電動機9は、一定の回転数Nで運転されており、時刻t1から回転数Nが急減している。なお、電動機9に流れる電流Imは、例えば、d軸電流id、q軸電流iq、または、d軸電流idとq軸電流iqの2乗平均である。また、電動機9に印加される電圧Vmは、d軸電圧指令値Vdv_fin *とq軸電圧指令値Vqv_fin *に対応する電圧ノルムである。
図11(A)に示すように、検出された回転数Nを変換して得た電気角速度ωe(検出電気角速度)は、回転数Nが急減した時刻t1以降、電動機9の実際の角速度(以下、実角速度という)201と乖離している。これは、電動機9の回転数Nが急減したことで、所要時間Ts程度の僅かな応答遅延が、電動機9の制御に無視できない影響を与えるからである。
図11(B)に一点鎖線で示すように、時刻t1から回転数Nが急減したことで、電動機9の実際の電気角加速度(以下、実角加速度という)202は時刻t1においてステップ状に減少している。このとき、図11(B)に実線で示すように、電気角速度ωeを微分して得られる電気角加速度Ae(検出電気角速度)は、所要時間Tsがあることによって追従が遅れる。このため、電気角加速度Aeは、時刻t3ごろになって実角加速度202に概ね一致する。
そこで、本実施形態の電圧位相制御では、所要時間Tsを考慮して、電気角速度ωeの位相を変更する。この電気角速度ωeの位相変更は、検出した電気角加速度Aeを閾値Ae0と比較し、電気角加速度Aeが閾値Ae0よりも小さくなった時刻t2の後から行われる。その結果、図11(A)に示すように、位相変更後の電気角速度|ωe′|は、検出した電気角速度ωeに対して時刻t2から減少する。また、図11(A)に示す通り、位相変更後の電気角速度|ωe′|は、検出した電気角速度ωe側から実電気角速度201を超えてさらに減少する。これは、位相変更が、所要時間Tsがあることを見越して行われるからである。すなわち、本実施形態の電圧位相制御で実行する位相変更は、検出した電気角速度ωeを実電気角速度201に一致させるようにする補正あるいは補償ではなく、実電気角速度201よりもさらに位相を進ませる変更となっている。図11(A)に示すように、本実施形態では、位相変更後の電気角速度|ωe′|は、実電気角速度201に対して、概ね時刻t3から時刻t4に相当する位相が進んでいる。
このように電気角速度ωeの位相を変更し、位相変更後の電気角速度|ωe′|を電圧位相制御の指令値演算に使用すると、電動機9に流れる電流Imは、電動機9に流すことができる電流の上限値(以下、電流上限Ilimという)以下に抑制される。具体的には、図11(C)のグラフGI1に示すように、位相変更をせず、検出したままの電気角速度ωeを用いて電圧位相制御の指令値演算をする場合、電気角加速度Aeが実角加速度202に整定した時刻t3以降においても、電動機9に流れる電流は上昇し続ける。その結果、電動機9に流れる電流は、電流上限Ilimを超えた過電流となる。一方、図11(C)のグラフGI2に示すように、位相変更後の電気角速度ωeを用いて電圧位相制御の指令値演算モデルにしたがった最終指令値の演算をすると、時刻t3以降、電動機9に流れる電流は、上昇が抑制され、概ね平坦な推移となる。このため、電動機9に流れる電流は、電流上限Ilimを超えずに済む。なお、電流上限Ilimは、電動機9の耐久性等によって予め定められる。
また、図11(D)のグラフGV1に示すように、位相変更をせず、検出したままの電気角速度ωeを用いて電圧位相制御の指令値演算にしたがった最終指令値の演算をする場合、回転数Nが急減しているにもかかわらず、電動機9に印加される電圧Vmの減少は緩やかである。これが上記のように電動機9に流れる電流が上昇し続ける原因の1つである(グラフGI1参照)。一方、図11(C)のグラフGV2に示すように、位相変更後の電気角速度ωeを用いて電圧位相制御の指令値演算をすると、グラフGV1よりも迅速に、電動機9に印加される電圧Vmが減少する。これにより、電動機9に流れる電流の上昇が抑えられる(グラフGI2参照)。
なお、位相変更処理は電圧位相制御に内包されている。すなわち、電圧位相制御の指令値演算の結果に対して変更を加えるのではなく、電圧位相制御は、位相変更処理を含めた状態で、電動機9に印加する電圧を適切に調節するものである。このため、図11では回転数Nが急減したときの各パラメータの推移を説明しているが、回転数Nが緩変化するときには、当然に、電圧位相制御により電圧過不足等が発生することなく電動機9が適切に制御される。
また、本実施形態で行う電気角速度ωeの位相変更は、実電気角速度201よりも位相を進ませるものである。ただし、過剰に位相を進ませることによる弊害を防止するため、所要時間Tsあたりに電気角速度ωeに発生し得る変化量を超えない範囲で、電気角速度ωeの位相が進まされる。すなわち、電気角速度ωeの位相の変更量は、回転数Nの検出から電動機9に対する電圧の印可までに内在する遅れ時間の範囲内となるように設定されている。例えば、所要時間Tsが完全にゼロになるような理想の系において、電動機9に印加すべき電圧を遅延なく出力できれば過電流は抑制できるが、これは実現不可能である。一方、系に内在する遅れ時間を上回るような過度の位相変更を行うと、電圧の過不足が生じ、かえって過電流のリスクが高まってしまう場合がある。このため、上記のように、位相変更処理は、系に内在する遅れ時間の範囲内に限って行われることが好ましい。
なお、上記実施形態においては、電圧位相制御の指令値演算に電気角速度ωeを用いているが、電気角速度ωeに変換せずに、回転数Nを使用する指令値演算を設定してもよい。この場合、上記実施形態と同様に、位相変更処理は回転数Nに対して行われる。すなわち、電気角速度ωeの位相変更は、回転数Nの変更の一例である。同様に、上記の位相変更処理は、回転数Nまたは電気角速度ωe以外の回転数パラメータに対して行うことができる。すなわち、回転数Nまたは電気角速度ωeに位相変更処理を施す代わりに、回転数Nまたは電気角速度ωeに対して相関がある回転数パラメータに位相変更処理を行ってもよい。例えば、位相変更前の電気角速度ωeを用いて誘起電圧Va0を算出するときには、誘起電圧Va0に対して位相変更処理を施してもよい。
上記実施形態においては、所要時間Tsを、回転数Nの検出に係る無駄時間と、安定化フィルタ50の時定数τmと、を用いて見積もっているが(式(12)参照)、これは所要時間Tsの一例である。例えば、設計上考慮し得る複数の遅れ要素を取捨選択して所要時間Tsの考慮に入れることができる。例えば、上記の他には、電気角θのサンプリング周期、回転数Nの演算周期、パルス幅変調において発生する無駄時間、PWMパルスの出力に関する無駄時間、位相変更部32自体に含まれる応答遅れ等の一部または全部を用いて、所要時間Tsを設定することができる。
この他、上記実施形態における各種定数は、いずれも変数に変更にできる。例えば、電流、回転数N、トルク、電圧、または温度等、電動機9やインバータ6の運転状態に関連する各種パラメータに応じて、上記実施形態における各種定数を可変にすることができる。過電流によるハードウェアの故障等のリスクが高い場合に、上記実施形態の位相変更の補正量が大きくなるように、各種定数を可変にするとよい。
なお、上記実施形態では、変更制限部52において電気角加速度Aeを閾値Ae0と比較し、電気角速度ωeの位相を変更するか否かを判定する(図5参照)。この判定において、閾値Ae0をゼロに設定すると、回転数Nが増加するときには実質的に位相変更処理が行われず、回転数Nが減少するときにだけ位相変更処理が行われるようなる。過電流のリスクは、回転数Nが増加するときよりも、回転数Nが減少するときに大きい。このため、閾値Ae0をゼロに設定すると、過電流のリスクが高いシーンに限って的確に位相変更処理が実施されるので、過電流のリスクが効率的に低減される。また、閾値Ae0をゼロに設定すると、回転数Nが増加するシーンでは、位相変更処理を行わない本来の電圧位相制御が維持される。このため、回転数Nが増加するシーンでは、電圧位相制御における本来の応答性が維持される。その結果、ごく一時的な電圧過多によって位相変更処理が実施され、電動機9の制御効率が悪化することが防止される。これは、回転数Nの絶対値が減少するときの位相変更処理の変更量(位相変更量ωecmp)を、回転数Nの絶対値が増加するときの位相変更処理の変更量(位相変更量ωecmp)よりも大きくするケースの一例である。
また、閾値Ae0を、電動機9の特性等に応じて予め定める負の所定値に設定すると、緩加減速時においては実質的に位相変更処理が行われなくなる。そして、過電流のリスクが高い急な加減速時に限って適切に位相変更処理が行われるようになる。このため、閾値Ae0を負の所定値に設定すると、電動機システム100を搭載する車両の車輪がスリップした場合、車輪がスリップした後に路面に再度グリップした場合、車輪がロックした場合等、急加減速時に限って、効率的に過電流が防止される。また、通常のドライバ操作で想定されるような緩加減速時には、位相変更処理を行わない電圧位相制御本来の応答性が維持される。このため、ごく一時的な電圧過多によって位相変更処理が実施され、電動機9の制御効率が悪化することが防止される。
上記実施形態では、変更制限部52において電気角加速度Aeを閾値Ae0と比較し、電気角速度ωeの位相を変更するか否かを判定するが、変更制限部52を省略してもよい。図12は、本変形例における位相変更部32の構成を示すブロック図である。図12に示すように、この位相変更部32では、変更制限部52を省略する代わりに、位相変更量演算部53を電気角加速度Aeに応じて可変にしている。具体的には、本変形例の位相変更量演算部53は、例えば、所要時間Tsと電気角加速度Aeの積に、さらに電気角加速度Aeに応じた係数γ(図示しない)を乗算することにより、位相変更量ωecmpを算出する。この係数γを、電気角加速度Aeが正の場合に「0」とし、電気角加速度Aeが負の場合に「1」とすれば、上記実施形態で閾値Ae0をゼロに設定する場合と同様に機能する。また、係数γを、電気角加速度Aeが負の所定値より大きい場合に「0」とし、電気角加速度Aeが負の所定値以下である場合に「1」とすれば、上記実施形態で閾値Ae0を負の所定値に設定する場合と同様に機能する。
さらに、上記のように、変更制限部52を省略し、位相変更量演算部53を電気角加速度Aeに応じて可変にする場合には、より柔軟かつ適切に電動機9が制御される。
例えば、回転数Nが増加する場合の係数γが、回転数Nが減少する場合の係数γと比較して小さくなるように、“電気角加速度Aeが小さいほど、値が大きくなる係数γ”を設定することができる。この場合、減速する時の位相変更量ωecmpが、加速する時の位相変更量ωecmpよりも大きくなる。このため、過電流の防止と、電圧位相制御の本来の応答性の維持が、電動機9の運転状態に応じて適切に両立されやすい。これは、回転数Nの絶対値が減少するときの位相変更処理の変更量(位相変更量ωecmp)を、回転数Nの絶対値が増加するときの位相変更処理の変更量(位相変更量ωecmp)よりも大きくするケースの一例である。
また、例えば、“電気角加速度Aeの「絶対値」が小さいほど、値が小さくなる係数γ”を設定することができる。この場合、電気角加速度Aeの絶対値が小さい緩加減速時には電圧位相制御の本来の応答性が維持され、電気角加速度Aeの絶対値が大きい急加減速時には過電流が防止される。
以上のように、本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法は、電動機9に供給すべき電圧の大きさを表す電圧ノルム指令値Va *と、その電圧の位相を表す電圧位相指令値α*と、に基づいて行う電圧位相制御によって電動機9を制御する電動機9の制御方法である。この電動機9の制御方法では、電圧位相制御によって電動機9に印加する電圧(電圧ノルム指令値Va *)の最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)を、電動機9の回転数Nに関連する回転数パラメータ(電気角速度ωe)を用いて演算するための指令値演算モデルにしたがって演算するときに要する所要時間Tsが取得される。そして、所要時間Tsに基づいて、検出された回転数パラメータ(電気角速度ωe)が変更される。その後、指令値演算モデルにしたがって、変更後の回転数パラメータ(電気角速度ωe)を用いて最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)が演算される。
これにより、本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法は、電圧位相制御によって過変調状態で電動機9を制御するときに、電動機9を適切に制御し得る。すなわち、電動機9の回転数Nが急減した場合に過電流が防止される。また、回転数パラメータの変更は、指令値演算モデル、または、指令値演算モデルにしたがって演算された最終指令値を変更するものではない。すなわち、指令値演算モデルは回転数パラメータの変更を内包しており、回転数パラメータの変更も含めて適切な最終指令値を演算するように設定されている。このため、電動機9の回転数Nが緩増減する場合には、電動機9に印加する電圧に過不足は生じない。
また、本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法では、具体的に、回転数Nを検出し、回転数Nに基づいて電気角速度ωeを算出することにより、回転数パラメータを検出する。そして、所要時間Tsに基づいて、電気角速度ωeの位相が変更される。その後、位相変更後の電気角速度|ωe′|及び指令値演算モデルによって最終指令値(d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *)が演算される。
このように、回転数パラメータとして電気角速度ωeを検出し、その位相を変更した電気角速度|ωe′|を指令値演算モデルにしたがった最終指令値の演算に用いると、特に適切に電動機9が制御される。複数考慮し得る回転数パラメータの中で、電気角速度ωeの位相を変更するときには、他の複合的な要素を考慮しなくともよく、最も直接的に過電流の防止効果等に寄与するからである。
また、本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法は、具体的に、位相変更後の電気角速度|ωe′|が所要時間Tsの経過後における電気角速度ωeに近づくように、電気角速度ωeの位相を変更する。すなわち、位相変更後の電気角速度|ωe′|を実電気角速度201に近づけるように位相を変更するのではなく、所要時間Tsの経過後に取得されると予測される電気角速度ωeに近づくように、電気角速度ωeの位相を変更する。このように、電気角速度ωeの位相を変更することにより、電圧位相制御によって過変調状態で電動機9を制御するときに、特に適切に電動機9を制御できる。
また、本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法は、所要時間Tsに基づいて、電気角速度ωeの位相を進める。このため、検出した電気角速度ωe側から実電気角速度201を超えて、電気角速度ωeの位相を進める場合を含む。これにより、電圧位相制御によって過変調状態で電動機9を制御するときに、特に適切に電動機9を制御できる。
また、本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法は、回転数Nの絶対値が減少するときの回転数パラメータ(電気角速度ωe)の変更量(位相変更量ωecmp)を、回転数Nの絶対値が増加するときの回転数パラメータ(電気角速度ωe)の変更量(位相変更量ωecmp)よりも大きくする。これにより、電圧位相制御によって過変調状態で電動機9を制御するときに、特に適切に電動機9を制御できる。例えば、回転数Nの急変によって過電流が生じやすいのは減速時であるから、減速時に特化して位相変更処理を行うことで、特に効果的に過電流のリスクを低減できる。また、加速時には、位相変更を行わない本来の応答が維持され、瞬間的な電圧の変動等によって位相変更処理が行われることによって制御効率が低下することが防止される。
また、本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法は、具体的に、回転数パラメータ(電気角速度ωe)の時間変化(電気角加速度Ae)を算出し、回転数パラメータ(電気角速度ωe)の時間変化(電気角加速度Ae)を所定の閾値Ae0と比較する。そして、回転数パラメータ(電気角速度ωe)の時間変化(電気角加速度Ae)が閾値Ae0未満であるときの変更(位相変更処理)の変更量(位相変更量ωecmp)を、回転数パラメータ(電気角速度ωe)の時間変化(電気角加速度Ae)が閾値Ae0以上であるときの変更(位相変更処理)の変更量(位相変更量ωecmp)よりも小さくする。これにより、電圧位相制御によって過変調状態で電動機9を制御するときに、特に適切に電動機9を制御できる。例えば、電動機9に接続された車輪のスリップ等の急加減速時に限定して位相変更処理が行われるので、効果的に過電流のリスクを低減できる。また、緩加減速時には、位相変更処理を行わない場合の本来の応答が維持されるので、一時的な電圧過多による効率悪化のリスクや、検出した回転数Nが含むノイズが増幅され、電動機9に印加する電圧が振動的になることに起因した制御性悪化のリスクを低減できる。
本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法は、回転数パラメータ(電気角速度ωe)の時間変化(電気角加速度Ae)を算出し、回転数パラメータ(電気角速度ωe)の時間変化(電気角加速度Ae)を所定の閾値Ae0と比較し、回転数Nの時間変化(電気角加速度Ae)が閾値Ae0未満であるときには、回転数パラメータ(電気角速度ωe)の変更(位相変更処理)を実質的に中止する。これにより、上記と同様にして、電圧位相制御によって過変調状態で電動機9を制御するときに、特に適切に電動機9を制御できる。
また、本実施形態及び/または変形例の電動機9の制御方法は、所要時間Tsあたりの回転数パラメータ(電気角速度ωe)の変化量を超えない範囲内で、回転数パラメータ(電気角速度ωe)の変更(電気角速度ωeの位相変更)をする。これにより、過度の変更が防止され、かえって過電流のリスクが高まってしまうようなリスクを低減できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。

Claims (7)

  1. 電動機に供給すべき電圧の大きさを表す電圧ノルム指令値と、前記電圧の位相を表す電圧位相指令値と、に基づいて行う電圧位相制御によって前記電動機を制御する電動機の制御方法であって、
    前記電圧位相制御によって前記電動機に印加する電圧の最終指令値を、前記電動機の回転数に関連する回転数パラメータを用いて演算するための指令値演算モデルにしたがって演算するときに要する所要時間を取得し、
    前記回転数パラメータを検出し、
    前記回転数パラメータが前記所要時間の経過後における前記回転数パラメータに近づくように、前記所要時間に基づいて、検出された前記回転数パラメータの位相を進めることにより、前記回転数パラメータを変更し、
    前記指令値演算モデルにしたがって、変更後の前記回転数パラメータを用いて前記最終指令値を演算する、
    電動機の制御方法。
  2. 請求項1に記載の電動機の制御方法であって、
    前記回転数パラメータは電気角速度である、
    電動機の制御方法。
  3. 請求項1または2に記載の電動機の制御方法であって、
    前記回転数の絶対値が減少するときの前記回転数パラメータの変更量を、前記回転数の絶対値が増加するときの前記回転数パラメータの変更量よりも大きくする、
    電動機の制御方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記回転数パラメータの時間変化を算出し、
    前記回転数パラメータの時間変化を所定の閾値と比較し、
    前記回転数パラメータの時間変化が前記閾値未満であるときの前記回転数パラメータの変更量を、前記回転数パラメータの時間変化が前記閾値以上であるときの前記回転数パラメータの変更量よりも小さくする、
    電動機の制御方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記回転数パラメータの時間変化を算出し、
    前記回転数パラメータの時間変化を所定の閾値と比較し、
    前記回転数パラメータの時間変化が前記閾値未満であるときには、前記回転数パラメータの変更を中止する、
    電動機の制御方法。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記所要時間あたりの前記回転数パラメータの変化量を超えない範囲内で、前記回転数パラメータの変更をする、
    電動機の制御方法。
  7. 電動機と、前記電動機に供給すべき電圧の大きさを表す電圧ノルム指令値と、前記電圧の位相を表す電圧位相指令値と、に基づいて行う電圧位相制御によって前記電動機を制御するコントローラと、を備える電動機システムであって、
    前記コントローラが、
    前記電圧位相制御によって前記電動機に印加する電圧の最終指令値を、前記電動機の回転数に関連する回転数パラメータを用いて演算するための指令値演算モデルにしたがって演算するときに要する所要時間を取得し、
    前記回転数パラメータを検出し、
    前記回転数パラメータが前記所要時間の経過後における前記回転数パラメータに近づくように、前記所要時間に基づいて、検出された前記回転数パラメータの位相を進めることにより、前記回転数パラメータを変更し、
    前記指令値演算モデルにしたがって、前記変更後の前記回転数パラメータを用いて前記最終指令値を演算する、
    ように構成されている電動機システム。
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