JP7450862B2 - 地下貯蔵タンクの漏えい試験装置及び試験方法 - Google Patents
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Description
その様な深刻な事態を可能な限り防止するために、地下貯蔵タンクの漏えいを検知する液相部試験が従来から実施されている。そして、液相部試験における漏えいの有無の判定における代表的なしきい値として、EPA(米国環境保護庁)の基準である0.38リットル/時間が存在する。
このしきい値については、液相部の漏れの点検方法、液相部の漏れの点検機器(消防法に定める漏れの点検方法の区分としては、その他の方法に該当)として、一般財団法人全国危険物安全協会の性能を審査・評価する基準(規定するしきい値)と一致する。
ここで、0.38リットル/時間というEPAの基準に相当するタンク内の液面の変位は極めて微少な数値であるため、液面の変位量がしきい値を超えたか否かを判断するにあたっては、試験対象であるタンクの液面が安定している(液位が変動していない)ことが必要である。そのため、タンク内の液面が安定するまで液面が変位したか否かの判断を行うことが出来ない。
しかし、給油取扱所等は交通量が多い区域に設置されていることから、給油所取扱所等の近傍を車両が通行した際に生じる振動により、タンク内の液面が上下動する不安定な状態となる。また、予測しようのない計画配送によって試験実施の直前にローリー荷卸しがありタンク内の液面が変位する、或いは、前述と同様に当該施設内を車両等が通行することにより、計測途中にタンク内の液面位が不安定になる。
それに加えて、液相部試験における減圧による試験機のセンサーフロートの浮力変化、タンク内気相部の気圧変化、揮発油系の油種における可燃性蒸気の影響、タンク胴長方向の僅かな撓みによる貯蔵液面の変動等により、タンク内の液面位は不安定になる。
既存の液相部試験では、試験機をセッティングした後に液面の安定を待つ所定時間を経過してもタンク内の液面位が安定しない場合には、タンク内の液面位が安定するまで当該所定時間が延長される。そのため、従来の液相部試験では、試験時間が長くなることが多くあり、試験終了までの所要時間の予測が見通せず、液相部試験の予定を正確に策定すること、並びにタンクの所有者、または運営管理者への告知が困難であった。
仮に地下貯蔵タンクを設置した給油取扱所等の操業が停止している時間帯(比較的静閑な深夜、早朝)に液相部試験を実施しても操業時間にずれ込んでしまうことや、タンク内の液面位が不安定な状態で液相部試験を実施しなければならない場合がある。
また、直径0.3mmの漏えい孔からの漏えい量を予め求め、予め求めた漏えい量と実際の漏えい量とを比較する技術が提案されている(特許文献2)。しかし、係る従来技術(特許文献2)は、直径0.3mmの漏えい孔からの漏えい量は0.79リットル/時間であり、0.38リットル/時間というEPAの基準の2倍以上の数値となってしまうので、EPAの基準を満たす高精度の液相部試験を実施することが困難である。
液相部試験の対象となるタンク内を減圧すると、ある減圧値に到達した時点からタンク内に貯蔵された液体がタンク外には、流出しないこと、
一般財団法人全国危険物安全協会が所有する標準0.3mmテストピース(疑似漏えい孔)からタンク内に流入する水の量は時間の経過につれて、ほぼ正比例するため、内径0.3mmの漏えい孔から流入する水の量のみを捉えて判定すれば良いこと、
を見出した。
当該制御装置(10)は、大気圧下のタンク(1)内の液面の変位を液面変位センサー(2)により第1の所定時間(例えば5分)だけ計測する機能(図6:点A~点Bの領域:液面確認)と、
タンク(1)内を(設定減圧値:タンク底部で-5kPa、或いは-10kPa)となる様に減圧させる操作を指示する(液相部試験機10にメッセージを表示する)機能(図6:点B~点Cの領域:減圧区間)と、
減圧した後、第2の所定時間(図24、図25で示す水の流入計測時間しきい値)でタンク(1)内の液面の変位量を計測、記億(記録)する機能(図6:点C~点Dの領域:計測時間)と、
第2の所定時間が経過した後、タンク(1)内の減圧を開放させる(脱圧する;液相部試験機10にメッセージを表示する)操作を指示する機能(図6:点D~点Eの領域:減圧開放)と、
タンク内が大気圧となった後に、大気圧になった時点におけるタンク内の液面変位量を計測して、計測された液面位と漏えいが無いと仮定した場合の仮想液面位(0.00mm)との差異がしきい値(例えば0.025mm)を上回っている場合に漏えいがあると判定する機能(図6:点E~点Fまでの領域:判定区間)を有していることを特徴としている。
そして、試験装置(100)とは別にタンク諸元(タンクの内径寸法、胴長寸法、鏡寸法等)を入力すると、タンク容量(Q)及び液面高さ(H)へ換算(演算させる)する機能を有する情報処理装置(例えばPC)を有し、当該情報処理装置を用いて本発明におけるしきい値の根拠となるデータを導き出す。
この場合、例えばタンクの容量が同一でタンク諸元(内径寸法、胴長寸法、鏡寸法)に相違があっても、そのうち最大水平投影面積が最も大きくなる、すなわち液面変位量(H)が最も小さくなるタンク諸元から、0.38リットル/時間以上に相当する水の流入量に達する時間によって漏えいしきい値を規定する。
タンクの中心位置で変位量がしきい値を超えなければ、地下水に接しているタンクのどの部分に漏えい孔があったとしても漏れがない(異常なし)と判定できる。これにより、液相部試験機(10)には、試験対象のタンク容量のみを入力させればよい。
前記液相部試験機(10)は、前記実験装置(30)により求めた水の量及びその流入時間と、前記情報処理装置で導き出したタンク容量(Q)及び液面高さ(H)から、試験対象となるタンク(1)の容量毎(例えば5キロリットル、10キロリットル等)に、前記第2の所定時間(図24、図25で示す水の流入計測時間しきい値)を規定する機能を有しているのが好ましい。
大気圧下のタンク(1)内の液面変位を液面変位センサー(2)により第1の所定時間(例えば5分)だけ計測する工程(図6:点A~点Bの領域:液面確認)と、
タンク(1)内を(設定減圧値:タンク底部で-5kPa、或いは-10kPaとなる様に)減圧する工程(図6:点B~点Cの領域:減圧区間)と、
減圧した後、第2の所定時間(図24、図25で示す水の流入計測時間しきい値)でタンク(1)内の液面の変位量を計測する工程(図6:点C~点Dの領域:計測時間)と、
第2の所定時間が経過した後、タンク(1)内の減圧を開放する(脱圧する)工程(図6:点D~点Eの領域:減圧開放)と、
タンク(1)内が大気圧となった時点におけるタンク(1)内の液面の変位量を計測して、計測された液面位と漏えいが無いと仮定した場合の仮想液面位(0.00mm)との差異がしきい値(例えば0.025mm)を上回っている場合に漏えいがあると判定する工程(図6:点E~点Fまでの領域:判定区間)を有していることを特徴としている。
実験装置(30)により、直径0.3mmの開口部(33:標準テストピース:疑似漏えい孔)からタンク(31:実験装置30におけるタンク代替容器)内に流入する水の量及びその流入時間を計測し、
情報処理装置(例えばPC)によりタンク容量毎の液面高さ(H)から容量(Q)へ換算した値を導き出す。
前記実験装置(30)により求めた水の量及びその流入時間と、前記情報処理装置で導き出した容量(Q)及び液面高さ(H)から、前記液相部試験機(10)により、試験対象となるタンク(1)の容量毎(例えば5キロリットル、10キロリットル等)に、前記第2の所定時間(図24、図25で示す水の流入計測時間しきい値)を規定するのが好ましい。
また本発明は、容量が50キロリットル以下のタンクに適用されるのが好ましい。
最初に図1を参照して、給油取扱所等の地下に埋設された鋼製一重殻タンク1の液相部試験について説明する。
図1において、全体を符号100で示す制御装置(タンク漏えい試験装置)は、試験対象となるタンク1(例えば貯蔵タンク)内の貯蔵液面の変位を計測する液面変位センサー2と、液面変位センサー2の計測結果に基づいて試験対象となるタンク1に、しきい値以上の地下水が流入しているか否かを判断する機能を有する液相部試験機10とを有している。液相部試験機10は、計測開始から終了までの工程毎に操作指示、計測データの保存、判定に関するアプリケーションソフトをインストールする機能を有しており、それら情報の処理能力を有する装置、例えばPC(パーソナルコンピュータ)に匹敵する一部の機能を含んで構成されている。
液面変位センサー2は、タンク1内に配置し、センサーフロート2Aにより貯蔵液面を検出し、その計測結果を計測ケーブル2Bにより液相部試験機10に送信する。符号2Cは計量管を示す。
液面変位センサー2、センサーフロート2Aは、液相部試験機10との接続により
その機能を発揮する。
圧力計3は、タンク1内の気相部に連通した配管(例えば注入管3A)を介してタンク1内の気相部の圧力を計測する機能を有している。
減圧ポンプ4は、タンク1内の気相部に連通した配管(例えば通気管4A)を介して、タンク1内を減圧する機能を有している。圧力計3を監視しながら減圧ポンプ4により減圧することにより、タンク1内の所定箇所(例えばタンク底部)の圧力を-5kPa或いは-10kPa(減圧設定値)に減圧する。符号4Bは、減圧装置の排気口(例えば仮設通気口)を示す。
図1では図示されていないが、圧力計3及び減圧ポンプ4は、液相部試験機10が表示(例えば操作タッチパネルによる表示)する操作指示により、検査員が運転管理(操作)を行う。
図1において、タンク1(例えば地下貯蔵タンク)の近傍には計量機6が配置されており、計量機6は吸引管5によりタンク1と接続している。図1では示されていないが、計量機6には給油ホース、給油ノズルが設けられており、車両等にタンク1内の燃料(油)を供給することが出来る。そして吸引管5には逆止弁7が介装されている。
液相部試験機10は、後述する実験装置30により求めたタンク代替容器31(本明細書では「タンク31」或いは「容器31」と記載する場合がある)に流入する水の量及びその流入時間と、情報処理装置で導き出した漏えいのしきい値(例えば、EPAの基準)から、試験対象となるタンク1の容量毎(例えば5キロリットル、10キロリットル等)に、水の流入計測時間のしきい値(第2の所定時間:図24、図25)を規定する機能を有している。
-20kPaを超える減圧を行うと、タンクが変形、或いは破損する恐れがあるため、設定減圧値は、試験実施時の入力(貯蔵液面の高さ、地下水の高さ)条件に応じて、タンク底部で-5kPa、-10kPaの、いずれかで実施できる機能を有している。
図1~図6において、出願人も実施経験のある容量30キロリットルのタンクを例にして説明する。
最初に、図2を参照して、揮発油系以外の油種における既存の液相部試験機10による態様を説明する。
揮発油系以外の油種における液相部試験では、図2において、時間軸である横軸における点Aで液相部試験機10のスタートボタンの押下から所定時間(例えば20分:点A~点Bまでの時間)は、液面安定確認時間として設定されている。この液面安定確認時間は、液面変位センサー2(図1)が点Bで液面位0.00mmを検知するまでは、自動的に延長される。(例えば20分経過時点から1分間ずつ加算される)
図2の点A~点Bの領域(時間帯)では、試験中止と再測定以外には、検査員による操作はできない。
液面安定確認時間が終了すると(点B)、減圧開始のメッセージが液相部試験機10のディスプレイに表示され、検査員が係る表示に対して操作を行い、タンク1の気相部を減圧値まで減圧する工程(点B~点C)を開始する。減圧するべき値については後述する。
図2において、減圧区間(点B~点C)では液面位(図2の縦軸)が上昇している。減圧されてタンク1が内側に僅かに撓むこと、タンク1内の気圧変化により液面が膨張したこと等による。そして減圧が完了した後(点C)に、気泡音確認試験(特許文献1参照)を行う。そして、再び検査員がスタート操作を行うことにより、液相部試験は判定区間(図2の点C~点Dの領域)に移行する。
点C~点Dの判定区間の所要時間については、減圧設定値が-5kPaでは60分間、減圧設定値が-10kPaでは45分間の標準計測時間が規定されている。
液面変位量がしきい値の範囲を超えている場合は「異常あり」と判定される。
なお、点C~点Dの領域内(判定区間)において、液面変位量が正のしきい値(+0.020mm)を超えるのは、吸引管5(図1)における逆止弁7(図1)の不良により液(油)が計量機6(図1)側からタンク1側に戻ることか、或いは、タンク1内に水が流入することを要因として加味しなければならない。また、液面変位量が負のしきい値(-0.020mm)を超える場合には、0.3mmを遥かに上回る漏えい孔からの貯蔵液の流出も考えられる。
検査員は何れに起因するのかを判断し、その判断結果に基づいて、液相部試験機10のディスプレイの警告表示から、試験継続(警告発報時点から標準計測時間到達点Dまで)、試験終了(強制的に異常あり判定並びに試験中止)、再計測(点Cへ戻る)、試験延長(点Dから再度標準計測時間以上が加算される)、試験中止(判定しない)の何れかを選択して、液相部試験機10を操作する。
計測区間が経過し、判定が終了すると(点D)、判定結果が自動的に液相部試験機10の本体に記憶(記録)されると共に、例えば液相部試験機10に装着されたUSBメモリー等の記憶装置にも取り込まれる。
試験結果データは、外部接続機器(例えばPCとプリンター)を用いて出力する。
液相部試験機10のスタートボタンの押下から所定時間(例えば20分の液面安定確認時間)と、減圧を行うまでは(図3の点A~点B、点B~点Cの領域)、図2と同様である。
図3においては、減圧が完了して気泡音確認試験を行った後に、再度の液面安定確認時間(点C~点D:安定確認II)が設けられている。揮発油系の油種では可燃性蒸気の発生と可燃性蒸気が液に戻ろうとする作用により液面が変位するため、その影響を取り除くべく再度の液面安定確認が必要となる。
再度の液面安定確認においては10分間の静観時間が設定されており、当該静観時間が経過した後の3分間で液面が安定しているか否か(或いは液面が変動しているか否か)を判定し、13分経過時点で液面が不安定な場合には1分間ごとに液面変位を計測し、液面変位がおさまる(或いは液面が安定する:0.00mm)まで1分ずつ自動的に延長される。
点C~点Dの安定確認IIにおいても、液面変位量が正のしきい値(+0.020mm)を超えるのは、図2の判定区間(点C~点D)の場合と同様に、吸引管5における逆止弁7の不良により液(油)が計量機6側からタンク1側に戻ることか、或いは、タンク1内に水が流入することも要因として加味しなければならない。
また、液面変位量が負のしきい値(-0.020mm)を超える場合は、0.3mmを遥かに上回る漏えい孔からの貯蔵液の流出も考えられる。
検査員は何れに起因するのかを判断し、その判断結果に基づいて、液相部試験機10のディスプレイの警告表示から、試験継続、試験終了、再計測、試験中止の何れかを選択し、液相部試験機10の操作を行う。
これら検査員の判定による操作説明は、図2を参照して前述したのと同じである。
図3の揮発油系の油種における液相部試験においても、点D~点Eの判定区間の経過後、液面位量がしきい値の範囲(±0.020mm)内であれば、試験されたタンクは「異常なし」と判定される。液面位量がしきい値の範囲を超えている場合(±0.025mm以上)の場合には「異常あり」と判定される。
点D~点Eの領域(判定区間)においても、液面位量が正のしきい値(+0.020mm)を超えた場合には、再度の液面安定(点C~点D:安定確認II)と同様に、吸引管5における逆止弁7の不良により液(油)が計量機6側からタンク1側に戻ることか、或いは、タンク1内に水が流入することも要因として加味しなければならない。
また、液面変位量が負のしきい値(-0.020mm)を超えるのは、0.3mmを遥かに上回る漏えい孔からの貯蔵液の流出も考えられる。
検査員は何れに起因するのかを判断し、その判断結果に基づいて、液相部試験機10のディスプレイの警告表示から、試験継続(警告発報時点から標準計測時間到達点Dまで)、試験終了(強制的に異常あり判定並びに試験中止)、再計測(点Cへ戻る)、試験延長(点Dから再度標準計測時間以上が加算される)、試験中止(判定しない)の何れかを選択し、液相部試験機10の操作を行う。
試験結果データは、外部接続機器(例えばPCとプリンター)を用いて出力する。
上述した様に、液相部試験では、タンク底部の圧力を減圧設定値として-5kPa、または-10kPaとなるように気相部を減圧して実施される。-5kPaによる判定時間は、-10kPaによる判定時間よりも長くなる。
図4において、タンク1内の貯蔵液(油)の液位を h とすると、液位に対してタンク底部には ρgh(ρは液の密度、gは重力加速度、液位hの単位はmm)だけ液圧が作用する。そのため、タンク底部の圧力を-10kPaとするのであれば、図示しない地下水位がタンク底部より下方の場合には、タンク1の気相部を減圧するべき値は、-(hmm)×0.01-10kPaとなる。
一方、タンク底部よりも上方に地下水位が存在する場合には、当該地下水位(タンク底部よりも上方の部分の水の高さをHmmとすれば、タンク1の気相部を減圧するべき値は、-(hmm)×0.01-10kPa+(Hmm)×0.01となる。
減圧設定値=-500×0.01-5kPa=-10kPa となる。
一方、地下水位がタンク底部より200mm高ければ、
減圧設定値=-500×0.01-5kPa+200×0.01=-8kPa となる。
また、減圧設定値が-10kPa、h=500mmで、地下水位がタンク底部より下方の場合には、
減圧設定値=-500×0.0110(kPa)=-15kPa となる。
ここで地下水位がタンク底部より200mm高ければ、
減圧設定値=-500×0.01-10(kPa)+200×0.01=-13kPaとなる。
EPAの基準である0.38リットル/時間で検出できる漏えい量を、タンク容量に応じて液面変位量に換算した数値をしきい値として用いる。
液面変位センサー2(図1)は、液相試験実施毎に条件(貯蔵液面の高さ)が異なるため、液面の高さに関係なく、液面変位センサーフロート2A(図1)が浮上している位置で計測、判定をする。
このときのしきい値は、タンク1において最も液面が変位しない高さ方向の位置、すなわち、最大水平投影面積となる位置の変位量を規定する。
タンク1において最も液面が変位しない高さ方向位置、最大水平投影面積の位置は、タンク中心高さの位置、図5(A)において一点鎖線で示す平面CLであり、図5(B)において一点鎖線で示す平面CSである。
図1~図5の液相部試験では、地下水の流入量(或いは貯蔵液の流出量)を、タンク1において最も液面が変位しない高さ方向の位置、最大水平投影面積となる位置(図5の平面CL、CS)の変位量をしきい値として規定することにより、タンク中心位置で変位量がしきい値を超えなければ、地下水に接しているタンクのどの部分に漏えい孔があったとしても漏れがない(異常なし)と判定できる。または、異常ありの場合は、規定した「しきい値」を必ず上回るので正しく判定できる。
例えば既存の液相部試験機10では、±0.025mm以上であれば「異常あり」と判定され、±0.020mmの範囲内にあれば「異常なし」と判定される。
また、図示の実施形態では、タンク容量が異なる場合でも、±0.020mm、±0.025mmのしきい値は共通である。これは、タンク容量(例えば5キロリットル、10キロリットル等)に応じて計測(判定)区間(図2の点C~点Dの領域:図3の点D~点Eの領域)の時間を変更して調節しているからである。
先ず、図2及び図3における点A~点Bの領域(液面安定確認)と、図2における点C~点Dの領域(計測(判定)区間)と、図3における点C~点Dの領域(安定確認II)と、図3における点D~点Eの領域(計測(判定)区間)においては、標準的な時間、或いは標準計測時間が経過しても、タンク1内の液面(液面変位センサー2で計測している液面)が安定しないと、試験が進行しない、または、終了しない。
予測しようのない計画配送によって試験実施の直前にローリー荷卸しがありタンク内の液面が変位する、或いは、近隣を車両が通行することによる振動により、計測途中にタンク1内の液面が不安定な状況となる場合がある。それに加えて、液相部試験における減圧による液相部試験機10のセンサーフロート2A(図1)の浮力変化、気相部の気圧変化、揮発油系の油種における可燃性蒸気の発生、液戻りの影響、タンク胴長方向の僅かな撓みによる貯蔵液面の変動等、すなわちタンク内の液面が不安定になる。そのため、液相部試験の精度を高く保持することが困難である。
さらに、タンク内液面が不安定な状態で液相部試験を実施した結果、図2及び図3の点A~点Bの領域(液面安定確認)と、図3における点C~点Dの領域(安定確認II)では、液面位が0.00mmにはならず、安定確認を繰り返し実行しなければならなくなる。
また、図2における点C~点Dの領域(計測(判定)区間)と、図3における点D~点Eの領域(計測(判定)区間)においては、液面変位量が異常なしのしきい値の範囲内(±0.020mm)を超えた時、検査員による合否の判断は、非常に困難であり、再計測等の操作によって時間を延長せざるを得ない状態が繰り返して生じてしまう。
その結果、従来の液相部試験では、試験に要する時間が長くなり、施設の操業再開に影響を及ぼし、試験終了までの所要時間の予測も困難であった。
それに加えて、図3の点C~点Dの領域(安定確認II)において、液面変位が正のしきい値(+0.020mm)を一時的に超えても、判定終了時点までに液面位が正常な範囲内に戻る(合格範囲の±0.020mmの範囲に戻る)場合(いわゆる「液戻り」)については、試験実施毎の条件、作業環境等によって一律に発生する事象とは限らない。
それに加えて、吸引管5における逆止弁7の不良により液(油)が計量機6側からタンク1側に戻ること、或いは、タンク1内に水が流入すること、また、液面変位量が負のしきい値(-0.020mm)を超える(0.3mmを超える漏えい孔から流出の疑い)こと、これらを検査員が判断し、その判断結果に基づいて液相部試験機10の操作を行うことは、従来の液相部試験の長時間化を助長する要因ともなっている。
その様な長時間に亘る従来の液相部試験では、実施をするのに多大なコストとリスクが生じていた。
そして、減圧が維持されている状況下でタンクの液面を計測して判定せずに、大気圧下における液面の変位量を比較して判定している。そのため、試験開始前、減圧後の液面が安定するまで時間を待つ、或いは、数回におよぶ繰り返し、または、試験延長等をしなくても、液相部試験の判定精度(水の流入による液面変位量の検出)は、従来方式よりも高い水準とすることが出来る。
なお、図示(図6)の実施形態では、揮発油系の油種であっても、図3における点C~点Dの領域(安定確認II)の処理を必要としない。すなわち、揮発油系の油種であっても、揮発油系以外の油種であっても、同一の手順(工程)で試験を実施することが出来る。
また、既存の液戻りは、計測時間内においては極めて微小であり、一律に発生する事象ではない。吸引管の逆止弁不良による油戻りについては、タンク液相部の試験に意図しないもの(配管の試験に該当)であり、別途実施される吸引管の試験で判定できる。そのため、既存の液戻り、吸引管の逆止弁不良による油戻りによる液面変位量の検出分を液相部試験の判定に反映させることは、好ましくない。
更には、吸引管の内容積は、数リットルから数十リットルであることから、上述した液戻り、油戻りの液面変位量は、0.38リットル/時間に換算した液面変位量を大きく上回る数mm~数十mmであるため、液相部試験機10のディスプレイに表示される液面の変位量を検査員が監視(確認)することで、極端な液面変位、すなわち、油戻りとして捉えられる。
よって、既存の液相部試験機10の液戻り、油戻りを検出する機能(判定、操作を含む)は、本発明では、必要としない。
タンク容量が50キロリットルを上回ると、試験の所要時間が既存技術と同等であるか、或いは既存技術よりも長い時間となってしまうことが、発明者の実験研究で明らかになっているからである。
図示の実施形態に係る液相部試験の手順(工程)を、液相部試験における経過時間と液面位の特性図である図6を参照して、以下に説明する。
ここで、タンク1内の雰囲気(貯蔵液の温度)に馴染ませるため、液面変位センサー2(図1)は、ほかの必要機材をセットする以前に(一番初めに)タンク1内に設置することが好ましい。
また、図6の点C~点Dの領域(計測時間)では、タンク気相部の微減圧試験を実施しない(微減圧試験は、図示の実施形態に係る液相部試験と同時には実施しない)。
これについては、液相部試験機10の操作手順書(取扱説明書)に明記することが好ましい。なぜならば、図示の実施形態では、減圧区間内の水の流入に伴う液面変位量よりも計測区間内の水の流入に伴う液面変位量を重視する、よって、計測区間内に従来の技術では禁じられていた追加の減圧が行われる可能性が存在することによる。
所定時間(第1の所定時間:例えば5分)が経過して点Bに到達したならば、タンク1内の液面が変位した数値y(液面変位量:点Aにおける液面と点Bにおける液面との差異)がしきい値(±0.020mm)の範囲内であるか否かが判定される。液面変位量がしきい値の範囲を超えた場合には、検査員による例えば液相部試験機10の操作(例えば再測定キー、または中止キーの押下)により液相部試験の再測定、または、試験を中止することも出来る。換言すれば、点A~点Bの区間内に液面変位量がしきい値の範囲を超えた場合に検査員が行える液相部試験機10の操作は、試験の再測定か、試験中止に限定される。
点Bで液相部試験機10を操作すること(例えば減圧開始キー押下)によって、液相部試験機10に記憶(記録)される液面は、仮想液面位0.00mmに自動設定される。
そして、圧力計3を監視しながらタンク毎の試験条件(貯蔵液面の高さ、地下水位の高さ)に応じて設定減圧値となる様に減圧する(点B~点Cの領域:減圧区間)。
水の流入計測時間しきい値(第2の所定時間)については、図8~図25を参照して後述する。
ここで、液相部試験に際して、点A以前の段階でタンクデータを入力しており、そのタンクデータに基づいて、図24、図25で示す水の流入計測時間しきい値(第2の所定時間)が自動的に液相部試験機10に設定される。
なお、点C~点Dの領域(計測時間)において、タンク1内の減圧値が設定減圧値の10%以上を超えて上昇してしまった場合には、検査員により設定減圧値を超えない範囲で追加の減圧をすることが可能である。
係る脱圧の表示を確認したのち、検査員は図1で示されていないバルブ等を開放して脱圧を開始する(点D~点Eの領域:減圧開放)。減圧開放の終点である点Eにおいて、検査員はタンク1内の圧力(図1の圧力計3の指示)がゼロであることを確認して、液相部試験機10の操作(例えば判定キー押下)によって判定を開始させる。
図24、図25で示す水の流入計測時間しきい値(第2の所定時間)を決定するに際しては、後述する様に既存の液相部試験における異常ありのしきい値である0.025mmを超える0.030mmを基準にしている。
点B~点Cの減圧区間においても漏えいがある場合には、タンク1内に水が流入する。そのため、液相部試験の対象となるタンク1の地下水に接している部分(試験の範囲内)に漏えい箇所がある場合には、点B~点Cの減圧区間、及び点C~点Dの計測時間にタンク1内に水が流入し、既存の液相部試験における異常ありのしきい値である0.025mmを超える、すなわち、点Fにおける変位量△hは、0.025mmを確実に上回ることになる。
ここで示す変位量△hは、点Fにおけるタンク液面位と、仮想液面位0.00mm(減圧開始前の点Bにおいて自動設定された仮想液面位)との差異である。
図6において、点Fにおける変位量△hと点Gにおける変位量△h′が一致している、かつ当該変位量△h或いは△h′が0.02mm以下である場合、或いは、点Fにおける変位量△hと点Gにおける変位量△h′が不一致であるが、点Gにおける変位量△h′からy′の値を減じた数値が0.02mm以下である場合は、「異常なし」と判定する。
一方、点Fにおける変位量△hが0.025mmを超える場合、或いは、点Gにおける変位量△h′からy′の値を減じた数値が0.025mmを超える場合は、「異常あり」と判定する。
データ例1~3の各々について説明する。
データ例1は△hと△h′が一致しており、0.025mmよりも大きいので、異常ありと判定される。データ例1は、外的要因の影響を受けにくいタンク条件と作業環境で、水の流入に伴う液面変位量が維持された例である。
データ例2は異常なしと判定される例である。データ例2では、液面変位量が点Gに向けて(図6の右側に向けて)緩やかに仮想液面位0.00mm側に近接しており、点F~点Gの領域でも同様の傾向を示している。データ例2では、△h′は0.000mm~0.020mmの範囲内に収まる傾向を示している。データ例2は、液相部試験の対象となるタンクの気相部容量が大きく貯蔵液量が少ない等の例である。これは、タンク内の断面積と圧力計3の接続口(図1参照)の断面積の差異により、圧力計3の指示がゼロであってもタンク内に残圧が存在する例である。或いは、タンク内の貯蔵液が揮発油系の油種であり、減圧に伴う可燃性蒸気の影響を受けた例である。
データ例3も異常なしと判定される例である。データ例3では、液面変位の特性が点Eから点Fまで、仮想液面0.000mm~0.020mmの範囲内で推移しており、0.025mmを越えることはない。データ例3は、タンク容量(気相部容量)が小さい等の例である。或いは、タンク内の貯蔵液が揮発油系以外の油種における代表的な例である。
図示の実施形態に係る液相部試験の手順(工程)を示す図7において、右側の列のステップは検査員が行う液相部試験機10、及び他の必要機材の操作を示し、左側の列のステップは検査員が行う液相部試験機10の操作により自動で実行される処理を示している。
また、図7において、符号(A)~(G)の各々は、図6における点A~点Gでそれぞれ実行されるステップを示している。
そしてステップS1に進む。
ステップS1では、検査員によって液相部試験装置10が操作される。その一環としてステップS1-1では、当該試験に必要な各種データ(タンク容量、油種、液面高さ、地下水高さ、タンク番号、液比重)が液相部試験機10に入力される。
そしてステップS1-2では、入力データの条件により、-5kPa、-10kPaのいずれかの設定減圧値を選択する。ステップS1-3の様に、各種データ入力の結果、最大減圧値が-20kPaを超える場合には、減圧の過程でタンク1が変形、破損の恐れがあるため、液相部試験の実施は、不可能とする。これは液相部試験機10(例えば操作タッチパネル)に-20kPaを超える警告メッセージ、並びに警報音(ブザー等)を発し、検査員による操作を禁止(例えばキー操作を不可)する。
なお、ステップS1、ステップS2の後、液相部試験装置10(例えば操作タッチパネル)のスタートキーが押下された後から、ステップS8の計測開始までの間は、液相部試験を中止する場合、或いは再試験を行う場合のみ検査員による機器操作が制限される。液相部試験の中止の場合は、ステップS1からやり直し、再試験の場合は、ステップS3へ自動的に戻る。
ステップS3では、液面変位確認を実行する。所定時間(第1の所定時間:例えば5分)において、大気圧に調整されたタンク1内の液面変動(液面変位量)がしきい値(±0.020mm)の範囲内であるか否かが判定される。
ステップS3の結果、液面変位量がしきい値(±0.020mm)の範囲内の場合にはステップ4-1に進み、液面変位量がしきい値(±0.020mm)の範囲内でない場合(ステップS3が「No」:ステップ4-2)は、ステップS5(検査員の判断操作)に進む。
減圧開始キーの押下と同時に仮想液面が0mmに自動設定される。そして、ステップS6に進む。ステップS4-1は図6の点Bに対応する。
前述のとおりステップS4-2(ステップS3が「No」)の場合は、液面変位量がしきい値(±0.020mm)の範囲内でないので、対応を検査員の判断に委ねるべく、ステップS5に進む。
ステップS5では、検査員は再測定を行うか、或いは本液相部試験を中止にするかを決定する。検査員の決定が再測定の場合、ステップS3に戻り、液相部試験を継続する。検査員が中止の決定をした場合には、液相部試験は前述のとおり中止される。このとき液相部試験機10の記憶(記録)はクリアされる。よって試験中止後の再開は、ステップS1からやり直しとなる。
ステップS5における検査員による液相部試験機10(例えばタッチ操作パネル)のキー表示は、例えば「再試験」、「中止」とする。
そしてステップS7に進む。
ステップS7では、タンク1内が設定された減圧値となり、減圧が終了している。ステップS7は図6の点Cに対応する。そして、ステップS7-1で気泡音確認試験を終了させたら、ステップS8に進む。
なお、ステップS7-1の終了時点以降は、検査員の判断(判定)による液相部試験機10の操作はできない。液相部試験機10による自動運転(自動制御)が行われる。
ステップS8は図6の点Cに対応する。
ステップS8では、図6の点C~点Dの領域の時間である計測時間が、図24、図25で示す水の流入計測時間しきい値(第2の所定時間)に設定される。当該計測時間しきい値(第2の所定時間)は、タンク容量毎に、減圧値に応じて決定されている。例えば、タンク1の容量が20キロリットルを超え30キロリットル以下で、減圧値が-5kPa、または-10kPaの場合は、地下水位と貯蔵液面高さとの上下位置関係に対応してステップS8-1~ステップS8-3に記載したように、水の流入計測時間しきい値(第2の所定時間)が設定される。
ステップS8-1は、地下水位が貯蔵液面以下の場合であり、減圧値-5kPaで計測時間しきい値は120分、減圧値-10kPaで計測時間しきい値は90分である。
ステップS8-2は、貯蔵液面が地下水位より低いが、その差が500mm以下の場合であり、減圧値-5kPaで計測時間しきい値は135分、減圧値-10kPaで計測時間しきい値は105分である。
ステップS8-3は、貯蔵液面が地下水位より低く、その差が500mmを超える場合であり、減圧値は0kPa(減圧しない)で計測時間しきい値は98分である。
ステップS8-1、S8-2、S8-3においては、検査員による進捗監視(圧力計3の指示を確認)が行われ、必要な処置を行う(ステップS9)。例えばタンク1内の減圧値が設定減圧値の10%を超えて上昇してしまった場合には、設定減圧値を超えない範囲で追加の減圧を行う。
ステップS-8の終了後、ステップS10に進む。
そしてステップS11に進む。
ステップS11では、タンク1に連通する配管における図示していない配管密閉治具のバルブ等を開放し、減圧開放(脱圧)を開始する。
ステップS11は図6の点Dに対応する。
そしてステップS12に進む。
ステップS12では、減圧開放(脱圧)の終点である図6の点Eにおいて、タンク1内の圧力がゼロ(圧力計3の指示がゼロ)であることを確認し、減圧開放(脱圧)の完了が確認される。そしてステップS13に続く。
ステップS13に続くステップS14では、判定終了時点で最終の判定をするために液面確認を行う。確認時間は1分間である。
液面確認の結果、例えば図6の点F、或いは点Gにおけるタンク液面位と、仮想液面位0.00mm(減圧開始時に点Bにおいて自動設定された仮想液面)との差異である変位量△h或いは△h′(点Fにおける変位量△hと点Gにおける変位量△h′)が「±0.02mm」以内であるか否かを判定する。
変位量△h及び△h′が「±0.02mm」以内であれば「異常なし」と判定され、変位量△h或いは△h′が「±0.02mm」以内でなければ「異常あり」と判定される。
点Fにおける変位量△h及び点Gにおける変位量△h′による異常の有無の判定詳細は、前述の図6を参照して説明した通りである。ステップS14は図6の点F~点Gに対応する。
ステップS14に続くステップS15では、計測及び判定終了を受け、前述のタンク液面の変位量△h、△h′に基づいて、タンク1の漏えいの有無について正式な合否判定結果は、自動的に液相部試験機10の本体に記憶されると共に、例えば装着されたUSBメモリー等の記憶装置に取り込まれる。
ステップS15は図6の点Gに対応する。
なお、図7には図示していないが、吸引管5(図1)における逆止弁7の不良により液(油)が計量機6側からタンク1側に戻ることによる△h、△h′への影響は、当該配管内の容積から鑑みて数リットル~数十リットル、液面変位量換算では数mm~数十mmとして捉えられる(判定結果は、「異常あり」)。しかし、この判定結果は、前述のとおり液相部試験(タンク1)の漏えいの有無(合否判定)とは無関係である配管の異常を示すものである。よって、検査員の判断により強制終了(例えば液相部試験装置10の電源をOFF)し、逆止弁の補修、またはその影響を除去した後、再度液相部試験を行う必要がある。このことは、液相部試験機10の操作手順書(取扱説明書)に明記する。
また、減圧を維持した状況でタンク内液面の計測から判定をせずに、大気圧で計測した減圧前の数値(図6の点A、点B)と減圧後の数値(点F、点G)とを比較して、その変動量でタンク1の漏えいの有無に関して判断するので、既存技術の様に、減圧後の液面が安定するまで計測を行うことが出来ない、すなわち減圧後の液面が安定するまで待機することなく、正確にタンク1に流入した水の量を捉えることで、タンク1の漏えいの有無を判断することが出来る。
さらに、液相部試験の最中において、液相部試験機10による自動運転が多くなり、検査員が判断する操作や処理が減少しているので、液相部試験における検査員の労力が軽減され、検査員の(例えば操作タッチパネル)操作ミスによる再試験、或いは、誤って試験を中止させてしまう可能性も減少する。
係る定量化は、以下で述べる実験に基づいて行われる。
当該実験は、模擬試験機30(実験装置)により行われ、その結果に基づいて液相部試験の対象となるタンク1の場合に換算することにより、EPAの基準である0.38リットル/時間を超える漏えいがあった場合に、確実に検出できる時間を規定している。
アクリル製タンク31(容器)は板厚10mmのアクリルで円筒形に構成されており、円筒の胴長方向の内側寸法が570mm、内径が675mm、鑑(張り出し)が0mm、全容量が203.75リットルである。そして容器31には符号31A、31Bで示す流入孔(口径2mm)が形成されており、流入孔31Aはタンク底面から上方に358mmの位置に中心が位置しており、流入孔31Bはタンク底面から上方1mm以内の位置に中心が位置している。
疑似漏洩孔33はエアを吸い込まない様に常に水に浸漬されている(没している)必要があり、そのためにビーカー36内には実験開始前の都度300ccの水を充填した。
図8における符号VLは、ビーカー36内に充填されている水の水位を示している。
実験では、ビーカー36内の水が300ccから200ccまで減少する(容器31内に100cc流入する)度毎に、ビーカー36内に100ccの水を補給した。そして、実験における水位の条件を等しくするため(各水位高さの設定において同条件とするため)、300ccの水位=VL=45mmを≒0.5kPaとして、減圧するべき値を設定している。この設定は、後述する全ての実験例で同一である。
図9、図10を参照して、実験例1を説明する。図示の簡略化のため、図9ではタンク代替容器31とビーカー36だけを示している。
実験例1では、地下水位はタンク内の液位よりも低く、タンク底部近傍の流入孔31Bからタンク代替容器31内に水が流入する場合について、水の流入時間を検証した。図9で示す様に、実験例1では、タンク内の液位は150mmである。
図9において、疑似漏えい孔33と流入孔31Bの鉛直方向位置は等しく、ビーカー36内の300ccの水の液位WLと疑似漏えい孔33の中心との鉛直方向距離△Vは45mmである。
-5-150×0.01+0.5=-6.0kPa であるが、実験例1では計算値である-6.0kPaよりも更に減圧した数値である-6.1kPaを減圧値としている(図10参照)。
流入孔31Bの設定減圧値が-10kPaであれば、減圧するべき値は同様に、
-10-150×0.01+0.5=-11.0kPa であるが、実験例1では更に減圧した数値である-11.1kPaを減圧値としている(図10参照)。
これら減圧するべき値0.1kPaの誤差については、発明者がタンク中心部の漏えい孔(流入孔)と地下水位が一致、または、近似する場合、漏えい(流入、流出)を検知し難いという事実を承知していることから、減圧値の誤差を厳密とせずに実験例1を行ったことによるものである(-5kPa、-10kPaいずれも同様)。
図9を参照して説明した実験例1の結果を表にして、図10で示す。
図11、図12を参照して、実験例2を説明する。
実験例2においても、地下水位はタンク内の液位よりも低く、タンク底部近傍の流入孔31Bから容器31内に水が流入する場合について、水の流入時間を検証した。
図11で示す様に、実験例2では、タンク内の液位は359mmであり、実験例1の場合よりもタンク内液位が高い。
図11でも疑似漏えい孔33と流入孔31Bの鉛直方向位置は等しく、ビーカー36内の300ccの水の液位WLと疑似漏えい孔33の中心との鉛直方向距離△Vは、45mmである。なお、減圧するべき値の誤差は、前述のとおりである。
実験例2の結果を表にして、図12で示す。
図13、図14を参照して、実験例3を説明する。
実験例3では、地下水位はタンク内の液位と等しく、タンク中央の流入孔Aの鉛直方向位置の近傍となっている。
実験例3では、流入孔31Aから容器31内に水が流入する場合について、水の流入時間を検証した。ここで、タンク中央(或いは中央付近)では、水平投影面積が大きくなるので、液の変位量(流入、流出)の検出が最も困難(微少な変位量)である。
図13で示す様に、実験例3におけるタンク内の液位は359mmであり、地下水位とほぼ等しい(流入孔31Aへタンク気相部の空気の影響を考慮してタンク内の液位は、流入孔31Aの上端から1mm程度としている)。
ビーカー36内の300ccの水の液位WLと、疑似漏えい孔33の中心との鉛直方向距離△Vは45mmである。
設定圧力と、減圧値については、実験例2と同様な態様で設定されている。
実験例3の結果を表にして、図14で示す。図14において、水の流入量400ccの所要時間/減圧値についてハッチングを付してあるが、これについては後述する。
図15、図16を参照して、実験例4を説明する。
図15で示す実験例4では、地下水位はタンク内の液位よりも高い。実験例4では、流入孔31A及び流入孔31Bから容器31内に水が流入する時間を検証した。実験例4におけるタンク内の液位は354mmであり、地下水位UGLと液位LVとの差(UGL>LV)は符号 h で示されて、実験例4ではh が100mm、200mm、300mm、400mm、455mm、555mmの各々の場合につい水の流入時間を検証した。
図15において、疑似漏えい孔33と流入孔31Aの鉛直方向位置は距離 h だけ隔たっており、ビーカー36の鉛直方向位置は、実験例3よりも更に高い位置にあり、以って、地下水位がタンク内液位よりも上方の状態に対応させている。
ビーカー36内の300ccの水の液位WLと、疑似漏えい孔33の中心との鉛直方向距離△Vは45mmである。
実験例4では、タンク底部の設定圧力は-5kPaである。減圧値については、実験例2、実験例3と同様な態様で設定される。
実験例4の結果を表にして、図16で示す。図16において、所要時間/減圧値にハッチングを付してあるものについては後述する。
図15、図17を参照して、実験例5を説明する。
実験例5は、図15を参照して上述した実験例4と概略同様に行われる。
ただし、実験例5ではタンク底部の設定圧力を-10kPaとしており、最大減圧(減圧するべき値)が-20kPaを超えない条件とするため、タンク底部における流入孔31Aからの水の流入時間を検証した。
よって、実験例5では、h≦500mmの場合に限定している。
実験例5の結果は図17の表で示している。図17において、所要時間/減圧値にハッチングを付してあるものについては後述する。
タンク内液位が地下水位以上である場合は、実験例1~実験例3の結果を示す図10、図12、図14を参照する。
タンク底部の設定減圧値が-5kPaの場合に、最も長時間を要したのが図14のハッチングを付して示す81分である。ここで、図14の81分は400ccの水が流入する時間であり、0.38リットル(=380cc)よりも流入量が多い。
更に各図の所要(計測)時間は、秒単位(1秒であっても)を分単位に切り上げている。よって、図14の81分は、EPAの基準である0.38リットル/時間がタンク内に流入する時間として、80分と設定しても問題はない。
タンク底部の設定減圧値が-10kPaの場合に、最も長時間を要したのが図14のハッチングを付して示す60分である。この60分については、いわゆる「きりがよい」数値であるので、そのまま用いる。
タンク底部の設定減圧値が-5kPaの場合に、最も長時間を要したのが図16のハッチングを付して示す90分である。90分もいわゆる「きりがよい」数値であるため、そのまま用いる。
タンク底部の設定減圧値が-10kPaの場合に、最も長時間を要したのが図17のハッチングを付して示す70分である。70分もいわゆる「きりがよい」数値であるので、そのまま用いる。
ここで、「70分」を用いるのは、地下水位とタンク内液位との差hが500mm以下の場合である。地下水位がタンク内液位よりも500mmを超えて高い場合(h>500mmの場合)には、最も長時間を要したのが、図16のハッチングを付して示す64分であるが、「きりがよい」数値である65分に設定する。同じ条件であれば、65分間経過すれば、0.38リットル(380cc)を上回る水が確実にタンク内に流入するからである。
係る演算は、消防法で定められた横置き円筒型の地下貯蔵タンクの全容量計算式、及びタンク容積を求める計算式から、パーソナルコンピュータにインストールされている市販ソフト(office:商品名)の機能等のうち表計算ソフトの機能(例えばエクセル(商品名)のゴールシーク機能等)を用いて液の容量(Q)~液面高さ(H)へ換算した値を導き出す方式が一般的である。ほかの演算方式としては、3DCADを用いることも可能である。
ここで液の容量(Q)~液面高さ(H)へ換算するデータを求めるにあたり、タンク諸元(内径寸法、胴長寸法、鏡寸法)は、貯蔵タンクの在庫を計測する液面計を製造するメーカーの出荷実績、貯蔵タンクを製造するメーカーの出荷実績、すなわち国内に設置(埋設)されている地下貯蔵タンクのうち、水平投影面積が最大となる諸元(実データ)に基づき、導き出したことを申し添える。
液面変位センサーの分解能が0.005mmであるため、例えば図18の容量3キロリットルのタンクにおいては、水の流入量100ccの場合の液面変位0.027mmを検知することが出来ないので、検知可能な液面変位量0.054mmに対応する水流入量200ccが、当該容量3キロリットルのタンクにおいて検出される水の流入量と規定する。
容量5キロリットルのタンクにおいて検出される水の流入量は200ccであり(図19)、
容量10キロリットルのタンクにおいて検出される水の流入量は300ccであり(図20)、
容量20キロリットルのタンクにおいて検出される水の流入量は500ccであり(図21)、
容量30キロリットルのタンクにおいて検出される水の流入量は600ccであり(図22)、
容量50キロリットルのタンクにおいて検出される水の流入量は800ccである(図23)。
タンク内の液面位が地下水位以上である場合における図6の計測時間が、図24に示されており、地下水位がタンク内の液面位以上の場合が図25に示されている。
図示の実施形態の施行に際しては、図6の計測時間を図24、図25に示す時間(しきい値時間)に設定して実行するので、図2、図3で示す既存の液相試験の様にならず、所要時間を正確に予測することが可能である。
2・・・液面変位センサー
3・・・圧力計
4・・・減圧ポンプ
10・・・液相部試験機(制御装置)
30・・・実験装置
31・・・タンク代替容器
33・・・開口部(0.3mm標準テストピース:疑似漏えい孔)
100・・・液相部試験装置(タンク漏えい試験装置)
Claims (4)
- 液面変位センサーと、
液面変位センサーの計測結果に基づいて試験対象となるタンクにしきい値以上の地下水が流入しているか否かを判断する機能を有する制御装置とを有し、
当該制御装置は、
大気圧下のタンク内の液面変動を液面変位センサーにより第1の所定時間だけ計測する機能と、
タンク内を減圧した後、第2の所定時間だけタンク内の液面位の変動を計測する機能と、
第2の所定時間が経過しタンク内を大気圧とした後に、大気圧になった時点におけるタンク内の液面位を計測して、計測された液位と漏えいが無いと仮定した場合の仮想液面位との差異がしきい値を上回っている場合に漏えいがあると判断する機能を有していることを特徴とする試験装置。 - 直径0.3mmの開口部からタンク内に流入する水の量及びその流入時間を計測する実験装置を有し、
タンク諸元を入力するとタンク容量及び液面高さへ換算する機能を有する情報処理装置を前記試験装置とは別に有し、
前記制御装置は、前記実験装置により求めた水の量及びその流入時間と、前記情報処理装置で換算したタンク容量及び液面高さから、試験対象となるタンクの容量毎に、前記第2の所定時間を規定する機能を有している請求項1の試験装置。 - 試験対象となるタンク内の液位の変動を計測する液面変位センサーと、
液面変位センサーの計測結果に基づいて試験対象となるタンクにしきい値以上の地下水が流入しているか否かを判断する機能を有する制御装置とを有する液相部試験装置を用いて行われる試験方法において、
大気圧下のタンク内の液面変動を液面変位センサーにより第1の所定時間だけ計測する工程と、
タンク内を減圧した後、第2の所定時間だけタンク内の液面位の変動を計測する工程と、
第2の所定時間が経過した後、タンク内の減圧を開放し、タンク内が大気圧になった時点におけるタンク内の液面位を計測して、計測された液面位と漏えいが無いと仮定した場合の仮想液面位との差異がしきい値を上回っている場合に漏えいがあると判断する工程を有していることを特徴とする試験方法。 - 直径0.3mmの開口部からタンク内に流入する水の量及びその流入時間を計測する実験装置により求めた水の量及びその流入時間と、タンク諸元を入力するとタンク容量及び液面高さへ換算する機能を有する情報処理装置で換算したタンク容量及び液面高さから、前記制御装置により、試験対象となるタンクの容量毎に、前記第2の所定時間を規定する請求項3の試験方法。
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