JP2022039839A - 電動機の制御方法及び電動機システム - Google Patents

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Abstract

【課題】過変調状態で電動機の制御を行う際に、インバータから電動機への出力電力の波形の振動を抑制できる電動機の制御方法、及び、電動機システムを提供する。【解決手段】電動機の制御方法は、インバータ6から電動機9への出力電力の波形をパルス幅変調によって制御する電動機の制御方法であって、パルス幅変調の変調率Mを1よりも大きくした過変調状態で電動機9を制御し、過変調状態において変調率Mを変更するときに、変調率Mの変化率または変調率Mに相関のある状態量の変化率を、予め定められた許容変化率ΔM以下に制限する。【選択図】図8

Description

本発明は、電動機の制御方法及び電動機システムに関する。
近年の電動機は、パルス幅変調によってその動作が制御される。そして、パルス幅変調による電動機の制御モードとして、電流ベクトル制御と電圧位相制御が知られている。電流ベクトル制御は、電動機に対して供給する電流に関するベクトルを制御する制御モードである。電圧位相制御は、電動機の各相の間に印加する電圧(いわゆる相間電圧)の位相を制御する制御モードである。電動機の制御においては、例えば電動機の運転状態に応じて、電流ベクトル制御と電圧位相制御のうちいずれか選択的に実行される。
特許文献1には、電流ベクトル制御と電圧位相制御をシームレスに切り替える電動機の制御方法が記載されている。具体的には、特許文献1は、電流ベクトル制御と電圧位相制御をシームレスに切り替えるために、電圧位相制御に、電動機の磁束状態量に基づいたフィードバック制御を導入することが開示されている。また、特許文献1に記載された電圧位相制御は、過変調状態で制御される。過変調状態は、パルス幅変調の変調率を1よりも大きくした制御状態である。
国際公開第2019/106727号
パルス幅変調では、変調率が1以下であれば、インバータから電動機への出力電力の波形(以下、出力波形という)は擬似的に正弦波となる。一方、過変調状態では、変調率が大きくなると、出力電力の波形が実質的に矩形波になる。すなわち、過変調状態において変調率を減少させると、出力電力の波形が正弦波となる状態(以下、非過変調状態という)に漸近する。また、過変調状態において変調率を増加させると、出力波形が矩形波となる状態(以下、矩形波状態)に漸近する。
しかし、過変調状態において変調率を変更すると、出力電力の波形が振動する場合がある。出力波形が振動すると、電動機の制御性が低下してしまう。また、出力電力の波形が振動すると、電動機の音振性能が低下してしまう場合がある。
例えば、特許文献1に記載された電動機の制御方法では、過変調状態での電圧位相制御において変調率が変更される。そして、変調率が増加されると、電動機の制御状態は、過変調状態の中でも矩形波状態に近い状態に遷移する。逆に、変調率が減少されると、電動機の制御状態は、過変調制御の中でも非過変調状態に近い状態に遷移する。このため、過変調状態における変調率の変更の仕方によっては、出力波形が振動してしまうことがある。
本発明は、過変調状態で電動機の制御を行う際に、インバータから電動機への出力電力の波形である出力波形の振動を抑制できる電動機の制御方法、及び、電動機システムを提供することを目的とする。
本発明のある態様による電動機の制御方法は、インバータから電動機への出力電力の波形をパルス幅変調によって制御する電動機の制御方法である。そして、その電動機の制御方法では、パルス幅変調の変調率を1よりも大きくした過変調状態で電動機を制御し、過変調状態において変調率を変更するときに、変調率の変化率または変調率に相関のある状態量の変化率を、予め定められた許容変化率以下に制限する。
本発明によれば、過変調状態で電動機の制御を行う際に、インバータから電動機への出力電力の波形である出力波形の振動を抑制できる電動機の制御方法、及び、電動機システムを提供することができる。
図1は、第1実施形態における電動機システムの構成を示すブロック図である。 図2は、電流ベクトル制御部のうち、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値を生成するための部分構成を示すブロック図である。 図3は、電圧位相制御部の構成を示すブロック図である。 図4は、磁束フィードバック制御部のPI制御部の構成を示すブロック図である。 図5は、電動機の中高速回転領域において、電動機に生じる磁束ノルムと電圧ノルムの関係を示す説明図である。 図6は、磁束フィードバック制御部のPI制御部がアンチワインドアップのために行う初期化処理の構成を示すブロック図である。 図7は、電圧位相制御における電圧位相範囲の設定を示すためのグラフである。 図8は、最終電圧ノルム演算部の構成を示すブロック図である。 図9は、切替判定部の構成を示すブロック図である。 図10は、制御モード判定部による制御モードの判定方法を示す説明図である。 図11は、出力制御器の構成を示すブロック図である。 図12は、第1実施形態における電動機制御のフローチャートである。 図13は、電圧位相制御のフローチャートである。 図14は、(A)回転数、(B)最終変調率指令値、(C)比較例のd軸電流、(D)本実施形態のd軸電流、及び、(E)各d軸電流の包絡線を示すグラフである。 図15は、変形例における電圧位相制御部の構成を示すブロック図である。 図16は、変形例における最終電圧ノルム演算部の構成を示すブロック図である。 図17は、第2実施形態における最終電圧ノルム演算部の構成を示すブロック図である。 図18は、第3実施形態における電動機システムの構成を示すブロック図である。 図19は、電源電圧制御部の構成を示すブロック図である。 図20は、第3実施形態における電動機制御のフローチャートである。 図21は、第4実施形態における電動機システムの構成を示すブロック図である。 図22は、最終電圧指令値演算部の構成を示すブロック図である。 図23は、第4実施形態における電動機制御のフローチャートである。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における電動機システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、電動機システム100は、制御対象である電動機9と、電動機9を制御する回路類と、電動機9の制御に必要なパラメータを検出する検出器と、バッテリ15と、を含む。具体的には、電動機システム100は、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、出力制御器3、変換器4、パルス幅変調信号生成器5、及び、インバータ6を備える。さらに、電動機システム100は、バッテリ電圧検出器7、電流検出器8、回転子検出器10、回転数演算器11、変換器12、及び、制御モード切替判定部13等を備える。
電動機システム100を構成する各部のうち、電動機9を除く部分は、電動機9を制御するように構成された電動機9の制御装置である。バッテリ電圧検出器7、電流検出器8、及び、回転子検出器10は、電動機9の制御に必要なパラメータを検出する検出器である。電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、制御モード切替判定部13は、コントローラ(制御部)を構成する。コントローラは、例えば、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等から構成されるコンピュータである。コントローラは、電動機9の制御モードを決定し、必要に応じて電動機9の制御モードを変更し、決定等した制御モードで電動機9の動作を制御するように構成されている。また、コントローラは、これらを実現するための処理を所定の演算周期ごとに実行するようにプログラムされている。また、上記のコントローラ、出力制御器3、変換器4、パルス幅変調信号生成器5、インバータ6、回転数演算器11、及び、変換器12は、電動機システム100を制御する回路類である。
なお、本実施形態の電動機9は、複数相の巻線を備えるIPM(Interior Permanent Magnet)型の同期電動機である。本実施形態においては、電動機9の巻線はU相、V相、及び、W相の3相である。すなわち、電動機9は三相同期電動機である。また、電動機9は、パルス幅変調制御によって駆動される。なお、電動機システム100は例えば自動車等に組み込まれる。そして、電動機システム100が組み込まれた自動車において、電動機9はその自動車の駆動力源及び/または発電機として機能し得る。
電流ベクトル制御部1は、電流ベクトル制御を実行する。電流ベクトル制御は、電動機9の制御モードの1つである。電流ベクトル制御では、電動機9に対して供給する電流に関するベクトル(以下、電流ベクトルという)が制御される。電流ベクトル制御では、電流ベクトルは、電動機9に生じさせるトルクがその目標値(以下、トルク目標値T*という)に収束するように調整される。
より具体的には、電流ベクトル制御部1は、トルク目標値T*、電動機9の回転数N[rpm]、バッテリ15の直流電圧Vdc、の入力を受ける。また、電流ベクトル制御部1には、電動機9のd軸電流id及びq軸電流iqがフィードバックされる。そして、電流ベクトル制御部1は、これらの入力に基づいて、d軸電圧指令値Vdi_fin *とq軸電圧指令値Vqi_fin *を演算する。電流ベクトル制御のd軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *は出力制御器3に入力される。電流ベクトル制御では、電動機9がこのd軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *に基づいて制御されることによって、電動機9が生じさせるトルクはトルク目標値T*に収束する。
なお、d軸電圧指令値Vdi_fin *は、電流ベクトル制御におけるd軸の電圧に対する指令値である。同様に、q軸電圧指令値Vqi_fin *は、電流ベクトル制御におけるq軸の電圧に対する指令値である。
また、電流ベクトル制御部1は、d軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *の生成過程において、d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *を演算する。d軸電流目標値id *は、電流ベクトルにおけるd軸成分の目標値である。同様に、q軸電流目標値iq *は、電流ベクトルにおけるq軸成分の目標値である。d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *は電圧位相制御部2に出力される。
この他、電流ベクトル制御部1の具体的な構成、及び、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *とq軸電圧指令値Vqi_fin *の算出方法については、詳細を後述する。
電圧位相制御部2は、電圧位相制御を実行する。電圧位相制御は、電動機9の制御モードの1つである。電圧位相制御では、電動機9の各相間に供給される電圧(以下、相間電圧という)の位相が制御される。電圧位相制御では、相間電圧の位相は、電動機9に生じさせるトルクがトルク目標値T*に収束するように調整される。
より具体的には、電圧位相制御部2は、トルク目標値T*、電動機9の回転数N、バッテリ15の直流電圧Vdc、d軸電流目標値id *、q軸電流目標値iq *の入力を受ける。また、電圧位相制御部2には、d軸電流id及びq軸電流iqがフィードバックされる。そして、電圧位相制御部2は、これらの入力に基づいてd軸電圧指令値Vdv_fin *とq軸電圧指令値Vqv_fin *を出力制御器3に出力する。
なお、d軸電圧指令値Vdv_fin *は、電圧位相制御におけるd軸の電圧に対する指令値である。同様に、q軸電圧指令値Vqv_fin *は、電圧位相制御におけるq軸の電圧に対する指令値である。電圧位相制御部2の具体的な構成、及び、電圧位相制御におけるd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *の算出方法については、詳細を後述する。
出力制御器3には、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *と、電圧位相制御におけるd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *と、が入力される。また、出力制御器3には、制御モード切替判定部13から判定結果として、制御モード信号Smが入力される。そして、出力制御器3は、制御モード信号Smに基づいて、実行する電動機9の制御モードとして、電流ベクトル制御と電圧位相制御のいずれか一方を選択する。出力制御器3は、選択された制御モードのd軸電圧指令値及びq軸電圧指令値を、それぞれd軸最終電圧指令値Vd_fin *及びq軸最終電圧指令値Vq_fin *として変換器4に出力する。d軸最終電圧指令値Vd_fin *は、電動機のd軸方向に印加する電圧の最終的な指令値である。同様に、q軸最終電圧指令値Vq_fin *は、電動機9のq軸方向に印加する電圧の最終的な指令値である。出力制御器3の構成及び制御モード信号Smの生成については、詳細を後述する。
変換器4は、dq軸座標系における電圧指令値を、UVW3相の座標系における電圧指令値に変換する。すなわち、変換器4は、d軸最終電圧指令値Vd_fin *及びq軸最終電圧指令値Vq_fin *を、三相電圧指令値(Vu *,Vv *,Vw *)に変換する。三相電圧指令値は、UVW各相の電圧を定める指令値である。変換器4は、この座標変換を下記の式(1)に示す通り、電動機9の電気角θに基づいて行う。また、変換器4は、三相電圧指令値をパルス幅変調信号生成器5に出力する。
Figure 2022039839000002
パルス幅変調信号生成器5は、三相電圧指令値とバッテリ15の直流電圧Vdcに基づいて、パルス幅変調信号(Duu *,Dul *,Dvu *,Dvl *,Dwu *,Dwl *)を生成する。パルス幅変調信号(以下、PWM信号という)は、インバータ6が有するパワー素子の駆動信号である。このため、パルス幅変調信号はインバータ6に入力される。
インバータ6は、PWM信号に基づいて、バッテリ15の直流電圧Vdcを、電動機9を駆動するための三相交流電圧(Vu,Vv,Vw)に変換する。三相交流電圧は、電動機9に印加される。これにより、電動機9の各相に電流が流れる。U相、V相、及び、W相にそれぞれ流れる電流は、交流電流iu,iv,iw(以下、三相交流電流という)である。その結果、電動機9は、PWM信号に基づいて駆動され、トルクを発生する。
バッテリ電圧検出器7は、インバータ6に接続されたバッテリ15の電圧を検出する。本実施形態においては、バッテリ電圧検出器7は、バッテリ15の直流電圧Vdcを検出する。検出された直流電圧Vdcは、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、制御モード切替判定部13に出力される。
電流検出器8は、インバータ6から電動機9に供給される電流を検出する。本実施形態においては、電流検出器8は、三相交流電流(iu,iv,iw)のうち、少なくとも2相の交流電流を検出する。本実施形態では、電流検出器8は、U相の交流電流iu及びV相の交流電流ivを検出する。三相交流電流の検出値は、変換器12に入力される。
回転子検出器10は、電動機9の電気角θを検出する。検出された電気角θは、変換器4及び変換器12にそれぞれ入力される。また、電気角θは、回転数演算器11に入力される。
回転数演算器11は、電気角θの単位時間ΔtNaveにおける変化量に基づいて、電動機9の回転数N(機械角回転数)及び電気角速度ωreを演算する。単位時間ΔtNaveは、回転数演算器11の演算周期(動作周期)であり、予め定められる所定値である。回転数Nは、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、制御モード切替判定部13に入力される。
変換器12は、回転子検出器10が検出した電気角θを用いて、電流検出器8が検出した三相交流電流を、dq軸座標系における電流に変換する。本実施形態においては、電流検出器8はU相の交流電流iu及びV相の交流電流ivを検出するので、変換器12は、下記の式(2)にしたがって、上記座標変換をする。
Figure 2022039839000003
制御モード切替判定部13は、電動機9の運転状態(いわゆる動作点または運転点)に応じて、その運転状態に適した電動機9の制御モードを判定する。電動機9の運転状態を示すパラメータは、例えば、d軸電流id、d軸電流目標値id *、d軸最終電圧指令値Vd_fin *、q軸電流iq、q軸電流目標値iq *、q軸最終電圧指令値Vq_fin *等である。また、バッテリ15の直流電圧Vdc、回転数N、及び、電気角速度ωre等も、電動機9の運転状態を示すパラメータである。本実施形態においては、制御モード切替判定部13は、d軸最終電圧指令値Vd_fin *、q軸最終電圧指令値Vq_fin *、d軸電流id、回転数N、及び、直流電圧Vdcに基づいて、電動機9の制御モードを判定する。制御モード切替判定部13は、制御モードの判定結果である制御モード信号Smを、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、出力制御器3に出力する。
上記のように、電動機システム100は、パルス幅変調制御により、電動機9を駆動するシステムである。また、電動機システム100は、電動機9の制御モードを、電動機9の運転状態に応じて、電流ベクトル制御と電圧位相制御とで適宜切り替える。
以下においては、電動機システム100の各部の具体的な構成等について詳述する。
[電流ベクトル制御]
図2は、電流ベクトル制御部1のうち、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *を生成するための部分構成(d軸電圧指令値演算部)を示すブロック図である。図2に示すように、電流ベクトル制御部1は、非干渉電圧演算部21、LPF(ローパスフィルタ)22、電流目標値演算部23、減算器24、PI制御部25、及び、加算部26を備える。
非干渉電圧演算部21は、トルク目標値T*、回転数N、バッテリ15の直流電圧Vdcに基づいて、非干渉電圧Vd_dcpl *を演算する。非干渉電圧Vd_dcpl *はLPF22に出力される。非干渉電圧Vd_dcpl *は、d軸及びq軸の間で相互に干渉する電圧(以下、干渉電圧という)を打ち消すための電圧値である。
非干渉電圧演算部21には、例えば非干渉テーブル(図示しない)が記憶されている。非干渉テーブルは、電動機9の運転状態ごとに、非干渉電圧Vd_dcpl *を予め対応付けたテーブルである。非干渉テーブルにおいては、電動機9の運転状態は、例えば、トルク目標値T*、回転数N、及びバッテリ15の直流電圧Vdcによって特定される。このように非干渉電圧演算部21が非干渉テーブルを有する場合、非干渉電圧演算部21は、トルク目標値T*、回転数N、バッテリ15の直流電圧Vdcを取得する。そして、非干渉電圧演算部21は、非干渉テーブルを参照することにより、電動機9の運転状態に応じた非干渉電圧Vd_dcpl *を演算(取得)する。なお、非干渉テーブルに格納された非干渉電圧Vd_dcpl *は、電動機9が最大効率でトルク目標値T*によって指定されるトルクを発生する場合のd軸電流目標値id *に応じて予め定められる。また、非干渉電圧Vd_dcpl *は、実験等に基づいて予め定められる。
LPF22は、干渉電圧が電流量に依存することを考慮したローパスフィルタである。LPF22の時定数は、目標とするd軸電流の応答性が確保されるように設定される。LPF22で処理された非干渉電圧Vd_dcpl_fltは、加算部26に入力される。
電流目標値演算部23は、トルク目標値T*、回転数N、バッテリ15の直流電圧Vdcに基づいて、d軸電流目標値id *を演算する。d軸電流目標値id *は、減算器24に出力される。また、d軸電流目標値id *は、電圧位相制御部2に出力される。
電流目標値演算部23には、例えば電流テーブル(図示しない)が記憶されている。電流テーブルは、電動機9の運転状態(動作点)ごとに、d軸電流目標値id *を予め対応付けたテーブルである。電流テーブルにおいては、電動機9の運転状態は、例えば、トルク目標値T*、回転数N、及びバッテリ15の直流電圧Vdcによって特定される。このように、電流目標値演算部23が電流テーブルを有する場合、電流目標値演算部23は、トルク目標値T*、回転数N、及びバッテリ15の直流電圧Vdcを取得する。そして、電流目標値演算部23は、電流テーブルを参照することにより、電動機9の運転状態に応じたd軸電流目標値id *を演算(取得)する。なお、電流テーブルに格納されたd軸電流目標値id *は、電動機9が最大効率でトルク目標値T*等によって指定されるトルクを発生するための値であり、実験等によって予め定められる。
減算器24は、d軸電流偏差を演算する。d軸電流偏差は、d軸電流の目標値と実際の検出値との偏差である。本実施形態においては、減算器24は、d軸電流目標値id *から、検出値であるd軸電流idを減算することにより、d軸電流偏差(id *-id)を演算する。d軸電流偏差は、PI制御部25に入力される。
PI制御部25は、d軸電流偏差をフィードバックするPI(Proportional-Integral)制御により、d軸用の電流フィードバック電圧指令値Vdi′を演算する。本実施形態では、PI制御部25は、下記の式(3)にしたがって電流フィードバック電圧指令値Vdi′を演算する。式(3)における「Kdp」はd軸用の比例ゲインである。また、式(3)における「Kdi」はd軸用の積分ゲインである。これらのPI制御のゲインは、実験等に基づいて予め定められる。d軸用の電流フィードバック電圧指令値Vdi′は加算部26に入力される。
Figure 2022039839000004
加算部26は、下記の式(4)に示すように、LPF22で処理された非干渉電圧Vd_dcpl_fltと電流フィードバック電圧指令値Vdi′を加算することにより、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *を演算する。
Figure 2022039839000005
以上のように、電流ベクトル制御部1は、d軸電流idをフィードバックすることにより、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *を演算する。この電流ベクトル制御は、電動機9に供給する電力の電圧ノルムが飽和せず、要求に応じて電圧ノルムを変更し得る状況における電動機9の制御に好適である。
なお、ここでは電流ベクトル制御部1の具体的構成のうち、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *を生成するd軸電圧指令値演算部の部分について説明した。しかし、電流ベクトル制御におけるq軸電圧指令値Vqi_fin *を生成するための部分は上記のd軸電圧指令値演算部と同様に構成される。すなわち、電流ベクトル制御部1は、電流ベクトル制御におけるq軸電圧指令値Vqi_fin *を生成するための構成として、q軸電圧指令値演算部を備える。q軸電圧指令値演算部は、非干渉電圧演算部、LPF、電流目標値演算部、減算部、PI制御部、及び、加算部を備える。そして、q軸電圧指令値演算部の各部は、q軸用である点を除き、上記のd軸電圧指令値演算部と同じ構成である。
[電圧位相制御]
図3は、電圧位相制御部2の構成を示すブロック図である。電圧位相制御部2は、(a)電圧ノルム決定部と、(b)電圧位相決定部と、(c)電圧指令値算出部と、を含む。
(a)電圧ノルム決定部は、電圧位相制御において電動機9に供給する電力の電圧ノルムを決定するように構成されている。電圧ノルム決定部は、具体的に、図3に示す電圧ノルム指令値生成部31、磁束フィードバック制御部、電圧ノルム合成部37、電圧ノルム制限部38、及び、最終電圧ノルム演算部39によって構成される。磁束フィードバック制御部は、具体的に、図3に示す参照電流算出部32、磁束演算部33、磁束推定部34、磁束偏差演算部35、及び、PI制御部36によって構成される。
(b)電圧位相決定部は、電圧位相制御において電動機9に印加する電圧の位相を決定するように構成されている。電圧位相決定部は、具体的に、図3に示す電圧位相指令値生成部41、トルクフィードバック制御部、位相合成部46、及び、位相制限部47によって構成される。トルクフィードバック制御部は、具体的に、図3に示す参照トルク生成部42、トルク推定部43、トルク偏差演算部44、及び、PI制御部45によって構成される。
(c)電圧指令値算出部は、電圧位相制御におけるd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *を算出する。これらは、電圧ノルム決定部によって決定された電圧ノルムと、電圧位相決定部によって決定された電圧の位相と、に基づいて算出される。具体的には、電圧指令値算出部は、図3に示すベクトル変換部48によって構成される。
(a-1)電圧ノルム指令値生成部
電圧ノルム指令値生成部31は、フィードフォワード制御により、フィードフォワード電圧ノルム指令値(以下、FF電圧ノルム指令値Va_ffという)を生成する。FF電圧ノルム指令値Va_ffは、電圧位相制御において電動機9に印加する電圧の大きさを定める指令値である。また、FF電圧ノルム指令値Va_ffは、電動機9の運転状態によって決定される電圧ノルムの基本的な目標値である。本実施形態では、電圧ノルム指令値生成部31が生成するFF電圧ノルム指令値Va_ffは、電圧位相制御における電圧ノルムの基本的な目標値(いわゆる基本値)である。したがって、電動機9に実際に印加される電圧のノルムは、電圧ノルム合成部37、電圧ノルム制限部38、及び、最終電圧ノルム演算部39によって補正または制限等を受ける。
FF電圧ノルム指令値Va_ffは、PWM制御の変調率Mを指定する指令値(以下、変調率指令値M*という)に相当する。したがって、電圧ノルム指令値生成部31が生成するFF電圧ノルム指令値Va_ffは、変調率Mの基本的な目標値(基準変調率)に相当する。変調率指令値M*の算出については、詳細を後述する。本実施形態において、PWM制御の変調率Mは、バッテリ15の直流電圧Vdcに対する基本波成分の振幅「A」の比率(|A/Vdc|)である。基本波成分とは、電動機9に印加しようとする相間電圧の波形が含む周波数成分のうち、基本周波数の成分である。
変調率Mが1以下である非過変調状態(通常のパルス幅変調状態)では、相関電圧の基本波成分は疑似的な正弦波となる。なお、変調率Mの下限は0である。
一方、変調率Mが1を超える過変調状態では、基本波成分の最大値及び最小値の周りでインバータ6のパワー素子がスイッチングしなくなる。このため、過変調状態では、相関電圧の波形は、基本波成分の最大値及び最小値の周りがカットされた波形となる。また、過変調状態においては、相関電圧の波形は高調波成分を含むようになる。そして、過変調状態において、変調率Mが例えば約1.1以上になると、相関電圧の波形は、実質的に矩形波となる。したがって、過変調状態は、極限的に、相関電圧の波形が実質的に矩形波となる矩形波状態を含む。より詳細には、過変調状態は、変調率Mの大きさに応じて、矩形波状態と非矩形波状態の2つの状態を含む。非矩形波状態は、変調率Mが1より大きく、かつ、約1.1未満の状態である。矩形波状態とは、変調率Mが約1.1以上の状態である。すなわち、過変調状態には、相対的に変調率Mが小さい非矩形波状態と、相対的に変調率Mが大きい矩形波状態と、が含まれる。
電圧ノルム指令値生成部31は、下記の式(5)に示すように、バッテリ15の直流電圧Vdcと変調率指令値M*に応じてFF電圧ノルム指令値Va_ffを生成(演算)する。このため、電圧ノルム指令値生成部31は、電動機9の運転状態に応じて、非過変調状態、過変調状態、及び、矩形波状態の各状態のいずれかに相当するFF電圧ノルム指令値Va_ffを生成する。FF電圧ノルム指令値Va_ffは、電圧ノルム合成部37に入力される。
Figure 2022039839000006
(a-2)磁束フィードバック制御部
磁束フィードバック制御部は、前述の通り、参照電流算出部32、磁束演算部33、磁束推定部34、磁束偏差演算部35、及び、PI制御部36によって構成される。また、磁束フィードバック制御部は、全体として、電動機9に供給される電流に基づいて、電動機9に生じる磁束を表す磁束状態量を演算する。電動機9に生じる磁束とは、電動機9が備える永久磁石の磁束(以下、磁石磁束という)Φaと、電動機9の巻線(コイル)に供給される電流によって生じる磁束(以下、巻線磁束という)と、を合成した合成磁束である。磁束状態量とは、例えば、合成磁束を表すベクトルのノルム(以下、磁束ノルムという)の目標応答を表す参照磁束ノルムφ0_ref、磁束ノルムの推定値を表す磁束ノルム推定値φ0_est、及び、これらの偏差である磁束偏差φ0_errである。また、磁束フィードバック制御部は、磁束状態量に応じて、FF電圧ノルム指令値Va_ffにフィードバックするFB電圧ノルム指令値Va_fbを算出する。
参照電流算出部32は、d軸電流目標値id *を用いて、d軸電流の目標応答を表すd軸参照電流id_ref *を算出する。また、参照電流算出部32は、q軸電流目標値iq *からq軸電流の目標応答を表すq軸参照電流iq_ref *を算出する。d軸参照電流id_ref *及びq軸参照電流iq_ref *は、磁束演算部33に入力される。なお、参照電流算出部32は、例えば、LPF22(図2参照)と同じ時定数を有するローパスフィルタ(LPF)である。
磁束演算部33は、d軸参照電流id_ref *及びq軸参照電流iq_ref *に基づいて参照磁束ノルムφ0_refを演算する。参照磁束ノルムφ0_refは、電圧位相制御における磁束ノルムの目標値を表す。磁束演算部33は、下記の式(6)にしたがって、d軸のインダクタンスLd、q軸のインダクタンスLq、磁石磁束Φaを用いて、参照磁束ノルムφ0_refを算出する。参照磁束ノルムφ0_refは、磁束偏差演算部35に入力される。
Figure 2022039839000007
なお、磁石磁束Φa、d軸のインダクタンスLd、及び、q軸のインダクタンスLqは定数である。d軸参照電流id_ref *及びq軸参照電流iq_ref *は変数である。但し、磁石磁束Φa、d軸のインダクタンスLd、及び、q軸のインダクタンスLqの各定数は、電動機9の磁石温度、d軸電流id、q軸電流iq、d軸電流目標値id *、及び/または、q軸電流目標値iq *によって変化する場合がある。このため、磁束演算部33は、各定数の一部または全部を、磁石温度等によって適宜変更することができる。この場合、磁束演算部33は、磁石温度等に応じて上記各定数を定めるマップを参照し、磁石温度等に応じた適切な定数を使用する。このマップは、実験やシミュレーション等によって予め定められる。
磁束推定部34は、検出値であるd軸電流id及びq軸電流iqに基づいて磁束ノルム推定値φ0_estを演算する。磁束ノルム推定値φ0_estは、電動機9における実際の磁束ノルムの推定値である。磁束ノルム推定値φ0_estの演算方法は、変数としてd軸電流id及びq軸電流iqを用いること以外は、参照磁束ノルムφ0_refの演算方法と同じである。すなわち、磁束推定部34は、下記の式(7)にしたがって、磁束ノルム推定値φ0_estを演算する。磁束ノルム推定値φ0_estは、磁束偏差演算部35に入力される。
Figure 2022039839000008
磁束偏差演算部35は、磁束偏差φ0_errを演算する。本実施形態においては、磁束偏差演算部35は、参照磁束ノルムφ0_refから磁束ノルム推定値φ0_estを減算することにより、磁束偏差φ0_errを算出する。磁束偏差φ0_errは、PI制御部36に入力される。
PI制御部36は、PI制御により、フィードバック電圧ノルム指令値(以下、FB電圧ノルム指令値という)Va_fbを算出する。FB電圧ノルム指令値Va_fbは、FF電圧ノルム指令値Va_ffにフィードバックするための電圧ノルム指令値である。具体的には、PI制御部36は、下記の式(8)にしたがって、電気角速度ωre及び磁束偏差φ0_errを用いてFB電圧ノルム指令値Va_fbを算出する。式(8)における「Kφp」は比例ゲインである。「Kφi」は積分ゲインである。これらのゲインは、実験またはシミュレーション等によって、予め定められる。また、電気角速度ωreは、回転数Nに応じて変動する可変ゲインとして機能する。FB電圧ノルム指令値Va_fbは、電圧ノルム合成部37に入力される。この磁束フィードバック制御部が有するPI制御部36の具体的な構成等については、詳細を後述する。
Figure 2022039839000009
(a-3)電圧ノルム合成部
電圧ノルム合成部37は、FB電圧ノルム指令値Va_fbをFF電圧ノルム指令値Va_ffにフィードバックすることにより、電圧ノルム指令値Va *を生成する。電圧ノルム指令値Va *は連続値である。本実施形態においては、電圧ノルム合成部37は、FB電圧ノルム指令値Va_fbをFF電圧ノルム指令値Va_ffに加算することにより、電圧ノルム指令値Va *を算出する。電圧ノルム指令値Va *は、磁束状態量(あるいは磁束状態量の算出元である電流量)に基づいて修正された電圧ノルムの目標値である。このように、電圧位相制御の電圧ノルム指令値(電圧ノルム指令値Va *)は、FB電圧ノルム指令値Va_fbのフィードバックによって、調整可能となっている。この結果、電圧位相制御の電圧ノルム指令値(電圧ノルム指令値Va *)は、磁束偏差φ0_errがゼロに近づくように制御される。
なお、磁束偏差φ0_errは、前述のように、参照磁束ノルムφ0_refから磁束ノルム推定値φ0_estを減算した値である。このため、例えば、回転数Nが高い状態(電動機9が中回転から高回転である状態)から急ブレーキ等の高負荷によって回転数Nが急減すると、参照磁束ノルムφ0_refに対して磁束ノルム推定値φ0_estが急峻に大きくなる。そして、磁束偏差φ0_errは負値となり、FB電圧ノルム指令値Va_fbも負値となる。この場合、電圧ノルム指令値Va *は、当初の目標値であるFF電圧ノルム指令値Va_ffよりも小さくなる。その結果、電圧ノルム指令値Va *は、電流ベクトル制御において電動機9に印加する電力の電圧ノルムに近い値になる。電流ベクトル制御を行っていてるときに、急加速等によって電動機9に印加する電力の電圧ノルムが急増する場合等においても同様であり、電圧ノルム指令値Va *は、電流ベクトル制御において電動機9に印加する電力の電圧ノルムに近い値になる。すなわち、上記の磁束状態量に基づくフィードバック制御は、電圧位相制御と電流ベクトル制御の電圧ノルムのギャップが低減する作用がある。したがって、上記の磁束状態量に基づくフィードバック制御によって、電圧位相制御と電流ベクトル制御の切り替えが実質的にシームレスに行われるようなる。
(a-4)電圧ノルム制限部
電圧ノルム制限部38は、電圧ノルム指令値Va *を所定の下限値と上限値Va_maxの間の値に制限する。下限値は、例えば0である。上限値Va_maxは、下記の式(9)にしたがって算出される。式(9)における「Mmax *」は、変調率指令値M*の上限値である。上限値Mmax *は、例えば、実質的に矩形波状態となる1.1である。また、式(9)に示す通り、上限値Va_maxは、バッテリ15の直流電圧Vdcが低下するほど小さくなるように設定される。また、電圧ノルム指令値Va *が下限値または上限値Va_maxに制限されているときには、電圧ノルム制限部38はその旨の通知信号をPI制御部36に出力する。
Figure 2022039839000010
(a-5)最終電圧ノルム演算部
最終電圧ノルム演算部39は、バッテリ15の直流電圧Vdcと電圧ノルム指令値Va *を用いて、最終電圧ノルム指令値Va_fin *を演算する。最終電圧ノルム指令値Va_fin *は、電圧位相制御における最終的な電圧ノルムの指令値である。また、最終電圧ノルム演算部39は、最終電圧ノルム指令値Va_fin *の算出過程で変調率指令値M*を算出し、かつ、変調率指令値M*の変化率を制限する。そして、最終電圧ノルム指令値Va_fin *は、変化率を制限された変調率指令値M*(最終変調率指令値Mfin *)に基づいて算出される。また、最終電圧ノルム指令値Va_fin *は、ベクトル変換部48に入力され、電圧位相制御のd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *の算出に使用される。最終電圧ノルム演算部39の具体的な構成等については詳細を後述する。
(b-1)電圧位相指令値生成部
電圧位相指令値生成部41は、フィードフォーフォワード制御により、電動機9の運転状態に応じて、フィードフォワード電圧位相指令値(以下、FF電圧位相指令値という)αffを生成する。FF電圧位相指令値αffは、電動機9に供給すべき電圧の位相を表す。また、FF電圧位相指令値αffは、電動機9の運転状態によって決定される電圧位相の基本的な目標値である。電圧位相指令値生成部41は、FF電圧位相指令値αffを生成するためのルックアップテーブルである電圧位相テーブル41aを備える。電圧位相テーブル41aは、電動機9の運転状態(動作点)ごとに、FF電圧位相指令値αffを対応付けて記憶したルックアップテーブルである。電圧位相テーブル41aに格納されたFF電圧位相指令値αffは、例えば、実験等において、電動機9の運転状態ごとにノミナル状態で計測された電圧位相の値である。本実施形態においては、電圧位相テーブル41aは、FF電圧ノルム指令値Va_ff、回転数N、及び、トルク目標値T*と、FF電圧位相指令値αffと、を対応付けて記憶している。このため、電圧位相指令値生成部41は、これらのパラメータを取得すると、電圧位相テーブル41aを参照することにより、これらのパラメータの組み合わせに対応するFF電圧位相指令値αffを生成する。生成されたFF電圧位相指令値αffは、位相合成部46に入力される。
(b-2)トルクフィードバック制御部
トルクフィードバック制御部は、前述の通り、参照トルク生成部42、トルク推定部43、トルク偏差演算部44、及び、PI制御部45によって構成される。トルクフィードバック制御部は、全体として、フィードバック電圧位相指令値(以下、FB電圧位相指令値という)αfbを算出する。FB電圧位相指令値αfbは、FF電圧位相指令値αffにフィードバックするための電圧位相指令値である。
参照トルク生成部42は、トルク目標値T*を用いて、電動機9でのトルクの目標応答を表す参照トルクTrefを生成する。参照トルク生成部42は、例えば、LPF22(図2参照)と同じ時定数を有するローパスフィルタである。生成された参照トルクTrefは、トルク偏差演算部44に入力される。
トルク推定部43は、トルク推定値Testを算出する。トルク推定値Testは、特定の運転状態にある電動機9のトルクの推定値である。トルク推定部43は、トルク推定値Testを推定するためのトルクテーブル(図示しない)を備える。トルクテーブルは、電動機9の運転状態(動作点)ごとに、トルク推定値Testを対応付けて記憶するルックアップテーブルである。本実施形態においては、トルクテーブルは、d軸電流id及びq軸電流iqと、トルク推定値Testと、を対応付けて記憶している。このため、トルク推定部43は、これらのパラメータを取得すると、トルクテーブルを参照して、これらのパラメータの組み合わせに対応するトルク推定値Testを算出する。トルク推定値Testは、トルク偏差演算部44に入力される。
トルク偏差演算部44は、トルク偏差Terrを演算する。トルク偏差Terrは、参照トルクTrefとトルク推定値Testの偏差である。本実施形態においては、トルク偏差演算部44は、参照トルクTrefからトルク推定値Testを減算することにより、トルク偏差Terrを算出する。トルク偏差Terrは、PI制御部45に入力される。
PI制御部45は、トルク偏差Terr(=Tref-Test)を用いて、FB電圧位相指令値αfbを算出する。具体的には、PI制御部45は、下記の式(10)に従って、FB電圧位相指令値αfbを算出する。式(10)における「Kαp」は比例ゲインである。また、「Kαi」は積分ゲインである。これらのゲインは、実験やシミュレーション等によって予め定められる。FB電圧位相指令値αfbは、位相合成部46に入力される。
Figure 2022039839000011
(b-3)位相合成部
位相合成部46は、FB電圧位相指令値αfbをFF電圧位相指令値αffにフィードバックすることにより、電圧位相指令値α*を生成する。本実施形態においては、位相合成部46は、FB電圧位相指令値αfbをFF電圧位相指令値αffに加算することにより、電圧位相指令値α*を生成する。電圧位相指令値α*は、トルク偏差Terr(あるいはトルク偏差Terrの算出に用いる電流量)に基づいて修正された電圧位相の目標値である。この修正は、トルク偏差Terrがゼロに収束する修正である。このように、位相合成部46によって生成された電圧位相指令値α*は、位相制限部47に入力される。
(b-4)位相制限部
位相制限部47は、所定の電圧位相範囲に電圧位相指令値α*を制限する。所定の電圧位相範囲とは、電圧位相に対する所定の下限値(以下、電圧位相下限値という)αminから、電圧位相に対する所定の上限値(以下、電圧位相上限値という)αmaxまでの範囲である。電圧位相下限値αmin及び電圧位相上限値αmaxの設定については、詳細を後述する。
(c-1)ベクトル変換部
ベクトル変換部48は、下記の式(11)にしたがって、最終電圧ノルム指令値Va_fin *及び電圧位相指令値α*を、d軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *に変換する。
Figure 2022039839000012
以上のように、電圧位相制御部2は、トルク偏差Terrがゼロに収束するように、電圧位相指令値α*を変更する。このため、電圧位相制御では、電動機9に供給する電力の電圧ノルムが飽和するような状況においても、要求に応じて電動機9のトルクを変更できる。特に、過変調状態やその極限である矩形波状態においても、電圧位相制御によれば電動機9のトルクは適切に制御され得る。また、上記の電圧位相制御では磁束偏差φ0_errをフィードバックして電圧ノルム指令値Va *を変更しているので、電圧位相制御は、電流ベクトル制御との切り替えがシームレスである。
[磁束フィードバック制御部が有するPI制御部の具体的構成]
図4は、磁束フィードバック制御部が有するPI制御部36の構成を示すブロック図である。図4に示すように、磁束フィードバック制御部のPI制御部36は、可変ゲイン演算部61、可変ゲイン乗算部62、比例ゲイン乗算部63、積分ゲイン乗算部64、積分部65、及び、加算部66を備える。
可変ゲイン演算部61は、下記の式(12)にしたがって、回転数Nの単位を変換することにより、電気角速度ωreを演算する。式(12)における「p」は、電動機9の極対数である。なお、本実施形態においては、PI制御部36は、可変ゲイン演算部61によって回転数Nから電気角速度ωreを算出するが、回転数演算器11が演算した電気角速度ωreをそのままPI制御部36における可変ゲインとして使用してもよい。この場合、可変ゲイン演算部61は省略することができる。
Figure 2022039839000013
可変ゲイン乗算部62は、磁束偏差φ0_errに対して、可変ゲインである電気角速度ωreを乗算する。このため、可変ゲイン乗算部62の出力は、磁束偏差φ0_errと、電気角速度ωreの積である。可変ゲイン乗算部62の出力は、比例ゲイン乗算部63に入力される。
比例ゲイン乗算部63は、可変ゲイン乗算部62の出力に対して、比例ゲインKφpを乗算する。このため、比例ゲイン乗算部63の出力は、磁束偏差φ0_errと、電気角速度ωreと、比例ゲインKφpの積である。比例ゲイン乗算部63の出力は、積分ゲイン乗算部64と加算部66に入力される。
積分ゲイン乗算部64は、比例ゲイン乗算部63の出力に対して、積分ゲインKφiを乗算する。このため、積分ゲイン乗算部64の出力は、磁束偏差φ0_errと、電気角速度ωreと、比例ゲインKφpと、積分ゲインKφiの積である。比例ゲイン乗算部63の出力は、積分部65に入力される。
積分部65は、積分ゲイン乗算部64の出力を順次積分する。
加算部66は、比例ゲイン乗算部63の出力と、積分部65の出力と、を加算する。そして、この加算部66の出力が、FB電圧ノルム指令値Va_fbとして出力される。
図5は、電動機の中高速回転領域において、電動機に生じる磁束ノルムと電圧ノルムの関係を示す説明図である。図5に示すように、磁束ノルムφ0は、d軸電流磁束Ldd、q軸電流磁束Lqq、及び、磁石磁束Φaの合成磁束の大きさである。d軸電流磁束Lddは、d軸電流idによって発生する磁束であり、d軸電流idとd軸のインダクタンスLdの積で表される。同様に、q軸電流磁束Lqqは、q軸電流iqによって発生する磁束であり、q軸電流iqとq軸のインダクタンスLqの積で表される。また、磁石磁束Φaは、電動機9が含む永久磁石によって発生する磁束である。
また、電動機9の回転数Nが中速回転から高速回転の領域にある場合、電動機9の巻線抵抗による電圧降下は、誘起電圧の大きさ(ωreφ0)に比べて無視できる程度に小さい。このため、電動機9の巻線抵抗による電圧降下を省略すると、電動機9の端子電圧の大きさである電圧ノルムVaは、磁束ノルムφ0及び電気角速度ωreに比例しているとみなすことができる。そして、電動機9の制御においては、電動機9の動作状態(動作点)に依らず、ほぼ一定の制御応答速度が得られることが望ましい。これらのことから、磁束フィードバック制御部が有するPI制御部36では、電気角速度ωreが可変ゲインとして使用されている(式(8)参照)。
図6は、磁束フィードバック制御部のPI制御部36がアンチワインドアップのために行う初期化処理の構成を示すブロック図である。図6(A)は、初期化処理時の構成を示すブロック図である。また、図6(B)は、初期化処理を継続する場合のブロック図である。
積分部65がワインドアップしない通常時は、前述のように、積分部65には、磁束偏差φ0_errと、電気角速度ωreと、比例ゲインKφpと、積分ゲインKφiの積が入力される(図4参照)。一方、電圧ノルム指令値Va *が上限値Va_maxまたは下限値(例えば0)で制限されるときには、積分部65がワインドアップする。
このため、PI制御部36は、電圧ノルム制限部38から電圧ノルム指令値Va *が下限値または上限値Va_maxに制限されている旨の通知信号を受けると、図6(A)に示すように、演算部67が減算処理をする。具体的には、電圧ノルム指令値Va *の制限値(上限値Va_maxまたは下限値0)から、FF電圧ノルム指令値Va_ffと比例ゲイン乗算部63の出力と、が減算される。そして、演算部67の出力に応じて、積分部65と積分ゲイン乗算部64との接続が切断され、その代わりに積分部65には「0」が入力される。これにより、積分部65は初期化され、FB電圧ノルム指令値Va_fbとFF電圧ノルム指令値Va_ffの和(すなわち電圧ノルム指令値Va *)は、電圧ノルム指令値Va *の制限値になる。そして、図6(B)に示すように、PI制御部36は、電圧ノルム制限部38から電圧ノルム指令値Va *が下限値または上限値Va_maxに制限されている旨の通知信号を受けている間、上記の初期化状態を維持する。これにより、電圧ノルム指令値Va *は、電圧ノルム指令値Va *の制限値に維持される。
なお、ここでは磁束フィードバック制御部が有するPI制御部36の構成を説明したが、トルクフィードバック制御部が有するPI制御部45(図3参照)も同様に構成される。また、トルクフィードバック制御部が有するPI制御部45は、電圧位相指令値α*が制限されているときは、位相制限部47からその旨の通知信号を受け(図3参照)、上記のPI制御部36と同様の初期化処理を実行する。
[電圧位相上限値及び電圧位相下限値の設定]
図7は、電圧位相制御における電圧位相範囲の設定を示すためのグラフである。図7に示すように、ある電動機では、電圧位相αとトルクTの相関が維持されるのは、概ね電圧位相αが-105度から+105度の範囲である。この場合、電圧位相上限値αmaxは+105度に設定し、かつ、電圧位相下限値αminは-105度に設定する。したがって、図7の特性を有する電動機を、電動機システム100の電動機9として使用する場合、位相制限部47は、-105度から+105度の範囲に、電圧位相指令値α*を制限する。これは、電動機9のトルクとの相関を維持することで、電動機9の制御性を確保するためである。
[最終電圧ノルム演算部の具体的構成、及び、変調率指令値の算出]
図8は、最終電圧ノルム演算部39の構成を示すブロック図である。図8に示すように、最終電圧ノルム演算部39は、変調率演算部91、変化率リミッタ92、及び、最終電圧ノルム指令値演算部93を備える。
変調率演算部91は、バッテリ15の直流電圧Vdcと、電圧ノルム指令値Va *と、を用いて、変調率Mの目標値である変調率指令値M*を演算する。具体的には、変調率演算部91は、下記の式(13)にしたがって、変調率指令値M*を演算する。バッテリ15の直流電圧Vdc及び電圧ノルム指令値Va *はいずれも連続値である。このため、変調率指令値M*は、離散値ではなく、連続値である。したがって、変調率指令値M*は、電動機9の運転状態に応じて例えば時々刻々と連続的に変化し得る。変調率指令値M*は、変化率リミッタ92に入力される。
Figure 2022039839000014
なお、前述のように、電圧ノルム指令値Va *はFB電圧ノルム指令値Va_fbを用いて算出され、かつ、FB電圧ノルム指令値Va_fbは、PI制御部36が電気角速度ωreを可変ゲインとして用いて算出する。そして、電気角速度ωreは電動機9の回転数Nから求められる。したがって、変調率指令値M*は、電動機9の回転数Nに応じて変更される。
変化率リミッタ92は、変調率指令値M*の変化率(時間に対する変化率(時間変化率))を、許容変化率ΔM(ΔM>0)以下に制限する。そして、変化率リミッタ92は、変調率指令値M*、または、許容変化率ΔMによって定められた変調率Mの変化率制限下での上限値(以下、許容限界変調率Mlimという)のいずれか小さい値を、最終変調率指令値Mfin *とする。許容変化率ΔMは、実験等に基づき、具体的な電動機9の特性等に合わせて予め定められる。また、最終変調率指令値Mfin *は、最終電圧ノルム指令値演算部93に入力される。
変化率リミッタ92による上記の制限(以下、変化率制限という)を実施し、かつ、変調率指令値M*が許容限界変調率Mlim以下であるときは、変調率指令値M*がそのまま最終変調率指令値Mfin *として用いられる。また、本実施形態においては、変化率制限を実施しないとき、または、変化率制限を中止するときも、変調率指令値M*がそのまま最終変調率指令値Mfin *として用いられる。一方、変化率制限を実施し、かつ、変調率指令値M*が許容限界変調率Mlimを超えるときは、許容限界変調率Mlimが最終変調率指令値Mfin *として用いられる。すなわち、本実施形態では、変化率リミッタ92は、下記の式(14)にしたがって最終変調率指令値Mfin *を決定する。
Figure 2022039839000015
式(14)の第1式は、変化率制限を中止する場合、または、変化率制限を実施しない場合の最終変調率指令値Mfin *を定めている。すなわち、変調率指令値M*が所定の閾値Mr_min以下である場合、最終変調率指令値Mfin *は変調率指令値M*である。閾値Mr_minは、変化率制限を実施するか否かを決定するために、変調率指令値M*と比較される。この閾値Mr_minは、実験等に基づき、具体的な電動機9の特性等に合わせて予め定める。閾値Mr_minは、例えば1.0(過変調状態と非過変調状態の境界)またはそれ以下の値に設定される。この場合、少なくとも過変調状態(矩形波状態を含む)において変化率制限が実施される。もちろん、電動機9の特性等によっては、閾値Mr_minは1.0より大きい値に設定され得る。
式(14)の第2式は、変調率指令値M*が閾値Mr_minよりも大きい場合、すなわち、変化率制限を実施する場合の最終変調率指令値Mfin *を定めている。式(14)の第2式における「min()」は最小関数であり、引数の中で最小の値を戻り値とする。この最小関数の第1引数は、変調率指令値M*である。また、この最小関数の第2引数「Mfin *-1+TsmpΔM」は、許容限界変調率Mlimである。したがって、変化率制限が実施されるときに、変調率指令値M*の変化率が許容変化率ΔMを上回ると、変調率指令値M*は許容限界変調率Mlimを超える。その結果、最終変調率指令値Mfin *は、許容限界変調率Mlimに制限される。
なお、最小関数の第2引数が含む「Tsmp」は、変化率制限における所定の単位時間を表す。この単位時間Tsmpは、例えば、変調率指令値M*のサンプリング周期(変化率制限の制御周期)である。このため、単位時間Tsmpと許容変化率ΔMの積である「TsmpΔM」は、単位時間Tsmpあたりに許容する変調率指令値M*の変化量(許容限界変化量)を表す。また、「Mfin *-1」は、単位時間Tsmp前の最終変調率指令値Mfin *(最終変調率指令値Mfin *の前回値)を表す。したがって、最小関数の第2引数「Mfin *-1+TsmpΔM」は、最終変調率指令値Mfin *の前回値から許容限界変化量の増加があった場合における変調率指令値の大きさを表す。すなわち、第2引数「Mfin *-1+TsmpΔM」は、許容限界変調率Mlimである。
また、式(14)の第2式に示す通り、最小関数は、増加があった場合の許容限界変調率Mlim(「Mfin *-1+TsmpΔM」)を引数とするが、減少した場合の許容限界変調率Mlim(「Mfin *-1-TsmpΔM」)を引数としていない。このため、本実施形態においては、変調率指令値M*が増加するときに変化率制限が実施され、変調率指令値M*が減少するときには変化率制限は実施されない。すなわち、変調率指令値M*が減少するときには、変化率制限は中止される。
最終電圧ノルム指令値演算部93は、最終変調率指令値Mfin *とバッテリ15の直流電圧Vdcとを用いて最終電圧ノルム指令値Va_fin *を演算する。具体的には、最終電圧ノルム指令値演算部93は、下記の式(15)にしたがって最終電圧ノルム指令値Va_fin *を演算する。
Figure 2022039839000016
以上のように、最終電圧ノルム演算部39は、変調率指令値M*を算出し、かつ、変調率指令値M*の変化率を許容変化率ΔM以下に制限する。そして、最終電圧ノルム演算部39は、この変化率制限の下で、最終電圧ノルム指令値Va_fin *を算出する。また、変化率制限は変調率指令値M*が増加する場合に実施され、変調率指令値M*が減少する場合には変化率制限は中止される。
[出力制御器の具体的構成、及び、制御モード信号の生成]
図9は、制御モード切替判定部13の構成を示すブロック図である。図9に示すように、制御モード切替判定部13は、第1ノルム閾値演算部94、第2ノルム閾値演算部95、平均化フィルタ96、平均化フィルタ97、ノルム演算部98、及び、制御モード判定部99を備える。
第1ノルム閾値演算部94は、第1変調率閾値Mth1に基づいて、第1ノルム閾値Va_th1を演算する。第1変調率閾値Mth1は、PWM制御の変調率Mについて定める閾値であって、制御モードを電圧位相制御から電流ベクトル制御に切り替える基準となる変調率Mを表す。第1ノルム閾値Va_th1は、後述する平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *と比較される閾値であって、電圧位相制御から電流ベクトル制御への切り替え条件として用いられる。第1ノルム閾値Va_th1は、下記式(16)の第1式にしたがって、バッテリ15の直流電圧Vdcを用いて算出される。
第2ノルム閾値演算部95は、第2変調率閾値Mth2に基づいて、第2ノルム閾値Va_th2を演算する。第2変調率閾値Mth2は、PWM制御の変調率Mについて定める閾値であって、制御モードを電流ベクトル制御から電圧位相制御に切り替える基準となる変調率Mを表す。第2ノルム閾値Va_th2は、後述する平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *と比較される閾値であって、電流ベクトル制御から電圧位相制御への切り替え条件として用いられる。第2ノルム閾値Va_th2は、下記式(16)の第2式にしたがって、バッテリ15の直流電圧Vdcを用いて算出される。
Figure 2022039839000017
なお、本実施形態においては、変調率Mの上限値Mmax *(式(9)参照)、第1変調率閾値Mth1、及び、第2変調率閾値Mth2の大小関係は、下記の式(17)に示す通りである。すなわち、電圧位相制御から電流ベクトル制御への切り替えに関連する第1変調率閾値Mth1は、これらの中で最も小さい。そして、電流ベクトル制御から電圧位相制御への切り替えに関連する第2変調率閾値Mth2は、上限値Mmax *と第1変調率閾値Mth1の間の値である。すなわち、本実施形態においては、第1変調率閾値Mth1と第2変調率閾値Mth2は少なくとも互いに異なる値である。このため、第1変調率閾値Mth1を用いて算出する第1ノルム閾値Va_th1と、第2変調率閾値Mth2を用いて算出する第2ノルム閾値Va_th2も、互いに異なる値である。この結果として、電流ベクトル制御と電圧位相制御の切り替えには、ヒステリシスが設けられている。本実施形態では電流ベクトル制御と電圧位相制御の切り替えがシームレスに行われようにしているので、これらの切り替えにヒステリシスを設けておくことにより、これらの切り替えが繰り返される現象(いわゆるチャタリング)の発生を抑制できる。
Figure 2022039839000018
なお、変調率Mの上限値Mmax *、第1変調率閾値Mth1、及び、第2変調率閾値Mth2は、例えば、次のように設定される。すなわち、上限値Mmax *は矩形波状態の変調率Mの値「1.1」である。第2変調率閾値Mth2は、非過変調状態と過変調状態の境界の変調率Mの値「1.0」である。第1変調率閾値Mth1は、確実に非過変調状態となったとみなせる変調率Mの値「0.9」である。
平均化フィルタ96は、d軸最終電圧指令値Vd_fin *に平均化処理を施すことにより、d軸最終電圧指令値Vd_fin *のノイズを低減する。平均化フィルタ96は、例えば、ローパスフィルタ(LPF)である。平均化フィルタ96の出力は、平均化d軸最終電圧指令値Vd_fin_flt *である。この平均化d軸最終電圧指令値Vd_fin_flt *は、ノルム演算部98に入力される。
平均化フィルタ97は、q軸最終電圧指令値Vq_fin *に平均化処理を施すことにより、q軸最終電圧指令値Vq_fin *のノイズを低減する。平均化フィルタ97は、例えば、ローパスフィルタ(LPF)である。平均化フィルタ97の出力は、平均化q軸最終電圧指令値Vq_fin_flt *である。この平均化q軸最終電圧指令値Vq_fin_flt *は、ノルム演算部98に入力される。
ノルム演算部98は、下記の式(18)にしたがって、平均化d軸最終電圧指令値Vd_fin_flt *及び平均化q軸最終電圧指令値Vq_fin_flt *を用いて、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *を演算する。具体的には、ノルム演算部98は、下記の式(18)にしたがって、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *を演算する。平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *は、制御モード判定部99に入力される。
Figure 2022039839000019
なお、出力制御器3が、d軸最終電圧指令値Vd_fin *及びq軸最終電圧指令値Vq_fin *として、電圧位相制御のd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *を出力する場合がある。この場合、上記の平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *の代わりに、最終電圧ノルム演算部39からベクトル変換部48に入力される最終電圧ノルム指令値Va_fin *を制御モード判定部99に入力してもよい。
制御モード判定部99は、第1ノルム閾値Va_th1、第2ノルム閾値Va_th2、及び、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *を用いて、電動機9の運転状態に応じて適用すべき制御モードを判定する。制御モード判定部99の判定結果は、制御モード信号Smとして、電流ベクトル制御部1、電圧位相制御部2、及び、出力制御器3に出力される。
図10は、制御モード判定部99による制御モードの判定方法を示す説明図である。図10に示すように、制御モード判定部99は、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *と、第1ノルム閾値Va_th1及び第2ノルム閾値Va_th2と、を比較する。この比較の結果、電動機9を電圧位相制御によって制御しているときに、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *が第1ノルム閾値Va_th1以下となったことを検出した場合、その検出結果に基づいて、電流ベクトル制御に切り替えることを決定する。そして、その旨を表す制御モード信号Sm(例えば制御モードの切り替え指令)を出力する。また、電動機9を電圧位相制御によって制御しているときに、平均化電圧ノルム指令値Va_fin_flt *が第2ノルム閾値Va_th2以上となったことを検出した場合、その検出結果に基づいて、電圧位相制御に切り替えることを決定する。そして、その旨を表す制御モード信号Smを出力する。
[出力制御器の具体的構成]
図11は、出力制御器3の構成を示すブロック図である。図11に示すように、制御モード信号Smにしたがって、電流ベクトル制御と電圧位相制御を切り替えるスイッチである。制御モード信号Smに基づいて制御モードを電流ベクトル制御に設定するときには、出力制御器3は、電流ベクトル制御のd軸電圧指令値Vdi_fin *を、d軸最終電圧指令値Vd_fin *として出力する。また、これと同時に、出力制御器3は、電流ベクトル制御のq軸電圧指令値Vqi_fin *を、q軸最終電圧指令値Vq_fin *として出力する。一方、制御モード信号Smに基づいて制御モードを電圧位相制御に設定するときには、出力制御器3は、電圧位相制御のd軸電圧指令値Vdv_fin *を、d軸最終電圧指令値Vd_fin *として出力する。また、これと同時に、出力制御器3は、電圧位相制御のq軸電圧指令値Vqv_fin *を、q軸最終電圧指令値Vq_fin *として出力する。
[第1実施形態の作用]
以下では、上記のように構成される第1実施形態の電動機システム100及び電動機9の作用について説明する。
図12は、第1実施形態における電動機制御のフローチャートである。図12に示すように、まず、ステップS101において、電流検出器8によって電動機9の三相交流電流が検出され、検出された三相交流電流は変換器12の座標変換処理によってd軸電流id及びq軸電流iqに変換される。また、ステップS102において、回転子検出器10によって電動機9の電気角θが検出され、回転数演算器11の回転数演算処理によって、検出された電気角θから回転数Nが演算される。また、ステップS103において、トルク目標値T*が取得され、バッテリ15の直流電圧Vdcも取得される。すなわち、電動機9の制御において必要な各種パラメータが取得または演算等される。
こうして各種パラメータが取得されると、ステップS104において、制御モード切替判定部13によって制御モード切替判定が行われる。ステップS105において、制御モード切替判定の結果、電流ベクトル制御で電動機9を制御するときには、ステップS106において、電流ベクトル制御部1によって、d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *と非干渉電圧Vd_dcpl *が算出される。その後、ステップS107において、d軸電流目標値id *及びq軸電流目標値iq *をそれぞれフィードバックする電流フィードバック処理により、d軸の電流フィードバック電圧指令値Vdi′及びq軸の電流フィードバック電圧指令値Vqi′が算出される。さらに、ステップS108において、LPF22で処理された非干渉電圧Vd_dcpl_fltと電流フィードバック電圧指令値Vdi′を加算する非干渉制御が行われることにより、電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *が演算される。同様に、ステップS108において、電流ベクトル制御におけるq軸電圧指令値Vqi_fin *が演算される。
このように電流ベクトル制御におけるd軸電圧指令値Vdi_fin *及びq軸電圧指令値Vqi_fin *が演算されると、ステップS109の出力制御器3による出力制御処理を経て、ステップS110において、変換器4により、三相電圧指令値が算出される。その後、パルス幅変調信号生成器5によって三相電圧指令値に基づくPWM信号が生成され、パルス幅変調による電動機9の制御が実行される。
一方、ステップS104の制御モード切替判定の結果、ステップS105において、電動機9の運転状態が電流ベクトル制御に適さないと判定されると、ステップS111において電流位相制御が実行される。
図13は、電圧位相制御のフローチャートである。図13に示すように、電圧位相制御では、ステップS201において、FF電圧ノルム指令値Va_ffと、FF電圧位相指令値αffが生成される。また、ステップS202において、参照トルクTrefとトルク推定値Testが算出される。そして、ステップS203において、参照トルクTrefとトルク推定値Testの偏差であるトルク偏差Terrに基づいて、FB電圧位相指令値αfbが算出される。その後、電圧位相指令値α*は、これらFF電圧位相指令値αffとFB電圧位相指令値αfbの加算によって生成される。
また、ステップS204において、電圧位相指令値α*には、位相制限部47による位相制限が施される。ステップS205において、電圧位相指令値α*が、位相制限部47によって制限されているときには、ステップS206において、アンチワインドアップのために、PI制御部45が初期化される。また、ステップS205において、電圧位相指令値α*が位相制限部47の制限を受けない範囲であるときには、ステップS206のPI制御部45の初期化処理は省略される。
上記のように電圧位相指令値α*が生成される一方で、ステップS207において、参照磁束ノルムφ0_ref及び磁束ノルム推定値φ0_estが算出される。また、ステップS208において、参照磁束ノルムφ0_ref及び磁束ノルム推定値φ0_estの偏差である磁束偏差φ0_errに基づいて、FB電圧ノルム指令値Va_fbが算出される。そして、電圧ノルム指令値Va *は、FF電圧ノルム指令値Va_ffにFB電圧ノルム指令値Va_fbが加算されることによって生成される。
また、ステップS209において、電圧ノルム指令値Va *には、電圧ノルム制限部38による制限処理が施される。ステップS210において、電圧ノルム指令値Va *が、電圧ノルム制限部38によって制限されているときには、ステップS211において、アンチワインドアップのために、PI制御部36が初期化される。また、ステップS210において、電圧ノルム指令値Va *が電圧ノルム制限部38の制限を受けない範囲であるときには、ステップS211のPI制御部36の初期化処理は省略される。
さらに、本実施形態では、ステップS212において、PWM制御の変調率Mの変化率を許容変化率ΔM以下に制限する変化率制限のもとで、電圧ノルム指令値Va *から最終電圧ノルム指令値Va_fin *が生成される。
こうして電圧位相指令値α*と最終電圧ノルム指令値Va_fin *が生成されると、ステップS213において、ベクトル変換により、電圧位相制御のd軸電圧指令値Vdv_fin *及びq軸電圧指令値Vqv_fin *が生成される。その後は電流ベクトル制御と同様であり、図12に示すように、ステップS109の出力制御器3による出力制御処理を経て、ステップS110において、変換器4により、三相電圧指令値が算出される。そして、パルス幅変調信号生成器5によって三相電圧指令値に基づくPWM信号が生成され、パルス幅変調による電動機9の制御が実行される。
以上のように、本実施形態の電圧位相制御では、ステップS212において、PWM制御の変調率Mの変化率を許容変化率ΔM以下に制限する変化率制限のもとで、電圧ノルム指令値Va *から最終電圧ノルム指令値Va_fin *が生成される。そして、この変化率制限の下で生成された最終電圧ノルム指令値Va_fin *に基づく電圧位相制御が実行される。
この電圧位相制御においては、電動機9の運転状態に応じて、PWM制御の変調率Mが実質的に連続的に変化する。また、この電圧位相制御は、電動機9の運転状態によって、非過変調状態だけでなく、過変調状態、さらには矩形波状態にもなり得る。すなわち、電圧位相制御では変調率Mが任意かつ連続的に変更され得る。
しかし、過変調状態において変調率Mが変化すると、インバータ6から電動機9への出力電力の波形(出力波形)に振動的あるは周期的な振る舞い(以下、波形振動という)が発生する場合がある。また、過変調状態において変調率Mが変化すると、波形振動の振幅が増加する場合がある。インバータ6から電動機9への出力電力の波形(出力波形)とは、d軸電流id、q軸電流iq、d軸電圧、q軸電圧、及び/または、これらの目標値等の各波形である(三相に変換後の波形を含む)。すなわち、過変調状態の電圧位相制御において変調率Mが変化すると、例えば、d軸電流idやq軸電流iqに予期しない振動(電流振動)が発生する。こうした波形振動は、電動機9の制御性を低下させてしまうことがある。また、波形振動は、電動機9の音振性能を低下させてしまうことがある。
例えば、インバータ6のデッドタイムエラーは振動的(周期的)な電圧外乱として作用する。また、インバータ6のデッドタイムエラーは、PWM制御パルスの反転回数(電気角θの1周期当たりにターンオン/ターンオフが切り替わる回数)が変化すること対して感度を有する。そして、過変調状態において変調率Mを増加させ、電圧ノルムが飽和していく過程(矩形波状態に近づける過程)では、電動機9の各相において、PWMパルスの反転回数が変化(減少)する。このため、変調率Mを増加させると、インバータ6のデッドタイムエラーに起因する振動的な電圧外乱が増加する。また、過変調状態(あるいは矩形波状態)から変調率Mを減少させ、電圧ノルムが減少していく過程(非過変調状態に近づける過程)では、PWMパルスの反転回数が変化(増加)する。このため、変調率Mを減少させると、インバータ6のデッドタイムエラーに起因する振動的な電圧外乱が増加する。したがって、インバータ6のデッドタイムエラーが、上記の波形振動の一因であると考えられる。
すなわち、波形振動は、変調率Mの変化に対する依存性が高い。例えば、過変調状態で変調率Mを連続的に変化させると、波形振動が特に顕著に現れる。一方、波形振動は、変調率Mの大きさ自体に対する依存性は高くない。例えば、変調率Mが大きく、矩形波状態に近い状態であっても、変調率Mに変化がなければ波形振動の振幅は小さい。
本実施形態の電圧位相制御において、PWM制御の変調率Mの変化率を許容変化率ΔM以下に制限する変化率制限を実施するのは、上記の波形振動を抑制するためである。これにより、電動機9の制御性及び音振性能は維持される。
図14は、(A)回転数、(B)最終変調率指令値、(C)比較例のd軸電流、(D)本実施形態のd軸電流、及び、(E)各d軸電流の包絡線を示すグラフである。これらの各グラフの中で、符号EMを付したグラフは、変調率Mの変化率制限を実施する本実施形態に係るグラフである。一方、符号CEを付したグラフは、変調率Mの変化率制限を実施しない比較例に係るグラフである。また、図14に示す期間中、制御モードは電圧位相制御である。
図14(A)に示すように、例えば、時刻t0から時刻t6にかけて、電動機9の回転数Nが増加する場合を考える。回転数Nの増加率及び増加量等は、本実施形態(EM)と比較例(CE)で同じである。
図14(B)に示すように、比較例(CE)の最終変調率指令値Mfin *は、時刻t0から時刻t1頃にかけて、回転数Nの増加にともなって増加している。しかし、時刻t1頃から、比較例(CE)の最終変調率指令値Mfin *は電圧ノルムの飽和にともなって飽和し始まり、その後徐々に上限値Mmax *に漸近する。すなわち、時刻t1頃以降、比較例(CE)での制御モードは少なくとも過変調状態となっている。そして、時刻t6頃には、比較例(CE)の最終変調率指令値Mfin *は上限値Mmax *に到達し、矩形波状態に至っている。
そして、図14(C)に示すように、比較例(CE)のd軸電流idには、一定程度の電流振動(波形振動)が発生する。時刻t1頃以降の過変調状態において、電流振動の振幅が増加している。また、概ね矩形波状態となった時刻t5頃には、電流振動の振幅は減少し、時刻t1以前の振幅に近づいている。
一方、本実施形態(EM)の最終変調率指令値Mfin *は、比較例(CE)の最終変調率指令値Mfin *と同様に、時刻t0から時刻t1頃にかけて、回転数Nの増加にともなって増加している(図14(B)参照)。そして、本実施形態(EM)では、時刻t1頃に過変調状態となって、変調率指令値M*(最終変調率指令値Mfin *)が閾値Mr_minを超える。すると、本実施形態(EM)では、変調率Mを指定する変調率指令値M*に変化率制限がかかる(式(14)参照)。すなわち、本実施形態(EM)では、変調率Mに変化率制限がかかる。その結果、変化率が制限された変調率指令値M*を用いて算出する最終変調率指令値Mfin *も、その変化率が制限される。
このため、比較例(CE)の最終変調率指令値Mfin *と比較すると、過変調状態となった時刻t1頃以降において、本実施形態(EM)の最終変調率指令値Mfin *の増加は緩やかである。但し、本実施形態(EM)の最終変調率指令値Mfin *も、比較例(CE)の最終変調率指令値Mfin *と同様に、上限値Mmax *に漸近し、最終的には矩形波状態となる。
また、図14(D)に示すように、本実施形態(EM)のd軸電流idにも、一定程度の電流振動(波形振動)が発生する。しかし、図14(E)に示すように、本実施形態(EM)と比較例(CE)の電流振動の振幅を比較すると、どちらも時刻t1頃以降に過変調状態となっているにもかかわらず、本実施形態(EM)の電流振動の振幅は、比較例(CE)の電流振動の振幅よりも小さい。すなわち、本実施形態(EM)では変調率Mに変化率制限がかかったことで、変化率制限を実施しない比較例(CE)よりも、d軸電流idの電流振動が抑制される(時刻t1~時刻t5参照)。
その結果、本実施形態(EM)の電動機制御によれば、過変調状態となった後、電動機9の運転状態等に応じて変調率Mが変化する場合でも、変調率Mが一定である場合と同程度に、電動機9の制御性と音振性能が維持される。
なお、時刻t1頃以前においては、変調率指令値M*(最終変調率指令値Mfin *)が閾値Mr_min以下であり、変調率Mの変化に起因した電流振動が発生しない状況下である。そこで、本実施形態(EM)の電動機制御においては、変調率Mに対する変化率制限を中止している(式(14)参照)。この結果、本実施形態(EM)の電動機制御によれば、変調率Mの変化に起因した電流振動が発生しないような状況においては、変調率Mに対する変化率制限を実施しない場合と同程度に、電動機9の制御性及び音振性能が維持される。
また、比較例(CE)において変調率指令値M*(最終変調率指令値Mfin *)がほぼ上限値Mmax *に到達した時刻t5頃以降においては、本実施形態(EM)の電流振動の振幅も比較例(CE)の電流振動の振幅も同程度である。これは、比較例(CE)においても変調率Mの変化が殆どなくなるので、電流振動のうち、変調率Mの変化に起因した成分もほとんどないからである。したがって、本実施形態(EM)の電動機制御によれば、ほぼ矩形波状態となる場合でも、変調率Mに対する変化率制限を実施しない場合と同程度に、電動機9の制御性及び音振性能が維持される電動機9の制御性及び音振性能が維持される。
以上のように、第1実施形態に係る電動機9の制御方法は、インバータ6から電動機9への出力電力の波形(出力波形)をパルス幅変調によって制御する電動機9の制御方法であって、パルス幅変調の変調率を1よりも大きくした過変調状態で電動機9を制御し、過変調状態において変調率を変更するときに、変調率Mの変化率を予め定められた許容変化率ΔM以下に制限する。
これにより、過変調状態において変調率Mを変更する場合でも、出力波形に生じる波形振動が抑制される。その結果、電動機9の制御性及び音振性能が維持される。
また、第1実施形態に係る電動機9の制御方法では、過変調状態には、相対的に変調率が小さい非矩形波状態と、相対的に変調率が大きい矩形波状態と、が含まれる。また、変調率Mを増加させることによって過変調状態を矩形波状態に近づけ、変調率Mを減少させることによって、過変調状態を、変調率Mが1以下である非過変調状態に近づける。そして、過変調状態において少なくとも変調率Mを増加させるときに、変調率Mの変化率を許容変化率ΔM以下に制限する。これにより、波形振動が発生したときに電動機9の制御性及び/または音振性能が問題になりやすいシーンにおいて、的確に波形振動を抑制することができる。
例えば、要求されるトルクを発生させるために電動機9の回転数Nを徐々に増加させるシーンにおいて、波形振動が生じると、電動機9が出力するトルクが要求されるトルクに一致し難くなってしまう等、電動機9の制御性が問題になる場合がある。また、このようなシーンにおいて波形振動が生じると、電動機9から発生する音振が増加してしまう場合がある。したがって、上記のように、少なくとも変調率Mを増加させるときに、変調率Mの変化率を許容変化率ΔM以下に制限し、波形振動を抑制することで、電動機9の制御性及び音振性能が維持される。
また、第1実施形態に係る電動機9の制御方法は、過変調状態において変調率Mを連続的に変化させるときに、変調率Mの変化率を、許容変化率ΔM以下に制限する。過変調状態で変調率Mを連続的に変化すると、波形振動が特に顕著に現れるので、このような場合に上記のように変調率Mの変化率を許容変化率ΔM以下に制限することによって、波形振動を的確に抑制することができる。その結果、電動機9の制御性及び音振性能が維持される。
また、第1実施形態に係る電動機9の制御方法は、FB電圧ノルム指令値Va_fbを算出する際の可変ゲインとして電気角速度ωreを使用することで、変調率M(変調率指令値M*)を、電動機9の回転数Nに応じて変更する構成としている。これにより、電動機9の動作状態に依らず、ほぼ一定の制御応答速度が得られる。その結果、制御応答速度に変動が生じにくいので、さらに波形振動を低減できる。
[変形例1]
第1実施形態は、変調率Mが減少する場合についても、変調率Mに対する変化率制限を実施するように構成を変更できる。この場合、式(14)の第2式(最小関数)を「max{Mfin *-1-TsmpΔM,min(M*,Mfin *-1+TsmpΔM)}」に置き換えればよい。「max{}」はいわゆる最大関数であり、引数のうち最大値を戻り値とする。この置き換えによれば、変調率指令値M*が増加して許容限界変調率Mlim(「Mfin *-1+TsmpΔM」)を超える場合には、変調率指令値M*は許容限界変調率Mlimに制限される。一方、変調率指令値M*が減少して「Mfin *-1-TsmpΔM」(最大関数の第1引数)を下回るときには、変調率指令値M*は「Mfin *-1-TsmpΔM」に制限される。このように、変調率Mが減少するときに変調率Mに対する変化率制限を実施すると、変調率Mが減少することによって発生する波形振動が抑制される。
[変形例2]
上記第1実施形態においては、許容変化率ΔMは固定値であるが、許容変化率ΔMは変更可能であってもよい。例えば、許容変化率ΔMは、電動機9の運転状態に応じて変更されてもよい。この場合、変化率リミッタ92(図8参照)は、電動機9の運転状態を表すパラメータ(回転数Nまたはトルク目標値T*等)を取得し、それに応じて許容変化率ΔMを変更する。このように、許容変化率ΔMを可変値にする場合、より適切かつ効率的に波形振動が抑制される。特に電動機9の運転状態に応じて許容変化率ΔMを変更すると、例えば、波形振動による電動機9の制御性または音振性能の低下が問題になりやすいシーンと、これが問題になりにくいシーンとで、それぞれ変化率制限のメリット及びデメリットを比較考量し、波形振動の抑制度を適切に変更できる。その結果、電動機9の運転状態に応じて、より適切に波形振動が抑制される。
上記のように許容変化率ΔMが変更可能である場合、例えば、変調率Mを減少させるときの許容変化率ΔMを、変調率Mを増加させるときの許容変化率ΔMよりも大きくすることが好ましい。すなわち、過変調状態から非過変調状態に近づく場合には、過変調状態から矩形波状態に近づく場合よりも、許容変化率ΔMを相対的に大きい値にする。
過変調状態から矩形波状態に近づくシーンでは、波形振動に起因して、電動機9の制御性または音振性能の低下が問題になりやすい。一方、過変調状態から非過変調状態に近づくシーンでは、波形振動に起因した制御性または音振性能の低下よりも、制御の追従遅れ等によって生じる印加電圧の過多に起因した過電流が問題になりやすい場合がある。例えば、電動機9の回転数Nが急減し、これに応じて変調率Mが急減するシーンでは、電動機9の制御性及び音振性能よりも、過電流の方が問題になりやすい。
そこで、上記のように、変調率Mを減少させるときの許容変化率ΔMを、変調率Mを増加させるときの許容変化率ΔMよりも大きくすると、制御性または音振性能が問題になるシーンでは、適切な波形振動の抑制により、電動機9の制御性または音振性能が保たれる。その上で、過電流が問題になるシーンでは、波形振動の抑制度を低下させる代わりに、より確実に過電流が防止される。すなわち、波形振動の抑制による制御性及び音振性能の維持効果と、過電流の防止効果と、をシーンに応じて適切に得ることができる。
変調率Mを減少させるときの許容変化率ΔMを大きくするほど、変調率Mの変化率制限の程度は弱くなる。このため、変調率Mを減少させるときの許容変化率ΔMを大きくすることには、極限的には、変調率Mの変化率制限を中止することを含む。変調率Mの変化率制限を中止する方法の1つは、許容変化率ΔMを、実質的にどのような変調率Mの変化をも許容する大きくすることである。もちろん、第1実施形態のように、許容変化率ΔMは変更せずに、変調率Mの変化率制限を中止することができる。これらのいずれにしても、電動機9の制御性及び音振性能を維持効果と過電流の防止効果を、シーンに応じて適切に得ることができる。
この他、本実施形態では、変調率Mに対する変化率制限は、変調率Mが増加する場合に実施され、変調率Mが減少する場合にはこの変化率制限は中止される(式(14)参照)。このため、本実施形態の電動機制御によれば、例えば、電動機9の回転数Nが急激に減少するようなシーンにおいても、電動機9の誘起電圧の減少に対応し、印加電圧を逐次下げることができる。このようなシーンにおいては、電動機9に印加する電圧が過多となり、電動機9に過電流が生じやすい。しかし、本実施形態では、変調率Mが減少するときには、変調率Mに対する変化率制限は中止されるので、変調率Mが減少する場合にも変化率制限を実施する場合と比較して、過電流が抑制されやすい。
[変形例3]
また、上記の変形例では、変調率Mを増加させる場合と変調率Mを減少させる場合とで、異なる値の許容変化率ΔMを使用しているが、他の態様で、電動機9の運転状態に応じて許容変化率ΔMを変更してもよい。
例えば、電動機9の運転状態に応じて許容変化率ΔMを変更する場合、電動機9の回転数Nの減速度が大きいほど、許容変化率ΔMを大きくする態様も好ましい。回転数Nの減速度は、電動機9の運転状態を表すパラメータの1つである。また、回転数Nの減速度は、単位時間(制御周期あるいは演算周期)あたりの回転数Nの変化量(すなわち加速度)であって、回転数Nが減少する場合の値を正の値とするパラメータである。
このように、電動機9の回転数Nの減速度が大きいほど、許容変化率ΔMを大きくすると、例えば電動機9の回転数Nが急減したときに、これに追従して変調率Mを素早く低減させることができる。その結果、通常は波形振動を抑制しつつも、電動機9の回転が急減したときには、電動機9への印可電圧の過多によって過電流が発生してしまうことを防止できる。
以下、電動機9の回転数Nの減速度が大きいほど、許容変化率ΔMを大きくする場合の構成を説明する。
図15は、当該変形例における電圧位相制御部2の構成を示すブロック図である。図15に示すように、当該変形例の電圧位相制御部2は、最終電圧ノルム演算部39に回転数Nが入力される点が、第1実施形態の電圧位相制御部2との相違点である。それ以外の構成は第1実施形態の電圧位相制御部2と同様である。
図16は、当該変形例における最終電圧ノルム演算部39の構成を示すブロック図である。図16に示すように、当該変形例においては、回転数Nは、変化率リミッタ92に入力される。そして、変化率リミッタ92は、変化率リミッタ92は、回転数Nの減速度に基づいて許容変化率ΔMを変更する。具体的には、下記の式(19)にしたがって、回転数Nの減速度に基づいて許容変化率ΔMを変更する。
Figure 2022039839000020
式(19)における「s|N|」は回転数Nの減速度であり、変化率リミッタ92によって算出される。「ΔNth」は減速度に対する閾値である。閾値ΔNthは、実験等に基づいて予め定められる。この条件の変更以外は、第1実施形態の式(14)と同じである。すなわち、式(19)の第1式に示されているように、回転数Nの減速度が閾値ΔNth以下であるときに、変調率Mに対する変化率制限を中止する。一方、式(19)の第2式に示されてるように、回転数Nの減速度が閾値ΔNthよりも大きいときに、変調率Mに対して変化率制限を実施する。
上記のように、電動機9の回転数Nの減速度が所定の閾値ΔNth(第1閾値)以上であるときには、変化率制限を中止することが特に好ましい。回転数Nの減速度が閾値ΔNth(第1閾値)以上であるようなシーンでは過電流が発生してしまうリスクが大きい。このため、回転数Nの減速度が閾値ΔNth(第1閾値)以上であることを検出したときに、変化率リミッタ92が変調率Mの変化率制限を中止すると、より確実に過電流が防止される。
[変形例4]
また、電動機9の運転状態に応じて許容変化率ΔMを変更する場合、例えば、変調率Mが所定の閾値(以下、第2閾値Th2という)未満であるときの許容変化率ΔMを、変調率Mが第2閾値Th2以上であるときの許容変化率ΔMよりも大きくする態様も好ましい。過変調状態において変調率Mが大きくなるシーンでは、波形振動に起因して、電動機9の制御性または音振性能の低下が問題となりやすい。一方、過変調状態であっても変調率Mが小さいシーンでは、波形振動が発生するとしても、電動機9の制御性または音振性能の低下の程度は小さく、これらが問題になりにくい。
このため、変調率Mが第2閾値Th2以上になる高変調率のシーンでは、変調率Mが第2閾値Th2未満の低変調率のシーンよりも、許容変化率ΔMを小さくすることで、変調率Mに対する変化率制限を強める。その結果、電動機9の制御性及び音振性能が確実に維持される。一方、低変調率のシーンでは、高変調率のシーンよりも許容変化率ΔMを大きくすることで、変調率Mに対する変化率制限を弱める。これにより、低変調率のシーンでは、変調率Mに対する変化率制限に起因した応答遅れ(例えば電圧応答の遅延)が低減され、例えば過電流が発生するリスクを低減できる。すなわち、変調率Mが第2閾値Th2未満であるときの許容変化率ΔMを、変調率Mが第2閾値Th2以上であるときの許容変化率ΔMよりも大きくすると、電動機9の運転状態に応じて特に適切に波形振動が抑制される。
また、変調率Mが第2閾値Th2未満であるときには、変調率Mに対する変化率制限を中止してもよい。すなわち、低変調率のシーンにおける許容変化率ΔMを、高変調率のシーンにおける許容変化率ΔMよりも大きくする態様には、低変調率のシーンにおける許容変化率ΔMを、実質的にどのような変調率Mの変化をも許容する大きくすることを含む。この態様は、低変調率のシーンにおいて、変調率Mに対する変化率制限を中止することに相当する。このように、低変調率のシーンにおいて、変調率Mに対する変化率制限を中止すると、より確実に過電流が防止される。
第2閾値Th2は、実験またはシミュレーション等に基づいて予め定められる。第2閾値Th2は、例えば第1実施形態における閾値Mr_minと同じ値である。
上記の各変形例は任意に組み合わせて実施することができる。例えば、[変形例3]では、[変形例1]のように、変調率Mが減少する場合においても、変調率Mに対する変化率制限を実施するように構成を変更できる。
なお、第1実施形態における「変調率M」には、「変調率Mに相関のある状態量」を含む。「変調率に相関のある状態量」とは、変調率Mの変化(増減)に関連性を有するパラメータをいう。したがって、上記第1実施形態及びその変形例においては、過変調状態において変調率Mを変更するときに、変調率Mの変化率を許容変化率ΔM以下に制限するが、波形振動を抑制する方法はこれに限らない。例えば、第1実施形態のように変調率Mそのものの変化率を直接的に制限する代わりに、「変調率Mに相関のある状態量」の変化率を、許容変化率以下に制限してもよい。このように、変調率Mに相関のある状態量に対して変化率制限を実施することにより、間接的に変調率Mを許容変化率ΔM以下に制限することができ、結果として波形振動を抑制できるからである。以下、第2実施形態及び第3実施形態において、変調率Mに相関のある状態量に対して変化率制限を実施する実施形態の例を説明する。
<第2実施形態>
図17は、第2実施形態における最終電圧ノルム演算部39の構成を示すブロック図である。図17に示すように、第2実施形態では、第1実施形態の最終電圧ノルム演算部39の各部が変化率リミッタ201に置き換えられている。変化率リミッタ201は、バッテリ15の直流電圧Vdcと電圧ノルム指令値Va *に基づいて最終電圧ノルム指令値Va_fin *を出力する。より具体的には、変化率リミッタ201は、下記の式(20)にしたがって、最終電圧ノルム指令値Va_fin *を演算する。これにより、第2実施形態では、変調率Mの変化率を制限する代わりに、最終電圧ノルム指令値Va_fin *の変化率が直接に制限される。
Figure 2022039839000021
式(20)の第1式は、最終電圧ノルム指令値Va_fin *の変化率制限を中止する場合、または、変化率制限をしない場合の最終電圧ノルム指令値Va_fin *を定めている。すなわち、電圧ノルム指令値Va *が所定の閾値krdc以下である場合、最終電圧ノルム指令値Va_fin *は電圧ノルム指令値Va *である。閾値krdcは所定の係数krとバッテリ15の直流電圧Vdcの積である。係数krは、実験等に基づき、具体的な電動機9の特性等に合わせて予め定められる。
式(20)の第2式は、電圧ノルム指令値Va *が閾値krdcより大きい場合、すなわち、変化率制限を実施する場合の最終電圧ノルム指令値Va_fin *を定めている。式(20)の第2式における「Tsmp」は、変化率制限における所定の単位時間(制御周期または演算周期)を表す。「ΔVa」は、電圧ノルム指令値Va *(あるいは最終電圧ノルム指令値Va_fin *)の単位時間あたりの許容変化率である。このため、「TsmpΔVa」は、単位時間Tsmpあたりに許容する電圧ノルム指令値Va *の変化量(許容限界変化量)を表す。また、「Va_fin *-1」は、単位時間Tsmp前の最終電圧ノルム指令値Va_fin *(最終電圧ノルム指令値Va_fin *の前回値)を表す。したがって、第2引数「Va_fin *-1+TsmpΔVa」は、最終電圧ノルム指令値Va_fin *の前回値から許容限界変化量の増加があった場合における電圧ノルム指令値の大きさを表す。すなわち、第2引数「Va_fin *-1+TsmpΔVa」は変化率制限下における電圧ノルムの上限値(許容限界電圧ノルムVa_lim)である。
許容変化率ΔVaは、具体的な電動機9の特性等に合わせて予め定められる。特に、許容限界電圧ノルムVa_limが、第1実施形態の許容限界変調率Mlimを用いて算出された最終電圧ノルム指令値Va_fin *と実質的に同じ値となるように、許容変化率ΔVaは定められる。
以上のように、第2実施形態においては、変調率Mに相関のある状態量である「最終電圧ノルム指令値Va_fin *」に対して変化率制限を実施することにより、第1実施形態において変調率Mに対して変化率制限をした場合と実質的に同じ値の最終電圧ノルム指令値Va_fin *が得られる。したがって、第1実施形態またはその変形例と同様に、波形振動が抑制される。また、第1実施形態において変調率指令値M*が閾値Mr_min以下となるシーンと同様に、第2実施形態において電圧ノルム指令値Va *が閾値krdc以下であるシーンにおいては、過電流が防止される。
なお、上記第2実施形態の最終電圧ノルム指令値Va_fin *に対する変化率制限に対して、第1実施形態の各変形例と同様の変更が可能である。
<第3実施形態>
図18は、第3実施形態における電動機システム300の構成を示すブロック図である。図18に示すように、第3実施形態の電動機システム300は、コンバータ301及び電源電圧制御部302を備える。また、本実施形態においては、バッテリ電圧検出器7は、バッテリ15がコンバータ301を介してインバータ6に印加する直流電圧Vdcを検出する。その他の構成は、第1実施形態と同様である。すなわち、電動機9への印可電圧を決定する方法は、第1実施形態と同様である。
コンバータ301は、バッテリ15の電圧を昇圧または降圧してインバータ6に印加する。また、コンバータ301は、電源電圧制御部302で演算された最終直流電圧指令値Vdc_fin *に基づいて、バッテリ15の電圧を昇圧または降圧し、インバータ6に印加する。すなわち、本実施形態においては、インバータ6に印加する直流電圧Vdcは、電動機9の運転状態に応じて変化する可変値である。
電源電圧制御部302は、トルク目標値T*や回転数N等に基づいて最終直流電圧指令値Vdc_fin *を算出する。図19は、電源電圧制御部302の構成を示すブロック図である。図19に示すように、電源電圧制御部302は、直流電圧指令値演算部303と、変化率リミッタ304と、を備える。
直流電圧指令値演算部303は、トルク目標値T*や回転数Nに基づいて、バッテリ15の電圧から直流電圧指令値Vdc *を演算する。直流電圧指令値Vdc *は、電動機9に印加すべき電圧を指定する目標値である。直流電圧指令値演算部303は、トルク目標値T*及び回転数Nによって定まる電動機9の運転状態(動作点)ごとに、直流電圧指令値Vdc *を対応付けたルックアップテーブルである直流電圧テーブル(図示しない)を備える。このため、直流電圧指令値演算部303は、トルク目標値T*及び回転数Nを取得すると、直流電圧テーブルを参照し、これらのパラメータの組み合わせに応じた直流電圧指令値Vdc *を算出する。
なお、本実施形態においては変調率Mを算出しない。しかし、変調率指令値M*(変調率M)の算出方法(式(13)参照)から分かるとおり、可変値である直流電圧Vdc及びその目標値である直流電圧指令値Vdc *は、変調率Mに相関のある電動機9の状態量である。
変化率リミッタ304は、直流電圧指令値Vdc *の変化率を、予め定められた許容変化率以下に制限する。この変化率制限の後、変化率リミッタ304は、最終直流電圧指令値Vdc_fin *を出力する。変化率リミッタ304は、下記の式(21)にしたがって最終直流電圧指令値Vdc_fin *を演算する。
Figure 2022039839000022
式(21)の「Tsmp」は、変化率制限における所定の単位時間(制御周期または演算周期)を表す。「ΔVdc」は、直流電圧指令値Vdc *(あるいは最終直流電圧指令値Vdc_fin *)の単位時間あたりの許容変化率である。このため「TsmpΔVdc」は、単位時間Tsmpあたりに許容する直流電圧指令値Vdc *の変化量(許容限界変化量)を表す。また、「Vdc_fin *-1」は、単位時間Tsmp前の直流電圧指令値Vdc *(最終直流電圧指令値Vdc_fin *の前回値)を表す。したがって、最小関数の第2引数「Vdc_fin *-1+TsmpΔVdc」は、最終直流電圧指令値Vdc_fin *の前回値から許容限界変化量の増加があった場合における直流電圧指令値の大きさを表す。すなわち、最小関数の第2引数「Vdc_fin *-1+TsmpΔVdc」は変化率制限下における直流電圧Vdcの上限値(許容上限直流電圧Vdc_lim_u)である。
同様に、式(21)における最大関数の第1引数「Vdc_fin *-1-TsmpΔVdc」は、最終直流電圧指令値Vdc_fin *の前回値から許容限界変化量の減少があった場合における直流電圧指令値の大きさを表す。すなわち、最大関数の第1引数「Vdc_fin *-1-TsmpΔVdc」は変化率制限下における直流電圧Vdcの下限値(許容下限直流電圧Vdc_lim_l)である。
そして、許容変化率ΔVdcは、具体的な電動機9の特性等に合わせて予め定められる。特に、許容上限直流電圧Vdc_lim_u及び許容下限直流電圧Vdc_lim_lを用いて算出する各々の最終電圧ノルム指令値Va_fin *が第1実施形態の変調率Mの変化率制限下における最終電圧ノルム指令値Va_fin *と実質的に同じ値となるように、許容変化率ΔVdcは定められる。
図20は、第3実施形態における電動機制御のフローチャートである。第3実施形態では、電源電圧制御部302による直流電圧指令値Vdc *の算出、及び、直流電圧指令値Vdc *に対する変化率制限が実施される。そして、図20に示すように、ステップS301において、これらの結果としての最終直流電圧指令値Vdc_fin *が演算される。この最終直流電圧指令値Vdc_fin *の演算は、ステップS104の制御モード切替判定、及び、ステップS105からステップS108の電流ベクトル制御またはステップS111の電圧位相制御に先立って実行される。これ以外の点は、第1実施形態と同様である。
以上のように、第3実施形態においては、直流電圧Vdcが可変量であるときに、変調率Mに相関のある状態量である「直流電圧指令値Vdc *」に対して変化率制限を実施する。これにより、過変調状態において、変調率Mに対して変化率制限をした場合と実質的に同じ値の最終電圧ノルム指令値Va_fin *が得られる。したがって、第1実施形態またはその変形例と同様に、波形振動が抑制される。
なお、第3実施形態は、変調率M(あるいは変調率指令値M*)に応じて、直流電圧指令値Vdc *に対する変化率制限を、必要に応じて中止する構成に変更することができる。また、第3実施形態は、許容変化率ΔVdcを、例えば電動機9の運転状態に応じて、可変にすることができる。これらの変形の具体的な方法は、いずれも第1実施形態及びその変形例と同様である。
<第4実施形態>
上記第1実施形態及び変形例、第2実施形態、並びに、第3実施形態においては、電動機9はIPM型であるが、これらの電動機制御は、電動機9として巻線界磁型の三相同期電動機を用いる場合にも適用し得る。本実施形態においては、電動機9として巻線界磁型の三相同期電動機を用いる構成を説明する。
図21は、第4実施形態における電動機システム400の構成を示すブロック図である。図21に示すように、電動機システム400の制御対象である電動機401は、巻線界磁型の三相同期電動機である。したがって、電動機401では、d軸及びq軸の制御に加えて、回転子の磁界(いわゆるf軸)が制御可能である。
また、電動機システム400は、電流指令値演算部411、電流制御部412、非干渉制御部413、最終電圧指令値演算部414、界磁電圧出力器415、f軸電流検出器417を備える。電動機システム400は、この他に、変換器4、パルス幅変調信号生成器5、インバータ6、バッテリ電圧検出器7、電流検出器8、回転子検出器10、回転数演算器11、及び、変換器12を備える。但し、これらの構成は第1実施形態と同様であるから、その説明を省略する。
電流指令値演算部411は、トルク目標値T*、回転数N、インバータ6に接続されたバッテリ15の直流電圧Vdcに基づいて、d軸電流目標値id *、q軸電流目標値iq *、及び、f軸電流目標値if *を演算する。電流指令値演算部411は、トルク目標値T*、回転数N、及び、バッテリ15の直流電圧Vdcと、これら各軸の電流指令値(id *,iq *,if *)と、を対応付けるルックアップテーブル(電流指令値テーブル)を有する。このため、電流指令値演算部411は、トルク目標値T*、回転数N、及び、バッテリ15の直流電圧Vdcを取得すると、電流指令値テーブルを参照し、これらの組み合わせに対応する各軸の電流指令値を算出する。電流指令値テーブルに格納される各軸の電流指令値は、実験またはシミュレーション等に基づいて予め定められる。
電流制御部412は、上記各軸の電流指令値と、d軸電流id、q軸電流iq、及び、f軸電流ifに基づいて、d軸電圧指令値Vd *′、q軸電圧指令値Vq *′、及び、f軸電圧指令値Vf *′を演算する。これら各軸の電圧指令値(Vd *′,Vq *′,Vf *′)は、各軸の電流指令値(id *,iq *,if *)と実際に検出された各軸の電流(id,iq,if)とに定常的な偏差が発生せず、所定の応答性で追従するように演算される。これらの演算は、通常、非干渉制御部413が機能することによって、1入力1出力の単純な制御対象特性となる。このため、電流制御部412のこの機能は、例えば、PI制御器(PIフィードバック補償器)、または、ロバストモデルマッチング補償器等によって実現される。
電流制御部412は、さらに、各軸の電流指令値を用いて、d軸電流idの規範応答id_ref、q軸電流iqの規範応答iq_ref、及び、f軸電流ifの規範応答if_refを演算する。具体的には、電流制御部412は、下記の式(22)、式(23)、及び、式(24)にしたがって、これらの各軸電流の規範応答(id_ref,iq_ref,if_ref)をそれぞれ演算する。これらの式における「τm」は所定の時定数である。
Figure 2022039839000023
非干渉制御部413は、非干渉化されたd軸電圧指令値Vd *、q軸電圧指令値Vq *、及び、f軸電圧指令値Vf *を演算する。これら各軸の非干渉化された電圧指令値(Vd *,Vq *,Vf *)の演算は、回転数N(より具体的には電気角速度ωre)、各軸の電圧指令値(Vd *′,Vq *′,Vf *′)、及び、各軸電流の規範応答(id_ref,iq_ref,if_ref)に基づいて行われる。具体的には、非干渉制御部413は、下記の式(25)、式(26)、及び、式(27)にしたがって、各軸の非干渉化された電圧指令値(Vd *,Vq *,Vf *)を演算する。
Figure 2022039839000024
これらの式における「Ld」はd軸のインダクタンスであり、「Lq」はq軸のインダクタンスである。また、「M」は固定子と回転子の相互インダクタンスであり、「M′」は固定子と回転子の動的相互インダクタンスである。また、電気角速度ωreは、下記の式(27)にしたがって、回転数Nの単位を変換することにより求められる。式(28)における「p」は電動機401の極対数である。
Figure 2022039839000025
最終電圧指令値演算部414は、各軸の非干渉化された電圧指令値(Vd *,Vq *,Vf *)に基づいて、d軸最終電圧指令値Vd_fin *、q軸最終電圧指令値Vq_fin *、及び、f軸最終電圧指令値Vf_fin *を演算する。最終電圧指令値演算部414の具体的構成及びこれら各軸の最終電圧指令値の算出方法については、詳細を後述する。
界磁電圧出力器415は、回転子の巻線に印加する界磁電圧Vfがf軸最終電圧指令値Vf_fin *と一致するように、バッテリ416から電動機401に出力する電力を調整する。これにより、界磁電圧出力器415は、回転子の巻線に流れる電流であるf軸電流ifを制御する。
f軸電流検出器417は、f軸電流ifを検出する。検出されたf軸電流ifは、電流制御部412に入力される。
[最終電圧指令値演算部の具体的構成及び各軸の最終電圧指令値の算出方法]
図22は、最終電圧指令値演算部414の構成を示すブロック図である。図22に示すように、最終電圧指令値演算部414は、変調率演算部421と、変化率リミッタ422と、を備える。
変調率演算部421は、d軸電圧指令値Vd *、q軸電圧指令値Vq *、及び、バッテリ15の直流電圧Vdcに基づいて、変調率指令値M*を演算する。具体的には、変調率演算部421は、下記の式(29)にしたがって、変調率指令値M*を演算する。
Figure 2022039839000026
変化率リミッタ422は、変調率指令値M*とf軸電圧指令値Vf *に基づいて、f軸最終電圧指令値Vf_fin *を演算する。より具体的には、変化率リミッタ422は、下記の式(30)にしたがって、f軸最終電圧指令値Vf_fin *を演算する。これにより、変化率リミッタ422は、変調率指令値M*に基づいて、f軸最終電圧指令値Vf_fin *に変化率制限を実施する。
Figure 2022039839000027
式(30)の第1式は、変化率制限を中止する場合、または、変化率制限を実施しない場合のf軸最終電圧指令値Vf_fin *を定めている。すなわち、変調率指令値M*が閾値Mr_min以下である場合、f軸最終電圧指令値Vf_fin *はf軸電圧指令値Vf *である。閾値Mr_minは第1実施形態と同様に定められる。
式(30)の第2式は、変調率指令値M*が閾値Mr_minよりも大きい場合、すなわち、変化率制限を実施する場合のf軸最終電圧指令値Vf_fin *を定めている。最小関数の第2引数が含む「Tsmp」は、変化率制限における所定の単位時間を表す。この単位時間Tsmpは、例えば、変調率指令値M*のサンプリング周期(変化率制限の制御周期)である。また、「ΔVf」は、単位時間Tsmpあたりに許容するf軸最終電圧指令値Vf_fin *の変化量(許容変化率)である。このため、単位時間Tsmpと許容変化率ΔVfの積である「TsmpΔVf」は、単位時間Tsmpあたりに許容するf軸最終電圧指令値Vf_fin *の変化量(許容限界変化量)を表す。また、「Vf_fin *-1」は、単位時間Tsmp前のf軸最終電圧指令値Vf_fin *(f軸最終電圧指令値Vf_fin *の前回値)を表す。したがって、最小値関数の第2引数「Vf_fin *-1+TsmpΔVf」は、f軸最終電圧指令値Vf_fin *の前回値から許容限界変化量の増加があった場合におけるf軸最終電圧指令値の大きさを表す。すなわち、第2引数「Vf_fin *-1+TsmpΔVf」は、変化率制限下におけるf軸最終電圧指令値Vf_fin *の上限値を表す。これにより、過変調状態において、変調率M(変調率指令値M*)を増加させるときに、f軸最終電圧指令値Vf_fin *はこの上限値(「Vf_fin *-1+TsmpΔVf」)に制限される。
また、最終電圧指令値演算部414は、d軸電圧指令値Vd *をそのままd軸最終電圧指令値Vd_fin *として出力する。同様に、最終電圧指令値演算部414は、q軸電圧指令値Vq *をそのままq軸最終電圧指令値Vq_fin *として出力する。
[第4実施形態の作用]
図23は、第4実施形態における電動機制御のフローチャートである。図23に示すように、電動機システム400では、まず、ステップS401において、各軸の電流(id,iq,if)が検出される。また、d軸電流id及びq軸電流iqの演算のために、第1実施形態と同様の座標変換処理行われる。また、ステップS402において、電気角θが取得され、回転数演算処理が実行される。さらに、ステップS403において、トルク目標値T*及びバッテリ15の直流電圧Vdcも取得される。
その後、ステップS404において、電流指令値演算部411によって、各軸の電流指令値(id *,iq *,if *)が算出される。そして、ステップS405において、算出された各軸の電流指令値(id *,iq *,if *)を用いて電流制御が実行される。具体的には、電流制御部412によって、各軸の電圧指令値(Vd *′,Vq *′,Vf *′)と各軸電流の規範応答(id_ref,iq_ref,if_ref)が算出される。また、ステップS406の非干渉制御が実行される。具体的には、非干渉制御部413によって、各軸の電圧指令値(Vd *,Vq *,Vf *)が算出される。
次いで、ステップS407において、各軸の最終電圧指令値(Vd_fin *,Vq_fin *,Vf_fin*)が演算される。特に、本実施形態においては、f軸最終電圧指令値Vf_fin *を算出する際に、f軸最終電圧指令値Vf_fin *に対して、変調率指令値M*に応じた変化率制限が実施される。
こうして各軸の最終電圧指令値が算出されると、出力制御器3による出力制御処理を経て、ステップS408において、変換器4により、三相電圧指令値が算出される。その後、パルス幅変調信号生成器5によって三相電圧指令値に基づくPWM信号が生成され、パルス幅変調による電動機401の制御が実行される。
上記のように、第4実施形態においては、制御対象が巻線界磁型の電動機401であるが、変調率Mまたは変調率Mに相関のある状態量である「f軸最終電圧指令値Vf_fin *」に対して変化率制限を実施する。この変化率制限は、過変調状態において変調率M(変調率指令値M*)を変更するときに、変調率Mまたは変調率Mに相関のある状態量の変化率を、許容変化率ΔVf以下に制限するものである。したがって、第4実施形態においても、第1実施形態と同様に波形振動が抑制される。
なお、上記の第4実施形態は、第1実施形態の各変形例と同様に構成を変更することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
1 :電流ベクトル制御部
2 :電圧位相制御部
5 :パルス幅変調信号生成器
6 :インバータ
9 :電動機
23 :電流目標値演算部
31 :電圧ノルム指令値生成部
39 :最終電圧ノルム演算部
41 :電圧位相指令値生成部
91 :変調率演算部
92 :変化率リミッタ
93 :最終電圧ノルム指令値演算部
201 :変化率リミッタ
300 :電動機システム
301 :コンバータ
304 :変化率リミッタ
400 :電動機システム
401 :電動機
414 :最終電圧指令値演算部
421 :変調率演算部
422 :変化率リミッタ

Claims (12)

  1. インバータから電動機への出力電力の波形をパルス幅変調によって制御する電動機の制御方法であって、
    前記パルス幅変調の変調率を1よりも大きくした過変調状態で前記電動機を制御し、
    前記過変調状態において前記変調率を変更するときに、前記変調率の変化率または前記変調率に相関のある状態量の変化率を、予め定められた許容変化率以下に制限する、
    電動機の制御方法。
  2. 請求項1に記載の電動機の制御方法であって、
    前記過変調状態には、相対的に前記変調率が小さい非矩形波状態と、相対的に前記変調率が大きい矩形波状態と、が含まれ、
    前記変調率を増加させることによって前記過変調状態を前記矩形波状態に近づけ、
    前記変調率を減少させることによって、前記過変調状態を、前記変調率が1以下である非過変調状態に近づけ、
    前記過変調状態において少なくとも前記変調率を増加させるときに、前記変調率の変化率または前記変調率に相関のある状態量の変化率を、前記許容変化率以下に制限する、
    電動機の制御方法。
  3. 請求項1または2に記載の電動機の制御方法であって、
    前記過変調状態において前記変調率を連続的に変化させるときに、前記変調率の変化率または前記変調率に相関のある状態量の変化率を、前記許容変化率以下に制限する、
    電動機の制御方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記変調率を、前記電動機の回転数に応じて変更する、
    電動機の制御方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記許容変化率を、前記電動機の運転状態に応じて変更する、
    電動機の制御方法。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記変調率を減少させるときの前記許容変化率を、前記変調率を増加させるときの前記許容変化率よりも大きくする、
    電動機の制御方法。
  7. 請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記変調率を減少させるときには前記制限を中止する、
    電動機の制御方法。
  8. 請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記電動機の回転数の減速度が大きいほど、前記許容変化率を大きくする、
    電動機の制御方法。
  9. 請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記電動機の回転数の減速度が所定の第1閾値以上であるときには、前記制限を中止する、
    電動機の制御方法。
  10. 請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記変調率が所定の第2閾値未満であるときの前記許容変化率を、前記変調率が前記第2閾値以上であるときの前記許容変化率よりも大きくする、
    電動機の制御方法。
  11. 請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機の制御方法であって、
    前記変調率が所定の第2閾値未満であるときには、前記制限を中止する、
    電動機の制御方法。
  12. インバータと、電動機と、前記インバータから前記電動機への出力電力の波形をパルス幅変調によって制御するコントローラと、を備える電動機システムであって、
    前記コントローラが、
    前記パルス幅変調の変調率を1よりも大きくした過変調状態で前記電動機を制御し、
    前記過変調状態において前記変調率を変更するときに、前記変調率の変化率または前記変調率に相関のある状態量の変化率を、予め定められた許容変化率以下に制限する、
    ように構成されている電動機システム。
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